説明

無線通信システム、親局無線通信装置、及び子局無線通信装置、並びに、通信方法

【課題】親局と子局間で通信する無線通信システムにおいて、遅延時間を短くするメディアアクセス制御を提供する。
【解決手段】子局無線通信装置は、ポーリング要求を親局無線通信装置に送信し、ポーリング要求に対応するポーリングを親局無線通信装置から受信したときにデータフレームを送信する。そして、親局無線通信装置は、1つの子局無線通信装置からポーリング要求を受信したときに、当該子局無線通信装置を対象子局無線通信装置としてポーリングリストに登録し、規定回数のポーリングを対象子局無線通信装置に送信した後、或いは、対象子局無線通信装置の登録がポーリングリストから無くなるまでポーリングを対象子局無線通信装置に送信した後、通信状態をコンテンション期間に移行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、親局無線通信装置、及び子局無線通信装置、並びに、通信方法に関し、例えば、無線通信システムにおける親局と子局間のメディアアクセス制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のメディアアクセス制御方法として、例えば非特許文献1にDCF(Distributed Coordination Function、自律分散的なアクセス制御)及びPCF(Point Coordination Function、集中制御によるアクセス制御)が開示されている。
【0003】
DCFは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance、衝突回避機能付きキャリア感知多重アクセス制御方式)に基づくメディアアクセス制御方法であって、送信待機状態のデータフレームを有する無線局が、データフレームの送信の前にキャリアセンスし、他の無線局が送信していないことを確認した上で、データフレームを送信するものである。このようなメディアアクセス制御方法に基づく期間を、コンテンション期間(Contention Period)という。
【0004】
図1は、CSMA/CAのシーケンス図を示す図である。図1においては、AP101(Access Point、親局)とSTA102(Station、子局)との間で無線通信が行われる。図1では、全ての子局STA102a〜STA102cは、送信待機状態のデータフレームをDIFS(DCF Inter Frame Space;分散制御用フレーム間隔)とバックオフ(Back off)時間経過するまで待機させる。この待機期間中、チャネルアイドル状態(他の無線局からの送信を検出しなかった状態)の場合にデータフレームの送信を開始する。ここで、バックオフ時間とは、CW(Contention Window、乱数発生範囲)内の乱数値とスロットタイム(一定時間)により次式で表される。
バックオフ時間 = CW内の乱数値 × スロットタイム
【0005】
図1の(i)送信手順では、STA102aのバックオフスロット数が最も小さいため、キャリアセンス後にSTA102aがAP101へデータフレームを送信し、AP101はデータフレームを受信後、SIFS(Short Inter Frame Space、短フレーム間隔)後にSTA102aにACK(Acknowledgment、確認応答)を送信し、STA102aは通信を完了する。ここで、STA102bとSTA102cは、バックオフスロットが0になる前にチャネルビジー状態(信号を検出した状態)になったため、送信待機し、残りのバックオフスロット数を次回に持ち越す。
【0006】
次に、図1の(ii)衝突発生時では、STA102bとSTA102cはDIFS後に持ち越されたバックオフスロット数分キャリアセンスし、バックオフスロットが0になったときデータフレームを送信する。しかし、図1では、STA102bとSTA102cのバックオフスロット数が同一であるため、同時に送信し、電波衝突が発生するため、送信を失敗する。
【0007】
送信を失敗したSTA102bとSTA102cは、バックオフスロット数を再度決定する。このとき、CWを再送毎に指数関数的に増加させる。図1の(iii)再送手順では、バックオフスロット数をSTA102bが5、STA102cが8に決定したため、STA102bがAP101にデータフレームを送信し、AP101はデータフレームを受信後、SIFS後にSTA102bにACKを送信し、STA102bは通信を完了する。その後、STA102cも同様に通信を実施する。
【0008】
一方、PCFは、親局がポーリングリストに従って各子局に順番にポーリングを送信し、自局宛のポーリングを受信した子局のみがデータフレームを送信するメディアアクセス制御方法であり、親局が各子局の送信タイミングを集中管理することで電波衝突を回避することができる。このようなメディアアクセス制御方法に基づく期間を、コンテンションフリー期間(Contention Free Period)という。
【0009】
図2は、PCFのシーケンス図を示す図である。図2においては、AP201とSTA202との間で無線通信が行われる。図2では、AP201は、最初にビーコンフレームを送信し、コンテンションフリー期間に移行したことを全てのSTA202へ通知する。そして、AP201は、SIFS待機した後、STA202aへポーリング(Poll)を送信する。これに対し、STA202aは、データフレームをAP201へ送信する。その後、AP201は、SIFS待機した後、ACKをSTA202aへ送信すると共に、STA202bへポーリングを送信する。これに対し、STA202bは、データフレームをAP201へ送信する。その後、AP201は、SIFS待機した後、ACKをSTA202bへ送信すると共に、STA202cへポーリングを送信する。これに対し、STA202cは、データフレームをAP201へ送信する。そして、AP201は、SIFS待機した後、ACKをSTA202cへ送信すると共に、コンテンションフリー期間の終了を通知するEndフレーム(End)を送信する。
【0010】
また、特許文献1には、各子局が送信待機状態のデータフレームを有する場合に、乱数によって導出したバックオフスロット数を親局へ通知し、親局が受信したバックオフスロット数が小さい順にポーリングを送信し、自局宛のポーリングを受信した子局のみがデータフレームを送信する方法が開示されている。この方法によれば、各子局が送信待機状態のデータフレームを有する場合にのみバックオフスロット数を通知することで、データフレームが無い子局への無駄なポーリングを無くし、親局が各子局のデータフレームの送信タイミングを集中管理することでデータフレームの電波衝突を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−108966号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】IEEE, “Medium Access Control(MAC) Quality of Service Enhancements”, IEEE Std 802.11-2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、非特許文献1では、DCFにより自律分散的にアクセス制御されるため、子局が多い場合、子局が少ない場合と比較して電波衝突が発生しやすく、再送による遅延時間が大きくなる場合がある。また、PCFでは、親局がポーリングリストにある全ての子局へ順番にポーリングを送信するため、送信待機状態のデータフレームが無い子局へ無駄なポーリングを送信することによって、送信待ちによる遅延時間が大きくなる場合がある。
【0014】
また、特許文献1の方法では、送信待機状態のデータを有する子局が少ない場合であっても各子局にポーリングを送信するため、データフレームに対するポーリング等の制御信号の割合が高くなり、送信待ちによる遅延時間が長くなる場合がある。
