説明

無線近接センサシステム

【課題】安全性の確保と消費電流低減化とを同時に達成しつつコントローラ側無線部とセンサ側無線部との通信を可能とした無線近接センサシステムを提供すること。
【解決手段】本無線近接センサシステム1は、ワーク18加工の各位置A〜Dそれぞれに異なる周波数で該位置に近接したワーク18の近接検出信号を送信する少なくとも2台一対の無線近接センサ対1,3;センサ対4,1;センサ対2,4、センサ対2,3と、各位置A〜Dそれぞれでは無線近接センサ対それぞれが送信する異なる周波数の送信フレーム情報の受信が可能なコントローラ側無線部5と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線近接センサと、この無線近接センサによる検出情報を用いて工作機械や装置あるいは制御機械や装置等を制御するプログラマブルコントローラ(以下、PLC)等の各種コントローラと、を備えた無線近接センサシステムおよび該システムに用いる無線近接センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近接センサは、検出物体に非接触の状態で当該検出物体の存在や移動等を検出することができるものであり、種類も多く、またその用途も多岐にわたっている。例えば高周波型近接センサは、その先端部が金属感応部として構成されており、金属感応部と金属製の検出物体との距離に応じた信号を出力するようになっている。信号の出力形態にはアナログ出力、オンオフ出力等がある。
【0003】
PLCには、ファクトリーオートメーション(FA)の分野で用いられているビルディングブロック型があり、これは複数のユニットから構成される。それらのユニットとしては、例えば、電源を供給する電源ユニット、PLC全体の制御を統率するCPUユニット、FAの生産装置や設備装置の適所に取り付けたスイッチやセンサ等の入力機器の信号を入力する入力ユニット、等を挙げることができる。PLCのCPUユニットにおける制御は、入力ユニットから入力した入力信号等をCPUユニットのI/Oメモリに取り込むようになっている。
【0004】
上記入力ユニット等には、各種の入力機器が接続され、近接センサもその1つである。この近接センサと入力ユニットとを接続するための接続構造としては、電気コードを介するコード接続方式がある。また、入力機器が、近接センサのような能動型の入力機器である場合、その接続構造に採用される配線方式も3線式や2線式が存在する。いずれにしても、近接センサではその検出出力を信号ケーブルと電源ケーブルでPLCの入力ユニットに接続されるものがあり、この入力ユニットに設置する近接センサの数が増えるとそのケーブル配線も複雑化する。
【0005】
一方、センサにはこのケーブル配線を不要とする無線通信機能を備えたものがある。例えば特開2002−218571では、センサと無線機とを子機とし、複数の子機それぞれの出力を無線機で監視側に送信する技術が開示されている。この公報では複数の子機からの送信を特定小電力無線の周波数で行うことが開示されている。
【0006】
ところで、上記PLCの入力機器としての近接センサとして例えば高周波発振・振幅検出型の近接センサでは、一定の周波数で発振を行い金属体等の検出物体の接近によって発振の振幅の変化を検出するものである。この近接センサでは、高周波で発振する発振回路部を備え、金属体や磁性体等からなる検出物体が発振回路部内の発振コイルに接近すると、電磁誘導作用によって渦電流損が生じて発振コイルの実効抵抗値であるインピーダンスが変化することにより発振回路部の発振振幅が変化することを利用したものであり、検出物体の近接状態に応じて発振回路部の発振振幅が跳躍的に変化して、発振(ON)または発振停止(OFF)させることによる発振振幅の変化で検出物体の有無の判定を行うことができる(特許文献2参照)。
【0007】
そして本出願人は、上記に鑑みて、無線機能を搭載し例えば電池駆動型とした無線近接センサを鋭意開発中であるが、このようなタイプの無線近接センサとした場合、システム全体の安全性、また、確実性を図ることが極めて重要である。
【0008】
例えば工作機械は、電気的ノイズが多発する環境であるので、電波送信する場合では、無線近接センサが誤動作せず、ワークの制御位置の検出にかかる無線送信信号を確実に送信できるようにする必要がある。また、無線近接センサ2台が同時に検出信号を送信した場合、2台の検出信号をそれぞれ受信可能とする受信機が必要である。さらに、電池切れを回避することも重要な課題である。
