説明

無線通信システムにおけるスケジューリング方法,装置及び制御プログラム

【課題】マルチユーザ無線通信システムにおけるユーザ端末装置のスケジューリングに関しては,従来は総当りで選択候補を探索するために,ユーザ数が多いときにはスケジューリングのための演算量が急激に増加し,また個々のユーザ端末装置に対しては最大のチャネル容量が与えられるが,システム全体としては必ずしも周波数を最大限に有効利用することができないという課題があった。
【解決手段】本発明においては,ユーザ端末装置のスケジューリングにおける候補選択において上位候補のみを残すツリー探索を適用すると共に,システムの総チャネル容量改善量を候補選択のためのブランチメトリックとして使用して,総チャネル容量が最大になるようにユーザ端末装置とアンテナの組合せを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,基地局装置と複数のユーザ端末装置とを備える無線通信システムのチャネル容量最大化に関し,より詳細にはマルチユーザシステムにおけるスケジューリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムや無線LANシステムなどに代表される無線通信システムにおいて,動画像データや音楽データなどを扱うための高速大容量データ通信がますます重要になっている。一方,QPSKやQAMなどの変復調技術の進展によって周波数利用効率は従来に比べて格段に進歩し,ノイズレベル等によって決まる理論限界値に次第に近づいている。このような状況に対して,同一周波数を利用してチャネル容量を増加させることができるMIMO (Multi-Input Multi-Output) システムが注目されている。
【0003】
MIMOシステムは複数の送信アンテナと複数の受信アンテナとを用い,送受アンテナ間に形成される複数の異なる伝播路を利用することによって,同一周波数でチャネル容量を増加させる技術である。更に,移動体通信システムや無線LANなどの応用システムにおいては,同時に複数の対地との通信を行うことができるマルチユーザシステムが所望される。マルチユーザシステムにおいては,複数のユーザ端末装置と独立したチャネルを形成するために,同一周波数で同時に通信が可能なユーザ端末装置(アンテナ)を選択するスケジューリングが必要になる。ある周波数で同時にサービスができないユーザ端末装置に関しては,別のタイムスロット又は別の周波数でサービスを提供することになる。
【0004】
【特許文献1】特開2006-121348
【非特許文献1】Fuchs, et. al.,"A Novel Tree-based Scheduling Algorithm for the Downlink of Multi-User MIMO Systems with ZF Beamforming",ICASSP 2005,vol.3,2005年3月,pp. III-1121 - III-1124
【非特許文献2】Jing Jian, et. al.,"Greedy Scheduling Performance for a Zero-Forcing Dirty-Paper Coded System",IEEE Transactions on Communications,Vol. 54,No.5,2006年5月,pp. 789 - 793
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来,マルチユーザMIMOシステムにおけるユーザ端末装置のスケジューリングについては,前述の非特許文献1及び非特許文献2にあげた研究例があった。しかし,これらの方法においては,総当りで選択候補を探索するために,ユーザ数が多いときにはスケジューリングのための演算量が急激に増加することが問題となり,また個々のユーザ端末装置に対しては最大のチャネル容量が与えられるが,システム全体としては必ずしも周波数を最大限に有効利用することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
要約すると,本発明においては前述の課題を解決するために,候補選択において総当りではなく上位候補のみを残すツリー手続き(Mアルゴリズム)を適用すると共に,システムの総チャネル容量改善量を候補選択のためのブランチメトリックとして使用して,システムの総チャネル容量が最大になるようにユーザ端末装置とアンテナとの組合せを選択する。以下,本発明に基づくスケジューリング方法について,添付の図面を参照して説明する。
【発明の効果】
【0007】
本発明を適用することによって,マルチユーザMIMOシステムにおいて少ない計算コストでシステム全体の総チャネル容量を最大化することが可能になる。その結果,基地局装置のコスト低下や通信速度の向上などの効果がもたらされる。また,本発明に基づく方法は,SIMO/MISOシステムなど送信アンテナ又は受信アンテナを1本だけ用いる構成にも準用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