【0015】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、親局と子局間で通信する無線通信システムにおいて、遅延時間を短くするメディアアクセス制御を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明では次のような処理が実行される。つまり、子局無線通信装置は、ポーリング要求を親局無線通信装置に送信し、ポーリング要求に対応するポーリングを親局無線通信装置から受信したときにデータフレームを送信する。そして、親局無線通信装置は、1つの子局無線通信装置からポーリング要求を受信したときに、当該子局無線通信装置を対象子局無線通信装置としてポーリングリストに登録し、規定回数のポーリングを対象子局無線通信装置に送信した後、或いは、対象子局無線通信装置の登録がポーリングリストから無くなるまでポーリングを対象子局無線通信装置に送信した後、通信状態をコンテンション期間に移行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、親局と子局間で通信する無線通信システムにおいて、遅延時間を短くすることができるようになる。
【0018】
なお、上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の本発明を実施するための形態および添付図面によって明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一般的なCSMA/CAのシーケンスを示す図である。
【図2】一般的なPCFのシーケンスを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置の内部構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るメディアアクセス制御の処理内容を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るメディアアクセス制御において、ポーリング要求が衝突しない場合の処理例を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るメディアアクセス制御のポーリング要求が衝突した場合の処理例を示すシーケンス図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る、ポーリング回数制御部を備える無線通信装置の内部構成を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る、アクセス制御切替制御部を備える無線通信装置の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。また、各図において共通の構成については同一の参照番号が付されている。
【0021】
(1)第1の実施形態
<無線通信システムの構成>
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成を説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示す図である。無線通信システムは、少なくとも1台のAP301(Access Point、親局)と、1台以上のSTA302(Station、子局)と、WAN等のバックボーンネットワーク303と、を有している。AP301は、バックボーンネットワーク303を介して図示しない制御デバイス等に接続されている。
【0022】
図3の無線通信システムにおいて、AP301(Access Point、親局)とSTA302(Station、子局)との間で無線通信が行われる。1台の親局には、1台、もしくは2台以上の子局が通信しても良い。図3では、1台の親局と3台の子局との間で通信する場合が示されている。AP301は外部インターフェースを介してバックボーンネットワーク303と接続し、STA302は外部インターフェースを介してデータの伝送を必要とするデバイス304に接続する。データの伝送を必要とするデバイス304からデータを転送されたSTA302は、データをAP301に無線送信し、データを受信したAP301は、宛先に応じてバックボーンネットワーク303やSTA302にデータを転送する。バックボーンネットワーク303からデータを転送されたAP301は、宛先に応じてSTA302にデータを無線送信し、データを受信したSTA302はデバイス304にデータを転送する。なお、ここで、通信範囲を拡大するために中継局を用いても良く、この中継局は親局と子局の両方の機能を備えても良い。また、図3において、STA302に接続するデバイス304の代わりに親局を接続し、該親局に1台、もしくは2台以上の子局を無線接続することで該STA302と該親局を合わせて中継局として機能させても良い。さらに、図3において、AP301に接続するバックボーン304の代わりに子局を接続し、該子局を親局に無線接続することで該AP301と該子局を合わせて中継局として機能させても良い。
【0023】
<無線通信装置の内部構成>
以下、本発明の一実施形態に係る無線通信装置の内部構成について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る無線通信装置(AP及びSTA)の概略内部構成を示すブロック図である。
【0024】
図4のAP301は、外部インターフェース403と、通信制御部404aと、無線送受信処理部405と、アンテナ406とを有する。また、図4のSTA302(図3のSTA302a乃至cのいずれかに相当)は、外部インターフェース403と、通信制御部404bと、無線送受信処理部405と、アンテナ406とを有する。なお、無線送受信処理部405及びアンテナ406での処理は物理層で行われ、通信制御部404a及びbでの処理はMAC層で行われる。
【0025】
外部インターフェース403は、外部からのデータを受信した場合、通信制御部404へデータを転送し、通信制御部404からデータを受信した場合、外部へデータを転送する。
【0026】
通信制御部404は、外部インターフェース403からのデータ受信や、無線送受信処理部405からのデータやポーリング等のフレーム受信に応じて無線送信するフレームを生成し、所定の送信タイミングで無線送受信処理部405へフレームを転送する。また、通信制御部404は、無線送受信処理部405からデータフレームを受信した場合、外部インターフェース403へデータを転送する。通信制御部404から無線送受信処理部405へフレームを転送された場合、無線送受信処理部405にて、フレームを無線信号に変換し、アンテナ406を介して無線送信する。アンテナ406が無線信号を受信した場合、無線信号を無線送受信処理部405にてフレームに変換し、通信制御部404へ転送する。
【0027】
AP301の通信制御部404aは、宛先管理部407と、ポーリングリスト格納部408と、データフレーム送受信処理部409と、ACK送受信処理部410と、ポーリング要求受信処理部411と、Endフレーム送信処理部412と、ポーリング送信処理部413と、送信タイミング制御部414と、受信フレーム解析部415とを有する。
【0028】
また、STA302の通信制御部404bは、宛先管理部407と、データフレーム送受信処理部409と、ACK送受信処理部410と、ポーリング受信処理部416と、Endフレーム受信処理部417と、ポーリング要求送信処理部418と送信タイミング制御部414と、受信フレーム解析部415とを有する。
【0029】
