無線監視システム
【課題】無線監視システムにおいて、安価な構成で、カメラ装置とモニタ装置との間で高感度かつ高速な通信を行う。
【解決手段】すべてのカメラ装置2からの送信を停止させた状態でノイズを測定した後、方向を設定するカメラ装置2から送信された信号を受信してSN比を算出し、カメラ装置2の方向をSN比に基づいて設定する。カメラ装置2から送信された通信要求信号を受信すると、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を通信を開始するカメラ装置2の方向に合わせてアンテナ特性を高感度化する。
【解決手段】すべてのカメラ装置2からの送信を停止させた状態でノイズを測定した後、方向を設定するカメラ装置2から送信された信号を受信してSN比を算出し、カメラ装置2の方向をSN比に基づいて設定する。カメラ装置2から送信された通信要求信号を受信すると、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を通信を開始するカメラ装置2の方向に合わせてアンテナ特性を高感度化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に無線通信可能なカメラ装置とモニタ装置を用いた無線監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から戸建や集合住宅等の住宅内、又は事業所等の非住宅内で侵入者や不審者等を監視する監視システムにおいては、カメラ装置の設置の便宜を図るために、カメラ装置とモニタ装置の相互間において無線通信により画像データ等を送受信する無線監視システムが使用されている。例えば、特許文献1には、カメラ装置の周辺に無線センサを配置し、相互に無線通信することにより、親機であるモニタ装置と無線センサとの通信を廃して、モニタ装置の負荷を軽減する無線監視システムが示されている。
【0003】
カメラ装置とモニタ装置との間の通信においては、長距離通信を可能とするために、通常、スペクトラム拡散やOFDM(直交波周波数分割多重)などの複雑な変復調方式を用いたり、誤り訂正符号などを追加したりしていた。
【特許文献1】特開2004−128659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらスペクトラム拡散やOFDMなどの変復調方式はシステム構成が複雑になりコストが増大してしまうという課題があり、また誤り訂正符号は使用可能な周波数帯域が限られている無線伝送において伝送速度の上限を高くできないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡素でかつ安価な構成でありながらも、カメラ装置とモニタ装置との間で高感度かつ高速な通信を行うことができる無線監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、画像を撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像のデータを無線により送信する送信手段とを有し、特定の場所に設置される複数のカメラ装置と、前記カメラ装置の送信手段から送信された無線信号を受信するための複数のアンテナ及び該アンテナの指向性を変更するための位相変更手段を有するフェーズドアレイアンテナと、このフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号を復調する信号復調手段と、この信号復調手段によって復調された信号にフィルタをかけるフィルタ手段と、このフィルタ手段を通過した信号に基づいて画像を表示する表示手段と、前記位相変更手段、信号復調手段、フィルタ手段及び表示手段を制御する制御手段とを有するモニタ装置とを備えた無線監視システムにおいて、前記制御手段は、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、いずれかのカメラ装置からカメラIDを含む信号を送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら前記所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記ノイズの受信強度のSN比を算出し、この算出したSN比に基づいて前記カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となるフェーズドアレイアンテナの指向方向を決定し、記憶し、各カメラ装置との通信の際に、記憶した方向にフェーズドアレイアンテナの指向性を合わせることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の無線監視システムにおいて、前記モニタ装置は、前記複数のカメラ装置との間で、同一の周波数チャンネルを用いて相互に無線通信することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の無線監視システムにおいて、複数の前記カメラ装置と、複数の前記モニタ装置とを備え、各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルを用いて前記複数のカメラ装置と、前記複数のモニタ装置とが相互に無線通信し、前記制御手段は、自己以外のいずれかのモニタ装置に割り当てられている第1周波数チャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に自己に割り当てられている第2周波数チャンネルにおける受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、前記第2周波数チャンネルで、いずれかのカメラ装置からカメラIDを含む信号を送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら前記所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記ノイズの受信強度のSN比を算出することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の無線監視システムにおいて、複数の前記カメラ装置と、3以上の前記モニタ装置とを備え、各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルを用いて前記カメラ装置と、前記モニタ装置とが相互に無線通信し、前記制御手段は、各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルのうち自己に割り当てられた周波数チャンネルに隣接するチャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶することを特徴とする。
【0010】
請求項5発明は、前記制御手段は、請求項2に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、別のシステムのカメラ装置に隣接するカメラ装置から前記別のシステム内の通信に用いられる周波数チャンネルで送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶することを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、特定の時刻毎に、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これを特定の時刻毎のノイズの受信強度として記憶し、前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記特定の時刻毎のノイズの受信強度からSN比を算出し、この算出したSN比に基づいて特定の時刻毎の前記カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となる前記フェーズドアレイアンテナの指向方向を認識し、記憶することを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、前記フェーズドアレイアンテナが無指向状態となるように前記位相変更手段を制御し、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、該通信許可要求信号に含まれるカメラIDから通信許可要求信号を送信したカメラ装置を特定し、記憶している該カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となる前記フェーズドアレイアンテナの指向性が得られるように前記位相変更手段を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載の無線監視システムにおいて、前記フィルタ手段は、第1帯域の信号を通過させる第1帯域フィルタと、前記第1帯域よりも広い第2帯域の信号を通過させる第2帯域フィルタとを有し、いずれかのフィルタを択一的に選択可能であり、前記制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、前記第1帯域フィルタを選択するように前記フィルタ手段を制御し、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、前記第2帯域フィルタを選択するように前記フィルタ手段を制御し、高速通信モードで画像データを受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、制御手段が、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、所定の方向毎に信号の受信強度とノイズの受信強度のSN比を算出し、カメラ装置と通信を行うにあたってSN比が最大となるフェーズドアレイアンテナの指向方向を認識し、記憶する。これにより、周囲環境で発生する定常的なノイズの影響を加味した上で、通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナの指向性を設定することができ、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく簡素でかつ安価な構成で、カメラ装置とモニタ装置との間で高感度な通信を行うことができる。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、モニタ装置は、複数のカメラ装置との間で、同一の周波数チャンネルを用いて相互に無線通信するので、1つの周波数帯域を用いてシステムを構成するすべてのカメラ装置と通信することができる。これにより、他の無線通信システムとの共存が容易なものとなる。
【0016】
請求項3の発明によれば、1つの無線監視システムにおいて複数のモニタ装置によって複数のカメラ装置で撮影した画像を、同時にかつ別々に確認することができる。このとき、モニタ装置にとっては、別のモニタ装置に送信される信号はノイズとなり、通信に影響を及す可能性がある。そこで、制御手段が、自己以外のいずれかのモニタ装置に割り当てられている第1周波数チャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させて受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として予め記憶してSN比を算出する。これにより、システム内で他の周波数チャンネル(第1周波数チャンネル)によって同時に通信がなされている場合、自己に割り当てられた周波数帯域内に漏洩する第1周波数チャンネルの電波によるノイズの影響を加味した上で、通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナの指向性を設定することができ、カメラ装置とモニタ装置との間でより一層高感度な通信を行うことができるようになる。
【0017】
請求項4の発明によれば、複数のカメラ装置と3以上のモニタ装置とを備えた無線監視システムにおいて、制御手段が、自己に割り当てられた周波数チャンネルに隣接するチャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させ、受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶する。これにより、通信に影響を及す可能性のある周波数チャンネルの信号のみをノイズとみなしてSN比を算出するので、その算出処理を容易かつ迅速に行うことができるようになる。
【0018】
請求項5の発明によれば、制御手段が、別のシステムのカメラ装置に隣接するカメラ装置から別のシステム内の通信に用いられる周波数チャンネルで送信させ、受信した信号をノイズとみなしてSN比を算出する。そのため、別のシステムのカメラ装置が隣接する位置に配置された場合であっても、フェーズドアレイアンテナの指向性を通信に最適な方向に合わせることができるようになる。
【0019】
請求項6の発明によれば、特定の時刻毎に、ノイズの受信強度を測定してSN比を算出するので、時間帯によって規則的に変動する周囲環境から発生するノイズの影響を加味した上で、通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナの指向性を設定することができ、カメラ装置とモニタ装置との間でより一層高感度な通信を行うことができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、フェーズドアレイアンテナが無指向状態となるように位相変更手段を制御する。これにより、通信エリア内の全方位においてカメラ装置からの通信を待ち受けることができる。一方、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、制御手段は、フェーズドアレイアンテナの指向性を該カメラ装置の方向に合わせるように位相変更手段を制御するので、該カメラ装置から送信されフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号の受信強度を高めることができる。これにより、カメラ装置との通信の安定性を高めることができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、第1帯域フィルタを選択するようにフィルタ手段を制御するので、信号復調手段によって復調された信号に混入しているノイズを効果的に除去することができる。よって、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく、受信の高感度化を図りカメラ装置との通信距離を長距離化することができる。一方、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、制御手段は、第2帯域フィルタを選択するようにフィルタ手段を制御するので、カメラ装置との間で広帯域の電波を用いて高速な通信を行えるようになる。これにより、例えばカメラ装置で撮像した分解能の高い(高解像度かつ高フレームレート)動画を高いビットレートで送受信することができ、従来は曖昧であった画像の細部をより正確に把握することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施形態1)
