説明

無線送信装置、無線受信装置、プログラム、集積回路および無線通信システム

【課題】無線送信装置から送信されたマルチユーザMIMO信号が線形プリコーディングであるか非線形プリコーディングであるのかを、制御情報量を増大させずに無線受信装置に通知する。
【解決手段】複数の送信アンテナ303を備え、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置であって、前記各無線受信装置を複数のグループに分類し、前記グループ毎にプリコーディング方式を決定するグループ構成部307と、前記各グループからいずれか一つのグループを選択する選択部315と、前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうプリコーディング部323と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送信装置から複数の無線受信装置に対して、空間多重を用いて同時にデータ伝送を行なう無線送信装置、無線受信装置、および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送受信に複数のアンテナを使用し、同じ周波数帯域で複数の異なるデータ系列(データストリーム)を空間的に多重して同時通信するMIMO(Multiple-Input Multiple-Output:多入力多出力)伝送技術が、無線LANやセルラシステムなどで実用化されている。複数の異なるデータ系列を空間多重して、ある1つの無線受信装置(端末装置)に伝送するシングルユーザMIMO(Single User MIMO)では、無線受信装置における複数のデータ系列の分離・検出の性能を向上させるために、無線送信装置(基地局装置、アクセスポイント)において送信信号にプリコーディングを施してから送信する方法がある。また、次世代のセルラシステムや無線LAN等において、無線送信装置の備える送信アンテナ数が無線受信装置の備える受信アンテナ数に比べて大幅に多くなるシステムが提案されている。このようなシステムにおいて、無線送信装置の送信アンテナを有効に活用してさらにシステムスループットを向上させるために、複数の無線受信装置(ユーザ)宛のデータ系列をMIMO多重するマルチユーザMIMO(Multi-User MIMO)が提案されている。
【0003】
しかしながら、マルチユーザMIMOにおいて多重された信号を受信する複数の無線受信装置の間では、他の無線受信装置が受信した信号を知ることはできないため、そのままでは各ユーザ宛のストリーム間で生じるユーザ間干渉(Multi-User Interference:MUI)により大幅に特性が劣化してしまう。ここで、無線送信装置の各送信アンテナから各無線受信装置の各受信アンテナまでのチャネル状態情報であるCSI(Channel State Information)を無線送信装置が知っていれば、無線受信装置に大きな負荷を掛けることなく無線受信装置における受信時にMUIを抑圧できる送信信号を生成することができる、幾つかの方法が提案されている(非特許文献1)。
【0004】
例えば、無線受信装置における受信時にMUIが抑圧された状態で受信できるように、無線送信装置において送信信号にプリコーディングを施してから送信する方法がある。その例として、CSIより求めた各送信アンテナと各無線受信装置の各受信アンテナとの間の複素伝搬路利得を要素に持つチャネル行列Hから、その逆行列H−1(または擬似逆行列H=H(HH−1:上付き添え字のHはエルミート共役を表す)を重み行列(線形フィルタ)Wとして用いて送信信号に重み付け(W=H−1を送信信号に乗算)するZero-forcing(ZF)プリコーディングや、最小平均二乗誤差(Minimum Mean Square Error:MMSE)規範で求めた重み行列(線形フィルタ)W=H(HH+αI)−1(Iは単位行列、αは正規化係数を表す)で送信信号を重み付けするMMSEプリコーディングなどの、線形処理によって送信信号をプリコーディングする線形プリコーディング(Linear Precoding:LP)がある。
【0005】
他の例として、CSIより求めた干渉信号成分を送信信号から予め減算し、干渉減算後に増加してしまう送信電力を抑圧するために、信号空間の中で送信電力が低減されるような信号点に干渉減算後の信号を符号化する非線形処理によって送信信号をプリコーディングする、非線形プリコーディング(Non-Linear Precoding:NLP)がある。この非線形プリコーディングの1つとして、無線送信装置と無線受信装置の双方で信号に対してモジュロ(Modulo、剰余)演算を施すことによって、送信電力の増加を抑圧することが可能なトムリンソン−ハラシマ・プリコーディング(Tomlinson-Harashima Precoding:THP)が提案されている(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。このとき、受信側である無線受信装置においても、受信信号に対して送信と同様のモジュロ演算を施す。ここでモジュロ幅τによるモジュロ演算Modτは、送信側における干渉減算後の信号または受信側における受信信号を表す複素ベクトルをνとしたとき、式(1)で表される。なお、jは虚数単位、floor(a)はaを超えない最大の整数を表し、Re(ν)およびIm(ν)はそれぞれ複素数νの実部(信号の同相成分に相当)と虚部(信号の直交成分に相当)を表す。なお、ここでの非線形処理とは、主に、モジュロ演算等の出力に不連続点が存在する処理を用いたものをいう。
【0006】
【数1】

【0007】
さらに、THPにおけるモジュロ演算がもたらす、低い信号対雑音電力比(Signal to Noise power Ratio:SNR)におけるModulo-Lossと呼ばれる特性劣化を考慮して、MUIが小さく、モジュロ演算による送信電力抑圧効果の小さい端末についてはモジュロ演算を適用せずに線形プリコーディングと同様の処理を施し、MUIが大きく、モジュロ演算による送信電力抑圧効果が大きい端末についてのみモジュロ演算を適用してTHPによる非線形プリコーディングを行なう方式が提案されている(非特許文献6)。
【0008】
一方、無線送信装置から送信されたマルチユーザMIMO信号に空間多重されたデータ系列の宛先となる複数の無線受信装置を識別する方法として、マルチユーザMIMOで空間多重する無線受信装置の組み合わせ(グループ)を決定して、それぞれのグループを識別するグループID(Group ID:GID)をマルチユーザMIMO伝送時に送信フレームの制御情報に埋め込む方法が、策定中の無線LAN規格のIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)801.11acで提案されている(非特許文献7)。ここで、各無線受信装置は複数のグループに属することも可能である。なお、上記の組み合わせは、マルチユーザMIMO伝送に先立って、マルチユーザMIMOで空間多重する無線受信装置の組み合わせ(グループ)を無線送信装置(アクセスポイント)が決定して、それぞれのグループを識別するグループIDを付加して、各無線受信装置に対してどのグループに属するかを通知する。また、このグループ構成は、無線送信装置によって無線受信装置へ通知される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Spencer他、「An Introduction to the Multi-User MIMO Downlink」、IEEE Communication Magazine、Vol.42、Issue10、p.60-67、2004年10月
【非特許文献2】Harashima他、「Matched-Transmission Technique for Channels With Intersymbol Interference」、IEEE Transaction on Communications、Vol.COM-20、No.4、p.774-780、1972年8月
【非特許文献3】J.Liu他、「Improved Tomlinson-Harashima Precoding for the Downlink of Multiple Antenna Multi-User Systems」、Proc. IEEE Wireless and Communications and Networking Conference、p.466-472、2005年3月
【非特許文献4】M.Joham他、「MMSE Approaches to Multiuser Spatio-Temporal Tomlinson-Harashima Precoding」、Proc. 5th Int. ITG Conf. on Source and Channel Coding、p.387-394、2004年1月
【非特許文献5】P.W. Wolniansky 他、「V-BLAST: an architecture for realizing very high data rates over the rich-scattering wireless channel」、Proc. ISSSE-98、p.295-300、 1998年9月
【非特許文献6】中野他、「送信方法を適応的に制御するダウンリンクMU-MIMO THPに関する提案」、信学技報、RCS2009-293、2010年3月
【非特許文献7】「IEEE P802.11 Wireless LANs Specification Framework for TGac」、IEEE 802.11-09/0992r21、2011年1月
【非特許文献8】Kazuki Takeda他、「Single-Carrier HARQ Using Joint THP and FDE」、Proc. 2007 IEEE 66th Vehicular Technology Conference (VTC-2007 Fall)、p.1188-1192、2007年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非線形プリコーディングによって干渉抑圧されて送信された信号を受信する無線受信装置では、線形プリコーディングの場合と異なり、受信信号に対して送信側と同様のモジュロ演算を施す必要がある。このため、無線通信システムにおいて、無線送信装置が線形プリコーディングと非線形プリコーディングの両方に対応し、無線受信装置に線形プリコーディングと非線形プリコーディングの両方に対応するものが存在する場合、さらに非特許文献6のように無線送信装置が線形プリコーディングと非線形プリコーディングとを同時に組み合わせて干渉抑圧を行なう場合などのように、2種類の干渉抑圧方式が混在して併用される場合、無線受信装置では干渉抑圧方式に応じてモジュロ演算を行なうか否かを切り替える必要がある。このため無線送信装置は、干渉抑圧されて送信された信号を受信する受信装置に対して、当該無線受信装置で受信される信号が、線形プリコーディングであるのか、非線形プリコーディングであるのかを制御情報等で通知する必要があり、制御情報量が増加してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、無線送信装置から送信されたマルチユーザMIMO信号が線形プリコーディングであるか非線形プリコーディングであるのかを、制御情報量を増大させずに無線受信装置に通知することが可能となる無線送信装置、無線受信装置、プログラム、集積回路および無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線送信装置は、複数の送信アンテナを備え、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置であって、前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させ、前記グループ毎にプリコーディング方式を決定するグループ構成部と、前記各グループからいずれか一つのグループを選択する選択部と、前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうプリコーディング部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このように、選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0014】
(2)また、本発明の無線送信装置は、前記決定されたグループを記憶するグループ記憶部と、前記グループ毎のグループ構成情報を生成する構成情報生成部と、前記選択されたグループのグループ識別情報を生成する識別情報生成部と、をさらに備え、前記グループ構成情報、前記グループ識別情報、および前記プリコーディングされた信号を前記選択されたグループに属する各無線受信装置に送信することを特徴とする。
【0015】
この構成により、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0016】
(3)また、本発明の無線送信装置において、前記プリコーディング方式は、線形プリコーディングまたは非線形プリコーディングのいずれか一方であることを特徴とする。
【0017】
この構成により、線形プリコーディングと非線形プリコーディングの両方に対応することができると共に、両方を切り替えて使用することが可能となる。
【0018】
(4)また、本発明の無線送信装置は、複数の送信アンテナを備え、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置であって、前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させると共に、前記各グループに属する無線受信装置毎にプリコーディング方式を決定するグループ構成部と、前記各グループからいずれか一つのグループを選択する選択部と、前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうプリコーディング部と、を備えることを特徴とする。
【0019】
このように、選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。また、複数の無線受信装置毎に異なるプリコーディング方式を混在させて、使い分けることが可能となる。
【0020】
(5)また、本発明の無線送信装置は、前記決定されたグループを記憶するグループ記憶部と、前記グループ毎のグループ構成情報を生成する構成情報生成部と、前記選択されたグループのグループ識別情報を生成する識別情報生成部と、をさらに備え、前記グループ構成情報、前記グループ識別情報、および前記プリコーディングされた信号を前記選択されたグループに属する各無線受信装置に送信することを特徴とする。
【0021】
この構成により、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0022】
(6)また、本発明の無線送信装置において、前記プリコーディング方式は、線形プリコーディングまたは非線形プリコーディングのいずれか一方であることを特徴とする。
【0023】
この構成により、線形プリコーディングと非線形プリコーディングの両方に対応することができると共に、両方を切り替えて使用することが可能となる。
【0024】
(7)また、本発明の無線受信装置は、複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する無線受信装置であって、前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する受信部と、前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する判定部と、前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、自装置宛ての信号に、前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応した受信処理を行なう受信処理部と、を備えることを特徴とする。
【0025】
このように、自装置が前記グループに属する場合、前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応した受信処理を行なうので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0026】
(8)また、本発明の無線受信装置において、前記プリコーディング方式は、線形プリコーディングまたは非線形プリコーディングのいずれか一方であり、前記受信処理部は、前記プリコーディング方式が非線形プリコーディングである場合は、受信データシンボルにモジュロ演算を行なうことを特徴とする。
【0027】
この構成により、線形プリコーディングと非線形プリコーディングの両方に対応することができると共に、両方を切り替えて使用することが可能となる。
【0028】
(9)また、本発明の無線受信装置は、複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する無線受信装置であって、前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する受信部と、前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する判定部と、前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、自装置宛ての信号に、前記グループにおいて自装置に対して決定されたプリコーディング方式に対応した受信処理を行なう受信処理部と、を備えることを特徴とする。
【0029】
このように、自装置が前記グループに属する場合、自装置宛ての信号に、前記グループにおいて自装置に対して決定されたプリコーディング方式に対応した受信処理を行なうので、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0030】
(10)また、本発明の無線受信装置において、前記プリコーディング方式は、線形プリコーディングまたは非線形プリコーディングのいずれか一方であり、前記受信処理部は、前記プリコーディング方式が非線形プリコーディングである場合は、受信データシンボルにモジュロ演算を行なうことを特徴とする。
【0031】
この構成により、線形プリコーディングと非線形プリコーディングの両方に対応することができると共に、両方を切り替えて使用することが可能となる。
【0032】
(11)また、本発明のプログラムは、複数の送信アンテナを備え、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置を制御するプログラムであって、前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させる処理と、前記グループ毎にプリコーディング方式を決定する処理と、前記各グループからいずれか一つのグループを選択する処理と、前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なう処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0033】
このように、選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0034】
(12)また、本発明のプログラムは、複数の送信アンテナを備え、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置を制御するプログラムであって、前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させる処理と、前記各グループに属する無線受信装置毎にプリコーディング方式を決定する処理と、前記各グループからいずれか一つのグループを選択する処理と、前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なう処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0035】
このように、選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。また、複数の無線受信装置毎に異なるプリコーディング方式を混在させて、使い分けることが可能となる。
【0036】
(13)また、本発明のプログラムは、複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する無線受信装置を制御するプログラムであって、前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する処理と、前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する処理と、前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0037】
このように、自装置が前記グループに属する場合、前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信するので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0038】
(14)また、本発明のプログラムは、複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する無線受信装置を制御するプログラムであって、前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する処理と、前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する処理と、前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、前記グループに属する無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0039】
このように、自装置が前記グループに属する場合、前記グループに属する無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信するので、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0040】
(15)また、本発明の集積回路は、複数の送信アンテナを備える無線送信装置に実装されることにより、前記無線送信装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する機能と、前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させる機能と、前記グループ毎にプリコーディング方式を決定する機能と、前記各グループからいずれか一つのグループを選択する機能と、前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なう機能と、の一連の機能を、前記無線送信装置に発揮させることを特徴とする。
【0041】
このように、選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0042】
(16)また、本発明の集積回路は、複数の送信アンテナを備える無線送信装置に実装されることにより、前記無線送信装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する機能と、前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させる機能と、前記各グループに属する無線受信装置毎にプリコーディング方式を決定する機能と、前記各グループからいずれか一つのグループを選択する機能と、前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なう機能と、の一連の機能を、前記無線送信装置に発揮させることを特徴とする。
【0043】
このように、選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。また、複数の無線受信装置毎に異なるプリコーディング方式を混在させて、使い分けることが可能となる。
【0044】
(17)また、本発明の集積回路は、無線受信装置に実装されることにより、前記無線受信装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する機能と、前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する機能と、前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する機能と、前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信する機能と、の一連の機能を、前記無線受信装置に発揮させることを特徴とする。
【0045】
このように、自装置が前記グループに属する場合、前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信するので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0046】
(18)また、本発明の集積回路は、無線受信装置に実装されることにより、前記無線受信装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する機能と、前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する機能と、前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する機能と、前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、前記グループに属する無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信する機能と、の一連の機能を、前記無線受信装置に発揮させることを特徴とする。
【0047】
このように、自装置が前記グループに属する場合、前記グループに属する無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信するので、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0048】
(19)また、本発明の無線通信システムは、複数の無線受信装置と、複数の送信アンテナを備え、前記複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置とから構成される無線通信システムであって、前記各無線受信装置が少なくとも1つのグループに属し、前記グループ毎にプリコーディング方式が決定されたグループ構成情報を、前記無線送信装置と前記各無線受信装置がそれぞれ記憶し、前記無線送信装置は、前記各グループからいずれか一つのグループを選択し、前記選択されたグループのグループ識別情報を送信し、前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記記憶されたグループ構成情報に基づいて、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行ない、前記プリコーディング後の信号を空間多重して送信し、前記無線受信装置は、前記無線送信装置が送信したグループ識別情報を受信し、前記記憶されたグループ構成情報と前記受信されたグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定し、前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、自装置宛ての信号に前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応した受信処理を行なうことを特徴とする。
【0049】
このように、選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。
【0050】
(20)また、本発明の無線通信システムは、複数の無線受信装置と、複数の送信アンテナを備え、前記複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置とから構成される無線通信システムであって、前記各無線受信装置が少なくとも1つのグループに属し、前記各グループに属する無線受信装置毎にプリコーディング方式が決定されたグループ構成情報を、前記無線送信装置と前記各無線受信装置がそれぞれ記憶し、前記無線送信装置は、前記各グループからいずれか一つのグループを選択し、前記選択されたグループのグループ識別情報を送信し、前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記記憶されたグループ構成情報に基づいて、前記選択されたグループに属する各無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行ない、前記プリコーディング後の信号を空間多重して送信し、前記無線受信装置は、前記無線送信装置が送信したグループ識別情報を受信し、前記記憶されたグループ構成情報と前記受信されたグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定し、前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、自装置宛ての信号に、前記グループにおいて自装置に対して決定されたプリコーディング方式に対応した受信処理を行なうことを特徴とする。
【0051】
このように、選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうので、無線受信装置において、無線送信装置から送信された空間多重信号がどのようなプリコーディング方式でプリコーディングされたのかを、グループから識別することが可能となる。その結果、制御情報量を増大させずにプリコーディング方式を無線受信装置に通知することが可能となる。また、複数の無線受信装置毎に異なるプリコーディング方式を混在させて、使い分けることが可能となる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、無線送信装置から送信されたマルチユーザMIMO信号が線形プリコーディングであるか非線形プリコーディングであるのかを、制御情報量を増大させずに無線受信装置に通知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の通信システムの概略構成例を示す図である。
【図2】本発明の無線送信装置100の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るプリコーディング部323の一構成例であるプリコーディング部323aを示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る線形プリコーディング部401の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る非線形プリコーディング部403の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図6A】本発明の第1の実施形態に係る無線受信装置200の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図6B】本発明の第1の実施形態に係る無線受信装置200の別の構成例を示す機能ブロック図である。
【図7】本発明の第1の実施形態において、無線送信装置100のグループ構成部307で作成され、無線受信装置200と共有されるグループ情報の一例を示す図である。
【図8A】本発明の第1の実施形態に係る、無線送信装置100と各無線受信装置との間の動作を示すシーケンスチャートの一例を示したものである。
【図8B】本発明の第1の実施形態に係る、無線送信装置100と各無線受信装置との間の動作を示すシーケンスチャートの一例を示したものである。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るプリコーディング部323の一構成例であるプリコーディング部323bを示す機能ブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る混在プリコーディング部801の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施形態において、無線送信装置100のグループ構成部307で作成され、無線受信装置200と共有されるグループ情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0055】
(第1の実施形態)
本実施形態による通信技術について、無線送信装置(基地局装置、アクセスポイント等)が、複数の無線受信装置(端末装置)のうちから複数の無線受信装置を選択してマルチユーザMIMO伝送を行ない、各無線受信装置宛のストリーム間で生じるユーザ間干渉(MUI)を線形プリコーディングまたは非線形プリコーディングによって予め抑圧して送信する無線通信システムを例として説明する。
【0056】
図1は、本発明の無線通信システムの概略構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態における無線通信システムでは、無線送信装置100が複数の無線受信装置(例えば、無線受信装置200−1〜200−8、無線受信装置200−1〜200−8を合わせて無線受信装置200とも表す)と通信するに際し、無線送信装置100がこれらの無線受信装置200の複数の組み合わせによって複数のグループを作成し、グループを識別するグループ識別番号(グループID)を付与する。なお、1つの無線受信装置200は複数のグループに属することができる。これらグループ毎に、マルチユーザMIMO伝送のために用いるプリコーディング方式を定める。上記グループ分けの情報(各無線受信装置200がどのグループに属しているのかの情報)と、定めたプリコーディング方式の情報、および各グループでの所属無線受信装置の処理順番を定めた情報を、通信に先立って無線受信装置200に通知する。
【0057】
無線送信装置100は、マルチユーザMIMO伝送の対象とする無線受信装置200(対象無線受信装置)の組み合わせを、その組み合わせの候補である上記で作成した複数のグループから1つを選択し、選択したグループに属する複数の無線受信装置200宛の送信データを、同じ周波数帯域で空間的に多重して同時通信するマルチユーザMIMO伝送を行なう。このとき、選択したグループを識別するグループIDを用いて当該マルチユーザMIMO伝送の対象とするグループを無線受信装置200へ通知する。また同時に、無線受信装置200では、このグループIDの通知によって無線送信装置100が用いたプリコーディング方式を識別できる。また、伝送方式として直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)を用いた通信システムを例として説明するが、これに限られるものではない。
【0058】
各無線受信装置200−1〜200−8は、無線送信装置100からの参照信号(送受信で既知の信号。パイロット信号、トレーニング信号など)を受信し、無線送信装置100の各送信アンテナと自無線受信装置200の各受信アンテナとの間の伝搬路状態を推定し、伝搬路状態を表す伝搬路情報を無線送信装置100にそれぞれ報告する。無線送信装置100は、各無線受信装置200から報告された伝搬路情報等に基づいて複数のグループから1つのグループを選択し、それら複数の無線受信装置200宛の送信データを空間的に多重して同時通信するマルチユーザMIMO伝送を行なう。
【0059】
