無線式体温計および無線式体温測定システム
【課題】精度良く深部体温を測定可能な無線式体温計を実現する。
【解決手段】無線式体温計10は、可撓性、絶縁性、所定の熱抵抗率ρTを有し、所定厚みDからなる断熱体130を備える。断熱体130の一方面には、水晶振動子111が配置されている。断熱体130の一方面には、平面視して水晶振動子111を囲むように、巻回形のコイル電極121が形成されており、水晶振動子111に接続している。断熱体130の他方面には、水晶振動子112が配置されている。断熱体130の他方面には、平面視して水晶振動子112を囲むように、巻回形のコイル電極122が形成されており、水晶振動子112に接続している。
【解決手段】無線式体温計10は、可撓性、絶縁性、所定の熱抵抗率ρTを有し、所定厚みDからなる断熱体130を備える。断熱体130の一方面には、水晶振動子111が配置されている。断熱体130の一方面には、平面視して水晶振動子111を囲むように、巻回形のコイル電極121が形成されており、水晶振動子111に接続している。断熱体130の他方面には、水晶振動子112が配置されている。断熱体130の他方面には、平面視して水晶振動子112を囲むように、巻回形のコイル電極122が形成されており、水晶振動子112に接続している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検温体の体温によって定まる物理量を測定して当該物理量を外部装置に無線送信する無線式体温計および当該無線式体温計を備えた無線式体温測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深部体温を測定する装置が各種考案されており、その一つとして、特許文献1に示す装置がある。特許文献1に示す装置は、被検温体の表面に装着される体温計本体と、表示装置とを備える。体温計本体と表示装置との間では、無線通信が可能な構成となっている。
【0003】
特許文献1の体温計本体は、体表面側温度センサと外気側温度センサとを一つの組として備える。体表面側温度センサと外気側温度センサとは、所定の熱抵抗を有する断熱材を介在するように配置されている。そして、体温計本体は、体表面側温度センサが被検温体の表面に当接するように、被検温体に対して設置される。体表面側温度センサの温度検出結果と、外気側温度センサの温度検出結果とは、無線通信により、表示装置へ送信される。
【0004】
特許文献1の表示装置は、体表面側温度センサの温度検出結果、外気側温度センサの温度検出結果、および、体表面側温度センサと外気側温度センサとの間の断熱材の熱抵抗に基づいて、深部体温を算出して表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−308538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に示す体温測定装置では、体表面側温度センサと外気側温度センサとが、導電性の電極パターンによって物理的に単一のアンテナに接続する構造を用いている。このため、体表面側温度センサと外気側温度センサとが導電性の電極パターンで接続されてしまう。
【0007】
したがって、体表面から体表面側温度センサ、外気側温度センサを介して、外気に熱が伝導する際に、断熱材のみでなく、導電性の電極パターンを介しても熱伝導してしまう。これにより、深部体温の算出結果の精度が低下してしまう。
【0008】
この発明の目的は、精度良く深部体温を測定可能な無線式体温計および無線式体温測定システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、被検温体の深部体温を測定するための無線式体温計に関する。本発明の無線式体温計は、断熱体、第1の温度検出手段、第2の温度検出手段、第1アンテナおよび第2アンテナを備える。断熱体は所定の熱抵抗率を有する材質によって形成されている。第1の温度検出手段は断熱体の一方面に配置されており、第2の温度検出手段は断熱体を介して一方面と対向する他方面に配置されている。第1アンテナは第1の温度検出手段から出力される第1検出信号を送信する。第2アンテナは第2の温度検出手段から出力される第2検出信号を送信する。このような構成の上で、第1アンテナと第2アンテナとは、それぞれ独立して個別に形成されている。
【0010】
この構成では、第1の温度検出手段と第2の温度検出手段とで共通のアンテナを用いない。したがって、第1の温度検出手段と第2の温度検出手段とが導電体で接続されない構造となる。これにより、第2の温度検出手段を被検温体の表面に密着させ、第1の温度検出手段を外気側とするように、無線式体温計を設置すれば、被検温体からの体温が外部に放熱される過程において、第2の温度検出手段と第1の温度検出手段との間では、断熱体のみを介して熱伝導される。
【0011】
また、この発明の無線式体温計では、第1の温度検出手段と第2の温度検出手段とが、それぞれ複数配設されている。
【0012】
この構成では、二つの異なる熱伝達経路での温度検知結果が得られ、これら複数の深部体温を算出することが可能になる。したがって、より信頼性の高い深部体温を測定することができる。
【0013】
また、この発明の無線式体温計では、第1アンテナと第2アンテナとが、断熱体の一方面あるいは一方面と対向する他方面の領域内に配置されている。
【0014】
この構成では、第1アンテナと第2アンテナが断熱体よりはみ出す領域に存在しない。したがって、アンテナを介して外部に直接放熱されることを抑制することができ、測定精度をより向上させることができる。
【0015】
また、この発明の無線式体温計では、第1アンテナと第2アンテナは、外部のアンテナに対して磁界結合する巻回形のコイルによって形成されている。
【0016】
この構成では、近接式で磁界結合型(電磁誘導型)の無線通信を採用する場合の第1アンテナと第2アンテナの具体的構成を示している。この構成により、電波を使用する場合に対して、無線通信に対する被検温体の影響を低減することができるため、無線通信の精度を向上させることができる。
【0017】
また、この発明の無線式体温計では、第1アンテナおよび第2アンテナよりも内径および外径が大きな巻回状導体を有し、該巻回状導体による共振周波数が第1検出信号および第2検出信号の周波数に略一致する中継アンテナを備える。当該中継アンテナの巻回状導体は、断熱体の外側面もしくは外側面よりも外方に、断熱体を囲むように配設されている。
【0018】
この構成では、第1アンテナおよび第2アンテナによる第1検出信号および第2検出信号の送信に中継アンテナを利用でき、外部への放射効率を向上させ、通信効率を向上させることができる。
【0019】
また、この発明の無線式体温計では、第1の温度検出手段は第1アンテナを構成するコイルの巻回形の中心側に配置されている。第2の温度検出手段は第2アンテナを構成するコイルの巻回形の中心側に配置されている。
【0020】
この構成では、第1アンテナの占める領域内に第1の温度検出手段が配置され、第2アンテナの占める領域内に第2の温度検出手段が配置される。これにより、無線式体温計を省スペース化することができる。
【0021】
また、この発明の無線式体温計では、第1の温度検出手段と第2の温度検出手段は、外部からの無線信号によって動作するものであり、かつ第1アンテナと第2アンテナに直接接続されており、検出した温度を外部に伝達する機能を有する温度センサ素子である。
【0022】
この構成では、温度センサを駆動させる駆動装置がない、すなわち、発熱体を有していない。さらに、温度センサがアンテナに直接接続されている。したがって、被検温体の温度をより正確に測定することができる。
【0023】
また、この発明の無線式体温計では、第1の温度検出手段および第2の温度検出手段は圧電共振子からなる。
【0024】
この構成では、第1、第2の温度検出手段の具体例を示している。
【0025】
また、この発明の無線式体温計では、圧電共振子は水晶振動子である。また、この発明の無線式体温計では、圧電共振子は弾性表面波共振子である。
【0026】
これらの構成では、圧電共振子のさらに具体的な例を示している。それぞれの素子の共振周波数およびアンテナの形状から、磁界結合による無線通信の場合には水晶振動子を利用した方が無線式体温計を簡素な構造で形成しやすく、電波による無線通信の場合には弾性表面波共振子を利用した方が無線式体温計を簡素な構造で形成しやすい。
【0027】
また、この発明の無線式体温計では、体温を算出する際に利用する校正用データを記憶させたRFIDを、第1の温度検出手段および第2の温度検出手段とは別に備える。
【0028】
この構成では、校正用データを用いた高精度な体温計測が実現可能になる。
【0029】
また、この発明の無線式体温計では、校正用データは、第1の温度検出手段および第2の温度検出手段の温度と周波数の相関データもしくは当該相関データから算出される第1の補正係数を含む。
【0030】
また、この発明の無線式体温計では、校正用データは、断熱体の熱抵抗もしくは当該熱抵抗から算出される第2の補正係数を含む。
【0031】
これらの構成では、校正用データの具体的な内容例を示している。
【0032】
また、この発明の無線式体温計では、第1の温度検出手段および第2の温度検出手段の少なくとも一方は、温度センサを内蔵するRFID−ICである。
【0033】
この構成では、RFID−ICによるID送信機能が追加されるので、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方に対して識別IDを付加することができる。
【0034】
また、この発明の無線式体温計では、RFID−ICは、体温を算出する際に利用する校正用データを記憶している。
【0035】
この構成では、校正用データも送信できるので、当該校正用データを用いた高精度な体温計測に利用できる。
【0036】
また、この発明は、上述の無線式体温計と、該無線式体温計に対して、第1の温度検出手段および第2の温度検出手段に与える入力信号の送信、第1検出信号および第2検出信号の受信を行う親機と、を備えた無線式体温測定システムに関する。この無線式体温測定システムの無線式体温計は被検温体の表面に装着されている。親機は、無線式体温計と無線通信する親機側アンテナ部と、第1検出信号および第2検出信号に基づいて被検温体の深部体温の計測を行う計測用処理部と、を備える。
【0037】
この構成では、上述の無線式体温計を含む無線式体温測定システムについて示している。このように上述の無線式体温計を用いることで、深部体温を精度良く測定することができる。
【0038】
また、この発明の無線式体温測定システムでは、親機の計測用処理部は、無線式体温計から受信した第1検出信号および第2検出信号と校正用データとを用いて、被検温体の深部体温の計測を行う。
【0039】
この構成では、無線式体温計から取得した校正用データを用いることで、より高精度に、被検温体の深部体温を計測できる。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、精度良く深部体温を測定可能な無線式体温計を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態に係る無線式体温計10の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る無線式体温測定システム1の実施状況を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る無線式体温測定システム1の主要回路構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係る無線式体温計10の変形例である無線式体温計10Aの構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る無線式体温計10Aの構成を示す図である。
【図6】第3の実施形態に係る無線式体温計10Bの構成を示す図である。
【図7】第4の実施形態に係る無線式体温計10Cの構成を示す図である。
【図8】第5の実施形態に係る無線式体温計10Dの構成を示す図である。
【図9】校正用データの一例を示す表である。
【図10】第5の実施形態に係る無線式体温測定システム1Dの主要回路構成を示すブロック図である。
【図11】第6の実施形態に係る無線式体温計40の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の第1の実施形態に係る無線式体温計および無線式体温測定システムについて、図を参照して説明する。本実施形態では、磁界結合により無線式体温計10と携帯型親端末20とで通信を行う場合を示す。なお、通信様式は、磁界結合に限らず、電界結合や電波等、その他の無線通信方式によるものであってもよい。図1は本実施形態に係る無線式体温計10の構成を示す図である。図1(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図1(B)は側面断面図、図1(C)は下面断熱体142を省略した状態での下面図である。
【0043】
無線式体温計10は、可撓性、絶縁性を有するとともに、所定の熱抵抗率ρTを有する断熱体130を備える。断熱体130は、平面視して(上面側もしくは下面側から見て)円形であり、所定の厚みDを有する。断熱体130は、被検温体の熱抵抗率と略同じ熱抵抗率ρTの材質を用いている。
