説明

無線通信システム及び通信端末、並びに、基地局接続方法及び基地局接続プログラム

【課題】無線通信システムへの新たな機器の導入なしに、通信トラフィックの分散をする。
【解決手段】通信端末が、優先接続先基地局を識別するための情報を記憶する。通信端末の周囲の無線状況を観測する。観測結果に基づいて無線状況が良好な基地局ほど上位になるように各基地局に優先順位を付与し、優先順位を付与した各基地局を接続候補基地局リストとしてリスト化して記憶する。優先接続先基地局を識別するための情報と、接続候補基地局リストを照合し、接続候補基地局リスト内に優先接続先基地局が存在する場合は優先接続先基地局に付与されている優先順位を最上位へと変更する。接続候補基地局リスト内の優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、選択した基地局と通信を行う。通信が継続中の場合であっても定期的に動作することにより通信が継続中の場合であっても接続先の基地局を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信システムにおける通信端末の基地局への接続に関し、より詳細にはトラフィックの分散に関する。
【背景技術】
【0002】
PHS(Personal Handy-phone System)等の無線通信システムにおいては、通信端末が接続動作を実施する際にオープンサーチと呼ばれる基地局探索動作が実施される。
【0003】
ここで、オープンサーチとは周囲の無線状況を観測することにより接続候補基地局リストを作成するものである。具体的には通信端末が、基地局から送出される信号を受信し、通信端末にてRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)やCINR(Carrier to Interference-plus-Noise Ratio:搬送波レベル対干渉雑音比)、エラー発生回数等を観測し、無線状況の観測指標として利用する。
【0004】
他方、昨今の無線通信システムの高機能化に伴い通信速度が高速化している。そのため、これまでのように移動体での通信のために無線通信システムを利用するという用途のみならず、有線通信システムの代替通信手段として無線通信システムを利用するというケースが増えている。以前であれば、通信機器や運用システムによっては、有線通信システムを利用することが困難な環境や、有線通信路を敷設することが困難な状況や敷設コストの条件から、通信サービスの運用が困難な場合があった。しかし、無線通信システムの高機能化により、そのような環境に対して無線通信システムを用いることでサービス提供が可能となっている。
【0005】
このような無線通信システムの利用形態では、通信端末は特定位置にほぼ固定的に配置され運用されることが多い。これにより、通信端末が常時移動するような運用形態に比較し、通信端末からの通信トラフィックを予想することが容易であり、通信端末の配置状況に応じて基地局の設置計画を検討することが可能になると考えられる。もっとも、通信端末は、固定的に配置される場合であっても運用移動体通信としての機能のままサービス提供された場合は、通信開始時に周辺の無線環境の観測により最適な接続先の基地局を選択する動作を行っている。
【0006】
そのため、設置状況に応じて当初の予想とは異なる基地局への接続がなされる場合があり、これにより特定基地局へ集中して接続動作が実施されることによる通信トラフィックの集中が発生する。そして、無線通信システムにおいて特定基地局への通信トラフィックの集中が発生すると、有限の無線通信リソース(無線周波数、無線帯域や基地局の管理メモリ等)における通信のため、接続された通信端末の通信速度が低下することや通信品質の低下を招く。
【0007】
そのため、このような無線通信システムにおいては、無線通信トラフィックを複数の基地局へ分散させることが求められており、このような通信トラフィックの集中を防ぐために種々の提案が行われている。具体的には、例えば、特許文献1に記載されているような通信トラフィックの分散方法がある。
【0008】
特許文献1に記載の通信トラフィックの分散方法では、無線通信システム内にネットワーク管理システム等の機器を別途設置し、通信端末と基地局の接続状況を監視し、通信端末への強制的に接続切替指示を行うことによりシステム全体での通信トラフィックの分散を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3996096号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の方法等は、非常に効果的である反面、無線通信システムへ新たな機器を導入することによるコスト増加を招くことや、通信端末の台数が増加するに従い管理方法が繁雑化することになる、という問題がある。