例えば、伝搬路情報として、信号電力対雑音電力比(Signal to Noise power Ratio:SNR)、信号電力対干渉および雑音電力比(Signal to Interference plus Noise power Ratio:SINR)、搬送波電力対雑音電力比(Carrier to Noise power Ratio:CNR)、搬送波電力対干渉および雑音電力比(Carrier to Interference plus Noise power Ratio:CINR)あるいはそれらから算出された値を表す受信品質情報(Channel Quality Indicator:CQI)と、無線送信装置100の各送信アンテナから各無線受信装置200の各受信アンテナまでの複素伝搬路利得やその共分散値等を表すチャネル状態情報(Channel State Information:CSI)、またはチャネル状態から求めた所望プリコーディング行列のインデックス(Precoding Matrix Index:PMI)などを各無線受信装置200から受信し、これらの情報を基にマルチユーザMIMOで多重する無線受信装置200のグループを選択する。
【0060】
図2は、本発明の無線送信装置100の一構成例を示す機能ブロック図である。図2の無線送信装置100の一構成例は、4つのアンテナを備え、最大4つの無線受信装置200宛の送信データを空間多重してマルチユーザMIMO伝送することができる。無線受信部301は、アンテナ部303の複数のアンテナを通じて各無線受信装置200(無線受信装置200−1〜200−8)から送信された信号を受信する。制御情報取得部305は、初めて通信を確立する無線受信装置200や、グループ分けを更新する際などの各無線受信装置200などから受信した、それぞれの無線受信装置200が対応しているプリコーディング方式の情報(対応情報)、あるいは対応しているプリコーディング方式が判別できる種別情報(端末クラス、準拠規格情報、モジュロ演算機能の有無などを示す受信機能情報など)を取得し、各無線受信装置200の対応プリコーディング方式情報を出力する。
【0061】
グループ構成部307は、少なくとも制御情報取得部305が出力する各無線受信装置200の対応プリコーディング方式情報に基づいて、各無線受信装置200の複数の組み合わせによって複数のグループを作成し、それぞれのグループで用いるプリコーディング方式を定める。この際、各グループ内における各無線受信装置200の順番(マルチユーザMIMO伝送処理における伝搬路情報通知や確認応答/否定応答などの順番、空間ストリームの順番など)も決定する。なお、1つの無線受信装置200は複数のグループに属することができる。さらに、どのグループにも属さない無線受信装置200が存在していても良い。また、各無線受信装置200の位置情報や、各無線受信装置200からの電波の到来角を推定した結果などの情報をさらに用いてグループ分けを行なっても良い。この場合、例えば、伝搬路の相関が低くなるように位置の離れた無線受信装置200同士や電波到来角の離れた無線受信装置200同士でグループを作成しても良い。また、同じ無線受信装置200の組み合わせで、プリコーディング方式や各無線受信装置200の順番が異なる複数のグループがあっても良い。
【0062】
グループ記憶部309は、グループ構成部307で作成したグループの情報(グループID、所属する無線受信装置200、使用するプリコーディング方式、グループ内での各無線受信装置200の順番を含む、グループ構成情報)を記憶する。構成情報生成部311は、グループ構成部307が作成したグループの情報を各無線受信装置200へ通知するグループ構成情報を生成する。なお、各無線受信装置200に対するグループ構成情報の通知は、グループ毎に所属する無線受信装置200(無線受信装置200の識別情報、すなわちユーザIDやMACアドレスなど)と順番およびプリコーディング方式の情報を通知しても良いし、無線受信装置200毎に所属するグループとグループ内の順番およびプリコーディング方式の情報を通知しても良い。伝搬路情報取得部313は、受信した信号から、各無線受信装置200−1〜200−8がそれぞれ送信した、CQIおよびCSIの情報が含まれる伝搬路情報を取得する。
【0063】
選択部315は、送信バッファ部317に蓄積された各無線受信装置200宛の送信データ量や優先度、および伝搬路情報取得部313で取得した各無線受信装置200の伝搬路情報などに基づいて、グループ記憶部309に記憶された複数のグループからマルチユーザMIMOで多重する複数の無線受信装置200(対象無線受信装置)が属するグループを選択する。また、選択したグループに対応して予め定めたプリコーディング方式を示すプリコーディング方式選択信号を出力する。さらに、伝搬路情報取得部313で取得した各無線受信装置200からのCQIなどに基づいて、各無線受信装置200宛の送信データに対する変調方式や符号化率(Modulation and Coding Scheme:MCS)などのパラメータを選択しても良い。なお本実施形態では、無線受信装置200−1〜200−8の中から第1から第4の無線受信装置200の4つの端末が属するグループが選択され、各無線受信装置200に1系列(1ストリーム)ずつ送信する場合を説明する。
【0064】
送信バッファ部317は、上位層から入力された各無線受信装置200宛の送信データ系列を蓄積し、選択部315で選択された第1から第4の無線受信装置200宛の各送信データ系列を符号化部319へ出力する。符号化部319は、送信バッファ部317から入力された第1から第4までの無線受信装置200宛の送信データ系列に対してそれぞれ誤り訂正符号化を行なう。なお、選択部315において各無線受信装置200宛の送信データの符号化率が選択されている場合は、その符号化率に従ってレートマッチング(パンクチャ)を行なう。符号化率の指定がない場合は、予め定められた符号化率でレートマッチングを行なっても良い。変調部321は、それぞれ誤り訂正符号化された第1から第4の無線受信装置200宛の送信データ系列に対して変調を施し、それぞれ第1から第4の無線受信装置200宛のサブキャリア毎の変調シンボルを出力する。なお、選択部315において各無線受信装置200宛の送信データの変調方式が選択されている場合は、その変調方式を用いて変調を行なう。変調方式の指定がない場合は、予め定められた変調方式で変調を行なうのが好ましい。
【0065】
プリコーディング部323は、第1から第4の無線受信装置200宛の各変調シンボルが入力され、伝搬路情報取得部313で取得した各無線受信装置200からのCSIに基づいて、入力された各変調シンボルに対して、選択部315で選択したグループに対応して決められたプリコーディング方式によってプリコーディングを施し、送信に使用するアンテナ部303の複数のアンテナ毎のマルチユーザMIMOシンボルを生成する。なお、プリコーディング部323の詳細については後述する。
【0066】
参照信号多重部325は、アンテナ部303の各アンテナから送信する参照信号を、各アンテナから送信するマルチユーザMIMOシンボルにそれぞれ多重する。なお、参照信号の多重は、各無線受信装置200において無線送信装置100の各アンテナから送信された参照信号がそれぞれ識別できる形で受信されるように多重されることが好ましく、例えば時分割で多重しても良いし、サブキャリアで分割するような周波数分割で多重しても良いし、符号分割によって多重しても良い。また、各無線受信装置200に伝搬路を推定させる目的で、送信データ系列の含まれない、参照信号と制御信号から構成されるサウンディング信号(サウンディングフレーム、サウンディングパケット、null data packet)を送信する場合は、参照信号多重部325は各アンテナから送信する参照信号を直接出力する。
【0067】
IFFT部327は、参照信号が多重されたアンテナ毎のマルチユーザMIMO信号に対して、それぞれ逆高速フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform:IFFT)などの周波数時間変換を施し、時間領域の信号へ変換する。GI挿入部329は、アンテナ毎の時間領域信号にそれぞれガード期間(Guard Interval:GI)を挿入する。識別情報生成部331は、選択部315の選択結果に基づき、選択したグループを識別するためのグループ識別番号(グループID)を無線受信装置200へ通知するためのグループ識別情報を生成する。また、各無線受信装置200に対するMCSの情報等を含んでも良い。無線送信部333は、GIの挿入された信号をアンテナ部303のそれぞれのアンテナを通じて送信する。また、構成情報生成部311で生成されたグループ構成情報および識別情報生成部331で生成されたグループ識別情報をアンテナ部303の1つ以上のアンテナを通じて送信する。制御部335は、上記各部を制御し、それぞれの処理を実行させる。
【0068】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るプリコーディング部323の一構成例であるプリコーディング部323aを示す機能ブロック図である。プリコーディング部323aは、線形プリコーディング部401、非線形プリコーディング部403、および切替部405を有する。線形プリコーディング部401は、第1から第4の無線受信装置200宛の各変調シンボルが入力され、伝搬路情報取得部313で取得した伝搬路情報のCSIまたはPMIに基づいて、入力された各変調シンボルに対して、線形プリコーディングを施す。なお、線形プリコーディング部401の詳細については後述する。非線形プリコーディング部403は、第1から第4の無線受信装置200宛の各変調シンボルが入力され、伝搬路情報取得部313で取得した伝搬路情報のCSIまたはPMIに基づいて、入力された各変調シンボルに対して、非線形プリコーディングを施す。なお、非線形プリコーディング部403の詳細については後述する。
【0069】
切替部405は、線形プリコーディング部401の出力した線形プリコーディング結果と、非線形プリコーディング部403の出力した非線形プリコーディング結果とが入力され、選択部315より入力されたプリコーディング方式選択信号に基づいていずれか一方を選択し、アンテナ部303の各アンテナからそれぞれ送信すべき第1〜第4のマルチユーザMIMOシンボルを出力する。なお、線形プリコーディング部401および非線形プリコーディング部403は、プリコーディング方式選択信号が、それぞれ当該プリコーディング方式を選択していない場合には、処理動作を行なわないことが好ましい。これによって消費電力を低減することができる。
【0070】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る線形プリコーディング部401の一構成例を示す機能ブロック図である。線形プリコーディング部401は、フィルタ算出部501と、線形フィルタ部503とを有する。図4の例では、線形プリコーディングとしてCSIに基づくZero-ForcingプリコーディングによってマルチユーザMIMO信号を生成する場合について説明する。フィルタ算出部501は、伝搬路情報取得部313で取得した各無線受信装置200の伝搬路情報のうちのCSIから、無線送信装置100の各アンテナと各無線受信装置200のアンテナとの間の複素伝搬路利得を要素に持つチャネル行列Hをサブキャリア毎に生成し、その逆行列H−1(または擬似逆行列H=H(HH−1)を線形フィルタである重み行列Wとして算出する。線形フィルタ部503は、第1から第4の無線受信装置200宛の変調シンボルを入力として、それぞれのサブキャリア毎にフィルタ算出部501で算出した線形フィルタWを乗算し、アンテナ部303の各アンテナからそれぞれ送信すべきマルチユーザMIMOシンボルを出力する。
【0071】
これにより、上記マルチユーザMIMOシンボルを各無線受信装置200が受信した場合、自無線受信装置200以外への信号による干渉(MUI)は線形プリコーディングによってキャンセルされて自無線受信装置200宛の信号のみが受信される。なお、上記線形プリコーディング部401では、フィルタ算出部501において線形フィルタとして逆行列を算出して用いる例について説明したが、これに限られるものではなく、MMSE規範で求めた重み行列W=H(HH+αI)−1(Iは単位行列、αは正規化係数を表す)を線形フィルタとして用いても良い。この場合、受信時にMUIは完全にはキャンセルされないが、SINRを最大化できるため、受信特性が向上する。また、PMIを用いる通信システムにおいては、フィルタ算出部501において各無線受信装置200のPMIが示すプリコーディングベクタから重み行列を求め、線形フィルタとして用いる。