通信制御部404aでは、外部インターフェース403からデータが転送されてきた場合、宛先管理部407が、転送されてきたデータをどこに送信するか転送データに含まれる宛て先情報を参照して確認する。そして、データフレーム送受信処理部409が、データフレームを生成する。さらに、送信タイミング制御部414が、所定の送信タイミングでデータフレームを無線送受信処理部405へ転送する。なお、データフレームは、送信失敗時に再送するため、ACK(Acknowledge)を受信するか、所定回数再送するまでデータフレーム送受信処理部409で保持される。データフレームを送信後、一定の時間が経過しても子局からACKを受信出来なかった場合、データフレームが再送される。
【0030】
通信制御部404aでは、子局からACKフレームを受信した場合、該ACKフレームに対応するデータフレーム送受信処理部409が、保持しているデータフレームを削除する。
【0031】
また、通信制御部404aでは、無線送受信処理部405からフレームが転送されてきた場合、受信フレーム解析部415が、フレームの誤りの有無及びアドレスを確認する。フレームに誤り無く自局が受信すべきフレームであると判断した場合、受信フレーム解析部415は、各フレームの受信処理部へ転送する。ここで、フレームに誤りを検出した場合、もしくは自局が受信すべきでないフレームと判断した場合、受信フレームを破棄する。
【0032】
一方、通信制御部404aがデータフレームを受信した場合、データフレーム送受信処理部409が、データフレームを外部へ転送するデータ形式に変換し、外部インターフェース403に転送するとともに、ACK送受信処理部410が、データフレームを受信したことを通知するACKフレームを生成する。そして、送信タイミング制御部414が、所定の送信タイミングでACKフレームを無線送受信処理部405へ転送する。送信待機状態のデータフレームを有する場合、送信タイミング制御部414は、該データフレームにACKを付加して転送しても良い。
【0033】
また、通信制御部404aがポーリング要求を受信した場合、ポーリング要求受信処理部411は、ポーリングリスト格納部408に保持されているポーリングリストの末尾にポーリング要求を送信した子局を登録する。このとき、ポーリング要求受信処理部411は、ポーリングリスト格納部408に保持されているポーリングリストにポーリング要求を送信した子局が登録されていないか確認し、既に登録がある場合は、新規の登録をしないようにする。これにより、1つのデータに対する二重登録を防止し、無駄なポーリングが行われることを回避している。
【0034】
通信制御部404aは、ポーリングリスト格納部408に子局の登録があると判断した場合、先頭に登録されている子局へのポーリングフレームを生成し、送信タイミング制御部414が、所定の送信タイミングでポーリングフレームを無線送受信処理部405へ転送する。このとき、ポーリングリスト格納部408の先頭の登録が削除される。さらに、送信待機状態のデータフレーム、もしくはACKフレームを有する場合には、該フレームにポーリングが付加される。
【0035】
さらに、通信制御部404aが規定回数のポーリングを送信した場合、或いはポーリングリストに登録が無くなるまでポーリングリストに登録された子局へポーリングを送信した場合、Endフレーム送信処理部412がEndフレームを生成し、送信タイミング制御部414が所定の送信タイミングでEndフレームを無線送受信処理部405へ転送する。さらに、送信待機状態のACKフレームを有する場合、該ACKフレームにEndが付加される。
【0036】
子局STA302の通信制御部404bにおいて、外部インターフェース403からデータが転送されてきた場合、宛先管理部407が転送されたデータをどこに送信するか確認する。そして、データフレーム送受信処理部409がデータフレームを生成するとともに、ポーリング要求送信処理部418がポーリング要求フレームを生成し、送信タイミング制御部414が所定の送信タイミングでポーリング要求フレームを無線送受信処理部405へ転送する。このポーリング要求フレームは、送信失敗時に再送できるようにするため、ポーリングを受信するか、又は所定回数再送するまでポーリング要求送信処理部418において保持される。ポーリング要求フレームを送信した後、一定の時間が経過してもポーリングを受信出来なかった場合、送信タイミング制御部414は、ポーリング要求フレームを再送する。
【0037】
また、通信制御部404bにおいて、無線送受信処理部405からフレームを転送された場合、受信フレーム解析部415は、フレームの誤りの有無及びアドレスを確認し、フレームに誤り無く自局が受信すべきフレームであると判断した場合、各フレームの受信処理部へ転送する。ここで、フレームに誤りを検出した場合、もしくは自局が受信すべきでないフレームと判断した場合、受信フレーム解析部415は、受信フレームを破棄する。
【0038】
通信制御部404bが自局宛のポーリングフレームを受信した場合、ポーリング受信処理部416は、送信タイミング制御部414にコンテンションフリー期間用の制御を実施するように指令し、データフレーム送受信処理部409が生成済みのデータフレームを有するか確認する。データフレーム送受信処理部409が生成済みのデータフレームを有する場合、送信タイミング制御部414は、所定の送信タイミングでデータフレームを無線送受信処理部405へ転送する。また、該ポーリングフレームに対応するポーリング要求送信処理部418で保持しているポーリング要求フレームを削除する。さらに、送信待機状態のポーリング要求フレームを有する場合、該ポーリング要求フレームにデータが付加される。なお、データフレームは、送信失敗時に再送するため、ACKを受信するか、所定回数再送するまでデータフレーム送受信処理部409で保持する。送信タイミング制御部414は、データフレームを送信後一定の時間が経過してもACKを受信出来なかった場合、データフレームを再送する。再送時には、送信タイミング制御部414は、再度ポーリング要求を生成及び送信し、ポーリングを受信した後、再送する。通信制御部404bは、ACKフレームを受信した場合、該ACKフレームに対応するデータフレーム送受信処理部409で保持しているデータフレームを削除する。
【0039】
通信制御部404bが他局宛のポーリングフレームを受信した場合、ポーリング受信処理部416は、送信タイミング制御部414にコンテンションフリー期間用の制御を実施するように指令し、該ポーリングフレームを破棄する。
【0040】
通信制御部404bがデータフレームを受信した場合、データフレーム送受信処理部409は、データフレームを外部へ転送するデータ形式に変換し、外部インターフェース403に転送する。それとともに、ACK送受信処理部410は、データフレームを受信したことを通知するACKフレームを生成する。そして、送信タイミング制御部414は、所定の送信タイミングでACKフレームを無線送受信処理部405へ転送する。さらに、送信待機状態のポーリング要求フレーム、もしくはデータフレームを有する場合、該フレームにACKが付加される。
【0041】
通信制御部404bがEndフレームを受信した場合、Endフレーム受信処理部417は、送信タイミング制御部414にコンテンションフリー期間が終了し、コンテンション期間用の制御に切り替えるように指令する。
【0042】
<メディアアクセス制御の処理概要>
続いて、本発明の第1の実施形態によるメディアアクセス制御処理の概要について説明する。図5は、当該メディアアクセス制御処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【0043】
まず、子局STA302が親局AP301に対してポーリング要求を送信する(S501)。
【0044】