本発明の一実施形態による無線監視システムについて図面を参照して説明する。図1は住居等の設備として備え付けられる無線監視システムを示している。無線監視システム1は、複数のカメラ装置2と、各カメラ装置2によって撮像された画像を表示するモニタ装置3等によって構成されている。各カメラ装置2とモニタ装置3とは、同一の周波数チャンネルを用いて無線によって相互に通信可能である。
【0023】
カメラ装置2は、画像を撮像して電子データとして出力するCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子(撮像手段)21と、撮像素子21が撮像した画像の電子データ等を無線により送受信する送受信部(送信手段)22等を有している。カメラ装置2は、例えば住居等の要所に設置される。
【0024】
モニタ装置3は、フェーズドアレイアンテナ(位相配列アンテナ)30、送受信切替スイッチ33、受信部34、フィルタ部35、送信部36、ベースバンド処理部37、表示部38、制御部(制御手段)39等によって構成されている。フェーズドアレイアンテナ30は、例えば平面上に配列された複数のアンテナ31a、31b、31c、31d...及びそれらに対応する位相変換器32a、32b、32c、32d...等を有し、各アンテナ31a、31b、31c、31d...の放射する電波の位相を変換(移相)することによってその指向性を変更し、各カメラ装置2の送受信部22との間で無線信号を送受信する。各アンテナ31a、31b、31c、31d...の放射する電波の位相は、位相変換部32によって変換される。送受信切替スイッチ33は、制御部39から出力された制御信号に応じてモニタ装置3の送受信動作を切り替える。受信部34は、フェーズドアレイアンテナ30を介して電波を受信するチューナ34aと、チューナ34aによって受信された信号を復調する受信復調部(信号復調手段)34b等を有している。なお、フェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナ31a、31b、31c、31d...及び位相変換器32a、32b、32c、32d...は、適宜増減可能である。基本原理として、アンテナ31a、31b、31c、31d...の本数を増やすことによりフェーズドアレイアンテナ30の指向性が高まる傾向にあるため、高い指向性が必要な場合はアンテナ31a、31b、31c、31d...の本数を増やせばよい。
【0025】
フィルタ部35は、受信復調部34bによって復調された受信ベースバンド信号の不要成分にフィルタをかけ、受信感度を高める。フィルタ部35は、比較的狭い第1帯域の受信ベースバンド信号を通過させる狭帯域フィルタ(第1帯域フィルタ)35aと、第1帯域よりも広い第2帯域の受信ベースバンド信号を通過させる広帯域フィルタ(第2帯域フィルタ)35bとを有し、制御部39から出力された制御信号に応じていずれかのフィルタを択一的に選択可能に構成されている。すなわち、狭帯域フィルタ35a及び広帯域フィルタ35bは、フィルタ部35に設けられているフィルタ切り替えスイッチ(図示せず)にて選択される。送信部36は、送受信切替スイッチ33、位相変換部32及びフェーズドアレイアンテナ30を介してカメラ装置2に信号を送信する。ベースバンド処理部37は、送受信するベースバンド信号を処理する。表示部38は、ベースバンド処理部37によって処理された信号に基づいて画像を表示する。より具体的には、いずれかのカメラ装置2によって撮像された画像が表示部38に表示される。制御部39は、モニタ装置3の上記各部の制御を司る。制御部39は、各カメラ装置2が設置されている方向を記憶しており、その方向に合わせてフェーズドアレイアンテナ30の指向性を制御する。
【0026】
図2はフェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナ31a、31b、31c、31dの配置を、図3は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をそれぞれ示している。本実施形態においては、アンテナ31a、31b、31c、31dとして4本の半波長ダイポールアンテナを適用している。アンテナ31a、31b、31c、31dは、通信に用いる電波の波長をλとすると、図2(b)に示すように平面視で一辺がλ/4の正方形の頂点に、正方形の平面に垂直に配置されている。上述のごとくアンテナ31a、31b、31c、31dを配置し、位相変換器32a、32b、32c、32d...によって移相を行うことにより、X−Y平面上のアンテナ指向性を制御することができる。
【0027】
図2(b)中、A方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせたときのフェーズドアレイアンテナ30の指向性パターンを図3(a)に、D方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせたときのフェーズドアレイアンテナ30の指向性パターンを図3(b)にそれぞれ示している。フェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせた方向の利得が最も高くなり、その周辺領域の利得も高められている。
【0028】
図4は、各カメラ装置2とモニタ装置3との通信状態とフェーズドアレイアンテナ30の指向性を示している。モニタ装置3は、通常の通信待受モードと高速通信モードで動作する。通常の通信待受モードとは、いずれかのカメラ装置2からの通信開始を待ち受けているモードである。高速通信モードとは、通信を開始したカメラ装置2との間で画像データ等を高速に通信するモードである。
【0029】
通常の通信待受モードにおいては、図4(a)に示すように、制御部39は、いずれのカメラ装置2とも通信可能なように、フェーズドアレイアンテナ30を無指向状態となるように制御する。また、このとき、制御部39は、狭帯域フィルタ35aを選択するように制御し、受信ベースバンドフィルタを狭帯域としている(通常待受状態)。これは、カメラ装置2からの通信許可要求信号が低速であり、モニタ装置3のベースバンドフィルタの帯域が狭くなるほどノイズが除去されてSN比が大きくなり、感度が高まって通信エリアを拡大することができるからである。例えば、高速通信モードにおける伝送速度は16Mbpsであるのに対して、カメラ装置2からの通信許可要求信号の伝送速度を1.6Mbps程度とすると、狭帯域フィルタ35aを用いて通信することができる。この場合、10log10=10dBの感度向上が期待できる。このように、アンテナを無指向性とし、狭帯域フィルタ35aを用いる場合、広帯域フィルタ35bを用いる場合に比べて雑音量(ノイズ)が少なくなり、全方向に対して信号のSN比を向上させ通信距離を長距離化することができる。
【0030】
一方、高速通信モードにおいては、受信ベースバンドフィルタを広帯域化しなければならず、それにより受信感度が劣化するという問題が生ずる。そこで、図4(b)に示すように、本実施形態においては、モニタ装置3が例えばカメラ装置2Aから送信された通信許可要求信号を受信すると、制御部39は、広帯域フィルタ35bを選択して受信ベースバンドフィルタを広帯域化することに加え、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を通信を開始するカメラ装置2Aの方向に合わせて、結果として感度を劣化させることなく高速通信を実現することができる(高速通信状態)。ここでいう「カメラ装置2Aの方向」とは、例えば、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をその方向に向けたとき、受信強度(受信信号の電界強度)又はSN比が最大となる方向のことであり、カメラ装置2Aと通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナ30の指向方向をいう(周辺の電波伝搬環境により、カメラ装置2Aが存在する方向と一致するとは限らない)。
【0031】
図5は、無線監視システム1において、モニタ装置3の動作モードを通常の通信待受モードから高速通信モードに切り替えて通信を開始する手順を示している。モニタ装置3は、通常の通信待受モードでカメラ装置2からの通信を待ち受けている状態では、どこに設置されたカメラ装置2とも通信が可能な状態となっている(#1)。いずれかのカメラ装置2に何らかのトリガ入力がなされ、それに応じてそのカメラ装置2から通信許可要求信号が送信されると(#2においてYES)、モニタ装置3がその通信許可要求信号を受信する(#3)。モニタ装置3の制御部39は、その受信した信号に含まれるカメラIDから通信を開始するカメラ装置2の方向を特定し(#4)、モニタ装置3の動作モードを高速通信モードに切り替えて、カメラ装置2に通信許可信号を送信する(#5)。このとき、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を通信を開始するカメラ装置2の方向に合わせると共に、広帯域フィルタ35bを選択して受信ベースバンドフィルタを広帯域化する。カメラ装置2が、上記通信許可信号を受信すると(#6においてYES)、カメラ装置2からモニタ装置3に画像データの高速伝送を開始する(#7)。これにより、いずれかのカメラ装置2とモニタ装置3との間で1対1の通信がなされる。
【0032】
本実施形態においては、モニタ装置3の制御部39は、図6に示すテーブルにて各カメラ装置2に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置2の方向を記憶し、通信を開始するカメラ装置2の方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせる。
【0033】
図6(a)は、モニタ装置3からみた各カメラ装置2の方向を、図6(b)は、モニタ装置3の制御部39が各カメラ装置2に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置2の方向を記憶するためのテーブルをそれぞれ示している。カメラ装置2A乃至2Dには、それぞれカメラID001〜100が割り当てられ、A方向〜H方向には、図6(a)に示すように、方向コードとして000〜111が割り当てられている。制御部39は、カメラ装置毎にカメラIDと方向コードとを対応づけて記憶し、その方向コードを読み込むことにより各カメラ装置2A乃至2Dが設置されている方向を特定し、通信を開始するカメラ装置2の方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせる。
【0034】
図7は、図6(b)に示したテーブルを作成し、それに基づいてカメラ装置2との通信を開始する手順を示している。テーブルの作成は、例えば、いずれかのカメラ装置2が設置され、モニタ装置3及びカメラ装置2の電源がオンされたとき行うものとする。モニタ装置3及びカメラ装置2の電源がオンされると(#11)、カメラ装置2から自己のカメラIDを含む信号が送信され、それを受信したモニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2のカメラIDを登録する(#12)。例えば、図6(b)においては、4個のカメラ装置2のカメラID001〜100を登録しているが、8個のカメラ装置2のカメラID000〜111まで登録可能である。すべてのカメラ装置2のカメラIDの登録が完了すると(#13においてYES)、モニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2のカメラ方向の設定を開始する(#14)。まず、モニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2の方向を認識し(#15)、その方向コードを記憶することによりテーブルを作成する(#16)。本実施形態においては、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA〜Hの8方向に設定可能であり、カメラ装置2がA〜Hの8方向のうちどの方向に相当するかを認識し、カメラ装置2の方向を設定する。カメラ装置2の方向の設定は、システム管理者が手動にてテーブルを完成させることにより行うものとしてもよいが、制御部39が、自動的に行うようにしてもよい。すべてのカメラ装置2の方向の設定を完了するまで#15、#16の処理を繰り返し(#17においてNO)、完了すると(#17においてYES)、処理を終了する。
【0035】
以上の手順により、図6(b)に示したテーブルが作成され、制御部39は、このテーブルを参照することにより、図5中#4において通信を開始するカメラ装置2の方向を特定することができる。例えば、モニタ装置3が図5中#3において受信した通信許可要求信号に含まれるカメラIDが001である場合、制御部39は、それに対応する方向コード001からカメラ装置2がB方向に設置されていると判断し、位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御してフェーズドアレイアンテナ30の指向性をB方向に設定する。図6(b)に示したテーブルを用いることにより、制御部39として1つのマイクロコンピュータでフェーズドアレイアンテナ30の指向性を制御できるようになるため、同等の機能をハードウェアで実現する場合と比べて、システムの管理が容易となり、低コスト化が図れる。ここでは、接続可能なカメラ台数と設置方向をそれぞれ8台、8方向としているが、ターゲットとなるシステムに応じて適宜増減が可能である。
【0036】
以下、図7に示す#15において、モニタ装置3の制御部39が、カメラ装置2の方向を認識する手順について説明する。既に述べたように、図2に示すようにアンテナ31a、31b、31c、31dを配置し、位相変換器32a、32b、32c、32d...によって移相を行うことにより、X-Y平面上のアンテナ指向性を制御することができる。
【0037】
図8は、アンテナ指向性と移相量の関係を示している。ここでは無指向性を得る場合と、Z軸の周りに45゜刻みで8方向の指向性を得る場合の合計9通りについて対応する移相量を示したが、移相量を適宜調整することにより、さらに細かく指向性を制御することも可能である。無線監視システム1は、大別して学習モードと通信モードの2つの動作モードをもつ。学習モードは、モニタ装置3が各カメラ装置2に対して最適なアンテナ指向性を割り当てるためのモードであり、主として無線監視システム1の設置後、通信モードに入る前に実施する。通信モードは、モニタ装置3と各カメラ装置2との間で通信を行うためのモードであり、上記高速通信モードと通信待受モードを含む。