始めに,MIMOシステムにおける総チャネル容量の計算について説明する。マルチユーザシステムは図1に示すように複数のアンテナを備えた基地局装置1と複数のアンテナを備えた複数のユーザ端末装置2から構成されており,送受アンテナ間の伝達関数は次のような行列で表される。
【数1】

ここで,tは各送信アンテナの信号,rは各受信アンテナの信号,Hはチャネルマトリクスであり,チャネルマトリクスが送受間の伝達特性を表す。
【0009】
また,一般にあるチャネルの容量C(bit/s/Hz)は,チャネルのS/N比がρであるとき,
C=log2(1+ρ)
で表される。
【0010】
マルチユーザMIMOシステムは,図2に示すように複数のユーザ端末装置2(1)〜2(U)を備えるものであり,各ユーザ端末装置の送信アンテナ数はNt本である。ただし,各ユーザ端末装置が実際に使用する送信アンテナ数はそれぞれ異なってもよい。総数U・Nt本の送信アンテナのうち,n本のアンテナを使用するときの総チャネル容量は,基地局装置1とユーザ端末装置uとの間のチャネルマトリクスHuとCを組み合わせて,次のように計算される。ここで( )+はエルミート転置を示す。
【数2】

【0011】
これを反復適用すると,最終的に次式が得られる。
【数3】

【0012】
この結果は,システムの総チャネル容量は,あるユーザ端末装置のあるアンテナを選択したときの総チャネル容量改善量ΔCmを加算していくことによって得られることを示している。したがって,ΔCmをアンテナ選択のためのブランチメトリックとして用いることができる。
【0013】
次に,上記ブランチメトリックを使ってあるタイミングで使用するユーザ端末装置2のアンテナを選択する方法について説明する。選択は,図3に示すように候補となるアンテナとユーザ端末装置との組合せをツリーとするツリー手続きに基づく。図3ではそれぞれ2本のアンテナを備える2台のユーザ端末装置を例にとっている。図中の(1,2)などは,アンテナインデクス(1)とユーザ端末インデクス(2)の組を示している。
初期状態ではすべての組合せ(1,1)〜(2,2)が選択候補となる。これらのそれぞれについて,それを選択したときの総チャネル容量改善量を計算し,大きい順に2個を残す。ここでは選択肢(ブランチ)(1,1)と(1,2)が選択されている。ここで残す数2はサバイバル数と呼ばれるものであり,1以上で選択するアンテナ数までの任意の数である。すべてのアンテナを選択する場合は一意に決まるので除外される。
次に選択したアンテナを除く残りのアンテナから,同様に総チャネル容量改善量の大きなブランチを2個選択する。
最終回である3回目では,総チャネル容量が最大のブランチ[(1,1)(2,1)(1,2)]を選択する。最終回数は,上述の自由度に一致する。
【0014】
本方法において,総チャネル容量改善量を計算する回数Iは,サバイバル数をMとして次の式で表され,したがって所要の計算量は候補数U・Ntに対してリニアである。
【数4】

【0015】
以上述べたように,本方法によればスケジューリングに必要な計算量が高々候補数に対してリニアであり,また,ユーザ端末装置とアンテナの組が同時に選択できるという利点がある。ここで,サバイバル数Mに関しては,所要計算量と周波数利用効率(総チャネル容量)とを勘案して決定することになるが,通常は2程度でよい結果が得られる。
以下,実施例の基地局装置におけるユーザ端末スケジューリング処理について詳細に説明する。
【0016】
本発明の一つの実施例は,図2に示すような基地局装置1と複数のユーザ端末装置2(1)−2(U)との間でマルチユーザシステムによって通信を行う無線通信システムにおけるユーザ端末のスケジューリングのための方法である。
前記ユーザ端末装置はU台(Uは1以上の整数)であり,該ユーザ端末装置はそれぞれNt本(Ntは1以上の整数)の送信アンテナを備える。また,前記基地局装置は典型的には図5に示すような構成をもつ。チャネル制御部3はチャネル推定手段と,スケジューラ手段と,選択されたユーザ端末のアンテナインデクスを決定する手段と,選択されたユーザ端末のチャネルマトリクスを生成する手段とを備え,図4に示すフローに従って前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間のユーザ端末スケジューリングを行う。QRM−MLD検出部4は伝送シンボルの検出・候補判定を行い,復調および復号部5がデジタルデータを復号し,信号分配部6がユーザ端末毎のデータを振り分ける。
【0017】