【0011】
また、ネットワーク管理システムでは、基地局の動作状況に応じて通信端末の接続先を適宜変更する必要があり、基地局の一時的な停止や復旧についても常時監視する必要がある。
【0012】
更に、ネットワーク管理システムでは、通信端末についても同様に監視する必要があり、通信端末の設置や撤去、また移設や交換が行われた場合についても、これらを監視し適宜最適な基地局使用を検討しなければならない。
【0013】
そこで、本発明は、無線通信システムへの新たな機器の導入なしに、通信トラフィックの分散をすることが可能な、無線通信システム及び通信端末、並びに、基地局接続方法及び基地局接続プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点によれば、複数の基地局の何れかと接続して無線通信を行う通信端末において、優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を識別するための情報を記憶する基地局情報記憶手段と、当該通信端末の周囲の無線状況を観測する無線通信手段と、前記観測結果に基づいて無線状況が良好な基地局ほど上位になるように各基地局に優先順位を付与し、当該優先順位を付与した各基地局を接続候補基地局リストとしてリスト化して記憶する基地局リスト記憶手段と、前記優先接続先基地局を識別するための情報と、前記接続候補基地局リストを照合し、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が存在する場合は当該優先接続先基地局に付与されている前記優先順位を最上位へと変更する優先基地局照合手段と、前記接続候補基地局リスト内の優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、当該選択した基地局と通信を行う通信制御手段と、を備え、前記通信が継続中の場合であっても定期的に前記無線通信手段、前記基地局リスト記憶手段及び前記優先基地局照合手段を動作させることにより通信が継続中の場合であっても接続先の基地局を変更することを特徴とする通信端末が提供される。
【0015】
本発明の第2の観点によれば、複数の通信端末を有する無線通信システムにおいて、前記複数の端末は本発明の第1の観点により提供される通信端末であり、前記通信端末が記憶している、優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を、前記通信端末のそれぞれ毎に異ならせることによって、或る基地局に複数の通信端末からの接続が集中することを防止することを特徴とする無線通信システムが提供される。
【0016】
本発明の第3の観点によれば、複数の基地局の何れかと接続して無線通信を行う通信端末に組み込まれる基地局接続プログラムにおいて、優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を識別するための情報を記憶する基地局情報記憶手段と、当該通信端末の周囲の無線状況を観測する無線通信手段と、前記観測結果に基づいて無線状況が良好な基地局ほど上位になるように各基地局に優先順位を付与し、当該優先順位を付与した各基地局を接続候補基地局リストとしてリスト化して記憶する基地局リスト記憶手段と、前記優先接続先基地局を識別するための情報と、前記接続候補基地局リストを照合し、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が存在する場合は当該優先接続先基地局に付与されている前記優先順位を最上位へと変更する優先基地局照合手段と、前記接続候補基地局リスト内の優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、当該選択した基地局と通信を行う通信制御手段と、を備え、前記通信が継続中の場合であっても定期的に前記無線通信手段、前記基地局リスト記憶手段及び前記優先基地局照合手段を動作させることにより通信が継続中の場合であっても接続先の基地局を変更する通信端末としてコンピュータを機能させることを特徴とする基地局接続プログラムが提供される。
【0017】