【0038】
学習モードにおいて、モニタ装置3は、位相変換器32a(移相器PS1)、32b(移相器PS2)、32c(移相器PS3)、32d(移相器PS4)の移相量をすべて0に設定し、アンテナ指向性を無指向にする。ここでカメラ装置2Aから、カメラ装置2AのID情報を含むテスト信号を連続的に送信させる。モニタ装置3はカメラ装置2Aからのテスト信号を受信すると、まず移相器PS1〜PS4の移相量をそれぞれ90°、90°、0°、0°に設定する。このように移相量を設定すると、アンテナの指向性は図8に示したようにA方向に設定され、このときの受信信号強度をベースバンド処理部37内の記憶部に記憶させる。次に移相器PS1〜PS4の移相量をそれぞれ64°、0°、−64°、0°に設定する。このように移相量を設定すると、アンテナの指向性はB方向に設定され、このときの受信信号強度をベースバンド処理部37内の記憶部に記憶させる。以下同様に、8通りのアンテナ指向性に対して、それぞれの場合における受信信号強度を求める。その結果、最も受信信号強度が強くなったアンテナの指向性の方向にカメラ装置2Aが存在すると判断し、図6におけるテーブルに記憶する。カメラ装置2B〜2Dに関しても同様に、方向を認識してテーブルに記憶する。移相器PS1〜PS4の移相量を適宜設定することにより、アンテナ指向性を1゜ずつ変更し、その受信強度に基づいてカメラ装置2Aの方向を認識するものとしてもよい。
【0039】
図9は、モニタ装置3の制御部39が、カメラ装置2の方向を認識する手順を示している。このフローチャートでは、A方向から時計回りにH方向まで順次アンテナの指向性を45゜ずつ変更して、受信強度を測定する例を示している(以下、図11、図13、図15においても同様)。モニタ装置3の制御部39は、まず、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせて(#31)、すべてのカメラ装置2からの送信を停止させた状態で受信強度を測定し、その値をA方向のノイズの受信強度として記憶する(#32)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#33においてNO、#34)、#32に戻る。こうして#32、#33及び#34の処理を繰り返して、すべての方向のノイズの受信強度を記憶すると(#33においてYES)、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を無指向に設定する(#35)。
【0040】
そして、制御部39は、方向を設定するカメラ装置2からカメラIDを含む信号を連続的に送信させ(#36)、モニタ装置3が信号を受信すると(#37)、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせる(#38)。モニタ装置3が信号を受信すると(#39)、制御部39は、#39における受信信号強度と#32において記憶したノイズの受信強度からA方向のSN比を算出し、記憶する(#40)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#41においてNO、#42)、#39に戻る。こうして#39、#40、#41及び#42の処理を繰り返して、すべての方向のSN比を記憶すると(#41においてYES)、制御部39は、SN比が最大の方向をカメラ装置の方向として記憶し(#43)、処理を終了する。
【0041】
実施形態1の無線監視システム1によれば、制御部39が、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、各方向毎に信号の受信強度とノイズの受信強度のSN比を算出し、カメラ装置2と通信を行うにあたってSN比が最大となるフェーズドアレイアンテナの指向方向を認識し、記憶する。これにより、周囲環境で発生する定常的なノイズの影響を加味した上で、カメラ装置2と通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナ30の指向性を設定することができ、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく安価な構成で、カメラ装置2とモニタ装置3との間で高感度な通信を行うことができる。また、モニタ装置3は、複数のカメラ装置2との間で、同一の周波数チャンネルを用いて相互に無線通信するので、1つの周波数帯域を用いてシステムを構成するすべてのカメラ装置2と通信することができる。これにより、他の無線通信システムとの共存が容易なものとなる。
【0042】
また、制御部39は、通常の通信待受モードにおいて、フェーズドアレイアンテナ30が無指向状態となるように位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御する。これにより、通信エリア内の全方位においてカメラ装置2からの通信を待ち受けることができる。一方、いずれかのカメラ装置2から送信された通信許可要求信号を受信したとき、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を該カメラ装置2の方向に向けるように位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御するので、該カメラ装置2から送信されフェーズドアレイアンテナ30によって受信される無線信号の受信強度を高めることができる。これにより、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく、受信の高感度化を図りカメラ装置2との通信距離を長距離化することができる。
【0043】
また、制御部39は、通常の通信待受モードにおいて、狭帯域フィルタ35aを選択するようにフィルタ部35を制御するので、受信復調部34bによって復調された信号に混入しているノイズを効果的に除去することができる。よって、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく、受信感度を高めてカメラ装置2との通信の安定性を高めることができる。一方、いずれかのカメラ装置2から送信された通信許可要求信号を受信したとき、制御部39は、広帯域フィルタ35bを選択するようにフィルタ部35を制御するので、カメラ装置2との間で広帯域の電波を用いて高速な通信を行えるようになる。これにより、例えばカメラ装置2で撮像した分解能の高い(高解像度かつ高フレームレート)動画を高いビットレートで送受信することができ、従来は曖昧であった画像の細部をより正確に把握することが可能となる。
【0044】
(実施形態2)
本発明の別の実施形態による無線監視システムについて図10、11を参照して説明する。図10に示すように、実施形態2の無線監視システム1は、複数のカメラ装置2A〜2D及び2つのモニタ装置3A、3Bを備えている。モニタ装置3Aは自己に割り当てられた周波数チャンネルCH1を用いてカメラ装置2A〜2Dと、モニタ装置3Bは自己に割り当てられた周波数チャンネルCH2を用いてカメラ装置2A〜2Dとそれぞれ無線通信する。仮に、モニタ装置3Aとカメラ装置2Aとが周波数チャンネルCH1を用いて通信を行なっているとき、同時にモニタ装置3Bとカメラ装置2Bとが周波数チャンネルCH2を用いて通信する場合、カメラ装置2Aから送信される信号は、モニタ装置3Bにとってはノイズ成分となる虞がある。そこで本実施形態においては、モニタ装置3Bにとってノイズの発生源となるカメラ装置2Aの存在を考慮して、モニタ装置3Bに対するカメラ装置2Bの方向を設定し、モニタ装置3Bとカメラ装置2Bとの間で安定した通信を実現する。
【0045】
図11は、実施形態2の無線監視システム1において、モニタ装置3Bの制御部39が、各カメラ装置2の方向を認識する手順を示している。モニタ装置3Bの制御部39は、まず、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせて(#51)、すべてのカメラ装置2から周波数チャンネルCH1(第1周波数チャンネル)にて送信させた状態で周波数チャンネルCH2における受信強度を測定し、その値をA方向のノイズの受信強度として記憶する(#52)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#53においてNO、#54)、#52に戻る。こうして#52、#53及び#54の処理を繰り返して、すべての方向のノイズの受信強度を記憶すると(#53においてYES)、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を無指向に設定し(#55)、すべてのカメラ装置2からの送信を停止させる(#56)。
【0046】
そして、制御部39は、方向を設定するカメラ装置2からカメラIDを含む信号を周波数チャンネルCH2(第2周波数チャンネル)にて連続的に送信させ(#57)、モニタ装置3Bが信号を受信すると(#58)、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせる(#59)。モニタ装置3が信号を受信すると(#60)、制御部39は、#60において受信した信号の受信強度と#52において記憶したノイズの受信強度からA方向のSN比を算出する(#61)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#62においてNO、#63)、#60に戻る。こうして#60、#61、#62及び#63の処理を繰り返して、すべての方向のSN比を記憶すると(#62においてYES)、制御部39は、SN比が最大の方向をカメラ装置2の方向として記憶し(#64)、処理を終了する。このようにして設定したカメラ装置2の方向は、実際にカメラ装置2が設置されている方向とは異なる場合もあるが、図10に示したように、システム内で異なる周波数チャンネルにて同時に送信されている場合に、それをノイズ成分として考慮しつつ、通信に最も適したアンテナ方向を設定することができる。
【0047】
実施形態2の無線監視システム1によれば、1つの無線監視システム1において複数のモニタ装置3によって複数のカメラ装置2で撮影した画像を、同時にかつ別々に確認することができる。このとき、制御部39が、自己以外のいずれかのモニタ装置3に割り当てられている第1周波数チャンネルですべてのカメラ装置2から送信させて、自己に割り当てられている周波数における受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として予め記憶してSN比を算出する。これにより、システム内で他の周波数チャンネル(第1周波数チャンネル)によって同時に通信がなされている場合、自己に割り当てられた周波数帯域内に漏洩する第1周波数チャンネルの電波によるノイズの影響を加味した上で、カメラ装置2の方向を正確に認識することができ、カメラ装置2とモニタ装置3との間でより一層高感度な通信を行うことができるようになる。
【0048】
(実施形態3)
本発明のさらに別の実施形態による無線監視システムについて図12、13を参照して説明する。図12に示すように、実施形態3の無線監視システム1は、複数のカメラ装置2A〜2D及び3つ以上のモニタ装置3A、3B、3Cを備えている。モニタ装置3Aは自己に割り当てられた周波数チャンネルCH1を用いてカメラ装置2A〜2Dと、モニタ装置3Bは自己に割り当てられた周波数チャンネルCH2を用いてカメラ装置2A〜2Dと、モニタ装置3Cは自己に割り当てられた周波数チャンネルCH3を用いてカメラ装置2A〜2Dとそれぞれ無線通信する。ここで、各周波数チャンネルは、チャンネルCH1、CH2、CH3の順で周波数の帯域が高くなるものとする。
【0049】
実施形態3の無線監視システム1において、モニタ装置3A、3B、3Cは、自己に割り当てられた周波数チャンネルに隣接するチャンネルで送信された信号をノイズとしてフェーズドアレイアンテナ30の方向を設定する。より具体的には、モニタ装置3Aは、自己に割り当てられた周波数チャンネルCH1に隣接するチャンネルCH2を用いて送信された信号をノイズとして扱い、それより離れた周波数帯域のチャンネルCH3を用いて送信された信号は、自己の通信に及す影響は小さいので、ノイズとして扱わない。同様に、モニタ装置3Cは、自己に割り当てられた周波数チャンネルCH3に隣接するチャンネルCH2を用いて送信された信号をノイズとして扱い、それより離れた周波数帯域のチャンネルCH1を用いて送信された信号はノイズとして扱わない。このモニタ装置3A、モニタ装置3Cにおいては、制御部39は、上記実施形態2の無線監視システム1と実質的に同等の処理を行なえばよいので説明を省略する。一方、モニタ装置3Bは、自己に割り当てられた周波数チャンネルCH2に隣接するチャンネルCH1及びCH3を用いて送信された信号をノイズとして扱う。
【0050】
図13は、図12に示すように、モニタ装置3Aとカメラ装置2Aとが周波数チャンネルCH1を用いて、モニタ装置3Bとカメラ装置2Bとが周波数チャンネルCH2を用いて、モニタ装置3Cとカメラ装置2Cとが周波数チャンネルCH3を用いて、それぞれ通信する場合において、モニタ装置3Bの制御部39が、各カメラ装置2の方向を認識する手順を示している。モニタ装置3Bの制御部39は、まず、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせて(#71)、すべてのカメラ装置2から周波数チャンネルCH1(第1周波数チャンネル)にて送信させた状態で受信強度を測定し、その値をA方向のノイズの受信強度として記憶する(#72)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#73においてNO、#74)、#72に戻る。こうして#72、#73及び#74の処理を繰り返して、すべての方向のノイズの受信強度を記憶すると(#73においてYES)、すべてのカメラ装置2から周波数チャンネルCH3(第3周波数チャンネル)にて送信させた状態で受信強度を測定し、その値をA方向のノイズの受信強度として記憶する(#75)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#76においてNO、#77)、#75に戻る。こうして#75、#76及び#77の処理を繰り返して、すべての方向のノイズの受信強度を記憶すると(#76においてYES)、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を無指向に設定し(#78)、すべてのカメラ装置2からの送信を停止させる(#79)。その後の処理(#80〜#87)は、図11における#57〜#64と実質的に同等であるので、その説明を省略する。なお、#85においては、#72において記憶したノイズの受信強度と、#72において記憶したノイズの受信強度から別々にSN比を算出してもよいし、両者を合成してSN比を算出してもよい。このようにして設定したカメラ装置2の方向は、実際にカメラ装置2が設置されている方向とは異なる場合もあるが、図12に示したように、システム内で異なる周波数チャンネルにて同時に送信されている場合に、それをノイズ成分として考慮しつつ、通信に最も適したアンテナ方向を設定することができる。
