説明

無線通信システムならびにその運用方法。

【課題】
サイトサーベイの工数とコストを抑え、適切なタイミングでのエリアオプティマイゼーションを実施することで無線通信サービスの品質を維持出来る無線通信システム及び無線基地局ならびにそれらの運用方法を提供する。
【解決手段】
複数の無線基地局と保守装置とからなる無線通信システムの無線基地局に、アンテナから電波を放射して形成したエリアにある無線端末との通信を実施する通信手段と、無線基地局周辺の環境を撮影する撮像手段とを備え、保守装置に無線基地局が形成したエリアの運用状態を監視する手段と撮像手段を制御する手段と、撮像手段が撮影した画像データを解析する解析手段と、解析結果で基地局の通信手段を制御する手段とからなる制御部を備え、エリアの運用状態に応じて撮像手段が撮影した画像データに基づきエリアの運用状態を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムの構成、ならびにその運用方法に係り、無線通信システム内での電波状況の変化検出と、該変化への対応を容易に実施できる無線通信システム及び無線基地局の構成と運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等による無線通信が普及し、更に高速データ通信の需要も高まりつつある。無線通信システムは、これらの需要に応える為、年々高性能化して音声を扱うシステムやデータを扱うシステム、あるいは、それらを混合したシステム等、様々なシステムを多数導入(マルチシステム化)する形態となる。マルチシステム化が進むと、ユーザの利用状況は、屋内/屋外、高速/低速移動など多様になっていき、それらの保守運用も複雑化する。このような環境下では、無線基地局及び無線通信システムを設置して無線通信サービスを提供(運用)する通信キャリアは、いかに効率的にユーザの無線通信環境を把握して適切なサービス品質を提供するかが要求される。
【0003】
ユーザに提供する無線通信サービスの品質を考える上で、無線基地局が送信する電波で形成される無線サービスエリア内におけるユーザ端末の電波受信状況を如何に良好に保つかが重要である。無線サービスエリア内での電波状況に変化を与える要因としては、システムの故障を除くと、電波伝搬環境の変化が挙げられる。具体的には、電波伝搬に大きく影響を与えるビル等巨大な建物の建設/取り壊し、樹木等の季節変化による状態変化、あるいは無線通信アンテナ付近に何らかの遮蔽物が出現した場合などが挙げられる。
【0004】
通信キャリアは、電波伝搬環境の変化を確認するため、無線サービスエリア内の地勢・建物状況を確認すべく現地へ直接赴きサイトサーベイ(現地調査)を行い、この調査結果に基づき無線サービスエリアで良好に無線通信が行えるよう無線基地局側の電波送信条件の最適化を実施している。(エリアオプティマイゼーションと称し、基地局の設置/増設やアンテナの方向調整(電波の放射範囲や強度の調整)等を実施する)。具体的には、無線サービスエリア内を車両等で満遍なく移動しながら電波測定を実施し、その測定結果を過去の同じ測定結果と比較・分析することで、電波伝搬環境の変化を検出するといった運用が行われる。また、カメラ等を利用した運用も考えられている。具体的には、対向無線機のアンテナを撮影しモニタに映してその映像を見ながらアンテナ方向を調整し、当該対向無線機との通信を良好とする工夫(特許文献1)や、無線通信システムではないが、環境変化をカメラの撮影データから検出する工夫(特許文献2)等が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−72780
【特許文献2】特開平7−2806967
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線通信システムにおいて、サービスの品質を維持して運用する為に、無線サービスエリアの電波伝搬環境を把握して調整することが重要である。このため、通信キャリアは、エリアオプティマイゼーションを定期的に実施して無線通信サービスの品質を維持している。このエリアオプティマイゼーションをいかに効率的に実施できるか否かが、サービス提供の品質やコストに影響してくる。
【0007】
電波伝搬環境を把握するサイトサーベイは、保守者が現地に赴き必要な測定や機器の調整を行うのが基本動作であり、対象となる無線サービスエリアの規模の増加に応じて多大な工数とコストが発生する。このため、サイトサーベイとエリアオプティマイゼーションを頻繁に行うと無線通信システムの運用コストが高くなりユーザの通信料に影響してくる。尚、無線通信サービス運用中に不具合が生じた場合にも、原因が電波伝搬環境の変化によるものか、あるいは、他の事象によるものかの特定が必要となり、不具合の原因特定がシステム内の解析だけで判別できない場合、サイトサーベイを行うに至る。この場合も現地調査が必要になり工数とコストがかかる。
【0008】
サイトサーベイの工数とコストを抑え、適切なタイミングでのエリアオプティマイゼーションを実施することで無線通信サービスの品質を維持出来るシステム、具体的には、無線通信システム及び無線基地局ならびにそれらの運用方法を提供することが本発明の目的である。
【0009】
サイトサーベイの工数・費用の低減を図るアイデアとして、無線基地局のアンテナ付近に撮像手段を具備してアンテナ指向方向等周辺の環境を撮像し、その撮像データをシステムの管理部に送付する構成が挙げられる。そして、管理部からそのデータに基づきエリアオプティマイゼーションに必要な操作や制御を指示出来れば良い。しかし、対象となる無線サービスエリアの規模の増加に応じて、撮像データは、少なくとも局およびアンテナ数だけ生成された膨大な量となり、結果(撮像データの変化等)を確認したり、結果に基づくエリアオプティマイゼーションに必要な操作や制御を指示したりをオペレータが実行することは実質不可能である。また、電波伝搬環境は時々刻々変化するものであるが、サイトサーベイの観点で言えば、全事象を検出して報告することは必要が無い。一例を挙げれば、高速で移動する車等移動体の存在に伴う一時的な高速フェージングによる伝播環境の悪化は直ぐに回復する現象であり、エリアオプティマイゼーションの対象でない。一方、先に説明した地局周辺における建築物設置等は、電波伝搬環境を長時間に渡り変えてしまうのでエリアオプティマイゼーションの対象としなければならない。すなわち、サイトサーベイで得られた事象に、平均化等のなんらかの統計処理でエリアオプティマイゼーションに適当なデータ処理を行うことが求められる。そして、その処理データに基づき基地局設備の調整・制御信号を生成して実行するシステムオプティマイゼーション動作の実現も求められる。