本発明の第4の観点によれば、複数の通信端末を有する無線通信システムが行う基地局接続方法において、前記基地局が、優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を識別するための情報を記憶する基地局情報記憶ステップと、当該通信端末の周囲の無線状況を観測する無線通信ステップと、前記観測結果に基づいて無線状況が良好な基地局ほど上位になるように各基地局に優先順位を付与し、当該優先順位を付与した各基地局を接続候補基地局リストとしてリスト化して記憶する基地局リスト記憶ステップと、前記優先接続先基地局を識別するための情報と、前記接続候補基地局リストを照合し、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が存在する場合は当該優先接続先基地局に付与されている前記優先順位を最上位へと変更する優先基地局照合ステップと、前記接続候補基地局リスト内の優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、当該選択した基地局と通信を行う通信制御ステップと、を備え、前記通信が継続中の場合であっても定期的に前記無線通信ステップ、前記基地局リスト記憶ステップ及び前記優先基地局照合ステップを行うことにより通信が継続中の場合であっても接続先の基地局を変更し、前記通信端末が記憶している、優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を、前記通信端末のそれぞれ毎に異ならせることによって、或る基地局に複数の通信端末からの接続が集中することを防止することを特徴とする無線通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通信端末に事前に優先接続先基地局情報を設定可能とすることから、通信時に特定の基地局への接続が集中することなく、通信トラフィックを分散させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態におけるシステム全体の基本的構成を表す図である。
【図2】本発明の実施形態における通信端末の基本的構成を表す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態における基地局識別番号の照合について表す図である。
【図4】本発明の実施形態における接続候補基地局リストと、これに対する優先接続先基地局の照合によるリスト修正動作について表す概念図である。
【図5】本発明の実施形態における接続開始時の基本的動作を表すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態における定期的なリスト修正の基本的動作を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の実施形態の概略を説明する。本発明の実施形態は、概略、PHS等の無線通信システムにおいて、複数の通信端末が通信する際に特定への基地局への接続トラフィックが集中しないように分散させることにより、通信品質や通信速度の安定性を向上させるというものである。
【0021】
まず、図1を参照して本発明の実施形態におけるシステム全体の基本的構成について説明する。
【0022】
本実施形態は通信端末100、基地局200A、基地局200B及び後位接続機器300を有する。また、通信端末100には、予め優先接続先基地局情報161として各基地局をそれぞれ識別するための「基地局識別番号」と、基地局識別番号の一致を照合および確認するための「識別番号照合範囲」が設定されている。
【0023】
なお、図1には説明の便宜上、1つの通信端末及び後位接続機器と、2つの基地局とを図示しているが、これは本実施形態の適用範囲を限定する趣旨ではない、本実施形態は任意の台数の通信端末と、任意の台数の後位接続機器と、任意の台数の基地局とからなる通信システムとして実現可能である。
【0024】
続いて、図2を参照して通信端末100の基本的構成を説明する。ここで、通信端末100は、周辺無線環境の観測や基地局との通信を行う端末である。
【0025】
通信端末100は、アンテナ110、無線通信部120、基地局リスト記憶部130、優先基地局照合部140、通信制御部150及び基地局情報記憶部160を有する。
【0026】
アンテナ110及び無線通信部120は、通信端末100が周辺無線環境の観測や基地局との通信を行うために用いる部分である。
【0027】
基地局リスト記憶部130は、情報を保持する記憶装置である。基地局リスト記憶部130は、接続候補基地局リスト131を記憶している。この接続候補基地局リスト131は、通信端末100が、基地局との通信に先立ち、無線通信装置により周囲の無線状況を観測し、観測結果に基づいて各基地局に対して優先順位を付けることにより作成される。また、接続候補基地局リスト131は基地局の優先順位を変更する等により適宜修正される。この修正動作については後述する。
【0028】
優先基地局照合部140は、接続候補基地局リスト131と優先接続先基地局情報の照合を行い、接続候補基地局リスト131の修正を行う部分である。この照合動作についても後述する。
【0029】
通信制御部150は、後位に配置されるパソコン(Personal computer)等の機器である後位接続機器300と接続され通信端末100の制御を行う。更に、後位接続機器300から通信制御装置150を経由することで、無線通信装置による周囲の無線状況の観測動作を起動し、観測動作により作成した接続候補基地局リスト131を参照することも可能とする。