【0072】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る非線形プリコーディング部403の一構成例を示す機能ブロック図である。図5の例では、非線形プリコーディングとしてトムリンソン−ハラシマ・プリコーディング(THP)によってマルチユーザMIMO信号を生成する場合について説明する。QR分解部(干渉行列算出部)601は、伝搬路情報取得部313で取得した各無線受信装置200の伝搬路情報のうちのCSIから、無線送信装置100の各アンテナと各無線受信装置200のアンテナとの間の複素伝搬路利得を要素に持つチャネル行列Hをサブキャリア毎に生成し、そのチャネル行列Hのエルミート共役HにQR分解を施して、ユニタリ行列Qと上三角行列Rとに分解し、さらに上三角行列Rのエルミート共役R(下三角行列となる)を求め、各無線受信装置200間のMUIの利得を表す干渉行列B=(diagR−1−Iを求めて干渉成分算出部603へ出力し、ユニタリ行列Qを線形フィルタ部605へ出力する。なお、diagXは行列Xの対角成分のみの行列であり、Iは単位行列を表す。ここで、干渉行列Bは式(2)の形となる。
【0073】
【数2】

【0074】
第1のモジュロ演算部607aは、変調部321で生成された第1の無線受信装置200宛の変調シンボルに対してモジュロ演算を施す。なお、第1の無線受信装置200宛の変調シンボルに対してはMUIが存在しないため、干渉成分減算部609は省略している。さらにモジュロ演算部607も省略可能である。干渉成分算出部603は、QR分解部601で求めた干渉行列Bに基づいて、第1の無線受信装置200宛の各サブキャリアの変調シンボルのモジュロ演算結果が第2の無線受信装置200宛の各サブキャリアの変調シンボルに与える干渉成分を算出する。ここで、干渉行列Bの2行1列目の要素b21が第1の無線受信装置200宛の変調シンボルが第2の無線受信装置200宛の変調シンボルへ及ぼす干渉の複素利得を表しており、この要素に第1の無線受信装置200宛の変調シンボルのモジュロ演算結果を乗じることによって干渉成分を算出できる。
【0075】
第1の干渉成分減算部609bは、変調部321で生成された第2の無線受信装置200宛の変調シンボルから、干渉成分算出部603で算出した第2の無線受信装置200宛の変調シンボルに対する干渉成分をサブキャリア毎に減算する。第2のモジュロ演算部607bは、干渉成分が減算された第2の無線受信装置200宛の変調シンボルに対して、変調方式によって予め定められたモジュロ幅を用いてモジュロ演算を施す。
【0076】
干渉成分算出部603は、第1の無線受信装置200宛の各サブキャリアの変調シンボルのモジュロ演算結果および第2の無線受信装置200宛の各サブキャリアの変調シンボルのモジュロ演算結果が、第3の無線受信装置200宛の各サブキャリアの変調シンボルに与える干渉成分を算出する。ここで、干渉行列Bの3行1列目の要素b31が第1の無線受信装置200宛の変調シンボルが第3の無線受信装置200宛の変調シンボルへ及ぼす干渉の複素利得を表し、干渉行列Bの3行2列目の要素b32が第2の無線受信装置200宛の変調シンボルが第3の無線受信装置200宛の変調シンボルへ及ぼす干渉の複素利得を表しており、これらの要素にそれぞれ第1の無線受信装置200宛の変調シンボルのモジュロ演算結果および第2の無線受信装置200宛の変調シンボルのモジュロ演算結果を乗じることによって干渉成分を算出できる。
【0077】
第2の干渉成分減算部609cは、変調部321で生成された第3の無線受信装置200宛の変調シンボルから、干渉成分算出部603で算出した第3の無線受信装置200宛の変調シンボルに対する干渉成分をサブキャリア毎に減算する。第3のモジュロ演算部607cは、干渉成分が減算された第3の無線受信装置200宛の変調シンボルに対して、変調方式によって予め定められたモジュロ幅を用いてモジュロ演算を施す。
【0078】
干渉成分算出部603は、第1の無線受信装置200宛の各サブキャリアの変調シンボルのモジュロ演算結果、第2の無線受信装置200宛の各サブキャリアの変調シンボルのモジュロ演算結果、および第3の無線受信装置200宛の各サブキャリアの変調シンボルのモジュロ演算結果が、第4の無線受信装置200宛の各サブキャリアの変調シンボルに与える干渉成分を算出する。ここで、干渉行列Bの4行1列目の要素b41が第1の無線受信装置200宛の変調シンボルが第4の無線受信装置200宛の変調シンボルへ及ぼす干渉の複素利得を表し、干渉行列Bの4行2列目の要素b42が第2の無線受信装置200宛の変調シンボルが第4の無線受信装置200宛の変調シンボルへ及ぼす干渉の複素利得を表し、干渉行列Bの4行3列目の要素b43が第3の無線受信装置200宛の変調シンボルが第4の無線受信装置200宛の変調シンボルへ及ぼす干渉の複素利得を表しており、これらの要素にそれぞれ第1の無線受信装置200宛の変調シンボルのモジュロ演算結果から第3の無線受信装置200宛の変調シンボルのモジュロ演算結果を乗じることによって干渉成分を算出できる。
【0079】
第3の干渉成分減算部609dは、変調部321で生成された第4の無線受信装置200宛の変調シンボルから、干渉成分算出部603で算出した第4の無線受信装置200宛の変調シンボルに対する干渉成分をサブキャリア毎に減算する。第4のモジュロ演算部607dは、干渉成分が減算された第4の無線受信装置200宛の変調シンボルに対して、変調方式によって予め定められたモジュロ幅を用いてモジュロ演算を施す。
【0080】
線形フィルタ部605は、第1のモジュロ演算部607aが出力した第1の無線受信装置200宛の変調シンボルのモジュロ演算結果、第2のモジュロ演算部607bが出力した第2の無線受信装置200宛の変調シンボルのモジュロ演算結果、第3のモジュロ演算部607cが出力した第3の無線受信装置200宛の変調シンボルのモジュロ演算結果、および、第4のモジュロ演算部607dが出力した第4の無線受信装置200宛の変調シンボルのモジュロ演算結果を入力として、QR分解部601で算出したユニタリ行列Qを線形フィルタとしてサブキャリア毎に乗算し、アンテナ部303の各アンテナからそれぞれ送信すべきマルチユーザMIMOシンボルを出力する。
【0081】
これにより、上記マルチユーザMIMOシンボルを各無線受信装置200が受信した場合、自無線受信装置200以外への信号による干渉(MUI)はTHPによってキャンセルされて自無線受信装置200宛の信号のみが受信される。なお、本実施形態では、THPを実現する方法としてチャネル行列のQR分解を用いる方法を例として説明したが、これに限られるものではなく、V−BLAST(Vertical Bell Laboratories Layered Space Time)の手法を用いてTHPにおける無線受信装置200の並べ替えを準最適化するような上記非特許文献5に記載されている方法などを用いても良い。
【0082】
図6Aは、本発明の第1の実施形態に係る無線受信装置200aの一構成例を示す機能ブロック図である。なお、無線受信装置200aと後述する無線受信装置200bを合わせて、無線受信装置200とも表す。図6Aの無線受信装置200aは、線形プリコーディングと非線形プリコーディング(THP)の両方のプリコーディング方式に対応した無線受信装置200の例である。無線受信部(受信部)701は、アンテナ部703を通じて無線送信装置100からの信号を受信する。構成情報取得部705は、無線送信装置100から通知されたグループ構成情報を取得し、グループ記憶部707へ出力する。グループ記憶部707は、構成情報取得部705で取得したグループ構成情報を記憶する。識別情報取得部709は、無線送信装置100から通知されたグループ識別情報(グループID)を取得し、判定部711へ出力する。さらにグループ識別情報にMCSの情報が含まれる場合は、モジュロ演算部(後述する復調部と共に受信処理部を構成する)713、復調部715a、復号化部717へMCS情報を出力する。なお、復調部715aと後述する復調部715bを合わせて、復調部715とも表す。
【0083】
判定部711は、グループ記憶部707に記憶されたグループ構成情報を参照して、識別情報取得部709で取得したグループIDの示すグループに自無線受信装置200a(自局)が属しているかどうかを判定して、その判定結果を制御部719へ通知し、当該グループに属している場合は制御部719を通じて下記のデータ受信動作を実行させる。また、グループ記憶部707に記憶されたグループ構成情報を参照して、取得したグループIDで示されるグループが、線形プリコーディングによるマルチユーザMIMOを行なうグループか、非線形プリコーディングによるマルチユーザMIMOを行なうグループかを判定し、線形プリコーディングの場合はモジュロ演算を行なわないようモジュロ演算部713に指示し、非線形プリコーディングの場合はモジュロ演算を行なうようにモジュロ演算部713に指示する信号を生成する。GI除去部721は、受信した信号からガードインターバル(GI)を取り除く。
【0084】
FFT部723は、GIが除去された受信信号を高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)などによって時間周波数変換し、サブキャリア毎の変調シンボルに変換する。参照信号分離部725は、変調シンボルを受信データのシンボルと参照信号のシンボルとに分離し、受信データのシンボルを伝搬路補償部727に、参照信号のシンボルを伝搬路推定部729に、それぞれ入力する。伝搬路推定部729は、分離された参照信号のシンボルに基づいて、無線送信装置100の各アンテナと、無線受信装置200aのアンテナ部703との間の伝搬路状態(複素伝搬路利得)と、SNRまたはSINRで表される受信品質を推定する。伝搬路補償部727は、伝搬路推定部729における伝搬路状態の推定結果に基づいて受信データシンボルに対して伝搬路補償(等化)を行なう。
【0085】
モジュロ演算部713は、伝搬路補償された受信データシンボルが入力され、判定部711からモジュロ演算を行なうという指示信号が入力された場合、伝搬路補償された受信データシンボルに対して変調方式(識別情報取得部709からMCS情報が入力されている場合は、そのMCSの変調方式)によって予め定められたモジュロ演算の幅(モジュロ幅)を用いてモジュロ演算を施し、モジュロ演算を行なわないという指示信号が入力された場合、伝搬路補償された受信データシンボルをそのまま出力する。復調部715aは、モジュロ演算部713が出力した各受信データシンボルに対して(識別情報取得部709からMCS情報が入力されている場合は、そのMCSの変調方式に基づいて)復調を施す。
【0086】
復号化部717は、復調された系列に対して誤り訂正復号処理を行ない、受信データ系列を生成し出力する。なお、識別情報取得部709からMCS情報が入力されている場合は、そのMCSの符号化率に従ってレートマッチング(デパンクチャ)を行なう。伝搬路情報生成部731は、推定した伝搬路状態に基づいて、SNR、SINR、CNR、CINRまたはそれらから算出された値を表す受信品質情報(CQI)と、無線送信装置100の各送信アンテナから各無線受信装置200aの各受信アンテナまでの複素伝搬路利得やその共分散値等を表すCSIを生成する。無線送信部733は、アンテナ部703を通じて、伝搬路情報生成部731が生成した伝搬路情報を無線送信装置100へ送信する。制御部719は、上記各部を制御し、それぞれの処理を実行させる。
【0087】
なお、本実施形態では、無線受信装置200は、判定部711において非線形プリコーディングによるマルチユーザMIMOを行なうグループであると判定された場合に、復調部715における復調(受信信号点の判定)の前に、伝搬路補償された受信データシンボルに対してモジュロ演算部713においてモジュロ演算を行う構成の例について説明した。その他の無線受信装置200の構成例を図6Bに示す。
【0088】
図6Bは、本発明の第1の実施形態に係る無線受信装置200bの構成例を示す機能ブロック図である。図6Bの無線受信装置200bでは、図6Aの無線受信装置200とは異なり、モジュロ演算部713は備えない。復調部715bは、判定部711において非線形プリコーディングによるマルチユーザMIMOを行なうグループであると判定された場合には、無線送信装置100におけるモジュロ演算の影響によって、受信信号の候補信号点配置が無線送信装置100における変調時の信号点配置がモジュロ幅で繰り返された形となることを考慮して、(雑音の加わった)受信信号点とモジュロ幅で繰り返された各候補信号点とのユークリッド距離から、復調ビットの対数尤度比(Log Likelihood Ratio:LLR)を算出する(軟判定による復調処理)。そのLLRを復号化部717に入力して、誤り訂正復号を行う。ここで、復調部715bにおけるLLRの算出は、例えば非特許文献6の式(15)から式(20)までで記載された公知な方法によって算出することができる。すなわち、受信信号点と、モジュロ幅で繰り返された各候補信号点のうち受信信号点に近接する候補信号点とのユークリッド距離を用いてLLRを算出するアルゴリズムを用いて算出することができる。なお、この構成は以降の各実施形態の無線受信装置200においても同様に適用できる。
【0089】
図7は、本発明の第1の実施形態において、無線送信装置100のグループ構成部307で作成され、無線受信装置200と共有されるグループ情報の一例を示す図である。図7の例では、無線受信装置200−1〜200−8に対して、プリコーディング方式として線形プリコーディングを用いる2つのグループ(グループIDが1および2のグループ)と、非線形プリコーディングを用いる2つのグループ(グループIDが3および4のグループ)の4つのグループが定義されている。
【0090】
図8A、図8Bは、本発明の第1の実施形態に係る、無線送信装置100と各無線受信装置200との間の動作を示すシーケンスチャートの一例を示したものである。なお、図8A、図8Bでは、無線受信装置200として無線受信装置200−1、200−2および200−8を抜き出して代表として記載している。また、グループ識別情報は、サウンディング信号およびマルチユーザMIMO信号に付加された制御情報に含まれているものとして説明する。まず、各無線受信装置200は、無線送信装置100に対して、各無線受信装置200が対応しているプリコーディング方式の情報(対応情報)、あるいは対応しているプリコーディング方式が判別できる種別情報(端末クラス、準拠規格情報、モジュロ演算機能の有無などを示す受信機能情報など)による対応情報を送信する(ステップS101)。なお、各無線受信装置200からの対応情報の送信は、無線送信装置100と初めて通信を確立する場合や、無線送信装置100から要求があった場合などに、個別のタイミングで行なわれても良い。
【0091】
無線送信装置100は、各無線受信装置200から通知された対応情報等に基づいて、マルチユーザMIMO伝送に用いるプリコーディング方式をそれぞれ定めた複数のグループに各無線受信装置200を組分けしたグループを作成し(ステップS103)、各無線受信装置200に対して、グループの情報(グループ構成情報)を通知する(ステップS105)。その後、無線送信装置100は、マルチユーザMIMO伝送を行なうグループを選択し(ステップS107)、選択したグループを識別するグループIDを制御情報に含んだサウンディング信号を生成し(ステップS109)、送信する(ステップS111)。
【0092】
各無線受信装置200は、上記のサウンディング信号を受信し、その制御情報に含まれるグループIDを確認して自無線受信装置200が当該グループに属しているかどうかを判定し(ステップS113)、当該グループに属している場合は、サウンディング信号に含まれる参照信号の受信状態に基づいて無線送信装置100との間の伝搬路状態を推定し、その伝搬路状態推定結果を表す伝搬路情報を生成して(ステップS115)、無線送信装置100へ通知する(ステップS117)。なお、図8A、図8Bの例では、無線受信装置200−2および200−8が当該グループに属している場合を示している。また、伝搬路情報の通知は、当該グループ内において予め定められた各無線受信装置200の順番によって順次行なわれる。
【0093】
無線送信装置100は、上記選択したグループに属する各無線受信装置200から通知された伝搬路情報を受信し、選択したグループに定められたプリコーディング方式を用いて、受信した伝搬路情報に基づいて上記各無線受信装置200宛の送信データ系列にプリコーディングを行なって、マルチユーザMIMOシンボルを生成し(ステップS119)、選択したグループを識別するグループIDを含む制御情報を付加したマルチユーザMIMO信号を送信する(ステップS121)。なお、サウンディング信号送信からの一連のシーケンスとして認識し、マルチユーザMIMO信号の送信の際にはグループIDを付加しないようにしても良い。
【0094】
各無線受信装置200は、上記のマルチユーザMIMO信号を受信し、その制御情報に含まれるグループIDを確認して自無線受信装置200が当該グループに属しているかどうかを判定し(ステップS123)、当該グループに属している場合は、マルチユーザMIMOシンボルを受信して、復調、誤り訂正復号などのデータ受信処理を行なう(ステップS125)。受信データに誤りが検出されなかった場合は無線送信装置100に確認応答(Acknowledgement:ACK)を通知し、誤りが検出された場合は否定応答(Negative Acknowledgment:NAKまたはNACK)を通知する(ステップS127)。また、ACKおよびNAKの通知は、当該グループ内において予め定められた各無線受信装置200の順番によって順次行なわれる。
【0095】
以上説明したように、本実施形態によれば、マルチユーザMIMO伝送毎に無線送信装置100が線形プリコーディングと非線形プリコーディングのどちらか一方を選択して用いるような無線通信システムにおいて、無線送信装置100から送信されたマルチユーザMIMO信号が線形プリコーディングであるか非線形プリコーディングであるのかをグループIDから識別することが可能となり、制御情報量を増大させずに無線受信装置200に通知することが可能となる。
【0096】
(第2の実施形態)
本実施形態による通信技術について、第1の実施形態と同様に、無線送信装置100が、複数の無線受信装置200のうちから複数の無線受信装置200を選択してマルチユーザMIMO伝送を行ない、各無線受信装置200宛のストリーム間で生じるMUIを線形プリコーディングまたは非線形プリコーディングによって予め抑圧して送信する無線通信システムを例として説明する。なお、本実施形態では、マルチユーザMIMO伝送で同時にデータを送信する複数の無線受信装置200毎に線形プリコーディングと非線形プリコーディングのいずれかを選択して混在させることが可能な線形非線形混在プリコーディングを用いる無線通信システムを例として説明する。
【0097】
本実施形態における無線通信システムでは、第1の実施形態と同様に、無線送信装置100が複数の無線受信装置200(例えば、無線受信装置200-1〜200-8)と通信するに際し、無線送信装置100がこれらの無線受信装置200の複数の組み合わせによって複数のグループを作成し、これらグループ毎に、マルチユーザMIMO伝送のために用いるプリコーディング方式を定め、グループ分けと、定めたプリコーディング方式の情報を、通信に先立って無線受信装置200に通知し、無線送信装置100と無線受信装置200で共有する。ただし、第1の実施形態と異なり、同一グループ内に、マルチユーザMIMO伝送のために用いるプリコーディング方式が異なる無線受信装置200が混在しても良く、その場合は、当該グループにおいて各無線受信装置200宛のストリームに用いるプリコーディング方式の情報も、通信に先立って各無線受信装置200に通知して共有する。なお、1つの無線受信装置200は複数のグループに属することができる。
【0098】
その後、無線送信装置100は、第1の実施形態と同様に、マルチユーザMIMO伝送の対象とする無線受信装置200(対象無線受信装置)の組み合わせを、その組み合わせの候補である上記で作成した複数のグループから1つを選択し、選択したグループに属する複数の無線受信装置200宛の送信データを、同じ周波数帯域で空間的に多重して同時通信するマルチユーザMIMO伝送を行なう。このとき、選択したグループを識別するグループIDを用いて当該マルチユーザMIMO伝送の対象とするグループを無線受信装置200へ通知する。また同時に、無線受信装置200では、このグループIDの通知によって無線送信装置100が用いたプリコーディング方式を識別できる。
【0099】
本実施形態に係る無線送信装置100の構成は、第1の実施形態の図2の無線送信装置100と同様であり、プリコーディング部323の構成が異なる。また、選択部315、グループ構成部307およびグループ記憶部309における処理が異なる。以下、第1の実施形態と同じ部分についての説明は省略し、異なる部分について説明する。
【0100】
選択部315は、伝搬路情報取得部313で取得した各無線受信装置200の伝搬路情報、および送信バッファ部317に蓄積された各無線受信装置200宛の送信データ量や優先度などに基づいて、グループ記憶部309に記憶された複数のグループからマルチユーザMIMOで多重する複数の無線受信装置200が属するグループを選択する。また、選択したグループに対応して無線受信装置200毎に予め定めたプリコーディング方式を示すプリコーディング方式選択信号を出力する。さらに、伝搬路情報取得部313で取得した各無線受信装置200からのCQIなどに基づいて、各無線受信装置200宛の送信データに対する変調方式や符号化率(Modulation and Coding Scheme:MCS)などのパラメータを選択しても良い。なお本実施形態では、無線受信装置200−1〜200−8の中から第1から第4の無線受信装置200の4つの端末が属するグループが選択され、選択されたグループは、第1および第2の無線受信装置200については線形プリコーディング方式を、第3および第4の無線受信装置200については非線形プリコーディング方式を用いる線形非線形プリコーディングのグループであるものとし、各無線受信装置200に1系列(1ストリーム)ずつ送信する場合を説明する。
【0101】
本実施形態におけるグループ構成部307は、少なくとも制御情報取得部305が出力する各無線受信装置200の対応プリコーディング方式情報に基づいて、各無線受信装置200の複数の組み合わせによって複数のグループを作成し、それぞれのグループで用いるプリコーディング方式を、グループ毎あるいは無線受信装置200毎に定める。なお、1つの無線受信装置200は複数のグループに属することができる。また、各無線受信装置200の位置情報や、各無線受信装置200からの電波の到来角を推定した結果などの情報をさらに用いてグループ分けを行なっても良い。この場合、例えば、伝搬路の相関が低くなるように位置の離れた無線受信装置200同士や電波到来角の離れた無線受信装置200同士でグループを作成しても良い。また、同じ無線受信装置200の組み合わせで、各無線受信装置200のプリコーディング方式や順番が異なる複数のグループがあっても良い。
【0102】
グループ記憶部309は、グループ構成部307で作成したグループの情報(グループID、所属する無線受信装置200、各無線受信装置200に対して使用するプリコーディング方式、グループ内での各無線受信装置200の順番を含む、グループ構成情報)を記憶する。プリコーディング部323は、選択部315で選択したグループに属する複数の無線受信装置200(ここでは、第1から第4の無線受信装置200が属する場合を例として説明する)宛の各変調シンボルが入力され、伝搬路情報取得部313で取得した各無線受信装置200からのCSIに基づいて、入力された各変調シンボルに対して、選択部315で選択したグループに対応して決められた各無線受信装置200に対するプリコーディング方式によって各無線受信装置200宛の変調シンボルにプリコーディングを施し、送信に使用するアンテナ部303の複数のアンテナ毎のマルチユーザMIMOシンボルを生成する。
【0103】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るプリコーディング部323の一構成例であるプリコーディング部323bを示す機能ブロック図である。プリコーディング部323bは、線形プリコーディング部401、非線形プリコーディング部403、混在プリコーディング部801、および切替部803を有する。線形プリコーディング部401および非線形プリコーディング部403は、第1の実施形態と同じく、それぞれ図4および図5で示される。混在プリコーディング部801の動作については後述する。切替部803は、線形プリコーディング部401の出力した線形プリコーディング結果と、非線形プリコーディング部403の出力した非線形プリコーディング結果と、混在プリコーディング部801の出力した線形非線形混在プリコーディング結果とが入力され、選択部315より入力されたプリコーディング方式選択信号に基づいて、いずれか1つの結果を選択し、アンテナ部303の各アンテナからそれぞれ送信すべき第1〜第4のマルチユーザMIMOシンボルを出力する。なお、線形プリコーディング部401、非線形プリコーディング部403および混在プリコーディング部801は、プリコーディング方式選択信号がそれぞれ自プリコーディング方式を選択していない場合には、処理動作を行なわないことが好ましい。これによって消費電力を低減することができる。
【0104】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る混在プリコーディング部801の一構成例を示す機能ブロック図である。図10の例では、選択部315から入力された、各無線受信装置200に対するプリコーディング方式選択信号に基づいて、無線受信装置200毎に、線形プリコーディングと、非線形プリコーディングとしてトムリンソン−ハラシマ・プリコーディング(THP)とから一方を選択して混在させたマルチユーザMIMO信号を生成する場合について説明する。
【0105】
図10の混在プリコーディング部801は、図5に示される非線形プリコーディング部403と基本的に同じ動作を行なうが、選択部315からのプリコーディング方式選択信号が入力され、第1から第4の各無線受信装置200に対応する第1から第4のモジュロ演算部901a〜901d(以下、第1から第4のモジュロ演算部901a〜901dを合わせて、モジュロ演算部901とも表す)においてモジュロ演算を行なうかどうかをプリコーディング方式選択信号によって切り替える。具体的には、プリコーディング方式選択信号が線形プリコーディングを示している無線受信装置200に対応するモジュロ演算部901ではモジュロ演算を行なわず、プリコーディング方式選択信号が非線形プリコーディングを示している無線受信装置200に対応するモジュロ演算部901ではモジュロ演算を行なう。本実施形態の例の場合は、第1および第2の無線受信装置200にそれぞれ対応する第1のモジュロ演算部901aおよび第2のモジュロ演算部901bではモジュロ演算を行なわずにそのまま信号を通過させ、第3および第4の無線受信装置200にそれぞれ対応する第3のモジュロ演算部901cおよび第4のモジュロ演算部901dでは干渉成分が減算された信号に対してモジュロ演算を行なう。
【0106】
なお、本実施形態では、プリコーディング部323bの構成として、線形プリコーディング部401、非線形プリコーディング部403および混在プリコーディング部801の3つのプリコーディング部を備える構成について説明したが、図10のような混在プリコーディング部801のみを備える構成でも実現可能である。この場合、選択部315からのプリコーディング方式選択信号が、全無線受信装置200に対して線形プリコーディングを選択する(モジュロ演算部901においてモジュロ演算を行なわない)ならば、線形プリコーディングと同等のマルチユーザMIMOシンボルが得られ、全無線受信装置200に対して非線形プリコーディングを選択する(モジュロ演算部901においてモジュロ演算を行なう)ならば、非線形プリコーディングと同等のマルチユーザMIMOシンボルが得られる。
【0107】
本実施形態における無線受信装置200の構成は、第1の実施形態における図6の無線受信装置200と同様であり、判定部711における処理が異なる。以下、第1の実施形態と同じ部分についての説明は省略し、異なる部分について説明する。判定部711は、グループ記憶部707に記憶されたグループ構成情報を参照して、識別情報取得部709で取得したグループIDの示すグループに自無線受信装置200(自局)が属しているかどうかを判定して、その判定結果を制御部719へ通知し、当該グループに属している場合は制御部719を通じてデータ受信動作を実行させる。また、グループ記憶部707に記憶されたグループ構成情報を参照して、取得したグループIDで示されるグループにおける自局のプリコーディング方式が、線形プリコーディングか、非線形プリコーディングかを判定し、線形プリコーディングの場合はモジュロ演算を行なわないようモジュロ演算部713に指示し、非線形プリコーディングの場合はモジュロ演算を行なうようにモジュロ演算部713に指示する信号を生成する。
【0108】
図11は、本発明の第2の実施形態において、無線送信装置100のグループ構成部307で作成され、無線受信装置200と共有されるグループ情報の一例を示す図である。図11の例では、無線受信装置200−1〜200−8に対して、プリコーディング方式として線形プリコーディングを用いる2つのグループ(グループIDが1および2のグループ)、非線形プリコーディングを用いる2つのグループ(グループIDが3および4のグループ)、および線形プリコーディングと非線形プリコーディングの無線受信装置200が混在する2つのグループ(グループIDが5および6のグループ)の6つのグループが定義されている。
【0109】
無線送信装置100は、各無線受信装置200から報告された伝搬路情報等に基づいて、マルチユーザMIMO伝送の対象とする複数の無線受信装置200を選択し、それら複数の無線受信装置200が含まれるグループを抽出して1つのグループを選択する。あるいは、各無線受信装置200から報告された伝搬路情報等に基づいて、まずグループ(それに伴ってプリコーディング方式)を選択し、選択したグループに属する無線受信装置200をマルチユーザMIMO伝送の対象として選択しても良い。
【0110】
以上説明したように、本実施形態によれば、マルチユーザMIMO伝送毎に無線送信装置100が線形プリコーディング、非線形プリコーディング、および線形と非線形プリコーディングの混在のうちのいずれか1つを選択して用いるような無線通信システムにおいて、無線送信装置100から送信されたマルチユーザMIMO信号が線形プリコーディングであるか非線形プリコーディングであるのかをグループIDから識別することが可能となり、制御情報量を増大させずに無線受信装置200に通知することが可能となる。
【0111】
本発明による通信装置で動作するプログラムは、本発明に関わる上記実施形態の機能を実現するように、CPU(Central Processing Unit)等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)であっても良い。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的にRAM(Random Access Memory)に蓄積され、その後、Flash ROM(Read Only Memory)などの各種ROMやHDD(Hard Disk Drive)に格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。また、図2等の各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行なってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0112】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。また、上述した実施形態における通信装置(無線送信装置100および無線受信装置200)の一部、または全部を典型的には集積回路であるLSIとして実現してもよい。通信装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部、または全部を集積してチップ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
【0113】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等された発明も含まれる。
【符号の説明】
【0114】
100 無線送信装置
200、200−1〜200−8、200a、200b 無線受信装置
301 無線受信部
303 アンテナ部
305 制御情報取得部
307 グループ構成部
309 グループ記憶部
311 構成情報生成部
313 伝搬路情報取得部
315 選択部
317 送信バッファ部
319 符号化部
321 変調部
323、323a、323b プリコーディング部
325 参照信号多重部
327 IFFT部
329 GI挿入部
331 識別情報生成部
333 無線送信部
335 制御部
401 線形プリコーディング部
403 非線形プリコーディング部
405 切替部
501 フィルタ算出部
503 線形フィルタ部
601 QR分解部
603 干渉成分算出部
605 線形フィルタ部
607 モジュロ演算部
607a 第1のモジュロ演算部
607b 第2のモジュロ演算部
607c 第3のモジュロ演算部
607d 第4のモジュロ演算部
609 干渉成分減算部
609b 第1の干渉成分減算部
609c 第2の干渉成分減算部
609d 第3の干渉成分減算部
701 無線受信部
703 アンテナ部
705 構成情報取得部
707 グループ記憶部
709 識別情報取得部
711 判定部
713 モジュロ演算部
715、715a、715b 復調部
717 復号化部
719 制御部
721 GI除去部
723 FFT部
725 参照信号分離部
727 伝搬路補償部
729 伝搬路推定部
731 伝搬路情報生成部
733 無線送信部
801 混在プリコーディング部
803 切替部
901 モジュロ演算部
901a 第1のモジュロ演算部
901b 第2のモジュロ演算部
901c 第3のモジュロ演算部
901d 第4のモジュロ演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナを備え、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置であって、
前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させ、前記グループ毎にプリコーディング方式を決定するグループ構成部と、
前記各グループからいずれか一つのグループを選択する選択部と、
前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうプリコーディング部と、を備えることを特徴とする無線送信装置。
【請求項2】
前記決定されたグループを記憶するグループ記憶部と、
前記グループ毎のグループ構成情報を生成する構成情報生成部と、
前記選択されたグループのグループ識別情報を生成する識別情報生成部と、をさらに備え、
前記グループ構成情報、前記グループ識別情報、および前記プリコーディングされた信号を前記選択されたグループに属する各無線受信装置に送信することを特徴とする請求項1記載の無線送信装置。
【請求項3】
前記プリコーディング方式は、線形プリコーディングまたは非線形プリコーディングのいずれか一方であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の無線送信装置。
【請求項4】
複数の送信アンテナを備え、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置であって、
前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させると共に、前記各グループに属する無線受信装置毎にプリコーディング方式を決定するグループ構成部と、
前記各グループからいずれか一つのグループを選択する選択部と、
前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なうプリコーディング部と、を備えることを特徴とする無線送信装置。
【請求項5】
前記決定されたグループを記憶するグループ記憶部と、
前記グループ毎のグループ構成情報を生成する構成情報生成部と、
前記選択されたグループのグループ識別情報を生成する識別情報生成部と、をさらに備え、
前記グループ構成情報、前記グループ識別情報、および前記プリコーディングされた信号を前記選択されたグループに属する各無線受信装置に送信することを特徴とする請求項4記載の無線送信装置。
【請求項6】
前記プリコーディング方式は、線形プリコーディングまたは非線形プリコーディングのいずれか一方であることを特徴とする請求項4または請求項5記載の無線送信装置。
【請求項7】
複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する無線受信装置であって、
前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する受信部と、
前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する判定部と、
前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、自装置宛ての信号に、前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応した受信処理を行なう受信処理部と、を備えることを特徴とする無線受信装置。
【請求項8】
前記プリコーディング方式は、線形プリコーディングまたは非線形プリコーディングのいずれか一方であり、
前記受信処理部は、前記プリコーディング方式が非線形プリコーディングである場合は、受信データシンボルにモジュロ演算を行なうことを特徴とする請求項7記載の無線受信装置。
【請求項9】
複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する無線受信装置であって、
前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する受信部と、
前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する判定部と、
前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、自装置宛ての信号に、前記グループにおいて自装置に対して決定されたプリコーディング方式に対応した受信処理を行なう受信処理部と、を備えることを特徴とする無線受信装置。
【請求項10】
前記プリコーディング方式は、線形プリコーディングまたは非線形プリコーディングのいずれか一方であり、
前記受信処理部は、前記プリコーディング方式が非線形プリコーディングである場合は、受信データシンボルにモジュロ演算を行なうことを特徴とする請求項9記載の無線受信装置。
【請求項11】
複数の送信アンテナを備え、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置を制御するプログラムであって、
前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させる処理と、
前記グループ毎にプリコーディング方式を決定する処理と、
前記各グループからいずれか一つのグループを選択する処理と、
前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なう処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
複数の送信アンテナを備え、複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置を制御するプログラムであって、
前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させる処理と、
前記各グループに属する無線受信装置毎にプリコーディング方式を決定する処理と、
前記各グループからいずれか一つのグループを選択する処理と、
前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なう処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する無線受信装置を制御するプログラムであって、
前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する処理と、
前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する処理と、
前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する無線受信装置を制御するプログラムであって、
前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する処理と、
前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する処理と、
前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、前記グループに属する無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項15】
複数の送信アンテナを備える無線送信装置に実装されることにより、前記無線送信装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、
複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する機能と、
前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させる機能と、
前記グループ毎にプリコーディング方式を決定する機能と、
前記各グループからいずれか一つのグループを選択する機能と、
前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なう機能と、の一連の機能を、前記無線送信装置に発揮させることを特徴とする集積回路。
【請求項16】
複数の送信アンテナを備える無線送信装置に実装されることにより、前記無線送信装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、
複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する機能と、
前記各無線受信装置を少なくとも1つのグループに所属させる機能と、
前記各グループに属する無線受信装置毎にプリコーディング方式を決定する機能と、
前記各グループからいずれか一つのグループを選択する機能と、
前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行なう機能と、の一連の機能を、前記無線送信装置に発揮させることを特徴とする集積回路。
【請求項17】
無線受信装置に実装されることにより、前記無線受信装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、
複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する機能と、
前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する機能と、
前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する機能と、
前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信する機能と、の一連の機能を、前記無線受信装置に発揮させることを特徴とする集積回路。
【請求項18】
無線受信装置に実装されることにより、前記無線受信装置に複数の機能を発揮させる集積回路であって、
複数の送信アンテナを備えた無線送信装置から、空間多重された信号を受信する機能と、
前記空間多重された信号の送信先となる無線受信装置が属するグループのグループ構成情報およびグループ識別情報を受信する機能と、
前記グループ構成情報およびグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定する機能と、
前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、前記グループに属する無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式に対応して自装置宛ての信号を受信する機能と、の一連の機能を、前記無線受信装置に発揮させることを特徴とする集積回路。
【請求項19】
複数の無線受信装置と、
複数の送信アンテナを備え、前記複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置とから構成される無線通信システムであって、
前記各無線受信装置が少なくとも1つのグループに属し、前記グループ毎にプリコーディング方式が決定されたグループ構成情報を、前記無線送信装置と前記各無線受信装置がそれぞれ記憶し、
前記無線送信装置は、
前記各グループからいずれか一つのグループを選択し、
前記選択されたグループのグループ識別情報を送信し、
前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記記憶されたグループ構成情報に基づいて、前記選択されたグループについて決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行ない、前記プリコーディング後の信号を空間多重して送信し、
前記無線受信装置は、
前記無線送信装置が送信したグループ識別情報を受信し、
前記記憶されたグループ構成情報と前記受信されたグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定し、
前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、自装置宛ての信号に前記グループ毎に決定されたプリコーディング方式に対応した受信処理を行なうことを特徴とする無線通信システム。
【請求項20】
複数の無線受信装置と、
複数の送信アンテナを備え、前記複数の無線受信装置に対して空間多重した信号を送信する無線送信装置とから構成される無線通信システムであって、
前記各無線受信装置が少なくとも1つのグループに属し、前記各グループに属する無線受信装置毎にプリコーディング方式が決定されたグループ構成情報を、前記無線送信装置と前記各無線受信装置がそれぞれ記憶し、
前記無線送信装置は、
前記各グループからいずれか一つのグループを選択し、
前記選択されたグループのグループ識別情報を送信し、
前記選択されたグループに属する各無線受信装置宛ての送信データに対して、前記記憶されたグループ構成情報に基づいて、前記選択されたグループに属する各無線受信装置毎に決定されたプリコーディング方式でプリコーディングを行ない、前記プリコーディング後の信号を空間多重して送信し、
前記無線受信装置は、
前記無線送信装置が送信したグループ識別情報を受信し、
前記記憶されたグループ構成情報と前記受信されたグループ識別情報に基づいて、自装置が前記グループに属するか否かを判定し、
前記判定の結果、自装置が前記グループに属する場合、自装置宛ての信号に、前記グループにおいて自装置に対して決定されたプリコーディング方式に対応した受信処理を行なうことを特徴とする無線通信システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−42350(P2013−42350A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177718(P2011−177718)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】