【0010】
しかし、上述の特許文献では、カメラで相手無線機を捕捉してその向きにアンテナを向けるものであったり、正常時の撮像データと監視時の撮像データの比較を行い警報装置を作動させる技術だけのもので、無線通信システムの使用状況や電波伝搬の状況に応じて、無線基地局に搭載されたカメラによる撮影対象を指示することや、当該撮影した撮像データに基づいて無線基地局の電波強度や電波の放射方向の調整することについては言及されていない。
【0011】
該環境下で起こりうる要因を特定し、これに基づく電波伝搬環境の監視項目や方法を指示して撮像データを集めて該データの変化を検出し、この変化に基づき基地局設備の調整・制御信号を生成してフィードバックすることでエリアオプティマイゼーションを実行する無線基地局及び無線通信システムと、それらの運用方法を提供するのが本発明の目的である。より具体的には、無線通信システム運用開始後のシステム運用の状況と電波伝搬環境の状況に応じ、無線基地局に搭載された撮像手段に撮影方向の指定を行い撮影動作を行わせ、撮影した撮像データにより電波伝搬環境の変化を把握して無線基地局の設置及び電波放射の制御にフィードバックさせることができる無線通信システム及び無線基地局ならびにそれらの運用方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、無線通信システムを、時々刻々変化する電波伝搬環境下で起こりうる変動要因を検出する電波伝搬環境の監視項目や方法を登録して要因を検出し、検出結果に基づき電波伝搬環境の画像データを集めて該データの変化を検出し、この変化に基づき基地局設備の調整・制御信号を生成してフィードバックすることでエリアオプティマイゼーションを実行する構成とした。具体的には、無線通信システムの無線基地局に電波伝搬環境の画像データを集める撮像手段と、該撮像手段とアンテナの電波放射角度や強度を変更する制御手段を備え、無線基地局を管理する装置が監視項目の指定や無線基地局の制御手段の制御を行う構成とし、無線基地局から集めた情報に基づき基地局を制御して電波伝搬環境を維持するようにした。また、無線通信システム運用開始後のシステム運用の状況と電波伝搬環境の状況に応じ、無線基地局に搭載された撮像手段に撮影方向の指定を行い撮影動作を行わせ、撮影した撮像データにより電波伝搬環境の変化を把握して無線基地局の設置及び電波放射の制御にフィードバックさせるようにした。
【0013】
より具体的には、複数の無線基地局と無線基地局の保守運用を行う保守装置とからなる無線通信システムの無線基地局の夫々に、アンテナから電波を放射して形成したエリアにある無線端末との通信を実施する通信手段と、無線基地局周辺の環境を撮影する撮像手段とを備え、保守装置に無線基地局が形成したエリアの運用状態を監視する手段と撮像手段を制御する手段と、撮像手段が撮影した画像データを解析する解析手段と、解析結果で基地局の通信手段を制御する手段とからなる制御部を備え、保守装置の制御部がエリアの運用状態に応じて撮像手段を制御し、撮像手段から受信した画像データに基づきと通信手段を制御してエリアの運用状態を制御する無線通信システムとした。
【0014】
また、複数の無線基地局と無線基地局の保守運用を行う保守装置とから構成される無線通信システムの無線基地局は、周辺の画像を撮影する撮像手段と、保守装置から無線基地局の運用状況に対応した撮影指示を受信すると撮像手段による撮像を行わせる撮像起動手段と、像手段が撮影した撮像データを保守装置に送信する撮像データ送信手段と、保守装置から撮像データに対応した無線基地局のアンテナの電波放射方向若しくは電波出力強度の変更指示を受信するとアンテナからの電波放射方向若しくは電波出力強度を変更する電波放射制御手段とを備える構成とした。
【0015】
更に、複数の無線基地局と無線基地局の保守運用を行う保守装置とからなる無線通信システムの運用方法は、無線基地局のアンテナから電波を放射して形成したエリアの運用状況を監視する第1のパラメータと基地局周辺の画像を撮影・確認するための第2のパラメータが設定されると、第1のパラメータに基づき任意基地局を含む無線通信システムの運用状況を監視し、運用状況の変化を検出すると該変化に応じて前記第2のパラメータに基づき基地局周辺の画像を撮影して、撮影した画像と第2のパラメータに基づき基地局もしくは基地局周辺の状況変化を検出すると該変化に応じて無線基地局のアンテナから放射する電波の放射角度もしくは放射強度を変更する運用方法とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無線通信システム運用開始後に定期的に無線サービスエリア内の電波伝搬環境(システムパフォーマンス状態)を把握し、当該システムパフォーマンス状態に応じた現況の撮影を無線基地局に行わせ、その撮影した画像データを遠隔地の保守装置等で確認したり、データに基づき基地局設備の調整を行うことができる。すなわち、通信事業者のシステム管理者は、対象となる無線サービスエリアに赴く必要はなく現況の確認と修正とが可能となる。
【0017】
また、撮影した画像データの状態に応じて、対象となる無線基地局の電波放射制御をシステム管理者の指示を仰がずに自律的に行える(システムオプティマイゼーション)ようしたため、システム管理者の負担が軽減されるとともに、定期サイトサーベイの処理間隔の延長に寄与し、費用・工数の増加が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】無線通信システムの構成例を示すシステム構成図である。
【図2】無線基地局(BS)の構成例を示すブロック図である。
【図3】無線基地局制御局(MSC)の構成例を示すブロック図である。