複数の子局からのポーリング要求が衝突した場合(S502でYesの場合)、ポーリング要求の再送処理を実施する。各子局STA302は、一定の時間が経過してもポーリングを受信出来ないことでポーリング要求が衝突したと判断し、CW(Contention Window)を再設定し、CSMA/CAに従い、DIFS(DCF Inter Frame Space、分散制御用フレーム間隔)とバックオフ(Back off)時間の間、キャリアセンス(他の子局からの一定以上レベルの電波を検知すること)し、他の無線局からの送信を検出しなかった場合に再度ポーリング要求を親局AP301に送信する(S503)。
【0045】
複数の子局STAからのポーリング要求が衝突していないと判断した場合(S502でNoの場合)、親局AP301のポーリング送信処理部413は、対象の子局STAに対してポーリングを送信する(S504)。
【0046】
対象の子局STAのポーリング受信処理部416が、親局AP301からポーリングを受信すると、子局STAのデータフレーム送受信処理部409が送信すべきデータを含むデータフレームを生成し、送信タイミング制御部414及び無線送受信処理部405が当該データフレームを親局AP301に送信する(S505)。送信すべきデータがさらにある場合には、ポーリング要求も併せて送信する。
【0047】
データフレームを受信した親局AP301のデータフレーム送受信処理部409は、ポーリングリスト格納部408に保持されているポーリングリストに対象の子局STAが登録されており、かつ、ポーリング送信回数が規定回数以下であるか否か判断する(S506)。
【0048】
ポーリングリストに対象の子局STAが登録されており、かつ、ポーリング送信回数が規定回数以下である場合(S506でYesの場合)、親局APのポーリング送信処理部413は対象の子局STAに対してポーリングを送信する(S507)。なお、対象の子局STAからデータフレームを受信している場合には、ACK送受信処理部410はACKを当該子局に送信する。
【0049】
続いて、S505と同様に、対象の子局STAのポーリング受信処理部416が親局AP301からポーリングを受信すると、子局STAのデータフレーム送受信処理部409が送信すべきデータを含むデータフレームを生成し、送信タイミング制御部414及び無線送受信処理部405が当該データフレームを親局AP301に送信する(S505)。送信すべきデータがさらにある場合には、ポーリング要求も併せて送信される。
そして、処理はS506に戻る。
【0050】
一方、ポーリングリストに対象の子局STAが登録されていないか、又は、ポーリング送信回数が規定回数より多い場合(S506でNoの場合)、親局AP301のEndフレーム送信処理部412は、対象の子局STAにEndを送信する(S509)。なお、対象の子局STAからデータフレームを受信している場合には、ACK送受信処理部410は併せてACKを当該子局に送信する。そして、処理はS501に移行する。
【0051】
<メディアアクセス制御のシーケンス例>
以下、メディアアクセス制御のシーケンス例について、ポーリング要求が衝突していない場合(図6)と衝突した場合(図7)に分けて説明する。
【0052】
(i)ポーリング要求の衝突がない場合
図6は、本発明の第1の実施形態に係るメディアアクセス制御(ポーリング要求の衝突がない場合)のシーケンス図である。
【0053】
(シーケンス601)
STA302aは、送信待機状態のデータフレームを有する場合、送信権を得るため、AP301にポーリング要求(Poll-req.)を送信する。このとき、CSMA/CAに従い、DIFS(DCF Inter Frame Space、分散制御用フレーム間隔)とバックオフ(Back off)時間の間、キャリアセンス(他の子局からの一定以上レベルの電波を検知すること)し、他の無線局からの送信を検出しなかった場合にポーリング要求を送信する。
【0054】
ポーリング要求を受信したAP301は、ポーリングリストにポーリング要求の送信局STA302aを追加し、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。STA302bは、例えば、STA302aからAP301へのポーリング要求を受信した場合、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。コンテンションフリー期間中の全てのSTA302は、自局宛のポーリングフレームやデータフレーム、もしくはEndフレームを受信するまでフレームを送信しない。コンテンションフリー期間に一定以上の時間が経過してもフレームを受信出来なかった場合、コンテンション期間に移行したと認識するようにしても良い。
【0055】
(シーケンス602)
AP301は、ポーリング要求受信からSIFS(Short Inter Frame Space、短フレーム間隔)後にポーリングリストの先頭に登録されたSTA302aへポーリングを送信し、ポーリングリストの先頭の登録を削除する。全てのSTA302は、AP301からのポーリングを受信した場合、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。
【0056】
(シーケンス603)
自局宛のポーリングを受信したSTA302aは、データフレームをAP301へ送信する。このとき、さらに送信待機状態のデータフレームを有する場合、ポーリング要求をデータフレームに付加して送信する。データフレームを受信したAP301は、データフレームの送信子局STA302aへのACKフレームを生成する。ポーリング要求受信したAP301は、ポーリングリストにポーリング要求の送信局STA302aを追加する。
【0057】
(シーケンス604)
AP301は、データフレーム受信からSIFS後にデータフレームの送信局STA302aにACKフレームを送信する。このとき、ポーリングリストの先頭に登録されたSTA302aへのポーリングをACKフレームに付加し、ポーリングリストの先頭の登録を削除する。自局宛のACKを受信した場合、STA302aは、ACKに対応するデータフレームを削除する。
【0058】
(シーケンス605)
ポーリングを受信したSTA302aは、データフレームをAP301へ送信する。このとき、さらに送信待機状態のデータフレームを有する場合、ポーリング要求をデータフレームに付加して送信しても良い。データフレームを受信したAP301は、データフレームの送信局STA302aへのACKフレームを生成する。ポーリング要求を受信したAP301は、ポーリングリストにポーリング要求の送信局STA302aを追加する。
【0059】
(シーケンス606)
AP301は、データフレーム受信からSIFS後にデータフレームの送信局STA302aにACKフレームを送信する。このとき、規定回数のポーリングを送信済みの場合、もしくは、ポーリングリストに登録が無い場合、EndをACKフレームに付加して送信する。ポーリングの送信回数の規定回数は、1回以上の整数値を設定可能とする。図6では、ポーリングの送信回数の規定回数が2回の場合が示されている。
【0060】
AP301は、Endフレームを送信後、ポーリング要求受付期間としてコンテンションフリー期間に移行する。AP301は、ポーリング要求受付期間を、STA302からのポーリング要求を受信するまでの期間とするか、STA302がポーリング要求を送信するために要する最大時間とするか、それらの一方を満たすまでの期間とするかのいずれかにしても良い。全てのSTA302は、AP301からのEndを受信した場合、コンテンション期間に移行したことを認識する。自局宛のACKを受信したSTA302aは、ACKに対応するデータフレームを削除する。
【0061】
(シーケンス607)