【特許文献1】特開2002−218571号公報
【特許文献2】特開2007−141762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明により解決すべき課題は、無線でセンサ信号を送信する無線近接センサを用いた無線近接センサシステムにおいて、当該システムの安全性、また、制御の確実性を向上した無線近接センサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による無線近接センサシステムは、同じ検出位置に配置され互いに異なる周波数で該検出位置に近接した検出物体の近接検出信号を送信する少なくとも無線近接センサ2台からなるセンサ組と、上記センサ組の両無線近接センサそれぞれが送信する近接検出信号の受信が可能なコントローラ側無線部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明では、同じ検出位置に上記2台の無線近接センサからなるセンサ組を配置したから、該検出位置付近に発生した電気的ノイズによりセンサ組内の一方の無線近接センサが影響を受けても他方の無線近接センサからの送信をコントローラ側無線部が受信することができるようになり、システムの安全性ならびに動作の確実性を確保することができるようになる。また、2つの受信システムを1台の受信機に盛り込むことで、無線近接センサ2台が同時に検出信号を送信した場合、確実に2台の検出信号をそれぞれ受信できる受信システムとなる。
【0012】
好ましい態様の1つは、上記検出位置を複数有し、各検出位置それぞれに上記センサ組を配置し、上記コントローラ側無線部は、各検出位置それぞれのセンサ組内の両無線近接センサからの近接検出信号を受信することが可能になっていることである。
【0013】
より好ましい態様の1つは、上記センサ組の両無線近接センサは、近接検出信号とセンサ識別情報とを含むフレーム情報を所要数連続送信することである。
【0014】
この態様では、同じ検出位置に上記センサ組内の2つの無線近接センサそれぞれが近接検出信号を送信する場合、その近接検出信号をフレーム情報として複数連続して送信することができるので、1つの近接検出信号だけ送信した場合と比較して上記位置周囲の電気的ノイズの発生タイミングによってはフレーム情報内の近接検出信号の一部に欠落したような場合、次のフレーム情報により一部に欠落が無い近接検出信号を送信することができるので、さらにシステムの安全性ならびに動作の確実性を確保することができるようになる。
【0015】
より好ましい態様の1つは、上記コントローラ側無線部に起動信号の送信を要求するプログラマブルコントローラを備える、ことである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、同じ検出位置に少なくとも2台の無線近接センサからなるセンサ組を配置し、この検出位置におけるセンサ組内の両無線近接センサは互いに異なる周波数で近接検出信号を送信するので、その位置の付近に発生した電気的ノイズにより一方の無線近接センサが影響を受けても他方の無線近接センサからの送信をコントローラ側無線部が受信することができるようになり、システムの安全性ならびに動作の確実性を確保することができるようになる。さらに、2つの受信システムを1台の受信機に盛り込むことで、無線近接センサ2台が同時に検出信号を送信した場合、確実に2台の検出信号をそれぞれ受信できる受信システムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る無線近接センサシステムを詳細に説明する。この無線近接センサシステムではコントローラとしてPLCを適用するが、これに限定されない。
【0018】