【0030】
基地局情報記憶部160は、基地局リスト記憶部130と同様、情報を保持する記憶装置である。基地局情報記憶部160は、優先接続先基地局情報161を記憶している。優先接続先基地局情報161には優先接続先の基地局識別番号、識別番号照合範囲、優先外接続可否フラグが含まれる。優先接続先基地局情報161は、通信制御部150を介した後位接続機器300によって設定及び変更が可能とする。
【0031】
なお、本機能ブロック図では基地局リスト記憶部130と、基地局情報記憶部160は別々に図示されているが、一つの記憶装置により基地局リスト記憶部130と、基地局情報記憶部160の双方を実現するようにしてもよい。
【0032】
また、通信制御部150や、優先接続先基地局照合部140は、ハードウェアにより実現してもよく、ハードウェアとソフトウェアが協働して実現されるようにしてもよい。
【0033】
次に、図3を参照して優先基地局照合部140が行う照合動作について説明する。
【0034】
本実施形態における照合動作では、接続候補基地局リスト131内の各基地局識別番号と、優先接続先基地局情報161として事前に保存された優先接続先基地局の基地局識別番号とを、照合範囲についてのみ照合を行う。
【0035】
これにより、1つの優先接続先基地局情報の設定であっても、検出される基地局識別番号の範囲指定が可能となる。
【0036】
次に、図4を参照して接続候補基地局リスト131と、これに対する優先接続先基地局の照合によるリスト修正動作について説明する。
【0037】
接続候補基地局リスト131は、通信端末100が基地局との通信に先立ち、周辺の無線状況の観測する基地局探索動作により構築される。具体的には、観測済みの複数の基地局識別番号とともに無線品質情報(RSSIやCINR、エラー率等)の情報が保存され、かつ無線品質情報に基づき順位付けて作成される。通信端末100が基地局との通信を開始する場合、通信端末100は、接続候補基地局リスト131に設定されている優先接続先基地局情報および照合範囲に合致する基地局の照合を行い、合致する基地局が接続候補基地局リスト内に存在する場合には、当該基地局を接続候補基地局リストの最優先に昇格させることにより接続候補基地局リスト131を更新し、順位にしたがって基地局への接続動作が実施される。
【0038】
通信端末100の基地局への接続動作時には、接続候補基地局リスト131の優先順位に基づき観測済みの各基地局への接続試行が実施される。このため、優先接続先基地局が検出された場合には無線状況に関わらず当該基地局へ優先的に接続が実施され、優先接続先基地局が検出されなかった場合には、従来通りに無線状況が反映された接続候補基地局リスト131に基づき接続が実施される。
【0039】
これにより、個々の通信端末100はあらかじめ設定された優先接続先基地局情報に基づき接続先の基地局を選択することになり、基地局への接続トラフィックを分散させることが可能となるという効果を奏する。
【0040】
また、通信端末100は通信中においても接続先の基地局のみならず、定期的に周辺基地局の無線状況を監視し、接続時と同様に接続候補基地局リストの更新および優先接続先基地局の照合動作を継続する。
【0041】
この継続的な監視動作により、通信端末100の通信開始時において優先接続先基地局が検出されず、従来の無線状況のみの接続候補基地局リストにより基地局の選択や通信が開始された場合においても、優先接続先基地局の機能復旧とともにこれを検出し、通信端末100が能動的に現在の接続先基地局から優先接続先基地局への接続切替(ハンドオーバ)を実施する。
【0042】
これにより、優先接続先基地局となりうる基地局が一時的な障害等により通信出来ない状況のために、通信端末100が当該基地局へ接続できなかった場合でも、当該基地局の復旧により自動的に優先接続先基地局への接続に変更され、通信トラフィックを分散させることが可能となるという効果を奏する。
【0043】
また、無線通信システム内にネットワーク管理システムのような追加機器を配置することなく、基地局への通信トラフィックを分散させることが可能となるという効果を奏する。
【0044】
次に、図5のフローチャートを参照して通信端末100の基地局選択動作について説明する。なお、基地局選択後の基地局との通信動作(例えば、PHSにおける無線リンクチャネル確立動作等)については、無線通信方式に依存し、本発明の範囲外のため省略する。
【0045】
通信端末100が基地局選択動作を開始すると、まず一般的な方法により接続候補基地局リストの作成を行う(ステップS401)。このリスト作成動作は、無線通信方式に依存するため説明を省略する。(例えば、PHSの場合にはオープンサーチと呼ばれる連続的な受信動作により、既定時間内に受信した複数の基地局からの信号を検出および観測することによりリスト作成される。)本実施形態では、この接続候補基地局リスト131に対し優先接続先基地局の照合によるリスト修正を行う。
