説明

無線装置及びこの無線装置を用いたリモートキーレスエントリー装置

【課題】無線装置において、内部の金属アンテナからの静電気による電子部品の静電破壊や誤動作を保護する構造を提供する。
【解決手段】プリント基板2上に形成された無線回路4と、プリント基板2上に形成された給電パターン6を介して無線回路4に接続された金属アンテナ3と、プリント基板2及び金属アンテナ3を共に覆うカバー部材10を備え、カバー部材10の内壁に設けられて、金属アンテナ3を支持固定する保持部11を有する無線装置であって、カバー部材10に形成された貫通孔11aを、この貫通孔端から5mm以上の被覆領域を持つ耐静電性能を有するシール12で塞いだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置、特に、自動車のリモートキーレスエントリー装置などの無線通信用に好適な無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車に搭載する車載用無線装置は、小型化、回路モジュールの組み込み易さ、接続ケーブル省略の観点から、プリント基板にアンテナを設け、そのプリント基板上に形成される無線回路と接続することが望ましい。また、近年、自動車の高機能化及び低燃費化が求められ、車両軽量化に伴う実装スペースの確保から、高いレイアウト性を確保するため、無線装置にも小型化および薄型化が求められる。プリント基板に設けるアンテナの形態については種々提案されており、プリント基板の印刷導体からなるパターンアンテナ、プリント基板より突設する金属アンテナ等がある。金属アンテナを用いる場合には、より高いアンテナ利得を確保するため、プリント基板面より高く配置することが求められるが、車両の振動等の影響を排除するために、アンテナの保持機構が必要となる。
【0003】
金属アンテナの保持機構として、無線装置を覆うカバーに金属アンテナを保持させる保持部を設ける場合、成形金型簡素化のために例えば上下開きの保持部構造にすると、カバーに貫通孔ができる。この場合、保持機構により金属アンテナの固定は容易かつ確実なものになるが、前記貫通孔からの異物や水滴の侵入は従来のシールで防げるものの、静電気の影響は排除できず、静電気によるアンテナや電子部品の破壊や、誤動作の原因につながる場合があった。無線装置における耐静電気構造は種々提案されており、一例として特許文献1に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−64382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1の構成では、同公報に記載のごとく、鳴音用孔部31aを通じての異物や静電気侵入に対し、近接する基板32に保護パッド34を設けている。しかし、車載用無線装置のように、プリント基板に垂設される金属アンテナに対するアンテナ保持機構を有しつつ保護パッドを貼り付けることは困難であると共に、保護パッドの形状が複雑になるため作業性が悪くコストアップにつながるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、無線装置への液体・粉塵等の侵入の回避と静電気防止とを共に行なえて、しかも、製造コストを低減できる無線装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線装置は、プリント基板上に形成された無線回路と、前記プリント基板上に形成された給電パターンを介して前記無線回路に接続された金属アンテナと、前記プリント基板及び前記金属アンテナを共に覆うカバー部材を備え、前記カバー部材の内壁に設けられて、前記金属アンテナを支持固定する保持部を有する無線装置であって、前記カバー部材に形成された貫通孔を、該貫通孔端から5mm以上の被覆領域を持つ耐静電性能を有するシートで塞いだものである。
【0008】