以下,図4に沿ってスケジューリング方法を詳細に説明する。まず,ユーザ端末装置の総数U・Ntの送信アンテナの中から選択するアンテナ数nは,一般に基地局装置の受信アンテナ数Nr以下になるように選択する。次に,チャネル制御部は,例えば既知のパイロットシンボルを測定することによって,前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間のチャネル推定を行い,前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間のチャネル特性を表すチャネルマトリクスHを決定する(ステップ100)。次にすべての候補について条件を初期化する(ステップ101)。このチャネルマトリクスHを用いてBmを更新する(ステップ102)。次に,各ユーザ端末装置の各アンテナに対応する総チャネル容量改善量ΔCmを計算し(ステップ103),計算した総チャネル容量改善量の大きい順にM個(Mは1以上,U・Nt未満の整数)のユーザ端末装置とアンテナとの組合せを選択する(ステップ105)。図4のフローにおいてmは処理ステップのインデクスを表わし,Kmはステップmにおける候補数である。K1は全候補数であり,以降のステップにおいてはKm=m・(U・Nt−m+1)に基づいて計算される。
選択されたユーザ端末装置とアンテナとの組合せに対して残りのユーザ端末装置とアンテナとの組合せから前記と同様のユーザ端末装置とアンテナとの組合せ選択をn−1回まで繰り返し,n回目に総チャネル容量改善量の総和が最大になるn個のユーザ端末装置とアンテナとの組合せを決定し(ステップ106・107),前記基地局装置から各ユーザ端末装置に使用するアンテナに関する情報を送信し(ステップ108),前記の決定したユーザ端末装置とアンテナとの組合せを用いて,前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間で通信を行う。
この方法によれば,前述のとおり計算コストが少なく,かつシステム全体での総チャネル容量を最大化することができる利点がある。
【0018】
本発明の更なる実施例においては,上記のスケジューリングを所定のタイミングにおいて再度実行して設定内容を更新する。これによって,例えばユーザ端末装置が移動してチャネルマトリクスが変わったときやユーザ端末装置の数が増減したときにシステムを追随させることができる。
【0019】
本発明のまた更なる実施例においては,上記のチャネルマトリクス決定において,測定したチャネル特性をまず各々の経路損失によって正規化する。その後,正規化されたチャネルマトリクスに基づいてスケジューリングが行われる。前述のようにSN比のよいチャネルの方がチャネル容量が大きいので,上記の方法ではそのようなチャネルを持つユーザ端末装置が優先的に選ばれることになる。しかし,この方法においては特定のユーザ端末装置に偏ったスケジューリングを防ぐことができる。
【0020】
図8は上記の正規化を適用する実施例に基づく基地局装置の機能ブロック図である。このチャネル制御部7には,図5のチャネル制御部3に対して経路損失推定及びそれに基づくチャネル正規化手段が加えられている。ユーザ端末のスケジューリングは,正規化されたチャネルマトリクスに基づいて行われる。その他の機能ブロック,QRM−MLD検出部8,復調及び復号部9,信号分配部10については図5の場合と同様である。
【0021】
本発明のまた更なる実施例においては,上記のn回目のユーザ端末装置とアンテナとの組合せ決定を,ユーザ端末装置の直近の平均チャネル容量に対する,新規のアンテナ選択に基づく総チャネル容量改善量の比が大きい組合せを選択することによって決定する。図9にこの方法の処理フローチャートを示す。全体のフローは図4のフローと同様であるが,ステップ204においてブランチメトリックCmを更新する際に,直近のタイムスロットにおけるユーザ端末uに関するスループットTuと総チャネル容量改善量ΔCm(k)との比を評価する点が異なる。ここでTuは,ユーザ端末uの瞬時チャネル容量Ruとスムージングのための係数icによって計算される。この方法においては,必ずしも総チャネル容量が最大になるとは限らないが,直近のチャネル割当てが少なかったユーザ端末装置を選択する確率が高まり,割当てを平均化することが可能になる。
【0022】
本発明の他の実施例は,前述のユーザ端末スケジューリング方法を適用した無線通信システムである。
前記無線通信システムは,複数の受信アンテナを備えた基地局装置とそれぞれ複数の送信アンテナを備えた複数のユーザ端末装置とを備える。また,前記基地局装置はユーザ端末スケジューリングのためのチャネル制御部を備える。ここで,チャネル制御部の実装は,例えばFPGAなどの布線論理回路であってもよいし,DSPやマイクロプロセッサなどのコンピュータを応用したものであってもよい。
