説明

無線送信装置および送信方法

【課題】DFT−S−OFDM信号に代表されるマルチキャリア信号を生成する方式を利用してシングルキャリア信号を送信する場合に、PAPR特性を良い状態に保持したまま、1シンボルでできるだけ多くの送信ダイバーシチゲインを得る。
【解決手段】複数のアンテナを有し、シングルキャリア通信方式で用いられる信号を符号化して無線送信を行なう無線送信装置であって、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR(Peak to Average Power Ratio)特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なう符号化部5と、前記符号化した信号を送信する送信部11−1、11−2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シングルキャリア通信方式で無線送信を行なう無線送信装置および送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代移動体通信システムの研究が盛んに行なわれており、システムの周波数利用効率を高めるための方式として、各セルが同じ周波数帯域を使用する1周波数繰り返しセルラシステムが提案されている。下りリンク、すなわち、基地局装置から移動局装置への通信においては、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数多元接続)方式が最も有力な候補となっている。OFDMA方式は、情報データに64QAM(64-ary Quadrature Amplitude Modulation:64値直交振幅変調)や、BPSK(Binary Phase Shift Keying:2相位相変調)などの変調をかけたOFDM信号を用いて、時間軸と周波数軸で構成されるアクセス単位であるリソースブロックを複数の移動端末装置で分割して通信を行なうシステムである。
【0003】
OFDMA方式では、OFDM信号を使用するため、PAPR(Peak to Average Power Ratio:ピーク対平均電力比)が非常に高くなることがある。このような高いピーク電力は、送信電力増幅機能に比較的余裕のある下りリンクの通信においては大きな問題とはならないが、送信電力増幅機能に余裕のない上りリンク、すなわち、移動局装置から基地局装置への通信では、致命的な問題となってしまう。そこで、上りリンクの通信においては、PAPRが比較的低いシングルキャリアの通信方式が提案されている。その1つがDFT−S−OFDM(Discrete Fourier Transform-Spread-OFDM:離散フーリエ変換拡散OFDM)である(非特許文献1)。
【0004】
図6は、DFT−S−OFDM方式に適用される送信機の概略構成を示すブロック図である。この送信機では、符号化部100が、入力された送信データを誤り訂正符号化し、変調部101がBPSKなどの変調を施す(以下本明細書ではこの変調を施すことを1次変調と呼称する)。さらに、S/P(シリアル/パラレル)変換部102が直列信号を並列信号に変換した後に、DFT(Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換)部103がフーリエ変換をすることより、時間軸信号を周波数信号に変換する。
【0005】
サブキャリア割り当て部104は、DFT部103で変換された周波数信号を、後述する規則に従ってIDFT(Inverse Discrete Fourier Transform:逆離散フーリエ変換)部105の入力に配置する。入力がないIDFTポイントには0を挿入し、逆離散フーリエ変換することにより時間波形を得る。これらの時間波形について、GI(Guard Interval:ガードインターバル)挿入部106がガードインターバルを挿入し、P/S(パラレル/シリアル)変換部107がこれを直列信号に変換する。D/A(ディジタル/アナログ)変換部108は、この直列信号をアナログ信号に変換し、RF(高周波)部109は、無線周波数帯域信号にさらに周波数変換して、図示しないアンテナを通して送信する。
【0006】
複数のユーザのデータを多重するシステムでは、離散フーリエ変換DFTのポイント数より逆離散フーリエ変換IDFTのポイント数の方を大きくして、0入力されたサブキャリアは他の移動端末装置によって使用される。
【0007】
このように生成されたデータは、シングルキャリアの変調と同等であり、ピーク対平均電力比PAPRは低い。また、OFDM信号のように、ガードインターバルを挿入することでシンボル間干渉は無く、データを処理することが可能となる。しかも、離散フーリエ変換DFTにより周波数波形を一旦作っているため、周波数軸の制御が容易にできるといったメリットがある。なお、本明細書では、ガードインターバルを挿入する間隔、すなわち、DFTを行なうデータ処理単位を「シンボル」と呼称する。
【0008】
この周波数配置の規則として2つの方法が提案されている。1つはローカライズド(Localized:以下、「L配置」と呼称する。)という方式であり、もう1つはディストリビューティッド(Distributed:以下、「D配置」と呼称する。)という方式である。図7(a)は、L配置の例を示す図であり、図7(b)は、D配置の例を示すである。図示するように、L配置は、離散フーリエ変換DFT後の周波数データを逆離散フーリエ変換IDFTの入力にその配置を変えずに連続して割り当てる方式である。また、D配置は、同データを逆離散フーリエ変換IDFTの入力に一定間隔で離散的に割り当てる方式である。
【0009】
非特許文献2には、DFT−s−OFDM方式に用いることができる送信ダイバーシチ技術が記載されている。本文献の図1にはSTBC(Space Time Block Coding)と呼ばれる送信ダイバーシチ方法が記載されている。この方法は、送信する際、送信データに対して符号化を行ない、受信する際には送信装置で符号化されたデータを復号することでダイバーシチゲインを得る方法である。この方法は、伝搬路情報をフィードバックしない送信ダイバーシチ方法としては最も特性がよいとされている。
【0010】
STBCについて一例を示すと、アンテナが2本の場合、送信データS1、S2に対して、最初のシンボルでアンテナ1からS1、アンテナ2からS2を、続くシンボルでアンテナ1からS2、アンテナ2から−S1を送信する。これを行列で表すと式(1)のように示される。(1)において、tは時刻を示し、h11は送信アンテナ1から受信アンテナ1への周波数応答、h12は送信アンテナ2から受信アンテナ1への周波数応答を示す。
【0011】
【数1】

式(1)において、「」は複素共役を意味する。この受信された信号に対し、
11×r(t)−h12×r(t+1)を演算すると、
【数2】

となり、送信信号S1 に対し、最大のダイバーシチゲインを得ることができる。同様な演算処理を用いるとS2についても最大のダイバーシチゲインを得ることができる。
【0012】
また、同様な送信ダイバーシチの方法として、OFDM信号のようにマルチキャリア信号を使用する場合、SFBC(Space Frequency Block Coding)という技術が使用されている。これは式(1)の時間を周波数領域に展開した方法である。
【0013】
【数3】

ただし、式(3)において、kは、マルチキャリア信号におけるサブキャリア番号に対応する。ここで、隣接するサブキャリアでは周波数応答を同一とみなしても問題ないような伝搬路環境、すなわち、h11=h11k+1のような条件を考えると、式(3)は、式(4)のように変換でき、STBCで示した場合と同様な演算により最大のダイバーシチゲインを得ることが可能になる。
【0014】
【数4】

【非特許文献1】3GPP R1−050702 “DFT-Spread OFDM with Pulse Shaping Filter in Frequency Domain in Evolved UTRA Uplink” NTT DoCoMo
【非特許文献2】3GPP R1−062192 “Consideration on transmit diversity in E-UTRA uplink ” 東芝
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、非特許文献2に示されるように、マルチキャリア信号に対しSTBCを用いると、最大限のダイバーシチゲインを得ることができるものの、複数のシンボルにまたがって符号化する必要があるという問題がある。mシンボルにまたがって符号化をする必要性がある場合は、通信のフレームをmシンボルの倍数の構成にしなければならない。また、制御信号のようにできるだけ早い処理が必要となるデータに対しては、符号化された全てのシンボルを受信するまで復調できないといった問題があった。また、DFT−S−OFDM信号に対して、OFDM信号に用いられるSFBCを用いると、周波数領域の信号、例えば、図6では、DFT部103の出力信号に対し、式(3)のS行列で示すような符号化を施す必要があるため、DFT−S−OFDMの特徴であるPAPR特性がよいというメリットが殆どなくなってしまう。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、DFT−S−OFDM信号に代表されるマルチキャリア信号を生成する方式を利用してシングルキャリア信号を送信する場合に、PAPR特性を良い状態に保持したまま、1シンボルでできるだけ多くの送信ダイバーシチゲインを得ることができる無線送信装置および送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の無線送信装置は、複数のアンテナを有し、シングルキャリア通信方式で用いられる信号を符号化して無線送信を行なう無線送信装置であって、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR(Peak to Average Power Ratio)特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なう符号化部と、前記符号化した信号を送信する送信部と、を備えることを特徴としている。
【0018】
このように、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうので、シングルキャリア信号の特徴である良好なPAPR特性に影響を与えることなく、送信ダイバーシチゲインを得ることが可能となる。
【0019】
(2)また、本発明の無線送信装置は、複数のアンテナを有し、シングルキャリア通信方式で用いられる信号を符号化して無線送信を行なう無線送信装置であって、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する時間周波数変換部と、前記時間周波数変換部の前段または後段に設けられ、入力信号を符号化する符号化部と、前記符号化した信号を送信する送信部と、を備え、前記符号化部は、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR(Peak to Average Power Ratio)特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうことを特徴としている。
【0020】
このように、符号化部が、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうので、シングルキャリア信号の特徴である良好なPAPR特性に影響を与えることなく、送信ダイバーシチゲインを得ることが可能となる。
【0021】
(3)また、本発明の無線送信装置において、前記符号化部は、時間領域の信号または周波数領域の信号に対し、信号順序の並び替えを行なうことにより、位相回転を行なうことにより、または複素共役を取ることにより、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR(Peak to Average Power Ratio)特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうことを特徴としている。
【0022】
このように、時間領域の信号または周波数領域の信号に対し、信号順序の並び替えを行なうことにより、位相回転を行なうことにより、または複素共役を取ることにより、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうので、シングルキャリア信号の特徴である良好なPAPR特性に影響を与えることなく、送信ダイバーシチゲインを得ることが可能となる。
【0023】
(4)また、本発明の無線送信装置において、前記符号化部は、使用するサブキャリア数をn(nは自然数)とした場合、周波数軸方向に相互にn/2離れた一対のサブキャリアに対して符号化を行なうことを特徴としている。
【0024】
このように、使用するサブキャリア数をn(nは自然数)とした場合、周波数軸方向に相互にn/2離れた一対のサブキャリアに対して符号化を行なうので、シングルキャリア信号の特徴である良好なPAPR特性に影響を与えることなく、送信ダイバーシチゲインを得ることが可能となる。
【0025】
(5)また、本発明の無線送信装置において、前記符号化部は、使用するサブキャリアのサブキャリア番号を0からn−1(nは自然数)とした場合、サブキャリア番号の和が、n−1となる一対のサブキャリアに対して符号化を行なうことを特徴としている。
【0026】
このように、使用するサブキャリアのサブキャリア番号を0からn−1(nは自然数)とした場合、サブキャリア番号の和が、n−1となる一対のサブキャリアに対して符号化を行なうので、シングルキャリア信号の特徴である良好なPAPR特性に影響を与えることなく、送信ダイバーシチゲインを得ることが可能となる。
【0027】
(6)また、本発明の無線送信装置において、前記符号化部は、使用するサブキャリアのサブキャリア番号を0からn−1(nは自然数)とした場合、サブキャリア番号の和が、(n/2)−1、または(3n/2)−1となる一対のサブキャリアに対して符号化を行なうことを特徴としている。
【0028】
このように、使用するサブキャリアのサブキャリア番号を0からn−1(nは自然数)とした場合、サブキャリア番号の和が、(n/2)−1、または(3n/2)−1となる一対のサブキャリアに対して符号化を行なうので、シングルキャリア信号の特徴である良好なPAPR特性に影響を与えることなく、送信ダイバーシチゲインを得ることが可能となる。
【0029】
(7)また、本発明の送信方法は、複数のアンテナを有し、シングルキャリア通信方式で用いられる信号を符号化して無線送信を行なう無線送信装置の送信方法であって、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR(Peak to Average Power Ratio)特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうステップと、前記符号化した信号を送信するステップと、を少なくとも含むことを特徴としている。
【0030】
このように、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうので、シングルキャリア信号の特徴である良好なPAPR特性に影響を与えることなく、送信ダイバーシチゲインを得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうので、シングルキャリア信号の特徴である良好なPAPR特性に影響を与えることなく、送信ダイバーシチゲインを得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、複数のアンテナを有し、シングルキャリア通信方式で用いられる信号を符号化して無線送信を行なう無線送信装置において、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR(Peak to Average Power Ratio)特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なう。
【0033】
まず、PAPR特性が変わらない信号の変形について説明する。ここで、PAPR特性とは瞬時のPAPRを示すのではなく、統計的な特性を指している。元のDFT−S−OFDM信号のPAPR特性を悪化させない信号の変形法には、DFTに入力する順番を入れ替える、複素共役をとる、位相を回転させるなどがある。これらの変形はいずれも振幅変動はなく、また、シングルキャリアのデータの変化点を変えるものではないので、PAPR特性を劣化させることはない信号変形である。
【0034】
次にこれらの変形をDFTに入力する前に行なった場合、DFT後の信号にどのような影響を与えるかについて示す。ただし、DFTとIDFTは可逆の関係になるため、DFTとIDFTを入れ替えても同じ関係が成立する。
【0035】
順番を入れ替える方法については、回転によるデータ順の入れ替えについてのみ着目する。この回転によるデータ入れ替えは、DFTにより位相回転と関連付けられる。DFTのポイント数をnとし、信号T1=(t、t、…、tn−1)をDFTした結果を、
F1=(f、f、…、fn−1)とした場合、
T1をm個回転させた信号Tm=(tn−m、tn−m+1、…、t、…、tm−1)をDFTした結果Fmは、
Fm=(f×e−2π×m×0/n、f×e−2π×m×1/n、…、fn−1×e−2π×m×(n−1)/n)となる。このFmはF1に対して、隣接するサブキャリア間でe−2π×m/nの位相回転が加えられたものである。また、このデータ回転はm個のデータ回転に対して、全体では2×π×mの位相回転が加えられることになる。
【0036】
次に、複素共役をとった場合について示す。T1を複素共役した信号をTCとし、TCをDFTした結果をFCとすると、FCはF1の要素を用いて、
FC=(f、fn−1、fn−2、…、f)となる。
【0037】
このような信号の変形のみで、SFBCを実現することができれば、DFT−S−OFDMのPAPR特性を劣化させることなく、送信ダイバーシチゲインを獲得できる送信ダイバーシチを実現できる。
【0038】
(第1の実施形態)
本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明におけるPAPR特性の劣化をさせないSFBC符号化を用いたDFT−S−OFDM信号の送信装置の概略構成を示すブロック図である。ただし、送信ダイバーシチ実行時の送信アンテナ数を「2」、受信アンテナ数を「1」とする。以下の実施形態においては、PAPR特性の良好なシングルキャリア方式として、DFT−S−OFDM方式を用いて説明する。
【0039】
図1において、誤り訂正符号化部1は、入力された送信データに対して、誤り訂正などの符号化を行なう。変調部2は、PSKやQAMなどの変調を行なう。この変調は、ディジタル(1次変調)変調である。S/P(Serial/Parallel)変換部3は、符号化、変調等が施された時間領域信号をDFT(Discrete Fourier Transform)部4に入力するためにシリアル/パラレル変換を行なう。本実施形態では、使用するサブキャリア数、すなわち、DFTポイント数を「n」とするため、S/P変換部3の出力は、n個のベクトルとなる。
【0040】
DFT部4は、時間軸信号に離散フーリエ変換(DFT)を行ない、周波数信号を生成する。DFT部4は、時間周波数変換部を構成する。また、符号化部5は、入力される周波数信号に対してPAPR特性を劣化させないようにSFBC符号化を行なう。詳しくは後述する。サブキャリア割り当て部6−1、6−2は、送信するサブキャリアに周波数信号や符号化された周波数信号を割り当てる。IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)部7−1、7−2は、サブキャリアに割り当てられた周波数信号に逆離散フーリエ変換IDFTを行なう。IDFT部7−1、7−2は、周波数時間変換手段を構成する。本実施形態では、システム帯域のサブキャリア数をM(≧n)とするため、IDFTポイント数はMとなり、n個の入力以外は0が挿入される。通常、この0が挿入されるサブキャリアは他の端末が使用する。
【0041】
GI挿入部8−1、8−2は、IDFT部7−1、7−2の出力にシステムで規定されるガードインターバル(GI)を挿入する。GIとしてはシンボルの後半部のコピーを、シンボルの先頭に配置することが殆どであり、サイクリックプレフィックス(CP)と呼ばれることもある。P/S(Parallel/Serial)変換部9−1、9−2は、GI挿入部8−1、8−2の出力に対してパラレル/シリアル変換を行なう。D/A(Digital/Analog)変換部10−1、10−2は、P/S変換部9−1、9−2の出力に対しディジタル信号をアナログ信号に変換する。また、RF部11−1、11−2は、送信帯域に信号を変換し、図示しないアンテナからデータを送信する。このRF部には、送信する信号を高出力信号にするための高利得アンプ(HPA:High Power Amplifier)が含まれる。通常、HPAおいて、高出力領域まで線形性を保つことは難しく、また、保つためには消費電力が大きくなるという問題点があり、上りリンクの通信方式においてはPAPR特性のよいシングルキャリア変調方式が選択される。
【0042】
次にPAPR特性を劣化させない符号化について説明する。従来例でも説明したように、SFBCを行なう際、2つのサブキャリアに対して式(5)の右辺の一項目の行列(以下、「符号化行列」と呼称する。)で示したような符号化を行なえば、
11,k=h11,m、h12,k=h12,mという条件の下、受信機で最大のダイバーシチゲインを得ることができる。なお、hxy,zは送信アンテナyから受信アンテナxへのサブキャリアzにおける周波数応答を意味する。
【0043】
【数5】

式(5)において、k、mはサブキャリア番号を示し、0≦k、m≦n−1の整数である。*は複素共役を意味する。式(5)の符号化行列(右辺の1項目の行列)の2列目、すなわち、m番目のサブキャリアで送信する信号に着目すると、アンテナ2から送信されるデータに「−」が付いている。これは、アンテナ1で送信される信号に対して位相がπ回転していると解釈しても問題はない。(詳しくは受信処理の説明で示す。)従って、式(5)を任意の位相θを用いて、式(6)に変形する。
【0044】
【数6】

以下、式(6)に示される符号化行列に基づいて、SFBC符号化する方法を示す。参考までに、PAPR特性の劣化を考慮しない場合(従来例と同じ)は、符号化部5に入力されるF=(f、f、…、fn−1)に対して、
F1=(f、f、…、fn−1)、
F2=(f、−f、…、−fn−2)、
と符号化される。これに対して、PAPR特性を考慮する本発明は、
F1_1=(f、f、…fn/2−1、fn/2−1、…、fn−2、fn−1)、
F1_2=(fn/2×e−j×2π×0/n、fn/2+1×e−j×2π×1/n、…fn−1×e−j×2π×(n/2−1)/n、f×e−j×2π×n/2/n、…、fn/2−2×e−j×2π×(n−2)/n、fn/2−1×e−j×2π×(n−1)/n)となる。
【0045】
従来例では隣接するサブキャリア間で符号化行列により符号化を行なったが、本実施形態では整数pとして、サブキャリアk=pと、サブキャリアm=p+n/2(0≦p≦n/2−1)の組で符号化が行なわれる。また、pを用いて式(6)を書き直し整理すると式(7)のようになる。
【0046】
【数7】

θ=2π×p/nとすると、式(6)と同じ符号化行列になり、SFBCがサブキャリアpとp+n/2間で実現できる。fは各サブキャリアで送信されるスペクトル成分である。
【0047】
次に、F1_1、F1_2をFと比較すると、F1_1は、Fと全く同じ信号であるためPAPR特性の劣化はない。F1_2は、Fをn/2回転(1ステップ)し、複素共役(2ステップ)をとり、サブキャリア間で、e−j×2πp/n、全体で2πの位相回転(3ステップ)、すなわち、SFBCの組となるp/2離れたサブキャリア間でπの位相回転を与えることにより生成される。これは、実施形態の最初に示したように、PAPR特性を劣化させない信号の変形のみで実現できている。
【0048】
次に、F1_2の信号に対応する時間領域の信号がどのようになっているかを確認する。F1_1およびFの信号に対応する時間領域の信号を、
T=(t、t、…、tn−1)とすると、F1_2は、1ステップ目ではFをn/2回転するためTに対してデータ間でπの位相回転が加えられ、1データおきに符号が反転し、
Ta=(t、−t、…、−tn−1)となる。さらに、2ステップ目では、複素共役を取るためtを基準としデータの並びが反転しながら複素共役がとられ、
Tb=(t、−tn−1、…、−t)となる。さらに、3ステップ目ではサブキャリア間で、e−j×2πp/nの位相回転を与えるため、データが1つ回転し、
Tc=(−tn−1、…、−t、t)となり、F2の信号に対応する時間領域の信号はTcである。Tcを見ると、各要素がTの各要素に対する並び替えと複素共役、およびマイナスで構成されているため、PAPR特性が変わらないことが明らかとなる。
【0049】
図2は、符号化部5の入力信号と出力の関係を示す図である。図2に示すように、ff_1がサブキャリア割り当て部6−1に入力される信号であり、ff_2が同じくサブキャリア割り当て部6−2に入力される信号である。
【0050】
次に、受信機で最大のダイバーシチゲインが得られることを示す。ただし、SFBC符号化を施すサブキャリア間では伝搬路は一定であるとし、簡単のためノイズ成分は無視して示す。図3は、前述した送信装置でデータが送信された信号を復調するための受信機の構成を示す図である。図3において、RF部21は、図示しないアンテナで受信した信号をA/D(アナログ/ディジタル)変換可能な周波数帯域に変換する。A/D変換部22は、RF部21から入力されたアナログ信号を、ディジタル信号に変換する。
【0051】
シンボル同期部23は、GIを含むスペクトラム制御シングルキャリア信号からGIを削除してシンボルの同期をとり、通常のOFDMシンボル同期と同じような機能とすることができる。S/P変換部24は、シンボル同期が取られた信号を、後段のDFTポイント数に合わせるよう、S/P(シリアル/パラレル)変換を行なう。DFT部25は、入力された時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。このDFT部25の処理ポイント数は、通常、送信装置のIDFT部のポイント数と同じMである。
【0052】
伝搬路推定部26は、送信装置と受信装置の間の伝搬路をアンテナ毎およびサブキャリア毎に推定する。サブキャリア抽出部27は、通信帯域から受信に必要となるサブキャリアを抜き出す。このサブキャリア抽出部27では、必要となる伝搬路情報とデータとを抽出する機能を有する。スペクトラム合成部28は、スペクトラムを合成する。このスペクトラム合成部28には、それぞれの送信アンテナに対する伝搬路(各サブキャリア毎の周波数応答)推定結果h11,k、h12,k(kは、サブキャリアを表す自然数)と受信データr(k)が入力される。
【0053】
重み付け部30では入力される伝搬路推定結果とスペクトラム合成結果に対して、伝搬路変動をMMSEやゼロフォーシングなどを用いて重み付けする機能を有する。IDFT部31は送信装置のDFT部4に対応し、周波数領域のデータを時間領域に変換し、復調部32で送信装置の変調部2に対応した復調が行なわれ、復号部33で誤り訂正が施され送信データが復号される。
【0054】
符号化が行なわれるサブキャリア間で伝搬路の周波数変動が一定である場合、
11,p=h11,p+n/2、h12,p=h12,p+n/2
とすることができ、式(7)は式(8)となる。
【0055】
【数8】

スペクトル合成部には、伝搬路推定部で算出される伝搬路の情報h11,k12,k、および受信データr(k)が入力され、
11、p×r(p)−e−j×2πp/n×h12、p×r(p+n/2)が演算される。その結果、
【数9】

となり、最大のダイバーシチゲインを得ることができる。
【0056】
同様にe−j×2πp/n×h12、
×r(p)+h11、p×r(p+n/2)を演算すると、
【数10】

となる。
【0057】
また、受信機で伝搬路推定を行なう際、あらかじめ送信装置でp+n/2のサブキャリアに対して、e−j×2πp/nに相当する回転量を与えることで、受信機では従来のSFBCとほぼ同じ受信構成でデータを復調することが可能になる。
【0058】
すなわち、受信機で得られる周波数応答は、xを1あるいは2として(16)式で与えられる。
【0059】
【数11】

また、この場合、受信機の処理はデータfpを算出する際は、
11、p×r(p)−h12、p+n/2×r(p+n/2)
データfp+n/2を算出する際は、
12、p×r(p)+h11、p×r(p+n/2)となる。
【0060】
なお、重み付け部には、
【数12】

が入力され、MMSE等化などの処理が行なわれる。
【0061】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態以外の符号化行列でも、最大の送信ダイバーシチ効果を得ることができる方法について示す。式(13)で示される符号化行列(右辺の第1項)がその例である。
【数13】

【0062】
第1の実施形態では、サブキャリアpとサブキャリアp+n/2で符号化が行なわれる場合を示したが、式(13)の符号化行列では、サブキャリアpとサブキャリアn−1−pで符号化が行なわれる場合を示している。第1の実施形態と同様に、符号化部5の入力をF=(f、f、…、fn−1)とした場合、出力F2_1、F2_2は、それぞれ、
F2_1=(f、f、…、fn−1)、
F2_2=(fn−1、−fn−2、…、−f)、と表される。
【0063】
次に、F2_1、F2_2をFと比較するとF2_1はFと全く同じ信号であるためPAPR特性の劣化はない。F2_2はFを反転(1ステップ)し、複素共役をとり(2ステップ)、サブキャリア間でe−jπ、全体でnπの位相回転(3ステップ)により生成される。
【0064】
次に、F2_2の信号に対応する時間領域の信号がどのようになっているかを確認する。F2_1およびFの信号に対応する時間領域の信号を、
T=(t、t、…、tn−1)とすると、F2_2は1ステップでFを反転するためには、時間領域では複素共役をとり、サブキャリア間で、e−j×2π/n位相回転を与える必要があるため、
Ta=(t×e−j×2π×0×/n、t−j×2π×1×/n、…、tn−1−j×2π×(n−1)×/n)となる。さらに、2ステップで複素共役を取るため、時間領域ではデータ順が入れ替わり、
Tb=(t×e−j×2π×0×/n、tn−1−j×2π×(n−1)×/n、…、t−j×2π×1×/n)となる。さらに、3ステップで、サブキャリア間でe−jπの位相回転を与えるため、時間領域ではデータの回転が生じ、
Tc=(tn/2×e−j×2π×n/2×/n、tn/2−1−j×2π×(n/2−1)×/n、…、tn/2+1−j×2π×(n/2+1)×/n)、
となり、F2_2の信号に対応する時間領域の信号はTcである。Tcを見ると、各要素がTの各要素に対する並び替えと複素共役で構成されているため、PAPR特性が変わらないことが明らかとなる。
【0065】
次に、受信機で最大のダイバーシチゲインが得られることを示す。ただし、本符号化の場合は使用する全帯域で伝搬路は一定であるとし、簡単のためノイズ成分は無視して示す。h11,p=h11,x、h12,p=h12,x、とすると、式(13)は、式(14)となる。
【0066】
【数14】

pが偶数のときは、第1の実施形態と同様に合成が可能であり、
11、p×r(p)−h12、p×r(n−1)を演算すると、
【数15】

となり、最大のダイバーシチゲインを得ることができる。
【0067】
また、同様に、h12、p×r(p)+h11、p×r(p+n/2)を演算すると、
【数16】

となる。
【0068】
pが奇数のときは、
12、p×r(p)+h11、p×r(p+n/2)を演算すると、
【数17】

となり、最大のダイバーシチゲインを得ることができる。
【0069】
また、同様にh11、p×r(p)−h12、p×r(n−1)を演算すると、
【数18】

となる。
【0070】
次に別の符号化行列を示す。
【0071】
【数19】

ただし、qは0≦q≦n/4−1を満たす整数であり、Qは0あるいはn/2である。式(19)の符号化行列では、サブキャリアq+Qとサブキャリアn/2−1−q+Qで符号化が行なわれる場合を示している。
【0072】
第1の実施形態と同様に、符号化部5の入力をF=(f、f、…、fn−1)とした場合、出力F3_1、F3_2は、それぞれ、
F3_1=(f、f、…、fn−1)、
F3_2=(fn/2−1、−fn/2−2、…、−f、fn−1、…、fn/2+2、−fn/2+1)、
と表される。
【0073】
次に、F3_1、F3_2をFと比較すると、F3_1はFと全く同じ信号であるためPAPR特性の劣化はない。F3_2はF2_2をn/2サンプル回転させた(4ステップ)ものである。
【0074】
次に、F3_2の信号に対応する時間領域の信号がどのようになっているかを確認する。F3_1およびFの信号に対応する時間領域の信号を、
T=(t、t、…、tn−1)とすると、F3_2は、4ステップでF2_2をn/2サンプル回転させたものであるため、先に示したTcのデータ間に、e−j×2π/n位相回転を与えることになる。よって、
Td=(tn/2×e−j×2π×n/2×/n、tn/2−1−j×2π×(n/2−1)×/n、…、tn/2+1−j×2π×(n/2+1)×/n)、
となり、F3_2の信号に対応する時間領域の信号はTdである。Tdを見ると、各要素がTの各要素に対する並び替えと複素共役で構成されているため、PAPR特性が変わらないことが明らかとなる。
【0075】
次に受信機で最大のダイバーシチゲインが得られることを示す。ただし、本符号化の場合は使用する全帯域で伝搬路は一定であるとし、簡単のためノイズ成分は無視して示す。また、装置の構成は、図3で示したものと同じもので対応できる。従って本実施形態においては数式による処理のみを示す。伝搬路が一定であるいう条件から、
11,p=h11,x、h12,p=h12,x、とすると、式(19)は式(20)となる。
【0076】
【数20】

qが偶数のときは第1の実施形態と同様に合成が可能であり、
11、q+Q×r(q+Q)−h12、p×r(n/2−1−q+Q)を演算すると、
【数21】

となり、最大のダイバーシチゲインを得ることができる。
【0077】
また、同様に、
12、q+Q×r(q+Q)+h11、q+Q×r(n/2−1−q+Q)を演算すると、
【数22】

となる。
【0078】
qが奇数のときは、
12、q+Q×r(q+Q)+h11、q+Q×r(n/2−1−q+Q)を演算すると、
【数23】

となり、最大のダイバーシチゲインを得ることができる。
【0079】
また、同様に、
11、q+Q×r(q+Q)−h12、q+Q×r(n/2−1−q+Q)を演算すると、
【数24】

となる。
【0080】
なお、以上の第1および第2の実施形態では、SFBCの符号化を行なうサブキャリア間で伝搬路は一定であるとして説明を行なっているが、これは完全に一定であることが必要であるということを意味するわけではない。同じであれば、最大の送信ダイバーシチゲインを得ることが可能であるが、若干の違いに対しては、送信ダイバーシチゲインが最大ではなくなるだけで、相応のゲインが得られる。
【0081】
(第3の実施形態)
上記の第1および第2の実施形態において、ある程度の周波数範囲で伝搬路変動が一定とみなすことができる場合の受信処理については簡単に示しているが、本実施形態では伝搬路変動がある程度変動していても、最大のダイバーシチ効果を得る受信方法について示す。ただし、第1、および第2の実施形態同様、説明を簡単にするためにアンテナ間の伝搬路変動は受信機でわかっている場合を想定し、ノイズの影響は省略して示している。
【0082】
また、本実施形態では実施形態1で示した符号化行列を送信機で使用した場合の処理を示す。再度、式(25)に符号化行列を含む式を示す。
【0083】
【数25】

図4は、本実施形態における受信装置の概略構成を示すブロック図である。図4において、RF部21は、図示しないアンテナで受信した信号をA/D(アナログ/ディジタル)変換可能な周波数帯域に変換する。A/D変換部22は、RF部21から入力されたアナログ信号を、ディジタル信号に変換する。シンボル同期部23は、GIを含むシングルキャリア信号からGIを削除してシンボルの同期をとり、通常のOFDMシンボル同期の同じ機能とすることができる。S/P変換部24は、シンボル同期が取られた信号を、後段のDFTポイント数に合わせるよう、S/P(シリアル/パラレル)変換を行なう。
【0084】
DFT部25は、入力された時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。このDFT部25の処理ポイント数は、通常、送信装置のIDFT部のポイント数と同じMである。伝搬路推定部26は、送信装置と受信装置の間の伝搬路をアンテナ毎およびサブキャリア毎に推定する。サブキャリア抽出部27は、通信帯域から受信に必要となるサブキャリアを抜き出す。このサブキャリア抽出部27では、必要となる伝搬路情報とデータとを抽出する機能を有する。
【0085】
スペクトラム合成部28は、スペクトラムを合成する。このスペクトラム合成部28には、それぞれの送信アンテナに対する伝搬路(各サブキャリア毎の周波数応答)推定結果h11、k、h12、k(kはサブキャリアを表す自然数)と受信データr(k)が入力される。キャンセル部29は、合成された信号から干渉レプリカ生成部で生成される干渉信号のソフトレプリカ信号を間引く。ただし、ブロック29から34の処理は繰り返し行なわれ、最初の処理において干渉レプリカ信号はない。重み付け部30では入力される伝搬路推定結果と干渉信号が間引かれたスペクトラム合成結果に対して、伝搬路変動をMMSEやゼロフォーシングなどを用いて重み付けする機能を有する。
【0086】
IDFT部31は、周波数領域のデータを時間領域のデータに変換する。このIDFT部31のポイント数は、通常、送信で用いたDFT部のポイント数nと同じである。復調部32は、送信で用いたQPSK等の変調に対応して復調を行なう。復号部33は、送信装置で用いた符号化と対応した復号(誤り訂正)を行なう。ただし、繰り返し処理が行なわれるので、処理の途中では送信データのLLRを出力し、最終処理時に硬判定したデータを出力する。干渉レプリカ生成部34では、入力されたLLRを基に干渉レプリカ信号が生成される。
【0087】
図5は、干渉レプリカ生成部の構成を示すブロック図である。図5において1002は変調部、1003はS/P変換部、1004はDFT部であり、送信装置の2から4のブロックと同じ機能を有する。ただし、変調部1002には、復号部から、各データビットの対数尤度比であるLLR(Log Likelihood Ratio)が入力される。例えば、変調方式をQPSKとし、QPSK変調をするのに必要となる2ビットのLLRをl、lとすると式(26)に従って変調される。
【0088】
【数26】

softは、変調部1002の出力である。この処理の後、DFT部までは送信装置と同じ処理を行なう。Ssoftがデータの信頼度に応じた時間信号であるため、DFTの出力はデータの信頼度に応じた周波数信号となる。レプリカ生成部1005は、DFTの出力と伝搬路情報からキャンセル部29に入力するレプリカ情報を生成するブロックであるが、詳細については式を用いて説明する。
【0089】
スペクトラム合成部28には、通信に使用したサブキャリアのアンテナ1と受信アンテナ間の伝搬路情報h11、kとアンテナ2と受信アンテナ間の伝搬路情報h12、kが入力され、さらにデータ情報r(k)が入力される。ここで、「k」は、送信時に説明に使用した番号と同じとするが、それにより一般性を失うことはない。また、スペクトラム合成部28からはスペクトラム合成処理が行なわれたデータrr(k)が出力される。
【0090】
第1の実施形態では、式(25)において、h11、pとh11、p+n/2が同じとみなせるような伝搬路を想定したため、h11、p=h11、p+n/2として、処理を行なったが、本実施形態は異なるものとして処理を行なう。
【0091】
スペクトラム合成部28では、
rr(p)=h11、p×r(p)−e−j×2πp/n×h12、p+n/2×r(p+n/2)と、
rr(p+n/2)=e−j×2πp/n×h12、p×r(p)+h11、p+n/2×r(p+n/2)と、を演算し、それぞれ式(27)を得る。
【0092】
【数27】

式(27)の2つの式において、双方とも2項目がダイバーシチゲインを損なう要因である。キャンセル部29においてこの成分をキャンセルすることで、より大きなダイバーシチゲインを得ることが可能になる。
【0093】
レプリカ生成部1005では、式(28)で示す信号が計算される。
【0094】
【数28】

ここでfrepは、SsoftをDFTにより周波数変換することで得られる信号である。このSrepをキャンセル部に入力し、rr信号から減ずることで、復号した信号の信頼度を向上することが可能になる。
【0095】
ここで示した受信方法を用いることによって、周波数領域で符号化を行なう際、周波数応答がある程度は異なっていても、大きなダイバーシチ利得を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】SFBC符号化を用いたDFT−S−OFDM信号の送信装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】符号化部5の入力信号と出力の関係を示す図である。
【図3】送信装置でデータが送信された信号を復調するための受信機の構成を示す図である。
【図4】第3の実施形態における受信装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】干渉レプリカ生成部の構成を示すブロック図である。
【図6】DFT−S−OFDM方式に適用される送信機の概略構成を示すブロック図である。
【図7】(a)は、L配置の例を示す図であり、(b)は、D配置の例を示すである。
【符号の説明】
【0097】
1 訂正符号化部
2 変調部
3 S/P変換部
4 DFT部
5 符号化部
6−1、6−2 サブキャリア割り当て部
7−1、7−2 IDFT部
8 GI挿入部
9−1、9−2 P/S変換部
10−1、10−2 D/A変換部
11−1、11−2 RF部
21 RF部
22 A/D変換部
23 シンボル同期部
24 S/P変換部
25 DFT部
26 伝搬路推定部
27 サブキャリア抽出部
28 スペクトラム合成部
29 キャンセル部
30 重み付け部
31 IDFT部
32 復調部
33 復号部
34 干渉レプリカ生成部
1002 変調部
1003 S/P変換部
1004 DFT部
1005 レプリカ生成部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを有し、シングルキャリア通信方式で用いられる信号を符号化して無線送信を行なう無線送信装置であって、
各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR(Peak to Average Power Ratio)特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なう符号化部と、
前記符号化した信号を送信する送信部と、を備えることを特徴とする無線送信装置。
【請求項2】
複数のアンテナを有し、シングルキャリア通信方式で用いられる信号を符号化して無線送信を行なう無線送信装置であって、
時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する時間周波数変換部と、
前記時間周波数変換部の前段または後段に設けられ、入力信号を符号化する符号化部と、
前記符号化した信号を送信する送信部と、を備え、
前記符号化部は、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR(Peak to Average Power Ratio)特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうことを特徴とする無線送信装置。
【請求項3】
前記符号化部は、時間領域の信号または周波数領域の信号に対し、信号順序の並び替えを行なうことにより、位相回転を行なうことにより、または複素共役を取ることにより、各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR(Peak to Average Power Ratio)特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうことを特徴とする請求項1記載の無線送信装置。
【請求項4】
前記符号化部は、使用するサブキャリア数をn(nは自然数)とした場合、周波数軸方向に相互にn/2離れた一対のサブキャリアに対して符号化を行なうことを特徴とする請求項1記載の無線送信装置。
【請求項5】
前記符号化部は、使用するサブキャリアのサブキャリア番号を0からn−1(nは自然数)とした場合、サブキャリア番号の和が、n−1となる一対のサブキャリアに対して符号化を行なうことを特徴とする請求項1記載の無線送信装置。
【請求項6】
前記符号化部は、使用するサブキャリアのサブキャリア番号を0からn−1(nは自然数)とした場合、サブキャリア番号の和が、(n/2)−1、または(3n/2)−1となる一対のサブキャリアに対して符号化を行なうことを特徴とする請求項1記載の無線送信装置。
【請求項7】
複数のアンテナを有し、シングルキャリア通信方式で用いられる信号を符号化して無線送信を行なう無線送信装置の送信方法であって、
各アンテナから送信される時間領域の信号の符号化前のPAPR(Peak to Average Power Ratio)特性と符号化後のPAPR特性とが同一となるように符号化を行なうステップと、
前記符号化した信号を送信するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−290824(P2009−290824A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144126(P2008−144126)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】