【図4】保守装置(OMC)の構成例を示すブロック図である。
【図5】無線通信システムの運用動作例を示すフロー図である。
【図6】無線通信システムの動作例を示すフロー図である。
【図7】無線通信システムの詳細動作例(1)を示すフロー図である。
【図8】無線通信システムの詳細動作例(2)を示すフロー図である。
【図9】無線通信システムの詳細動作例を示すシーケンス図である。
【図10】無線通信システムが撮影する画像データの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の無線システム及び無線基地局の構成例と、それらの運用方法の動作例を詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の無線通信システムの構成例を示すシステム構成図である。
【0021】
無線通信システム1は、夫々がカメラ等の撮像手段206a〜206cを搭載する複数の無線基地局(以下BSという)201a〜201cと、これら複数のBS201と接続されBS201の制御や上位網(例えば、公衆網205)等他の網や装置との接続を制御する基地局制御装置(以下MSCという)202と、無線通信システム1の管理や保守を行うための保守装置(以下OMCという)203)とOMCで用いる保守サーバであるOMCサーバ204とで構成されたシステムである。各BS201は、後述する運用動作により無線端末(以下、ATと称す。図示せず。)と無線で通信する為の電波の放射範囲や強さがOMC203から制御され、ATと通信をして各種サービスを提供できる範囲である無線サービスエリア200a〜200cを形成する。このサービスエリア200の中にいるATが、BS201とMSC202を介して無線システム1内の他のATと通信したり、IPネットワーク等の公衆網205と接続された端末(図示せず)と通信する構成である。
【0022】
本発明の無線通信システム1は、各BS201にカメラ等の撮像手段206を備え、詳細を後述する各装置の構成と運用動作によって、(1)運用中のサービスエリア200内の動作状況と電波伝搬状況を監視して、(2)状況の変化を検出すると撮像手段206によりサービスエリア200内の状態を撮影し、(3)撮像手段206が撮影したデータに基づきOMC203で状況変化の内容を解析すると、(4)解析結果に基づき対象BS201のアンテナの向きや電波の強さを変えてサービスエリア200の状態を制御することで各ATが求める通信品質でのサービスを維持しながら提供するものである。
【0023】
図2は、本発明の無線通信システムで用いる無線基地局(BS)の構成例を示すブロック構成図で、カメラを含む撮像手段を備えたBSの構成例を示したものである。
【0024】
BS201は、ATとの通信機能の他に、本発明に基づくOMC203の指示に従いBS周辺の環境状態を撮像するカメラ20150やカメラ20150の撮影方向調整機能とを備えた撮像手段206と、該撮像手段206を動作させるためのBS201周辺の運用状況(以下、システムパフォーマンス情報と称す)を収集管理する機能を有する。詳細な構成と動作は後述するが、システムパフォーマンス情報の一例としては、BS201が形成するサービスエリア200内のATの数や電波強度等が用いられる構成とした。
【0025】
無線送受信部20110は、アンテナ20100を介してATと通信を行う無線インタフェースで変復調機能を有する。無線送受信部20110で扱う情報は、バッファ20111を介して無線通信部20120の主信号処理部20121及び通信制御信号処理部20122で処理され、IF部20130を介してMSC202と送受信される。システムパフォーマンス情報制御部20140は、無線通信システム1でサービス品質を維持するための情報であるシステムパフォーマンス情報(接続しているATの情報、ATのアクセス数を含む通信トラヒック情報、電波放射角情報、電波強度情報等)を処理(収集・配布)をOMC203からの指示に基づき実施する。(途中のMSC202は、これらの情報を中継するだけである)。また、アンテナ制御部20112は、OMC203からの指示に基づき、無線通信アンテナから放射される電波の出力制御、電波放射角制御及び、前記システムパフォーマンス情報制御部20140に対しての電波放射角情報、電波強度情報の提供を行うものである。尚、上述した各部は、図2の破線で囲った部分をプロセッサとメモリ20150に格納したソフトウェアで実現する。尚、この部分を専用のLSI等からなるハードウェアで実現しても良い。
【0026】
BS201が備える撮像手段206は、カメラ20150と撮像制御部20170とで構成される。撮像制御部20170は、OMC203よりの撮影指示に基づき、撮像を実施し撮影データの処理を行う。具体的には、OMC203からBS201に送信された撮影指示は、IF部20130を介して撮像制御部20171に送られる。撮像制御部20171は、撮影方位制御部20173を起動してカメラ20150の撮影方向を決定して撮影を行わせる。撮影された画像データは、一旦画像用メモリ20174に送られ保存される。メモリ20174に画像データが送られたことを撮像制御部20171が確認すると、撮像データ処理部20172がメモリ20174で保持していた画像データを読み出し、IF部20130を介してOMC203に送信する。更に、撮像データ処理部20172で、必要に応じて撮影した画像データが、後述する画像相関処理を行うに十分な画質を有しているか確認して必要な補正を行う構成としても良い。尚、上述した各部は、図2の破線で囲った部分をプロセッサとメモリ20150に格納したソフトウェアで実現する。このプロセッサは、上述したプロセッサと同じものでも構わない。また、この部分も専用のLSI等からなるハードウェアで実現しても良い。
【0027】
図3は、本発明の無線通信システムで用いる基地局制御装置(MSC)の構成例を示すブロック構成図である。
【0028】