図1に、実施の形態が適用される無線近接センサシステムの概略構成を示す。この無線近接センサシステム1は、コントローラ側として、制御盤3側に、コントローラ側無線部5と、このコントローラ側無線部に有線接続されるPLC7とが配備され、無線近接センサ側として、工作機械9内部に、無線近接センサ11が配置されている。工作機械9内部には、コントローラ側無線部5から有線の形態で延びるフェライトバータイプのAM送信アンテナ13が配備されている。図1で示す工作機械9内部には説明の都合で無線近接センサ11が1つ図示されるだけであるが、2つ以上配置する場合を含むことができる。無線近接センサ11は、筐体15内部に、検出コイル17、センサ基板19、筐体15から着脱可能な電池29が配備されている。センサ基板19には当該無線近接センサ11の図示略の各種電子部品が実装されていると共にパターンアンテナタイプのFM送信アンテナ21と、AM受信アンテナ23とが設置されている。無線近接センサ11は、上記電子部品と上記両アンテナ21,23とにより、センサ側無線部25(図1中では符号略)を構成することができる。
【0019】
上記無線近接センサシステム1構成では、コントローラ側無線部5から工作機械9内部のAM送信アンテナ13を介してセンサ側無線部25へ例えば135kHzの低周波信号が無線近接センサ検出起動信号として間欠送信することができるようになっている。この場合、工作機械9内部に複数の無線近接センサ11が配備されていると、それら複数の無線近接センサ11のうちいずれの無線近接センサ11に起動信号を送信するかを指定するためにコントローラ側無線部5からの起動信号には無線近接センサ11のセンサ番号(センサ識別番号)を含む起動情報が付けられている。一方、その起動信号を受信した無線近接センサ11においては、高周波(300MHz帯/400MHz帯)の短パルス信号をFM受信アンテナ141、142に送信する。この短パルス信号はセンサ番号、検出状態、その他のセンサ情報を含む。
【0020】
コントローラ側無線部5は、受信できる周波数が相異なる2つのFM受信アンテナ141,142を有しており、両FM受信アンテナ141,142それぞれで対応する周波数の短パルス信号を受信すると共に、その受信した短パルス信号をPLC7に送信することにより、当該PLC7は、無線近接センサ11の検出信号を受け取ることができ、その受け取った検出信号からその工作機械9を制御することができる。
【0021】
上記においてコントローラ側無線部5ではFM受信アンテナ141,142それぞれの受信周波数がf1,f2に設定されており、無線近接センサ11の送信周波数がf1に設定されている場合では、FM受信アンテナ141で、送信周波数がf2に設定されている場合では、FM受信アンテナ142で受信できるようになっている。
【0022】
図2に上記無線近接センサシステム1の回路ブロック構成を示す。
【0023】
制御盤3にはPLC7と、コントローラ側無線部5とが配備されている。コントローラ側無線部5はFM受信アンテナ141,142を有する。工作機械9内部にはコントローラ側無線部5のAM送信アンテナ13が配置されている。工作機械9内部には複数の無線近接センサ11が配置されている。各無線近接センサ11は、センサ側無線部25と、センサ部27とから構成されている。センサ側無線部25は、それぞれ、FM送信アンテナ21、AM受信アンテナ23を備える。コントローラ側無線部5はAM送信アンテナ13からいずれかの無線近接センサ11を起動対象として選択して起動させるためのセンサ識別情報を含む起動信号を送信する。選択された無線近接センサ11はスリープモードから起動されて必要な近接検出信号をFM送信アンテナ21からコントローラ側無線部5のFM受信アンテナ141,142に送信する。選択されない無線近接センサ11はスリープモードのままである。また、選択された無線近接センサ11も必要な近接検出信号をFM送信アンテナ21からコントローラ側無線部5のFM受信アンテナ141,142に送信した後は、スリープモードに復帰する。以上から無線近接センサ11内のセンサ側無線部25は電池29の消費が極めて低くなる。また、無線近接センサ11から常時近接検出信号を送信するのではなく必要な時にのみ近接検出信号を送信するので、工作機械9等の電気的ノイズが多発する環境下に設置しても、無線近接センサ11側の検出状態から工作機械9等を制御することができ、結果として、消費電流低減化と同時にシステムの安全性を同時に達成しつつ通信を行うことが可能となる。そして、無線近接センサ11は工作機械9内部における設置位置に応じてセンサ側無線部25により送信周波数をf1またはf2のいずれかに設定することができるようになっている。
【0024】
次に、起動信号について図3に示すタイムチャートを参照して説明する。