【0046】
まず、優先接続先基地局情報161に含まれる優先外接続可否フラグを確認することにより、設定状態を確認する(ステップS402)。
【0047】
ここで、設定状態が有効な場合には(ステップS403において許可)、先に作成された接続候補基地局リストに優先接続先基地局が存在するか照合を行う(ステップS404)。一方、設定状態が有効でない場合には(ステップS403において不許可)、優先接続先基地局が存在するか否かについての照合は行わない。
【0048】
ステップS404における照合の結果、優先接続先基地局が存在する場合には(ステップS405において有り)、図3に示されるように当該基地局が接続候補基地局リスト131における順位の最上位となるようにリスト修正する(ステップS406)。なお、照合の結果、複数の優先接続先基地局が検出された場合には、先の接続候補基地局リスト131における優先順位関係を保存した状態でリストの最上位へ配置する。例えば、修正前の接続候補基地局リスト131において、優先順位が3位であった基地局と、それより下位である5位であった基地局がそれぞれ優先接続先基地局として検出された場合について考える。この場合は、3位であった基地局が新たに1位の基地局となり、5位であった基地局が新たに2位の基地局となる。すなわち、修正前の接続候補基地局リスト131における優先順位関係が保存されたままリストが修正される。
【0049】
一方、ステップS404における照合の結果、優先接続先基地局が存在しない場合には(ステップS405において無し)、接続候補基地局リストの修正は行わない。
【0050】
そして、接続候補基地局リストの修正が行われなかった場合は修正がされていない接続候補基地局リスト131に基づいて、接続候補基地局リストの修正が行われ場合は修正後の接続候補基地局リスト131に基づいて通信が行われることとなる(ステップS407)。具体的には、優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、当該選択した基地局と通信を行う。
【0051】
また、上述したように実施形態は、接続時にリストを修正するのみならず、定期的に周辺基地局の無線状況を監視し、接続時と同様に接続候補基地局リストの更新および優先接続先基地局の照合動作を継続することも可能である。この動作について図6のフローチャートを参照して説明する。なお、ステップS501〜ステップS507の動作は、上述したステップS401〜ステップS407と同一であるので説明を省略する。
【0052】
ステップS507において通信を開始後、予め定めておいた所定時間が経過しているか否かを確認する(ステップS507)。そして、所定時間が経過していないのであれば(ステップS507においてNO)そのまま通信を継続する。一方、所定時間が経過している場合は(ステップS507においてYES)、通信を継続したまま再度周辺基地局の無線状況を監視し接続候補基地局リスト131を作成する(ステップS501)。その後、ステップS502〜ステップS506の動作を行い、更新後(修正後)の接続候補基地局リスト131に基づいて通信を行う。この場合、優先順位が変動していれば能動的に現在の接続先基地局から優先接続先基地局への接続切替(ハンドオーバ)が実施されることとなる(ステップS507)。
【0053】
上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0054】
例えば、上述した実施形態においてはPHSによる無線通信システムを想定していたが、本実施形態は他の無線通信システムへの適用可能である。
【0055】
発明を適用可能な無線通信ネットワークには、個々の基地局を特定するための識別番号等の識別情報と、通信端末100が基地局との通信中に定期的に継続して周辺無線環境を観測可能な機能が必要であるが、これらの情報および機能は無線LAN(Local Area Network)やCDMA(Code Division Multiple Access)等の一般的な無線通信システムにおいても有している。そのため、それらの無線通信システムへの適用も可能である。
【0056】
無線LANに応用する場合には例えば通信端末をPOS端末として実装することができる。このようにすることの効果について説明する。
【0057】
通常POS端末は無線LANにて店舗サーバ、PLU(Price Look UP)サーバ等と接続されているが、POS端末は移動することが無いため、電源が立ち上げられると一日中同じ無線LAN基地局に接続されている。そのため、朝一時的に一部の基地局が故障していると一日中トラフィックが他の基地局に集中してしまう。しかし、本実施形態を用いて通信中も優先基地局を監視することにより負荷分散を図ることが可能となる。