【0051】
実施形態3の無線監視システム1によれば、制御部39が、自己に割り当てられた周波数チャンネルに隣接するチャンネルで、すべてのカメラ装置2から送信させ、受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶する。これにより、通信に影響を及す可能性のある周波数チャンネルの信号のみをノイズとみなしてSN比を算出するので、その算出処理を容易かつ迅速に行うことができるようになる。
【0052】
(実施形態4)
本発明のさらに別の実施形態による無線監視システムについて図14、15を参照して説明する。図14に示すように、実施形態4の無線監視システム1は、別の無線監視システム100が隣接して設置されている場合に対応する。例えば、無線監視システム1が設置されている住居の隣に別の無線監視システム100が隣接して設置されている場合等がこれに該当する。無線監視システム100は、複数のカメラ装置2E、2F、2Gとモニタ装置3Dを有し、無線監視システム1(周波数チャンネルCH2を使用)とは異なる周波数チャンネルCH4を用いて通信を行なっているものとする。周波数チャンネルCH2と周波数チャンネルCH4の周波数帯域が近い場合には、カメラ装置2Eから周波数チャンネルCH4を用いて送信される信号は、モニタ装置3Bにとってはノイズ成分となる虞がある。そこで本実施形態においては、モニタ装置3Bにとってノイズの発生源となるカメラ装置2Eの存在を考慮して、モニタ装置3Bに対するカメラ装置2の方向を設定し、モニタ装置3Bとカメラ装置2との間で安定した通信を実現する。より具体的には、モニタ装置3Bは別システムのカメラ装置2Eの動作を制御できないので、自己のシステム内でカメラ装置2Eに最も隣接するカメラ装置2Bから別の無線監視システム100で用いられる周波数チャンネルCH4にて送信し、それをノイズ成分としたSN比を算出する。なお、カメラ装置2Eに最も隣接するカメラ装置2Bの選択及び周波数チャンネルCH4の設定は、例えば、システム管理者が行うものとする。
【0053】
図15は、図14に示すように、別の無線監視システム100が隣接して設置されている場合において、モニタ装置3Bの制御部39が、各カメラ装置2の方向を認識する手順を示している。モニタ装置3Bの制御部39は、まず、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせて(#91)、カメラ装置2Bから周波数チャンネルCH4にて送信させた状態で受信強度を測定し、その値をA方向のノイズの受信強度として記憶する(#92)。ここで、カメラ装置2Bは、別の無線監視システム100のカメラ装置2Eに隣接するカメラ装置であり、周波数チャンネルCH4は、別の無線監視システム100で用いられる周波数チャンネルである。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#93においてNO、#94)、#92に戻る。こうして#92、#93及び#94の処理を繰り返して、すべての方向のノイズの受信強度を記憶すると(#93においてYES)、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を無指向に設定し(#95)、すべてのカメラ装置2からの送信を停止させる(#96)。その後の処理(#97〜#104)は、図11における#57〜#64と実質的に同等であるので、その説明を省略する。このようにして設定したカメラ装置2の方向は、実際にカメラ装置2が設置されている方向とは異なる場合もあるが、図14に示したように、カメラ装置2Eが隣接して設置されている別の無線監視システム100において同時に通信がなされている場合に、その信号をノイズ成分として考慮しつつ、通信に最も適したフェーズドアレイアンテナ30の指向性を設定することができる。
【0054】
実施形態4の無線監視システム1によれば、制御部39が、別のシステム100のカメラ装置2Eに隣接するカメラ装置2Bから別のシステム内の通信に用いられる周波数チャンネルCH4で送信させ、受信した信号をノイズとみなしてSN比を算出する。そのため別のシステム100のカメラ装置2Eが隣接する位置に配置された場合であっても、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を通信に最適な方向に合わせることができるようになる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも予めSN比に基づいて設定したカメラ装置2の方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせて通信を行うように構成されていればよい。
【0056】
また、本発明は種々の変形が可能である。例えば、家庭内では特定の時間帯に調理を行なったり、テレビジョンを視聴したりすることが多く、これに伴い、特定の時間帯に電磁調理器等から特定のノイズが発生する場合がある。そこで、特定の時刻毎に、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を変更しながら、所定の方向毎にモニタ装置3の周辺ノイズの受信強度を測定し、これを特定の時刻毎のノイズの受信強度として記憶し、SN比の算出に供してもよい。この場合にあっては、時間帯によって規則的に変動する周囲環境から発生するノイズの影響を加味した上で、カメラ装置2の方向を正確に認識することができ、カメラ装置2とモニタ装置3との間でより一層高感度な通信を行うことができる。
【0057】
また、フェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナは、4本に限られることなく、何本であってもよい。また、カメラ装置2の個数及び配置は、図4に示した例に限られることなく、監視領域に応じて適宜設定することができる。また、上記各実施形態におけるカメラ装置2とモニタ装置3を適宜組み合わせて無線通信システムを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態1による無線監視システムの構成を示すブロック図。
【図2】(a)は、同システムに適用されるフェーズドアレイアンテナを構成するアンテナの配置例を示す斜視図、(b)は、同平面図。
【図3】フェーズドアレイアンテナの指向性を示す図
【図4】各カメラ装置とモニタ装置との通信状態とフェーズドアレイアンテナの指向性を示す図。
【図5】無線監視システムにおいて、モニタ装置の動作モードを通常の通信待受モードから高速通信モードに切り替えて通信を開始する手順を示すフローチャート。
【図6】(a)は、実施形態2の無線監視システムにおいて、モニタ装置からみた各カメラ装置の方向を、(b)は、モニタ装置の制御部が各カメラ装置に割り当てられているカメラIDと方向を記憶するためのテーブルを示す図。
【図7】図6(b)に示すテーブルを作成する手順を示すフローチャート。
【図8】フェーズドアレイアンテナの指向性と移相量の関係を示す図。
【図9】モニタ装置の制御部が、カメラ装置の方向を認識する手順を示すフローチャート。
【図10】実施形態2による無線監視システムの概略構成を示すブロック図。
【図11】実施形態2において、モニタ装置の制御部が、カメラ装置の方向を認識する手順を示すフローチャート。
【図12】実施形態3による無線監視システムの概略構成を示すブロック図。
【図13】実施形態3において、モニタ装置の制御部が、カメラ装置の方向を認識する手順を示すフローチャート。
【図14】実施形態4による無線監視システムの概略構成を示すブロック図。
【図15】実施形態4において、モニタ装置の制御部が、カメラ装置の方向を認識する手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0059】
1 無線監視システム
2 カメラ装置
3 モニタ装置
30 フェーズドアレイアンテナ(位相配列アンテナ)
33 送受信切替スイッチ
34b 受信復調部(信号復調手段)
35 フィルタ部
35a 狭帯域フィルタ(第1帯域フィルタ)
35b 広帯域フィルタ(第2帯域フィルタ)
38 表示部
39 制御部(制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に無線通信可能なカメラ装置とモニタ装置を用いた無線監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から戸建や集合住宅等の住宅内、又は事業所等の非住宅内で侵入者や不審者等を監視する監視システムにおいては、カメラ装置の設置の便宜を図るために、カメラ装置とモニタ装置の相互間において無線通信により画像データ等を送受信する無線監視システムが使用されている。例えば、特許文献1には、カメラ装置の周辺に無線センサを配置し、相互に無線通信することにより、親機であるモニタ装置と無線センサとの通信を廃して、モニタ装置の負荷を軽減する無線監視システムが示されている。
【0003】
カメラ装置とモニタ装置との間の通信においては、長距離通信を可能とするために、通常、スペクトラム拡散やOFDM(直交波周波数分割多重)などの複雑な変復調方式を用いたり、誤り訂正符号などを追加したりしていた。
【特許文献1】特開2004−128659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらスペクトラム拡散やOFDMなどの変復調方式はシステム構成が複雑になりコストが増大してしまうという課題があり、また誤り訂正符号は使用可能な周波数帯域が限られている無線伝送において伝送速度の上限を高くできないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡素でかつ安価な構成でありながらも、カメラ装置とモニタ装置との間で高感度かつ高速な通信を行うことができる無線監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、画像を撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像のデータを無線により送信する送信手段とを有し、特定の場所に設置される複数のカメラ装置と、前記カメラ装置の送信手段から送信された無線信号を受信するための複数のアンテナ及び該アンテナの指向性を変更するための位相変更手段を有するフェーズドアレイアンテナと、このフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号を復調する信号復調手段と、この信号復調手段によって復調された信号にフィルタをかけるフィルタ手段と、このフィルタ手段を通過した信号に基づいて画像を表示する表示手段と、前記位相変更手段、信号復調手段、フィルタ手段及び表示手段を制御する制御手段とを有するモニタ装置とを備えた無線監視システムにおいて、前記制御手段は、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、いずれかのカメラ装置からカメラIDを含む信号を送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら前記所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記ノイズの受信強度のSN比を算出し、この算出したSN比に基づいて前記カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となるフェーズドアレイアンテナの指向方向を決定し、記憶し、各カメラ装置との通信の際に、記憶した方向にフェーズドアレイアンテナの指向性を合わせることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の無線監視システムにおいて、前記モニタ装置は、前記複数のカメラ装置との間で、同一の周波数チャンネルを用いて相互に無線通信することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の無線監視システムにおいて、複数の前記カメラ装置と、複数の前記モニタ装置とを備え、各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルを用いて前記複数のカメラ装置と、前記複数のモニタ装置とが相互に無線通信し、前記制御手段は、自己以外のいずれかのモニタ装置に割り当てられている第1周波数チャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に自己に割り当てられている第2周波数チャンネルにおける受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、前記第2周波数チャンネルで、いずれかのカメラ装置からカメラIDを含む信号を送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら前記所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記ノイズの受信強度のSN比を算出することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の無線監視システムにおいて、複数の前記カメラ装置と、3以上の前記モニタ装置とを備え、各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルを用いて前記カメラ装置と、前記モニタ装置とが相互に無線通信し、前記制御手段は、各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルのうち自己に割り当てられた周波数チャンネルに隣接するチャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶することを特徴とする。
【0010】