MSC202は、BS201とのコネクション制御やBS間切り替え制御(ハンドオフ制御)、接続されるBSに対するトラフィックデータおよび基地局制御情報のブロードキャスト機能を有するもので、OMC203および公衆網205とのインタフェースをとるIF部20220、送受信するデータを一時的に蓄えるためのバッファ20240、MSC202と複数のBS201間のルーティングを行うセレクタ20230、各BS201とのインタフェースを取るIF部20210、MSC202自体の制御を行う制御部20250、制御データや動作ソフトウェアを格納するメモリ20260とで構成した。MSC202は、IF部20220を介してOMC203から撮影指示等を受信する。この撮影指示は、バッファ20240とメモリ20260に送られる。制御部20250に備えたセレクタ制御部20251は、メモリ20260を参照して撮影指示情報に含まれる撮像指示対象のBS201に関する情報を読み取ると、撮像指示対象BS201へ撮像条件情報をルーティングすべくセレクタ20230にルーティング指示を出す。一方、撮像指示対象BS201が、撮像条件に該当するBS全てである場合は、ブロードキャスト制御部20252が撮像指示を複数のBS201に送るべく、必要なルーティング指示をセレクタ20230に対して行う構成とした。セレクタ制御部20251またはブロードキャスト制御部20252のいずれかからルーティング指示を受けたセレクタ20230は、バッファ20240が保持していた撮影指示情報をIF部20210を介して各BS201に送信する。また、各BS201で撮影された画像データは、逆の手順によりOMC203に転送される構成である。
【0029】
図4は、本発明の無線通信システムで用いる保守装置(OMC)の構成例を示すブロック構成図である。
【0030】
OMC203は、システム管理者(通信キャリアのオペレータ)による操作を可能とするための入力装置20318と表示装置20317を備え、BS201への撮影指示機能及び撮影された画像データの確認機能、確認結果に応じたBS201への電波放射制御指示機能、各BS201からのシステムパフォーマンス情報の収集及び監視機能、画像データおよびシステムパフォーマンス情報の保存機能を有するもので、公衆網205およびMSC202とのインタフェースをとるIF部20310、IF部20340を介してOMCサーバ204と送受信するデータを一時的に蓄えるバッファ20330、BS201から送信されてきた画像データおよびシステムパフォーマンス情報を受信し、また複数のBS201の各々に対しての撮影指示や基地局制御情報(電波放射制御指示等の基地局を調整するための情報)を送信する送受信部20320、受信した画像データを一時保持するメモリ20380を備える。更に、BS201への撮影指示及び、撮影した画像と予め保存された画像や以前に撮影した画像との比較を行う撮像制御部20364、画像データの比較結果に応じたアラームを生成するアラーム生成部20363、画像データの比較結果に応じて、基地局側の電波放射条件を変更するようBS201への制御指示を生成する基地局制御情報生成部20361、アラーム生成と連動しアラームを表示装置20317上で表示させるための制御を行う表示制御部20362、BS201から受信したシステムパフォーマンス情報が予めシステム管理者によって設定された条件と合致するか否かを確認するとともに、所定の条件で撮影制御部20364に撮影指示を送出するシステムパフォーマンス監視部20365とからなる制御部20360を備える。BS201から受信した画像データおよびシステムパフォーマンス情報等は、保存を目的としてIF部20340からOMCサーバ204へ出力される。入力装置20318は、オペレータが撮影条件、初期画像データおよびシステムパフォーマンス情報(閾値情報含む)をシステムに設定するのに使用する、また、前述のアラームのほかに、システム管理者が設定登録した撮影条件、初期画像データおよびシステムパフォーマンス情報(閾値情報含む)が設定内容確認のために表示装置20317に表示される。尚、DB20390は、システム管理者が画像データと地理的撮像位置を組み合わせ把握する目的で、表示装置20317上で地図上に画像データを組み合わせ表示するのに用いる地図データを保管する等、システムの運用を補助するためのデータを管理するDBで必要な場合に設けられる。尚、OMC203は、必ずしも1つのMSC202と対向させる必要はなく、公衆網205を介して、複数のMSC202に対して接続する構成としても良い。
【0031】
以下、図面を用いて本発明の無線通信システムの構成・動作や運用方法を更に説明する。図5は、無線通信システムの運用動作例を示すフロー図で、BS設置時および設置後のシステム運用中における保守運用の動作例を説明する動作フロー図である。
【0032】
先ず、通信キャリアの作業員が新たにBS201を設置しようと考えている現地に赴き、地形や建物等の環境状況を確認する事前サイトサーベイを実施する(S1)。次に、BSの設置位置、電波強度、電波の放射方向などを決定する机上設計(S2)を行い、設計結果に基づき電波分布のシミュレーションを実施する(S3)。シミュレーションで期待される結果が得られるまでS1、S2を繰り返し実施し、期待される結果が得られた場合に、再度現地に赴き実際にBS201の設置/調整処理を行う(S4)。ここまでが、BS201設置時の動作である。
【0033】
次に、シミュレーション通りの電波分布が得られているかどうかの確認の為、実際の電波分布調査(サイトサーベイ)を実施する(S5)。この結果、良好な結果が得られていない場合は、S2に戻り机上設計からやり直し、BSの設置位置の変更や電波出力等の調整を実施し、良好な結果が得られるまでS2からS5を繰り返す。一方、サイトサーベイ(S5)の結果、良好な結果が得られた場合は、システムの運用が開始される(S6)。システム運用開始後は、定期的にスシステムの電波分布に異常がないかの確認を行うためのサイトサーベイ(S7)が行われ、この結果、良好な結果が得られていない場合は、S2に戻り机上設計からやり直してBSの設置位置の変更や電波出力等の調整を実施し、良好な結果が得られるまでS2からS5を繰り返す。良好な結果が得られた場合は、S6に遷移し運用を継続する。
【0034】