STA302bは、送信待機状態のデータフレームを有する場合、送信権を得るため、コンテンション期間中にAP301へポーリング要求を送信する。このとき、CSMA/CAに従い、DIFSとバックオフ時間の間、キャリアセンスし、他の無線局からの送信を検出しなかった場合にポーリング要求を送信する。ポーリング要求を受信したAP301は、ポーリングリストにポーリング要求の送信局STA302bを追加し、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。STA302aは、STA302bからAP301へのポーリング要求を受信した場合、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。
【0062】
(シーケンス608)
AP301は、ポーリング要求受信からSIFS後にポーリングリストの先頭に登録されたSTA302aへポーリングを送信し、ポーリングリストの先頭の登録を削除する。全てのSTA302は、AP301からのポーリングを受信した場合、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。
【0063】
(シーケンス609)
自局宛のポーリングを受信したSTA302aは、データフレームをAP301へ送信する。このとき、さらに送信待機状態のデータフレームを有する場合、ポーリング要求をデータフレームに付加して送信しても良い。データフレームを受信したAP301は、データフレームの送信子局STA302aへのACKフレームを生成する。ポーリング要求受信したAP301は、ポーリングリストにポーリング要求の送信子局STA302aを追加する。
【0064】
(シーケンス610)
AP301は、データフレーム受信からSIFS後にデータフレームの送信局STA302aにACKフレームを送信する。このとき、ポーリングリストの先頭に登録されたSTA302bへのポーリングをACKフレームに付加し、ポーリングリストの先頭の登録を削除する。自局宛のACKを受信したSTA302aは、ACKに対応するデータフレームを削除する。
【0065】
(シーケンス611)
ポーリングを受信したSTA302bは、データフレームをAP301へ送信する。このとき、さらに送信待機状態のデータフレームを有する場合、ポーリング要求をデータフレームに付加して送信しても良い。データフレームを受信したAP301は、データフレームの送信局STA302bへのACKフレームを生成する。ポーリング要求受信したAP301は、ポーリングリストにポーリング要求の送信局STA302bを追加する。
【0066】
(シーケンス612)
AP301は、データフレーム受信からSIFS後にデータフレームの送信局STA302bにACKフレームを送信する。このとき、規定回数のポーリングを送信済みの場合、もしくは、ポーリングリストに登録が無い場合、EndをACKフレームに付加して送信する。AP301は、Endフレームを送信後、ポーリング要求受付期間としてコンテンションフリー期間に移行する。全てのSTA302は、AP301からのEndを受信した場合、コンテンション期間に移行したことを認識する。自局宛のACKを受信したSTA302aは、ACKに対応するデータフレームを削除する。
【0067】
以上説明したように、子局は、送信待機状態のデータフレームを有する場合、コンテンション期間中にポーリング要求を親局に送信し、親局からのポーリングを受信し、送信権を取得したときにデータフレームを送信することで、データフレームの電波衝突を回避することができる。
【0068】
一方、親局は、子局からのポーリング要求受信時に、ポーリングリストにポーリング要求の送信局を登録し、規定回数のポーリングを送信するか、或いは、ポーリングリストに登録が無くなるまでポーリングリストの先頭に登録された子局へポーリングを送信する。このようにすることで、送信待機状態のデータを有する子局が少ない場合にも、データフレームに対して、ポーリング等の制御信号の送信割合を抑制可能であり、また、送信待機状態のデータフレームが無い子局へのポーリングを防止することが可能であり、送信待ちによる遅延時間を抑制することができる。
【0069】
さらに、親局は、規定回数のポーリングを送信したか、ポーリングリストに登録が無くなるまでポーリングを送信した後、Endフレームを送信し、ポーリング要求受付期間としてコンテンションフリー期間に移行する。このようにすることで、送信待機状態のデータフレームを有する複数の子局が通信に参加可能である。
【0070】
また、子局は、データフレームやACKフレームを送信する際、さらに送信待ち状態のデータフレームを有する場合、データフレームやACKフレームにポーリング要求を付加する。このようにすることで、ポーリング要求等の制御信号の送信割合を抑制可能であり、送信待ちによる遅延時間を抑制することができる。
【0071】
(ii)ポーリング要求が衝突した場合
図7は、本発明の第1の実施形態に係るメディアアクセス制御(ポーリング要求の衝突した場合)のシーケンス図である。
【0072】
(シーケンス701)
STA302aとSTA302bは、送信待機状態のデータフレームを有する場合、送信権を得るため、AP301にポーリング要求を送信する。このとき、CSMA/CAに従い、DIFSとバックオフ時間の間、キャリアセンスし、他の無線局からの送信を検出しなかった場合にポーリング要求を送信する。図7では、STA302aとSTA302bが、偶然同時にポーリング要求を送信した場合を示している。STA302aとSTA302bが、同時にポーリング要求を送信することで電波衝突が発生し、送信を失敗する。
【0073】
(シーケンス702)
ポーリング要求の送信に失敗したSTA302aとSTA302bは、再度CSMA/CAに従い、DIFSとバックオフ時間の間、キャリアセンスし、他の無線局からの送信を検出しなかった場合にポーリング要求を送信する。ここで、CW(Contention Window、乱数発生範囲)を再送毎に指数関数的に増加させても良い。
【0074】
図7では、STA302aの方がSTA302bより、バックオフスロット数が少なく設定され、ポーリング要求を送信した場合を示している。ポーリング要求を受信したAP301は、ポーリングリストにポーリング要求の送信局STA302aを追加し、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。STA302bは、STA302aからAP301へのポーリング要求を受信した場合、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。コンテンションフリー期間中の全てのSTA302は、自局宛のポーリングフレームやデータフレーム、もしくはEndフレームを受信するまでフレームを送信しない。コンテンションフリー期間に一定以上の時間が経過してもフレームを受信出来なかった場合、コンテンション期間に移行したと認識しても良い。
【0075】
(シーケンス703)
AP301は、ポーリング要求受信からSIFS後にポーリングリストの先頭に登録されたSTA302aへポーリングを送信し、ポーリングリストの先頭の登録を削除する。全てのSTA302は、AP301からのポーリングを受信した場合、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。
【0076】
(シーケンス704)
自局宛のポーリングを受信したSTA302aは、データフレームをAP301へ送信する。データフレームを受信したAP301は、データフレームの送信局STA302aへのACKフレームを生成する。なお、ここでは1回のみデータフレームを送信するシーケンスが示されているが、送信すべきデータフレームがさらにある場合には、図6の場合と同じように、STA302aは規定回数のデータフレーム送信を行うことができる。つまり、ポーリング要求が衝突する場合も、コンテンションフリー期間に入ったときの処理は図6と同様になる。
【0077】
(シーケンス705)