【0058】
なお、本発明の実施形態である通信端末、基地局、後位接続機器は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータをその通信端末、基地局、後位接続機器として機能させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0059】
また、本発明の実施形態による基地局接続方法は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータにその方法を実行させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0060】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0061】
(付記1) 複数の基地局の何れかと接続して無線通信を行う通信端末において、
優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を識別するための情報を記憶する基地局情報記憶手段と、
当該通信端末の周囲の無線状況を観測する無線通信手段と、
前記観測結果に基づいて無線状況が良好な基地局ほど上位になるように各基地局に優先順位を付与し、当該優先順位を付与した各基地局を接続候補基地局リストとしてリスト化して記憶する基地局リスト記憶手段と、
前記優先接続先基地局を識別するための情報と、前記接続候補基地局リストを照合し、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が存在する場合は当該優先接続先基地局に付与されている前記優先順位を最上位へと変更する優先基地局照合手段と、
前記接続候補基地局リスト内の優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、当該選択した基地局と通信を行う通信制御手段と、
を備え、
前記通信が継続中の場合であっても定期的に前記無線通信手段、前記基地局リスト記憶手段及び前記優先基地局照合手段を動作させることにより通信が継続中の場合であっても接続先の基地局を変更することを特徴とする通信端末。
【0062】
(付記2) 付記1に記載の通信端末において、
前記優先接続先基地局を識別するための情報は、前記優先的に接続先として選択すべき基地局を識別するための「基地局識別番号」と、前記基地局識別番号のうちのどの範囲を前記照合の対象とするかを示す「識別番号照合範囲」を含んでおり、
前記照合は、前記接続候補基地局リスト内に含まれる基地局の基地局識別番号と、前記優先接続先基地局を識別するための情報に含まれる基地局識別番号と、を前記識別番号照合範囲内についてのみ照合することにより行われることを特徴とする通信端末。
【0063】
(付記3) 付記1又は2に記載の通信端末において、
前記照合の結果、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が複数存在する場合は当該複数の基地局の優先順位関係を保存した状態で当該複数の基地局を前記接続候補基地局リストの最上位へ配置することを特徴とする通信端末。
【0064】
(付記4) 付記1乃至3の何れか1項に記載の通信端末において、
当該通信端末は、前記通信の継続中に移動させられることなく据え置きの端末として利用されることを特徴とする通信端末。
【0065】
(付記5) 付記1乃至4の何れか1項に記載の通信端末において、
当該通信端末は後位機器に接続され、
前記後位機器を介して前記優先接続先基地局を識別するための情報を設定又は変更され、
前記後位機器に対して接続候補基地局リストを出力する、
ことを特徴とする通信端末。
【0066】
(付記6) 複数の通信端末を有する無線通信システムにおいて、
前記複数の端末は付記1乃至5の何れか1項に記載の通信端末であり、
前記通信端末が記憶している、優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を、前記通信端末のそれぞれ毎に異ならせることによって、或る基地局に複数の通信端末からの接続が集中することを防止することを特徴とする無線通信システム。
【0067】
(付記7) 複数の基地局の何れかと接続して無線通信を行う通信端末に組み込まれる基地局接続プログラムにおいて、
優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を識別するための情報を記憶する基地局情報記憶手段と、
当該通信端末の周囲の無線状況を観測する無線通信手段と、
前記観測結果に基づいて無線状況が良好な基地局ほど上位になるように各基地局に優先順位を付与し、当該優先順位を付与した各基地局を接続候補基地局リストとしてリスト化して記憶する基地局リスト記憶手段と、
