無線通信システム、及び無線通信方法
【課題】協調通信方式による伝送においてチャネル周波数応答の推定精度を向上させる。
【解決手段】無線通信システムは、発信局と中継局と宛先局とを具備し、発信局が、自局に備えられているアンテナの本数に応じて行数及び列数が定められるユニタリ行列に基づいて生成されたトレーニング信号を、第1スロット及び第2スロットで送信されるパケットに配置し、宛先局が、第2スロットにおいて、発信局が送信したパケットと、中継局が転送したパケットとを受信し、受信したパケットそれぞれに含まれるトレーニング信号に基づいて、発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値と、中継局を介した発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出し、算出した推定値に基づいて、第2スロットにおいて受信した信号から、発信局が送信したパケットと、中継局が転送したパケットとを分離し、分離したパケットに含まれるデータ信号を復調する。
【解決手段】無線通信システムは、発信局と中継局と宛先局とを具備し、発信局が、自局に備えられているアンテナの本数に応じて行数及び列数が定められるユニタリ行列に基づいて生成されたトレーニング信号を、第1スロット及び第2スロットで送信されるパケットに配置し、宛先局が、第2スロットにおいて、発信局が送信したパケットと、中継局が転送したパケットとを受信し、受信したパケットそれぞれに含まれるトレーニング信号に基づいて、発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値と、中継局を介した発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出し、算出した推定値に基づいて、第2スロットにおいて受信した信号から、発信局が送信したパケットと、中継局が転送したパケットとを分離し、分離したパケットに含まれるデータ信号を復調する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発信局と宛先局以外の無線局に協調中継伝送を行わせる事で通信特性を向上させる協調通信方式が注目を集めている。このため、協調中継伝送については、多くの研究がなされている。協調中継伝送における通信方式のシステムモデルは、主に中継局伝送プロトコル、協調システム構成、協調プロトコルの三要素により決定づけられる。
【0003】
中継局伝送プロトコルとは、中継局が発信局から受信した信号に対してどのような信号処理を行い、宛先局へ伝送するかを示すものである。中継局伝送プロトコルの最も基本的なものはDF(Decode-and-Forward)法と、AF(Amplify-and-Forward)法との二つである。DF法は、中継局が受信した信号を復調、復号をする再生を行ってから、再生した信号に対して符号化、変調をして宛先局に伝送する手法である。AF法は、中継局が受信した信号を増幅し、増幅した信号を中継局に伝送する手法である。
【0004】
また、協調システム構成は、協調通信方式を用いた無線通信システムを構成する発信局、中継局、及び宛先局としての通信装置の個数と、当該無線通信システム内において行われる協調中継ホップ数を示すものである。例えば、協調通信方式を用いた無線通信システムの最も単純な構成は、発信局(Source;S)と、発信局が送信した信号を中継する中継局(Relay;R)と、宛先局(Destination;D)とを具備する1−Relay2−HOP(1R2H)構成である。
1R2H構成では、一般に、発信局から中継局への送受信と、中継局から宛先局への送受信とに対して、無線資源(時間及び周波数)の1スロットを割り当てるため、無線通信システム全体における、送受信における1周期を2スロットとすることが多い。
【0005】
また、協調プロトコルとは、無線通信システムの1周期における各通信装置(発信局、中継局、及び宛先局)間における送受信関係の組合せを示すものである。
図9は、1R2H構成を有する無線通信システム9における協調プロトコルの一例を示す図である。同図に示すように、無線通信システム9は、発信局91と、中継局92と、宛先局93とを具備する。発信局91と中継局92と宛先局93とは、OFDM変調を用いた無線通信を行い、無線通信システム9の1周期は、スロット1とスロット2との2つのスロットに分けられている。
【0006】
スロット1において、発信局91が中継局92及び宛先局93へのブロードキャスト送信を行い、スロット2において、発信局91及び中継局92が宛先局93へ同時送信をする。このとき、中継局92は、スロット1で受信したサブパケットP1の増幅などを行うために、スロット2でサブパケットP1を送信するまでに処理時間Drを要する。また、発信局91は、スロット2において、サブパケットP2を送信するタイミングを、中継局92がサブパケットP1を送信するタイミングと合わせるために、待機時間Ds経過した後に、送信を行う。待機時間Dsは、処理時間Drに応じて予め定められる。
宛先局93は、スロット1において、発信局91が送信する一種類の信号(サブパケットP1)を受信し、スロット2において、発信局91が送信する信号(サブパケットP2)と、中継局92が送信する信号(サブパケットP2)との二種類の信号が合成された信号を受信する。
図9に示す協調プロトコルは、プロトコルI、又はMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)型と呼ばれている(非特許文献1)。
【0007】
図10は、1R2H構成を有する無線通信システム9における協調プロトコルの他の例を示す図である。同図に示すように、スロット1において、発信局91が中継局92にサブパケットP1を送信し、スロット2において、発信局91及び中継局92が宛先局93へ同時送信する。宛先局93は、スロット2において、発信局91が送信するサブパケットP1と、中継局92が送信するサブパケットP2との二種類のサブパケットが合成された信号を受信する。スロット1において、宛先局93が発信局91から送信されたサブパケットP1に対して受信の処理を行わない点が、図9において示したプロトコルIと異なる。
図10に示す協調プロトコルは、プロトコルIII、又はMISO(Multiple-Input Single-Output)型と呼ばれている。
【0008】
以下、無線通信システム9において、協調プロトコルとしてプロトコルI、又はプロトコルIIIを適用した場合の発信局91、中継局92、及び宛先局93の送受信関係を周波数領域で説明する。
【0009】
(プロトコルI)
協調プロトコルとしてプロトコルIを適用した場合、スロット1において、発信局91が中継局92及び宛先局93に対してサブパケットP1をブロードキャスト送信する。このとき、宛先局93が受信する受信信号Yd1は、周波数領域において、次式(1)として表される。
【0010】
【数1】
【0011】
ここで、受信信号Yd1は[NRd×1]のベクトルであり、Ps1はスロット1における発信局91の送信電力である。行列Hsdは発信局91と宛先局93との間におけるチャネル周波数応答(Channel Frequency Response;CFR)を要素とする[NRd×NTs]のチャネル周波数応答行列である。X1は、サブパケットP1に対応する送信信号である。Wd1は宛先局93におけるスロット1での付加白色ガウス雑音(Additive White Gaussian Noise;AWGN)の周波数領域表現を要素とする[NRd×1]のベクトルである。ここで、NTsは発信局91が有する送信アンテナの数であり、NTrは中継局92が有する送信アンテナの数であり、NRrは中継局92が有する受信アンテナの数であり、NRdは宛先局93が有する受信アンテナの数である。
また、スロット1における中継局92が受信する受信信号Yr1は、次式(2)として表される。
【0012】
【数2】
【0013】
ここで、受信信号Yr1は[NRr×1]のベクトルであり、Hsrは発信局91と中継局92との間におけるチャネル周波数応答を要素とする[NRr×NTs]のチャネル周波数応答行列である。Wr1は中継局92におけるスロット1での付加白色ガウス雑音の周波数領域表現を要素とする[NRr×1]のベクトルである。ここで、NRrは中継局92が有するアンテナの数である。
【0014】
中継局92は、スロット1において受信した受信信号Yr1を増幅係数αrで増幅し、増幅した受信信号をスロット2において宛先局93に送信する。発信局91は、送信信号X2(パケットP2)を宛先局93に送信する。このとき、発信局91と中継局92とから送信信号が同時に送信されることと、受信時の付加雑音の存在を考慮すると、スロット2における宛先局93が受信する受信信号Yd2は、次式(3)で表される。増幅係数αrは、[NRr×NTr]の行列であり、中継局92が受信信号Yr1を増幅する特性に応じて定められる。
【0015】
【数3】
【0016】
ここで、受信信号Yd2は[NRd×1]のベクトルであり、Pr2はスロット2における中継局92の送信電力であり、Ps2はスロットにおける発信局91の送信電力である。行列Hrdは中継局92と宛先局93におけるチャネル周波数応答を要素とする[NRd×NTr]のチャネル周波数応答行列である。W’d2は宛先局93におけるスロット2での付加白色ガウス雑音の周波数領域表現を要素とする[NRd×1]のベクトルである。
式(1)と式(3)とをまとめると、式(4)と表すことができる。
【0017】
【数4】
【0018】
ここで、中継局伝送プロトコルにAF法を用いた場合、式(4)における行列H11、H21、及びH22は、それぞれが次式(5−1)〜(5−3)として表される。
【0019】
【数5】
【0020】
また、中継局伝送プロトコルにDF法を用いた場合、式(4)における行列H11、H21、及びH22は、それぞれが次式(6−1)〜(6−3)として表される。
【0021】
【数6】
【0022】
このとき、宛先局93において、チャネル周波数応答を示す行列H11、H21、H22の推定値を算出できれば、算出した行列H11、H21、H22の推定値を用いて、スロット2で受信した受信信号Yd2に含まれる送信信号X1及びX2を分離し、送信信号X1及びX2の復調、復号を行うことができる。
【0023】
(プロトコルIII)
協調プロトコルにプロトコルIを適用した場合、プロトコルIと異なり、宛先局93は、発信局91が送信する信号X1(サブパケットP1)を受信しない。ゆえに、プロトコルIIIでは、上記の式(1)で表される受信信号Yd1が存在せず、宛先局93がスロット2において受信する受信信号Yd2は、次式(7)により表される。
【0024】
【数7】
【0025】
このとき、宛先局93において、行列H21、H22の推定値を算出できれば、スロット2で受信した受信信号Yd2に含まれる送信信号X1及びX2を分離して、送信信号X1及びX2の復調、復号を行うことができる。
【0026】
続いて、無線通信システム9において、協調プロトコルとしてプロトコルI、又はプロトコルIIIを適用した場合のチャネル推定について説明する。
【0027】
(プロトコルI)
宛先局93は、発信局91が送信する送信信号X1が既知の信号(トレーニング信号)である場合、式(1)に基づいて、チャネル周波数応答行列H11を推定することができる。しかし、スロット2では、発信局91が送信する送信信号X2が既知の信号(トレーニング信号)であったとしても、発信局91と中継局92とが送信を行うので、それぞれから送信される送信信号X1及びX2が相互に干渉してしまう。そのため、宛先局93は、受信する送信信号X1及びX2に基づいて、チャネル周波数応答行列H21及びH22を適切に推定することができない。
【0028】
(プロトコルIII)
プロトコルIIIでは、宛先局93は、スロット1において受信する信号を処理せず、スロット2において受信する受信信号Yd2は式(7)で表される。したがって、スロット2では、プロトコルIを用いた場合と同様に、発信局91が送信する送信信号X2と、中継局92が送信する送信信号X1とがともに既知の信号(トレーニング信号)であったとしても、送信信号X1及びX2が相互に干渉してしまう。そのため、宛先局93は、受信する送信信号X1及びX2に基づいて、チャネル周波数応答行列H21及びH22を適切に推定することができない。
【0029】
そこで、非特許文献2では、単数アンテナ(Single-Input Single-Output;SISO)構成を用いた協調通信方式を適用したシステムにおいて、相互干渉を回避する手法の検討がなされている。この手法は、発信局91と宛先局93との間におけるチャネル周波数応答を推定する期間において、中継局92と宛先局93との間におけるチャネル周波数応答を推定するための信号(トレーニング信号)を送信しないようにする、というものである。すなわち、非特許文献2の手法では、トレーニング信号の直交性を保つために、各トレーニング信号を異なる期間で送信する。
【0030】
図11は、複数アンテナ(MIMO)構成におけるトレーニング信号の配置の一例を示す概略図である。同図に示す例は、非特許文献2の手法を複数アンテナ構成に適用した場合の例であり、発信局91が2つの送信アンテナを有する場合を示している(NTs=2)。また、パケットを構成するサブパケットP1及びサブパケットP2において、トレーニング信号を配置する4OFDMシンボル分の領域を4つに分け、各領域を時間順にL1〜L8としている。
【0031】
サブパケットP1の領域L1においてアンテナ1にトレーニング信号Cを割り当て、領域L2においてアンテナ2にトレーニング信号Cを割り当てる。また、サブパケットP2の領域L7においてアンテナ1にトレーニング信号Cを割り当て、領域L8においてアンテナ2にトレーニング信号Cを割り当てる。このようなトレーニング信号の配置は、スキャッタード型と呼ばれる。発信局91及び中継局92がスロット2においてトレーニング信号Cを異なるタイミングで送信することにより、宛先局93が受信する各トレーニング信号Cの直交性を確保している。このとき、トレーニング信号Cは、すべてのサブキャリアに対して割り当てられる。
【0032】
このように、トレーニング信号の構成は、各要素がCとなる対角行列として表すことができる。発信局91のアンテナの数が2つの場合(NTs=2)、トレーニング信号の構成は、図11に示すように、4行4列の対角行列として表すことができる。図11に示す例において、対角行列の第1行目及び第3行目の要素は、送信局(発信局91及び中継局92)が有するアンテナ1から送信されるトレーニング信号であり、第2行目及び第4行目の要素は、送信局が有するアンテナ2から送信されるトレーニング信号である。また、第1列目から第4列目の要素は、それぞれが領域L1〜L8で送信されるトレーニング信号として割り当てられている。すなわち、図11において、「C」が記されていない領域L1〜L8の領域には、トレーニング信号を割り当てない。
【0033】
このようなトレーニング信号Cの割り当てを行うことにより、スロット2において、領域L1、L2では中継局92が有するアンテナ1、2からトレーニング信号Cが送信され、領域L7、L8では発信局91が有するアンテナ1、2からトレーニング信号Cが重複することなく送信される。これにより、トレーニング信号Cの相互干渉が生じることを防ぎ、トレーニング信号Cの直交性を維持することができる。このとき、受信局(中継局92及び宛先局93)は、受信したトレーニング信号Cと、受信局に予め記憶されているトレーニング信号Cとに基づいて、チャネル推定を行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】R. U. Nabar, H. Bolcskei, and F.W. Kneubuhler, “Fading relay channels: Performance limits and space-time signal design,” IEEE J. Sel. Areas Commun., vol. 22, no. 6, pp. 1099-1109, Jun. 2004.