請求項5発明は、前記制御手段は、請求項2に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、別のシステムのカメラ装置に隣接するカメラ装置から前記別のシステム内の通信に用いられる周波数チャンネルで送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶することを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、特定の時刻毎に、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これを特定の時刻毎のノイズの受信強度として記憶し、前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記特定の時刻毎のノイズの受信強度からSN比を算出し、この算出したSN比に基づいて特定の時刻毎の前記カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となる前記フェーズドアレイアンテナの指向方向を認識し、記憶することを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の無線監視システムにおいて、前記制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、前記フェーズドアレイアンテナが無指向状態となるように前記位相変更手段を制御し、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、該通信許可要求信号に含まれるカメラIDから通信許可要求信号を送信したカメラ装置を特定し、記憶している該カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となる前記フェーズドアレイアンテナの指向性が得られるように前記位相変更手段を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載の無線監視システムにおいて、前記フィルタ手段は、第1帯域の信号を通過させる第1帯域フィルタと、前記第1帯域よりも広い第2帯域の信号を通過させる第2帯域フィルタとを有し、いずれかのフィルタを択一的に選択可能であり、前記制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、前記第1帯域フィルタを選択するように前記フィルタ手段を制御し、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、前記第2帯域フィルタを選択するように前記フィルタ手段を制御し、高速通信モードで画像データを受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、制御手段が、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、所定の方向毎に信号の受信強度とノイズの受信強度のSN比を算出し、カメラ装置と通信を行うにあたってSN比が最大となるフェーズドアレイアンテナの指向方向を認識し、記憶する。これにより、周囲環境で発生する定常的なノイズの影響を加味した上で、通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナの指向性を設定することができ、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく簡素でかつ安価な構成で、カメラ装置とモニタ装置との間で高感度な通信を行うことができる。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、モニタ装置は、複数のカメラ装置との間で、同一の周波数チャンネルを用いて相互に無線通信するので、1つの周波数帯域を用いてシステムを構成するすべてのカメラ装置と通信することができる。これにより、他の無線通信システムとの共存が容易なものとなる。
【0016】
請求項3の発明によれば、1つの無線監視システムにおいて複数のモニタ装置によって複数のカメラ装置で撮影した画像を、同時にかつ別々に確認することができる。このとき、モニタ装置にとっては、別のモニタ装置に送信される信号はノイズとなり、通信に影響を及す可能性がある。そこで、制御手段が、自己以外のいずれかのモニタ装置に割り当てられている第1周波数チャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させて受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として予め記憶してSN比を算出する。これにより、システム内で他の周波数チャンネル(第1周波数チャンネル)によって同時に通信がなされている場合、自己に割り当てられた周波数帯域内に漏洩する第1周波数チャンネルの電波によるノイズの影響を加味した上で、通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナの指向性を設定することができ、カメラ装置とモニタ装置との間でより一層高感度な通信を行うことができるようになる。
【0017】
請求項4の発明によれば、複数のカメラ装置と3以上のモニタ装置とを備えた無線監視システムにおいて、制御手段が、自己に割り当てられた周波数チャンネルに隣接するチャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させ、受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶する。これにより、通信に影響を及す可能性のある周波数チャンネルの信号のみをノイズとみなしてSN比を算出するので、その算出処理を容易かつ迅速に行うことができるようになる。
【0018】
請求項5の発明によれば、制御手段が、別のシステムのカメラ装置に隣接するカメラ装置から別のシステム内の通信に用いられる周波数チャンネルで送信させ、受信した信号をノイズとみなしてSN比を算出する。そのため、別のシステムのカメラ装置が隣接する位置に配置された場合であっても、フェーズドアレイアンテナの指向性を通信に最適な方向に合わせることができるようになる。
【0019】
請求項6の発明によれば、特定の時刻毎に、ノイズの受信強度を測定してSN比を算出するので、時間帯によって規則的に変動する周囲環境から発生するノイズの影響を加味した上で、通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナの指向性を設定することができ、カメラ装置とモニタ装置との間でより一層高感度な通信を行うことができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、フェーズドアレイアンテナが無指向状態となるように位相変更手段を制御する。これにより、通信エリア内の全方位においてカメラ装置からの通信を待ち受けることができる。一方、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、制御手段は、フェーズドアレイアンテナの指向性を該カメラ装置の方向に合わせるように位相変更手段を制御するので、該カメラ装置から送信されフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号の受信強度を高めることができる。これにより、カメラ装置との通信の安定性を高めることができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、制御手段は、通常の通信待受モードにおいて、第1帯域フィルタを選択するようにフィルタ手段を制御するので、信号復調手段によって復調された信号に混入しているノイズを効果的に除去することができる。よって、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく、受信の高感度化を図りカメラ装置との通信距離を長距離化することができる。一方、いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、制御手段は、第2帯域フィルタを選択するようにフィルタ手段を制御するので、カメラ装置との間で広帯域の電波を用いて高速な通信を行えるようになる。これにより、例えばカメラ装置で撮像した分解能の高い(高解像度かつ高フレームレート)動画を高いビットレートで送受信することができ、従来は曖昧であった画像の細部をより正確に把握することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施形態1)
本発明の一実施形態による無線監視システムについて図面を参照して説明する。図1は住居等の設備として備え付けられる無線監視システムを示している。無線監視システム1は、複数のカメラ装置2と、各カメラ装置2によって撮像された画像を表示するモニタ装置3等によって構成されている。各カメラ装置2とモニタ装置3とは、同一の周波数チャンネルを用いて無線によって相互に通信可能である。
【0023】
カメラ装置2は、画像を撮像して電子データとして出力するCCD(Charge Coupled Device)等の撮像素子(撮像手段)21と、撮像素子21が撮像した画像の電子データ等を無線により送受信する送受信部(送信手段)22等を有している。カメラ装置2は、例えば住居等の要所に設置される。
【0024】
モニタ装置3は、フェーズドアレイアンテナ(位相配列アンテナ)30、送受信切替スイッチ33、受信部34、フィルタ部35、送信部36、ベースバンド処理部37、表示部38、制御部(制御手段)39等によって構成されている。フェーズドアレイアンテナ30は、例えば平面上に配列された複数のアンテナ31a、31b、31c、31d...及びそれらに対応する位相変換器32a、32b、32c、32d...等を有し、各アンテナ31a、31b、31c、31d...の放射する電波の位相を変換(移相)することによってその指向性を変更し、各カメラ装置2の送受信部22との間で無線信号を送受信する。各アンテナ31a、31b、31c、31d...の放射する電波の位相は、位相変換部32によって変換される。送受信切替スイッチ33は、制御部39から出力された制御信号に応じてモニタ装置3の送受信動作を切り替える。受信部34は、フェーズドアレイアンテナ30を介して電波を受信するチューナ34aと、チューナ34aによって受信された信号を復調する受信復調部(信号復調手段)34b等を有している。なお、フェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナ31a、31b、31c、31d...及び位相変換器32a、32b、32c、32d...は、適宜増減可能である。基本原理として、アンテナ31a、31b、31c、31d...の本数を増やすことによりフェーズドアレイアンテナ30の指向性が高まる傾向にあるため、高い指向性が必要な場合はアンテナ31a、31b、31c、31d...の本数を増やせばよい。
【0025】
フィルタ部35は、受信復調部34bによって復調された受信ベースバンド信号の不要成分にフィルタをかけ、受信感度を高める。フィルタ部35は、比較的狭い第1帯域の受信ベースバンド信号を通過させる狭帯域フィルタ(第1帯域フィルタ)35aと、第1帯域よりも広い第2帯域の受信ベースバンド信号を通過させる広帯域フィルタ(第2帯域フィルタ)35bとを有し、制御部39から出力された制御信号に応じていずれかのフィルタを択一的に選択可能に構成されている。すなわち、狭帯域フィルタ35a及び広帯域フィルタ35bは、フィルタ部35に設けられているフィルタ切り替えスイッチ(図示せず)にて選択される。送信部36は、送受信切替スイッチ33、位相変換部32及びフェーズドアレイアンテナ30を介してカメラ装置2に信号を送信する。ベースバンド処理部37は、送受信するベースバンド信号を処理する。表示部38は、ベースバンド処理部37によって処理された信号に基づいて画像を表示する。より具体的には、いずれかのカメラ装置2によって撮像された画像が表示部38に表示される。制御部39は、モニタ装置3の上記各部の制御を司る。制御部39は、各カメラ装置2が設置されている方向を記憶しており、その方向に合わせてフェーズドアレイアンテナ30の指向性を制御する。
【0026】
図2はフェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナ31a、31b、31c、31dの配置を、図3は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をそれぞれ示している。本実施形態においては、アンテナ31a、31b、31c、31dとして4本の半波長ダイポールアンテナを適用している。アンテナ31a、31b、31c、31dは、通信に用いる電波の波長をλとすると、図2(b)に示すように平面視で一辺がλ/4の正方形の頂点に、正方形の平面に垂直に配置されている。上述のごとくアンテナ31a、31b、31c、31dを配置し、位相変換器32a、32b、32c、32d...によって移相を行うことにより、X−Y平面上のアンテナ指向性を制御することができる。
【0027】
図2(b)中、A方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせたときのフェーズドアレイアンテナ30の指向性パターンを図3(a)に、D方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせたときのフェーズドアレイアンテナ30の指向性パターンを図3(b)にそれぞれ示している。フェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせた方向の利得が最も高くなり、その周辺領域の利得も高められている。
【0028】
図4は、各カメラ装置2とモニタ装置3との通信状態とフェーズドアレイアンテナ30の指向性を示している。モニタ装置3は、通常の通信待受モードと高速通信モードで動作する。通常の通信待受モードとは、いずれかのカメラ装置2からの通信開始を待ち受けているモードである。高速通信モードとは、通信を開始したカメラ装置2との間で画像データ等を高速に通信するモードである。
【0029】
通常の通信待受モードにおいては、図4(a)に示すように、制御部39は、いずれのカメラ装置2とも通信可能なように、フェーズドアレイアンテナ30を無指向状態となるように制御する。また、このとき、制御部39は、狭帯域フィルタ35aを選択するように制御し、受信ベースバンドフィルタを狭帯域としている(通常待受状態)。これは、カメラ装置2からの通信許可要求信号が低速であり、モニタ装置3のベースバンドフィルタの帯域が狭くなるほどノイズが除去されてSN比が大きくなり、感度が高まって通信エリアを拡大することができるからである。例えば、高速通信モードにおける伝送速度は16Mbpsであるのに対して、カメラ装置2からの通信許可要求信号の伝送速度を1.6Mbps程度とすると、狭帯域フィルタ35aを用いて通信することができる。この場合、10log10=10dBの感度向上が期待できる。このように、アンテナを無指向性とし、狭帯域フィルタ35aを用いる場合、広帯域フィルタ35bを用いる場合に比べて雑音量(ノイズ)が少なくなり、全方向に対して信号のSN比を向上させ通信距離を長距離化することができる。