前記優先接続先基地局を識別するための情報と、前記接続候補基地局リストを照合し、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が存在する場合は当該優先接続先基地局に付与されている前記優先順位を最上位へと変更する優先基地局照合手段と、
前記接続候補基地局リスト内の優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、当該選択した基地局と通信を行う通信制御手段と、
を備え、
前記通信が継続中の場合であっても定期的に前記無線通信手段、前記基地局リスト記憶手段及び前記優先基地局照合手段を動作させることにより通信が継続中の場合であっても接続先の基地局を変更する通信端末としてコンピュータを機能させることを特徴とする基地局接続プログラム。
【0068】
(付記8) 複数の通信端末を有する無線通信システムが行う基地局接続方法において、
前記基地局が、
優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を識別するための情報を記憶する基地局情報記憶ステップと、
当該通信端末の周囲の無線状況を観測する無線通信ステップと、
前記観測結果に基づいて無線状況が良好な基地局ほど上位になるように各基地局に優先順位を付与し、当該優先順位を付与した各基地局を接続候補基地局リストとしてリスト化して記憶する基地局リスト記憶ステップと、
前記優先接続先基地局を識別するための情報と、前記接続候補基地局リストを照合し、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が存在する場合は当該優先接続先基地局に付与されている前記優先順位を最上位へと変更する優先基地局照合ステップと、
前記接続候補基地局リスト内の優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、当該選択した基地局と通信を行う通信制御ステップと、
を備え、
前記通信が継続中の場合であっても定期的に前記無線通信ステップ、前記基地局リスト記憶ステップ及び前記優先基地局照合ステップを行うことにより通信が継続中の場合であっても接続先の基地局を変更し、
前記通信端末が記憶している、優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を、前記通信端末のそれぞれ毎に異ならせることによって、或る基地局に複数の通信端末からの接続が集中することを防止することを特徴とする無線通信システム。
【符号の説明】
【0069】
100 通信端末
110 アンテナ
120 無線通信部
130 基地局リスト記憶部
131 接続候補基地局リスト
140 優先基地局照合部
150 通信制御部
160 基地局情報記憶部
161 優先接続先基地局情報
200A、200B 基地局
300 後位接続機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局の何れかと接続して無線通信を行う通信端末において、
優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を識別するための情報を記憶する基地局情報記憶手段と、
当該通信端末の周囲の無線状況を観測する無線通信手段と、
前記観測結果に基づいて無線状況が良好な基地局ほど上位になるように各基地局に優先順位を付与し、当該優先順位を付与した各基地局を接続候補基地局リストとしてリスト化して記憶する基地局リスト記憶手段と、
前記優先接続先基地局を識別するための情報と、前記接続候補基地局リストを照合し、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が存在する場合は当該優先接続先基地局に付与されている前記優先順位を最上位へと変更する優先基地局照合手段と、
前記接続候補基地局リスト内の優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、当該選択した基地局と通信を行う通信制御手段と、
を備え、
前記通信が継続中の場合であっても定期的に前記無線通信手段、前記基地局リスト記憶手段及び前記優先基地局照合手段を動作させることにより通信が継続中の場合であっても接続先の基地局を変更することを特徴とする通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の通信端末において、
前記優先接続先基地局を識別するための情報は、前記優先的に接続先として選択すべき基地局を識別するための「基地局識別番号」と、前記基地局識別番号のうちのどの範囲を前記照合の対象とするかを示す「識別番号照合範囲」を含んでおり、