前記チャネル制御部は,前述のユーザ端末スケジューリング方法に従って前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間のユーザ端末スケジューリングを行う。
更に前記基地局装置から各ユーザ端末装置に使用するアンテナに関するフィードバック情報を送信することによって,前記の決定したユーザ端末装置とアンテナとの組合せを用いて,前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間で通信を行う。
この実施例によれば,前述のとおり計算コストが少ないので基地局装置のチャネル制御部を安価に構成することができ,かつシステム全体での総チャネル容量を最大化することができる。また更に,ユーザ端末装置に送信するフィードバック情報はアンテナインデクスのみでよいため伝送路を圧迫することがなく,ユーザ端末装置はそれを受信することによって直ちに送信のための設定ができる利点がある。
【0023】
本発明の他の実施例は,前記基地局装置のチャネル制御部にユーザ端末スケジューリングを実行させるための制御プログラムである。
この制御プログラムは,前述のユーザ端末スケジューリング方法に従ってチャネル制御部を動作させるものである。この実施例によれば,前述のとおり計算コストが少ないので基地局装置のチャネル制御部を安価に構成することができ,かつシステム全体での総チャネル容量を最大化することができる。
【0024】
本発明の他の実施例は,前記無線通信システムにおけるユーザ端末装置である。図6に本発明の実施例に基づくユーザ端末装置の機能ブロック図を示す。
このユーザ端末装置は前記基地局装置から使用するアンテナに関するフィードバック情報を受信する手段と,送信アンテナの選択と送信データ形式の設定とを行う送信制御手段とを備え,基地局装置から受信した前記フィードバック情報に基づいて前記送信制御手段が送信アンテナの選択と送信データ形式の設定とを行う。
ここで送信データ形式は,送信信号を各アンテナの信号に分割する際に,信号間の干渉が少なくなるように選択される。また,ユーザ端末装置においてチャネルマトリクスが分かる場合は,例えば最大比送信法(MRT)などのアルゴリズムが適用できる。
この実施例によれば,ユーザ端末装置はスケジューリングについてフィードバック情報を受信する以外に処理を行う必要がないので,安価な構成が可能になる利点がある。
【0025】
本発明の更なる実施例においては,ユーザ端末装置は同時に1本の送信アンテナだけを使用する。この場合,図7に示すようにユーザ端末装置はフィードバック情報に基づいて使用する送信アンテナを切り替える。
図6の構成に比べるとチャネル容量は低下するものの,同時に1本の送信アンテナしか使用しないためRF回路が1系統でよく,ユーザ端末装置が安価に構成できる利点がある。また,サービスに用いられるユーザ端末装置のすべてが複数アンテナを備えたものであるとは限らないので,そのような場合においてもこの構成は効果を奏する。
なお,この構成を用いるときは,ユーザ端末スケジューリングにおいて,各ユーザ端末装置に1本だけアンテナが割り当てられるような考慮が必要である。
【0026】
以上,マルチユーザシステムをユーザ端末装置から基地局装置へのアップリンクに適用した場合について説明したが,類似の方法をダウンリンクに適用することも可能である。ダウンリンクに適用する場合はダウンリンクのチャネルマトリクスが必要であるが,ユーザ端末装置においてチャネルマトリクスの決定を行うことは処理の負荷が大きい。このため,第1の方法としては,例えばアップリンクのチャネルマトリクスから逆行列を求めたり,時間相関,周波数相関を用いたりするなどの方法でチャネルマトリクスを推定することが考えられる。この方法によれば,ユーザ端末装置の負荷がないほか,伝送路の圧迫もない利点がある。
【0027】
第2の方法は,ユーザ端末装置で各チャネルのC/N比等を測定し,そのデータを制御チャネル等を用いて基地局装置に伝送し,基地局装置でチャネルマトリクスを決定する方法である。この方法の方が,第1の方法に比べてより正確なチャネルマトリクスが得られる利点がある反面,チャネル特性データ取得のためにユーザ端末装置に一定の負荷が掛かることと,データをアップロードするために伝送路を圧迫する欠点がある。
【0028】
図10は,本発明に基づくスケジューリング方法をダウンリンクに適用する実施例による基地局装置の機能ブロック図である。図10のチャネル制御部11にはユーザ端末からのアップリンク情報又はフィードバック情報に基づいてチャネル推定を行う手段が含まれる。第1,第2の方法ともユーザ端末のスケジューリングのための処理は前述の方法と同様である。基地局装置は各ユーザ端末へのデータを切替部14を介して変調及び符号化部13で変調及び符号化を行い,最後に選択された各ユーザ端末に向けてビーム形成部12によってビーム形成を行ってデータ送信を行う。
【0029】