【0044】
断熱体130の上面(一方面)には、略全面に亘る領域に対して、巻回状のコイル電極121が形成されている。コイル電極121は、無線式体温計10と携帯型親端末20との間で磁界結合による通信を行う第1周波数に応じた形状で形成されている。このコイル電極121が本発明の第1アンテナに相当する。
【0045】
断熱体130の上面におけるコイル電極121の巻回形を平面視した略中心には、水晶振動子111が配設されている。水晶振動子111とコイル電極121とは、導電性の電極パターンにより接続されている。
【0046】
水晶振動子111は、感知温度に応じて所定の共振周波数fp1で共振する素子である。この水晶振動子111が本発明の第1の温度検出手段に相当する。
【0047】
そして、断熱体130の上面には、コイル電極121および水晶振動子111を保護する上面断熱体141が配設されている。この際、上面断熱体141は、水晶振動子111の表面が露出するように配設しても良く、水晶振動子111の表面を覆うように配設してもよい。なお、この上面断熱体141は設置を省略することもできる。
【0048】
断熱体130の下面(他方面)には、略全面に亘る領域に対して、巻回状のコイル電極122が形成されている。コイル電極122は、無線式体温計10と携帯型親端末20との間で磁界結合による通信を行う第2周波数に応じた形状で形成されている。この際、第2周波数は、上述の第1周波数とは異なる周波数に設定されている。このコイル電極122が本発明の第2アンテナに相当する。すなわち、第1アンテナと第2アンテナとでは、異なる周波数帯域で無線通信を行うように、コイル電極121,122が形成されている。ただし、第1周波数と第2周波数が近接するように設定した場合は、コイル電極121と122は同一の形状で形成することが可能である。
【0049】
断熱体130の下面におけるコイル電極122の巻回形を平面視した略中心には、水晶振動子112が配設されている。この際、水晶振動子112は、平面視して水晶振動子111と略重なり合う位置に配置される。水晶振動子112とコイル電極122とは、導電性の電極パターンにより接続されている。
【0050】
水晶振動子112は、感知温度に応じて上述の水晶振動子111とは異なる所定の共振周波数fp2で共振する素子である。特に、本実施形態の無線式体温計10では、当該無線式体温計10で検出する温度範囲において、水晶振動子111が取り得る周波数帯域と水晶振動子112が取り得る周波数帯域とが異なるように、水晶振動子111、112を選択する。この水晶振動子112が本発明の第2の温度検出手段に相当する。
【0051】
そして、断熱体130の下面には、コイル電極122および水晶振動子112を保護する下面断熱体142が配設されている。この際、下面断熱体142は、水晶振動子112の表面が露出するように配設する。下面断熱体142として、体表面への吸着性が良好な材料を用いれば、検温時に体表面から剥がれにくくなり、より円滑に体温測定を行うことができる。なお、この下面断熱体142は設置を省略することもできる。その場合、断熱体130を、体表面への吸着性が良好な材料としてもよい。
【0052】
このように、本実施形態の無線式体温計10では、水晶振動子111に対してはコイル電極121がアンテナとなり、水晶振動子112に対しては、コイル電極122がアンテナとなる。言い換えれば、水晶振動子111,112毎に個別のアンテナが設けられている。これにより、水晶振動子111,112は、導電性の電極パターン、すなわち断熱体130と異なる熱伝導率を有する電極パターンにより電気的に接続されない。この結果、後述する各水晶振動子111,112の周波数(感知温度)と、断熱体130の熱抵抗率ρTおよび厚みDから得られる熱抵抗RTとを用いた深部温度の算出精度が向上する。
【0053】
以上のような構成の無線式体温計10を、図2、図3に示すような無線式体温測定システム1に利用する。図2は本実施形態に係る無線式体温測定システム1の実施状況を示す図である。図3は本実施形態に係る無線式体温測定システム1の主要回路構成を示すブロック図である。
【0054】
まず、水晶振動子112およびコイル電極122が配設された無線式体温計10の下面を、被検温体である人900の腕900Aに装着する。なお、本実施形態では、腕に装着する場合を示したが、検温したい箇所(例えば人900の胸部等)に装着すればよい。
【0055】
このように人900に装着された無線式体温計10に対して、携帯型親端末20から第1パルス信号SpL1、第2パルス信号SpL2を送信する。この際、携帯型親端末20を、無線式体温計10のコイル電極121,122との間で磁界結合による通信が可能な距離に近づけて第1パルス信号SpL1、第2パルス信号SpL2送信する。
【0056】
第1パルス信号SpL1は、コイル電極121で受信され、水晶振動子111へ印加される。水晶振動子111は、第1パルス信号SpL1によって共振し、第1共振信号Sfp1を出力する。この第1共振信号Sfp1が本発明の第1検出信号に相当する。第1共振信号Sfp1はコイル電極121に伝送される。コイル電極121に伝送された第1共振信号Sfp1は、磁界結合により携帯型親端末20へ送信される。
【0057】
ここで、第1共振信号Sfp1の周波数fp1は水晶振動子111の感知する温度によって変化し、一つの共振周波数に対して一意に温度が決まっている。具体的には、共振周波数fp1は、検温部である人900の腕900Aの体温が熱抵抗率ρTで厚みDからなる断熱体130を介して外気側へ熱伝導された温度に応じて一意に決まり、当該共振周波数fp1の第1共振信号Sfp1が出力される。
【0058】
第2パルス信号SpL2は、コイル電極122で受信され、水晶振動子112へ印加される。水晶振動子112は、第2パルス信号SpL2によって共振し、第2共振信号Sfp2を出力する。この第2共振信号Sfp2が本発明の第2検出信号に相当する。第2共振信号Sfp2はコイル電極122に伝送される。コイル電極122に伝送された第2共振信号Sfp2は、磁界結合により携帯型親端末20へ送信される。
【0059】
ここで、第2共振信号Sfp2の周波数fp2は水晶振動子112の感知する温度によって変化し、一つの共振周波数に対して一意に温度が決まっている。具体的には、共振周波数fp2は、検温部である人900の腕900Aの体温に応じて一意に決まり、当該共振周波数fp2の第2共振信号Sfp2が出力される。
【0060】
携帯型親端末20は、制御部21、送信信号生成部22、送受信部23、親機側アンテナ24、計測部25、表示部26、および操作部27を備える。制御部21は、携帯型親端末20の全体制御を行う。また、制御部21は、操作部27からの操作入力に応じて各種の制御処理を実行する。例えば、操作部27から体温測定の操作入力を受けると、まず、送信信号生成部22へ第1パルス信号SpL1の生成制御を行う。
【0061】
送信信号生成部22は、第1パルス信号SpL1の生成制御を受けると、第1の周波数の搬送波からなる第1パルス信号SpL1を生成し、送受信部23へ与える。具体的には、第1パルス信号SpL1の周波数成分が、当該無線式体温計10で検出される温度範囲において、水晶振動子111が取り得る周波数帯域と略同じになるように、搬送波周波数は、水晶振動子111の共振周波数に近い周波数に設定され、かつ帯域幅を決定するパルス幅(バースト時間)は適当な値に設定されている。
【0062】
送受信部23は、第1パルス信号SpL1を親機側アンテナ24に出力する。親機側アンテナ24は、無線式体温計10のアンテナ部12と同様の構造からなり、第1パルス信号SpL1を放射する。
【0063】
親機側アンテナ24は、無線式体温計10のコイル電極121から放射された第1共振信号Sfp1を受信し、送受信部23へ出力する。送受信部23は、第1共振信号Sfp1を計測部25へ出力する。
【0064】
制御部21は、第1共振信号Sfp1の受信を確認後、もしくは送信信号生成部22へ第1パルス信号SpL1の生成制御から一定時間経過後、送信信号生成部22へ第2パルス信号SpL2の生成制御を行う。
【0065】
送信信号生成部22は、第2パルス信号SpL2の生成制御を受けると、第1の周波数と異なる第2の周波数の搬送波からなる第2パルス信号SpL2を生成し、送受信部23へ与える。具体的には、第2パルス信号SpL2の周波数成分が、当該無線式体温計10で検出する温度範囲において、水晶振動子112が取り得る周波数帯域と略同じとなるように、この第2パルス信号SpL2の搬送波周波数は、水晶振動子112の共振周波数に近い周波数に設定され、かつ帯域幅を決定するパルス幅(バースト時間)は適当な値に設定されている。
【0066】
親機側アンテナ24は、無線式体温計10のコイル電極121から放射された第2共振信号Sfp2を受信し、送受信部23へ出力する。送受信部23は、第2共振信号Sfp2を計測部25へ出力する。
【0067】
計測部25は、周波数変換部251、温度検出部252、および体温算出部253を備える。周波数変換部251は、FFT処理等により、時間軸の第1共振信号Sfp1および第2共振信号Sfp2からそれぞれ周波数スペクトルを取得する。なお、本実施形態では第1共振信号Sfp1と第2共振信号Sfp2を別々に読み取る場合を示した。しかしながら、当該無線式体温計10で検出する温度範囲において、水晶振動子111が取り得る周波数帯域と水晶振動子112が取り得る周波数帯域をできるだけ近づけておき、かつ、2つの周波数帯域を含む広い周波数成分を持ったパルス信号を送信すれば、一回の送受信で、第1共振信号Sfp1と第2共振信号Sfp2を同時に測定することができる。
【0068】
温度検出部252には、第1共振信号Sfp1の周波数と温度との関係、および第2共振信号Sfp2の周波数と温度との関係が予め記憶されている。
【0069】
温度検出部252は、第1共振信号Sfp1の周波数スペクトルピークを検出し、当該ピーク周波数fp1に関連付けられた温度を、外気側温度Tsとして出力する。
【0070】
温度検出部252は、第2共振信号Sfp2の周波数スペクトルピークを検出し、当該ピーク周波数fp2に関連付けられた温度を、体表面温度Tbとして出力する。
【0071】
体温算出部253は、外気側温度Ts、体表面温度Tb、水晶振動子111、水晶振動子112間の断熱材130熱抵抗RTと、あらかじめ記憶している皮下組織の熱抵抗Ruとに基づいて、次式から被検温体の深部体温Tdを算出する。
【0072】
Td=Ts+(RT+Ru)・(Tb−Ts)/RT
算出された深部体温Tdは、表示部26および記憶部(図示せず)へ出力される。表示部26は深部体温測定結果を表示する。
【0073】
以上のような構成により、携帯型親端末20により、遠隔で体温検出トリガを与えるだけで、人900の深部体温を測定することができる。
【0074】
そして、本実施形態の構成を用いることで、体温が外気へ放射されるまでの過程における、体表面温度Tbを検知する水晶振動子112と外気側温度Tsを検知する水晶振動子111との間の熱の伝搬は、断熱体130のみを介する。したがって、上述の深部体温Tdの算出式の元となる熱伝搬モデルと正確に一致するので、深部体温Tdを精度よく算出することができる。
【0075】
なお、本実施形態の説明では、水晶振動子111,112の表面が外部に露出する例を示したが、図4に示すような構成を用いてもよい。図4は本実施形態に係る無線式体温計10の変形例である無線式体温計10’の構成を示す図である。
【0076】
無線式体温計10’は、断熱材130とは別の断熱体151で、図1に示した無線式体温計10を覆った構成を備える。断熱体151は、断熱体130および皮下組織に対して十分に大きい熱抵抗率を有する材料からなることが望ましい。
【0077】
断熱体151は、体温計としてのコアとなる断熱体130の水晶振動子111が配置された側の面(外気側となる上面)および側面(円周面)を覆う形状からなる。
【0078】
このような構成とすることで、外気の影響を小さくすることが可能になり、外気温の急激な変化が起こる使用状況下では、より深部体温の算出精度を高めることができる。
【0079】
次に、第2の実施形態に係る無線式体温計について、図を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る無線式体温計10Aの構成を示す図である。図5(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図5(B)は側面断面図、図5(C)は下面断熱体142を省略した状態での下面図である。
【0080】
第1の実施形態に示した無線式体温計10、10’は、外気側と体表面側とでそれぞれ一つの水晶振動子を配置し、これらの組を用いて深部体温を測定するものであった。しかしながら、本実施形態の無線式体温計10Aは、外気側と体表面側との水晶振動子の組を複数設けたものである。なお、本実施形態では、具体的に外気側と体表面側との水晶振動子の組を二組設けた例を示しているが、三組以上であってもよい。
【0081】
コアとなる断熱体は、中央部に平面視して所定面積となる断熱体130Bを備えるとともに、平面視して当該断熱体130Bの周囲を埋めるように配置された断熱体130Aを備える。