S1〜S7の方法でBS201を配置し無線通信システム1を構築しても、運用中の環境等の変化で通信品質に変化が生じるのが一般的である。その変化に伴い、従来のサイトサーベイ(S7)は、BS201を設置した場所へ人を派遣して電波測定を実施したので、多くの作業時間と多額の費用を費やしていた。通信キャリアとしては、このコストの発生するサイトサーベイ(S7)を頻繁行うことは避けたいと考えている。本発明の無線通信システム1は、上記S5以降のステップをわざわざ現地まで赴かなくとも実施して、良好な電波伝搬環境が得られるような無線通信システムと無線通信基地局、および、それらの運用方法を提供するものである。
【0035】
図6は、BS設置後のシステム運用中の保守運用動作例を示す動作フロー図である。同図では、図5のS1〜S6迄は同一なので省略し、S6以降の運用中動作について説明する。
【0036】
システム運用中(S6)以降は、OMC203からオペレータが設定した通信システム1におけるATのアクセス数やアンテナ端受信電界強度(以下RSSIと称す。)等のシステムパフォーマンス情報の確認処理(S13)を行う。このシステムパフォーマンス情報の設定や確認処理の詳細は、別途図面を用いて更に詳細に後述する。
【0037】
確認処理(S13)でシステムパラメータ情報に異常が発生しているか否かの確認を行い、異常がなければ定期サイトサーベイ処理(S7)に遷移する。この定期サイトサーベイ(S7)は、従来のように現地に赴いて実施しても構わないが、本発明の無線通信システムであれば、上述した確認処理(S13)と同じような情報の設定と確認処理方法の設定をOMC203からオペレータが行っておき、適当な間隔でオペレータの指示に基づき情報の確認を行うようにして現地へ赴くことを回避できる構成とした。当該確認処理(S13)の結果、パラメータ情報に異常が発生している場合は、異常値を示すBS201を特定するとともに、異常値を示すパラメータに応じたBS201の周辺の環境状態の撮影指示をOMC203からMSC202を経由してBS201に送出し、その指示を受信したBS201は、搭載した撮像手段206を用いた撮影処理(S8)を行う。この確認処理(S13)と撮影処理(S8)の詳細も、別途図面を用いて更に詳細に後述する。尚、定期サイトサーベイ(S7)で異常が見つかった場合は、図5のサイトサーベイ(S7)の処理と同様に、明確な通信システムの環境変化が認められることに相当するため、図5のS2に戻り机上設計からやり直し、BSの設置位置の変更や電波出力等の調整を実施する。勿論、S7での異常時にS2に戻れるようなパラメータ情報や処理方法をOMC203から設定してある。定期サイトサーベイ(S7)で異常が無い場合でも、この時点での最新情報を得ておくために撮影処理(S8)を行う構成とした。
【0038】
撮影された画像データは、OMC203に送られ、予め保存されているBS設置時や以前に撮影された画像データとの比較処理(S9)が行われる。画像に所定の変化がない場合は、対象となるBSの情報(ID、名称等)及び異常の生じたパラメータ情報を含む第1の警報を発生させ(S10)、システムの運用を継続する。これは、画像に変化を確認できない場合でもパラメータの変化をシステム管理者に伝達することで不測の事態に備えるためである。尚、図示していないが、定期サイトサーベイ(S7)で異常が無い場合で、かつ画像比較で変化がない場合は、第1の警報は発生しない。一方、画像に所定の変化が発生している場合は、その変化内容に応じた電波放射制御指示をOMC203からMSC202を経由して関連するBS201に送出する。この電波放射制御指示を受信したBS201は、その指示内容に応じて電波放射角の変更や、電波出力強度の変更といった基地局調整(S11)を行う。そして、対象BS情報(ID、名称等)、異常の生じたパラメータ情報、BSへの撮影指示内容、撮影画像の比較結果情報、BSへの電波放射制御指示内容等を含む第2の警報を発生させ(S12)、システムの運用を継続する。尚、第1および第2の警報とも、音や光や文字等でOMC203の表示装置20317(図4)に出力され、オペレータに通知できる構成とした。
【0039】
以下では、図6で説明したBSおよび無線通信システムの保守・運用の動作例の詳細を更に説明する。図7は、システムパフォーマンス情報の確認処理(S13)と、その結果に対応したBS201の撮像手段206が行う撮影処理(S8)の動作例を示した動作フロー図である。また、図8は、画像の比較処理(S9)と、その結果に対応した基地局調整(S11)の動作例を示した動作フロー図である。図9は、無線通信システムの詳細動作例を示すシーケンス図で、BS設置時や運用開始前の動作例と、運用中における撮影処理(S8)以降の動作例で、特に画像データの比較処理(S9)の動作例を説明する図である。また、図10は、無線通信システムのBS201が撮影処理(S8)で撮影する画像データの一例を示す説明図である。
【0040】
無線通信システム1の運用開始(あるいはBS201の新規設置)にあたり、システムのオペレータは、OMC203からBS201のサービスエリア200内の運用状態や電波伝搬環境の確認(システムパフォーマンス情報の確認処理(S13))に必要な監視パラメータの設定と、該確認処理(S13)の後で実施する撮影処理(S8)に必要な撮像手段206の撮影条件の設定等、運用に必要な条件を設定する(図9:P300)。具体的には、オペレータがOMC203の入力装置20318から必要なパラメータを入力する。OMC203から設定された各種の条件は、MSC202を介してBS201に転送され(図9:S300)、BS201は、これらの条件を保持して(図9:P301)以降の運用に備える。
【0041】
