説明

無線通信システム及びその設置方法

【課題】チャンネル間の電波干渉を引き起こすことを回避して安定した無線環境(通信)を得ることを可能にするLCXケーブルを使用すること。
【解決手段】それぞれ伝送路に沿った空間に信号エネルギの一部を電波として輻射するそれぞれチャンネルの異なる並設された複数の漏洩伝送路と、それぞれ並設された各漏洩伝送路に対応して設けられ、各漏洩伝送路との間でそれぞれ電波の送受信を行い、かつ前方方向の空間領域に電波を送信する指向性を有し、当該アンテナ素子と対応する漏洩伝送路以外の漏洩伝送路に対して電波が交差しない向きに設置され、当該アンテナ素子と対応する漏洩伝送路以外の漏洩伝送路に電波が届くことがない複数のアンテナ素子とを具備する無線通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば漏洩同軸ケーブル(以下、Leaky Coaxial Cable(LCX)ケーブルと称する)等の漏洩伝送路を用いた無線通信システム及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LCXケーブルは、同ケーブルに沿った空間に信号エネルギの一部を電波として幅射する。この電波の幅射は、電波が漏れるとも称する。このLCXケーブルは、同軸ケーブルの外部導体の長さ方向に周期的に複数のスロットを設け、これらスロットからケーブル内部を伝送する電気信号エネルギの一部を電波として外部へ放出する。
このようなLCXケーブル1を用いた無線ローカルエリアネットワーク(LAN)システム(以下、LCX無線LANシステムと称する)は、例えば図5に示すように、LCXケーブル1をアンテナとして機能させるアクセスポイント10の無線通信機器と、このLCXケーブル1から幅射される電波を送受信するクライアント11側のアンテナ12と、このアンテナ12に接続されたクライアント11の無線通信機器と、これら無線通信機器に接続される通信機器とにより構成される。通信機器は、アクセスポイント10側とクライアント11側とにおいて各無線通信機器間を介在して通信を行う。
LCX無線LANシステムの技術としては、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−33290公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LCXケーブル1は、電波の幅射量(電波の漏れ量)が微弱であり、この電波の届くエリアが狭い。このため、広いエリアで電波の送受信を行うためには、例えば、上記図5に示すLCX無線LANシステムを複数設置し、これらシステムの各LCXケーブル1を広範囲に亘って設けることが行われる。
しかしながら、上記LCX無線LANシステムを複数設置した場合、これらシステム毎のチャンネルの異なる複数本、例えば2本のLCXケーブル1を隣接して並設し、かつこれらLCXケーブル1毎に対応するクライアント側の各アンテナ12がそれぞれ設けられていると、これらアンテナ12の性能によっては、アンテナ12から送出された電波が当該アンテナ12に対応するLCXケーブル1でなく別のLCXケーブル1に届いてしまい、チャンネル間で電波干渉を引き起こす可能性がある。
本発明の目的は、チャンネル間の電波干渉を引き起こすことを回避して安定した無線環境(通信)を得ることを可能にするLCXケーブルを使用する無線通信システム及びその設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主要な局面に係る無線通信システムは、それぞれ伝送路に沿った空間に信号エネルギの一部を電波として輻射するそれぞれチャンネルの異なる並設された複数の漏洩伝送路と、それぞれ並設された各漏洩伝送路に対応して設けられ、各漏洩伝送路との間でそれぞれ電波の送受信を行い、かつ前方方向の空間領域に電波を送信する指向性を有し、当該アンテナ素子と対応する漏洩伝送路以外の漏洩伝送路に対して電波が交差しない向きに設置され、当該アンテナ素子と対応する漏洩伝送路以外の漏洩伝送路に電波が届くことがない複数のアンテナ素子とを具備する。
本発明の主要な局面に係る無線通信システムの設置方法は、それぞれ伝送路に沿った空間に信号エネルギの一部を電波としての輻射するそれぞれチャンネルの異なる複数の漏洩伝送路を並設し、かつそれぞれ並設された各漏洩伝送路に対応して設けられ、各漏洩伝送路との間で電波の送受信を行う複数のアンテナ素子を有する無線通信システムの設置方法において、複数のアンテナ素子は、それぞれ前方方向の空間領域に電波を送信する指向性を有し、当該アンテナ素子と対応する漏洩伝送路以外の漏洩伝送路に対して電波が交差しない向きに設置され、当該アンテナ素子と対応する漏洩伝送路以外の漏洩伝送路に電波が届くことがない。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、チャンネル間の電波干渉を引き起こすことを回避して安定した無線環境(通信)を得ることを可能にするLCXケーブルを使用する無線通信システム及びその設置方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るLCX無線LANシステムの一実施の形態を示す構成図。