また,ダウンリンクデータを処理するための異なる構成に基づくユーザ端末装置の機能ブロック図を図11,12,13に示す。各構成ともチャネル推定部(16,21,26)と,シンボル検出部(17,22,27)と,復調及び復号部(18,23,28)と,データシンク部(19,24,29)と,基地局からのフィードバック受信部(20,25,30)とを備える。
【0030】
図11は,受信に同時に1本だけのアンテナを用いる構成であり,フィードバック情報に含まれる使用するアンテナインデクスに基づいて切替部15で使用するアンテナを切り替える。この構成はRF部が一つでよいという利点がある。なおこの場合は,各ユーザ端末が1本だけアンテナを選択するように,ユーザ端末スケジューリング方法に多少の変更を要する。
【0031】
図12及び図13は,受信に複数のアンテナを用いる構成であり,フィードバック情報に含まれるユーザ端末の選択/非選択情報に基づいてシンボル検出を行うものである。図12ではシンボル検出にMRC(最大比合成法)を用い,図13ではQRM−MLD法を用いている。これらの構成は図11のものに比べて複雑になるが,複数のアンテナを用いることによって合計チャネル容量を増加できるという利点がある。これらの場合も,ユーザ端末の選択/非選択のためにユーザ端末スケジューリング方法に多少の変更を要する。
なお,QRM−MLD法を適用する場合は,送信アンテナと受信アンテナの本数が同一でなければならないという条件がある。
【0032】
本発明の一つの具体的適用分野は図2のような移動体通信システムであり,例えばいわゆる第4世代システムへの適用が期待される。このほか,無線LANシステム, FWA(Fixed Wireless Access),ブロードバンドホームネットワークなどへの応用も想定される。
以上,本発明の一例としての実施例について説明したが,これ以外にも本願の請求項に記載の範囲を超えることなく,さまざまな応用形態が可能であることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】MIMOの概念を示す図である。
【図2】マルチユーザMIMOの概念を示す図である。
【図3】本発明に基づくスケジューリングのためのアンテナ選択方法を説明する図である。
【図4】本発明に基づく処理のフローチャートである。
【図5】本発明の実施例に基づく基地局装置の機能ブロック図である。
【図6】本発明の実施例に基づくユーザ端末装置の機能ブロック図である。
【図7】本発明の他の実施例に基づくユーザ端末装置の機能ブロック図である。
【図8】本発明の他の実施例に基づく基地局装置の機能ブロック図である。
【図9】本発明に基づく他の処理のフローチャートである。
【図10】本発明の実施例に基づくダウンリンク用の基地局装置の機能ブロック図である。
【図11】本発明の実施例に基づくダウンリンク用のユーザ端末装置の機能ブロック図である。
【図12】本発明の他の実施例に基づくダウンリンク用のユーザ端末装置の機能ブロック図である。
【図13】本発明の更に他の実施例に基づくダウンリンク用のユーザ端末装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
1 基地局装置
2 ユーザ端末装置
2(1) ユーザ端末装置1
2(U) ユーザ端末装置U
3 チャネル制御部
4 QRM−MLD検出部
5 復調及び復号部
6 信号分配部
7 チャネル制御部
8 QRM−MLD検出部
9 復調及び復号部
10 信号分配部
11 チャネル制御部
12 ビーム形成部
13 変調及び符号化部
14 切替部
15 切替部
16 チャネル推定部
17 検出部
18 復調及び復号部
19 データシンク部
20 基地局からのフィードバック情報(アンテナインデクス)受信部
21 チャネル推定部
22 MRC検出部
23 復調及び復号部
24 データシンク部
25 基地局からのフィードバック情報(選択/非選択)受信部
26 チャネル推定部
27 QRM−MLD検出部
28 復調及び復号部
29 データシンク部
30 基地局からのフィードバック情報(選択/非選択)受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と複数のユーザ端末装置との間のマルチユーザ無線通信システムにおいて,
前記ユーザ端末装置はU台(Uは1以上の整数)であり,各該ユーザ端末装置はそれぞれNt本(Ntは1以上の整数)のアンテナを備え,
前記基地局装置はユーザ端末スケジューリングのためのチャネル制御部を備え,
前記チャネル制御部が前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間の通信をツリー手続きに基づいてスケジューリングするユーザ端末スケジューリング方法であって,