【非特許文献2】Z. Zhao, et al, “Application of Cooperative Diversity in 802.11a Ad-hoc Networks,” ICCCN’07, 1016-1021, Aug. 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
しかしながら、上述のように配置されたトレーニング信号Cに基づいて推定されたチャネル周波数応答には、スロット2における発信局91から送信されるサブパケットP2のデータと、中継局92から送信されるサブパケットP1のデータとが相互に干渉する影響が反映されていない。そのため、トレーニング信号に基づいて得られるチャネル周波数応答の推定値と、各サブパケットに含まれるデータに対するチャネル周波数応答とに差が生じてしまう。推定値にこのような差が生じてしまうと、受信信号から各サブパケットに含まれるデータを分離する際の精度が低くなり、データを正しく復調、復号できなくなることがある。このように、上述のように配置されたトレーニング信号Cを用いたチャネル周波数応答の推定には、改善の余地がある。
【0036】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、協調通信方式を用いた伝送において、チャネル周波数応答の推定精度を向上させる無線通信システム、及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記問題を解決するために、本発明は、一つの無線チャネルを時分割して得られる第1スロット及び第2スロットにおいてデータ信号を含むパケットを送信する発信局と、前記パケットの宛先である宛先局と、前記発信局が第1スロットにおいて送信したパケットを受信し、受信したパケットを第2スロットにおいて前記宛先局へ送信する転送を行う中継局とを具備する無線通信システムであって、前記発信局は、自局に備えられているアンテナの本数に応じて行数及び列数が定められるユニタリ行列に基づいて生成されたトレーニング信号を、前記第1スロットで送信されるパケット及び前記第2スロットで送信されるパケットに配置するトレーニング配置部を備え、前記宛先局は、第2スロットにおいて、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを受信し、受信したパケットそれぞれに含まれるトレーニング信号に基づいて、前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値と、前記中継局を介した前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出するチャネル推定部と、前記チャネル推定部が算出した推定値に基づいて、第2スロットにおいて受信した信号から、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを分離し、分離したパケットに含まれるデータ信号を復調するデータ復調部とを備えることを特徴とする無線通信システムである。
【0038】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記ユニタリ行列は、前記発信局に備えられているアンテナの本数がN本の場合、2N次の正方行列であり、前記トレーニング配置部は、前記ユニタリ行列を2つのN行2N列の部分行列に分割し、一方の部分行列の各行の要素をトレーニング信号として各アンテナに対応させて第1スロットに配置し、他方の部分行列の各行の要素をトレーニング信号として各アンテナに対応させて第2スロットに配置することを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記トレーニング配置部は、第1スロット及び第2スロットにおいて、前記トレーニング信号を配置する領域を2N個に分割し、前記分割された各領域に、前記部分行列の各列の要素を順に配置することを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記チャネル推定部は、第2スロットにおいて、受信した2つの前記パケットに含まれるトレーニング信号と、予め記憶している前記トレーニング信号のレプリカ信号とを用いて前記推定値を算出することを特徴とする。
【0039】
また、本発明は、一つの無線チャネルを時分割して得られる第1スロット及び第2スロットにおいてデータ信号を含むパケットを送信する発信局と、前記パケットの宛先である宛先局と、前記発信局が第1スロットにおいて送信したパケットを受信し、受信したパケットを第2スロットにおいて前記宛先局へ送信する転送を行う中継局とを具備する無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記発信局が、自局に備えられているアンテナの本数Nに応じて行数及び列数が定められるユニタリ行列に基づいて生成されたトレーニング信号を、前記第1スロットで送信されるパケット及び前記第2スロットで送信されるパケットに配置するトレーニング配置ステップと、前記宛先局が、第2スロットにおいて、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを受信し、受信したパケットそれぞれに含まれるトレーニング信号に基づいて、前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値と、前記中継局を介した前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出するチャネル推定ステップと、前記宛先局が、前記チャネル推定ステップにおいて算出した推定値に基づいて、第2スロットにおいて受信した信号から、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを分離し、分離したパケットに含まれるデータ信号を復調するデータ復調ステップとを有することを特徴とする無線通信方法である。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、第2スロットにおいて、発信局から受信するパケットに含まれるトレーニング信号と、中継局から受信するパケットに含まれるトレーニング信号とは、ユニタリ行列に基づいて生成されているため直交性が保たれているので、チャネル推定部は、第2スロットにおいて発信局及び中継局から受信したトレーニング信号に対して、トレーニング信号を生成する際に用いたユニタリ行列の逆行列を用いた演算を行うことにより、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。このように、トレーニング信号自体の直交性を利用して、発信局から送信されたパケットと、中継局から送信されたパケットとが相互干渉した状態の受信信号からチャネル周波数応答の推定値を算出することにより、推定値の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態における無線通信システム1の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態における発信局11の情報ビット列を送信する処理と、宛先局13の情報ビット列を復元する処理とのフローチャートである。
【図3】同実施形態におけるトレーニング信号の割当ての一例を示す概略図である。
【図4】第2実施形態における無線通信システム2の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】同実施形態におけるトレーニング信号の割当ての一例を示す概略図である。
【図6】同実施形態において、4×4のIEEE802.11nのHT−LTFを利用した場合の一例を示す概略図である。
【図7】同実施形態において、4×4のIEEE802.11nのHT−LTFを利用した場合の一例を示す概略図である。
【図8】本発明の要部の構成を説明する図である。
【図9】1R2H構成を有する無線通信システム9における協調プロトコルの一例を示す図である。
【図10】1R2H構成を有する無線通信システム9における協調プロトコルの他の例を示す図である。
【図11】複数アンテナ(MIMO)構成におけるトレーニング信号の配置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における無線通信システム、及び無線通信方法を説明する。
【0043】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における無線通信システム1の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、無線通信システム1は、通信装置としての発信局11と中継局12と宛先局13とを具備し、協調通信方式を用いた1R2H(1-Relay2-Hop)の構成を有する。無線通信システム1では、発信局11から中継局12への送受信と、発信局11及び中継局12から宛先局13への送受信とそれぞれに対して、無線資源(時間及び周波数)の1スロットが割り当てられ、2スロット(スロット1及びスロット2)を1周期として無線通信が行われる。
【0044】
また、各局がOFDM変調を用いた無線通信を行う。発信局11は宛先局13に伝送する情報ビット列を送信し、中継局12は発信局11から受信した情報ビット列を宛先局13に送信する中継を行い、宛先局13は発信局11及び中継局12から情報ビット列を受信する。以下、中継局伝送プロトコルとしてAF法を適用し、発信局11及び中継局12が有する送信アンテナは1つであり、中継局12及び宛先局13が有する受信アンテナが1つである場合(NTs=NTr=1、NRr=NRd=1)、すなわち、単数アンテナ(SA)システムの場合について説明する。
【0045】
発信局11は、チャネル符号化部111と、データ変調部112と、直交トレーニング配置部113と、周波数−時間変換部114と、パスバンド変換部115を備えている。
チャネル符号化部111には、宛先局13に送信する情報ビット列(情報ビットストリーム)が入力される。チャネル符号化部111は、入力された情報ビット列に対して誤り訂正符号化を行い符号化ビットに変換し、得られた符号化ビットを出力する。
【0046】
データ変調部112は、予め定められた変換の規則を用いて、チャネル符号化部111が出力する符号化ビットをコンスタレーションマッピングして複素QAM(Quadrature Amplitude Modulation)シンボルに変換する。このとき、データ変調部112は、変換した複素QAMを各サブキャリアに対応付ける。このとき、各サブキャリアに対応付けられた複素QAMシンボルを全体として周波数領域複素シンボルという。また、データ変調部112は、スロットの数に応じて、変換により得られた周波数領域複素シンボルを分割する。ここでは、周波数領域複素シンボルをスロット1及びスロット2に対応させて2つのストリームに分割する。
【0047】
また、データ変調部112は、ストリームに分けられた周波数領域複素シンボルそれぞれに対してK個のシンボルを一単位としてブロック化し、ブロックごとに逆離散フーリエ変換(Inverse Discrete Fourier Transform;IDFT)を施す。ここで、スロット1に対応するブロックを構成する周波数領域複素シンボルの値を要素とする[NTs×1]のベクトルを周波数領域複素シンボルベクトルX1とし、スロット2に対応するブロックを構成する周波数領域複素シンボルの値を要素とする[NTs×1]のベクトルを周波数領域複素シンボルベクトルX2とする。更に、データ変調部112は、IDFTを施した周波数領域複素シンボルベクトルX1、X2に対して、ガードインターバル(Guard Interval;GI)を付加して出力する。このとき、データ変調部112は、スロット1において送信するサブパケットP1に周波数領域複素シンボルベクトルX1を割り当て、スロット2において送信するパケットに周波数領域複素シンボルベクトルX2を割り当てる。
【0048】
直交トレーニング配置部113には、データ変調部112からスロット1及びスロット2に対応するパケットが入力される。直交トレーニング配置部113は、各パケットにトレーニング信号を割当て出力する。このトレーニング信号は、ユニタリ行列に基づいて予め定められた既知の信号である。トレーニング信号は、情報ビット列と同様に、各サブキャリアに割り当てられ、OFDM変調されて送信される。各サブキャリア上に配置されたトレーニング信号を周波数領域トレーニング信号という。この周波数領域トレーニング信号の周波数領域複素シンボル値をCとする。
【0049】
また、直交トレーニング配置部113は、情報ビット列に対応する周波数領域複素シンボルX1、X2と同様に、周波数領域複素シンボルCに対してIDFTを施した後に、ガードインターバルを付加する。また、直交トレーニング配置部113は、複数のトレーニング信号をスロットごとに割り当て、スロット1で送信するサブパケットP1と、スロット2で送信するサブパケットP2とを生成する。サブパケットP1及びP2には、例えば、トレーニング信号と、データ(周波数領域複素シンボルベクトルX1、X2)とが時間軸上で分けて配置される。すなわち、スロット1に割り当てられたデータと、スロット1に割り当てられたトレーニング信号とを連結したものをサブパケットP1とする。また、スロット2に割り当てられたデータと、スロット2に割り当てられたトレーニング信号とを連結したものをサブパケットP2とする。
【0050】
周波数−時間変換部114は、直交トレーニング配置部113が生成するサブパケットP1及びサブパケットP2それぞれに対して、IDFTを用いて周波数領域の信号から時間領域の信号へ変換し、変換したサブパケットP1と、変換したサブパケットP2とを含むパケットを出力する。
パスバンド変換部115は、周波数−時間変換部114が出力するパケットをベースバンドからパスバンド(搬送波の周波数帯域)に変換する。また、パスバンド変換部115は、接続されているアンテナを介して、変換したパケットのうち、スロット1においてサブパケットP1を送信し、スロット2においてサブパケットP2を送信する。このとき、パスバンド変換部115は、サブパケットP1を送信してから、待機時間Ds経過した後に、サブパケットP2を送信する。ここで、待機時間Dsは、中継局12における中継の処理に要する処理時間Drに応じて定められる。パスバンド変換部115が、時間Ds経過した後にサブパケットP2を送信することにより、宛先局13において、中継局12からのサブパケットP1と、サブパケットP2とが受信されるタイミングをそろえる。なお、伝搬経路等による時間のずれは、ガードインターバルにより補償される。
【0051】
宛先局13は、ベースバンド変換部131と、時間−周波数変換部132と、チャネル推定部133と、データ復調部134と、チャネル復号部135とを備えている。
ベースバンド変換部131は、接続されているアンテナを介して、発信局11及び中継局12から送信された信号を受信し、受信した信号をパスバンドからベースバンドに変換し、変換した信号を時間−周波数変換部132に出力する。
時間−周波数変換部132は、ベースバンド変換部131から入力される信号に対して、ガードインターバルの除去と、DFT(Discrete Fourier Transform;離散フーリエ変換)を用いた時間領域の信号から周波数領域の信号への変換とを行い、チャネル推定部133に出力する。
【0052】
チャネル推定部133は、直交トレーニング配置部113が配置するトレーニング信号の基になるユニタリ行列(レプリカ信号)を予め記憶しており、当該レプリカ信号と、時間−周波数変換部132から入力される信号とに基づいて、自局と発信局11との間のチャネル周波数応答と、中継局12を介した自局と発信局11との間のチャネル周波数応答とを推定する。