本実施例では、システムパフォーマンス情報として、BS201と接続しているATのアクセス数とRSSI値を用いる構成とした。具体的には、アクセス数をから運用状態・電波伝搬状態を判別するためのアクセス数の閾値を第1(a:アクセス数の下限値)と第2(b:アクセス数の上限値)と第3(c:aの下限値より更に小さな値で、想定使用数を大幅に下回る値(電波放射に係る故障しか考えられないような極めて小さい値。限りなく0に近い値))の3種と、RSSIの閾値である第4の閾値(d)を設定し、これらの監視間隔等も指定してシステムパフォーマンス情報の確認処理(S13)を実施する構成とした。BS201のアクセス数が良好な状態、すなわち、電波伝搬状況が良くサービス品質が維持できる状況とは、通信事業者が想定する使用数であって、閾値a(下限)と閾値b(上限)の間にある状態をいい、BS201設置の環境に合わせてBS201毎に設定可能としている。これらの閾値や監視間隔の値は、事前もしくはBS201設定直後に取得しておいた画像データ(図10(a))を見ながらオペレータが適宜決定していく構成とした。尚、図5で説明したようなS1〜S5の手順によって得られたデータから決めた値を設定しても構わない。勿論、これら情報はシステムの状況を把握するもので、監視する情報の種類や値がこれらに限定されるものではない。尚、撮影処理に関する初期設定については別途後述する。
【0042】
無線通信システム1の運用中に実施するシステムパフォーマンス情報の確認処理(S13)と撮影処理(S8)では、先ず、パラメータ入力(図9:P300)で指定されBS201で検出したATのアクセス数とRSSI値を確認する(S41)。尚、これらの情報は、BS201からMSC202を介してOMC203に送られてくる情報であるが、図9等での情報転送の様子の図示は省略した。
【0043】
アクセス数を閾値aと比較し(S42)、閾値a未満の場合には、別の閾値cと比較する(S45)。ここでアクセス数が閾値c以上の場合には、電波環境悪化(電波放射方向に遮蔽物が出現し、サービスエリアが縮小される等)が考えられるため、対象となるBS201に対して撮影処理(S8)で自局アンテナの電波放射方向の撮影指示を出力する(S47)。
【0044】
閾値c未満の場合は、RSSI値を閾値dと比較し(S46)、閾値d以上の場合は、先の事象と同様に電波環境悪化が考えられるため、対象となるBS201に対して撮影処理(S8)で自局アンテナの電波放射方向の撮影指示を出力する(S47)。一方、閾値d未満の場合は、自局アンテナ故障に伴う電波環境悪化が考えられるため、対象となるBS201に対して自局BSアンテナ方向の撮影指示を出力する(S48)。
【0045】
アクセス数が閾値a以上の場合は、アクセス数を閾値bと比較し(S43)、閾値b以上の場合には、サービスエリア200内のATアクセス数が予め定めた上限数を越えているので、これを確認して以降の基地局調整(S11)に用いるために、対象となるBS201に対して自局アンテナの電波放射方向の撮影指示を出力する(S49)。閾値b未満の場合は、システム運用は正常であると判断して運用を継続する。尚、S49での自局アンテナの電波放射方向の撮影指示と先に示したS47での自局アンテナの電波放射方向の撮影指示は、撮像手段206から見ると同じものであるが、以降の基地局調整(S11)の処理が異なってくるので明細書では分けて記載した。
【0046】
上述したように、本発明の通信システム1は、通常に閾値aと閾値bの間で推移しているアクセス数が閾値bを越える場合は、S49のようなユーザ数増加に伴う処理を行い、アクセス数が閾値a未満で閾値c以上である場合は、電波放射に係る故障の恐れが低いことから、S47のような遮蔽物対応の処理を行うようにしている。また、アクセス数が閾値a未満で閾値c未満である場合は、電波放射に係る故障の恐れが高いことから、S46のRSSI値の確認処理に移行し、自局アンテナ故障に伴う処理や遮蔽物対応の処理を行うといったきめ細かな対応を実施するものである。尚、上述した処理をOMC203で実施するように説明したが、これらの処理(S13,S8)を対象となるBS201に実施させる構成でシステムを構築して運用しても構わない。
【0047】
撮影処理(S8)に必要な撮像手段206の撮影条件の設定等、運用に必要な条件の設定(図9:P300)も、先に説明したシステムパフォーマンス情報の事前設定と同様に、予め取得しておいた画像データ(図10(a))を見ながらオペレータが適宜決定していく構成とした。具体的には、画像データを見ながら、電波放射範囲を含んで指定した方向や範囲の状況を撮影できるカメラ20150の向きや撮影時間(間隔)を指定する構成とした。また、先に述べたように一時的に発生する事象でエリアオプティマイゼーションに不要なデータを捕らえないように、どのような統計処理や画像処理を行うのかも指定する。具体的には、図10の画像データ内の破線で囲った領域A〜Eのように、予め変化が予想されエリアオプティマオゼーションに必要とオペレータが判断した画像データの存在位置(座標)をいくつか指定して、どのような統計処理を行うか、どのような状況を変化ありと見做すか等の情報も指定する構成とした。このようにすれば、図10の変化前(a)と変化後(b)で示したように、車等の高速移動に伴う瞬時の事象変化とビル増設で領域BとCの状態が長時間にわたり変化した状態とが切り分けられエリアオプティマイゼーションに必要なデータ画像データが確実に得られるようになる。尚、後述するが、画像の変化は、各領域データの変化前後の相関値を求めて決定(S9,図9:P330、340)するので、基地局201に応じた領域の設定(図10:A〜E)や相関値の閾値(図9:P340のKPI)の設定も行う構成とした。これらの設定(図9:P300)でBS201の撮像手段206に必要なデータがBS201に転送され(図9:S300)、BS201は、これらの条件を保持して(図9:P301)以降の運用に備える。
【0048】
無線通信システム1の運用中に実施するの画像データの比較処理(S9)と、その結果に対応したBS201の調整(S11)の動作例を図8〜図10により説明する。
BS201が撮影処理(S8)で撮影した画像データは、MSC202を介してOMC203に転送され(図9:320)、一旦OMC203のバッファ20340(図4)やメモリ20380(図4)に保持される(図9:P321)。尚、この画像データをOMCサーバ204に転送して(図9:S320)保存する構成としても良い(図9:P322)。
【0049】