【図2】同システムにおけるアンテナの指向性を示す摸式図。
【図3】同システムの外観図。
【図4】同システムにおけるアンテナの配置の変形例を示す図。
【図5】従来におけるLCXケーブルを用いたLCX無線LANシステムを示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は無線通信システムであるLCX無線LANシステムの構成図を示す。同システムには、例えば2つのアクセスポイント10−1、10−2側の各無線通信機器が設けられている。これら無線通信機器には、それぞれチャンネルが異なる各LCXケーブル1−1、1−2が接続されている。これらLCXケーブル1−1、1−2は、並設されている。LCXケーブル1−1からは、電波f1−1が輻射され、LCXケーブル1−2からは、電波f1−2が輻射される。
LCXケーブル1−1には、当該LCXケーブル1−1に対応するクライアント11−1側のアンテナ(アンテナ素子)20−1が設けられている。LCXケーブル2−1には、当該LCXケーブル1−2に対応するクライアント11−2側のアンテナ(アンテナ素子)20−2が設けられている。
各アンテナ20−1、20−2は、それぞれLCXケーブル1−1、1−2との間で電波の送受信を行う。これらアンテナ20−1、20−2は、それぞれ送信する各電波f10−1、f10−2に指向性を有する。すなわち、各アンテナ20−1、20−2は、図2に示すようにそれぞれ平板状に形成され、当該平板面21−1、21−2に対して垂直方向、すなわち各平板面21−1、21−2の前方方向の空間領域に電波を送信する指向性を有する。
又、クライアント11−1、11−2側の各アンテナ20−1、20−2は、それぞれ当該各アンテナ20−1、20−2と対応する各LCXケーブル1−1、1−2以外の各LCXケーブル1−2、1−1に対して送信する各電波f10−1、f10−2が交差しない向きに設置される。具体的に各アンテナ20−1、20−2は、それぞれ図3に示すように水平面(xy面)に対して垂直方向(z方向)に沿った下方から上方に向いた方向に指向性を有するように設置される。すなわち、各アンテナ20−1、20−2は、それぞれ各平板面21−1、21−2を水平面(xy面)に対して垂直方向(z方向)に向けて配置される。各アンテナ20−1、20−2の指向性の向きは、互いに平行になる。
このように上記一実施の形態によれば、各アンテナ20−1、20−2に指向性を持たせ、かつこれらアンテナ20−1、20−2を、それぞれ当該各アンテナ20−1、20−2と対応する各LCXケーブル1−1、1−2以外の各LCXケーブル1−2、1−1に対して送信する各電波f10−1、f10−2が交差しない向きに設置する。これにより、クライアント11−1側のアンテナ20−1から送信された電波f10−1は、LCXケーブル1−1で受信され、他のチャンネルのLCXケーブル1−2に届くことがない。同様に、クライアント11−2側のアンテナ20−2から送信された電波f10−2は、LCXケーブル1−2で受信され、当該LCXケーブル1−2に隣接する他のチャンネルのLCXケーブル1−1に届くことがない。
従って、クライアント11−1、11−2側の各アンテナ20−1、20−2から送信される各電波f10−1、f10−2の強弱に関わらず、隣接する他のチャンネルのLCXケーブル1−1での電波干渉が回避でき、安定した無線環境(通信)を得ることができる。
【0009】
上記のように各チャンネルの各LCXケーブル1−1、1−2間には、オーバーラップがあり近隣するチャンネルによる影響があるので、この影響を回避するために各LCXケーブル1−1、1−2を離すことが推奨されているが、システムの数、構成、配置によって各LCXケーブル1−1、1−2を離すことが難しい場合がある。このような場合でも、各アンテナ20−1、20−2に指向性を持たせ、かつ当該各アンテナ20−1、20−2から送信する各電波f10−1、f10−2が交差しない向きに当該各アンテナ20−1、20−2を設置することにより、各LCXケーブル1−1、1−2間での電波干渉が回避できる。