【0030】
一方、高速通信モードにおいては、受信ベースバンドフィルタを広帯域化しなければならず、それにより受信感度が劣化するという問題が生ずる。そこで、図4(b)に示すように、本実施形態においては、モニタ装置3が例えばカメラ装置2Aから送信された通信許可要求信号を受信すると、制御部39は、広帯域フィルタ35bを選択して受信ベースバンドフィルタを広帯域化することに加え、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を通信を開始するカメラ装置2Aの方向に合わせて、結果として感度を劣化させることなく高速通信を実現することができる(高速通信状態)。ここでいう「カメラ装置2Aの方向」とは、例えば、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をその方向に向けたとき、受信強度(受信信号の電界強度)又はSN比が最大となる方向のことであり、カメラ装置2Aと通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナ30の指向方向をいう(周辺の電波伝搬環境により、カメラ装置2Aが存在する方向と一致するとは限らない)。
【0031】
図5は、無線監視システム1において、モニタ装置3の動作モードを通常の通信待受モードから高速通信モードに切り替えて通信を開始する手順を示している。モニタ装置3は、通常の通信待受モードでカメラ装置2からの通信を待ち受けている状態では、どこに設置されたカメラ装置2とも通信が可能な状態となっている(#1)。いずれかのカメラ装置2に何らかのトリガ入力がなされ、それに応じてそのカメラ装置2から通信許可要求信号が送信されると(#2においてYES)、モニタ装置3がその通信許可要求信号を受信する(#3)。モニタ装置3の制御部39は、その受信した信号に含まれるカメラIDから通信を開始するカメラ装置2の方向を特定し(#4)、モニタ装置3の動作モードを高速通信モードに切り替えて、カメラ装置2に通信許可信号を送信する(#5)。このとき、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を通信を開始するカメラ装置2の方向に合わせると共に、広帯域フィルタ35bを選択して受信ベースバンドフィルタを広帯域化する。カメラ装置2が、上記通信許可信号を受信すると(#6においてYES)、カメラ装置2からモニタ装置3に画像データの高速伝送を開始する(#7)。これにより、いずれかのカメラ装置2とモニタ装置3との間で1対1の通信がなされる。
【0032】
本実施形態においては、モニタ装置3の制御部39は、図6に示すテーブルにて各カメラ装置2に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置2の方向を記憶し、通信を開始するカメラ装置2の方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせる。
【0033】
図6(a)は、モニタ装置3からみた各カメラ装置2の方向を、図6(b)は、モニタ装置3の制御部39が各カメラ装置2に割り当てられているカメラIDと各カメラ装置2の方向を記憶するためのテーブルをそれぞれ示している。カメラ装置2A乃至2Dには、それぞれカメラID001〜100が割り当てられ、A方向〜H方向には、図6(a)に示すように、方向コードとして000〜111が割り当てられている。制御部39は、カメラ装置毎にカメラIDと方向コードとを対応づけて記憶し、その方向コードを読み込むことにより各カメラ装置2A乃至2Dが設置されている方向を特定し、通信を開始するカメラ装置2の方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせる。
【0034】
図7は、図6(b)に示したテーブルを作成し、それに基づいてカメラ装置2との通信を開始する手順を示している。テーブルの作成は、例えば、いずれかのカメラ装置2が設置され、モニタ装置3及びカメラ装置2の電源がオンされたとき行うものとする。モニタ装置3及びカメラ装置2の電源がオンされると(#11)、カメラ装置2から自己のカメラIDを含む信号が送信され、それを受信したモニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2のカメラIDを登録する(#12)。例えば、図6(b)においては、4個のカメラ装置2のカメラID001〜100を登録しているが、8個のカメラ装置2のカメラID000〜111まで登録可能である。すべてのカメラ装置2のカメラIDの登録が完了すると(#13においてYES)、モニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2のカメラ方向の設定を開始する(#14)。まず、モニタ装置3の制御部39は、カメラ装置2の方向を認識し(#15)、その方向コードを記憶することによりテーブルを作成する(#16)。本実施形態においては、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA〜Hの8方向に設定可能であり、カメラ装置2がA〜Hの8方向のうちどの方向に相当するかを認識し、カメラ装置2の方向を設定する。カメラ装置2の方向の設定は、システム管理者が手動にてテーブルを完成させることにより行うものとしてもよいが、制御部39が、自動的に行うようにしてもよい。すべてのカメラ装置2の方向の設定を完了するまで#15、#16の処理を繰り返し(#17においてNO)、完了すると(#17においてYES)、処理を終了する。
【0035】
以上の手順により、図6(b)に示したテーブルが作成され、制御部39は、このテーブルを参照することにより、図5中#4において通信を開始するカメラ装置2の方向を特定することができる。例えば、モニタ装置3が図5中#3において受信した通信許可要求信号に含まれるカメラIDが001である場合、制御部39は、それに対応する方向コード001からカメラ装置2がB方向に設置されていると判断し、位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御してフェーズドアレイアンテナ30の指向性をB方向に設定する。図6(b)に示したテーブルを用いることにより、制御部39として1つのマイクロコンピュータでフェーズドアレイアンテナ30の指向性を制御できるようになるため、同等の機能をハードウェアで実現する場合と比べて、システムの管理が容易となり、低コスト化が図れる。ここでは、接続可能なカメラ台数と設置方向をそれぞれ8台、8方向としているが、ターゲットとなるシステムに応じて適宜増減が可能である。
【0036】
以下、図7に示す#15において、モニタ装置3の制御部39が、カメラ装置2の方向を認識する手順について説明する。既に述べたように、図2に示すようにアンテナ31a、31b、31c、31dを配置し、位相変換器32a、32b、32c、32d...によって移相を行うことにより、X-Y平面上のアンテナ指向性を制御することができる。
【0037】
図8は、アンテナ指向性と移相量の関係を示している。ここでは無指向性を得る場合と、Z軸の周りに45゜刻みで8方向の指向性を得る場合の合計9通りについて対応する移相量を示したが、移相量を適宜調整することにより、さらに細かく指向性を制御することも可能である。無線監視システム1は、大別して学習モードと通信モードの2つの動作モードをもつ。学習モードは、モニタ装置3が各カメラ装置2に対して最適なアンテナ指向性を割り当てるためのモードであり、主として無線監視システム1の設置後、通信モードに入る前に実施する。通信モードは、モニタ装置3と各カメラ装置2との間で通信を行うためのモードであり、上記高速通信モードと通信待受モードを含む。
【0038】
学習モードにおいて、モニタ装置3は、位相変換器32a(移相器PS1)、32b(移相器PS2)、32c(移相器PS3)、32d(移相器PS4)の移相量をすべて0に設定し、アンテナ指向性を無指向にする。ここでカメラ装置2Aから、カメラ装置2AのID情報を含むテスト信号を連続的に送信させる。モニタ装置3はカメラ装置2Aからのテスト信号を受信すると、まず移相器PS1〜PS4の移相量をそれぞれ90°、90°、0°、0°に設定する。このように移相量を設定すると、アンテナの指向性は図8に示したようにA方向に設定され、このときの受信信号強度をベースバンド処理部37内の記憶部に記憶させる。次に移相器PS1〜PS4の移相量をそれぞれ64°、0°、−64°、0°に設定する。このように移相量を設定すると、アンテナの指向性はB方向に設定され、このときの受信信号強度をベースバンド処理部37内の記憶部に記憶させる。以下同様に、8通りのアンテナ指向性に対して、それぞれの場合における受信信号強度を求める。その結果、最も受信信号強度が強くなったアンテナの指向性の方向にカメラ装置2Aが存在すると判断し、図6におけるテーブルに記憶する。カメラ装置2B〜2Dに関しても同様に、方向を認識してテーブルに記憶する。移相器PS1〜PS4の移相量を適宜設定することにより、アンテナ指向性を1゜ずつ変更し、その受信強度に基づいてカメラ装置2Aの方向を認識するものとしてもよい。
【0039】
図9は、モニタ装置3の制御部39が、カメラ装置2の方向を認識する手順を示している。このフローチャートでは、A方向から時計回りにH方向まで順次アンテナの指向性を45゜ずつ変更して、受信強度を測定する例を示している(以下、図11、図13、図15においても同様)。モニタ装置3の制御部39は、まず、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせて(#31)、すべてのカメラ装置2からの送信を停止させた状態で受信強度を測定し、その値をA方向のノイズの受信強度として記憶する(#32)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#33においてNO、#34)、#32に戻る。こうして#32、#33及び#34の処理を繰り返して、すべての方向のノイズの受信強度を記憶すると(#33においてYES)、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を無指向に設定する(#35)。
【0040】
そして、制御部39は、方向を設定するカメラ装置2からカメラIDを含む信号を連続的に送信させ(#36)、モニタ装置3が信号を受信すると(#37)、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせる(#38)。モニタ装置3が信号を受信すると(#39)、制御部39は、#39における受信信号強度と#32において記憶したノイズの受信強度からA方向のSN比を算出し、記憶する(#40)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#41においてNO、#42)、#39に戻る。こうして#39、#40、#41及び#42の処理を繰り返して、すべての方向のSN比を記憶すると(#41においてYES)、制御部39は、SN比が最大の方向をカメラ装置の方向として記憶し(#43)、処理を終了する。
【0041】
実施形態1の無線監視システム1によれば、制御部39が、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、各方向毎に信号の受信強度とノイズの受信強度のSN比を算出し、カメラ装置2と通信を行うにあたってSN比が最大となるフェーズドアレイアンテナの指向方向を認識し、記憶する。これにより、周囲環境で発生する定常的なノイズの影響を加味した上で、カメラ装置2と通信を行うにあたって最適なフェーズドアレイアンテナ30の指向性を設定することができ、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく安価な構成で、カメラ装置2とモニタ装置3との間で高感度な通信を行うことができる。また、モニタ装置3は、複数のカメラ装置2との間で、同一の周波数チャンネルを用いて相互に無線通信するので、1つの周波数帯域を用いてシステムを構成するすべてのカメラ装置2と通信することができる。これにより、他の無線通信システムとの共存が容易なものとなる。
【0042】
また、制御部39は、通常の通信待受モードにおいて、フェーズドアレイアンテナ30が無指向状態となるように位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御する。これにより、通信エリア内の全方位においてカメラ装置2からの通信を待ち受けることができる。一方、いずれかのカメラ装置2から送信された通信許可要求信号を受信したとき、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を該カメラ装置2の方向に向けるように位相変換器32a、32b、32c、32d...を制御するので、該カメラ装置2から送信されフェーズドアレイアンテナ30によって受信される無線信号の受信強度を高めることができる。これにより、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく、受信の高感度化を図りカメラ装置2との通信距離を長距離化することができる。
【0043】
また、制御部39は、通常の通信待受モードにおいて、狭帯域フィルタ35aを選択するようにフィルタ部35を制御するので、受信復調部34bによって復調された信号に混入しているノイズを効果的に除去することができる。よって、複雑なシステム構成を必要とする変復調方式を用いることなく、受信感度を高めてカメラ装置2との通信の安定性を高めることができる。一方、いずれかのカメラ装置2から送信された通信許可要求信号を受信したとき、制御部39は、広帯域フィルタ35bを選択するようにフィルタ部35を制御するので、カメラ装置2との間で広帯域の電波を用いて高速な通信を行えるようになる。これにより、例えばカメラ装置2で撮像した分解能の高い(高解像度かつ高フレームレート)動画を高いビットレートで送受信することができ、従来は曖昧であった画像の細部をより正確に把握することが可能となる。
【0044】
(実施形態2)