OMC203は、画像データを受信すると、メモリ20380等に保持しておいた以前の画像データとの比較を行い画像に変化があったかどうかを確認する(S9)。具体的には、図10の領域A〜Eのように予め設定しておいた部分の画像データについて夫々の領域についての新旧データの相関値Cを求め(図9:P330)、この相関値Cが所定の閾値KPIと比較する(図9:P340)構成とした。閾値未満なら画像に変化があった、すなわち、BS201のサービスエリア200内での電波伝搬環境に変化有、と判断してBS201のアンテナ電波放射角度制御等の基地局調整(S11)を実施する。尚、相関値計算や閾値との比較(図9:P330,340)では、エリアオプティマイゼーションに必要な情報を確実に得るように、複数回画像データを取得して複数回相関値を計算したうえでの変化量を求める等、図示しない変化検出保護動作を入れるようにすれば、更に変化の検出能力が上がるので高精度なエリアオプティマイゼーションが可能となる。図10の例で説明すれば、車の移動にともなう画像データの変化は、電波伝搬環境の変化として検出されず、新たなビル建設にともなう領域Bと領域Cの相関値の変化がBS201のサービスエリア200内での電波伝搬環境に変化有と検出され、基地局調整(S11)によるエリアオプティマイゼーションが実施される。画像の比較検出(S9)と基地局調整(S11)の後は、図6でも説明したアラームの生成と表示(S10,S11)が行われ、実際にOMC203で行われた動作や得られたデータがメモリ20380に記録される(図9:P360)。また、これらのデータをOMCサーバ204に転送して(図9:S330)保存する構成としても良い(図9:P390)。尚、図10(b)のように電波伝搬環境に変化があった場合、次に起こりうる変化に備え、画像データ内での変化を検出するためのデータ領域の変更や閾値の変更をオペレータが行い、必要なデータを選択設定する(図9:P370)構成とした。
【0050】
BS201での撮影処理(S8)が自BS201のアンテナ電波放射方向の撮影(図7:S47)であった場合、画像比較処理(S9)では、各領域で求めた相関値Cと閾値KPIとから、前の画像に存在しない遮蔽物(樹木、ビル、高架橋等の障害物)が今回撮影した画像の右若しくは左側に存在するか否かを確認し(図8:S51)、撮影した画像の右若しくは左側に新たな遮蔽物が存在している場合は、対象BS201に対して電波放射角度の変更を実施させる(図8:S56)。一方、撮影した画像の右若しくは左側に新たな遮蔽物が存在していない場合は、撮影した画像の中央付近に遮蔽物が存在するか否かを確認し(図8:S52)、撮影した画像の中央付近に新たな遮蔽物が存在している場合は、対象BS201に対して電波出力強度の増加指示若しくは電波放射角度の変更を実施させる(図8:S57)。上記手順で遮蔽物が発見できない場合は、対象BS情報(ID、名称等)、異常の生じたパラメータ情報、BSへの撮影指示内容、撮影画像の比較結果情報、BSへの電波放射制御指示内容を含む第2の警報(音、光、伝聞表示)を発生させ(S12)、システム運用を継続する。
【0051】
BS201での撮影処理(S8)が自BS201のアンテナ方向の撮影(図7:S48)であった場合、画像比較処理(S9)では、各領域で求めた相関値Cと閾値KPIとから、前の画像に存在しない障害物(ビニール等障害物がアンテナに接触若しくは絡みつく状態)が今回撮影した画像に存在するか否かを確認し(図8:S53)、新たな障害物が存在している場合は、隣接のBS201に対して電波出力強度の増加や電波放射角度の変更を実施させる。もちろん、保守者を派遣して障害物を除くような指示も行う。一方、新たな障害物が存在していない場合は、撮影した画像のアンテナ部に損傷・破損が存在するか否かを確認し(図8:S54)、新たな損傷・破損部が存在している場合も、同様に隣接BS201に対して電波出力強度の増加や電波放射角度の変更を実施させる。尚、この場合にアンテナ20100やBS201そのものを修理・交換するかは破損の度合いや電波伝搬環境の状況に応じてオペレータが適宜判断する。上記手順で障害物や損傷・破損が発見できない場合は、対象BS情報(ID、名称等)、異常の生じたパラメータ情報、BSへの撮影指示内容、撮影画像の比較結果情報、BSへの電波放射制御指示内容を含む第2の警報(音、光、伝聞表示)を発生させ(S12)、システム運用を継続する。
【0052】
BS201での撮影処理(S8)が自BS201のアンテナ電波放射方向の撮影(図7:S49)であった場合、画像比較処理(S9)では、各領域で求めた相関値Cと閾値KPIとから、前の画像に存在しない物体(例えばコンサート等に伴う大勢の人)が今回撮影した画像に存在するか否かを確認し(図8:S55)、新たな物体が存在している場合は、隣接のBS201に対して電波出力強度の増加や電波放射角度の変更を実施させる。これは、他BS(隣接BS)の無線エリアカバー範囲を拡張し、対象BS201の負荷を軽減し、システム全体でのパフォーマンス向上を図るために実施するのものである。上記手順で新たな物体が発見できない場合は、対象BS情報(ID、名称等)、異常の生じたパラメータ情報、BSへの撮影指示内容、撮影画像の比較結果情報、BSへの電波放射制御指示内容を含む第2の警報(音、光、伝聞表示)を発生させ(S12)、システム運用を継続する。
【0053】
さらに、本発明では、システム管理者の指示によりOMC203から、BS201に対して撮影指示、BS調整指示を行えるようにしてもよい。この場合、システムパフォーマンスの状態にかかわらず、システム管理者の経験等に基づき、適宜、BS201に対して、撮影方向を指定した撮影指示やBS調整指示を行えるようになるので、自律的なシステムオプティマイゼーションを補完できるきめ細かい無線通信システムの監視が可能となる。
【0054】
また、システムパフォーマンス確認処理(S13)で、所定の問題が発生した場合に、図示しない第3の警報(音、光、伝聞表示)を発生させ、OMC203に通知するようにしてもよい。こうすることで、第3の警報を受信した場合に、システム管理者の指示でOMC203からBS201に対して撮影指示、BS調整指示が行えるようになる。これは、自律的なシステムオプティマイゼーション機能で予め決められた撮影指示、無線BS調整指示では対応できない場合に、システム管理者が自分の目で画像データを確かめ、その内容に基づいたBS調整を可能とするものである。
【0055】