本LCX無線LANシステムは、例えば建屋内に設けられ、各LCXケーブル1−1、1−2は、例えば室内の壁の上部に並設され、かつクライアント11−1、11−2側の各アンテナ20−1、20−2は、室内の壁の下部に配設される。これらアンテナ20−1、20−2は、上記図3に示すのと同様に、それぞれ当該各アンテナ20−1、20−2と対応する各LCXケーブル1−1、1−2以外の各LCXケーブル1−2、1−1に対して送信する各電波f10−1、f10−2が交差しない向き、すなわち各平板面21−1、21−2を水平面(xy面)に対して垂直方向(z方向)に向けて配置される。これらアンテナ20−1、20−2は、例えばデスク上に置かれた各パーソナルコンピュータにそれぞれ接続される。
このように建屋内に設けられたLCX無線LANシステムにおいて、システムの数、構成、配置によって各LCXケーブル1−1、1−2を離すことが難しい場合でも、各LCXケーブル1−1、1−2間での電波干渉が回避できる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
上記一実施の形態では、2本のLCXケーブル1−1、1−2を配設し、指向性を持つ各アンテナ20−1、20−2をその各電波f10−1、f10−2が交差しない向きに設置しているが、これに限らず、LCXケーブルが複数本配設された場合でも、これらLCXケーブルのチャンネルに対応する各アンテナをその各電波が交差しない向きに設置するようにしてもよい。
又、2本のLCXケーブル1−1、1−2の配設方法は、例えば図4に示すように各LCXケーブル1−1、1−2の間に各アンテナ20−1、20−2を配設し、これらアンテナ20−1、20−2からの各電波f10−1、f10−2の送信方向を互いに反対方向にしてもよい。
【符号の説明】
【0010】
1−1,1−2:LCXケーブル、10−1,10−2:アクセスポイント、f1−1,f1−2:電波、11−1,11−2:クライアント、20−1,20−2:アンテナ、f10−1,f10−2:電波、21−1,21−2:平板面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ伝送路に沿った空間に信号エネルギの一部を電波として輻射するそれぞれチャンネルの異なる並設された複数の漏洩伝送路と、
それぞれ前記並設された各漏洩伝送路に対応して設けられ、前記各漏洩伝送路との間でそれぞれ前記電波の送受信を行い、かつ前方方向の空間領域に前記電波を送信する指向性を有し、当該アンテナ素子と対応する前記漏洩伝送路以外の前記漏洩伝送路に対して前記電波が交差しない向きに設置され、当該アンテナ素子と対応する前記漏洩伝送路以外の前記漏洩伝送路に前記電波が届くことがない複数のアンテナ素子と、
を具備することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記アンテナ素子は、平板状に形成したことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記アンテナ素子は、水平面に対して垂直方向に沿った下方から上方に向いた方向に前記指向性を有するように設置することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
それぞれ伝送路に沿った空間に信号エネルギの一部を電波としての輻射するそれぞれチャンネルの異なる複数の漏洩伝送路を並設し、かつそれぞれ前記並設された各漏洩伝送路に対応して設けられ、前記各漏洩伝送路との間で電波の送受信を行う複数のアンテナ素子を有する無線通信システムの設置方法において、
前記複数のアンテナ素子は、それぞれ前方方向の空間領域に前記電波を送信する指向性を有し、当該アンテナ素子と対応する前記漏洩伝送路以外の前記漏洩伝送路に対して前記電波が交差しない向きに設置され、当該アンテナ素子と対応する前記漏洩伝送路以外の前記漏洩伝送路に前記電波が届くことがない、
ことを特徴とする無線通信システムの設置方法。
【請求項5】
平板状に形成した前記アンテナ素子を用いることを特徴とする請求項4記載の無線通信システムの設置方法。
【請求項6】
前記アンテナ素子は、水平面に直交する方向に沿った下方から上方に向いた方向に前記指向性を有するように設置することを特徴とする請求項4記載の無線通信システムの設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−110020(P2012−110020A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7457(P2012−7457)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【分割の表示】特願2009−187815(P2009−187815)の分割
【原出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】