AP301は、データフレーム受信からSIFS後にデータフレームの送信局STA302aにACKフレームを送信する。このとき、ポーリングリストに登録が無い場合、EndをACKフレームに付加して送信する。AP301は、Endフレームを送信後、ポーリング要求受付期間としてコンテンションフリー期間に移行する。AP301は、ポーリング要求受付期間を、STA302からのポーリング要求を受信するまでの期間としても良い。
【0078】
全てのSTA302は、AP301からのEndを受信した場合、コンテンション期間に移行したことを認識する。自局宛のACKを受信したSTA302aは、ACKに対応するデータフレームを削除する。
【0079】
(シーケンス706)
STA302bは、送信待機状態のデータフレームを有する場合、送信権を得るため、コンテンション期間中にAP301へポーリング要求を送信する。このとき、CSMA/CAに従い、DIFSとバックオフ時間の間、キャリアセンスし、他の無線局からの送信を検出しなかった場合にポーリング要求を送信する。
【0080】
ポーリング要求を受信したAP301は、ポーリングリストにポーリング要求の送信局STA302bを追加し、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。
【0081】
STA302aは、STA302bからAP301へのポーリング要求を受信した場合、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。
【0082】
(シーケンス707)
AP301は、ポーリング要求受信からSIFS後にポーリングリストの先頭に登録されたSTA302bへポーリングを送信し、ポーリングリストの先頭の登録を削除する。全てのSTA302は、AP301からのポーリングを受信した場合、コンテンションフリー期間に移行したことを認識する。
【0083】
(シーケンス708)
自局宛のポーリングを受信したSTA302bは、データフレームをAP301へ送信する。データフレームを受信したAP301は、データフレームの送信局STA302bへのACKフレームを生成する。
【0084】
(シーケンス709)
AP301は、データフレーム受信からSIFS後にデータフレームの送信局STA302bにACKフレームを送信する。このとき、ポーリングリストに登録が無ければ、AP301は、EndをACKフレームに付加して送信する。
【0085】
AP301は、Endフレームを送信後、ポーリング要求受付期間としてコンテンションフリー期間に移行する。AP301は、ポーリング要求受付期間を、STA302からのポーリング要求を受信するまでの期間としても良い。
【0086】
全てのSTA302は、AP301からのEndを受信した場合、コンテンション期間に移行したことを認識する。自局宛のACKを受信したSTA302bは、ACKに対応するデータフレームを削除する。
【0087】
以上説明したように、子局は、ポーリング要求を送信後にポーリングを受信出来なかった場合、ポーリング要求を再送することで、ポーリング要求が電波衝突等により親局に受信されなかった場合にも、再度送信権を取得することができる。また、子局は、ポーリング要求の再送時にCW(Contention Window、乱数発生範囲)を増加させることで、ポーリング要求再送時の電波衝突確率を低減することができる。
【0088】
(2)第2の実施形態
図8を参照して、本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置の構成について説明する。図8は、本発明の第2の実施形態による、ポーリング回数制御部を有する無線通信装置の構成図である。
【0089】
図8の親局AP801は、図4の親局AP301の構成に加えて、通信制御部802にポーリング回数制御部803を有している。他の構成部の処理内容は、図4と同様である。従って、以下では、ポーリング回数制御部803の処理内容を中心に説明する。
【0090】
ポーリング回数制御部803は、通信状態に応じてポーリング回数を制御する。例えば、AP801に接続する子局数が少ない場合に、ポーリング回数を多くし、AP801に接続する子局数が多い場合に、ポーリング回数を少なくする。ここで、AP801に接続する子局数は、宛先管理部407に登録された子局数としても良い。
【0091】
また、例えば、AP801に接続する子局数に対するポーリングリストの登録割合が所定値よりも高い場合に、ポーリング回数を多くし、AP801に接続する子局数に対するポーリングリストの登録割合が上記所定値以下の場合に、ポーリング回数を少なくするようにしても良い。ここで、AP801に接続する子局数は、宛先管理部407に登録された子局数とし、ポーリングリストの登録数は、ポーリングリスト管理部に登録された子局数としても良い。
【0092】
さらに、例えば、AP801が使用する通信周波数の使用率が所定値より低い場合に、ポーリング回数を多くし、AP801が使用する通信周波数の使用率が上記所定値以上の場合に、ポーリング回数を少なくするようにしても良い。ここで、AP801が使用する通信周波数の使用率は、AP801が送信している時間と受信している時間から導出しても良い。
【0093】
また、例えば、STA302が送信するポーリング要求の衝突確率が所定値より低い場合にポーリング回数を多くし、ポーリング要求の衝突確率が上記所定値以上の場合に、ポーリング回数を少なくするようにしても良い。なお、STA302が送信するポーリング要求の衝突確率は、STA302におけるポーリング要求の再送割合とし、再送割合をAP801に送信することで制御しても良い。
【0094】
以上説明した実施形態によれば、通信状態に応じてポーリング回数を制御することでデータフレームに対して、ポーリング等の制御信号の送信割合を抑制可能であり、送信待ちによる遅延時間をさらに抑制することができる。
【0095】
(3)第3の実施形態
図9を参照して、本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置の内部構成について説明する。図9は、本発明の第3の実施形態による、アクセス制御切替制御部を有する無線通信装置の内部構成を示す図である。
【0096】
図9の子局STA901は、図4のSTA302の構成に加えて、通信制御部902にアクセス制御切替制御部903を有している。当該構成の追加により、データフレーム送受信処理部409と、ポーリング要求送信処理部418の処理内容が異なってくる。他の構成部の処理内容は、図4と同様である。従って、以下では、アクセス制御切替制御部903、データフレーム送受信処理部409、及びポーリング要求送信処理部418の処理内容を中心に説明する。
【0097】
アクセス制御切替制御部903は、通信状態に応じてメディアアクセス制御方法切り替える動作を実行する。例えば、AP301に接続する子局数が所定数より多い場合には図4から図8によるメディアアクセス制御方法(改良型アクセス制御方法)を利用し、AP301に接続する子局数が所定数以下の場合にはCSMA/CAを利用する。ここで、STA901においてAP301に接続する子局数を把握する方法は、AP301がビーコン等によりAP301に接続する子局数を通知し、STA901が子局数の通知を受信することでAP301に接続する子局数を把握するか、AP301が送信するポーリングやACKを収集し、送信先数をAP301に接続する子局数として把握するかしても良い。
【0098】
例えば、1台の親局APに接続する2台以上の子局STA間で隠れ端末が存在する場合に、図4から図8によるメディアアクセス制御方法(改良型アクセス制御方法)を利用し、隠れ端末が存在しない場合に、CSMA/CAを利用する。ここで隠れ端末とは、例えば子局間に電波遮蔽壁が設けられている場合等、電波の到達範囲外にある無線局のことであり、互いの電波を検出できず、電波衝突の要因となる。
【0099】
STA901において隠れ端末の有無を認識する方法は、AP301が送信するポーリングやACKを収集し、ポーリングやACKの送信先数をAP301に接続する子局数として把握したり、STA901がAP301宛のデータフレームを収集して送信元数を電波が到達する範囲の子局数として把握したり、AP301に接続する子局数に対して電波が到達する範囲の子局数が少なければ隠れ端末が存在すると認識したりしても良い。例えば、AP301が使用する通信周波数の使用率が所定値よりも高い場合には、図4から図8によるメディアアクセス制御方法(改良型アクセス制御方法)を利用し、AP301が使用する通信周波数の使用率が上記所定値以下の場合にはCSMA/CAを利用する。ここで、AP301が使用する通信周波数の使用率は、AP301が送信している時間と受信している時間から導出し、AP301が該導出した通信周波数の使用率を通知し、STA901が該通知を受信することでAP301が使用する通信周波数の使用率を把握しても良い。
【0100】
第3の実施形態において、アクセス制御切替制御部903によって図4から図7によるメディアアクセス制御方法が選択されている場合、STA901のデータフレーム送受信処理部409は、外部インターフェース403からデータを転送されたとき、宛先管理部407において転送されたデータをどこに送信するか確認し、データフレームを生成する。また、このとき、ポーリング要求送信処理部418がポーリング要求フレームを生成し、送信タイミング制御部414が所定の送信タイミングでポーリング要求フレームを無線送受信処理部405へ転送する。
【0101】
また、アクセス制御切替制御部903によってCSMA/CAが選択されている場合には、外部インターフェース403からデータを転送されたとき、宛先管理部407が転送されたデータをどこに送信するか確認し、データフレーム送受信処理部409がデータフレームを生成する。そして、送信タイミング制御部414が所定の送信タイミングでデータフレームを無線送受信処理部405へ転送する。なお、データフレームは、送信失敗時に再送するため、ACKを受信するか、所定回数再送するまでデータフレーム送受信処理部409で保持する。データフレームを送信後、一定の時間が経過してもACKを受信出来なかった場合、データフレームを再送する。
【0102】
以上説明した第3の実施形態によれば、メディアアクセス制御方法切り替えることで、電波衝突の発生確率を抑えつつ、データフレームに対して、ポーリング等の制御信号の送信割合を抑制可能であり、送信待ちによる遅延時間をさらに抑制することができる。
【0103】
また、親局と子局間で通信する無線通信システムにおいて、遅延時間を短くする効果があり、既定時間内にデータを伝送することが求められる無線通信システムに適用すると特に効果的であり、その工業的価値は、大である。
【0104】
(4)まとめ
本発明は、既定時間内にデータを伝送することが求められる無線通信システムに広く適用することができる。
【0105】
本発明では、親局は、1つの子局からポーリング要求を受信したときに、当該子局を処理対象の子局としてポーリングリストに登録し、規定回数のポーリングを対象子局に送信した後、或いは、対象子局の登録がポーリングリストから無くなるまでポーリングを対象子局に送信した後、通信状態をコンテンション期間に移行させる(改良型アクセス制御)。このようにすることにより、最初に通信が確立された子局と親局との通信が無限に続くことが防止され、別の子局の送信を保証することができるようになり、遅延時間を短くすることができる。また、親局も全ての子局に対して無駄なポーリング送信を実行する必要がなくなり、通信リソースを効率よく使用することができるようになる。
【0106】
また、親局は、コンテンション期間中に対象子局とは異なる1つ以上の子局からポーリング要求を受信し、かつ、対象子局からのポーリング要求がある場合、対象子局及び対象子局とは異なる子局へのポーリング送信を順番に実行する。2つの子局からのポーリング要求がある場合には、交互にポーリング送信が実行される。このようにすることにより、1つの子局による通信チャンネルの独占を防止することができ、平等な各子局への通信を保証することができる。
【0107】
複数の子局からの複数のポーリング要求が衝突した場合、ポーリング要求の再送処理を実施する。一方、親局は、ポーリング要求を再送した子局を対象子局としてポーリングリストに登録する。このようにすることで、ポーリング要求が衝突する場合でも効率よく処理することができる。また、最初に送信権を取得した子局は規定回数のみ優先的通信が保証され、それ以降は他の子局とは順番に通信が処理されるため、1つの子局による通信チャンネル独占という事態を回避でき、各子局への通信を平等に実行でき、かつ遅延時間も短くすることができる。
【0108】
子局は、送信すべきデータに次のポーリング要求を付加して親局に送信する。親局では、対象子局から送信されてきたデータを処理すると共に、次のポーリング要求に応答してポーリング送信を実行する。このようにすることにより、データフレームに対して、ポーリング等の制御信号の送信割合を抑制可能であり、送信待ちによる遅延時間を抑制することができる。
【0109】
親局は、子局の台数、及び/又はポーリングリストにおける子局の登録割合、或いは、親局が使用する通信周波数の使用率に基づいて、ポーリング送信の回数を適応的に制御する。このようにすることにより、通信環境に応じてデータフレームに対するポーリング等の制御信号の送信割合を抑制可能であり、送信待ちによる遅延時間を抑制することが可能となる。
【0110】
また、複数の子局においてお互いに存在を検知できない隠れ端末が存在するか否か判断し、隠れ端末の存在の有無に基づいて、改良型アクセス制御及びCSMA/CAによるアクセス制御を切り換えて実行する。このようにすることにより、隠れ端末が存在するような通信環境であっても効率よく親局−子局間通信を実行することができるようになる。
【0111】
さらに、親局は、子局の台数や親局が使用する通信周波数の使用率に基づいて、改良型アクセス制御とCSMA/CAによるアクセス制御を切り換えながら実行するようにしても良い。
【0112】
なお、本発明は、実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0113】
また、実施形態で示された各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、上記各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現しても良い。各機能等を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録或いは記憶装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録或いは記憶媒体に格納することができる。
【0114】
さらに、上述の実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0115】
101、201、301、801:親局
102、202、302、901:子局
303:バックボーンネットワーク
304:データの伝送を必要とするデバイス
403:外部インターフェース
404、802、902:通信制御部
405:無線送受信処理部
406:アンテナ
407:宛先管理部
408:ポーリングリスト格納部
409:データフレーム送受信処理部
410:ACK送受信処理部
411:ポーリング要求受信処理部
412:Endフレーム送信処理部
413:ポーリング送信処理部
414:送信タイミング制御部
415:受信フレーム解析部
416:ポーリング受信処理部
417:Endフレーム受信処理部
418:ポーリング要求送信処理部
803:ポーリング回数制御部