【0025】
図3(a)は、無線近接センサ11のセンサ部27による検出状態を示し、OFFレベルは検出物体の非検出であり、ONレベルは検出物体の検出を示す。図3(b)は、センサ側無線部25の無線動作を示し、図3(c)は、コントローラ側無線部5における送信動作を示し、図3(d)は、コントローラ側無線部5における受信動作を示し、図3(e)はPLC7の制御動作を示す。
【0026】
図3(a)で示すように無線近接センサ11のセンサ部27が工作機械9内の状態を検出してOFFレベルからONレベルに立ち上がる。この立ち上がった信号をSaで示す。この信号Saの立ち上がりエッジが矢印A0で示すようにセンサ側無線部25に与えられる。センサ側無線部25はこの立ち上がりに応答して図3(b)のパルス信号Sb0を生成し、このパルス信号Sb0をコントローラ側無線部5の受信部に矢印B0で示すように送信する。コントローラ側無線部5の受信部はこのパルス信号Sb0の受信に応答して常時受信状態となる。この常時受信状態は図3(d)で示すハイレベルの信号Sdで示す。このコントローラ側無線部5の受信部は上記信号SdをPLC7に送出する。この受信内容には無線近接センサ11のセンサ識別番号等のセンサ情報が含まれているので、PLC7は、入力機器である無線近接センサ11の状態を知り、工作機械9をシーケンスプログラムに従い制御する。センサ側無線部25は、パルス信号Sb0を送信した後は、スリープモードとなっている。すなわち、無線近接センサ11において、センサ側無線部25は、電池29からの電源供給モードとして、通常の無線動作が可能に電池29電源が供給されるノーマルモードと、電池29電源供給が制限されるスリープモードとを持ち、起動時間以外ではスリープモードになる。
【0027】
次に、PLC7は、無線近接センサ11の状態を知るために、図3(e)で示す制御信号Se1を生成し、この制御信号Se1をコントローラ側無線部5の送信部に矢印E1で示すように入力する。コントローラ側無線部5の送信部はこの制御信号Se1に応答して図3(c)で示す起動信号Sc1を生成し、この起動信号Sc1を矢印C1で示すようにセンサ側無線部25に送信する。センサ側無線部25はこの起動信号Sc1の受信に応答して、図3(a)に示すセンサ部27の検出状態を示すパルス信号Sb1を図3(b)で示すように生成し、この図3(b)のパルス信号Sb1をコントローラ側無線部5の受信部に矢印点線で示すように送信する。こうして無線近接センサ11の状態を示す近接検出信号およびセンサ識別情報を含むパルス信号Sb1がPLC7に送信され、PLC7は工作機械9に対して所要のシーケンス制御を行う。以降、PLC7からの制御信号Se2,Se3,…によりコントローラ側無線部5の送信部から起動信号Sc2,Sc3,…がセンサ側無線部25に送られ、センサ側無線部25では、これに応答する信号Sb2,Sb3,…をコントローラ側無線部5に送信する動作を繰り返す。
【0028】
この場合、起動信号Sc1,Sc2,Sc3,…は間欠的にセンサ側無線部25に送信されるので、センサ側無線部25の起動から送信までの時間は短くかつ間欠的であるから、センサ側無線部25における電池の消費電力は少なく済む。
【0029】
次に、センサ部27の信号Saが立ち下ってOFFレベルになると、このOFF情報は、矢印ANで示すように図3(b)のセンサ側無線部25に送信される。センサ側無線部25はこの送信入力に応答して信号Sb4を生成し、この信号Sb4を矢印BNで示すように図3(d)のコントローラ側無線部5の受信部に送信する。コントローラ側無線部5の受信部はこの送信入力に応答して信号SdをOFFに立ち下げ、この信号Sdの立ち下げをPLC7に知らせる。こうしてPLC7は、無線近接センサ11の状態を知り、工作機械9を制御することができる。
【0030】
以上においては、センサ側無線部25では、コントローラ側無線部5に対して、常時、無線近接センサ11の状態を示す信号Saを送信する必要がなくなり、当該センサ側無線部25における電力消費を低減化することができるようになる。その結果、電池駆動型とした無線近接センサ11に有効に適用することができるようになる。
【0031】
次に図4を参照して無線近接センサ11の概略構成を説明する。
【0032】