本発明の別の実施形態による無線監視システムについて図10、11を参照して説明する。図10に示すように、実施形態2の無線監視システム1は、複数のカメラ装置2A〜2D及び2つのモニタ装置3A、3Bを備えている。モニタ装置3Aは自己に割り当てられた周波数チャンネルCH1を用いてカメラ装置2A〜2Dと、モニタ装置3Bは自己に割り当てられた周波数チャンネルCH2を用いてカメラ装置2A〜2Dとそれぞれ無線通信する。仮に、モニタ装置3Aとカメラ装置2Aとが周波数チャンネルCH1を用いて通信を行なっているとき、同時にモニタ装置3Bとカメラ装置2Bとが周波数チャンネルCH2を用いて通信する場合、カメラ装置2Aから送信される信号は、モニタ装置3Bにとってはノイズ成分となる虞がある。そこで本実施形態においては、モニタ装置3Bにとってノイズの発生源となるカメラ装置2Aの存在を考慮して、モニタ装置3Bに対するカメラ装置2Bの方向を設定し、モニタ装置3Bとカメラ装置2Bとの間で安定した通信を実現する。
【0045】
図11は、実施形態2の無線監視システム1において、モニタ装置3Bの制御部39が、各カメラ装置2の方向を認識する手順を示している。モニタ装置3Bの制御部39は、まず、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせて(#51)、すべてのカメラ装置2から周波数チャンネルCH1(第1周波数チャンネル)にて送信させた状態で周波数チャンネルCH2における受信強度を測定し、その値をA方向のノイズの受信強度として記憶する(#52)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#53においてNO、#54)、#52に戻る。こうして#52、#53及び#54の処理を繰り返して、すべての方向のノイズの受信強度を記憶すると(#53においてYES)、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を無指向に設定し(#55)、すべてのカメラ装置2からの送信を停止させる(#56)。
【0046】
そして、制御部39は、方向を設定するカメラ装置2からカメラIDを含む信号を周波数チャンネルCH2(第2周波数チャンネル)にて連続的に送信させ(#57)、モニタ装置3Bが信号を受信すると(#58)、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせる(#59)。モニタ装置3が信号を受信すると(#60)、制御部39は、#60において受信した信号の受信強度と#52において記憶したノイズの受信強度からA方向のSN比を算出する(#61)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#62においてNO、#63)、#60に戻る。こうして#60、#61、#62及び#63の処理を繰り返して、すべての方向のSN比を記憶すると(#62においてYES)、制御部39は、SN比が最大の方向をカメラ装置2の方向として記憶し(#64)、処理を終了する。このようにして設定したカメラ装置2の方向は、実際にカメラ装置2が設置されている方向とは異なる場合もあるが、図10に示したように、システム内で異なる周波数チャンネルにて同時に送信されている場合に、それをノイズ成分として考慮しつつ、通信に最も適したアンテナ方向を設定することができる。
【0047】
実施形態2の無線監視システム1によれば、1つの無線監視システム1において複数のモニタ装置3によって複数のカメラ装置2で撮影した画像を、同時にかつ別々に確認することができる。このとき、制御部39が、自己以外のいずれかのモニタ装置3に割り当てられている第1周波数チャンネルですべてのカメラ装置2から送信させて、自己に割り当てられている周波数における受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として予め記憶してSN比を算出する。これにより、システム内で他の周波数チャンネル(第1周波数チャンネル)によって同時に通信がなされている場合、自己に割り当てられた周波数帯域内に漏洩する第1周波数チャンネルの電波によるノイズの影響を加味した上で、カメラ装置2の方向を正確に認識することができ、カメラ装置2とモニタ装置3との間でより一層高感度な通信を行うことができるようになる。
【0048】
(実施形態3)
本発明のさらに別の実施形態による無線監視システムについて図12、13を参照して説明する。図12に示すように、実施形態3の無線監視システム1は、複数のカメラ装置2A〜2D及び3つ以上のモニタ装置3A、3B、3Cを備えている。モニタ装置3Aは自己に割り当てられた周波数チャンネルCH1を用いてカメラ装置2A〜2Dと、モニタ装置3Bは自己に割り当てられた周波数チャンネルCH2を用いてカメラ装置2A〜2Dと、モニタ装置3Cは自己に割り当てられた周波数チャンネルCH3を用いてカメラ装置2A〜2Dとそれぞれ無線通信する。ここで、各周波数チャンネルは、チャンネルCH1、CH2、CH3の順で周波数の帯域が高くなるものとする。
【0049】
実施形態3の無線監視システム1において、モニタ装置3A、3B、3Cは、自己に割り当てられた周波数チャンネルに隣接するチャンネルで送信された信号をノイズとしてフェーズドアレイアンテナ30の方向を設定する。より具体的には、モニタ装置3Aは、自己に割り当てられた周波数チャンネルCH1に隣接するチャンネルCH2を用いて送信された信号をノイズとして扱い、それより離れた周波数帯域のチャンネルCH3を用いて送信された信号は、自己の通信に及す影響は小さいので、ノイズとして扱わない。同様に、モニタ装置3Cは、自己に割り当てられた周波数チャンネルCH3に隣接するチャンネルCH2を用いて送信された信号をノイズとして扱い、それより離れた周波数帯域のチャンネルCH1を用いて送信された信号はノイズとして扱わない。このモニタ装置3A、モニタ装置3Cにおいては、制御部39は、上記実施形態2の無線監視システム1と実質的に同等の処理を行なえばよいので説明を省略する。一方、モニタ装置3Bは、自己に割り当てられた周波数チャンネルCH2に隣接するチャンネルCH1及びCH3を用いて送信された信号をノイズとして扱う。
【0050】
図13は、図12に示すように、モニタ装置3Aとカメラ装置2Aとが周波数チャンネルCH1を用いて、モニタ装置3Bとカメラ装置2Bとが周波数チャンネルCH2を用いて、モニタ装置3Cとカメラ装置2Cとが周波数チャンネルCH3を用いて、それぞれ通信する場合において、モニタ装置3Bの制御部39が、各カメラ装置2の方向を認識する手順を示している。モニタ装置3Bの制御部39は、まず、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせて(#71)、すべてのカメラ装置2から周波数チャンネルCH1(第1周波数チャンネル)にて送信させた状態で受信強度を測定し、その値をA方向のノイズの受信強度として記憶する(#72)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#73においてNO、#74)、#72に戻る。こうして#72、#73及び#74の処理を繰り返して、すべての方向のノイズの受信強度を記憶すると(#73においてYES)、すべてのカメラ装置2から周波数チャンネルCH3(第3周波数チャンネル)にて送信させた状態で受信強度を測定し、その値をA方向のノイズの受信強度として記憶する(#75)。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#76においてNO、#77)、#75に戻る。こうして#75、#76及び#77の処理を繰り返して、すべての方向のノイズの受信強度を記憶すると(#76においてYES)、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を無指向に設定し(#78)、すべてのカメラ装置2からの送信を停止させる(#79)。その後の処理(#80〜#87)は、図11における#57〜#64と実質的に同等であるので、その説明を省略する。なお、#85においては、#72において記憶したノイズの受信強度と、#72において記憶したノイズの受信強度から別々にSN比を算出してもよいし、両者を合成してSN比を算出してもよい。このようにして設定したカメラ装置2の方向は、実際にカメラ装置2が設置されている方向とは異なる場合もあるが、図12に示したように、システム内で異なる周波数チャンネルにて同時に送信されている場合に、それをノイズ成分として考慮しつつ、通信に最も適したアンテナ方向を設定することができる。
【0051】
実施形態3の無線監視システム1によれば、制御部39が、自己に割り当てられた周波数チャンネルに隣接するチャンネルで、すべてのカメラ装置2から送信させ、受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶する。これにより、通信に影響を及す可能性のある周波数チャンネルの信号のみをノイズとみなしてSN比を算出するので、その算出処理を容易かつ迅速に行うことができるようになる。
【0052】
(実施形態4)
本発明のさらに別の実施形態による無線監視システムについて図14、15を参照して説明する。図14に示すように、実施形態4の無線監視システム1は、別の無線監視システム100が隣接して設置されている場合に対応する。例えば、無線監視システム1が設置されている住居の隣に別の無線監視システム100が隣接して設置されている場合等がこれに該当する。無線監視システム100は、複数のカメラ装置2E、2F、2Gとモニタ装置3Dを有し、無線監視システム1(周波数チャンネルCH2を使用)とは異なる周波数チャンネルCH4を用いて通信を行なっているものとする。周波数チャンネルCH2と周波数チャンネルCH4の周波数帯域が近い場合には、カメラ装置2Eから周波数チャンネルCH4を用いて送信される信号は、モニタ装置3Bにとってはノイズ成分となる虞がある。そこで本実施形態においては、モニタ装置3Bにとってノイズの発生源となるカメラ装置2Eの存在を考慮して、モニタ装置3Bに対するカメラ装置2の方向を設定し、モニタ装置3Bとカメラ装置2との間で安定した通信を実現する。より具体的には、モニタ装置3Bは別システムのカメラ装置2Eの動作を制御できないので、自己のシステム内でカメラ装置2Eに最も隣接するカメラ装置2Bから別の無線監視システム100で用いられる周波数チャンネルCH4にて送信し、それをノイズ成分としたSN比を算出する。なお、カメラ装置2Eに最も隣接するカメラ装置2Bの選択及び周波数チャンネルCH4の設定は、例えば、システム管理者が行うものとする。
【0053】
図15は、図14に示すように、別の無線監視システム100が隣接して設置されている場合において、モニタ装置3Bの制御部39が、各カメラ装置2の方向を認識する手順を示している。モニタ装置3Bの制御部39は、まず、フェーズドアレイアンテナ30の指向性をA方向に合わせて(#91)、カメラ装置2Bから周波数チャンネルCH4にて送信させた状態で受信強度を測定し、その値をA方向のノイズの受信強度として記憶する(#92)。ここで、カメラ装置2Bは、別の無線監視システム100のカメラ装置2Eに隣接するカメラ装置であり、周波数チャンネルCH4は、別の無線監視システム100で用いられる周波数チャンネルである。そして、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を時計回りに45゜変更して(#93においてNO、#94)、#92に戻る。こうして#92、#93及び#94の処理を繰り返して、すべての方向のノイズの受信強度を記憶すると(#93においてYES)、制御部39は、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を無指向に設定し(#95)、すべてのカメラ装置2からの送信を停止させる(#96)。その後の処理(#97〜#104)は、図11における#57〜#64と実質的に同等であるので、その説明を省略する。このようにして設定したカメラ装置2の方向は、実際にカメラ装置2が設置されている方向とは異なる場合もあるが、図14に示したように、カメラ装置2Eが隣接して設置されている別の無線監視システム100において同時に通信がなされている場合に、その信号をノイズ成分として考慮しつつ、通信に最も適したフェーズドアレイアンテナ30の指向性を設定することができる。
【0054】
実施形態4の無線監視システム1によれば、制御部39が、別のシステム100のカメラ装置2Eに隣接するカメラ装置2Bから別のシステム内の通信に用いられる周波数チャンネルCH4で送信させ、受信した信号をノイズとみなしてSN比を算出する。そのため別のシステム100のカメラ装置2Eが隣接する位置に配置された場合であっても、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を通信に最適な方向に合わせることができるようになる。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも予めSN比に基づいて設定したカメラ装置2の方向にフェーズドアレイアンテナ30の指向性を合わせて通信を行うように構成されていればよい。
【0056】
また、本発明は種々の変形が可能である。例えば、家庭内では特定の時間帯に調理を行なったり、テレビジョンを視聴したりすることが多く、これに伴い、特定の時間帯に電磁調理器等から特定のノイズが発生する場合がある。そこで、特定の時刻毎に、フェーズドアレイアンテナ30の指向性を変更しながら、所定の方向毎にモニタ装置3の周辺ノイズの受信強度を測定し、これを特定の時刻毎のノイズの受信強度として記憶し、SN比の算出に供してもよい。この場合にあっては、時間帯によって規則的に変動する周囲環境から発生するノイズの影響を加味した上で、カメラ装置2の方向を正確に認識することができ、カメラ装置2とモニタ装置3との間でより一層高感度な通信を行うことができる。
【0057】
また、フェーズドアレイアンテナ30を構成するアンテナは、4本に限られることなく、何本であってもよい。また、カメラ装置2の個数及び配置は、図4に示した例に限られることなく、監視領域に応じて適宜設定することができる。また、上記各実施形態におけるカメラ装置2とモニタ装置3を適宜組み合わせて無線通信システムを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態1による無線監視システムの構成を示すブロック図。
【図2】(a)は、同システムに適用されるフェーズドアレイアンテナを構成するアンテナの配置例を示す斜視図、(b)は、同平面図。
【図3】フェーズドアレイアンテナの指向性を示す図
【図4】各カメラ装置とモニタ装置との通信状態とフェーズドアレイアンテナの指向性を示す図。
【図5】無線監視システムにおいて、モニタ装置の動作モードを通常の通信待受モードから高速通信モードに切り替えて通信を開始する手順を示すフローチャート。
【図6】(a)は、実施形態2の無線監視システムにおいて、モニタ装置からみた各カメラ装置の方向を、(b)は、モニタ装置の制御部が各カメラ装置に割り当てられているカメラIDと方向を記憶するためのテーブルを示す図。