前記照合は、前記接続候補基地局リスト内に含まれる基地局の基地局識別番号と、前記優先接続先基地局を識別するための情報に含まれる基地局識別番号と、を前記識別番号照合範囲内についてのみ照合することにより行われることを特徴とする通信端末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通信端末において、
前記照合の結果、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が複数存在する場合は当該複数の基地局の優先順位関係を保存した状態で当該複数の基地局を前記接続候補基地局リストの最上位へ配置することを特徴とする通信端末。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の通信端末において、
当該通信端末は、前記通信の継続中に移動させられることなく据え置きの端末として利用されることを特徴とする通信端末。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の通信端末において、
当該通信端末は後位機器に接続され、
前記後位機器を介して前記優先接続先基地局を識別するための情報を設定又は変更され、
前記後位機器に対して接続候補基地局リストを出力する、
ことを特徴とする通信端末。
【請求項6】
複数の通信端末を有する無線通信システムにおいて、
前記複数の端末は請求項1乃至5の何れか1項に記載の通信端末であり、
前記通信端末が記憶している、優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を、前記通信端末のそれぞれ毎に異ならせることによって、或る基地局に複数の通信端末からの接続が集中することを防止することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
複数の基地局の何れかと接続して無線通信を行う通信端末に組み込まれる基地局接続プログラムにおいて、
優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を識別するための情報を記憶する基地局情報記憶手段と、
当該通信端末の周囲の無線状況を観測する無線通信手段と、
前記観測結果に基づいて無線状況が良好な基地局ほど上位になるように各基地局に優先順位を付与し、当該優先順位を付与した各基地局を接続候補基地局リストとしてリスト化して記憶する基地局リスト記憶手段と、
前記優先接続先基地局を識別するための情報と、前記接続候補基地局リストを照合し、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が存在する場合は当該優先接続先基地局に付与されている前記優先順位を最上位へと変更する優先基地局照合手段と、
前記接続候補基地局リスト内の優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、当該選択した基地局と通信を行う通信制御手段と、
を備え、
前記通信が継続中の場合であっても定期的に前記無線通信手段、前記基地局リスト記憶手段及び前記優先基地局照合手段を動作させることにより通信が継続中の場合であっても接続先の基地局を変更する通信端末としてコンピュータを機能させることを特徴とする基地局接続プログラム。
【請求項8】
複数の通信端末を有する無線通信システムが行う基地局接続方法において、
前記基地局が、
優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を識別するための情報を記憶する基地局情報記憶ステップと、
当該通信端末の周囲の無線状況を観測する無線通信ステップと、
前記観測結果に基づいて無線状況が良好な基地局ほど上位になるように各基地局に優先順位を付与し、当該優先順位を付与した各基地局を接続候補基地局リストとしてリスト化して記憶する基地局リスト記憶ステップと、
前記優先接続先基地局を識別するための情報と、前記接続候補基地局リストを照合し、前記接続候補基地局リスト内に前記優先接続先基地局が存在する場合は当該優先接続先基地局に付与されている前記優先順位を最上位へと変更する優先基地局照合ステップと、
前記接続候補基地局リスト内の優先順位が高い基地局を接続先として優先的に選択し、当該選択した基地局と通信を行う通信制御ステップと、
を備え、
前記通信が継続中の場合であっても定期的に前記無線通信ステップ、前記基地局リスト記憶ステップ及び前記優先基地局照合ステップを行うことにより通信が継続中の場合であっても接続先の基地局を変更し、
前記通信端末が記憶している、優先的に接続先として選択すべき基地局である優先接続先基地局を、前記通信端末のそれぞれ毎に異ならせることによって、或る基地局に複数の通信端末からの接続が集中することを防止することを特徴とする無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate