説明

無線通信システム

【課題】複数の伝送路の中から、適切な伝送路を設定することを可能とする無線通信システムを提供する。
【解決手段】無線通信システム100は、複数の伝送路の中から、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する選択部24と、選択部24によって選択された伝送路を設定する設定部25とを備える。選択部24は、前記ユーザデータの伝送に要求される品質情報に基づいて、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の伝送路を設定可能な無線端末を備える無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、伝送速度を増大する技術として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が注目を集めている(例えば、非特許文献1)。具体的には、MIMO技術では、複数のアンテナのそれぞれから、互いに異なるデータを無線端末に送信することが可能である。従って、伝送容量の増大、伝送信頼性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IEEE802.11n、「Part11;Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and Physical Layer(PHY) Specification」、2009年10月29日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無線端末間では、複数の伝送路を設定することが可能である。このようなケースにおいて、複数の伝送路の中から、いくつの伝送路を設定するのかについて、上述した技術では明確に定められていない。また、複数の伝送路の中から、いずれの伝送路を設定するのかについて、上述した技術では明確に定められていない。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、複数の伝送路の中から、適切な伝送路を設定することを可能とする無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の特徴に係る無線通信システム(無線通信システム100)は、複数の伝送路を設定可能な無線端末(無線端末10)を備える。無線通信システムは、前記複数の伝送路の中から、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する選択部(選択部24)と、前記選択部によって選択された伝送路を設定する設定部(設定部25)とを備える。前記選択部は、前記ユーザデータの伝送に要求される品質情報に基づいて、前記ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する。
【0007】
第1の特徴において、無線通信システムは、前記複数の伝送路のそれぞれのスループットを測定する測定部(測定部23)を備える。前記選択部は、前記ユーザデータの伝送に用いる伝送路の候補から、スループットが所定閾値よりも低い伝送路を除外する。
【0008】
第1の特徴において、前記設定部は、通信の開始前において、前記複数の伝送路のそれぞれを順に設定する。前記測定部は、複数の伝送路のそれぞれのスループットを順に測定する。
【0009】
第1の特徴において、前記設定部は、通信の開始後において、前記複数の伝送路のそれぞれを順に設定する。前記測定部は、複数の伝送路のそれぞれのスループットを順に測定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の伝送路の中から、適切な伝送路を設定することを可能とする無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1実施形態に係る無線通信システム100の構成を示す図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るアクセスポイント20の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係るメッセージフォーマットを示す図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る無線通信システム100の動作を示すシーケンス図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係る無線通信システム100の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の実施形態に係る無線通信システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0013】
ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
[実施形態の概要]
実施形態に係る無線通信システムは、複数の伝送路を設定可能な無線端末を備える。無線通信システムは、複数の伝送路の中から、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する選択部と、選択部によって選択された伝送路を設定する設定部とを備える。選択部は、ユーザデータの伝送に要求される品質情報に基づいて、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する。
【0015】
なお、ユーザデータの伝送に要求される品質情報は、例えば、ユーザデータの伝送に要求される利用帯域幅、パケットの送信頻度、物理層の要求送信レート、ユーザデータの伝送に要求されるフレームのサイズなどである。