また、本発明に係るリモートキーレスエントリー装置は、前記構成の無線装置を、携帯機との無線通信用として用いたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、無線装置のアンテナを基板から突出させて配置する金属アンテナとした場合の保持機構を、アンテナ固定を行うための十分な保持力を得ながら、液体・粉塵等の侵入の回避と静電気防止が可能である。また、耐静電気用保護回路の部品点数を削除できるためコストダウンを図ることができると共に作業者の負担を軽減することができる。さらに、この無線装置を用いてリモートキーレスエントリー装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る無線装置を示す分解斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係るリモートキーレスエントリー装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る無線装置を示す分解斜視図である。図1に示すように、本発明の無線装置1は、プリント基板2を有する。プリント基板2上には、無線回路(無線IC)4が形成され、この無線IC4と導電パターンを介して接続されると共に、ワイヤーハーネス21を介して外部機器22に接続されるコネクタ5が実装されている。さらに、プリント基板2上には、前記無線IC4に一端が接続されたパターンアンテナ7及び整合回路8への給電パターン6が形成されている。
【0012】
金属アンテナ3は1本の金属棒を曲げて形成されていて、渦巻き形状の略四角形をなす水平部3aと、この水平部3aから垂下する垂直部3bとからなる。そして、垂直部3bの下端は、パターンアンテナ7及びプリント基板2を貫通して形成された固定孔9に嵌合することにより固定されると共に、パターンアンテナ7と電気的に接続され、給電パターン6から金属アンテナ3とパターンアンテナ7を分岐させることでダイポールアンテナを形成している。
【0013】
前記プリント基板2及び金属アンテナ3には、下縁がプリント基板2に固定される、誘電体からなる樹脂製のカバー部材10が被せられる。金属アンテナ3は垂直部3bで起立しているため、揺れが生じやすい。これを防ぐため、カバー部材10の上壁(天井)内面には、金属アンテナ3の水平部3aを固定する保持部11が下向きに例えば4個突設されている。
【0014】
保持部11は、カバー部材10の上壁内面から下方に突出する2条の爪を有し、この爪で金属アンテナの水平部3aを把持するようにしている。保持部11は、金属アンテナの水平部3aの形状に沿う位置に設ければよく、必ずしもカバー部材10の上壁でなくて、周壁に設けてもよいし、その数も4個に限るものではない。また、その形状も2条の爪に限るものではなく、フックその他の形状でもよい。カバー部材10は、金型を使って樹脂成形により製造するが、成形の際に保持部11を同時に形成する。このとき、金型簡素化のために金型を上下開きの構成にすると、カバー部材10の上壁に貫通孔11aが形成されてしまう。
【0015】
カバー部材10に貫通孔11aがあれば、ここから水滴や塵埃はもちろん静電気の侵入を許し、金属アンテナや電子部品に対して悪影響が及ぶ。そこで、貫通孔11aからの特に静電気侵入を防ぐために、貫通孔11aを塞ぐ耐静電気性能の高いシール12をカバー部材10の上壁外側から貼り付ける。ここでシールとはシートに粘着性を持たせて貼り付け可能にしたものを指す。シール12と貫通孔11aとの関係は、貫通孔11aの孔端部からシール12端までの距離を5mm以上とする。5mm以上とする根拠は、以下の実施例の結果に基づいている。シール12を貼り付けることにより、一般電子部品として性能を満足する静電圧30kVでも、静電気によるアークはカバー部材10内部の金属アンテナ3に落ちることはない。シール12は、図では4個の貫通孔11aを一枚のシールで塞ぐようにしているが、一枚である必要はなく、個々の貫通孔11aを一つずつ塞ぐものでもよいし、また、四角形である必要もない。このシール12の材料としては、例えばPET樹脂など、絶縁破壊電圧300kV/mm、体積固有抵抗1017Ω・cm以上の絶縁性を有し、厚さが0.1mm以上のシールが望ましい。以下、シールの素材であるシートの耐静電気性能を示す。
【実施例】
【0016】
以下に試験結果をまとめる。
表1.PET樹脂シート厚0.05mmの場合