【0082】
断熱体130Aの上面には、巻回形状のコイル電極121Aが形成されるとともに、当該コイル電極121Aを平面した略中央には水晶振動子111Aが配置されている。コイル電極121Aと水晶振動子111Aは導電性の電極パターンにより接続されている。
【0083】
断熱体130Aの下面には、巻回形状のコイル電極122Aが形成されるとともに、当該コイル電極122Aを平面した略中央には水晶振動子112Aが配置されている。この際、水晶振動子112Aは、平面視して水晶振動子111Aと重なりあうように配置されている。コイル電極122Aと水晶振動子112Aは導電性の電極パターンにより接続されている。この構成により、深部体温を測定する一組のアンテナ付き水晶振動子群が実現される。
【0084】
断熱体130Bの上面には、巻回形状のコイル電極121Bが形成されるとともに、当該コイル電極121Bを平面した略中央には水晶振動子111Bが配置されている。コイル電極121Bと水晶振動子111Bは導電性の電極パターンにより接続されている。
【0085】
断熱体130Bの下面には、巻回形状のコイル電極122Bが形成されるとともに、当該コイル電極122Bを平面した略中央には水晶振動子112Bが配置されている。この際、水晶振動子112Bは、平面視して水晶振動子111Bと重なりあうように配置されている。コイル電極122Bと水晶振動子112Bは導電性の電極パターンにより接続されている。この構成により、深部体温を測定するもう一組のアンテナ付き水晶振動子群が実現される。
【0086】
なお、各水晶振動子111A,112A,111B,112Bは検知対象温度範囲において、共振周波数が重なり合わないようにする。これにより、携帯型親端末が、各水晶振動子111A,112A,111B,112Bからの検出信号を、容易に識別できる。
【0087】
そして、本実施形態に示すように、二つの異なる熱伝達経路での温度検知結果に基づいて、深部体温を算出することで、より信頼性の高い深部体温を測定することができる。
【0088】
次に、第3の実施形態に係る無線式体温計について図を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る無線式体温計10Bの構成を示す図である。図6(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図6(B)は側面断面図、図6(C)は下面断熱体142を省略した状態での下面図である。
【0089】
第2の実施形態に示した無線式体温計10Aでは、各アンテナを構成するコイル電極121A,121B,122A,122Bの形状が略同じ場合を示した。しかしながら、本実施形態の無線式体温計10Bでは、同一面上に、巻回する径の大きなコイル電極と、巻回する径の小さなコイル電極とを備える。なお、断熱体130A,130Bの構成は第2の実施形態と同じである。
【0090】
断熱体130Aの上面には、巻回形状のコイル電極121Cが形成されている。コイル電極121Cは、断熱体130Aの外周近傍で巻回するように、大きな径で形成されている。当該コイル電極121Cを平面した内側で断熱体130A表面となる領域の所定位置には水晶振動子111Cが配置されている。コイル電極121Cと水晶振動子111Cは導電性の電極パターンにより接続されている。
【0091】
断熱体130Aの下面には、巻回形状のコイル電極122Cが形成されている。コイル電極122Cは、断熱体130Aの外周近傍で巻回するように、大きな径で形成されている。当該コイル電極122Cを平面した内側で断熱体130A表面となる領域の所定位置には水晶振動子112Cが配置されている。
【0092】
この際、水晶振動子112Cは、平面視して水晶振動子111Cと重なりあうように配置されている。コイル電極122Cと水晶振動子112Cは導電性の電極パターンにより接続されている。この構成により、深部体温を測定する一組のアンテナ付き水晶振動子群が実現される。
【0093】
断熱体130Bの上面には、第2の実施形態と同様に、巻回形状のコイル電極121Bが形成されるとともに、当該コイル電極121Bを平面した略中央には水晶振動子111Bが配置されている。コイル電極121Bと水晶振動子111Bは導電性の電極パターンにより接続されている。
【0094】
断熱体130Bの下面には、第2の実施形態と同様に、巻回形状のコイル電極122Bが形成されるとともに、当該コイル電極122Bを平面した略中央には水晶振動子112Bが配置されている。この際、水晶振動子112Bは、平面視して水晶振動子111Bと重なりあうように配置されている。コイル電極122Bと水晶振動子112Bは導電性の電極パターンにより接続されている。この構成により、深部体温を測定するもう一組のアンテナ付き水晶振動子群が実現される。
【0095】
なお、各水晶振動子111B,112B,111C,112Cは検知対象温度範囲において、共振周波数が重なり合わないようにする。これにより、携帯型親端末が、各水晶振動子111B,112B,111C,112Cからの検出信号を、容易に識別できる。
【0096】
そして、本実施形態の構成を用いても、二つの異なる熱伝達経路での温度検知結果に基づいて、深部体温を算出することができる。これにより、第2の実施形態と同様に、より信頼性の高い深部体温を測定することができる。
【0097】
次に、第4の実施形態に係る無線式体温計について、図を参照して説明する。図7は、本実施形態に係る無線式体温計10Cの構成を示す図である。図7(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図7(B)は側面断面図、図7(C)は下面断熱体142を省略した状態での下面図である。
【0098】
本実施形態の無線式体温計10Cは、第3の実施形態に示した無線式体温計10Bに対して、同一面上に配置された水晶振動子111Bと水晶振動子111Cとで、コイル電極121BCを共有する点で異なる。すなわち、第3の実施形態で示したコイル電極121Cと同じく、断熱体130Aの外周近傍に大きな径で形成されたコイル電極121BCに対して、断熱体130A上に配置された水晶振動子111Cと、断熱体130B上に配置された水晶振動子111Bとを並列に接続する。この際、コイル電極121BCは、検温対象となる水晶振動子111Bおよび水晶振動子111Cの各周波数帯域で、磁界結合型の無線通信が可能な形状に形成する。
【0099】
このような構成であっても、断熱体130A,130Bを挟んで配置される水晶振動子同士は導電性の電極パターンで接続されていないので、上述の各実施形態と同様に、精度良く深部体温を測定することができる。
【0100】
次に、第5の実施形態に係る無線式体温計について、図を参照して説明する。図8は本実施形態に係る無線式体温計10Dの構成を示す図である。図8(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図8(B)は側面断面図、図8(C)は下面断熱体142を省略した状態での下面図である。図9は校正用データの一例を示す表である。
【0101】
本実施形態の無線式体温計10Dは、第1の実施形態に示した無線式体温計10に対して、さらにRFID160を追加した構成からなる。したがって、第1の実施形態と異なる構成のみを具体的に説明する。
【0102】
送受のアンテナコイルをRFID160と水晶振動子111、112で共通化するため、RFID160の動作周波数fp3と水晶振動子111、112の共振周波数fp1,fp2は近接するように設定されている。具体的には、fp3=13.56MHzのHF帯RFIDを使用する場合は、fp1、fp2,は、13.56MHz±1MHzの範囲内とすることが好ましい。
【0103】
RFID160は、水晶振動子111と同様に、断熱体130の上面に配設されている。RFID160は、水晶振動子111が接続された巻回状のコイル電極121に、並列接続されている。すなわち、水晶振動子111とRFID160は、コイル電極121を共有する。
【0104】
RFID160は、無線式体温計10Dに備えられた水晶振動子111,112、断熱材130に関する校正用データを記憶している。なお、これらの校正用データは、予め既知の雰囲気(特に温度)で測定された結果によって設定される。
【0105】
図9に示すように、水晶振動子111の共振周波数fp1に関する校正用データは、予め設定した第1の温度TLにおける無線式体温計10Dに配設された水晶振動子111のピーク周波数(低温側ピーク周波数)f1Lと、第2の温度TH(>TL)における無線式体温計10Dに配設された水晶振動子111のピーク周波数(高温側ピーク周波数)f1Hである。したがって、水晶振動子111に関する校正用データとしては、第1の温度TLおよび低温側ピーク周波数f1Lの組(TL,f1L)、第2の温度THおよび高温側ピーク周波数f1Hの組(TH,f1H)からなる。
【0106】
同様に、水晶振動子112の共振周波数fp2に関する校正用データは、予め設定した第1の温度TLにおける無線式体温計10Dに配設された水晶振動子112のピーク周波数(低温側ピーク周波数)f2Lと、第2の温度TH(>TL)における無線式体温計10Dに配設された水晶振動子112のピーク周波数(高温側ピーク周波数)f2Hである。したがって、水晶振動子112に関する校正用データとしては、第1の温度TLおよび低温側ピーク周波数f2Lの組(TL,f2L)、第2の温度THおよび高温側ピーク周波数f2Hの組(TH,f2H)からなる。
【0107】
具体的には、RFIDに次のような値を入力する。
(TL,f1L)=(35.01、13.001)、
(TH,f1H)=(40.02、13.051)、
(TL,f2L)=(35.03、13.003)、
(TH,f2H)=(40.04、13.052)、
RT=2001。
【0108】
RFIDに入力する際は、入力値のばらつき範囲内の桁まで入力すれば十分であるので、例えば、以下のように入力してもよい。
(TL,f1L)=(1、01)、
(TH,f1H)=(2、51)、
(TL,f2L)=(3、03)、
(TH,f2H)=(4、52)、
RT=01。
このようにすることで、RFIDのメモリ使用量を削減できる。
【0109】
なお、第1の温度TLと第2の温度THは、上述の関係TL<THが満たされればよいが、当該無線式体温計10Dの対象とする測定温度範囲の下限温度と上限温度に設定するとよい。
【0110】
また、断熱体130に関する校正用データは、無線式体温計10Dに配設された断熱体130の熱抵抗RTからなる。当該熱抵抗RTは、当該断熱体130の組成から得られる熱抵抗値をそのまま用いてもよいが、深部体温が既知な測定環境において、皮下組織の熱抵抗Ruを既知の固定値で、上述の水晶振動子111,112の特性が分かっている状態であれば、第1の実施形態に示した深部体温Tdの算出式を用いて算出することができる。
【0111】
RFID160は、これらの構成要素からなる校正用データを含むRFID返信信号Sreを親機からのRFID問い合わせ信号Sqに応じて親機に返信する。
【0112】
次に、このようなRFID160を備えた無線式体温計10Dを含む無線式体温測定システム1Dについて、図を参照して説明する。この無線式体温測定システム1Dは、第1の実施形態に示した無線式体温測定システム10と体温測定に関する基本的構成および処理は同じであり、校正用データに関する箇所のみが異なる。したがって、異なる箇所のみを図10は本実施形態に係る無線式体温測定システム1Dの主要回路構成を示すブロック図である。
【0113】
親機側アンテナ24で上記校正用データを含むRFID返信信号Sreを受信すると、当該RFID返信信号Sreは、送受信部23Aを介して制御部21Aへ入力される。
【0114】
制御部21Aは、RFID返信信号Sreを復調して、校正用データを取得し、計測部25Aへ与える。
【0115】
計測部25Aの温度検出部252Aは、校正用データと、上述の実施形態の方法で取得した周波数変換部251からの第1共振信号Sfp1の周波数および第2共振信号Sfp2の周波数と、を用いて、外気側温度Tsおよび体表面温度Tbを算出する。
【0116】
具体的には、温度検出部252Aは、校正用データの第1の温度TLおよび低温側ピーク周波数f1Lの組(TL,f1L)、および第2の温度THおよび高温側ピーク周波数f1Hの組(TH,f1H)から温度−周波数特性を線形補間で算出し、第1共振信号Sfp1の周波数に対応する温度を外気側温度Tsとして算出する。
【0117】
また、温度検出部252Aは、校正用データの第1の温度TLおよび低温側ピーク周波数f2Lの組(TL,f2L)、および第2の温度THおよび高温側ピーク周波数f2Hの組(TH,f2H)から温度−周波数特性を線形補間で算出し、第2共振信号Sfp2の周波数に対応する温度を外気側温度Tsとして算出する。
【0118】
体温算出部253Aは、温度検出部252Aで校正用データを用いて算出された外気側温度Tsおよび外気側温度Tsと、校正用データの熱抵抗RTとを用いて、上述の第1の実施形態に示したように、深部体温Tdを算出する。
【0119】
以上のような構成を用いれば、無線式体温計10D毎に水晶振動子111,112および断熱体130に特性ばらつきがあっても、校正用データを用いて正確な体温測定が可能になる。