【0016】
実施形態では、選択部は、ユーザデータの伝送に要求される品質情報に基づいて、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する。従って、複数の伝送路が設定可能な環境下において、ユーザデータの伝送に用いる伝送路として、適切な伝送路を選択(設定)することができる。
【0017】
[第1実施形態]
(無線通信システムの構成)
以下において、第1実施形態に係る無線通信システムの構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る無線通信システム100の構成を示す図である。
【0018】
図1に示すように、無線通信システム100は、無線端末10と、アクセスポイント20とを有する。
【0019】
無線端末10は、例えば、アクセスポイント20とユーザデータの通信を行うように構成されている。無線端末10は、それぞれ、複数のアンテナ11(ここでは、アンテナ11A〜アンテナ11B)を有する。
【0020】
アクセスポイント20は、無線端末10とユーザデータの通信を行うように構成されている。アクセスポイント20は、複数のアンテナ21(ここでは、アンテナ21A〜アンテナ21G)を有する。
【0021】
ここで、第1実施形態では、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が用いられる。具体的には、無線端末10に設けられた複数のアンテナ11のそれぞれとアクセスポイント20に設けられた複数のアンテナ21のそれぞれとの間に伝送路を設定することが可能である。言い換えると、第1実施形態では、42()通りの伝送路を設定可能であることに留意すべきである。
【0022】
なお、無線端末10及びアクセスポイント20は、例えば、IEEE802.11nに準拠する無線通信機能を有するものとする。
【0023】
(アクセスポイントの構成)
以下において、第1実施形態に係るアクセスポイントの構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、第1実施形態に係るアクセスポイント20の構成を示すブロック図である。
【0024】
図2に示すように、アクセスポイント20は、複数のアンテナ21と、通信部22と、測定部23と、選択部24と、設定部25とを有する。
【0025】
各アンテナ21は、個別の伝送路を介して信号を送信する。同様に、各アンテナ21は、個別の伝送路を介して信号を受信する。
【0026】
通信部22は、各アンテナ21を介して信号を送信する。同様に、通信部22は、各アンテナ21を介して信号を受信する。詳細には、通信部22は、信号の変調、信号の復調、信号の符号化、信号の復号化などを行う。
【0027】
また、通信部22は、LLTD(Link Layer Topology Discovery)のようなプロトコルに従って通信を行う機能を有する。
【0028】
測定部23は、複数の伝送路のそれぞれのスループットを測定する。具体的には、後述する設定部25は、無線端末10とアクセスポイント20との間で設定可能な複数の伝送路のそれぞれを順に設定し、測定部23は、無線端末10とアクセスポイント20との間で設定された伝送路のスループットを測定する(以下、スループットスキャン処理)。
【0029】
ここで、無線端末10とアクセスポイント20との間の通信の開始前において、スループットスキャン処理が行われてもよい。或いは、無線端末10とアクセスポイント20との間の通信の開始後において、スループットスキャン処理が行われてもよい。或いは、無線端末10とアクセスポイント20との間の通信の開始前及び開始後において、スループットスキャン処理が行われてもよい。
【0030】
なお、スループットは、リンクレートであってもよく、エラーレートであってもよく、実測レートであってもよい。
【0031】
リンクレートは、無線端末10とアクセスポイント20との間の通信におけるデータ(例えば、ユーザデータ)の伝送速度の理論値である。例えば、AMC(Adaptive Modulation Coding)が適用されている場合には、リンクレートは、伝搬環境に基づいて選択された変調方式や符号化方式によって算出される理論値である。なお、リンクレートは、物理層のレートであってもよく、物理層よりも上位層のレートであってもよい。
【0032】
エラーレートは、無線端末10とアクセスポイント20との間の通信におけるデータ(例えば、ユーザデータ)の誤り率である。例えば、エラーレートは、ビットエラー率であってもよく、シンボルエラー率であってもよい。なお、エラーレートが高いほど、スループットが低いことは勿論である。
【0033】
実測レートは、無線端末10とアクセスポイント20との間の通信におけるデータ(例えば、ユーザデータ)の伝送速度の実測値である。例えば、無線端末10とアクセスポイント20との間において往復されるEchoメッセージに基づいて実測レートが算出される。具体的には、実測レートは、1回のEchoメッセージの往復に成功するまでの時間(平均時間など)である。なお、実測レートの詳細については、例えば、特願2009−129933号を参照すべきである。なお、実測レートは、物理層のレートであってもよく、物理層よりも上位層のレートであってもよい。
【0034】
選択部24は、ユーザデータの伝送に用いる伝送路(すなわち、無線端末10とアクセスポイント20との間で設定すべき伝送路)を選択する。ここで、「伝送路の選択」とは、ユーザデータの伝送に用いる伝送路の数を選択する概念を含む。また、「伝送路の選択」とは、ユーザデータの伝送に用いる伝送路の種類(すなわち、無線端末10に設けられたアンテナ11とアクセスポイント20に設けられたアンテナ21との組み合わせ)を選択する概念を含む。伝送路の選択方法としては、例えば、以下に示す方法が考えられる。