前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間のチャネル特性を表すチャネルマトリクスを決定し,
前記チャネルマトリクスを用いて,前記の各ユーザ端末装置の各アンテナに対応する総チャネル容量改善量を計算し,
前記の計算した総チャネル容量改善量の大きい順にM個(Mは1以上,U・Nt未満の整数)のユーザ端末装置とアンテナとの組合せを選択し,
選択されたユーザ端末装置とアンテナとの組合せに対して残りのユーザ端末装置とアンテナとの組合せから前記と同様のユーザ端末装置とアンテナとの組合せ選択をn−1回(nは選択すべきアンテナ数)まで繰り返し,
n回目に総チャネル容量改善量の総和が最大になるn個のユーザ端末装置とアンテナとの組合せを決定するユーザ端末スケジューリング方法。
【請求項2】
前記ユーザ端末スケジューリングを所定のタイミングで更新する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チャネル特性を各チャネルの経路損失に基づいて正規化し,その正規化したチャネルマトリクスに基づいて前記ユーザ端末スケジューリングを行う請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記のn回目のユーザ端末装置とアンテナとの組合せ決定を,ユーザ端末装置の直近の平均チャネル容量に対する,新規のアンテナ選択に基づく総チャネル容量改善量の比が大きい組合せを選択することによって決定する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
基地局装置と複数のユーザ端末装置とを具備するマルチユーザ無線通信システムであって,
前記ユーザ端末装置はU台(Uは1以上の整数)であり,各該ユーザ端末装置はそれぞれNt本(Ntは1以上の整数)のアンテナを備え,
前記基地局装置は,該基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間の通信をツリー手続きに基づいてスケジューリングを行うチャネル制御部を備え,該チャネル制御部は,前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間のチャネル特性を表すチャネルマトリクスを決定し,前記チャネルマトリクスを用いて,前記の各ユーザ端末装置の各アンテナに対応する総チャネル容量改善量を計算し,前記の計算した総チャネル容量改善量の大きい順にM個(Mは1以上,U・Nt未満の整数)のユーザ端末装置とアンテナとの組合せを選択し,選択されたユーザ端末装置とアンテナとの組合せに対して残りのユーザ端末装置とアンテナとの組合せから前記と同様のユーザ端末装置とアンテナとの組合せ選択をn−1回(nは選択すべきアンテナ数)まで繰り返し,n回目に総チャネル容量改善量の総和が最大になるn個のユーザ端末装置とアンテナとの組合せを決定し,
前記の決定に基づいて前記基地局装置から各ユーザ端末装置に使用するアンテナに関するフィードバック情報を送信し,
前記の決定したユーザ端末装置とアンテナとの組合せを用いて,前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間で通信を行う無線通信システム。
【請求項6】
前記ユーザ端末スケジューリングを所定のタイミングで更新する請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記チャネル特性を各チャネルの経路損失に基づいて正規化し,その正規化したチャネルマトリクスに基づいて前記ユーザ端末スケジューリングを行う請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記のn回目のユーザ端末装置とアンテナとの組合せ決定を,ユーザ端末装置の直近の平均チャネル容量に対する,新規のアンテナ選択に基づく総チャネル容量改善量の比が大きい組合せを選択することによって決定する請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
基地局装置と複数のユーザ端末装置とを具備するマルチユーザ無線通信システムにおける基地局装置であって,
前記ユーザ端末装置はU台(Uは1以上の整数)であり,各該ユーザ端末装置はそれぞれNt本(Ntは1以上の整数)のアンテナを備え,