無線近接センサ11は、センサ側無線部25と、センサ部27と、電池(電源部)29とを有し、電池29は、センサ部27に電池電源をユーザ操作される電源スイッチ31で選択的に供給可能である一方、センサ側無線部25は、電源供給モードとして、通常の無線動作が可能に電源が供給されるノーマルモードと、電源供給が制限されるスリープモードとを持ち、上記起動信号で起動されている時間以外ではスリープモードになる。
【0033】
センサ部27は、検出コイル27aと、発振部27bと、発振部27bの発振出力を整流して直流化するとともに検波する検波部27cと、この検波部27cの出力に応じて検出物体の有無を示す検出信号を発生する出力部27dと、を備える。発振部27bは、金属体や磁性体等からなる検出物体が検出コイル27aに接近すると、電磁誘導作用によって渦電流損が生じて検出コイル27aの実効抵抗値であるインピーダンスが変化することにより発振部27bの発振出力の振幅(発振振幅)レベルが変化するものであり、検出物体の近接状態に応じて発振部27bの発振振幅レベルが変化して、発振または発振停止することで検出物体の有無の検出を行うことができるようになっている。検波部27cは、発振部27bの発振出力の大きさに対応して直流化し所定値と比較し、検出物体が接近して発振出力が所定値にまで小さくなると検出動作し、その検出出力を出力部27dに出力する。
【0034】
センサ側無線部25は、電源制御部251、マイコン(マイクロコンピュータの略)252、FM変調送信部253、AM受信復調部254を備える。無線近接センサ11は、FM送信アンテナ21、AM受信アンテナ23を備える。マイコン252は、CPU、メモリ等を含み、メモリには無線近接センサ11の動作制御プログラム、電源供給モード制御プログラム、送信周波数設定プログラム、その他のプログラムを格納するメモリや、CPUの作業エリアを提供するメモリや、データ等を格納するメモリ等から構成されている。
【0035】
センサ側無線部25では、センサ部27からの検出信号をマイコン252のAD変換ポートに入力されると、マイコン252では、検出信号の入力に応答して制御信号でFM変調送信部253を制御して300MHz帯から400MHz帯の信号を送信する。
【0036】
センサ側無線部25の電源制御部251は、マイコン252により制御されて、通常の無線動作が可能なようにセンサ側無線部25への電源が供給されるノーマルモードと、センサ側無線部25への電源供給が制限されるスリープモードとに電源の供給を制御する。
【0037】
図5を参照してコントローラ側無線部5の概略構成を説明すると、コントローラ側無線部5は、AM送信アンテナ13、FM受信アンテナ141,142、FM受信復調部531,532、AM変調送信部54、マイコン55、出力部56、入力部57を備える。マイコン55は、CPU、メモリ等を含み、メモリには無線近接センサ11のセンサ側無線部25との通信およびPLC7との通信制御プログラム、その他のプログラムを格納するメモリや、CPUの作業エリアを提供するメモリや、データ等を格納するメモリ等から構成されている。
【0038】
コントローラ側無線部5では、センサ側無線部25のFM送信アンテナ21から送信されてくる近接検出信号が送信周波数f1である場合ではFM受信アンテナ141で受信すると共にFM受信復調部531で復調したうえでマイコン55のAD変換ポートに、また送信周波数f2である場合ではFM受信アンテナ142で受信すると共にFM受信復調部532で復調したうえでマイコン55のAD変換ポートに、それぞれ、入力する。マイコン55では、それら近接検出信号を処理して出力ポートから出力部56を通じてPLC7に出力する。入力部57はPLC7からの制御指令を入力する。マイコン55はPLC7からの制御指令に応答してAM変調送信部54を制御してAM送信アンテナ13から起動信号を送信する。
【0039】
次に図6以降を参照して実施の形態に係る無線近接センサシステムを詳細に説明する。図6(a)は、工作機械9内部でワーク18の機械加工位置を図上で左上位置A,左下位置B,右下位置C,右上位置Dとし、ワーク18はシーケンスプログラムにより上記A→B→C→Dの順序で機械加工されるようになっている。そして、上記各加工位置A,B,C,Dにはそれらを検出位置として送信周波数がそれぞれf1,f2(≠f1)の2台の無線近接センサ11からなるセンサ組が配置されている。センサ組内の両無線近接センサ11はワーク18が所定の加工位置A,B,C,Dにセットされていることを検出位置で検出した場合では両無線近接センサ11それぞれが送信周波数f1,f2でワーク18が所定の加工位置A,B,C,Dにセットされていることを示す近接検出信号を送信する。
【0040】
加工位置Aにおけるセンサ組の両無線近接センサ11はセンサ1(送信周波数f1)、センサ3(送信周波数f2)といい、加工位置Bにおけるセンサ組の両無線近接センサ11はセンサ1(送信周波数f1)、センサ4(送信周波数f2)といい、加工位置Cにおけるセンサ組の両無線近接センサ11はセンサ2(送信周波数f1)、センサ4(送信周波数f2)といい、加工位置Dにおけるセンサ組の両無線近接センサ11はセンサ2(送信周波数f1)、センサ3(送信周波数f2)ということにする。
【0041】
センサ1ないし4はセンサ識別番号(識別コード)また、コントローラ側無線部5は図6(b)で示すようにFM受信アンテナ141、FM受信復調部531では受信周波数f1でセンサ1,2、FM受信アンテナ142、FM受信復調部532では受信周波数f2でセンサ3,4それぞれからの近接検出信号を受信復調するものとする。
【0042】
シーケンスプログラムにより上記加工位置A,B,C,Dの順序でそれぞれのセンサ1,2,3,4に起動対象が送信される。起動信号には起動対象となるセンサ識別番号を含む起動情報が付けられている。まず、加工位置Aにワーク18が図示略の移動機構により移動した場合、その加工位置Aでのセンサ組であるセンサ1,3が、ワーク18が所定の加工位置にセットされる位置にまで近接したことを検出すると、それぞれのセンサ1,3は近接検出信号を送信する。センサ1は送信周波数f1で、センサ3は送信周波数f2でそれぞれ近接検出信号を送信する。これら近接検出信号においてセンサ1からの近接検出信号はコントローラ側無線部5のFM受信アンテナ141で、センサ3からの近接検出信号はFM受信アンテナ142で、それぞれ、受信される。以下、加工位置B、C、Dそれぞれでワーク18が移動することにより、近接検出信号はコントローラ側無線部5のFM受信アンテナ141,142で受信される。
【0043】
図7に、ワーク18が加工位置A,B,C,Dそれぞれにあるときのセンサ1ないし4それぞれのワーク18の検出タイミングを説明すると、図7(a)はセンサ1、3それぞれのワーク18の検出タイミングであり、OFFはセンサ部27がワーク18を検出する前のタイミングであり、ONレベルはセンサ部27がワーク18を検出したタイミングである。図7(b)は、ワーク18が加工位置Bにあるときのセンサ組内のセンサ4,1の検出タイミングであり、図7(c)はワーク18が加工位置Cにあるときのセンサ組内のセンサ2,4の検出タイミングであり、図7(d)はワーク18が加工位置Dにあるときのセンサ組内のセンサ2,3の検出タイミングである。
【0044】
図8(a)はセンサ1ないし4それぞれの位置でのワーク18の検出タイミングを示し、図8(b)はその検出タイミングにおいて近接検出信号を送信する送信コードであり、近接検出信号をフレーム時間10msのフレーム情報にして4回連続して送信するものである。このフレーム情報には近接検出信号、センサ識別番号、その他の情報を含む。
【0045】
この場合、工作機械9内部の電気的ノイズにより例えばワーク18が各加工位置A〜Dそれぞれにあるときに各センサ組内の両無線近接センサ11それぞれが送信する4つのフレーム情報において例えば最初のフレーム情報の一部に欠落が発生しても、次のフレーム情報を、コントローラ側無線部5側で受信することができるので、ワーク18の近接検出を失敗することはない。また、センサ1,3の一方がワーク18の検出ができない場合があっても、センサ1,3の他方によりワーク18の検出ができる。
【0046】