【0035】
(1)選択部24は、ユーザデータの伝送に要求される品質情報に基づいて、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する。ここで、ユーザデータの伝送に要求される品質情報は、QoS(Quality of Service)を確保するために用いられる情報である。第1実施形態では、本来、QoSを確保するために用いられる情報(品質情報)に基づいて、選択部24が伝送路を選択することに留意すべきである。
【0036】
ここで、ユーザデータの伝送に要求される品質情報は、例えば、ユーザデータの伝送に要求される利用帯域幅、パケットの送信頻度、物理層の要求送信レート、ユーザデータの伝送に要求されるフレームのサイズなどである。
【0037】
例えば、WMM−EDCA(Wi−Fi Multimedia Enhanced Distributed Channel Access)のアドミッション・コントロールでは、無線端末10からアクセスポイント20に対して、“ADDTS req.(Add Traffic Stream Request)”メッセージを用いて、利用帯域幅を要求することが可能である。なお、WMM−EDCAでは、利用帯域幅の種類として、「音声」、「ビデオ」、「ベストエフォート」、「バックグラウンド」の4つのカテゴリが設定されている。一般的には、「音声」、「ビデオ」、「ベストエフォート」、「バックグラウンド」の順で利用帯域幅が広い。
【0038】
例えば、(a)選択部24は、利用帯域幅が広いほど、多い数の伝送路を選択する。或いは、選択部24は、利用帯域幅が広いほど、スループットが大きい伝送路を選択する。(b)選択部24は、パケットの送信頻度が高いほど、多い数の伝送路を選択する。或いは、選択部24は、パケットの送信頻度が高いほど、スループットが大きい伝送路を選択する。(c)選択部24は、物理層の要求送信レートが高いほど、多い数の伝送路を選択する。或いは、選択部24は、物理層の要求送信レートが高いほど、スループットが大きい伝送路を選択する。(d)選択部24は、フレームのサイズが大きいほど、多い数の伝送路を選択する。或いは、フレームのサイズが大きいほど、スループットが大きい伝送路を選択する。
【0039】
言い換えると、選択部24は、品質情報によって要求される品質が高いほど、多い数の伝送路を選択する。或いは、品質情報によって要求される品質が高いほど、スループットが大きい伝送路を選択する。
【0040】
(2)選択部24は、スループットスキャン処理の結果、ユーザデータの伝送に用いる伝送路の候補から、スループットが所定閾値よりも低い伝送路を除外する。すなわち、選択部24は、所定閾値以上のスループットを有する伝送路の中から、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する。
【0041】
なお、スループットスキャン処理は、上述したように、無線端末10とアクセスポイント20との間の通信の開始前に行われてもよく、無線端末10とアクセスポイント20との間の通信の開始後に行われてもよい。
【0042】
設定部25は、ユーザデータの伝送に用いる伝送路(すなわち、無線端末10とアクセスポイント20との間で設定すべき伝送路)を設定する。具体的には、設定部25は、選択部24によって選択された伝送路を設定する。また、設定部25は、上述したスループットスキャン処理の一環として、無線端末10とアクセスポイント20との間で設定可能な複数の伝送路を順に設定する。
【0043】
(メッセージフォーマット)
以下において、第1実施形態に係るメッセージフォーマットの一例について、図面を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係るメッセージフォーマットの一例を示す図である。ここで、図3では、データユニットとしてMPDUを例示し、複数のデータユニットによって構成される集合データユニットとして、A−MPDUを例示する。
【0044】
図3に示すように、A−MPDUは、複数のMPDUによって構成される。A−MPDUは、CRC、MPDUヘッダ、MPDUペイロード、FCS、PADを含む。CRC、MPDUヘッダ、MPDUペイロード、FCS、PADは、1フレームを構成する。
【0045】
CRC(Cyclic Redundancy Check)は、1フレームの誤り検出に用いるビット列である。
【0046】
MPDUヘッダは、MPDUフレームのヘッダである。MPDUヘッダは、フレーム制御、デュレーション、アドレス、シーケンス制御、QoS制御などを含む。フレーム制御は、MPDUペイロードに含まれるサブフレームの構成を示すフィールドである。デュレーションは、MPDUの搬送に必要な予測時間を示すフィールドである。アドレスは、MPDUの宛先を示すフィールドである。シーケンス制御は、MPDUの順序を示すフィールドである。QoS制御は、MPDUに要求される品質を示すフィールドである。
【0047】
MPDUペイロードは、ユーザデータ或いは誤り訂正データを含む。例えば、A−MPDUがユーザデータユニットを含む場合には、MPDUペイロードにはユーザデータが含まれる。A−MPDUが誤り訂正データユニットを含む場合には、MPDUペイロードには誤り訂正データが含まれる。
【0048】
FCS(Frame Check Sequence)は、1フレームの誤り検出及び誤り検出に用いるビット列である。
【0049】
PAD(Padding Data)は、1フレームに含まれるデータ長を調整するためのビット列である。例えば、PADは、計算機のアラインメントに合致するように、データの不足を調整するためのビット列である。