前記基地局装置は,該基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間の通信をツリー手続きに基づいてユーザ端末スケジューリングを行うチャネル制御部を備え,該チャネル制御部は,前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間のチャネル特性を表すチャネルマトリクスを決定し,前記チャネルマトリクスを用いて,前記の各ユーザ端末装置の各アンテナに対応する総チャネル容量改善量を計算し,前記の計算した総チャネル容量改善量の大きい順にM個(Mは1以上,U・Nt未満の整数)のユーザ端末装置とアンテナとの組合せを選択し,選択されたユーザ端末装置とアンテナとの組合せに対して残りのユーザ端末装置とアンテナとの組合せから前記と同様のユーザ端末装置とアンテナとの組合せ選択をn−1回(nは選択すべきアンテナ数)まで繰り返し,n回目に総チャネル容量改善量の総和が最大になるn個のユーザ端末装置とアンテナとの組合せを決定し,
前記の決定に基づいて前記の各ユーザ端末装置に使用するアンテナに関するフィードバック情報を送信する基地局装置。
【請求項10】
前記ユーザ端末スケジューリングを所定のタイミングで更新する請求項9に記載の基地局装置。
【請求項11】
前記チャネル特性を各チャネルの経路損失に基づいて正規化し,その正規化したチャネルマトリクスに基づいて前記ユーザ端末スケジューリングを行う請求項9に記載の基地局装置。
【請求項12】
前記のn回目のユーザ端末装置とアンテナとの組合せ決定を,ユーザ端末装置の直近の平均チャネル容量に対する,新規のアンテナ選択に基づく総チャネル容量改善量の比が大きい組合せを選択することによって決定する請求項9に記載の基地局装置。
【請求項13】
基地局装置と複数のユーザ端末装置とを具備するマルチユーザ無線通信システムにおいて,
前記ユーザ端末装置はU台(Uは1以上の整数)であり,各該ユーザ端末装置はそれぞれNt本(Ntは1以上の整数)のアンテナを備え,
前記基地局装置はユーザ端末スケジューリングのためのチャネル制御部を備え,
前記チャネル制御部に前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間のユーザ端末スケジューリングをツリー手続きに基づいて実行させるための制御プログラムであって,
前記基地局装置と前記の各ユーザ端末装置との間のチャネル特性を表すチャネルマトリクスを決定し,
前記チャネルマトリクスを用いて,前記の各ユーザ端末装置の各アンテナに対応する総チャネル容量改善量を計算し,
前記の計算した総チャネル容量改善量の大きい順にM個(Mは1以上,U・Nt未満の整数)のユーザ端末装置とアンテナとの組合せを選択し,
選択されたユーザ端末装置とアンテナとの組合せに対して残りのユーザ端末装置とアンテナとの組合せから前記と同様のユーザ端末装置とアンテナとの組合せ選択をn−1回(nは選択すべきアンテナ数)まで繰り返し,
n回目に総チャネル容量改善量の総和が最大になるn個のユーザ端末装置とアンテナとの組合せを決定する前記基地局装置の制御プログラム。
【請求項14】
前記ユーザ端末スケジューリングを所定のタイミングで更新する請求項13に記載の制御プログラム。
【請求項15】
前記チャネル特性を各チャネルの経路損失に基づいて正規化し,その正規化したチャネルマトリクスに基づいて前記ユーザ端末スケジューリングを行う請求項13に記載の制御プログラム。
【請求項16】
前記のn回目のユーザ端末装置とアンテナとの組合せ決定を,ユーザ端末装置の直近の平均チャネル容量に対する,新規のアンテナ選択に基づく総チャネル容量改善量の比が大きい組合せを選択することによって決定する請求項13に記載の制御プログラム。
【請求項17】
基地局装置と複数のユーザ端末装置とを具備するマルチユーザ無線通信システムにおけるユーザ端末装置であって,
前記基地局装置から使用するアンテナに関するフィードバック情報を受信する手段と,送信アンテナの選択と送信データ形式の設定とを行う送信制御手段とを備え,
受信した前記フィードバック情報に基づいて前記送信制御手段が送信アンテナの選択と送信データ形式の設定とを行うユーザ端末装置。
【請求項18】
同時に使用する送信アンテナを1本とする請求項17に記載のユーザ端末装置。
【請求項19】
基地局装置と複数のユーザ端末装置とを具備するマルチユーザ無線通信システムにおけるユーザ端末装置であって,
前記基地局装置から使用するアンテナに関するフィードバック情報を受信する手段と,受信アンテナの切替手段と,1本の受信アンテナを用いる信号検出手段を備え,
受信した前記フィードバック情報に基づいて受信アンテナの切替を行い,信号検出を行うユーザ端末装置。
【請求項20】
基地局装置と複数のユーザ端末装置とを具備するマルチユーザ無線通信システムにおけるユーザ端末装置であって,
前記基地局装置から使用するアンテナに関するフィードバック情報を受信する手段と,複数の受信アンテナを用いる信号検出手段とを備え,
受信した前記フィードバック情報に基づいて複数の受信アンテナを用いる信号検出を行うユーザ端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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