表2.PET樹脂シート厚0.1mmの場合(シート厚0.05mm×2枚でも同結果)

表3.PET樹脂シート厚0.15mmの場合(シート厚0.05×3枚でも同結果)

【0017】
前記PET樹脂シートに関しては、絶縁性が良好で機械的にも強く汎用性があるため、耐静電シールとして好適である。
【0018】
また、シートの厚みを0.1mm以上とする場合、薄い部材を、厚みが0.1mm以上になるよう複数枚重ねて張り合わせても効果は同じである。
【0019】
市場の流通動向により、シート厚0.1mmを1枚貼り付ける場合よりも、シール厚の薄いものを複数枚重ねて張り合わせるほうがコストが安価な場合もある。
【0020】
また、シール12には必要に応じて、製品名、製品番号、バーコードなど、無線装置の製品情報を印字することにより製品ラベルの機能も表示できるため、ラベルを減らすことが可能である。
【0021】
以上のように構成された無線装置においては、金属アンテナ3を保持するアンテナ保持部11の形成過程で生じた貫通孔11aを、上述したシール12を貼ることにより、防滴・防塵及び耐静電気性能を向上させることができると共に、耐静電気用の保護回路を必要としないため、製造コストの低減を図ることができる。また、シール12を製品ラベルとして使用すれば部品点数を削減することができ、さらなるコスト低減が図れる。
【0022】
本実施の形態1では金属アンテナ3の水平面部3aの形状を渦巻き形状としているが、シールの形状は自由に設定できるため、前記渦巻き形状に限定されない。
【0023】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2を示すもので、実施の形態1における、金属アンテナ3を備え、カバー部材10のアンテナ保持部11で金属アンテナ3を保持する無線装置1を、リモートキーレスエントリシステム(RKE)に適用している。詳細には、ユーザが所持する携帯機15からの無線信号を受信する受信アンテナを備えた無線装置1からなるキーレスレシーバユニット13を、自動車14のインスツルメントパネル内に装着している。前記キーレスレシーバユニット13内には、図1に示すプリント基板2を収容し、該プリント基板2の同一面側に、給電パターン6と接続された金属アンテナ3とパターンアンテナ7からなるダイポールアンテナを設けている。他の構成は実施の形態1と同様であるため説明を省略する。これによりリモートキーレスエントリシステムを構成する。
【符号の説明】
【0024】
1 無線装置、 2 プリント基板、
3 金属アンテナ、 3a アンテナ水平部、
3b アンテナ垂直部、 4 無線IC、
5 コネクタ、 6 給電パターン、
7 パターンアンテナ、 8 整合回路、
9 固定孔、 10 カバー部材、
11 アンテナ保持部、 11a 貫通孔、
12 シール、 13 キーレスレシーバユニット、
14 自動車、 15 携帯機、
21 ワイヤーハーネス、 22 外部機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板上に形成された無線回路と、前記プリント基板上に形成された給電パターンを介して前記無線回路に接続された金属アンテナと、前記プリント基板及び前記金属アンテナを共に覆うカバー部材を備え、前記カバー部材の内壁に設けられて、前記金属アンテナを支持固定する保持部を有する無線装置であって、前記カバー部材に形成された貫通孔を、該貫通孔端から5mm以上の被覆領域を持つ耐静電性能を有するシートで塞いだことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記保持部の形成時に生じたものであることを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記シートを、シールとして貼り付けたたことを特徴とする請求項1または2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記シートの厚みを0.1mm以上にしたことを特徴とする請求項1または2に記載の無線装置。
【請求項5】
前記シートは複数枚重ねたものからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の無線装置。
【請求項6】
前記シートに文字や記号及びバーコード等の製品情報を印字したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の無線装置。
【請求項7】
前記シートはPET樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の無線装置。
【請求項8】
前記金属アンテナは少なくとも1本の垂直部と、前記垂直部と連続される水平面部を備え、前記垂直部の少なくとも1本の下端が前記プリント基板上で給電パターンと接続されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の無線装置。
【請求項9】
前記保持部は、前記カバー部材の内壁に突設され、前記金属アンテナを把持するものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の無線装置。
【請求項10】
前記保持部は、前記カバー部材の内壁に突設され、前記金属アンテナを保持するフックであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の無線装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の無線装置を、携帯機との無線通信用として自動車に搭載したことを特徴とするリモートキーレスエントリー装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−178316(P2012−178316A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41741(P2011−41741)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】