説明

無線料金決済システム用車載器

【課題】設定の手間を少なくしつつ、種々のユーザのニーズに対応した警告処理を行なうことができる無線料金決済システム用車載器を提供する。
【解決手段】カード情報と警告設定との対応関係を定めたカードリスト(図2)を記憶しておく。車両の電源ポジションがOFFになったときにICカード2が挿入状態である場合は、その対応関係と、実際に挿入されているICカード2から読み出したカード情報とに基づいて定まる警告処理を行う。よって、カード情報によって異なる警告設定をしておくことで、種々のニーズに対応した警告処理が可能となる。また、警告処理は、記憶部13に記憶されているカードリストに基づいて行うので、異なるカードを挿入する毎に操作を行う必要がないことから、手間も少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線料金決済システム用車載器に関し、特に、車両の電源ポジションがOFFになったときにカード抜き忘れに関する警告を行う機能を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
路側または施設に設置された料金決済機器と車載器との間で無線通信を行って料金決済を行うする無線料金決済システムが知られている。この無線料金決済システムとして、たとえば、自動料金収受システムが広く知られている。
【0003】
自動料金収受システムは、有料道路の料金所を車両が通過する際に車両と料金所に設置された料金所側機器との間で無線通信により料金の収受を行うシステムである。この自動料金収受システムは、ETC(Electronic Toll Collection)システムと呼ばれることが一般的であるので、本明細書でもETCシステムとの名称で呼ぶこともある。なお、ETCは登録商標である。
【0004】
このETCシステムに用いられる車載器(以下、ETC車載器ともいう)には、有料道路の通行料金決済のための情報が記憶されたカード(以下、ETCカードともいう)が挿入される。ETCカードがETC車載器に挿入されたままであると、ETCカードの盗難の恐れがある。そこで、電源が切断されるときにETCカードが抜かれていないことを検知すると、その旨を警告する機能を備えた車載器が提案されている(たとえば、特許文献1)。
【0005】
また、電源OFF時にカードが挿入されたままである場合に警告を行うか、或いは、警告を行わないかを切り替える機能を備えたETC車載器も市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−14500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ETCカードは、他人の車両に搭載されたETC車載器でも利用可能である。そのため、同じETC車載器であっても、ETC車載器が搭載された車両の所有者以外が所有するETCカードが挿入されることもある。また、ETCカードには、有料道路決済専用のカード(ETC専用カード)と、有料道路以外でも料金決済に利用可能な機能を備えたETCカード、すなわち、クレジット機能付のETCカードとがある。そのため、同じETC車載器であっても、異なる種類のETCカードが挿入されることもある。
【0008】
これらのことから、ETCカードによって警告設定を異ならせたいというユーザニーズが考えられる。たとえば、ETC専用カードについては警告しない設定にしたいが、クレジット機能付のETCカードについては警告するように設定したいというニーズが考えられる。また、自分が所有しているETCカードは警告OFFにしたいが、他人に一時的に借りたETCカードについては警告ONにしたいというニーズも考えられる。
【0009】
しかし、従来のETC車載器は、どのカードが挿入されているかによらず、抜き忘れに関する警告を行う、あるいは、行わないという設定の切替ができるにすぎない。そのため、ユーザのニーズに対応した警告処理ができないという問題があった。なお、仮に、従来のETC車載器においてカード毎に警告するかしないかを異ならせようとすれば、異なるカードを挿入する毎に設定をし直す必要があり非常に面倒である。
【0010】
無線料金決済システムとしては、上記ETCシステム以外に、駐車場、ガソリンスタンド等の種々施設や、有料道路の料金所以外の路側等で料金決済を行うシステムが知られており、ETCシステム以外の無線料金決済システムにおいては、主にクレジットカードを利用して料金決済を行なうことになる。
【0011】