データ復調部134は、チャネル推定部133が推定したチャネル周波数応答に基づいて、時間−周波数変換部132が変換した信号に含まれるパケットの分離と、チャネル等化を行う。また、データ復調部134は、分離したパケットそれぞれに対して、周波数領域複素シンボルを検出し、各符号化ビットに対応する検出値(軟判定値)をチャネル復号部135に出力する。
チャネル復号部135は、データ復調部134から入力される検出値に対して、チャネル復号化を行い、復号した情報ビット列を出力する。
【0053】
図2は、本実施形態における発信局11の情報ビット列を送信する処理と、宛先局13の情報ビット列を復元する処理とのフローチャートである。
【0054】
図2(a)は、発信局11における送信の処理を示すフローチャートである。
発信局11において、チャネル符号化部111に情報ビット列が入力されると、チャネル符号化部111が入力された情報ビット列に対して、予め定められた符号化率で誤り訂正符号化を行う(ステップS101)。
データ変調部112は、チャネル符号化部111が符号化した情報ビット列を変調し、スロット1において送信するサブパケットP1に割り当てる周波数領域複素シンボルベクトルX1と、スロット2において送信するサブパケットP2に割り当てる周波数領域複素シンボルベクトルX2とを生成する(ステップS102)。
【0055】
直交トレーニング配置部113は、データ変調部112が生成した周波数領域複素シンボルベクトルX1及びX2と、予め定められたトレーニング信号と連結して、サブパケットP1及びサブパケットP2を出力する(ステップS103)。
周波数−時間変換部114は、直交トレーニング配置部113が出力するサブパケットP1及びサブパケットP2を時間領域の信号に変換する(ステップS104)。
パスバンド変換部115は、周波数−時間変換部114が変換した信号をパスバンドに変換し、アンテナを介して送信する(ステップS105)。
【0056】
図2(b)は、宛先局13における受信の処理を示すフローチャートである。
ベースバンド変換部131は、アンテナを介して、発信局11及び中継局12から送信された信号を受信し、受信した信号をベースバンドに変換する(ステップS201)。
時間−周波数変換部132は、ベースバンド変換部131が変換した信号を周波数領域の信号に変換する(ステップS202)。
チャネル推定部133は、時間−周波数変換部132が変換した信号から、発信局11と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出する。また、チャネル推定部133は、発信局11と中継局12との間のチャネル周波数応答と、中継局12と自局との間のチャネル周波数応答とを合成したチャネル周波数応答の推定値を算出する(ステップS203)。
【0057】
データ復調部134は、チャネル推定部133が推定したチャネル周波数応答の推定値に基づいて、ベースバンド変換部131が変換した信号からサブパケットP1とサブパケットP2とを分離し、分離したサブパケットP1及びサブパケットP2に含まれるデータを復調して、それぞれの軟判定値を出力する(ステップS204)。
チャネル復号部135は、データ復調部134が出力した軟判定値を用いて、誤り訂正復号を行い、情報ビット列を復元して出力する(ステップS205)。
【0058】
以下、本実施形態の無線通信システム1において、協調プロトコルとして、プロトコルIを適用した場合と、プロトコルIIIを適用した場合とにおけるトレーニング信号の割当てについて説明する。
【0059】
<プロトコルIを適用した場合>
図3は、本実施形態におけるトレーニング信号の割当ての一例を示す概略図である。
直交トレーニング配置部113は、サブパケットP1におけるトレーニング信号を配置する領域に含まれる領域L1及び領域L2と、サブパケットP2におけるトレーニング信号を配置する領域に含まれる領域L3及び領域L4とに対して、次式(8)で表される行列の各要素に応じた信号を割り当てる。
【0060】
【数8】
【0061】
図3に示すように、直交トレーニング配置部113は、[2×2](=[2NTs×2NTs],NTs=1)のユニタリ行列A2を用いてCA2で表される行列の各要素に応じた信号をトレーニング信号としてサブパケットP1及びサブパケットP2に割り当てる。ここで、Cは周波数領域複素シンボルである。
具体的には、行列CA2の第1行の要素がスロット1で送信されるトレーニング信号に対応し、第2行の要素がスロット2で送信されるトレーリング信号に対応している。また、行列CA2の第1列の要素がスロット1の領域L1及びスロット2の領域L3で送信されるトレーニング信号に対応し、第2列の要素がスロット1の領域L2及びスロット2の領域L4で送信されるトレーニング信号に対応している。
【0062】
上述のように、直交トレーニング配置部113がトレーニング信号を各サブパケットに配置することにより、宛先局13がスロット2において中継局12から受信するサブパケットP1のトレーニング信号と、宛先局13が発信局11から受信するサブパケットP2のトレーニング信号との直交性を維持することができる。
このとき、宛先局13において、時間−周波数変換部132がチャネル推定部133に出力する受信信号Yは、次式(9)として表される。
【0063】
【数9】
【0064】
ここで、Yd11はスロット1における1番目のトレーニング信号(領域L1に配置された信号A)に対応する受信信号であり、Yd12はスロット1における2番目のトレーニング信号(領域L2に配置された信号B)に対応する受信信号であり、Yd21はスロット2における1番目のトレーニング信号(領域L3に配置された信号A’及び領域L1に配置された信号A)に対応する受信信号であり、Yd22はスロット2における2番目のトレーニング信号(領域L4に配置された信号B’及び領域L2に配置された信号B)に対応する受信信号である。
【0065】
また、H11はスロット1における発信局11と宛先局13との間のチャネル周波数応答である。H21は、スロット1における発信局11と中継局12との間のチャネル周波数応答と、スロット2における中継局12と宛先局13との間のチャネル周波数応答とを合成したチャネル周波数応答である。H22は、スロット2における発信局11と宛先局13との間のチャネル周波数応答である。
また、Wd11、Wd12はスロット1における熱雑音であり、Wd21、Wd22はスロット2における熱雑音である。Cは周波数領域複素シンボルの値である。
【0066】
チャネル推定部133は、式(9)に対して、右からC−1A2H(行列A2Hは、行列A2のエルミート共役である。)を乗算する次式(10)を演算することにより、チャネル周波数応答H11、H21、H22の推定値を算出する。
【0067】
【数10】
【0068】
宛先局13において、チャネル推定部133が式(10)を用いて、チャネル周波数応答H11、H21、H22の推定を行うことにより、スロット2における発信局11と宛先局13との間のチャネル周波数応答の推定値と、スロット2における発信局11から中継局12を経由して宛先局13までの合成チャネル周波数応答の推定値とを算出することができる。なお、データ復調部134とチャネル復号部135とは、チャネル推定部133が推定した各チャネル周波数応答の推定値を用いて、信号に含まれるサブパケットP1及びサブパケットP2の分離、チャネル等化を行い、サブパケットP1及びサブパケットP2それぞれに含まれるデータの復調、復号を行い宛先局13が送信した情報ビット列(情報ビットストリーム)を復元する。
【0069】
<プロトコルIIIを適用した場合>
プロトコルIを適用した場合と同様に、直交トレーニング配置部113がトレーニング信号を各サブパケットに配置する。宛先局13において、時間−周波数変換部132がチャネル推定部133に出力する受信信号Yは、次式(11)として表される。
【0070】
【数11】
【0071】
宛先局13は、チャネル推定部133が次式(12)を用いてチャネル周波数応答H21、H22の推定値を算出し、データ復調部134及びチャネル復号部135が復調、復号を行い、発信局11が送信した情報ビット列を復元する。
【0072】
【数12】
【0073】
このように、プロトコルIIIを適用した場合においても、サブパケットP1とサブパケットP2とが相互に干渉する影響を反映したチャネル周波数応答の推定値を算出することができるので、チャネル周波数応答を推定する精度を向上させることができる。
【0074】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態における無線通信システム2の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように無線通信システム2は、通信装置としての発信局21と中継局22と宛先局23とを具備し、協調通信方式を用いた1R2Hの構成を有する。無線通信システム2では、第1実施形態の無線通信システム1(図1)と同様に、発信局21から中継局22への送受信と、発信局21及び中継局22から宛先局23への送受信とそれぞれに対して、無線資源の1スロットが割り当てられ、2スロットを1周期として無線通信が行われる。また、各局がOFDM変調を用いた無線通信を行う。
【0075】
また、無線通信システム2において、第1実施形態の無線通信システム1と同様に、発信局21は宛先局23に伝送する情報ビット列を送信し、中継局22は発信局21から受信した情報ビット列を宛先局23に送信する中継を行い、宛先局23は発信局21及び中継局22から情報ビット列を受信する。以下、中継局伝送プロトコルとしてAF法を適用し、発信局21及び中継局22が有する送信アンテナは2つであり、中継局22及び宛先局23が有する受信アンテナが2つである場合(NTs=NTr=2、NRr=NRd=2)、すなわち、複数アンテナ(Multi-Antenna;MA)システムの場合について説明する。以下、無線通信システム2において、無線通信システム1と同じ部分には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
無線通信システム2は、各局の間の無線通信にMIMO方式を適用している点が、第1実施形態の無線通信システム1と異なる。
発信局21は、直並列変換部216と、アンテナの数(NTs=2)に応じて2つの送信部217(送信部217−1、送信部217−2)とを備えている。直並列変換部216には、宛先局23に送信する情報ビット列が入力される。また、直並列変換部216は、入力された情報ビット列に対して、シリアル−パラレル変換を行い2つのビット列を生成し、一方のビット列を送信部217−1に出力し、他方のビット列を送信部217−2に出力する。
【0077】
送信部217−1は、チャネル符号化部111と、データ変調部112と、直交トレーニング配置部113と、周波数−時間変換部114と、パスバンド変換部115とを有している。チャネル符号化部111には、直並列変換部216からビット列が入力される。送信部217−2は、送信部217−2と同じ構成を有している。送信部217−1及び送信部217−2は、それぞれが入力されるビット列を、それぞれに接続されているアンテナから送信する。
【0078】
宛先局23は、アンテナの数(NRs=2)に応じて2つの受信部236(受信部236−1、受信部236−1)と、並直列変換部237とを備えている。受信部236−1は、ベースバンド変換部131と、時間−周波数変換部132と、チャネル推定部133と、データ復調部134と、チャネル復号部135とを有している。受信部236−2は、受信部236−1と同じ構成を有している。受信部236−1及び受信部236−2は、それぞれが受信した信号からビット列を復元し、 復元したビット列を並直列変換部237に出力する。並直列変換部237は、受信部236−1と受信部236−2とからビット列が入力され、入力されるビット列に対してパラレル−シリアル変換を行い、発信局21が送信した情報ビット列を復元して出力する。
【0079】
以下、本実施形態の無線通信システム2において、各送信部217が有する直交トレーニング配置部113によるトレーニング信号の割当てについて説明する。
図5は、本実施形態におけるトレーニング信号の割当ての一例を示す概略図である。各直交トレーニング配置部113は、発信局21が有するアンテナの数が2(=NTs)のとき、[4×4](=[2NTs×2NTs])のユニタリ行列A2NTsを用いて行列CA2NTsで表される行列の各要素に応じた信号をトレーニング信号として各サブパケットに割り当てる。サブパケットP1及びサブパケットP2において、トレーニング信号を配置する領域は、それぞれに4OFDMシンボル分あり、1OFDMシンボル分の領域ごとに分けられている。各領域はサブパケットP1から時間順にL1〜L8としている。
【0080】
図5に示すように、送信部217−1の直交トレーニング配置部113が、行列CA2NTsの第1行の要素(A,B,C,D)をサブパケットP1の領域L1〜L4にトレーニング信号として順に割り当て、送信部217−1のパスバンド変換部115が(A,B,C,D)をトレーニング信号として割り当てられたサブパケットP1をアンテナ1から送信する。また、送信部217−2の直交トレーニング配置部113が、行列CA2NTsの第2行の要素(A’,B’,C’,D)をサブパケットP1の領域L1〜L4のトレーニング信号として順に割り当て、送信部217−2のパスバンド変換部115が(A’,B’,C’,D)をトレーニング信号として割り当てられたサブパケットP1をアンテナ2から送信する。
【0081】
また、送信部217−1の直交トレーニング配置部113が、行列CA2NTsの第3行の要素(E,F,G,H)をサブパケットP2の領域L5〜L8にトレーニング信号として順に割り当て、送信部217−1のパスバンド変換部115が(E,F,G,H)をトレーニング信号として割り当てられたサブパケットP2をアンテナ1から送信する。また、送信部217−2の直交トレーニング配置部113は、行列CA2NTsの第4行の要素(E’,F’,G’,H’)をサブパケットP2の領域L5〜L8にトレーニング信号として順に割り当て、送信部217−2のパスバンド変換部115が(E’,F’,G’,H’)をトレーニング信号として割り当てられたサブパケットP2をアンテナ2から送信する。
【0082】
上述のように、各直交トレーニング配置部113は、[2NTs×2NTs]のユニタリ行列A2NTsを用いて行列CA2NTsで表される行列の第1行から第NTs行までの要素それぞれをサブパケットP1のトレーニング信号として割り当て、第(NTs+1)行から第2NTs行までの要素それぞれをサブパケットP2のトレーニング信号として割り当てる。このとき、各サブパケットに割り当てられるトレーニング信号は直交性を有するので、宛先局23は、スロット1及びスロット2において受信するトレーニング信号に基づいて、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。
【0083】
以下、協調プロトコルとして、プロトコルIを適用した場合と、プロトコルIIIを適用した場合とにおける宛先局23の各チャネル推定部133が行うチャネル推定について説明する。
【0084】
<プロトコルIを適用した場合>
時間−周波数変換部132からチャネル推定部133に入力される受信信号Yd1、Yd2は、次式(13)で表される。
【0085】
【数13】
【0086】
ここで、受信信号Yd1、Yd2は[NRd×2NTs]の行列であり、Wd1及びWd2は熱雑音を表す[NRd×2NTs]の行列である。また、H11はスロット1における発信局21と宛先局23との間のチャネル周波数応答を表す。H21は、スロット1における発信局21と中継局22との間のチャネル周波数応答と、スロット2における中継局22と宛先局23との間のチャネル周波数応答との合成チャネル周波数応答を表す。H22は、スロット2における発信局21と宛先局23との間のチャネル周波数応答を表す。また、H11、H21、H22は[NRd×NTs]の行列である。SISO構成からMIMO構成への拡張は、このように行列の定義を行うことで得られる。