903:アクセス制御切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台の親局無線通信装置と、複数の子局無線通信装置とを含む無線通信システムであって、
前記複数の子局無線通信装置のそれぞれは、子局通信制御部と、データ送受信に必要な処理を実行する子局無線送受信処理部と、を有し、
前記子局通信制御部は、前記子局無線送受信処理部を介してポーリング要求を前記親局無線通信装置に送信し、前記ポーリング要求に対応するポーリングを前記親局無線通信装置から受信したときに前記子局無線送受信処理部を介してデータフレームを前記親局無線通信装置に送信し、
前記親局無線通信装置は、ポーリングリストを用いて通信を制御する親局通信制御部と、親局無線送受信処理部と、を有し、
前記親局通信制御部は、(i)1つの子局無線通信装置から前記ポーリング要求を受信したときに、当該子局無線通信装置を対象子局無線通信装置として前記ポーリングリストに登録し、(ii)規定回数のポーリングを前記対象子局無線通信装置に送信した後、或いは、前記対象子局無線通信装置の登録が前記ポーリングリストから無くなるまで前記ポーリングを前記対象子局無線通信装置に送信した後、通信状態をコンテンション期間に移行させる改良型アクセス制御を実行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1の無線通信システムにおいて、
前記親局通信制御部は、前記コンテンション期間中に前記対象子局無線通信装置とは異なる1つ以上の子局無線通信装置からポーリング要求を受信し、かつ、前記対象子局無線通信装置からのポーリング要求がある場合、前記対象子局無線通信装置及び前記1つ以上の子局無線通信装置へのポーリング送信を順番に実行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項1の無線通信システムにおいて、
前記複数の子局無線通信装置からの複数のポーリング要求が衝突した場合、
前記子局無線通信装置の子局通信制御部は、前記子局無線送受信処理部を介して、ポーリング要求を前記親局無線通信装置に再送し、
前記親局通信制御部は、
前記ポーリング要求を再送した子局無線通信装置を対象子局無線通信装置として前記ポーリングリストに登録することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1の無線通信システムにおいて、
前記子局通信制御部は、送信すべきデータに新しいポーリング要求を付加し、前記子局無線送受信処理部を介して前記親局無線通信装置に送信し、
前記親局通信制御部は、前記対象子局無線通信装置から送信されてきたデータを処理すると共に、前記新しいポーリング要求に応答してポーリング送信を実行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
請求項1の無線通信システムにおいて、
前記親局通信制御部は、前記親局無線通信装置と通信する前記子局無線通信装置の台数に基づいて、前記ポーリング送信の回数を適応的に制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
請求項1の無線通信システムにおいて、
前記親局通信制御部は、前記親局無線通信装置と通信する前記子局無線通信装置の台数と前記ポーリングリストにおける前記子局無線通信装置の登録割合に基づいて、前記ポーリング送信の回数を適応的に制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
請求項1の無線通信システムにおいて、
前記親局通信制御部は、前記親局無線通信装置が使用する通信周波数の使用率に基づいて、前記ポーリグ送信の回数を適応的に制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
請求項1の無線通信システムにおいて、
前記親局通信制御部は、
前記複数の子局無線通信装置においてお互いに存在を検知できない隠れ端末が存在するか否か判断し、
前記隠れ端末が存在する場合には、前記改良型アクセス制御を実行し、
前記隠れ端末が存在しない場合には、CSMA/CAによるアクセス制御を実行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
請求項1の無線通信システムにおいて、
前記親局通信制御部は、前記親局無線通信装置と通信する前記子局無線通信装置の台数に基づいて、前記改良型アクセス制御とCSMA/CAによるアクセス制御を切り換えながら実行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
請求項1の無線通信システムにおいて、
前記親局通信制御部は、前記親局無線通信装置が使用する通信周波数の使用率に基づいて、前記改良型アクセス制御とCSMA/CAによるアクセス制御を切り換えながら実行することを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
複数の子局無線通信装置と通信する親局無線通信装置であって、
ポーリングリストを用いて通信を制御する親局通信制御部と、
データ送受信に必要な処理をする親局無線送受信処理部と、を有し、
前記親局通信制御部は、
1つの子局無線通信装置からポーリング要求を受信したときに、当該子局無線通信装置を対象子局無線通信装置として前記ポーリングリストに登録し、
規定回数のポーリングを前記対象子局無線通信装置に送信した後、或いは、前記対象子局無線通信装置の登録が前記ポーリングリストから無くなるまで前記ポーリングを前記対象子局無線通信装置に送信した後、通信状態をコンテンション期間に移行させることを特徴とする親局無線通信装置。
【請求項12】
少なくとも1台の親局無線通信装置と通信する子局無線通信装置であって、
子局通信制御部と、
データ送受信に必要な処理をする子局無線送受信処理部と、を有し、
前記子局通信制御部は、ポーリング要求を、前記子局無線送受信処理部を介して前記親局無線通信装置に送信し、前記ポーリング要求に対応するポーリングを、前記子局無線送受信処理部を介して前記親局無線通信装置から受信したときにデータフレームを送信し、
前記子局通信制御部は、前記子局無線送受信処理部を介して前記データフレームを送信する際に、前記データフレームに次のデータフレーム送信のためのポーリング要求を付加して前記親局無線通信装置に送信することを特徴とする子局無線通信装置。
【請求項13】
少なくとも1台の親局無線通信装置と、複数の子局無線通信装置とを含む無線通信システムにおける通信方法であって、
前記複数の子局無線通信装置のそれぞれは、子局通信制御部と、データ送受信に必要な処理を実行する子局無線送受信処理部と、を有し、
前記親局無線通信装置は、ポーリングリストを用いて通信を制御する親局通信制御部と、親局無線送受信処理部と、を有し、
前記子局通信制御部が、前記子局無線送受信処理部を介してポーリング要求を前記親局無線通信装置に送信し、前記ポーリング要求に対応するポーリングを前記親局無線通信装置から受信したときに前記子局無線送受信処理部を介してデータフレームを前記親局無線通信装置に送信し、
前記親局通信制御部が、
1つの子局無線通信装置から前記ポーリング要求を受信したときに、当該子局無線通信装置を対象子局無線通信装置として前記ポーリングリストに登録し、
規定回数のポーリングを前記対象子局無線通信装置に送信した後、或いは、前記対象子局無線通信装置の登録が前記ポーリングリストから無くなるまで前記ポーリングを前記対象子局無線通信装置に送信した後、通信状態をコンテンション期間に移行させることを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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