また、ETCシステム以外の無線料金決済システムにおける車載器も、ETCシステム用車載器と同様、DSRC(Dedicated Short Range Communication 専用狭域通信) 規格が用いられる。そのため、1つの車載器をETCシステム用およびそれ以外の無線料金決済システム用の両方に用いることも可能である。
【0012】
ETCシステムにも、また、それ以外の無線料金決済システムにも利用可能な車載器(以下、単に、無線料金決済システム用車載器)の場合には、ETCシステム用車載器よりも種々のカードが挿入されることから、カードによって警告設定を異ならせたいというユーザニーズは、ETCシステム用車載器よりも、より大きいと考えられる。
【0013】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、設定の手間を少なくしつつ、種々のユーザのニーズに対応した警告処理を行なうことができる無線料金決済システム用車載器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、路側または施設に設置された料金決済機器との間で無線通信により料金の収受を行う無線料金決済システムに用いられ、料金決済のための情報が記憶されたカードが挿入される無線料金決済システム用車載器であって、カード情報と警告設定との間の対応関係を記憶する記憶部と、挿入されているカードからカード情報を読み出す読み出し部と、前記車両の電源ポジションがOFFになったときに前記カードが挿入状態である場合、前記読み出し部が読み出したカード情報および前記記憶部に記憶されている対応関係に基づいて定まる警告処理を行なう警告処理部とを備えていることを特徴とする。
【0015】
このように、本発明では、カード情報と警告設定との対応関係を記憶しており、車両の電源ポジションがOFFになったときにカードが挿入状態である場合は、その対応関係と、実際に挿入されているカードから読み出したカード情報とに基づいて定まる警告処理を行う。よって、カード情報によって異なる警告設定をしておくことで、種々のニーズに対応した警告処理が可能となる。また、警告処理は、記憶部に記憶されている対応関係に基づいて行うので、異なるカードを挿入する毎に操作を行う必要がないことから、手間も少なくなる。
【0016】
請求項2は、前記記憶部に記憶されている対応関係を、ユーザが行う対応関係設定操作に基づいて設定する対応関係設定部を備えることを特徴とする。このようにすれば、種々のカードに対して、実際に車載器を利用するユーザのニーズに適合した警告処理を行なうことができる。なお、対応関係の設定には、再設定、すなわち、対応関係の更新も含む。
【0017】
対応関係をユーザ操作に基づいて更新できるようにする場合、次の請求項3、4のようにすることができる。請求項3は、前記対応関係設定部は、カードの挿入時に読み出し部によって読み出されたカード情報に対する対応関係が前記記憶部に記憶されていない場合、そのカード情報に対する対応関係を設定することをユーザに求める報知を行い、その後にユーザが行う対応関係設定操作に基づいて、そのカード情報に対する対応関係を設定することを特徴とする。このようにすれば、ユーザは、そのカードに対する警告設定を忘れることが少なくなる。
【0018】
請求項4は、前記対応関係設定部は、カード挿入状態においてユーザによって設定開始操作が行われた後に、前記ユーザによって行われる対応関係設定操作に基づいて前記対応関係を設定することを特徴とする。このようにすれば、ユーザは、任意の時点で対応関係を設定することができる。なお、任意の時点で対応関係を設定することができる場合においても、前述の請求項3のように、カード挿入時に、対応関係を設定することをユーザに求めてもよい。
【0019】
記記憶部に記憶されている対応関係が、カード毎の識別符号と警告設定との対応関係である場合、対応関係を自動的に初期設定したり(請求項5)、あるいは、対応関係は自動的に設定しないが、対応関係が設定されていないカードに対して初期警告処理を行なったりしてもよい(請求項7)。
【0020】
請求項5は、前記記憶部に記憶されている対応関係が、カード毎の識別符号と警告設定との対応関係であり、前記対応関係設定部は、カードの挿入時に読み出し部によって読み出されたカード情報に対する対応関係が前記記憶部に記憶されていない場合、予め定められた初期警告設定をそのカード情報に対して行うことを特徴とする。
【0021】
このようにすれば、この初期警告設定とは異なる警告設定としたい場合に限り、ユーザは対応関係設定操作を行えばよい。よって、全てのカードに対して対応関係を設定しなくてもよくなるので、より設定の手間を少なくすることができる。
【0022】
上記初期警告設定は、たとえば、請求項6のように、クレジット機能付カードに対しては警告を行うが、クレジット機能なしカードに対しては警告を行わないという設定とすることができる。このようにすれば、盗難された場合に被害が大きくなる可能性が高いクレジット機能付カードの抜き取り忘れを防止しつつ、設定の手間や不要な警告も抑制できる。
【0023】
請求項7は、前記記憶部に記憶されている対応関係が、カード毎の識別符号と警告設定との対応関係であり、前記警告処理部は、前記車両の電源ポジションがOFFになったときに前記カードが挿入状態である場合であって、前記読み出し部が読み出したカード情報に対応する警告設定が前記記憶部に記憶されていない場合には、予め設定された初期設定の警告処理を行なうことを特徴とする。
【0024】
このようにすれば、初期設定の警告処理とは異なる警告処理を希望する場合に限り、ユーザは対応関係設定操作を行えばよい。よって、全てのカードに対して対応関係を設定しなくてもよくなるので、より設定の手間を少なくすることができる。
【0025】
上記初期設定は、請求項8のように、クレジット機能付カードに対しては警告を行うが、クレジット機能なしカードに対しては警告を行わないという設定とすることができる。このようにすれば、盗難された場合に被害が大きくなる可能性が高いクレジット機能付カードの抜き取り忘れを防止しつつ、設定の手間や不要な警告も抑制できる。
【0026】
また、請求項9は、前記記憶部に記憶されている対応関係は、クレジット機能付であるかクレジット機能なしであるかを示すカード種類情報と警告設定との対応関係であることを特徴とする。このようにしても、クレジット機能付のカードであれば警告を行うという警告処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明が適用されたETC車載器1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】記憶部13に記憶されているカードリストの一例を示す図である。
【図3】カード種類と警告設定との対応関係を示す図である。
【図4】本実施形態のETC車載器1の処理例である。
【図5】本実施形態のETC車載器1の処理例である。
【図6】本実施形態のETC車載器1の処理例である。
【図7】本実施形態のETC車載器1の処理例である。
【図8】警告設定ON用のリストの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、無線料金決済システムのうちのETCシステムに関するものであり、図1は、本発明が適用されたETC車載器1の全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、ETC車載器1は、無線部10、音声出力部11、外部機器接続部12、記憶部13、表示部14、入力操作部15、ICカードコネクタ16、ICカード制御部17、全体制御部18、電源部19などを備えて構成されている。
【0029】
無線部10は、例えば周知のDSRC技術を用いた無線通信部(図示せず)およびアンテナ10a含み、このアンテナ10aを介して路側に設置された路側アンテナ(図示せず)と料金収受のための無線通信を行う。
【0030】
音声出力部11は、全体制御部18からの指示に基づいて、カード抜き忘れに関する警告音声などをスピーカから音声出力する。
【0031】
外部機器接続部12は、例えば車内LAN(Local AreaNetwork)の通信インターフェース回路を含み、ナビゲーションシステムなどの外部機器とのデータの遣り取りを行う。
【0032】
記憶部13は、EEPROMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリからなり、ETCの利用履歴情報、やカード識別・認証情報等のETC利用に必要な情報が記憶される。また、この記憶部13には、挿入されたことのあるカードのリスト(カードリスト)も記憶されている。このカードリストは、挿入されたことのあるカードに対して、そのカード情報と警告設定とが対応づけられたものであり、このカードリストが請求項の対応関係に相当する。
【0033】
表示部14は、図示しないLEDやLCD等の表示器であり、全体制御部18から入力される信号に応じた表示(点灯や画像表示)を行う。入力操作部15は、ユーザーによって操作されるスイッチなどであり、例えば、上記カードリストの設定操作など、各種の情報を入力する際に用いられる。
【0034】
ICカードコネクタ16は、ETC車載器1からICカード2への電源供給や、ETC車載器1とICカード2との間のデータ交換のためのもので、ICカード2の表面に形成された複数の接触面と接触する複数の接点を有する。
【0035】
ICカード制御部17は、ICカードコネクタ16にICカード2が正常に装着されている状態で、そのICカード2との間で通信を行う。また、ICカード制御部17は、セキュリティー機能を有しており、ICカード2に記憶されている各種の情報を直接読み取られないように暗号化処理などを行う。電源部19は、例えば、ACCオンの状態で車両のバッテリーから電源供給がなされ、動作用の電源を各構成部に供給する。
【0036】
全体制御部18は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、マイクロコンピュータが制御プログラムを実行することにより、ETC車載器1の料金決済処理等の動作全般を制御する。
【0037】
この全体制御部18が行う処理として、料金決済処理以外に、上記ICカード2からカード情報を読み出す読み出し部としての処理、車両の電源ポジションがOFFになったときに行う警告処理部としての処理、記憶部21に記憶されているカードリストの設定処理(更新処理含む)がある。よって、全体制御部18は、特許請求の範囲の読み出し部、警告処理部、対応関係設定部としても機能する。これらの処理の詳細は後述する。
【0038】
ICカード2は、ICチップ(図示せず)が埋め込まれた例えばクレジットカードサイズのカードによって構成されており、ICチップには、ICカード制御部17とETC処理に関する各種制御を行い、必要に応じて記憶部21への各種データの書き込み、記憶部21からの各種データの読み出しを行う制御部20 、およびICカード2のカード情報として、所有者を特定する情報やICカード識別符号、カード種類情報(ETC専用カードであるかクレジット機能付であるかを示す情報)、ETCの利用履歴情報等が記憶される記憶部21が内蔵されている。
【0039】
次に、全体制御部18の読み出し部、警告処理部、対応関係設定部としての処理を説明する。まず、読み出し部としての処理を説明する。全体制御部18は、ICカード制御部17を介して、ICカードコネクタ16に装着されているICカード2からICカード識別符号、カード種類情報等、ICチップに記憶されているカード情報を読み出す。読み出すタイミングは、たとえばICカード2が挿入された時であり、ICカード2が挿入されたことは、ICカードコネクタ16の接点がICカード2の接触面と接触したことで検知する。
【0040】
次に、警告処理部としての処理を説明する。警告処理部は、ICカード2の抜き忘れに関する警告を、音声出力部11、表示部14のいずれか一方または両方から出力する処理である。
【0041】
この警告を行う時期は、車両の電源ポジションがOFFになったときである。ただし、電源ポジションがOFFになったときでも、ICカード2が抜き取られていれば、当然、警告は行わない。また、挿入されているICカード2が警告OFF設定になっている場合も警告は行わない。なお、電源ポジションがOFFになったときとは、キーをキーシリンダに挿入し、そのキーを回転させることでキースイッチの状態が切り替えられるタイプの車両においては、キースイッチ(イグニッションスイッチ)の位置がOFF位置になったことを判断したときである。また、キーをキーシリンダに挿入することなく、ボタン押下により、電源状態が切り替えられるタイプの車両においては、そのボタンによりOFF操作が行われたと判断したときである。
【0042】
挿入されているICカード2が警告OFF設定になっているか否かの判定は、記憶部13に記憶されているカードリストから、実際に挿入されているICカード2から読み出したカード情報に対応する設定を参照することで行う。
【0043】
図2に、上記カードリストの一例を示す。図2に示すカードリストには、ICカード識別符号を意味するカードID、カード種類、警告設定の関係が定められている。この図2に例示するようなカードリストから、実際に挿入されているICカード2から読み出したカード情報に対応する警告設定を参照することで、挿入されているICカード2が警告OFF設定になっているか否かを判定する。ただし、実際に挿入されているICカード2から読み出したカード情報に対応する警告設定がされていない場合、予め定められた初期設定の警告処理を行なう。
【0044】
この初期設定は、たとえば、カード種類によらず警告を行わないという設定でもよいし、また、カード種類がクレジット機能付の場合には警告を行うという設定でもよい。
【0045】
なお、図2において、カードID、カード種類は、いずれもカード情報であるので、図2のカードリストは、カードIDと警告設定との対応関係を示しているとともに、カード種類と警告設定との対応関係も示している。対応関係は、この図2の例に限られず、図3に示すように、カード種類と警告設定との対応関係のみを記憶していてもよいし、また、図示していないが、カードIDと警告設定との対応関係のみを記憶していてもよい。
【0046】
次に、対応関係設定部としての処理を説明する。対応関係設定部としての処理は、ユーザが行う対応関係設定操作に基づいて、図2に例示したようなカードリスト(対応関係)の設定を行う処理である。
【0047】
この処理の実行時は、カード挿入時およびユーザによって設定開始操作が行われた時の一方または両方である。カード挿入時には、ICカード2の情報を読み出し、読み出したカード情報に対応する警告設定の有無を判断する。そして、カード情報に対する警告設定がされていない場合、そのカード情報に対する警告設定を求める報知を行う。そして、その後にユーザが行う対応関係設定操作に基づいて、そのカード情報に対する警告設定を行う。
【0048】
なお、図2のカードリストには、カードID、カード種類の2つのカード情報が存在するが、いずれのカード情報に対しても警告設定がされていない場合に、カード情報に対する警告設定を求める報知を行ってもよく、また、いずれか一方のカード情報に対して警告設定がされていない場合に、警告設定を求める報知を行ってもよい。
【0049】
上記報知は、たとえば、「このカード(カードID)の抜き忘れ警告をONにしますか」といった、ユーザにYESかNOの回答を求める報知である。こうすると、ユーザはそのカードに対する警告設定を容易に行なうことができる。
【0050】
ユーザによって設定開始操作が行われたときも、カード挿入時と同様、「このカード(カードID)の抜き忘れ警告をONにしますか」といった、ユーザにYESかNOの回答を求める報知を行う。そして、その後、ユーザがYESまたはNOに対応する入力を入力操作部15から行うことで、カードに対する警告設定が行われる。
【0051】
なお、カード挿入時かユーザによって設定開始操作がされた時かによらず、カードIDに対する警告設定を行うか、カード種類に対する警告設定を行うかの切り替えができるようになっていることが好ましい。たとえば、最初の報知は、カードIDに対する抜き忘れ警告をON(またはOFF)にするか否かの報知とする。そして、所定の切り替え操作がユーザによって行われた場合は、挿入されているICカード2のカード種類に対する抜き忘れ警告をON(またはOFF)にするか否かの報知とすればよい。また、ICカードの種類は、専用カードとクレジット機能付カードの2種類であることから、警告設定は、(1)専用カード、クレジット機能付カードともに警告オンとする設定、(2)専用カードは警告オフ、クレジット機能付カードは警告オン、(3)いずれも警告オフの3態様のみである。そこで、挿入されているカードによらず、所定の1つまたは複数のキーを短押しまたは長押しする毎に、上記(1)〜(3)の設定が順に切り替えられるようにしてもよい。
【0052】
次に、本実施形態のETC車載器1の処理例を図4〜図7を用いて説明する。これら図4〜図7の例は、いずれも、カードリストに、挿入されたことのある全てのカードのカードIDが含まれており、カードID別に警告設定が定められている例である。
【0053】
まず、図4を説明する。図4の例は、挿入されたカードのカードIDがカードリストにない場合に、そのカードIDに対する警告設定をユーザに求めるようになっている場合の例である。
【0054】
図4のステップS10はユーザの操作ステップであり、ユーザはエンジンON操作を行う。次のステップS11もユーザの操作ステップである。ユーザは、ETC専用カードを挿入する。
【0055】
次のステップS12はETC車載器1の処理ステップである。このステップでは、挿入されたカードからカード情報を読み出し、読み出したカード情報とカードカードリストとを参照して、ステップS11で挿入されたカードが、今までに挿入されたことのない新しいカードかどうかを判定する。この例は、新しいカードであると判定した場合を示しており、「新しいカードが挿入されました。このカードの抜き忘れ警告をONにしますか?」という通知を行っている。
【0056】
次のステップS13はユーザの操作ステップであり、ユーザは、所定のNOボタンを押下している。これにより、ETC車載器1は、このカードIDに対する警告設定をOFFに設定する。
【0057】
次のステップS14もユーザの操作ステップであり、ユーザは、エンジンOFF操作を行っている。また、この時点において、S11で挿入されたカードは、まだ抜き取られていない。
【0058】
次のステップS15はETC車載器1の処理ステップである。エンジンOFF時にカードが抜き取られていないのであるが、抜き忘れ警告がOFFに設定されているので、ETC車載器1は警告を行わない。
【0059】
次に、図5を説明する。図5の例も図4と同様に、挿入されたカードのカードIDがカードリストにない場合に、そのカードIDに対する警告設定をユーザに求めるようになっている場合の例である。ただし、図4と図5では、ユーザの操作内容が異なり、その結果、ETC車載器1の処理も異なっている。
【0060】
図5において、ステップS20はユーザの操作ステップであり、ユーザはエンジンON操作を行う。次のステップS21もユーザの操作ステップである。ユーザは、ETC専用カードを抜き取り、代わりに、クレジット機能付カードを挿入する。
【0061】
次のステップS22はETC車載器1の処理ステップである。このステップでは、図4のステップS12と同様にして、挿入されたカードが、今までに挿入されたことのない新しいカードかどうかを判定する。図5の例も図4と同様、新しいカードであると判定した場合を示しており、「新しいカードが挿入されました。このカードの抜き忘れ警告をONにしますか?」という通知を行っている。
【0062】
次のステップS23はユーザの操作ステップであり、ユーザは、所定のYESボタンを押下している。これにより、ETC車載器1は、このカードIDに対する警告設定をONに設定する。
【0063】
次のステップS24もユーザの操作ステップであり、ユーザは、エンジンOFF操作を行っている。また、この時点において、S21で挿入されたカードは、まだ抜き取られていない。
【0064】
次のステップS25はETC車載器1の処理ステップである。エンジンOFF時にカードが抜き取られておらず、且つ、このカードに対する抜き忘れ警告がONに設定されている。そのため、ETC車載器1は、「カードが残っています。」という警告通知を行う。
【0065】
ステップS26はユーザの操作ステップであり、ステップS25の警告通知によりユーザはカードが残っていることに気づき、このステップS26において、カードを抜き取る。
【0066】
図4、図5の比較から分かるように、ETC車載器1は、ETC専用カードに対しては警告を行わない一方で、クレジット機能付カードに対しては警告を行うことができる。よって、ETC専用カードは挿入したままにしたいが、クレジット機能付カードについては警告をして欲しいというユーザのニーズに対応することができる。
【0067】
次に、図6を説明する。図6の例は、挿入されたカードのカードIDがカードリストにない場合に、そのカードIDに対する警告設定を自動的に初期警告設定(ここでは警告オンにする設定)にする例である。
【0068】
図6のステップS30はユーザの操作ステップであり、ユーザはエンジンON操作を行う。次のステップS31もユーザの操作ステップである。ユーザは、自分が所有するETC専用カードを挿入する。
【0069】
次のステップS32はETC車載器1の処理ステップである。このステップでは、図4,5のステップS12、22と同様にして、挿入されたカードが、今までに挿入されたことのない新しいカードかどうかを判定する。この図6の例も図4、図5と同様、新しいカードであると判定した場合を示している。ただし、図4、図5とは異なり、このステップS32では、自動的に抜き忘れ警告をONに設定する。
【0070】
次のステップS33はユーザの操作ステップである。ステップS33では、ユーザは、挿入中のカードに対する抜き忘れ警告をOFFに変更する操作を行う。これにより、カードリストのうち、挿入中のカードのカードIDに対する警告設定が変更される。
【0071】
次のステップS34もユーザの操作ステップであり、ユーザは、エンジンOFF操作を行っている。また、この時点において、S31で挿入されたカードは、まだ抜き取られていない。
【0072】
次のステップS35はETC車載器1の処理ステップである。エンジンOFF時にカードが抜き取られていないのであるが、抜き忘れ警告がOFFに設定されているので、ETC車載器1は警告を行わない。
【0073】
次に、図7を説明する。図7の例も図6と同様に、挿入されたカードのカードIDがカードリストにない場合に、そのカードIDに対する警告設定を自動的に初期警告設定(ここでは警告オンにする設定)にする例である。
【0074】
図6のステップS40はユーザの操作ステップであり、ユーザはエンジンON操作を行う。次のステップS41もユーザの操作ステップである。ユーザは、自分が所有するETC専用カードを抜き取り、代わりに、他人から借りたETCカードを挿入する。
【0075】
次のステップS42はETC車載器1の処理ステップである。このステップでは、図6と同様にして、挿入されたカードが、今までに挿入されたことのない新しいカードかどうかを判定する。この図7の例も図6と同様、新しいカードであると判定した場合を示している。よって、このステップS42では、自動的に抜き忘れ警告をONに設定する。
【0076】
次のステップS43はユーザの操作ステップであり、ユーザはETCカードを利用する。具体的には、ユーザの運転操作により有料道路の料金所を通過する。これにより、ETC車載器1はETCカードからカード情報を読み出して、料金所側機器に通行料金決済に必要な情報を送信する。
【0077】
次のステップS44もユーザの操作ステップであり、ユーザは、エンジンOFF操作を行っている。また、この時点において、S41で挿入されたカードは、まだ抜き取られていない。
【0078】
次のステップS45はETC車載器1の処理ステップである。エンジンOFF時にカードが抜き取られておらず、且つ、このカードに対する抜き忘れ警告がONに設定されている。そのため、ETC車載器1は、「カードが残っています。」という警告通知を行う。
【0079】
ステップS46はユーザの操作ステップであり、ステップS45の警告通知によりユーザはカードが残っていることに気づき、このステップS26において、カードを抜き取る。
【0080】
図6、図7の比較から分かるように、ETC車載器1は、自分のETCカードに対しては警告を行わない一方で、他人から借りたカードに対しては警告を行うことができる。よって、自分のカードは挿入したままにしたいが、他人から借りたカードについては警告をして欲しいというユーザのニーズに対応することができる。
【0081】
以上、説明したように、本実施形態のETC車載器1は、カード情報と警告設定との対応関係を定めたカードリストを記憶している。そして、車両の電源ポジションがOFFになったときにICカード2が挿入状態である場合は、その対応関係と、実際に挿入されているICカード2から読み出したカード情報とに基づいて定まる警告処理を行う。よって、カード情報によって異なる警告設定をしておくことで、種々のニーズに対応した警告処理が可能となる。また、警告処理は、記憶部13に記憶されているカードリストに基づいて行うので、異なるカードを挿入する毎に操作を行う必要がないことから、手間も少なくなる。
【0082】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0083】
たとえば、前述の実施形態では、本発明をETCシステム用車載器に適用していたが、本発明は、ETCシステム以外の無線料金決済システム(たとえば、駐車場やガソリンスタンドなどにおける無線料金決済システム)に用いる車載器や、ETCシステムとそれ以外の無線料金決済システムの両方に用いることができる車載器に適用することもできる。この場合においても、図2、3に示すような対応関係を予め記憶しておき、電源ポジションがオフとなったときにカードが挿入状態である場合には、挿入されているカードのカード情報と予め記憶している対応関係とに基づいて定まる警告処理を行なえばよい。
【0084】
また、前述の実施形態では、カードリストにてカードIDと警告設定との対応関係が設定されているのは、挿入されたことがあるカードに限られていた。しかし、この態様に限られず、たとえば、カードIDを入力できるようにするなどして、挿入されたことがないカードについてカードIDと警告設定との対応関係が設定できるようになっていてもよい。
【0085】
また、図2のカードリストは、警告設定として2種類の内容、すなわち、オンまたはオフが存在したが、この図2のリストに代えて、警告設定OFF用のリストや警告設定ON用のリストを用いてもよい。図8は、警告設定ON用のリストの一例であり、このようなリストを用いる場合には、カードIDがリストにないカードについては警告設定がOFFであるとして警告処理を行なう。
【符号の説明】
【0086】
1:ETC車載器(自動料金収受システム用車載器)、 2:ICカード、 10:無線部、 10a:アンテナ、 11:音声出力部、 12:外部機器接続部、 13:記憶部、 14:表示部、 15:入力操作部、 16:ICカードコネクタ、 17:ICカード制御部、 18:全体制御部(読み出し部、警告処理部、対応関係設定部)、 19:電源部、 20:制御部、 21:記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側または施設に設置された料金決済機器との間で無線通信により料金の収受を行う無線料金決済システムに用いられ、料金決済のための情報が記憶されたカードが挿入される無線料金決済システム用車載器であって、
カード情報と警告設定との間の対応関係を記憶する記憶部と、
挿入されているカードからカード情報を読み出す読み出し部と、
前記車両の電源ポジションがオフになったときに前記カードが挿入状態である場合、前記読み出し部が読み出したカード情報および前記記憶部に記憶されている対応関係に基づいて定まる警告処理を行なう警告処理部とを備えていることを特徴とする無線料金決済システム用車載器。
【請求項2】
請求項1において、
前記記憶部に記憶されている対応関係を、ユーザが行う対応関係設定操作に基づいて設定する対応関係設定部を備えることを特徴とする無線料金決済システム用車載器。
【請求項3】
請求項2において、
前記対応関係設定部は、カードの挿入時に読み出し部によって読み出されたカード情報に対する対応関係が前記記憶部に記憶されていない場合、そのカード情報に対する対応関係を設定することをユーザに求める報知を行い、その後にユーザが行う対応関係設定操作に基づいて、そのカード情報に対する対応関係を設定することを特徴とする無線料金決済システム用車載器。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記対応関係設定部は、カード挿入状態においてユーザによって設定開始操作が行われた後に、前記ユーザによって行われる対応関係設定操作に基づいて前記対応関係を設定することを特徴とする無線料金決済システム用車載器。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項において、
前記記憶部に記憶されている対応関係が、カード毎の識別符号と警告設定との対応関係であり、
前記対応関係設定部は、カードの挿入時に読み出し部によって読み出されたカード情報に対する対応関係が前記記憶部に記憶されていない場合、予め定められた初期警告設定をそのカード情報に対して行うことを特徴とする無線料金決済システム用車載器。
【請求項6】
請求項5において、
前記初期警告設定が、クレジット機能付カードに対しては警告を行うが、クレジット機能なしカードに対しては警告を行わないという設定であることを特徴とする無線料金決済システム用車載器。
【請求項7】
請求項2〜4のいずれか1項において、
前記記憶部に記憶されている対応関係が、カード毎の識別符号と警告設定との対応関係であり、
前記警告処理部は、前記車両の電源ポジションがオフになったときに前記カードが挿入状態である場合であって、前記読み出し部が読み出したカード情報に対応する警告設定が前記記憶部に記憶されていない場合には、予め設定された初期設定の警告処理を行なうことを特徴とする無線料金決済システム用車載器。
【請求項8】
請求項7において、
前記初期設定が、クレジット機能付カードに対しては警告を行うが、クレジット機能なしカードに対しては警告を行わないという設定であることを特徴とする無線料金決済システム用車載器。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記記憶部に記憶されている対応関係は、クレジット機能付であるかクレジット機能なしであるかを示すカード種類情報と警告設定との対応関係であることを特徴とする無線料金決済システム用車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−198294(P2011−198294A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66898(P2010−66898)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】