【0087】
宛先局23において、チャネル推定部133が次式(14)を用いてチャネル周波数応答H11、H21、H22の推定値を算出し、データ復調部134及びチャネル復号部135が復調、復号を行い、発信局21が送信した情報ビット列を復元する。
【0088】
【数14】
【0089】
上述のように、サブパケットP1とサブパケットP2とにトレーニング信号を割り当てることにより、MIMO構成においても、受信部236−1及び受信部236−2が有するチャネル推定部133は、式(14)の演算を用いて、サブパケットP1とサブパケットP2とが相互に干渉する影響を反映したチャネル周波数応答H11、H21、H22の推定値を算出することができる。これにより、チャネル周波数応答の推定の精度を向上させることができる。
【0090】
ここで、4×4のIEEE802.11nのHT−LTF(High Throughput Long Training Field)を利用した場合の送受信関係について説明する。
図6は、本実施形態において、4×4のIEEE802.11nのHT−LTFを利用した場合の一例を示す概略図である。ここでは、OFDMブロックごとの時変動がない場合を示している。同図に示すように、発信局21において、4×4のユニタリ行列CA2NTsにおける第1行の各要素(C,−C,C,C)をサブパケットP1のアンテナ1から送信されるトレーニング信号として割り当て、第2行の各要素(C,C,−C,C)をサブパケットP1のアンテナ2から送信されるトレーニング信号として割り当てる。また、第3行の各要素(C,C,C,−C)をサブパケットP2のアンテナ1から送信されるトレーニング信号として割り当て、第4行の各要素(−C,−C,C,C)をサブパケットP2のアンテナ2から送信されるトレーニング信号として割り当てる。
【0091】
このとき、宛先局23における受信信号Yは次式(15−1)及び(15−2)により表される。
【0092】
【数15】
【0093】
ここで、Ydij,mはスロットiのj番目のトレーニング信号(OFDMシンボル)をm番目の受信アンテナで受信した受信信号である。H11,mnはスロット1における発信局21のn番目の送信アンテナと宛先局23のm番目の受信アンテナとの間のチャネル周波数応答(CFR)である。H21,mnは中継局22を介した発信局21のn番目の送信アンテナと宛先局23のm番目の受信アンテナとの間のチャネル周波数応答である。H22,mnはスロット2における発信局21のn番目の送信アンテナと宛先局23のm番目の受信アンテナとの間におけるチャネル周波数応答である。Wdij,mはスロットiでのj番目のトレーニング信号(OFDMシンボル)のm番目の受信アンテナにおける付加白色ガウス雑音(AWGN)である。Cはトレーニング信号の周波数領域複素シンボルである。
チャネル推定部133は、次式(16)を用いて各チャネル周波数応答の推定値を算出する。
【0094】
【数16】
【0095】
IEEE802.11nで規定される無線LANに適用した場合においても、上述のように、ユニタリ行列A2NTsに基づいて、トレーニング信号を各サブパケットに割り当て、サブパケットP1とサブパケットP2とが相互に干渉する影響を反映したチャネル周波数応答の推定値を算出することができるので、チャネル周波数応答を推定する精度を向上させることができる。
【0096】
<プロトコルIIIを適用した場合>
続いて、協調プロトコルにプロトコルIIIを適用した場合について説明する。
プロトコルIIIを適用した場合、時間−周波数変換部132からチャネル推定部133に入力される受信信号Yは、次式(17)で表される。
【0097】
【数17】
【0098】
宛先局23において、受信部236−1及び受信部236−2が有するチャネル推定部133が次式(18)を用いて各チャネル周波数応答の推定値を算出し、データ復調部134及びチャネル復号部135が復調、復号を行い、発信局21が送信した情報ビット列を復元する。
【0099】
【数18】
【0100】
このように、サブパケットP1とサブパケットP2にトレーニング信号を割り当てることにより、MIMO構成においてプロトコルIIIを適用した場合においても、受信部236−1及び受信部236−2が有するチャネル推定部133は、式(18)の演算を用いて、サブパケットP1とサブパケットP2とが相互に干渉する影響を反映したチャネル周波数応答の推定値を算出することができる。これにより、チャネル周波数応答の推定の精度を向上させることができる。
【0101】
ここで、プロトコルIIIを適用した場合において、4×4のIEEE802.11nのHT−LTF(High Throughput Long Training Field)を利用したときの送受信関係について説明する。
図7は、本実施形態において、4×4のIEEE802.11nのHT−LTFを利用した場合の一例を示す概略図である。同図に示すように、発信局21において、4×4のユニタリ行列CA2NTsにおける第1行の各要素(C,−C,C,C)をサブパケットP1のアンテナ1から送信されるトレーニング信号として割り当て、第2行の各要素(C,C,−C,C)をサブパケットP1のアンテナ2から送信されるトレーニング信号として割り当てる。また、第3行の各要素(C,C,C,−C)をサブパケットP2のアンテナ1から送信されるトレーニング信号として割り当て、第4行の各要素(−C,−C,C,C)をサブパケットP2のアンテナ2から送信されるトレーニング信号として割り当てる。
このとき、宛先局23における受信信号Yは次式(19−1)及び(19−2)により表される。
【0102】
【数19】
【0103】
そして、受信部236が有するチャネル推定部133は、次式(20)を用いて各チャネル周波数応答の推定値を算出する。
【0104】
【数20】
【0105】
協調プロトコルとしてプロトコルIIIを用い、IEEE802.11nで規定される無線LANに適用した場合においても、上述のように、ユニタリ行列A2NTsに基づいて、トレーニング信号を各サブパケットに割り当て、サブパケットP1とサブパケットP2とが相互に干渉する影響を反映したチャネル周波数応答の推定値を算出することができるので、チャネル周波数応答を推定する精度を向上させることができる。
【0106】
図8は、本発明の要部の構成を説明する図である。本発明は、データ信号の送信元である発信局と、当該データ信号の宛先である宛先局と、発信局から送信された当該データ信号を受信して当該宛先局へ転送する中継局とが、一つの無線チャネルを時分割して得られるタイムスロットの2つを使用して当該データ信号の送受信を行う無線通信システムにおけるチャネル推定の精度を向上させるものである。
同図において、発信局がスロット1で送信するサブパケットP1、及びスロット2で送信するサブパケットP2それぞれに配置するトレーニング信号の構成が示されている。発信局が備えるアンテナ数をNTsとしたとき、[2NTs×2NTs]のユニタリ行列を予め定め、当該ユニタリ行列の[NTs×2NTs]の部分行列を各サブパケットにトレーニング信号として配置することにより、トレーニング信号の直交性を維持する。宛先局において、チャネル推定部は、トレーニング信号自体の直交性を利用して、発信局から送信されたパケットと、中継局から送信されたパケットとが相互干渉した状態の受信信号からチャネル周波数応答の推定値を算出することにより、推定値の精度を向上させることができる。
【0107】
本発明に係る第1及び第2実施形態の無線通信システムでは、発信局において、直交トレーニング配置部113が、自局に備えられているアンテナの本数NTsに応じて、予め定められる[2NTs×2NTs]のユニタリ行列A2NTsに基づいて生成されたトレーニング信号を、スロット1で送信するサブパケットP1及びスロット2で送信するサブパケットP2に配置する。
宛先局では、スロット2において、ベースバンド変換部131が、発信局から受信するサブパケットP2と、中継局から受信するサブパケットP1とを受信する。また、チャネル推定部133が、サブパケットP1及びサブパケットP2に含まれるトレーニング信号に基づいて、自局と発信局との間のチャネル周波数応答の推定値と、中継局を介した自局と発信局との間のチャネル周波数応答(合成チャネル周波数応答)の推定値とを算出する。また、データ復調部134が、チャネル推定部133が算出した推定値に基づいて、スロット2において受信した信号からサブパケットP1及びサブパケットP2を分離し、分離したサブパケットP1及びサブパケットP2に含まれるデータを復調する。
【0108】
ユニタリ行列A2NTsの各行の要素をトレーニング信号として各サブパケットに順に配置しているので、各トレーニング信号の直交性を維持することができるので、スロット2において、宛先局が各トレーニング信号を合成した信号を受信しても、ユニタリ行列A2NTs(トレーニング信号のレプリカ信号)の逆行列A2NTs−1を用いた演算により、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。このとき、宛先局が自局と発信局及び中継局との間のチャネル全てを通じてトレーニング信号を同時に受信するので、チャネル推定部133は、各チャネル間においる信号が相互に干渉する影響が反映された推定値を算出することができ、推定精度を改善させることができる。
その結果、宛先局において、サブパケットP1及びサブパケットP2の分離、及び各サブパケットに含まれるデータの復調の精度を向上させることができ、受信時の誤りによる再送を低減させて、無線通信システムのスループットを向上させることができる。
【0109】
ところで、図11において示したように、トレーニング信号を受信するタイミングが重複しないようにトレーニング信号を配置してトレーニング信号の直交性を維持する場合、トレーニング信号を配置しない各領域の送信電力を0(零)にすることになる。この場合、宛先局では、トレーニング信号が送信されていない無信号状態と、トレーニング信号が送信されているときとの電力格差の問題が生じる。
具体的には、宛先局が実際にデータを受信する際、宛先局は、自局と発信局との間の各チャネルを通じて自局に到達する信号を合成した信号を受信する。これに対して、トレーニング信号を受信する際、宛先局は、自局と発信局との間のいずれかのチャネルを通じて自局に到達するトレーニング信号を受信する。これにより、データを受信する際の受信電力と、トレーニング信号を受信する際の受信電力とに差(電力格差)が生じてしまい、チャネル推定に誤差が生じてしまうという問題があった。また、実際には、送信電力を0(零)にすることができず、トレーニング信号にノイズが含まれてしまうという問題もあった。
本発明に係る第1及び第2実施形態の無線通信システムでは、図3、図5、図6、及ぶ図7に示したように、宛先局がトレーニング信号を受信する際、宛先局と発信局との間の各チャネルを通じて宛先局に到達する各トレーニング信号を合成した信号を受信するようにしているので、上述の電力格差を生じさせることなく、チャネル周波数応答の推定精度を向上させることができる。
【0110】
なお、上記の第1及び第2実施形態では、中継局伝送プロトコルとしてAF法を適用した場合について説明したが、これに限ることなく、中継局伝送プロトコルにDF(Decode-and-Forward)法や、CF(Compress-and-Forward)法などを適用してもよい。DF法を適用する場合、中継局は、受信した信号から情報ビット列を宛先局と同様に復元し、復元した情報ビット列を発信局と同様に送信する。すなわち、中継局は送信部217及び受信部236を備えるようにしてもよい。このとき、中継局において、各サブパケットに配置するトレーニング信号は、上述したようにユニタリ行列A2NTsの要素に基づいた信号を用いて、各トレーニング信号の直交性を維持するようにする。
【0111】
また、第2実施形態の無線通信システム2において、例えば、協調プロトコルにプロトコルIを適用し、中継局伝送プロトコルに選択DF法を適用した場合、宛先局23のチャネル推定部133の処理は、以下のようになる。
選択DF法では、中継局22は、受信SNR(Signal-Noise Ratio;信号対雑音比)が予め定めたしきい値以下の場合や、受信したパケットを正しく復号できない場合、受信した信号を宛先局23に中継(フォワード)しない。ここでは、中継局22がフォワードをする場合と、フォワードをしない場合とに分けて、宛先局23のチャネル推定部133における処理について説明する。
【0112】
[中継局22がフォワードする場合]
上記の第2実施形態において説明したように、式(14)を用いて、各チャネル周波数応答の推定値を算出する。
【0113】
[中継局22がフォワードしない場合]
宛先局23における受信信号Yd1、Yd2は、次式(21)で表される。
【0114】
【数21】
【0115】
チャネル推定部133は、式(14)と同様に、受信信号Yd1、Yd2と逆行列C−1A2NTsHとの積を算出することにより、チャネル周波数応答H11、H22の推定値を算出することができる。このとき、チャネル推定部133は、次式(22)で表される演算を行う。
【0116】
【数22】
【0117】
このように、チャネル推定部133は、中継局伝送プロトコルに選択DF法を適用した場合においても、AF法を適用した場合と同様に、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。
【0118】
また、第2実施形態の無線通信システム2において、協調プロトコルにプロトコルIIIを適用し、中継局伝送プロトコルに選択DF法を適用した場合におけるチャネル推定部133における処理は以下のようになる。
【0119】
[中継局22がフォワードする場合]
上記の第2実施形態において説明したように、式(18)を用いて、各チャネル周波数応答の推定値を算出する。
【0120】
[中継局22がフォワードしない場合]
中継局22がフォワードする場合と同様に、式(18)を用いて、各チャネル周波数応答の推定値を算出する。
このように、チャネル推定部133は、中継局伝送プロトコルに選択DF法を適用した場合においても、AF法を適用した場合と同様に、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。
【0121】
なお、中継局22がフォワードしない場合には、協調プロトコルにプロトコルIを適用した場合において中継局22がフォワードしないときの式(21)同様に、チャネル周波数応答H21を0として扱うことができる。この場合、宛先局23における受信信号Yd2は、次式(23)で表される。
【0122】
【数23】
【0123】
ここで、式(23)における行列A2NTs(h)は、[2NTs×2NTs]のユニタリ行列A2NTsのうち、サブパケットP2にトレーニング信号として配置した部分行列であり、例えば、第(NTs+1)行目から第2NTs行目までユニタリ行列A2NTsの部分行列である。中継局22がフォワードしない場合、チャネル推定部133は、次式(24)に示すように、受信信号Yd2と、擬似逆行列C−1A2NTs(h)Hとの積を演算することにより、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。
【0124】
【数24】
【0125】
このとき、宛先局23は、中継局22からフォワードをするか否かを示す制御信号を受信することにより、チャネル推定部133は、式(18)に替えて、式(24)を用いた演算をすることにより、演算量を削減することができる。
【0126】
また、上記の第1及び第2実施形態において、チャネル符号化部111は、宛先局(13、23)に伝送する情報ビット列が漏洩することを防ぐために、入力される情報ビット列に対して、所定のスクランブルコードを用いてスクランブルを行うようにしてもよい。また、チャネル符号化部111は、マルチパス波による影響を軽減するために、巡回シフトディレイ(Cyclic Shift Delay;CSD)を追加するようにしてもよい。
また、上記の第1及び第2実施形態において、マルチキャリアシステムとしてOFDM変調を用いた場合について説明したが、これに限ることなく、直交周波数分割多元接続(Orthogonal Frequency Division Multiple Access;OFDMA)システムや、マルチキャリア符号分割多元接続(Multi Carrier-Code Division Multiple Access;MC−CDMA)を用いるようにしてもよい。
【0127】
また、上記の第1及び第2実施形態において、[2NTs×2NTs]のユニタリ行列の第1行から第NTs行までの部分行列をサブパケットP1に割り当て、第(NTs+1)行から第2NTs行までの部分行列をサブパケットP2に割り当てる構成について説明したが、これに限らずともよい。[2NTs×2NTs]のユニタリ行列の2NTs行うち任意のNTs行からなる部分行列をサブパケットP1に割り当て、サブパケットP1に割り当てた行以外のNTs行からなる部分行列をサブパケットP2に割り当てるようにしてもよい。
また、上記の第2実施形態において、送信アンテナ及び受信アンテナが2本ずつのMIMO構成について説明したが、これに限ることなく、送信アンテナ及び受信アンテナそれぞれを3本以上にしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1,2,9…無線通信システム
11,21,91…発信局
12,22,92…中継局
13,23,93…宛先局
111…チャネル符号化部
112…データ変調部
113…直交トレーニング配置部
114…周波数−時間変換部
115…パスバンド変換部
131…ベースバンド変換部
132…時間−周波数変換部
133…チャネル推定部
134…データ復調部
135…チャネル復号部
216…直並列変換部
217,217−1,217−2…送信部
236,236−1,236−2…受信部
237…並直列変換部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発信局と宛先局以外の無線局に協調中継伝送を行わせる事で通信特性を向上させる協調通信方式が注目を集めている。このため、協調中継伝送については、多くの研究がなされている。協調中継伝送における通信方式のシステムモデルは、主に中継局伝送プロトコル、協調システム構成、協調プロトコルの三要素により決定づけられる。
【0003】
中継局伝送プロトコルとは、中継局が発信局から受信した信号に対してどのような信号処理を行い、宛先局へ伝送するかを示すものである。中継局伝送プロトコルの最も基本的なものはDF(Decode-and-Forward)法と、AF(Amplify-and-Forward)法との二つである。DF法は、中継局が受信した信号を復調、復号をする再生を行ってから、再生した信号に対して符号化、変調をして宛先局に伝送する手法である。AF法は、中継局が受信した信号を増幅し、増幅した信号を中継局に伝送する手法である。
【0004】
また、協調システム構成は、協調通信方式を用いた無線通信システムを構成する発信局、中継局、及び宛先局としての通信装置の個数と、当該無線通信システム内において行われる協調中継ホップ数を示すものである。例えば、協調通信方式を用いた無線通信システムの最も単純な構成は、発信局(Source;S)と、発信局が送信した信号を中継する中継局(Relay;R)と、宛先局(Destination;D)とを具備する1−Relay2−HOP(1R2H)構成である。
1R2H構成では、一般に、発信局から中継局への送受信と、中継局から宛先局への送受信とに対して、無線資源(時間及び周波数)の1スロットを割り当てるため、無線通信システム全体における、送受信における1周期を2スロットとすることが多い。
【0005】
また、協調プロトコルとは、無線通信システムの1周期における各通信装置(発信局、中継局、及び宛先局)間における送受信関係の組合せを示すものである。
図9は、1R2H構成を有する無線通信システム9における協調プロトコルの一例を示す図である。同図に示すように、無線通信システム9は、発信局91と、中継局92と、宛先局93とを具備する。発信局91と中継局92と宛先局93とは、OFDM変調を用いた無線通信を行い、無線通信システム9の1周期は、スロット1とスロット2との2つのスロットに分けられている。
【0006】
スロット1において、発信局91が中継局92及び宛先局93へのブロードキャスト送信を行い、スロット2において、発信局91及び中継局92が宛先局93へ同時送信をする。このとき、中継局92は、スロット1で受信したサブパケットP1の増幅などを行うために、スロット2でサブパケットP1を送信するまでに処理時間Drを要する。また、発信局91は、スロット2において、サブパケットP2を送信するタイミングを、中継局92がサブパケットP1を送信するタイミングと合わせるために、待機時間Ds経過した後に、送信を行う。待機時間Dsは、処理時間Drに応じて予め定められる。
宛先局93は、スロット1において、発信局91が送信する一種類の信号(サブパケットP1)を受信し、スロット2において、発信局91が送信する信号(サブパケットP2)と、中継局92が送信する信号(サブパケットP2)との二種類の信号が合成された信号を受信する。
図9に示す協調プロトコルは、プロトコルI、又はMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)型と呼ばれている(非特許文献1)。
【0007】
図10は、1R2H構成を有する無線通信システム9における協調プロトコルの他の例を示す図である。同図に示すように、スロット1において、発信局91が中継局92にサブパケットP1を送信し、スロット2において、発信局91及び中継局92が宛先局93へ同時送信する。宛先局93は、スロット2において、発信局91が送信するサブパケットP1と、中継局92が送信するサブパケットP2との二種類のサブパケットが合成された信号を受信する。スロット1において、宛先局93が発信局91から送信されたサブパケットP1に対して受信の処理を行わない点が、図9において示したプロトコルIと異なる。
図10に示す協調プロトコルは、プロトコルIII、又はMISO(Multiple-Input Single-Output)型と呼ばれている。
【0008】
以下、無線通信システム9において、協調プロトコルとしてプロトコルI、又はプロトコルIIIを適用した場合の発信局91、中継局92、及び宛先局93の送受信関係を周波数領域で説明する。
【0009】
(プロトコルI)
協調プロトコルとしてプロトコルIを適用した場合、スロット1において、発信局91が中継局92及び宛先局93に対してサブパケットP1をブロードキャスト送信する。このとき、宛先局93が受信する受信信号Yd1は、周波数領域において、次式(1)として表される。
【0010】
【数1】
【0011】
ここで、受信信号Yd1は[NRd×1]のベクトルであり、Ps1はスロット1における発信局91の送信電力である。行列Hsdは発信局91と宛先局93との間におけるチャネル周波数応答(Channel Frequency Response;CFR)を要素とする[NRd×NTs]のチャネル周波数応答行列である。X1は、サブパケットP1に対応する送信信号である。Wd1は宛先局93におけるスロット1での付加白色ガウス雑音(Additive White Gaussian Noise;AWGN)の周波数領域表現を要素とする[NRd×1]のベクトルである。ここで、NTsは発信局91が有する送信アンテナの数であり、NTrは中継局92が有する送信アンテナの数であり、NRrは中継局92が有する受信アンテナの数であり、NRdは宛先局93が有する受信アンテナの数である。
また、スロット1における中継局92が受信する受信信号Yr1は、次式(2)として表される。
【0012】
【数2】
【0013】
ここで、受信信号Yr1は[NRr×1]のベクトルであり、Hsrは発信局91と中継局92との間におけるチャネル周波数応答を要素とする[NRr×NTs]のチャネル周波数応答行列である。Wr1は中継局92におけるスロット1での付加白色ガウス雑音の周波数領域表現を要素とする[NRr×1]のベクトルである。ここで、NRrは中継局92が有するアンテナの数である。
【0014】
中継局92は、スロット1において受信した受信信号Yr1を増幅係数αrで増幅し、増幅した受信信号をスロット2において宛先局93に送信する。発信局91は、送信信号X2(パケットP2)を宛先局93に送信する。このとき、発信局91と中継局92とから送信信号が同時に送信されることと、受信時の付加雑音の存在を考慮すると、スロット2における宛先局93が受信する受信信号Yd2は、次式(3)で表される。増幅係数αrは、[NRr×NTr]の行列であり、中継局92が受信信号Yr1を増幅する特性に応じて定められる。
【0015】
【数3】
【0016】
ここで、受信信号Yd2は[NRd×1]のベクトルであり、Pr2はスロット2における中継局92の送信電力であり、Ps2はスロットにおける発信局91の送信電力である。行列Hrdは中継局92と宛先局93におけるチャネル周波数応答を要素とする[NRd×NTr]のチャネル周波数応答行列である。W’d2は宛先局93におけるスロット2での付加白色ガウス雑音の周波数領域表現を要素とする[NRd×1]のベクトルである。
式(1)と式(3)とをまとめると、式(4)と表すことができる。
【0017】
【数4】
【0018】
ここで、中継局伝送プロトコルにAF法を用いた場合、式(4)における行列H11、H21、及びH22は、それぞれが次式(5−1)〜(5−3)として表される。
【0019】
【数5】
【0020】
また、中継局伝送プロトコルにDF法を用いた場合、式(4)における行列H11、H21、及びH22は、それぞれが次式(6−1)〜(6−3)として表される。
【0021】
【数6】
【0022】
このとき、宛先局93において、チャネル周波数応答を示す行列H11、H21、H22の推定値を算出できれば、算出した行列H11、H21、H22の推定値を用いて、スロット2で受信した受信信号Yd2に含まれる送信信号X1及びX2を分離し、送信信号X1及びX2の復調、復号を行うことができる。
【0023】
(プロトコルIII)
協調プロトコルにプロトコルIを適用した場合、プロトコルIと異なり、宛先局93は、発信局91が送信する信号X1(サブパケットP1)を受信しない。ゆえに、プロトコルIIIでは、上記の式(1)で表される受信信号Yd1が存在せず、宛先局93がスロット2において受信する受信信号Yd2は、次式(7)により表される。
【0024】
【数7】
【0025】
このとき、宛先局93において、行列H21、H22の推定値を算出できれば、スロット2で受信した受信信号Yd2に含まれる送信信号X1及びX2を分離して、送信信号X1及びX2の復調、復号を行うことができる。
【0026】
続いて、無線通信システム9において、協調プロトコルとしてプロトコルI、又はプロトコルIIIを適用した場合のチャネル推定について説明する。
【0027】
(プロトコルI)
宛先局93は、発信局91が送信する送信信号X1が既知の信号(トレーニング信号)である場合、式(1)に基づいて、チャネル周波数応答行列H11を推定することができる。しかし、スロット2では、発信局91が送信する送信信号X2が既知の信号(トレーニング信号)であったとしても、発信局91と中継局92とが送信を行うので、それぞれから送信される送信信号X1及びX2が相互に干渉してしまう。そのため、宛先局93は、受信する送信信号X1及びX2に基づいて、チャネル周波数応答行列H21及びH22を適切に推定することができない。
【0028】
(プロトコルIII)
プロトコルIIIでは、宛先局93は、スロット1において受信する信号を処理せず、スロット2において受信する受信信号Yd2は式(7)で表される。したがって、スロット2では、プロトコルIを用いた場合と同様に、発信局91が送信する送信信号X2と、中継局92が送信する送信信号X1とがともに既知の信号(トレーニング信号)であったとしても、送信信号X1及びX2が相互に干渉してしまう。そのため、宛先局93は、受信する送信信号X1及びX2に基づいて、チャネル周波数応答行列H21及びH22を適切に推定することができない。
【0029】
そこで、非特許文献2では、単数アンテナ(Single-Input Single-Output;SISO)構成を用いた協調通信方式を適用したシステムにおいて、相互干渉を回避する手法の検討がなされている。この手法は、発信局91と宛先局93との間におけるチャネル周波数応答を推定する期間において、中継局92と宛先局93との間におけるチャネル周波数応答を推定するための信号(トレーニング信号)を送信しないようにする、というものである。すなわち、非特許文献2の手法では、トレーニング信号の直交性を保つために、各トレーニング信号を異なる期間で送信する。
【0030】
図11は、複数アンテナ(MIMO)構成におけるトレーニング信号の配置の一例を示す概略図である。同図に示す例は、非特許文献2の手法を複数アンテナ構成に適用した場合の例であり、発信局91が2つの送信アンテナを有する場合を示している(NTs=2)。また、パケットを構成するサブパケットP1及びサブパケットP2において、トレーニング信号を配置する4OFDMシンボル分の領域を4つに分け、各領域を時間順にL1〜L8としている。
【0031】
サブパケットP1の領域L1においてアンテナ1にトレーニング信号Cを割り当て、領域L2においてアンテナ2にトレーニング信号Cを割り当てる。また、サブパケットP2の領域L7においてアンテナ1にトレーニング信号Cを割り当て、領域L8においてアンテナ2にトレーニング信号Cを割り当てる。このようなトレーニング信号の配置は、スキャッタード型と呼ばれる。発信局91及び中継局92がスロット2においてトレーニング信号Cを異なるタイミングで送信することにより、宛先局93が受信する各トレーニング信号Cの直交性を確保している。このとき、トレーニング信号Cは、すべてのサブキャリアに対して割り当てられる。
【0032】
このように、トレーニング信号の構成は、各要素がCとなる対角行列として表すことができる。発信局91のアンテナの数が2つの場合(NTs=2)、トレーニング信号の構成は、図11に示すように、4行4列の対角行列として表すことができる。図11に示す例において、対角行列の第1行目及び第3行目の要素は、送信局(発信局91及び中継局92)が有するアンテナ1から送信されるトレーニング信号であり、第2行目及び第4行目の要素は、送信局が有するアンテナ2から送信されるトレーニング信号である。また、第1列目から第4列目の要素は、それぞれが領域L1〜L8で送信されるトレーニング信号として割り当てられている。すなわち、図11において、「C」が記されていない領域L1〜L8の領域には、トレーニング信号を割り当てない。
【0033】
このようなトレーニング信号Cの割り当てを行うことにより、スロット2において、領域L1、L2では中継局92が有するアンテナ1、2からトレーニング信号Cが送信され、領域L7、L8では発信局91が有するアンテナ1、2からトレーニング信号Cが重複することなく送信される。これにより、トレーニング信号Cの相互干渉が生じることを防ぎ、トレーニング信号Cの直交性を維持することができる。このとき、受信局(中継局92及び宛先局93)は、受信したトレーニング信号Cと、受信局に予め記憶されているトレーニング信号Cとに基づいて、チャネル推定を行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】R. U. Nabar, H. Bolcskei, and F.W. Kneubuhler, “Fading relay channels: Performance limits and space-time signal design,” IEEE J. Sel. Areas Commun., vol. 22, no. 6, pp. 1099-1109, Jun. 2004.
【非特許文献2】Z. Zhao, et al, “Application of Cooperative Diversity in 802.11a Ad-hoc Networks,” ICCCN’07, 1016-1021, Aug. 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
しかしながら、上述のように配置されたトレーニング信号Cに基づいて推定されたチャネル周波数応答には、スロット2における発信局91から送信されるサブパケットP2のデータと、中継局92から送信されるサブパケットP1のデータとが相互に干渉する影響が反映されていない。そのため、トレーニング信号に基づいて得られるチャネル周波数応答の推定値と、各サブパケットに含まれるデータに対するチャネル周波数応答とに差が生じてしまう。推定値にこのような差が生じてしまうと、受信信号から各サブパケットに含まれるデータを分離する際の精度が低くなり、データを正しく復調、復号できなくなることがある。このように、上述のように配置されたトレーニング信号Cを用いたチャネル周波数応答の推定には、改善の余地がある。
【0036】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、協調通信方式を用いた伝送において、チャネル周波数応答の推定精度を向上させる無線通信システム、及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記問題を解決するために、本発明は、一つの無線チャネルを時分割して得られる第1スロット及び第2スロットにおいてデータ信号を含むパケットを送信する発信局と、前記パケットの宛先である宛先局と、前記発信局が第1スロットにおいて送信したパケットを受信し、受信したパケットを第2スロットにおいて前記宛先局へ送信する転送を行う中継局とを具備する無線通信システムであって、前記発信局は、自局に備えられているアンテナの本数に応じて行数及び列数が定められるユニタリ行列に基づいて生成されたトレーニング信号を、前記第1スロットで送信されるパケット及び前記第2スロットで送信されるパケットに配置するトレーニング配置部を備え、前記宛先局は、第2スロットにおいて、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを受信し、受信したパケットそれぞれに含まれるトレーニング信号に基づいて、前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値と、前記中継局を介した前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出するチャネル推定部と、前記チャネル推定部が算出した推定値に基づいて、第2スロットにおいて受信した信号から、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを分離し、分離したパケットに含まれるデータ信号を復調するデータ復調部とを備えることを特徴とする無線通信システムである。
【0038】
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記ユニタリ行列は、前記発信局に備えられているアンテナの本数がN本の場合、2N次の正方行列であり、前記トレーニング配置部は、前記ユニタリ行列を2つのN行2N列の部分行列に分割し、一方の部分行列の各行の要素をトレーニング信号として各アンテナに対応させて第1スロットに配置し、他方の部分行列の各行の要素をトレーニング信号として各アンテナに対応させて第2スロットに配置することを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記トレーニング配置部は、第1スロット及び第2スロットにおいて、前記トレーニング信号を配置する領域を2N個に分割し、前記分割された各領域に、前記部分行列の各列の要素を順に配置することを特徴とする。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記チャネル推定部は、第2スロットにおいて、受信した2つの前記パケットに含まれるトレーニング信号と、予め記憶している前記トレーニング信号のレプリカ信号とを用いて前記推定値を算出することを特徴とする。
【0039】
また、本発明は、一つの無線チャネルを時分割して得られる第1スロット及び第2スロットにおいてデータ信号を含むパケットを送信する発信局と、前記パケットの宛先である宛先局と、前記発信局が第1スロットにおいて送信したパケットを受信し、受信したパケットを第2スロットにおいて前記宛先局へ送信する転送を行う中継局とを具備する無線通信システムにおける無線通信方法であって、前記発信局が、自局に備えられているアンテナの本数Nに応じて行数及び列数が定められるユニタリ行列に基づいて生成されたトレーニング信号を、前記第1スロットで送信されるパケット及び前記第2スロットで送信されるパケットに配置するトレーニング配置ステップと、前記宛先局が、第2スロットにおいて、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを受信し、受信したパケットそれぞれに含まれるトレーニング信号に基づいて、前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値と、前記中継局を介した前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出するチャネル推定ステップと、前記宛先局が、前記チャネル推定ステップにおいて算出した推定値に基づいて、第2スロットにおいて受信した信号から、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを分離し、分離したパケットに含まれるデータ信号を復調するデータ復調ステップとを有することを特徴とする無線通信方法である。
【発明の効果】
【0040】
この発明によれば、第2スロットにおいて、発信局から受信するパケットに含まれるトレーニング信号と、中継局から受信するパケットに含まれるトレーニング信号とは、ユニタリ行列に基づいて生成されているため直交性が保たれているので、チャネル推定部は、第2スロットにおいて発信局及び中継局から受信したトレーニング信号に対して、トレーニング信号を生成する際に用いたユニタリ行列の逆行列を用いた演算を行うことにより、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。このように、トレーニング信号自体の直交性を利用して、発信局から送信されたパケットと、中継局から送信されたパケットとが相互干渉した状態の受信信号からチャネル周波数応答の推定値を算出することにより、推定値の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態における無線通信システム1の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態における発信局11の情報ビット列を送信する処理と、宛先局13の情報ビット列を復元する処理とのフローチャートである。
【図3】同実施形態におけるトレーニング信号の割当ての一例を示す概略図である。
【図4】第2実施形態における無線通信システム2の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】同実施形態におけるトレーニング信号の割当ての一例を示す概略図である。
【図6】同実施形態において、4×4のIEEE802.11nのHT−LTFを利用した場合の一例を示す概略図である。
【図7】同実施形態において、4×4のIEEE802.11nのHT−LTFを利用した場合の一例を示す概略図である。
【図8】本発明の要部の構成を説明する図である。
【図9】1R2H構成を有する無線通信システム9における協調プロトコルの一例を示す図である。
【図10】1R2H構成を有する無線通信システム9における協調プロトコルの他の例を示す図である。
【図11】複数アンテナ(MIMO)構成におけるトレーニング信号の配置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における無線通信システム、及び無線通信方法を説明する。
【0043】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における無線通信システム1の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように、無線通信システム1は、通信装置としての発信局11と中継局12と宛先局13とを具備し、協調通信方式を用いた1R2H(1-Relay2-Hop)の構成を有する。無線通信システム1では、発信局11から中継局12への送受信と、発信局11及び中継局12から宛先局13への送受信とそれぞれに対して、無線資源(時間及び周波数)の1スロットが割り当てられ、2スロット(スロット1及びスロット2)を1周期として無線通信が行われる。
【0044】
また、各局がOFDM変調を用いた無線通信を行う。発信局11は宛先局13に伝送する情報ビット列を送信し、中継局12は発信局11から受信した情報ビット列を宛先局13に送信する中継を行い、宛先局13は発信局11及び中継局12から情報ビット列を受信する。以下、中継局伝送プロトコルとしてAF法を適用し、発信局11及び中継局12が有する送信アンテナは1つであり、中継局12及び宛先局13が有する受信アンテナが1つである場合(NTs=NTr=1、NRr=NRd=1)、すなわち、単数アンテナ(SA)システムの場合について説明する。
【0045】
発信局11は、チャネル符号化部111と、データ変調部112と、直交トレーニング配置部113と、周波数−時間変換部114と、パスバンド変換部115を備えている。
チャネル符号化部111には、宛先局13に送信する情報ビット列(情報ビットストリーム)が入力される。チャネル符号化部111は、入力された情報ビット列に対して誤り訂正符号化を行い符号化ビットに変換し、得られた符号化ビットを出力する。
【0046】
データ変調部112は、予め定められた変換の規則を用いて、チャネル符号化部111が出力する符号化ビットをコンスタレーションマッピングして複素QAM(Quadrature Amplitude Modulation)シンボルに変換する。このとき、データ変調部112は、変換した複素QAMを各サブキャリアに対応付ける。このとき、各サブキャリアに対応付けられた複素QAMシンボルを全体として周波数領域複素シンボルという。また、データ変調部112は、スロットの数に応じて、変換により得られた周波数領域複素シンボルを分割する。ここでは、周波数領域複素シンボルをスロット1及びスロット2に対応させて2つのストリームに分割する。
【0047】
また、データ変調部112は、ストリームに分けられた周波数領域複素シンボルそれぞれに対してK個のシンボルを一単位としてブロック化し、ブロックごとに逆離散フーリエ変換(Inverse Discrete Fourier Transform;IDFT)を施す。ここで、スロット1に対応するブロックを構成する周波数領域複素シンボルの値を要素とする[NTs×1]のベクトルを周波数領域複素シンボルベクトルX1とし、スロット2に対応するブロックを構成する周波数領域複素シンボルの値を要素とする[NTs×1]のベクトルを周波数領域複素シンボルベクトルX2とする。更に、データ変調部112は、IDFTを施した周波数領域複素シンボルベクトルX1、X2に対して、ガードインターバル(Guard Interval;GI)を付加して出力する。このとき、データ変調部112は、スロット1において送信するサブパケットP1に周波数領域複素シンボルベクトルX1を割り当て、スロット2において送信するパケットに周波数領域複素シンボルベクトルX2を割り当てる。
【0048】
直交トレーニング配置部113には、データ変調部112からスロット1及びスロット2に対応するパケットが入力される。直交トレーニング配置部113は、各パケットにトレーニング信号を割当て出力する。このトレーニング信号は、ユニタリ行列に基づいて予め定められた既知の信号である。トレーニング信号は、情報ビット列と同様に、各サブキャリアに割り当てられ、OFDM変調されて送信される。各サブキャリア上に配置されたトレーニング信号を周波数領域トレーニング信号という。この周波数領域トレーニング信号の周波数領域複素シンボル値をCとする。
【0049】
また、直交トレーニング配置部113は、情報ビット列に対応する周波数領域複素シンボルX1、X2と同様に、周波数領域複素シンボルCに対してIDFTを施した後に、ガードインターバルを付加する。また、直交トレーニング配置部113は、複数のトレーニング信号をスロットごとに割り当て、スロット1で送信するサブパケットP1と、スロット2で送信するサブパケットP2とを生成する。サブパケットP1及びP2には、例えば、トレーニング信号と、データ(周波数領域複素シンボルベクトルX1、X2)とが時間軸上で分けて配置される。すなわち、スロット1に割り当てられたデータと、スロット1に割り当てられたトレーニング信号とを連結したものをサブパケットP1とする。また、スロット2に割り当てられたデータと、スロット2に割り当てられたトレーニング信号とを連結したものをサブパケットP2とする。
【0050】
周波数−時間変換部114は、直交トレーニング配置部113が生成するサブパケットP1及びサブパケットP2それぞれに対して、IDFTを用いて周波数領域の信号から時間領域の信号へ変換し、変換したサブパケットP1と、変換したサブパケットP2とを含むパケットを出力する。
パスバンド変換部115は、周波数−時間変換部114が出力するパケットをベースバンドからパスバンド(搬送波の周波数帯域)に変換する。また、パスバンド変換部115は、接続されているアンテナを介して、変換したパケットのうち、スロット1においてサブパケットP1を送信し、スロット2においてサブパケットP2を送信する。このとき、パスバンド変換部115は、サブパケットP1を送信してから、待機時間Ds経過した後に、サブパケットP2を送信する。ここで、待機時間Dsは、中継局12における中継の処理に要する処理時間Drに応じて定められる。パスバンド変換部115が、時間Ds経過した後にサブパケットP2を送信することにより、宛先局13において、中継局12からのサブパケットP1と、サブパケットP2とが受信されるタイミングをそろえる。なお、伝搬経路等による時間のずれは、ガードインターバルにより補償される。
【0051】
宛先局13は、ベースバンド変換部131と、時間−周波数変換部132と、チャネル推定部133と、データ復調部134と、チャネル復号部135とを備えている。
ベースバンド変換部131は、接続されているアンテナを介して、発信局11及び中継局12から送信された信号を受信し、受信した信号をパスバンドからベースバンドに変換し、変換した信号を時間−周波数変換部132に出力する。
時間−周波数変換部132は、ベースバンド変換部131から入力される信号に対して、ガードインターバルの除去と、DFT(Discrete Fourier Transform;離散フーリエ変換)を用いた時間領域の信号から周波数領域の信号への変換とを行い、チャネル推定部133に出力する。
【0052】
チャネル推定部133は、直交トレーニング配置部113が配置するトレーニング信号の基になるユニタリ行列(レプリカ信号)を予め記憶しており、当該レプリカ信号と、時間−周波数変換部132から入力される信号とに基づいて、自局と発信局11との間のチャネル周波数応答と、中継局12を介した自局と発信局11との間のチャネル周波数応答とを推定する。
データ復調部134は、チャネル推定部133が推定したチャネル周波数応答に基づいて、時間−周波数変換部132が変換した信号に含まれるパケットの分離と、チャネル等化を行う。また、データ復調部134は、分離したパケットそれぞれに対して、周波数領域複素シンボルを検出し、各符号化ビットに対応する検出値(軟判定値)をチャネル復号部135に出力する。
チャネル復号部135は、データ復調部134から入力される検出値に対して、チャネル復号化を行い、復号した情報ビット列を出力する。
【0053】
図2は、本実施形態における発信局11の情報ビット列を送信する処理と、宛先局13の情報ビット列を復元する処理とのフローチャートである。
【0054】
図2(a)は、発信局11における送信の処理を示すフローチャートである。
発信局11において、チャネル符号化部111に情報ビット列が入力されると、チャネル符号化部111が入力された情報ビット列に対して、予め定められた符号化率で誤り訂正符号化を行う(ステップS101)。
データ変調部112は、チャネル符号化部111が符号化した情報ビット列を変調し、スロット1において送信するサブパケットP1に割り当てる周波数領域複素シンボルベクトルX1と、スロット2において送信するサブパケットP2に割り当てる周波数領域複素シンボルベクトルX2とを生成する(ステップS102)。
【0055】
直交トレーニング配置部113は、データ変調部112が生成した周波数領域複素シンボルベクトルX1及びX2と、予め定められたトレーニング信号と連結して、サブパケットP1及びサブパケットP2を出力する(ステップS103)。
周波数−時間変換部114は、直交トレーニング配置部113が出力するサブパケットP1及びサブパケットP2を時間領域の信号に変換する(ステップS104)。
パスバンド変換部115は、周波数−時間変換部114が変換した信号をパスバンドに変換し、アンテナを介して送信する(ステップS105)。
【0056】
図2(b)は、宛先局13における受信の処理を示すフローチャートである。
ベースバンド変換部131は、アンテナを介して、発信局11及び中継局12から送信された信号を受信し、受信した信号をベースバンドに変換する(ステップS201)。
時間−周波数変換部132は、ベースバンド変換部131が変換した信号を周波数領域の信号に変換する(ステップS202)。
チャネル推定部133は、時間−周波数変換部132が変換した信号から、発信局11と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出する。また、チャネル推定部133は、発信局11と中継局12との間のチャネル周波数応答と、中継局12と自局との間のチャネル周波数応答とを合成したチャネル周波数応答の推定値を算出する(ステップS203)。
【0057】
データ復調部134は、チャネル推定部133が推定したチャネル周波数応答の推定値に基づいて、ベースバンド変換部131が変換した信号からサブパケットP1とサブパケットP2とを分離し、分離したサブパケットP1及びサブパケットP2に含まれるデータを復調して、それぞれの軟判定値を出力する(ステップS204)。
チャネル復号部135は、データ復調部134が出力した軟判定値を用いて、誤り訂正復号を行い、情報ビット列を復元して出力する(ステップS205)。
【0058】
以下、本実施形態の無線通信システム1において、協調プロトコルとして、プロトコルIを適用した場合と、プロトコルIIIを適用した場合とにおけるトレーニング信号の割当てについて説明する。
【0059】
<プロトコルIを適用した場合>
図3は、本実施形態におけるトレーニング信号の割当ての一例を示す概略図である。
直交トレーニング配置部113は、サブパケットP1におけるトレーニング信号を配置する領域に含まれる領域L1及び領域L2と、サブパケットP2におけるトレーニング信号を配置する領域に含まれる領域L3及び領域L4とに対して、次式(8)で表される行列の各要素に応じた信号を割り当てる。
【0060】
【数8】
【0061】
図3に示すように、直交トレーニング配置部113は、[2×2](=[2NTs×2NTs],NTs=1)のユニタリ行列A2を用いてCA2で表される行列の各要素に応じた信号をトレーニング信号としてサブパケットP1及びサブパケットP2に割り当てる。ここで、Cは周波数領域複素シンボルである。
具体的には、行列CA2の第1行の要素がスロット1で送信されるトレーニング信号に対応し、第2行の要素がスロット2で送信されるトレーリング信号に対応している。また、行列CA2の第1列の要素がスロット1の領域L1及びスロット2の領域L3で送信されるトレーニング信号に対応し、第2列の要素がスロット1の領域L2及びスロット2の領域L4で送信されるトレーニング信号に対応している。
【0062】
上述のように、直交トレーニング配置部113がトレーニング信号を各サブパケットに配置することにより、宛先局13がスロット2において中継局12から受信するサブパケットP1のトレーニング信号と、宛先局13が発信局11から受信するサブパケットP2のトレーニング信号との直交性を維持することができる。
このとき、宛先局13において、時間−周波数変換部132がチャネル推定部133に出力する受信信号Yは、次式(9)として表される。
【0063】
【数9】
【0064】
ここで、Yd11はスロット1における1番目のトレーニング信号(領域L1に配置された信号A)に対応する受信信号であり、Yd12はスロット1における2番目のトレーニング信号(領域L2に配置された信号B)に対応する受信信号であり、Yd21はスロット2における1番目のトレーニング信号(領域L3に配置された信号A’及び領域L1に配置された信号A)に対応する受信信号であり、Yd22はスロット2における2番目のトレーニング信号(領域L4に配置された信号B’及び領域L2に配置された信号B)に対応する受信信号である。
【0065】
また、H11はスロット1における発信局11と宛先局13との間のチャネル周波数応答である。H21は、スロット1における発信局11と中継局12との間のチャネル周波数応答と、スロット2における中継局12と宛先局13との間のチャネル周波数応答とを合成したチャネル周波数応答である。H22は、スロット2における発信局11と宛先局13との間のチャネル周波数応答である。
また、Wd11、Wd12はスロット1における熱雑音であり、Wd21、Wd22はスロット2における熱雑音である。Cは周波数領域複素シンボルの値である。
【0066】
チャネル推定部133は、式(9)に対して、右からC−1A2H(行列A2Hは、行列A2のエルミート共役である。)を乗算する次式(10)を演算することにより、チャネル周波数応答H11、H21、H22の推定値を算出する。
【0067】
【数10】
【0068】
宛先局13において、チャネル推定部133が式(10)を用いて、チャネル周波数応答H11、H21、H22の推定を行うことにより、スロット2における発信局11と宛先局13との間のチャネル周波数応答の推定値と、スロット2における発信局11から中継局12を経由して宛先局13までの合成チャネル周波数応答の推定値とを算出することができる。なお、データ復調部134とチャネル復号部135とは、チャネル推定部133が推定した各チャネル周波数応答の推定値を用いて、信号に含まれるサブパケットP1及びサブパケットP2の分離、チャネル等化を行い、サブパケットP1及びサブパケットP2それぞれに含まれるデータの復調、復号を行い宛先局13が送信した情報ビット列(情報ビットストリーム)を復元する。
【0069】
<プロトコルIIIを適用した場合>
プロトコルIを適用した場合と同様に、直交トレーニング配置部113がトレーニング信号を各サブパケットに配置する。宛先局13において、時間−周波数変換部132がチャネル推定部133に出力する受信信号Yは、次式(11)として表される。
【0070】
【数11】
【0071】
宛先局13は、チャネル推定部133が次式(12)を用いてチャネル周波数応答H21、H22の推定値を算出し、データ復調部134及びチャネル復号部135が復調、復号を行い、発信局11が送信した情報ビット列を復元する。
【0072】
【数12】
【0073】
このように、プロトコルIIIを適用した場合においても、サブパケットP1とサブパケットP2とが相互に干渉する影響を反映したチャネル周波数応答の推定値を算出することができるので、チャネル周波数応答を推定する精度を向上させることができる。
【0074】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態における無線通信システム2の構成を示す概略ブロック図である。同図に示すように無線通信システム2は、通信装置としての発信局21と中継局22と宛先局23とを具備し、協調通信方式を用いた1R2Hの構成を有する。無線通信システム2では、第1実施形態の無線通信システム1(図1)と同様に、発信局21から中継局22への送受信と、発信局21及び中継局22から宛先局23への送受信とそれぞれに対して、無線資源の1スロットが割り当てられ、2スロットを1周期として無線通信が行われる。また、各局がOFDM変調を用いた無線通信を行う。
【0075】
また、無線通信システム2において、第1実施形態の無線通信システム1と同様に、発信局21は宛先局23に伝送する情報ビット列を送信し、中継局22は発信局21から受信した情報ビット列を宛先局23に送信する中継を行い、宛先局23は発信局21及び中継局22から情報ビット列を受信する。以下、中継局伝送プロトコルとしてAF法を適用し、発信局21及び中継局22が有する送信アンテナは2つであり、中継局22及び宛先局23が有する受信アンテナが2つである場合(NTs=NTr=2、NRr=NRd=2)、すなわち、複数アンテナ(Multi-Antenna;MA)システムの場合について説明する。以下、無線通信システム2において、無線通信システム1と同じ部分には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
無線通信システム2は、各局の間の無線通信にMIMO方式を適用している点が、第1実施形態の無線通信システム1と異なる。
発信局21は、直並列変換部216と、アンテナの数(NTs=2)に応じて2つの送信部217(送信部217−1、送信部217−2)とを備えている。直並列変換部216には、宛先局23に送信する情報ビット列が入力される。また、直並列変換部216は、入力された情報ビット列に対して、シリアル−パラレル変換を行い2つのビット列を生成し、一方のビット列を送信部217−1に出力し、他方のビット列を送信部217−2に出力する。
【0077】
送信部217−1は、チャネル符号化部111と、データ変調部112と、直交トレーニング配置部113と、周波数−時間変換部114と、パスバンド変換部115とを有している。チャネル符号化部111には、直並列変換部216からビット列が入力される。送信部217−2は、送信部217−2と同じ構成を有している。送信部217−1及び送信部217−2は、それぞれが入力されるビット列を、それぞれに接続されているアンテナから送信する。
【0078】
宛先局23は、アンテナの数(NRs=2)に応じて2つの受信部236(受信部236−1、受信部236−1)と、並直列変換部237とを備えている。受信部236−1は、ベースバンド変換部131と、時間−周波数変換部132と、チャネル推定部133と、データ復調部134と、チャネル復号部135とを有している。受信部236−2は、受信部236−1と同じ構成を有している。受信部236−1及び受信部236−2は、それぞれが受信した信号からビット列を復元し、 復元したビット列を並直列変換部237に出力する。並直列変換部237は、受信部236−1と受信部236−2とからビット列が入力され、入力されるビット列に対してパラレル−シリアル変換を行い、発信局21が送信した情報ビット列を復元して出力する。
【0079】
以下、本実施形態の無線通信システム2において、各送信部217が有する直交トレーニング配置部113によるトレーニング信号の割当てについて説明する。
図5は、本実施形態におけるトレーニング信号の割当ての一例を示す概略図である。各直交トレーニング配置部113は、発信局21が有するアンテナの数が2(=NTs)のとき、[4×4](=[2NTs×2NTs])のユニタリ行列A2NTsを用いて行列CA2NTsで表される行列の各要素に応じた信号をトレーニング信号として各サブパケットに割り当てる。サブパケットP1及びサブパケットP2において、トレーニング信号を配置する領域は、それぞれに4OFDMシンボル分あり、1OFDMシンボル分の領域ごとに分けられている。各領域はサブパケットP1から時間順にL1〜L8としている。
【0080】
図5に示すように、送信部217−1の直交トレーニング配置部113が、行列CA2NTsの第1行の要素(A,B,C,D)をサブパケットP1の領域L1〜L4にトレーニング信号として順に割り当て、送信部217−1のパスバンド変換部115が(A,B,C,D)をトレーニング信号として割り当てられたサブパケットP1をアンテナ1から送信する。また、送信部217−2の直交トレーニング配置部113が、行列CA2NTsの第2行の要素(A’,B’,C’,D)をサブパケットP1の領域L1〜L4のトレーニング信号として順に割り当て、送信部217−2のパスバンド変換部115が(A’,B’,C’,D)をトレーニング信号として割り当てられたサブパケットP1をアンテナ2から送信する。
【0081】
また、送信部217−1の直交トレーニング配置部113が、行列CA2NTsの第3行の要素(E,F,G,H)をサブパケットP2の領域L5〜L8にトレーニング信号として順に割り当て、送信部217−1のパスバンド変換部115が(E,F,G,H)をトレーニング信号として割り当てられたサブパケットP2をアンテナ1から送信する。また、送信部217−2の直交トレーニング配置部113は、行列CA2NTsの第4行の要素(E’,F’,G’,H’)をサブパケットP2の領域L5〜L8にトレーニング信号として順に割り当て、送信部217−2のパスバンド変換部115が(E’,F’,G’,H’)をトレーニング信号として割り当てられたサブパケットP2をアンテナ2から送信する。
【0082】
上述のように、各直交トレーニング配置部113は、[2NTs×2NTs]のユニタリ行列A2NTsを用いて行列CA2NTsで表される行列の第1行から第NTs行までの要素それぞれをサブパケットP1のトレーニング信号として割り当て、第(NTs+1)行から第2NTs行までの要素それぞれをサブパケットP2のトレーニング信号として割り当てる。このとき、各サブパケットに割り当てられるトレーニング信号は直交性を有するので、宛先局23は、スロット1及びスロット2において受信するトレーニング信号に基づいて、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。
【0083】
以下、協調プロトコルとして、プロトコルIを適用した場合と、プロトコルIIIを適用した場合とにおける宛先局23の各チャネル推定部133が行うチャネル推定について説明する。
【0084】
<プロトコルIを適用した場合>
時間−周波数変換部132からチャネル推定部133に入力される受信信号Yd1、Yd2は、次式(13)で表される。
【0085】
【数13】
【0086】
ここで、受信信号Yd1、Yd2は[NRd×2NTs]の行列であり、Wd1及びWd2は熱雑音を表す[NRd×2NTs]の行列である。また、H11はスロット1における発信局21と宛先局23との間のチャネル周波数応答を表す。H21は、スロット1における発信局21と中継局22との間のチャネル周波数応答と、スロット2における中継局22と宛先局23との間のチャネル周波数応答との合成チャネル周波数応答を表す。H22は、スロット2における発信局21と宛先局23との間のチャネル周波数応答を表す。また、H11、H21、H22は[NRd×NTs]の行列である。SISO構成からMIMO構成への拡張は、このように行列の定義を行うことで得られる。
【0087】
宛先局23において、チャネル推定部133が次式(14)を用いてチャネル周波数応答H11、H21、H22の推定値を算出し、データ復調部134及びチャネル復号部135が復調、復号を行い、発信局21が送信した情報ビット列を復元する。
【0088】
【数14】
【0089】
上述のように、サブパケットP1とサブパケットP2とにトレーニング信号を割り当てることにより、MIMO構成においても、受信部236−1及び受信部236−2が有するチャネル推定部133は、式(14)の演算を用いて、サブパケットP1とサブパケットP2とが相互に干渉する影響を反映したチャネル周波数応答H11、H21、H22の推定値を算出することができる。これにより、チャネル周波数応答の推定の精度を向上させることができる。
【0090】
ここで、4×4のIEEE802.11nのHT−LTF(High Throughput Long Training Field)を利用した場合の送受信関係について説明する。
図6は、本実施形態において、4×4のIEEE802.11nのHT−LTFを利用した場合の一例を示す概略図である。ここでは、OFDMブロックごとの時変動がない場合を示している。同図に示すように、発信局21において、4×4のユニタリ行列CA2NTsにおける第1行の各要素(C,−C,C,C)をサブパケットP1のアンテナ1から送信されるトレーニング信号として割り当て、第2行の各要素(C,C,−C,C)をサブパケットP1のアンテナ2から送信されるトレーニング信号として割り当てる。また、第3行の各要素(C,C,C,−C)をサブパケットP2のアンテナ1から送信されるトレーニング信号として割り当て、第4行の各要素(−C,−C,C,C)をサブパケットP2のアンテナ2から送信されるトレーニング信号として割り当てる。
【0091】
このとき、宛先局23における受信信号Yは次式(15−1)及び(15−2)により表される。
【0092】
【数15】
【0093】
ここで、Ydij,mはスロットiのj番目のトレーニング信号(OFDMシンボル)をm番目の受信アンテナで受信した受信信号である。H11,mnはスロット1における発信局21のn番目の送信アンテナと宛先局23のm番目の受信アンテナとの間のチャネル周波数応答(CFR)である。H21,mnは中継局22を介した発信局21のn番目の送信アンテナと宛先局23のm番目の受信アンテナとの間のチャネル周波数応答である。H22,mnはスロット2における発信局21のn番目の送信アンテナと宛先局23のm番目の受信アンテナとの間におけるチャネル周波数応答である。Wdij,mはスロットiでのj番目のトレーニング信号(OFDMシンボル)のm番目の受信アンテナにおける付加白色ガウス雑音(AWGN)である。Cはトレーニング信号の周波数領域複素シンボルである。
チャネル推定部133は、次式(16)を用いて各チャネル周波数応答の推定値を算出する。
【0094】
【数16】
【0095】
IEEE802.11nで規定される無線LANに適用した場合においても、上述のように、ユニタリ行列A2NTsに基づいて、トレーニング信号を各サブパケットに割り当て、サブパケットP1とサブパケットP2とが相互に干渉する影響を反映したチャネル周波数応答の推定値を算出することができるので、チャネル周波数応答を推定する精度を向上させることができる。
【0096】
<プロトコルIIIを適用した場合>
続いて、協調プロトコルにプロトコルIIIを適用した場合について説明する。
プロトコルIIIを適用した場合、時間−周波数変換部132からチャネル推定部133に入力される受信信号Yは、次式(17)で表される。
【0097】
【数17】
【0098】
宛先局23において、受信部236−1及び受信部236−2が有するチャネル推定部133が次式(18)を用いて各チャネル周波数応答の推定値を算出し、データ復調部134及びチャネル復号部135が復調、復号を行い、発信局21が送信した情報ビット列を復元する。
【0099】
【数18】
【0100】
このように、サブパケットP1とサブパケットP2にトレーニング信号を割り当てることにより、MIMO構成においてプロトコルIIIを適用した場合においても、受信部236−1及び受信部236−2が有するチャネル推定部133は、式(18)の演算を用いて、サブパケットP1とサブパケットP2とが相互に干渉する影響を反映したチャネル周波数応答の推定値を算出することができる。これにより、チャネル周波数応答の推定の精度を向上させることができる。
【0101】
ここで、プロトコルIIIを適用した場合において、4×4のIEEE802.11nのHT−LTF(High Throughput Long Training Field)を利用したときの送受信関係について説明する。
図7は、本実施形態において、4×4のIEEE802.11nのHT−LTFを利用した場合の一例を示す概略図である。同図に示すように、発信局21において、4×4のユニタリ行列CA2NTsにおける第1行の各要素(C,−C,C,C)をサブパケットP1のアンテナ1から送信されるトレーニング信号として割り当て、第2行の各要素(C,C,−C,C)をサブパケットP1のアンテナ2から送信されるトレーニング信号として割り当てる。また、第3行の各要素(C,C,C,−C)をサブパケットP2のアンテナ1から送信されるトレーニング信号として割り当て、第4行の各要素(−C,−C,C,C)をサブパケットP2のアンテナ2から送信されるトレーニング信号として割り当てる。
このとき、宛先局23における受信信号Yは次式(19−1)及び(19−2)により表される。
【0102】
【数19】
【0103】
そして、受信部236が有するチャネル推定部133は、次式(20)を用いて各チャネル周波数応答の推定値を算出する。
【0104】
【数20】
【0105】
協調プロトコルとしてプロトコルIIIを用い、IEEE802.11nで規定される無線LANに適用した場合においても、上述のように、ユニタリ行列A2NTsに基づいて、トレーニング信号を各サブパケットに割り当て、サブパケットP1とサブパケットP2とが相互に干渉する影響を反映したチャネル周波数応答の推定値を算出することができるので、チャネル周波数応答を推定する精度を向上させることができる。
【0106】
図8は、本発明の要部の構成を説明する図である。本発明は、データ信号の送信元である発信局と、当該データ信号の宛先である宛先局と、発信局から送信された当該データ信号を受信して当該宛先局へ転送する中継局とが、一つの無線チャネルを時分割して得られるタイムスロットの2つを使用して当該データ信号の送受信を行う無線通信システムにおけるチャネル推定の精度を向上させるものである。
同図において、発信局がスロット1で送信するサブパケットP1、及びスロット2で送信するサブパケットP2それぞれに配置するトレーニング信号の構成が示されている。発信局が備えるアンテナ数をNTsとしたとき、[2NTs×2NTs]のユニタリ行列を予め定め、当該ユニタリ行列の[NTs×2NTs]の部分行列を各サブパケットにトレーニング信号として配置することにより、トレーニング信号の直交性を維持する。宛先局において、チャネル推定部は、トレーニング信号自体の直交性を利用して、発信局から送信されたパケットと、中継局から送信されたパケットとが相互干渉した状態の受信信号からチャネル周波数応答の推定値を算出することにより、推定値の精度を向上させることができる。
【0107】
本発明に係る第1及び第2実施形態の無線通信システムでは、発信局において、直交トレーニング配置部113が、自局に備えられているアンテナの本数NTsに応じて、予め定められる[2NTs×2NTs]のユニタリ行列A2NTsに基づいて生成されたトレーニング信号を、スロット1で送信するサブパケットP1及びスロット2で送信するサブパケットP2に配置する。
宛先局では、スロット2において、ベースバンド変換部131が、発信局から受信するサブパケットP2と、中継局から受信するサブパケットP1とを受信する。また、チャネル推定部133が、サブパケットP1及びサブパケットP2に含まれるトレーニング信号に基づいて、自局と発信局との間のチャネル周波数応答の推定値と、中継局を介した自局と発信局との間のチャネル周波数応答(合成チャネル周波数応答)の推定値とを算出する。また、データ復調部134が、チャネル推定部133が算出した推定値に基づいて、スロット2において受信した信号からサブパケットP1及びサブパケットP2を分離し、分離したサブパケットP1及びサブパケットP2に含まれるデータを復調する。
【0108】
ユニタリ行列A2NTsの各行の要素をトレーニング信号として各サブパケットに順に配置しているので、各トレーニング信号の直交性を維持することができるので、スロット2において、宛先局が各トレーニング信号を合成した信号を受信しても、ユニタリ行列A2NTs(トレーニング信号のレプリカ信号)の逆行列A2NTs−1を用いた演算により、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。このとき、宛先局が自局と発信局及び中継局との間のチャネル全てを通じてトレーニング信号を同時に受信するので、チャネル推定部133は、各チャネル間においる信号が相互に干渉する影響が反映された推定値を算出することができ、推定精度を改善させることができる。
その結果、宛先局において、サブパケットP1及びサブパケットP2の分離、及び各サブパケットに含まれるデータの復調の精度を向上させることができ、受信時の誤りによる再送を低減させて、無線通信システムのスループットを向上させることができる。
【0109】
ところで、図11において示したように、トレーニング信号を受信するタイミングが重複しないようにトレーニング信号を配置してトレーニング信号の直交性を維持する場合、トレーニング信号を配置しない各領域の送信電力を0(零)にすることになる。この場合、宛先局では、トレーニング信号が送信されていない無信号状態と、トレーニング信号が送信されているときとの電力格差の問題が生じる。
具体的には、宛先局が実際にデータを受信する際、宛先局は、自局と発信局との間の各チャネルを通じて自局に到達する信号を合成した信号を受信する。これに対して、トレーニング信号を受信する際、宛先局は、自局と発信局との間のいずれかのチャネルを通じて自局に到達するトレーニング信号を受信する。これにより、データを受信する際の受信電力と、トレーニング信号を受信する際の受信電力とに差(電力格差)が生じてしまい、チャネル推定に誤差が生じてしまうという問題があった。また、実際には、送信電力を0(零)にすることができず、トレーニング信号にノイズが含まれてしまうという問題もあった。
本発明に係る第1及び第2実施形態の無線通信システムでは、図3、図5、図6、及ぶ図7に示したように、宛先局がトレーニング信号を受信する際、宛先局と発信局との間の各チャネルを通じて宛先局に到達する各トレーニング信号を合成した信号を受信するようにしているので、上述の電力格差を生じさせることなく、チャネル周波数応答の推定精度を向上させることができる。
【0110】
なお、上記の第1及び第2実施形態では、中継局伝送プロトコルとしてAF法を適用した場合について説明したが、これに限ることなく、中継局伝送プロトコルにDF(Decode-and-Forward)法や、CF(Compress-and-Forward)法などを適用してもよい。DF法を適用する場合、中継局は、受信した信号から情報ビット列を宛先局と同様に復元し、復元した情報ビット列を発信局と同様に送信する。すなわち、中継局は送信部217及び受信部236を備えるようにしてもよい。このとき、中継局において、各サブパケットに配置するトレーニング信号は、上述したようにユニタリ行列A2NTsの要素に基づいた信号を用いて、各トレーニング信号の直交性を維持するようにする。
【0111】
また、第2実施形態の無線通信システム2において、例えば、協調プロトコルにプロトコルIを適用し、中継局伝送プロトコルに選択DF法を適用した場合、宛先局23のチャネル推定部133の処理は、以下のようになる。
選択DF法では、中継局22は、受信SNR(Signal-Noise Ratio;信号対雑音比)が予め定めたしきい値以下の場合や、受信したパケットを正しく復号できない場合、受信した信号を宛先局23に中継(フォワード)しない。ここでは、中継局22がフォワードをする場合と、フォワードをしない場合とに分けて、宛先局23のチャネル推定部133における処理について説明する。
【0112】
[中継局22がフォワードする場合]
上記の第2実施形態において説明したように、式(14)を用いて、各チャネル周波数応答の推定値を算出する。
【0113】
[中継局22がフォワードしない場合]
宛先局23における受信信号Yd1、Yd2は、次式(21)で表される。
【0114】
【数21】
【0115】
チャネル推定部133は、式(14)と同様に、受信信号Yd1、Yd2と逆行列C−1A2NTsHとの積を算出することにより、チャネル周波数応答H11、H22の推定値を算出することができる。このとき、チャネル推定部133は、次式(22)で表される演算を行う。
【0116】
【数22】
【0117】
このように、チャネル推定部133は、中継局伝送プロトコルに選択DF法を適用した場合においても、AF法を適用した場合と同様に、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。
【0118】
また、第2実施形態の無線通信システム2において、協調プロトコルにプロトコルIIIを適用し、中継局伝送プロトコルに選択DF法を適用した場合におけるチャネル推定部133における処理は以下のようになる。
【0119】
[中継局22がフォワードする場合]
上記の第2実施形態において説明したように、式(18)を用いて、各チャネル周波数応答の推定値を算出する。
【0120】
[中継局22がフォワードしない場合]
中継局22がフォワードする場合と同様に、式(18)を用いて、各チャネル周波数応答の推定値を算出する。
このように、チャネル推定部133は、中継局伝送プロトコルに選択DF法を適用した場合においても、AF法を適用した場合と同様に、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。
【0121】
なお、中継局22がフォワードしない場合には、協調プロトコルにプロトコルIを適用した場合において中継局22がフォワードしないときの式(21)同様に、チャネル周波数応答H21を0として扱うことができる。この場合、宛先局23における受信信号Yd2は、次式(23)で表される。
【0122】
【数23】
【0123】
ここで、式(23)における行列A2NTs(h)は、[2NTs×2NTs]のユニタリ行列A2NTsのうち、サブパケットP2にトレーニング信号として配置した部分行列であり、例えば、第(NTs+1)行目から第2NTs行目までユニタリ行列A2NTsの部分行列である。中継局22がフォワードしない場合、チャネル推定部133は、次式(24)に示すように、受信信号Yd2と、擬似逆行列C−1A2NTs(h)Hとの積を演算することにより、チャネル周波数応答の推定値を算出することができる。
【0124】
【数24】
【0125】
このとき、宛先局23は、中継局22からフォワードをするか否かを示す制御信号を受信することにより、チャネル推定部133は、式(18)に替えて、式(24)を用いた演算をすることにより、演算量を削減することができる。
【0126】
また、上記の第1及び第2実施形態において、チャネル符号化部111は、宛先局(13、23)に伝送する情報ビット列が漏洩することを防ぐために、入力される情報ビット列に対して、所定のスクランブルコードを用いてスクランブルを行うようにしてもよい。また、チャネル符号化部111は、マルチパス波による影響を軽減するために、巡回シフトディレイ(Cyclic Shift Delay;CSD)を追加するようにしてもよい。
また、上記の第1及び第2実施形態において、マルチキャリアシステムとしてOFDM変調を用いた場合について説明したが、これに限ることなく、直交周波数分割多元接続(Orthogonal Frequency Division Multiple Access;OFDMA)システムや、マルチキャリア符号分割多元接続(Multi Carrier-Code Division Multiple Access;MC−CDMA)を用いるようにしてもよい。
【0127】
また、上記の第1及び第2実施形態において、[2NTs×2NTs]のユニタリ行列の第1行から第NTs行までの部分行列をサブパケットP1に割り当て、第(NTs+1)行から第2NTs行までの部分行列をサブパケットP2に割り当てる構成について説明したが、これに限らずともよい。[2NTs×2NTs]のユニタリ行列の2NTs行うち任意のNTs行からなる部分行列をサブパケットP1に割り当て、サブパケットP1に割り当てた行以外のNTs行からなる部分行列をサブパケットP2に割り当てるようにしてもよい。
また、上記の第2実施形態において、送信アンテナ及び受信アンテナが2本ずつのMIMO構成について説明したが、これに限ることなく、送信アンテナ及び受信アンテナそれぞれを3本以上にしてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1,2,9…無線通信システム
11,21,91…発信局
12,22,92…中継局
13,23,93…宛先局
111…チャネル符号化部
112…データ変調部
113…直交トレーニング配置部
114…周波数−時間変換部
115…パスバンド変換部
131…ベースバンド変換部
132…時間−周波数変換部
133…チャネル推定部
134…データ復調部
135…チャネル復号部
216…直並列変換部
217,217−1,217−2…送信部
236,236−1,236−2…受信部
237…並直列変換部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの無線チャネルを時分割して得られる第1スロット及び第2スロットにおいてデータ信号を含むパケットを送信する発信局と、前記パケットの宛先である宛先局と、前記発信局が第1スロットにおいて送信したパケットを受信し、受信したパケットを第2スロットにおいて前記宛先局へ送信する転送を行う中継局とを具備する無線通信システムであって、
前記発信局は、
自局に備えられているアンテナの本数に応じて行数及び列数が定められるユニタリ行列に基づいて生成されたトレーニング信号を、前記第1スロットで送信されるパケット及び前記第2スロットで送信されるパケットに配置するトレーニング配置部
を備え、
前記宛先局は、
第2スロットにおいて、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを受信し、受信したパケットそれぞれに含まれるトレーニング信号に基づいて、前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値と、前記中継局を介した前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出するチャネル推定部と、
前記チャネル推定部が算出した推定値に基づいて、第2スロットにおいて受信した信号から、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを分離し、分離したパケットに含まれるデータ信号を復調するデータ復調部と
を備える
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記ユニタリ行列は、前記発信局に備えられているアンテナの本数がN本の場合、2N次の正方行列であり、
前記トレーニング配置部は、前記ユニタリ行列を2つのN行2N列の部分行列に分割し、一方の部分行列の各行の要素をトレーニング信号として各アンテナに対応させて第1スロットに配置し、他方の部分行列の各行の要素をトレーニング信号として各アンテナに対応させて第2スロットに配置する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記トレーニング配置部は、第1スロット及び第2スロットにおいて、前記トレーニング信号を配置する領域を2N個に分割し、前記分割された各領域に、前記部分行列の各列の要素を順に配置する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記チャネル推定部は、
第2スロットにおいて、受信した2つの前記パケットに含まれるトレーニング信号と、予め記憶している前記トレーニング信号のレプリカ信号とを用いて前記推定値を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
一つの無線チャネルを時分割して得られる第1スロット及び第2スロットにおいてデータ信号を含むパケットを送信する発信局と、前記パケットの宛先である宛先局と、前記発信局が第1スロットにおいて送信したパケットを受信し、受信したパケットを第2スロットにおいて前記宛先局へ送信する転送を行う中継局とを具備する無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記発信局が、自局に備えられているアンテナの本数Nに応じて行数及び列数が定められるユニタリ行列に基づいて生成されたトレーニング信号を、前記第1スロットで送信されるパケット及び前記第2スロットで送信されるパケットに配置するトレーニング配置ステップと、
前記宛先局が、第2スロットにおいて、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを受信し、受信したパケットそれぞれに含まれるトレーニング信号に基づいて、前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値と、前記中継局を介した前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出するチャネル推定ステップと、
前記宛先局が、前記チャネル推定ステップにおいて算出した推定値に基づいて、第2スロットにおいて受信した信号から、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを分離し、分離したパケットに含まれるデータ信号を復調するデータ復調ステップと
を有することを特徴とする無線通信方法。
【請求項1】
一つの無線チャネルを時分割して得られる第1スロット及び第2スロットにおいてデータ信号を含むパケットを送信する発信局と、前記パケットの宛先である宛先局と、前記発信局が第1スロットにおいて送信したパケットを受信し、受信したパケットを第2スロットにおいて前記宛先局へ送信する転送を行う中継局とを具備する無線通信システムであって、
前記発信局は、
自局に備えられているアンテナの本数に応じて行数及び列数が定められるユニタリ行列に基づいて生成されたトレーニング信号を、前記第1スロットで送信されるパケット及び前記第2スロットで送信されるパケットに配置するトレーニング配置部
を備え、
前記宛先局は、
第2スロットにおいて、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを受信し、受信したパケットそれぞれに含まれるトレーニング信号に基づいて、前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値と、前記中継局を介した前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出するチャネル推定部と、
前記チャネル推定部が算出した推定値に基づいて、第2スロットにおいて受信した信号から、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを分離し、分離したパケットに含まれるデータ信号を復調するデータ復調部と
を備える
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記ユニタリ行列は、前記発信局に備えられているアンテナの本数がN本の場合、2N次の正方行列であり、
前記トレーニング配置部は、前記ユニタリ行列を2つのN行2N列の部分行列に分割し、一方の部分行列の各行の要素をトレーニング信号として各アンテナに対応させて第1スロットに配置し、他方の部分行列の各行の要素をトレーニング信号として各アンテナに対応させて第2スロットに配置する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記トレーニング配置部は、第1スロット及び第2スロットにおいて、前記トレーニング信号を配置する領域を2N個に分割し、前記分割された各領域に、前記部分行列の各列の要素を順に配置する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記チャネル推定部は、
第2スロットにおいて、受信した2つの前記パケットに含まれるトレーニング信号と、予め記憶している前記トレーニング信号のレプリカ信号とを用いて前記推定値を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
一つの無線チャネルを時分割して得られる第1スロット及び第2スロットにおいてデータ信号を含むパケットを送信する発信局と、前記パケットの宛先である宛先局と、前記発信局が第1スロットにおいて送信したパケットを受信し、受信したパケットを第2スロットにおいて前記宛先局へ送信する転送を行う中継局とを具備する無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記発信局が、自局に備えられているアンテナの本数Nに応じて行数及び列数が定められるユニタリ行列に基づいて生成されたトレーニング信号を、前記第1スロットで送信されるパケット及び前記第2スロットで送信されるパケットに配置するトレーニング配置ステップと、
前記宛先局が、第2スロットにおいて、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを受信し、受信したパケットそれぞれに含まれるトレーニング信号に基づいて、前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値と、前記中継局を介した前記発信局と自局との間のチャネル周波数応答の推定値を算出するチャネル推定ステップと、
前記宛先局が、前記チャネル推定ステップにおいて算出した推定値に基づいて、第2スロットにおいて受信した信号から、前記発信局が送信した前記パケットと、前記中継局が転送した前記パケットとを分離し、分離したパケットに含まれるデータ信号を復調するデータ復調ステップと
を有することを特徴とする無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−222795(P2012−222795A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90231(P2011−90231)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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