【0120】
なお、本実施形態では、異なる二つの温度におけるピーク周波数を校正用データに用いる例を示したが、一つの温度におけるピーク周波数と線形補間用の補間係数(温度−周波数特性の勾配(傾き)に相当する値)との組や、上述の温度と周波数との相関から得られる補正係数を校正用データとして用いてもよい。また、断熱材の熱抵抗に関しても、当該熱抵抗から算出される補正係数を校正用データとして用いてもよい。さらには、RFID160の記憶容量を大きく取ることができれば、予め各水晶振動子111,112の共振周波数と深部体温Tdとの関係を記憶しておき、これらの関係を校正用データとして用いることもできる。
【0121】
また、本実施形態では、RFID160と水晶振動子111とを個別に設ける例を示したが、RFIDICとして温度センサを備えるものであれば、少なくとも断熱体の一方面に配設される水晶振動子だけでもRFIDICに置き換えればよい。
【0122】
また、本実施形態では、水晶振動子111とRFID160とでアンテナを共通化したが、それぞれ個別のアンテナを設けてもよい。
【0123】
また、本実施形態では、RFID160を断熱体130の外気側に設けた例を示したが、体表面側に設けることも可能である。
【0124】
また、本実施形態では、体温測定と校正用データの読み取りを逐次個別に行う例を示したが、これらを同時に行うようにしてもよい。この場合、体温測定のための第1パルス信号SpL1は、RFID問い合わせ信号Sqと合成されてアンテナコイルより出力される。
【0125】
また、上述の説明では、断熱体の形状が、平面視して円形となる場合を示したが、その形状は円形に限るものではなく、平面視して四角形等の多角形となるような形状であってもよい。また、コイル電極についても、同様に、円で巻回する形状に限るものではなく、送受波する周波数帯域を上述のように適宜設定すれば、四角形等の多角形に巻回する形状であってもよい。
【0126】
また、上述の説明では、磁界結合型のアンテナを用いた例を示したが、パッチアンテナ等の電波送受波型のアンテナを用いてもよい。
【0127】
また、上述の説明では、コイル電極の巻回形状の内側に水晶振動子を配置する例を示したが、巻回形状の外側に水晶振動子を配置してもよい。ただし、コイル電極の巻回形状の内側に水晶振動子を配置することで、無線式体温計を小型化することができる。
【0128】
また、上述の説明では、水晶振動子を例に説明したが、大きな周波数温度特性を有する圧電共振子であればよく、弾性表面波共振子を用いてもよい。特に、弾性表面波共振子を用いた場合、UHF帯などの電波通信用アンテナを小型にすることが可能な高い周波数に共振周波数を合わせることが水晶振動子に比べて容易であるので、電波による無線通信を行う無線式体温計を容易に製造することができる。
【0129】
また、上述の説明で示した深部体温の算出方法は一例であり、体表面側温度と外気側温度とを用いた他の算出方法を用いてもよい。
【0130】
また、上述の各実施形態、特に上述の第2の実施形態に示すように、複数の温度検出用の振動子、およびアンテナとなるコイル電極を、上面および下面に形成する場合には、コイル電極の形状が小さくなってしまうことがある。この場合、外部に対する電磁界結合が可能な距離が短くなってしまうことがある。このような場合には、次に示す第6の実施形態に示すような無線式体温計を用いればよい。図11は、本実施形態に係る無線式体温計40の構成を示す図である。図11(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図11(B)は側面断面図である。
【0131】
図11に示すように、本実施形態の無線式体温計40は、第2の実施形態に示した無線式体温計10Aと、中継用アンテナ30とからなる。温度検出用の無線式体温計10Aは、第2の実施形態と同じであるので、中継用アンテナ30に関してのみ詳細に説明する。
【0132】
中継用アンテナ30は、絶縁性を有する円環形状のベースフィルム31と、巻回形からなるコイル電極32とを備える。ベースフィルム31の円環形状の内径は、無線式体温計10Aを平面視した外径よりも大きい。ベースフィルム31の幅、外径から内径を減算した長さは、コイル電極32が形成できる程度の所定長さである。なお、ベースフィルム31は、体表面への吸着性のよい材質であるとよい。
【0133】
コイル電極32は、ベースフィルム31の上面に、ベースフィルム31の全周を周回する形状で形成されており、所定のインダクタンスおよび所定の寄生キャパシタンスが得られる形状に形成されている。この際、無線式体温計10Aと図示しない携帯型親端末とで送受信する信号の周波数帯域に、このコイル電極32の形状に基づくインダクタンスおよび寄生キャパシタンスによる共振周波数が重なるように、コイル電極32の電極幅、電極間隔および巻回数は決定される。なお、ここで、寄生キャパシタンスを用いる例を示したが、ベースフィルム31にチップコンデンサを実装し、コイル電極32に接続するような態様であってもよい。
【0134】
このような構造からなる、中継アンテナ30の中空領域内に、無線式体温計10Aを配置する。具体的には、まず、検温部(人の腕等)に、中継アンテナ30を取り付ける。次に、中継アンテナ30の中空領域に露出した検温部に、無線式体温計10Aを取り付ける。これにより、中継アンテナ30の中空領域に無線式体温計10Aを維持した状態を実現できる。
【0135】
このような構造からなる無線式体温計では、各コイル電極121A,121B,122A,122Bで送受信する信号が、中継アンテナ30を介することで、各コイル電極121A,121B,122A,122Bのみで送受信するよりも、遠距離まで送受信することが可能になる。逆に言えば、各コイル電極121A,121B,122A,122Bの形状を小さくしても、無線式体温計として必要な距離での送受信が可能になる。
【0136】
また、中継アンテナ30を用いることで、各コイル電極121A,121B,122A,122Bに代えて、チップインダクタ、水晶振動子を含む温度センサ素子の外側面に周回して導体を巻きつけたコイル、水晶振動子を含む温度センサに内蔵したコイル等を用いることもできる。
【0137】
また、上述の説明では、中継アンテナ30と無線式体温計10Aとを別体で形成した例を示したが、例えば、中継アンテナ30のベースフィルム31と、無線式体温計10Aの下面断熱体142とを一体形成してもよい。
【0138】
また、上述の説明では、ベースフィルム31とコイル電極32から中継アンテナ30を形成する例を示したが、ベースフィルム31を省略して、コイル電極32を、無線式体温計10Aの外側面に沿って形成してもよい。
【0139】
また、上述の説明では、中継アンテナ30と無線式体温計10Aとの組合せを説明したが、他の実施形態の無線式体温計と中継アンテナ30を組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0140】
10,10’,10A,10B,10C,10D−無線式体温計、20,20A−携帯型親端末、21,21A−制御部、22−送信信号生成部、23,23A−送受信部、24−親機側アンテナ、25,25A−計測部、251−周波数変換部、252,252A−温度検出部、253,253A−体温算出部、26−表示部、27−操作部、
30−中継アンテナ、31−ベースフィルム、32−コイル電極、
111,111A,111B,111C,112,112A,112B,112C−水晶振動子、121,121A,121B,121C,121BC,122,122A,122B,122C−コイル電極、130,130A,130B−断熱体、141−上面断熱体、142−下面断熱体、151−断熱体、160−RFID、900−人、900A−腕、1,1D−無線式体温測定システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検温体の体温によって定まる物理量を測定して当該物理量を外部装置に無線送信する無線式体温計および当該無線式体温計を備えた無線式体温測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深部体温を測定する装置が各種考案されており、その一つとして、特許文献1に示す装置がある。特許文献1に示す装置は、被検温体の表面に装着される体温計本体と、表示装置とを備える。体温計本体と表示装置との間では、無線通信が可能な構成となっている。
【0003】
特許文献1の体温計本体は、体表面側温度センサと外気側温度センサとを一つの組として備える。体表面側温度センサと外気側温度センサとは、所定の熱抵抗を有する断熱材を介在するように配置されている。そして、体温計本体は、体表面側温度センサが被検温体の表面に当接するように、被検温体に対して設置される。体表面側温度センサの温度検出結果と、外気側温度センサの温度検出結果とは、無線通信により、表示装置へ送信される。
【0004】
特許文献1の表示装置は、体表面側温度センサの温度検出結果、外気側温度センサの温度検出結果、および、体表面側温度センサと外気側温度センサとの間の断熱材の熱抵抗に基づいて、深部体温を算出して表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−308538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に示す体温測定装置では、体表面側温度センサと外気側温度センサとが、導電性の電極パターンによって物理的に単一のアンテナに接続する構造を用いている。このため、体表面側温度センサと外気側温度センサとが導電性の電極パターンで接続されてしまう。
【0007】
したがって、体表面から体表面側温度センサ、外気側温度センサを介して、外気に熱が伝導する際に、断熱材のみでなく、導電性の電極パターンを介しても熱伝導してしまう。これにより、深部体温の算出結果の精度が低下してしまう。
【0008】
この発明の目的は、精度良く深部体温を測定可能な無線式体温計および無線式体温測定システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、被検温体の深部体温を測定するための無線式体温計に関する。本発明の無線式体温計は、断熱体、第1の温度検出手段、第2の温度検出手段、第1アンテナおよび第2アンテナを備える。断熱体は所定の熱抵抗率を有する材質によって形成されている。第1の温度検出手段は断熱体の一方面に配置されており、第2の温度検出手段は断熱体を介して一方面と対向する他方面に配置されている。第1アンテナは第1の温度検出手段から出力される第1検出信号を送信する。第2アンテナは第2の温度検出手段から出力される第2検出信号を送信する。このような構成の上で、第1アンテナと第2アンテナとは、それぞれ独立して個別に形成されている。
【0010】
この構成では、第1の温度検出手段と第2の温度検出手段とで共通のアンテナを用いない。したがって、第1の温度検出手段と第2の温度検出手段とが導電体で接続されない構造となる。これにより、第2の温度検出手段を被検温体の表面に密着させ、第1の温度検出手段を外気側とするように、無線式体温計を設置すれば、被検温体からの体温が外部に放熱される過程において、第2の温度検出手段と第1の温度検出手段との間では、断熱体のみを介して熱伝導される。
【0011】
また、この発明の無線式体温計では、第1の温度検出手段と第2の温度検出手段とが、それぞれ複数配設されている。
【0012】
この構成では、二つの異なる熱伝達経路での温度検知結果が得られ、これら複数の深部体温を算出することが可能になる。したがって、より信頼性の高い深部体温を測定することができる。
【0013】
また、この発明の無線式体温計では、第1アンテナと第2アンテナとが、断熱体の一方面あるいは一方面と対向する他方面の領域内に配置されている。
【0014】
この構成では、第1アンテナと第2アンテナが断熱体よりはみ出す領域に存在しない。したがって、アンテナを介して外部に直接放熱されることを抑制することができ、測定精度をより向上させることができる。
【0015】
また、この発明の無線式体温計では、第1アンテナと第2アンテナは、外部のアンテナに対して磁界結合する巻回形のコイルによって形成されている。
【0016】
この構成では、近接式で磁界結合型(電磁誘導型)の無線通信を採用する場合の第1アンテナと第2アンテナの具体的構成を示している。この構成により、電波を使用する場合に対して、無線通信に対する被検温体の影響を低減することができるため、無線通信の精度を向上させることができる。
【0017】
また、この発明の無線式体温計では、第1アンテナおよび第2アンテナよりも内径および外径が大きな巻回状導体を有し、該巻回状導体による共振周波数が第1検出信号および第2検出信号の周波数に略一致する中継アンテナを備える。当該中継アンテナの巻回状導体は、断熱体の外側面もしくは外側面よりも外方に、断熱体を囲むように配設されている。
【0018】
この構成では、第1アンテナおよび第2アンテナによる第1検出信号および第2検出信号の送信に中継アンテナを利用でき、外部への放射効率を向上させ、通信効率を向上させることができる。
【0019】
また、この発明の無線式体温計では、第1の温度検出手段は第1アンテナを構成するコイルの巻回形の中心側に配置されている。第2の温度検出手段は第2アンテナを構成するコイルの巻回形の中心側に配置されている。
【0020】
この構成では、第1アンテナの占める領域内に第1の温度検出手段が配置され、第2アンテナの占める領域内に第2の温度検出手段が配置される。これにより、無線式体温計を省スペース化することができる。
【0021】
また、この発明の無線式体温計では、第1の温度検出手段と第2の温度検出手段は、外部からの無線信号によって動作するものであり、かつ第1アンテナと第2アンテナに直接接続されており、検出した温度を外部に伝達する機能を有する温度センサ素子である。
【0022】
この構成では、温度センサを駆動させる駆動装置がない、すなわち、発熱体を有していない。さらに、温度センサがアンテナに直接接続されている。したがって、被検温体の温度をより正確に測定することができる。
【0023】
また、この発明の無線式体温計では、第1の温度検出手段および第2の温度検出手段は圧電共振子からなる。
【0024】
この構成では、第1、第2の温度検出手段の具体例を示している。
【0025】
また、この発明の無線式体温計では、圧電共振子は水晶振動子である。また、この発明の無線式体温計では、圧電共振子は弾性表面波共振子である。
【0026】
これらの構成では、圧電共振子のさらに具体的な例を示している。それぞれの素子の共振周波数およびアンテナの形状から、磁界結合による無線通信の場合には水晶振動子を利用した方が無線式体温計を簡素な構造で形成しやすく、電波による無線通信の場合には弾性表面波共振子を利用した方が無線式体温計を簡素な構造で形成しやすい。
【0027】
また、この発明の無線式体温計では、体温を算出する際に利用する校正用データを記憶させたRFIDを、第1の温度検出手段および第2の温度検出手段とは別に備える。
【0028】
この構成では、校正用データを用いた高精度な体温計測が実現可能になる。
【0029】
また、この発明の無線式体温計では、校正用データは、第1の温度検出手段および第2の温度検出手段の温度と周波数の相関データもしくは当該相関データから算出される第1の補正係数を含む。
【0030】
また、この発明の無線式体温計では、校正用データは、断熱体の熱抵抗もしくは当該熱抵抗から算出される第2の補正係数を含む。
【0031】
これらの構成では、校正用データの具体的な内容例を示している。
【0032】
また、この発明の無線式体温計では、第1の温度検出手段および第2の温度検出手段の少なくとも一方は、温度センサを内蔵するRFID−ICである。
【0033】
この構成では、RFID−ICによるID送信機能が追加されるので、第1検出信号および第2検出信号の少なくとも一方に対して識別IDを付加することができる。
【0034】
また、この発明の無線式体温計では、RFID−ICは、体温を算出する際に利用する校正用データを記憶している。
【0035】
この構成では、校正用データも送信できるので、当該校正用データを用いた高精度な体温計測に利用できる。
【0036】
また、この発明は、上述の無線式体温計と、該無線式体温計に対して、第1の温度検出手段および第2の温度検出手段に与える入力信号の送信、第1検出信号および第2検出信号の受信を行う親機と、を備えた無線式体温測定システムに関する。この無線式体温測定システムの無線式体温計は被検温体の表面に装着されている。親機は、無線式体温計と無線通信する親機側アンテナ部と、第1検出信号および第2検出信号に基づいて被検温体の深部体温の計測を行う計測用処理部と、を備える。
【0037】
この構成では、上述の無線式体温計を含む無線式体温測定システムについて示している。このように上述の無線式体温計を用いることで、深部体温を精度良く測定することができる。
【0038】
また、この発明の無線式体温測定システムでは、親機の計測用処理部は、無線式体温計から受信した第1検出信号および第2検出信号と校正用データとを用いて、被検温体の深部体温の計測を行う。
【0039】
この構成では、無線式体温計から取得した校正用データを用いることで、より高精度に、被検温体の深部体温を計測できる。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、精度良く深部体温を測定可能な無線式体温計を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態に係る無線式体温計10の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る無線式体温測定システム1の実施状況を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る無線式体温測定システム1の主要回路構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係る無線式体温計10の変形例である無線式体温計10Aの構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る無線式体温計10Aの構成を示す図である。
【図6】第3の実施形態に係る無線式体温計10Bの構成を示す図である。
【図7】第4の実施形態に係る無線式体温計10Cの構成を示す図である。
【図8】第5の実施形態に係る無線式体温計10Dの構成を示す図である。
【図9】校正用データの一例を示す表である。
【図10】第5の実施形態に係る無線式体温測定システム1Dの主要回路構成を示すブロック図である。
【図11】第6の実施形態に係る無線式体温計40の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の第1の実施形態に係る無線式体温計および無線式体温測定システムについて、図を参照して説明する。本実施形態では、磁界結合により無線式体温計10と携帯型親端末20とで通信を行う場合を示す。なお、通信様式は、磁界結合に限らず、電界結合や電波等、その他の無線通信方式によるものであってもよい。図1は本実施形態に係る無線式体温計10の構成を示す図である。図1(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図1(B)は側面断面図、図1(C)は下面断熱体142を省略した状態での下面図である。
【0043】
無線式体温計10は、可撓性、絶縁性を有するとともに、所定の熱抵抗率ρTを有する断熱体130を備える。断熱体130は、平面視して(上面側もしくは下面側から見て)円形であり、所定の厚みDを有する。断熱体130は、被検温体の熱抵抗率と略同じ熱抵抗率ρTの材質を用いている。
【0044】
断熱体130の上面(一方面)には、略全面に亘る領域に対して、巻回状のコイル電極121が形成されている。コイル電極121は、無線式体温計10と携帯型親端末20との間で磁界結合による通信を行う第1周波数に応じた形状で形成されている。このコイル電極121が本発明の第1アンテナに相当する。
【0045】
断熱体130の上面におけるコイル電極121の巻回形を平面視した略中心には、水晶振動子111が配設されている。水晶振動子111とコイル電極121とは、導電性の電極パターンにより接続されている。
【0046】
水晶振動子111は、感知温度に応じて所定の共振周波数fp1で共振する素子である。この水晶振動子111が本発明の第1の温度検出手段に相当する。
【0047】
そして、断熱体130の上面には、コイル電極121および水晶振動子111を保護する上面断熱体141が配設されている。この際、上面断熱体141は、水晶振動子111の表面が露出するように配設しても良く、水晶振動子111の表面を覆うように配設してもよい。なお、この上面断熱体141は設置を省略することもできる。
【0048】
断熱体130の下面(他方面)には、略全面に亘る領域に対して、巻回状のコイル電極122が形成されている。コイル電極122は、無線式体温計10と携帯型親端末20との間で磁界結合による通信を行う第2周波数に応じた形状で形成されている。この際、第2周波数は、上述の第1周波数とは異なる周波数に設定されている。このコイル電極122が本発明の第2アンテナに相当する。すなわち、第1アンテナと第2アンテナとでは、異なる周波数帯域で無線通信を行うように、コイル電極121,122が形成されている。ただし、第1周波数と第2周波数が近接するように設定した場合は、コイル電極121と122は同一の形状で形成することが可能である。
【0049】
断熱体130の下面におけるコイル電極122の巻回形を平面視した略中心には、水晶振動子112が配設されている。この際、水晶振動子112は、平面視して水晶振動子111と略重なり合う位置に配置される。水晶振動子112とコイル電極122とは、導電性の電極パターンにより接続されている。
【0050】
水晶振動子112は、感知温度に応じて上述の水晶振動子111とは異なる所定の共振周波数fp2で共振する素子である。特に、本実施形態の無線式体温計10では、当該無線式体温計10で検出する温度範囲において、水晶振動子111が取り得る周波数帯域と水晶振動子112が取り得る周波数帯域とが異なるように、水晶振動子111、112を選択する。この水晶振動子112が本発明の第2の温度検出手段に相当する。
【0051】
そして、断熱体130の下面には、コイル電極122および水晶振動子112を保護する下面断熱体142が配設されている。この際、下面断熱体142は、水晶振動子112の表面が露出するように配設する。下面断熱体142として、体表面への吸着性が良好な材料を用いれば、検温時に体表面から剥がれにくくなり、より円滑に体温測定を行うことができる。なお、この下面断熱体142は設置を省略することもできる。その場合、断熱体130を、体表面への吸着性が良好な材料としてもよい。
【0052】
このように、本実施形態の無線式体温計10では、水晶振動子111に対してはコイル電極121がアンテナとなり、水晶振動子112に対しては、コイル電極122がアンテナとなる。言い換えれば、水晶振動子111,112毎に個別のアンテナが設けられている。これにより、水晶振動子111,112は、導電性の電極パターン、すなわち断熱体130と異なる熱伝導率を有する電極パターンにより電気的に接続されない。この結果、後述する各水晶振動子111,112の周波数(感知温度)と、断熱体130の熱抵抗率ρTおよび厚みDから得られる熱抵抗RTとを用いた深部温度の算出精度が向上する。
【0053】
以上のような構成の無線式体温計10を、図2、図3に示すような無線式体温測定システム1に利用する。図2は本実施形態に係る無線式体温測定システム1の実施状況を示す図である。図3は本実施形態に係る無線式体温測定システム1の主要回路構成を示すブロック図である。
【0054】
まず、水晶振動子112およびコイル電極122が配設された無線式体温計10の下面を、被検温体である人900の腕900Aに装着する。なお、本実施形態では、腕に装着する場合を示したが、検温したい箇所(例えば人900の胸部等)に装着すればよい。
【0055】
このように人900に装着された無線式体温計10に対して、携帯型親端末20から第1パルス信号SpL1、第2パルス信号SpL2を送信する。この際、携帯型親端末20を、無線式体温計10のコイル電極121,122との間で磁界結合による通信が可能な距離に近づけて第1パルス信号SpL1、第2パルス信号SpL2送信する。
【0056】
第1パルス信号SpL1は、コイル電極121で受信され、水晶振動子111へ印加される。水晶振動子111は、第1パルス信号SpL1によって共振し、第1共振信号Sfp1を出力する。この第1共振信号Sfp1が本発明の第1検出信号に相当する。第1共振信号Sfp1はコイル電極121に伝送される。コイル電極121に伝送された第1共振信号Sfp1は、磁界結合により携帯型親端末20へ送信される。
【0057】
ここで、第1共振信号Sfp1の周波数fp1は水晶振動子111の感知する温度によって変化し、一つの共振周波数に対して一意に温度が決まっている。具体的には、共振周波数fp1は、検温部である人900の腕900Aの体温が熱抵抗率ρTで厚みDからなる断熱体130を介して外気側へ熱伝導された温度に応じて一意に決まり、当該共振周波数fp1の第1共振信号Sfp1が出力される。
【0058】
第2パルス信号SpL2は、コイル電極122で受信され、水晶振動子112へ印加される。水晶振動子112は、第2パルス信号SpL2によって共振し、第2共振信号Sfp2を出力する。この第2共振信号Sfp2が本発明の第2検出信号に相当する。第2共振信号Sfp2はコイル電極122に伝送される。コイル電極122に伝送された第2共振信号Sfp2は、磁界結合により携帯型親端末20へ送信される。
【0059】
ここで、第2共振信号Sfp2の周波数fp2は水晶振動子112の感知する温度によって変化し、一つの共振周波数に対して一意に温度が決まっている。具体的には、共振周波数fp2は、検温部である人900の腕900Aの体温に応じて一意に決まり、当該共振周波数fp2の第2共振信号Sfp2が出力される。
【0060】
携帯型親端末20は、制御部21、送信信号生成部22、送受信部23、親機側アンテナ24、計測部25、表示部26、および操作部27を備える。制御部21は、携帯型親端末20の全体制御を行う。また、制御部21は、操作部27からの操作入力に応じて各種の制御処理を実行する。例えば、操作部27から体温測定の操作入力を受けると、まず、送信信号生成部22へ第1パルス信号SpL1の生成制御を行う。
【0061】
送信信号生成部22は、第1パルス信号SpL1の生成制御を受けると、第1の周波数の搬送波からなる第1パルス信号SpL1を生成し、送受信部23へ与える。具体的には、第1パルス信号SpL1の周波数成分が、当該無線式体温計10で検出される温度範囲において、水晶振動子111が取り得る周波数帯域と略同じになるように、搬送波周波数は、水晶振動子111の共振周波数に近い周波数に設定され、かつ帯域幅を決定するパルス幅(バースト時間)は適当な値に設定されている。
【0062】
送受信部23は、第1パルス信号SpL1を親機側アンテナ24に出力する。親機側アンテナ24は、無線式体温計10のアンテナ部12と同様の構造からなり、第1パルス信号SpL1を放射する。
【0063】
親機側アンテナ24は、無線式体温計10のコイル電極121から放射された第1共振信号Sfp1を受信し、送受信部23へ出力する。送受信部23は、第1共振信号Sfp1を計測部25へ出力する。
【0064】
制御部21は、第1共振信号Sfp1の受信を確認後、もしくは送信信号生成部22へ第1パルス信号SpL1の生成制御から一定時間経過後、送信信号生成部22へ第2パルス信号SpL2の生成制御を行う。
【0065】
送信信号生成部22は、第2パルス信号SpL2の生成制御を受けると、第1の周波数と異なる第2の周波数の搬送波からなる第2パルス信号SpL2を生成し、送受信部23へ与える。具体的には、第2パルス信号SpL2の周波数成分が、当該無線式体温計10で検出する温度範囲において、水晶振動子112が取り得る周波数帯域と略同じとなるように、この第2パルス信号SpL2の搬送波周波数は、水晶振動子112の共振周波数に近い周波数に設定され、かつ帯域幅を決定するパルス幅(バースト時間)は適当な値に設定されている。
【0066】
親機側アンテナ24は、無線式体温計10のコイル電極121から放射された第2共振信号Sfp2を受信し、送受信部23へ出力する。送受信部23は、第2共振信号Sfp2を計測部25へ出力する。
【0067】
計測部25は、周波数変換部251、温度検出部252、および体温算出部253を備える。周波数変換部251は、FFT処理等により、時間軸の第1共振信号Sfp1および第2共振信号Sfp2からそれぞれ周波数スペクトルを取得する。なお、本実施形態では第1共振信号Sfp1と第2共振信号Sfp2を別々に読み取る場合を示した。しかしながら、当該無線式体温計10で検出する温度範囲において、水晶振動子111が取り得る周波数帯域と水晶振動子112が取り得る周波数帯域をできるだけ近づけておき、かつ、2つの周波数帯域を含む広い周波数成分を持ったパルス信号を送信すれば、一回の送受信で、第1共振信号Sfp1と第2共振信号Sfp2を同時に測定することができる。
【0068】
温度検出部252には、第1共振信号Sfp1の周波数と温度との関係、および第2共振信号Sfp2の周波数と温度との関係が予め記憶されている。
【0069】
温度検出部252は、第1共振信号Sfp1の周波数スペクトルピークを検出し、当該ピーク周波数fp1に関連付けられた温度を、外気側温度Tsとして出力する。
【0070】
温度検出部252は、第2共振信号Sfp2の周波数スペクトルピークを検出し、当該ピーク周波数fp2に関連付けられた温度を、体表面温度Tbとして出力する。
【0071】
体温算出部253は、外気側温度Ts、体表面温度Tb、水晶振動子111、水晶振動子112間の断熱材130熱抵抗RTと、あらかじめ記憶している皮下組織の熱抵抗Ruとに基づいて、次式から被検温体の深部体温Tdを算出する。
【0072】
Td=Ts+(RT+Ru)・(Tb−Ts)/RT
算出された深部体温Tdは、表示部26および記憶部(図示せず)へ出力される。表示部26は深部体温測定結果を表示する。
【0073】
以上のような構成により、携帯型親端末20により、遠隔で体温検出トリガを与えるだけで、人900の深部体温を測定することができる。
【0074】
そして、本実施形態の構成を用いることで、体温が外気へ放射されるまでの過程における、体表面温度Tbを検知する水晶振動子112と外気側温度Tsを検知する水晶振動子111との間の熱の伝搬は、断熱体130のみを介する。したがって、上述の深部体温Tdの算出式の元となる熱伝搬モデルと正確に一致するので、深部体温Tdを精度よく算出することができる。
【0075】
なお、本実施形態の説明では、水晶振動子111,112の表面が外部に露出する例を示したが、図4に示すような構成を用いてもよい。図4は本実施形態に係る無線式体温計10の変形例である無線式体温計10’の構成を示す図である。
【0076】
無線式体温計10’は、断熱材130とは別の断熱体151で、図1に示した無線式体温計10を覆った構成を備える。断熱体151は、断熱体130および皮下組織に対して十分に大きい熱抵抗率を有する材料からなることが望ましい。
【0077】
断熱体151は、体温計としてのコアとなる断熱体130の水晶振動子111が配置された側の面(外気側となる上面)および側面(円周面)を覆う形状からなる。
【0078】
このような構成とすることで、外気の影響を小さくすることが可能になり、外気温の急激な変化が起こる使用状況下では、より深部体温の算出精度を高めることができる。
【0079】
次に、第2の実施形態に係る無線式体温計について、図を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る無線式体温計10Aの構成を示す図である。図5(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図5(B)は側面断面図、図5(C)は下面断熱体142を省略した状態での下面図である。
【0080】
第1の実施形態に示した無線式体温計10、10’は、外気側と体表面側とでそれぞれ一つの水晶振動子を配置し、これらの組を用いて深部体温を測定するものであった。しかしながら、本実施形態の無線式体温計10Aは、外気側と体表面側との水晶振動子の組を複数設けたものである。なお、本実施形態では、具体的に外気側と体表面側との水晶振動子の組を二組設けた例を示しているが、三組以上であってもよい。
【0081】
コアとなる断熱体は、中央部に平面視して所定面積となる断熱体130Bを備えるとともに、平面視して当該断熱体130Bの周囲を埋めるように配置された断熱体130Aを備える。
【0082】
断熱体130Aの上面には、巻回形状のコイル電極121Aが形成されるとともに、当該コイル電極121Aを平面した略中央には水晶振動子111Aが配置されている。コイル電極121Aと水晶振動子111Aは導電性の電極パターンにより接続されている。
【0083】
断熱体130Aの下面には、巻回形状のコイル電極122Aが形成されるとともに、当該コイル電極122Aを平面した略中央には水晶振動子112Aが配置されている。この際、水晶振動子112Aは、平面視して水晶振動子111Aと重なりあうように配置されている。コイル電極122Aと水晶振動子112Aは導電性の電極パターンにより接続されている。この構成により、深部体温を測定する一組のアンテナ付き水晶振動子群が実現される。
【0084】
断熱体130Bの上面には、巻回形状のコイル電極121Bが形成されるとともに、当該コイル電極121Bを平面した略中央には水晶振動子111Bが配置されている。コイル電極121Bと水晶振動子111Bは導電性の電極パターンにより接続されている。
【0085】
断熱体130Bの下面には、巻回形状のコイル電極122Bが形成されるとともに、当該コイル電極122Bを平面した略中央には水晶振動子112Bが配置されている。この際、水晶振動子112Bは、平面視して水晶振動子111Bと重なりあうように配置されている。コイル電極122Bと水晶振動子112Bは導電性の電極パターンにより接続されている。この構成により、深部体温を測定するもう一組のアンテナ付き水晶振動子群が実現される。
【0086】
なお、各水晶振動子111A,112A,111B,112Bは検知対象温度範囲において、共振周波数が重なり合わないようにする。これにより、携帯型親端末が、各水晶振動子111A,112A,111B,112Bからの検出信号を、容易に識別できる。
【0087】
そして、本実施形態に示すように、二つの異なる熱伝達経路での温度検知結果に基づいて、深部体温を算出することで、より信頼性の高い深部体温を測定することができる。
【0088】
次に、第3の実施形態に係る無線式体温計について図を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る無線式体温計10Bの構成を示す図である。図6(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図6(B)は側面断面図、図6(C)は下面断熱体142を省略した状態での下面図である。
【0089】
第2の実施形態に示した無線式体温計10Aでは、各アンテナを構成するコイル電極121A,121B,122A,122Bの形状が略同じ場合を示した。しかしながら、本実施形態の無線式体温計10Bでは、同一面上に、巻回する径の大きなコイル電極と、巻回する径の小さなコイル電極とを備える。なお、断熱体130A,130Bの構成は第2の実施形態と同じである。
【0090】
断熱体130Aの上面には、巻回形状のコイル電極121Cが形成されている。コイル電極121Cは、断熱体130Aの外周近傍で巻回するように、大きな径で形成されている。当該コイル電極121Cを平面した内側で断熱体130A表面となる領域の所定位置には水晶振動子111Cが配置されている。コイル電極121Cと水晶振動子111Cは導電性の電極パターンにより接続されている。
【0091】
断熱体130Aの下面には、巻回形状のコイル電極122Cが形成されている。コイル電極122Cは、断熱体130Aの外周近傍で巻回するように、大きな径で形成されている。当該コイル電極122Cを平面した内側で断熱体130A表面となる領域の所定位置には水晶振動子112Cが配置されている。
【0092】
この際、水晶振動子112Cは、平面視して水晶振動子111Cと重なりあうように配置されている。コイル電極122Cと水晶振動子112Cは導電性の電極パターンにより接続されている。この構成により、深部体温を測定する一組のアンテナ付き水晶振動子群が実現される。
【0093】
断熱体130Bの上面には、第2の実施形態と同様に、巻回形状のコイル電極121Bが形成されるとともに、当該コイル電極121Bを平面した略中央には水晶振動子111Bが配置されている。コイル電極121Bと水晶振動子111Bは導電性の電極パターンにより接続されている。
【0094】
断熱体130Bの下面には、第2の実施形態と同様に、巻回形状のコイル電極122Bが形成されるとともに、当該コイル電極122Bを平面した略中央には水晶振動子112Bが配置されている。この際、水晶振動子112Bは、平面視して水晶振動子111Bと重なりあうように配置されている。コイル電極122Bと水晶振動子112Bは導電性の電極パターンにより接続されている。この構成により、深部体温を測定するもう一組のアンテナ付き水晶振動子群が実現される。
【0095】
なお、各水晶振動子111B,112B,111C,112Cは検知対象温度範囲において、共振周波数が重なり合わないようにする。これにより、携帯型親端末が、各水晶振動子111B,112B,111C,112Cからの検出信号を、容易に識別できる。
【0096】
そして、本実施形態の構成を用いても、二つの異なる熱伝達経路での温度検知結果に基づいて、深部体温を算出することができる。これにより、第2の実施形態と同様に、より信頼性の高い深部体温を測定することができる。
【0097】
次に、第4の実施形態に係る無線式体温計について、図を参照して説明する。図7は、本実施形態に係る無線式体温計10Cの構成を示す図である。図7(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図7(B)は側面断面図、図7(C)は下面断熱体142を省略した状態での下面図である。
【0098】
本実施形態の無線式体温計10Cは、第3の実施形態に示した無線式体温計10Bに対して、同一面上に配置された水晶振動子111Bと水晶振動子111Cとで、コイル電極121BCを共有する点で異なる。すなわち、第3の実施形態で示したコイル電極121Cと同じく、断熱体130Aの外周近傍に大きな径で形成されたコイル電極121BCに対して、断熱体130A上に配置された水晶振動子111Cと、断熱体130B上に配置された水晶振動子111Bとを並列に接続する。この際、コイル電極121BCは、検温対象となる水晶振動子111Bおよび水晶振動子111Cの各周波数帯域で、磁界結合型の無線通信が可能な形状に形成する。
【0099】
このような構成であっても、断熱体130A,130Bを挟んで配置される水晶振動子同士は導電性の電極パターンで接続されていないので、上述の各実施形態と同様に、精度良く深部体温を測定することができる。
【0100】
次に、第5の実施形態に係る無線式体温計について、図を参照して説明する。図8は本実施形態に係る無線式体温計10Dの構成を示す図である。図8(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図8(B)は側面断面図、図8(C)は下面断熱体142を省略した状態での下面図である。図9は校正用データの一例を示す表である。
【0101】
本実施形態の無線式体温計10Dは、第1の実施形態に示した無線式体温計10に対して、さらにRFID160を追加した構成からなる。したがって、第1の実施形態と異なる構成のみを具体的に説明する。
【0102】
送受のアンテナコイルをRFID160と水晶振動子111、112で共通化するため、RFID160の動作周波数fp3と水晶振動子111、112の共振周波数fp1,fp2は近接するように設定されている。具体的には、fp3=13.56MHzのHF帯RFIDを使用する場合は、fp1、fp2,は、13.56MHz±1MHzの範囲内とすることが好ましい。
【0103】
RFID160は、水晶振動子111と同様に、断熱体130の上面に配設されている。RFID160は、水晶振動子111が接続された巻回状のコイル電極121に、並列接続されている。すなわち、水晶振動子111とRFID160は、コイル電極121を共有する。
【0104】
RFID160は、無線式体温計10Dに備えられた水晶振動子111,112、断熱材130に関する校正用データを記憶している。なお、これらの校正用データは、予め既知の雰囲気(特に温度)で測定された結果によって設定される。
【0105】
図9に示すように、水晶振動子111の共振周波数fp1に関する校正用データは、予め設定した第1の温度TLにおける無線式体温計10Dに配設された水晶振動子111のピーク周波数(低温側ピーク周波数)f1Lと、第2の温度TH(>TL)における無線式体温計10Dに配設された水晶振動子111のピーク周波数(高温側ピーク周波数)f1Hである。したがって、水晶振動子111に関する校正用データとしては、第1の温度TLおよび低温側ピーク周波数f1Lの組(TL,f1L)、第2の温度THおよび高温側ピーク周波数f1Hの組(TH,f1H)からなる。
【0106】
同様に、水晶振動子112の共振周波数fp2に関する校正用データは、予め設定した第1の温度TLにおける無線式体温計10Dに配設された水晶振動子112のピーク周波数(低温側ピーク周波数)f2Lと、第2の温度TH(>TL)における無線式体温計10Dに配設された水晶振動子112のピーク周波数(高温側ピーク周波数)f2Hである。したがって、水晶振動子112に関する校正用データとしては、第1の温度TLおよび低温側ピーク周波数f2Lの組(TL,f2L)、第2の温度THおよび高温側ピーク周波数f2Hの組(TH,f2H)からなる。
【0107】
具体的には、RFIDに次のような値を入力する。
(TL,f1L)=(35.01、13.001)、
(TH,f1H)=(40.02、13.051)、
(TL,f2L)=(35.03、13.003)、
(TH,f2H)=(40.04、13.052)、
RT=2001。
【0108】
RFIDに入力する際は、入力値のばらつき範囲内の桁まで入力すれば十分であるので、例えば、以下のように入力してもよい。
(TL,f1L)=(1、01)、
(TH,f1H)=(2、51)、
(TL,f2L)=(3、03)、
(TH,f2H)=(4、52)、
RT=01。
このようにすることで、RFIDのメモリ使用量を削減できる。
【0109】
なお、第1の温度TLと第2の温度THは、上述の関係TL<THが満たされればよいが、当該無線式体温計10Dの対象とする測定温度範囲の下限温度と上限温度に設定するとよい。
【0110】
また、断熱体130に関する校正用データは、無線式体温計10Dに配設された断熱体130の熱抵抗RTからなる。当該熱抵抗RTは、当該断熱体130の組成から得られる熱抵抗値をそのまま用いてもよいが、深部体温が既知な測定環境において、皮下組織の熱抵抗Ruを既知の固定値で、上述の水晶振動子111,112の特性が分かっている状態であれば、第1の実施形態に示した深部体温Tdの算出式を用いて算出することができる。
【0111】
RFID160は、これらの構成要素からなる校正用データを含むRFID返信信号Sreを親機からのRFID問い合わせ信号Sqに応じて親機に返信する。
【0112】
次に、このようなRFID160を備えた無線式体温計10Dを含む無線式体温測定システム1Dについて、図を参照して説明する。この無線式体温測定システム1Dは、第1の実施形態に示した無線式体温測定システム10と体温測定に関する基本的構成および処理は同じであり、校正用データに関する箇所のみが異なる。したがって、異なる箇所のみを図10は本実施形態に係る無線式体温測定システム1Dの主要回路構成を示すブロック図である。
【0113】
親機側アンテナ24で上記校正用データを含むRFID返信信号Sreを受信すると、当該RFID返信信号Sreは、送受信部23Aを介して制御部21Aへ入力される。
【0114】
制御部21Aは、RFID返信信号Sreを復調して、校正用データを取得し、計測部25Aへ与える。
【0115】
計測部25Aの温度検出部252Aは、校正用データと、上述の実施形態の方法で取得した周波数変換部251からの第1共振信号Sfp1の周波数および第2共振信号Sfp2の周波数と、を用いて、外気側温度Tsおよび体表面温度Tbを算出する。
【0116】
具体的には、温度検出部252Aは、校正用データの第1の温度TLおよび低温側ピーク周波数f1Lの組(TL,f1L)、および第2の温度THおよび高温側ピーク周波数f1Hの組(TH,f1H)から温度−周波数特性を線形補間で算出し、第1共振信号Sfp1の周波数に対応する温度を外気側温度Tsとして算出する。
【0117】
また、温度検出部252Aは、校正用データの第1の温度TLおよび低温側ピーク周波数f2Lの組(TL,f2L)、および第2の温度THおよび高温側ピーク周波数f2Hの組(TH,f2H)から温度−周波数特性を線形補間で算出し、第2共振信号Sfp2の周波数に対応する温度を外気側温度Tsとして算出する。
【0118】
体温算出部253Aは、温度検出部252Aで校正用データを用いて算出された外気側温度Tsおよび外気側温度Tsと、校正用データの熱抵抗RTとを用いて、上述の第1の実施形態に示したように、深部体温Tdを算出する。
【0119】
以上のような構成を用いれば、無線式体温計10D毎に水晶振動子111,112および断熱体130に特性ばらつきがあっても、校正用データを用いて正確な体温測定が可能になる。
【0120】
なお、本実施形態では、異なる二つの温度におけるピーク周波数を校正用データに用いる例を示したが、一つの温度におけるピーク周波数と線形補間用の補間係数(温度−周波数特性の勾配(傾き)に相当する値)との組や、上述の温度と周波数との相関から得られる補正係数を校正用データとして用いてもよい。また、断熱材の熱抵抗に関しても、当該熱抵抗から算出される補正係数を校正用データとして用いてもよい。さらには、RFID160の記憶容量を大きく取ることができれば、予め各水晶振動子111,112の共振周波数と深部体温Tdとの関係を記憶しておき、これらの関係を校正用データとして用いることもできる。
【0121】
また、本実施形態では、RFID160と水晶振動子111とを個別に設ける例を示したが、RFIDICとして温度センサを備えるものであれば、少なくとも断熱体の一方面に配設される水晶振動子だけでもRFIDICに置き換えればよい。
【0122】
また、本実施形態では、水晶振動子111とRFID160とでアンテナを共通化したが、それぞれ個別のアンテナを設けてもよい。
【0123】
また、本実施形態では、RFID160を断熱体130の外気側に設けた例を示したが、体表面側に設けることも可能である。
【0124】
また、本実施形態では、体温測定と校正用データの読み取りを逐次個別に行う例を示したが、これらを同時に行うようにしてもよい。この場合、体温測定のための第1パルス信号SpL1は、RFID問い合わせ信号Sqと合成されてアンテナコイルより出力される。
【0125】
また、上述の説明では、断熱体の形状が、平面視して円形となる場合を示したが、その形状は円形に限るものではなく、平面視して四角形等の多角形となるような形状であってもよい。また、コイル電極についても、同様に、円で巻回する形状に限るものではなく、送受波する周波数帯域を上述のように適宜設定すれば、四角形等の多角形に巻回する形状であってもよい。
【0126】
また、上述の説明では、磁界結合型のアンテナを用いた例を示したが、パッチアンテナ等の電波送受波型のアンテナを用いてもよい。
【0127】
また、上述の説明では、コイル電極の巻回形状の内側に水晶振動子を配置する例を示したが、巻回形状の外側に水晶振動子を配置してもよい。ただし、コイル電極の巻回形状の内側に水晶振動子を配置することで、無線式体温計を小型化することができる。
【0128】
また、上述の説明では、水晶振動子を例に説明したが、大きな周波数温度特性を有する圧電共振子であればよく、弾性表面波共振子を用いてもよい。特に、弾性表面波共振子を用いた場合、UHF帯などの電波通信用アンテナを小型にすることが可能な高い周波数に共振周波数を合わせることが水晶振動子に比べて容易であるので、電波による無線通信を行う無線式体温計を容易に製造することができる。
【0129】
また、上述の説明で示した深部体温の算出方法は一例であり、体表面側温度と外気側温度とを用いた他の算出方法を用いてもよい。
【0130】
また、上述の各実施形態、特に上述の第2の実施形態に示すように、複数の温度検出用の振動子、およびアンテナとなるコイル電極を、上面および下面に形成する場合には、コイル電極の形状が小さくなってしまうことがある。この場合、外部に対する電磁界結合が可能な距離が短くなってしまうことがある。このような場合には、次に示す第6の実施形態に示すような無線式体温計を用いればよい。図11は、本実施形態に係る無線式体温計40の構成を示す図である。図11(A)は上面断熱体141を省略した状態での上面図、図11(B)は側面断面図である。
【0131】
図11に示すように、本実施形態の無線式体温計40は、第2の実施形態に示した無線式体温計10Aと、中継用アンテナ30とからなる。温度検出用の無線式体温計10Aは、第2の実施形態と同じであるので、中継用アンテナ30に関してのみ詳細に説明する。
【0132】
中継用アンテナ30は、絶縁性を有する円環形状のベースフィルム31と、巻回形からなるコイル電極32とを備える。ベースフィルム31の円環形状の内径は、無線式体温計10Aを平面視した外径よりも大きい。ベースフィルム31の幅、外径から内径を減算した長さは、コイル電極32が形成できる程度の所定長さである。なお、ベースフィルム31は、体表面への吸着性のよい材質であるとよい。
【0133】
コイル電極32は、ベースフィルム31の上面に、ベースフィルム31の全周を周回する形状で形成されており、所定のインダクタンスおよび所定の寄生キャパシタンスが得られる形状に形成されている。この際、無線式体温計10Aと図示しない携帯型親端末とで送受信する信号の周波数帯域に、このコイル電極32の形状に基づくインダクタンスおよび寄生キャパシタンスによる共振周波数が重なるように、コイル電極32の電極幅、電極間隔および巻回数は決定される。なお、ここで、寄生キャパシタンスを用いる例を示したが、ベースフィルム31にチップコンデンサを実装し、コイル電極32に接続するような態様であってもよい。
【0134】
このような構造からなる、中継アンテナ30の中空領域内に、無線式体温計10Aを配置する。具体的には、まず、検温部(人の腕等)に、中継アンテナ30を取り付ける。次に、中継アンテナ30の中空領域に露出した検温部に、無線式体温計10Aを取り付ける。これにより、中継アンテナ30の中空領域に無線式体温計10Aを維持した状態を実現できる。
【0135】
このような構造からなる無線式体温計では、各コイル電極121A,121B,122A,122Bで送受信する信号が、中継アンテナ30を介することで、各コイル電極121A,121B,122A,122Bのみで送受信するよりも、遠距離まで送受信することが可能になる。逆に言えば、各コイル電極121A,121B,122A,122Bの形状を小さくしても、無線式体温計として必要な距離での送受信が可能になる。
【0136】
また、中継アンテナ30を用いることで、各コイル電極121A,121B,122A,122Bに代えて、チップインダクタ、水晶振動子を含む温度センサ素子の外側面に周回して導体を巻きつけたコイル、水晶振動子を含む温度センサに内蔵したコイル等を用いることもできる。
【0137】
また、上述の説明では、中継アンテナ30と無線式体温計10Aとを別体で形成した例を示したが、例えば、中継アンテナ30のベースフィルム31と、無線式体温計10Aの下面断熱体142とを一体形成してもよい。
【0138】
また、上述の説明では、ベースフィルム31とコイル電極32から中継アンテナ30を形成する例を示したが、ベースフィルム31を省略して、コイル電極32を、無線式体温計10Aの外側面に沿って形成してもよい。
【0139】
また、上述の説明では、中継アンテナ30と無線式体温計10Aとの組合せを説明したが、他の実施形態の無線式体温計と中継アンテナ30を組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0140】
10,10’,10A,10B,10C,10D−無線式体温計、20,20A−携帯型親端末、21,21A−制御部、22−送信信号生成部、23,23A−送受信部、24−親機側アンテナ、25,25A−計測部、251−周波数変換部、252,252A−温度検出部、253,253A−体温算出部、26−表示部、27−操作部、
30−中継アンテナ、31−ベースフィルム、32−コイル電極、
111,111A,111B,111C,112,112A,112B,112C−水晶振動子、121,121A,121B,121C,121BC,122,122A,122B,122C−コイル電極、130,130A,130B−断熱体、141−上面断熱体、142−下面断熱体、151−断熱体、160−RFID、900−人、900A−腕、1,1D−無線式体温測定システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の熱抵抗率を有する材質によって形成された断熱体と、
該断熱体の一方面に配置された第1の温度検出手段と、
前記断熱体を介して前記一方面と対向する他方面に配置された第2の温度検出手段と、
前記第1の温度検出手段から出力される第1検出信号を送信する第1アンテナと、
前記第2の温度検出手段から出力される第2検出信号を送信する第2アンテナと、を備え、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとが、それぞれ独立して個別に形成されている、無線式体温計。
【請求項2】
請求項1に記載の無線式体温計であって、
前記第1の温度検出手段と前記第2の温度検出手段とが、それぞれ複数配設されている、無線式体温計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線式体温計であって、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとが、前記断熱体を平面視して、該断熱体の一方面あるいは該一方面と対向する他方面の領域内に配置されている、無線式体温計。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の無線式体温計であって、
前記第1アンテナと前記第2アンテナは、外部のアンテナに対して磁界結合する巻回形のコイルによって形成されている、無線式体温計。
【請求項5】
請求項4に記載の無線式体温計であって、
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナよりも内径および外径が大きな巻回状導体を有し、該巻回状導体による共振周波数が第1検出信号および第2検出信号の周波数に略一致する中継アンテナを備え、
前記巻回状導体は、前記断熱体の外側面もしくは外側面よりも外方に、前記断熱体を囲むように配設されている、無線式体温計。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の無線式体温計であって、
前記第1の温度検出手段は、前記第1アンテナを構成する前記コイルの巻回形の中心側に配置され、
前記第2の温度検出手段は、前記第2アンテナを構成する前記コイルの巻回形の中心側に配置されている、無線式体温計。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の無線式体温計であって、
前記第1の温度検出手段と前記第2の温度検出手段は、外部からの無線信号によって動作するものであり、かつ前記第1アンテナと前記第2アンテナに直接接続されており、検出した温度を外部に伝達する機能を有する温度センサ素子である、無線式体温計。
【請求項8】
請求項7に記載の無線式体温計であって、
前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段は圧電共振子からなる、無線式体温計。
【請求項9】
請求項8に記載の無線式体温計であって、
前記圧電共振子は水晶振動子である、無線式体温計。
【請求項10】
請求項8に記載の無線式体温計であって、
前記圧電共振子は弾性表面波共振子である、無線式体温計。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の無線式体温計であって、
体温を算出する際に利用する校正用データを記憶させたRFIDを、前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段とは別に備える、無線式体温計。
【請求項12】
請求項11に記載の無線式体温計であって、
前記校正用データは、前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段の温度と周波数の相関データもしくは当該相関データから算出される第1の補正係数を含む、無線式体温計。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の無線式体温計であって、
前記校正用データは、前記断熱体の熱抵抗もしくは当該熱抵抗から算出される第2の補正係数を含む、無線式体温計。
【請求項14】
請求項7に記載の無線式体温計であって、
前記第1の温度検出手段および第2の温度検出手段の少なくとも一方は、温度センサを内蔵するRFID−ICである、無線式体温計。
【請求項15】
請求項14に記載の無線式体温計であって、
前記RFID−ICは、体温を算出する際に利用する校正用データを記憶している、無線式体温計。
【請求項16】
請求項1乃至請求項10、および請求項14のいずれか1項に記載の無線式体温計と、
該無線式体温計に対して、前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段に与える入力信号の送信、前記第1検出信号および前記第2検出信号の受信を行う親機と、を備えた無線式体温測定システムであって、
前記無線式体温計は被検温体の表面に装着され、
前記親機は、前記無線式体温計と無線通信する親機側アンテナ部と、
前記第1検出信号および前記第2検出信号に基づいて、前記被検温体の深部体温の計測を行う計測用処理部と、を備える、無線式体温測定システム。
【請求項17】
請求項11、請求項12、請求項13および請求項15のいずれか1項に記載の無線式体温計と、
該無線式体温計に対して、前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段に与える入力信号の送信、前記第1検出信号および前記第2検出信号の受信を行う親機と、を備えた無線式体温測定システムであって、
前記無線式体温計は被検温体の表面に装着され、
前記親機は、前記無線式体温計と無線通信する親機側アンテナ部と、
前記第1検出信号および前記第2検出信号と前記校正用データとを用いて、前記被検温体の深部体温の計測を行う計測用処理部と、を備える、無線式体温測定システム。
【請求項1】
所定の熱抵抗率を有する材質によって形成された断熱体と、
該断熱体の一方面に配置された第1の温度検出手段と、
前記断熱体を介して前記一方面と対向する他方面に配置された第2の温度検出手段と、
前記第1の温度検出手段から出力される第1検出信号を送信する第1アンテナと、
前記第2の温度検出手段から出力される第2検出信号を送信する第2アンテナと、を備え、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとが、それぞれ独立して個別に形成されている、無線式体温計。
【請求項2】
請求項1に記載の無線式体温計であって、
前記第1の温度検出手段と前記第2の温度検出手段とが、それぞれ複数配設されている、無線式体温計。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線式体温計であって、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとが、前記断熱体を平面視して、該断熱体の一方面あるいは該一方面と対向する他方面の領域内に配置されている、無線式体温計。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の無線式体温計であって、
前記第1アンテナと前記第2アンテナは、外部のアンテナに対して磁界結合する巻回形のコイルによって形成されている、無線式体温計。
【請求項5】
請求項4に記載の無線式体温計であって、
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナよりも内径および外径が大きな巻回状導体を有し、該巻回状導体による共振周波数が第1検出信号および第2検出信号の周波数に略一致する中継アンテナを備え、
前記巻回状導体は、前記断熱体の外側面もしくは外側面よりも外方に、前記断熱体を囲むように配設されている、無線式体温計。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の無線式体温計であって、
前記第1の温度検出手段は、前記第1アンテナを構成する前記コイルの巻回形の中心側に配置され、
前記第2の温度検出手段は、前記第2アンテナを構成する前記コイルの巻回形の中心側に配置されている、無線式体温計。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の無線式体温計であって、
前記第1の温度検出手段と前記第2の温度検出手段は、外部からの無線信号によって動作するものであり、かつ前記第1アンテナと前記第2アンテナに直接接続されており、検出した温度を外部に伝達する機能を有する温度センサ素子である、無線式体温計。
【請求項8】
請求項7に記載の無線式体温計であって、
前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段は圧電共振子からなる、無線式体温計。
【請求項9】
請求項8に記載の無線式体温計であって、
前記圧電共振子は水晶振動子である、無線式体温計。
【請求項10】
請求項8に記載の無線式体温計であって、
前記圧電共振子は弾性表面波共振子である、無線式体温計。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の無線式体温計であって、
体温を算出する際に利用する校正用データを記憶させたRFIDを、前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段とは別に備える、無線式体温計。
【請求項12】
請求項11に記載の無線式体温計であって、
前記校正用データは、前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段の温度と周波数の相関データもしくは当該相関データから算出される第1の補正係数を含む、無線式体温計。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の無線式体温計であって、
前記校正用データは、前記断熱体の熱抵抗もしくは当該熱抵抗から算出される第2の補正係数を含む、無線式体温計。
【請求項14】
請求項7に記載の無線式体温計であって、
前記第1の温度検出手段および第2の温度検出手段の少なくとも一方は、温度センサを内蔵するRFID−ICである、無線式体温計。
【請求項15】
請求項14に記載の無線式体温計であって、
前記RFID−ICは、体温を算出する際に利用する校正用データを記憶している、無線式体温計。
【請求項16】
請求項1乃至請求項10、および請求項14のいずれか1項に記載の無線式体温計と、
該無線式体温計に対して、前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段に与える入力信号の送信、前記第1検出信号および前記第2検出信号の受信を行う親機と、を備えた無線式体温測定システムであって、
前記無線式体温計は被検温体の表面に装着され、
前記親機は、前記無線式体温計と無線通信する親機側アンテナ部と、
前記第1検出信号および前記第2検出信号に基づいて、前記被検温体の深部体温の計測を行う計測用処理部と、を備える、無線式体温測定システム。
【請求項17】
請求項11、請求項12、請求項13および請求項15のいずれか1項に記載の無線式体温計と、
該無線式体温計に対して、前記第1の温度検出手段および前記第2の温度検出手段に与える入力信号の送信、前記第1検出信号および前記第2検出信号の受信を行う親機と、を備えた無線式体温測定システムであって、
前記無線式体温計は被検温体の表面に装着され、
前記親機は、前記無線式体温計と無線通信する親機側アンテナ部と、
前記第1検出信号および前記第2検出信号と前記校正用データとを用いて、前記被検温体の深部体温の計測を行う計測用処理部と、を備える、無線式体温測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−168155(P2012−168155A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171588(P2011−171588)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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