また、OMC203での撮影指示は、システムパフォーマンスの状態変化に応じたもの以外に、日時指定実施、定期(毎日、毎月等)実施でもよいし、システムパフォーマンスの状態変化との組み合わせでもよい。日時指定実施、定期(毎日、毎月等)実施は、比較に用いる画像データを、同じような季節、曜日、時間帯、天候を合わせたほうが、画像相違把握の確度があげられる利点があるためである。
【符号の説明】
【0056】
201・・・無線基地局(BS)
202・・・基地局制御装置(MSC)
203・・・保守装置(OMC)
204・・・保守サーバ(OMCサーバ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線基地局と該無線基地局の保守運用を行う保守装置とからなる無線通信システムであって、
前記無線基地局の夫々は、アンテナから電波を放射して形成したエリアにある無線端末との通信を実施する通信手段と、該無線基地局周辺の環境を撮影する撮像手段とを備え、
前記保守装置は、前記無線基地局が形成したエリアの運用状態を監視する手段と前記撮像手段を制御する手段と、該撮像手段が撮影した画像データを解析する解析手段と、該解析結果で前記基地局の通信手段を制御する手段とからなる制御部を備え、
前記制御部が前記エリアの運用状態に応じて撮像手段を制御し、該撮像手段から受信した画像データに基づきと通信手段を制御して該エリアの運用状態を制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
上記保守装置が監視する上記無線基地局のエリアの運用状態は、該無線基地局と通信している上記無線端末の数と前記アンテナにおける電波の強度であることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
上記保守装置は、上記無線基地局のエリアの運用状態に応じて、上記撮像手段が画像を撮影する方向を上記アンテナの電波放射方向もしくは該アンテナ方向のいずれかに制御し、受信した画像データの解析結果に基づきの自無線基地局もしくは該自無線基地局のエリアに隣接する無線基地局の通信手段を制御して前記アンテナから放射する電波の放射強度もしくは放射角度を制御することを特徴とする請求項1もしくは請求項2のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項4】
上記保守装置は、上記画像データにおいて複数の解析領域を定め、該領域の夫々で以前に受信した画像データと今回受信した画像データの相関を求め、該相関と予め定めた相関閾値との対応で上記無線基地局の通信手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
複数の無線基地局と該無線基地局の保守運用を行う保守装置とから構成される無線通信システムであって、
前記無線基地局保守装置は、
前記無線通信システムの運用状況を監視する監視手段と、該監視手段が前記運用状況を示す複数のパラメータの変化を検出すると前記複数の無線基地局で該変化に関連する無線基地局に対して当該変化の生じたパララメータに対応する撮影指示を送信する撮影指示手段とを備え、
前記無線基地局は、
撮像手段と、前記撮影指示を受信すると該撮像手段による撮像を行わせる撮像起動手段と、前記撮像手段が撮影した撮像データを前記無線基地局保守装置に送信する撮像データ送信手段とを備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項6】
上記無線基地局保守装置は、
更に、上記無線基地局より送信された撮影データを受信して該受信撮影データと以前に受信した撮影データとを比較する比較手段と、前記比較手段による比較結果に応じて前記無線基地局に対して電波放射方向若しくは電波出力強度の変更指示を送信する電波放射変更指示手段とを備え、
前記無線基地局は、
更に、前記電波放射方向若しくは電波出力強度の変更指示を受信すると電波放射方向若しくは電波出力強度を変更する電波放射制御手段とを
備えたことを特徴とする請求項5に記載の無線通信システム。
【請求項7】
複数の無線基地局と該無線基地局の保守運用を行う保守装置とから構成される無線通信システムに用いる無線基地局であって、
前記無線基地局の周辺の画像を撮影する撮像手段と、
前記保守装置から前記無線基地局の運用状況に対応した撮影指示を受信すると前記撮像手段による撮像を行わせる撮像起動手段と、
前記撮像手段が撮影した撮像データを前記保守装置に送信する撮像データ送信手段と、
前記保守装置から前記撮像データに対応した前記無線基地局のアンテナの電波放射方向若しくは電波出力強度の変更指示を受信すると前記アンテナからの電波放射方向若しくは電波出力強度を変更する電波放射制御手段とを
を備えたことを特徴とする無線基地局。
【請求項8】
複数の無線基地局と該無線基地局の保守運用を行う保守装置とからなる無線通信システムの運用方法であって、
前記無線基地局のアンテナから電波を放射して形成したエリアの運用状況を監視する第1のパラメータと該基地局周辺の画像を撮影・確認するための第2のパラメータが設定されると、
前記第1のパラメータに基づき任意基地局を含む無線通信システムの運用状況を監視し、
前記運用状況の変化を検出すると、該変化に応じて前記第2のパラメータに基づき前記基地局周辺の画像を撮影し、
前記撮影した画像と前記第2のパラメータに基づき前記基地局もしくは該基地局周辺の状況変化を検出すると、該変化に応じて前記無線基地局のアンテナから放射する電波の放射角度もしくは放射強度を変更する
ことを特徴とする無線通信システムの運用方法。
【請求項9】
上記第1のパラメータは、上記任意の無線基地局と通信している無線端末の数と該無線基地局のアンテナにおける電波の強度であることを特徴とする請求項8に記載の無線通信システムの運用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−24154(P2011−24154A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169695(P2009−169695)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】