以上から実施の形態では、ワーク18の各加工位置A,B,C,Dそれぞれに2台ずつ無線近接センサ11がセンサ組として配置されているので、加工位置A,B,C,Dそれぞれでセンサ組内における一方の無線近接センサ11が電気的ノイズやその他の要因でワーク18の近接検出信号の送信データの一部欠落等があった場合でも、センサ組内における他方の無線近接センサ11からワーク18の近接検出信号を送信データが欠落することなく送信することができるようになる。この場合、同一位置に無線近接センサ11を配置してもそれぞれの送信周波数がf1,f2で異なるので電波干渉することがない。また、各無線近接センサ11のセンサ側無線部25は起動信号で起動される以外はスリープモードになっているので、電池29の消費が極めて低くなる。この場合、無線近接センサ11から常時近接検出信号を送信するのではなく必要な時にのみ近接検出信号を送信するので、工作機械9等の電気的ノイズが多発する環境下に設置しても、無線近接センサ11側の検出状態から工作機械9を制御することができ、結果として、消費電流低減化と同時にシステムの安全性を達成しつつ通信を行うことが可能となる。
【0047】
以上から、実施の形態の無線近接センサシステムでは、システム安全性、確実性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る無線近接センサシステムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は図1の無線近接センサシステムのブロック回路構成を示す図である。
【図3】図3は動作説明に用いるタイムチャートである。
【図4】図4は無線近接センサのブロック回路構成を示す図である。
【図5】図5はコントローラ側無線部のブロック回路構成を示す図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態の適用例の説明のための図であり、図6(a)は工作機械内部のワークの各移動位置と、各移動位置での無線近接センサの配置を示す図である。
【図7】図7は工作機械内部のワークの各移動位置に配置した2つ1対の無線近接センサ対の検出タイミングを示す図である。
【図8】図8(a)はセンサ1ないし4の検出タイミング、図8(b)はセンサ1ないし4が送信するフレーム情報を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 無線近接センサシステム
3 制御盤
5 コントローラ側無線部
7 PLC
9 工作機械
11 無線近接センサ
13 AM送信アンテナ
141,142 FM受信アンテナ
21 FM送信アンテナ
23 AM受信アンテナ
25 センサ側無線部
27 センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ検出位置に配置され互いに異なる周波数で該検出位置に近接した検出物体の近接検出信号を送信する少なくとも無線近接センサ2台からなるセンサ組と、
上記センサ組の両無線近接センサそれぞれが送信する近接検出信号の受信が可能なコントローラ側無線部と、を備えたことを特徴とする無線近接センサシステム。
【請求項2】
上記検出位置を複数有し、各検出位置それぞれに上記センサ組を配置し、上記コントローラ側無線部は、各検出位置それぞれのセンサ組内の両無線近接センサからの近接検出信号を受信することが可能になっている、ことを特徴とする請求項1に記載の無線近接センサシステム。
【請求項3】
上記センサ組の両無線近接センサは、近接検出信号とセンサ識別情報とを含むフレーム情報を所要数連続送信する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の無線近接センサシステム。
【請求項4】
上記センサ組の両無線近接センサは、送信フレーム情報を無線で送信するセンサ側無線部と、上記センサ側無線部に電源を供給する電池電源と、起動信号に応答して電池電源をセンサ側無線部に供給制御する電源制御部と、を含み、
上記コントローラ側無線部は、上記センサ組の両センサ側無線部へ起動信号を送信することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無線近接センサシステム。
【請求項5】
上記コントローラ側無線部に起動信号の送信を要求するプログラマブルコントローラを備える、ことを特徴とする請求項4に記載の無線近接センサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−200878(P2009−200878A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41035(P2008−41035)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】