【図7】図6(b)に示すテーブルを作成する手順を示すフローチャート。
【図8】フェーズドアレイアンテナの指向性と移相量の関係を示す図。
【図9】モニタ装置の制御部が、カメラ装置の方向を認識する手順を示すフローチャート。
【図10】実施形態2による無線監視システムの概略構成を示すブロック図。
【図11】実施形態2において、モニタ装置の制御部が、カメラ装置の方向を認識する手順を示すフローチャート。
【図12】実施形態3による無線監視システムの概略構成を示すブロック図。
【図13】実施形態3において、モニタ装置の制御部が、カメラ装置の方向を認識する手順を示すフローチャート。
【図14】実施形態4による無線監視システムの概略構成を示すブロック図。
【図15】実施形態4において、モニタ装置の制御部が、カメラ装置の方向を認識する手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0059】
1 無線監視システム
2 カメラ装置
3 モニタ装置
30 フェーズドアレイアンテナ(位相配列アンテナ)
33 送受信切替スイッチ
34b 受信復調部(信号復調手段)
35 フィルタ部
35a 狭帯域フィルタ(第1帯域フィルタ)
35b 広帯域フィルタ(第2帯域フィルタ)
38 表示部
39 制御部(制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像のデータを無線により送信する送信手段とを有し、特定の場所に設置される複数のカメラ装置と、
前記カメラ装置の送信手段から送信された無線信号を受信するための複数のアンテナ及び該アンテナの指向性を変更するための位相変更手段を有するフェーズドアレイアンテナと、このフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号を復調する信号復調手段と、この信号復調手段によって復調された信号にフィルタをかけるフィルタ手段と、このフィルタ手段を通過した信号に基づいて画像を表示する表示手段と、前記位相変更手段、信号復調手段、フィルタ手段及び表示手段を制御する制御手段とを有するモニタ装置とを備えた無線監視システムにおいて、
前記制御手段は、
前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、
いずれかのカメラ装置からカメラIDを含む信号を送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら前記所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、
前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記ノイズの受信強度のSN比を算出し、
この算出したSN比に基づいて前記カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となるフェーズドアレイアンテナの指向方向を決定し、記憶し、各カメラ装置との通信の際に、記憶した方向にフェーズドアレイアンテナの指向性を合わせることを特徴とする無線監視システム。
【請求項2】
前記モニタ装置は、前記複数のカメラ装置との間で、同一の周波数チャンネルを用いて相互に無線通信することを特徴とする請求項1に記載の無線監視システム。
【請求項3】
複数の前記カメラ装置と、複数の前記モニタ装置とを備え、各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルを用いて前記複数のカメラ装置と、前記複数のモニタ装置とが相互に無線通信し、
前記制御手段は、
自己以外のいずれかのモニタ装置に割り当てられている第1周波数チャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させ、
前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に自己に割り当てられている第2周波数チャンネルにおける受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、
前記第2周波数チャンネルで、いずれかのカメラ装置からカメラIDを含む信号を送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら前記所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、
前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記ノイズの受信強度のSN比を算出することを特徴とする請求項2に記載の無線監視システム。
【請求項4】
複数の前記カメラ装置と、3以上の前記モニタ装置とを備え、各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルを用いて前記カメラ装置と、前記モニタ装置とが相互に無線通信し、
前記制御手段は、
各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルのうち自己に割り当てられた周波数チャンネルに隣接するチャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させ、
前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶することを特徴とする請求項3に記載の無線監視システム。
【請求項5】
前記制御手段は、
別のシステムのカメラ装置に隣接するカメラ装置から前記別のシステム内の通信に用いられる周波数チャンネルで送信させ、
前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶することを特徴とする請求項2に記載の無線監視システム。
【請求項6】
前記制御手段は、
特定の時刻毎に、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これを特定の時刻毎のノイズの受信強度として記憶し、
前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記特定の時刻毎のノイズの受信強度からSN比を算出し、
この算出したSN比に基づいて特定の時刻毎の前記カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となる前記フェーズドアレイアンテナの指向方向を認識し、記憶することを特徴とする請求項1に記載の無線監視システム。
【請求項7】
前記制御手段は、
通常の通信待受モードにおいて、前記フェーズドアレイアンテナが無指向状態となるように前記位相変更手段を制御し、
いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、該通信許可要求信号に含まれるカメラIDから通信許可要求信号を送信したカメラ装置を特定し、記憶している該カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となる前記フェーズドアレイアンテナの指向性が得られるように前記位相変更手段を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の無線監視システム。
【請求項8】
前記フィルタ手段は、第1帯域の信号を通過させる第1帯域フィルタと、前記第1帯域よりも広い第2帯域の信号を通過させる第2帯域フィルタとを有し、いずれかのフィルタを択一的に選択可能であり、
前記制御手段は、
通常の通信待受モードにおいて、前記第1帯域フィルタを選択するように前記フィルタ手段を制御し、
いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、前記第2帯域フィルタを選択するように前記フィルタ手段を制御し、高速通信モードで画像データを受信することを特徴とする請求項7に記載の無線監視システム。
【請求項1】
画像を撮像する撮像手段と、この撮像手段が撮像した画像のデータを無線により送信する送信手段とを有し、特定の場所に設置される複数のカメラ装置と、
前記カメラ装置の送信手段から送信された無線信号を受信するための複数のアンテナ及び該アンテナの指向性を変更するための位相変更手段を有するフェーズドアレイアンテナと、このフェーズドアレイアンテナによって受信された無線信号を復調する信号復調手段と、この信号復調手段によって復調された信号にフィルタをかけるフィルタ手段と、このフィルタ手段を通過した信号に基づいて画像を表示する表示手段と、前記位相変更手段、信号復調手段、フィルタ手段及び表示手段を制御する制御手段とを有するモニタ装置とを備えた無線監視システムにおいて、
前記制御手段は、
前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、
いずれかのカメラ装置からカメラIDを含む信号を送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら前記所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、
前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記ノイズの受信強度のSN比を算出し、
この算出したSN比に基づいて前記カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となるフェーズドアレイアンテナの指向方向を決定し、記憶し、各カメラ装置との通信の際に、記憶した方向にフェーズドアレイアンテナの指向性を合わせることを特徴とする無線監視システム。
【請求項2】
前記モニタ装置は、前記複数のカメラ装置との間で、同一の周波数チャンネルを用いて相互に無線通信することを特徴とする請求項1に記載の無線監視システム。
【請求項3】
複数の前記カメラ装置と、複数の前記モニタ装置とを備え、各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルを用いて前記複数のカメラ装置と、前記複数のモニタ装置とが相互に無線通信し、
前記制御手段は、
自己以外のいずれかのモニタ装置に割り当てられている第1周波数チャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させ、
前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に自己に割り当てられている第2周波数チャンネルにおける受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶し、
前記第2周波数チャンネルで、いずれかのカメラ装置からカメラIDを含む信号を送信させ、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら前記所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、
前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記ノイズの受信強度のSN比を算出することを特徴とする請求項2に記載の無線監視システム。
【請求項4】
複数の前記カメラ装置と、3以上の前記モニタ装置とを備え、各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルを用いて前記カメラ装置と、前記モニタ装置とが相互に無線通信し、
前記制御手段は、
各モニタ装置毎に割り当てられた周波数チャンネルのうち自己に割り当てられた周波数チャンネルに隣接するチャンネルで、すべてのカメラ装置から送信させ、
前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶することを特徴とする請求項3に記載の無線監視システム。
【請求項5】
前記制御手段は、
別のシステムのカメラ装置に隣接するカメラ装置から前記別のシステム内の通信に用いられる周波数チャンネルで送信させ、
前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎に受信した信号の受信強度を測定し、これをノイズの受信強度として記憶することを特徴とする請求項2に記載の無線監視システム。
【請求項6】
前記制御手段は、
特定の時刻毎に、前記フェーズドアレイアンテナの指向性を変更しながら、所定の方向毎にノイズの受信強度を測定し、これを特定の時刻毎のノイズの受信強度として記憶し、
前記所定の方向毎に前記信号の受信強度と前記特定の時刻毎のノイズの受信強度からSN比を算出し、
この算出したSN比に基づいて特定の時刻毎の前記カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となる前記フェーズドアレイアンテナの指向方向を認識し、記憶することを特徴とする請求項1に記載の無線監視システム。
【請求項7】
前記制御手段は、
通常の通信待受モードにおいて、前記フェーズドアレイアンテナが無指向状態となるように前記位相変更手段を制御し、
いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、該通信許可要求信号に含まれるカメラIDから通信許可要求信号を送信したカメラ装置を特定し、記憶している該カメラ装置と通信を行うにあたってこの算出したSN比が最大となる前記フェーズドアレイアンテナの指向性が得られるように前記位相変更手段を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の無線監視システム。
【請求項8】
前記フィルタ手段は、第1帯域の信号を通過させる第1帯域フィルタと、前記第1帯域よりも広い第2帯域の信号を通過させる第2帯域フィルタとを有し、いずれかのフィルタを択一的に選択可能であり、
前記制御手段は、
通常の通信待受モードにおいて、前記第1帯域フィルタを選択するように前記フィルタ手段を制御し、
いずれかのカメラ装置から送信された通信許可要求信号を受信したとき、前記第2帯域フィルタを選択するように前記フィルタ手段を制御し、高速通信モードで画像データを受信することを特徴とする請求項7に記載の無線監視システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−34797(P2010−34797A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193996(P2008−193996)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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