【0050】
(無線通信システムの動作)
以下において、第1実施形態に係る無線通信システムの動作について、図面を参照しながら説明する。図4及び図5は、第1実施形態に係る無線通信システム100の動作を示すシーケンス図である。
【0051】
第1に、通信開始時において、伝送路を選択する方法について、図4を参照しながら説明する。
【0052】
図4に示すように、ステップ10において、無線端末10は、アクセスポイント20に対して、“Authentication Req.”メッセージを送信する。ステップ20において、アクセスポイント20は、無線端末10に対して、“Authentication Rsp.”メッセージを送信する。これによって、無線端末10とアクセスポイント20との間の認証手順が完了する。
【0053】
ステップ30において、無線端末10は、アクセスポイント20に対して、“Association Req.”メッセージを送信する。ステップ40において、アクセスポイント20は、無線端末10に対して、“Association Rsp.”メッセージを送信する。これによって、無線端末10とアクセスポイント20との間の接続手順が完了する。
【0054】
ステップ50において、アクセスポイント20は、無線端末10とアクセスポイント20との間で設定可能な複数の伝送路のそれぞれを順に設定し、無線端末10とアクセスポイント20との間で設定された伝送路のスループットを測定する(スループットスキャン処理)。
【0055】
ステップ60において、無線端末10は、着信処理又は発信処理を行う。
【0056】
ステップ70において、無線端末10は、アクセスポイント20に対して、“ADDTS Req.”メッセージを送信する。ここで、“ADDTS Req.”メッセージは、無線端末10が要求する利用帯域幅を示す情報を含む。
【0057】
ステップ80において、アクセスポイント20は、無線端末10に対して、“ADDTS Rsp.”メッセージを送信する。詳細には、アクセスポイント20は、無線端末10が要求する利用帯域幅を確保できる場合には、“ADDTS Rsp.”メッセージを用いて、通信を許可する旨を無線端末10に通知する。一方で、アクセスポイント20は、無線端末10が要求する利用帯域幅を確保できない場合には、“ADDTS Rsp.”メッセージを用いて、通信を拒否する旨を無線端末10に通知する。なお、通信を拒否された場合には、無線端末10は、他のアクセスポイントへの接続を試みる。ここでは、通信を許可されたものとして、以下の説明を続ける。
【0058】
ステップ90において、アクセスポイント20は、ユーザデータの伝送に要求される品質情報(ここでは、利用帯域幅)に基づいて、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する。
【0059】
なお、アクセスポイント20は、スループットスキャン処理(ステップ50)の結果、ユーザデータの伝送に用いる伝送路の候補から、スループットが所定閾値よりも低い伝送路を除外する。すなわち、アクセスポイント20は、所定閾値以上のスループットを有する伝送路の中から、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する。
【0060】
ステップ100において、アクセスポイント20は、ステップ90で選択された伝送路を設定する。これによって、無線端末10とアクセスポイント20との間でユーザデータの通信が開始する。なお、このような通信において、利用帯域幅が確保されることは勿論である。
【0061】
第2に、通信開始後(通信中)において、伝送路を選択する方法について、図4を参照しながら説明する。
【0062】
図5に示すように、ステップ100において、無線端末10とアクセスポイント20との間でユーザデータの通信が既に行われている。
【0063】
ステップ110において、アクセスポイント20は、無線端末10とアクセスポイント20との間で設定可能な複数の伝送路のそれぞれを順に設定し、無線端末10とアクセスポイント20との間で設定された伝送路のスループットを測定する(スループットスキャン処理)。
【0064】
ステップ120において、アクセスポイント20は、スループットスキャン処理(ステップ110)の結果、ユーザデータの伝送に用いる伝送路の候補から、スループットが所定閾値よりも低い伝送路を除外する。すなわち、アクセスポイント20は、所定閾値以上のスループットを有する伝送路の中から、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する。
【0065】
(作用及び効果)
実施形態では、選択部24は、ユーザデータの伝送に要求される品質情報に基づいて、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する。従って、複数の伝送路が設定可能な環境下において、ユーザデータの伝送に用いる伝送路として、適切な伝送路を選択(設定)することができる。
【0066】
実施形態では、選択部24は、スループットスキャン処理の結果、ユーザデータの伝送に用いる伝送路の候補から、スループットが所定閾値よりも低い伝送路を除外する。従って、複数の伝送路が設定可能な環境下において、ユーザデータの伝送に用いる伝送路として、適切な伝送路を選択(設定)することができる。
【0067】
なお、通信の開始前にスループットスキャン処理を行うことによって、通信の開始時から、適切な伝送路を選択(設定)することができる。また、通信の開始後にスループットスキャン処理を行うことによって、伝搬環境の変化に応じて、適切な伝送路を選択(設定)することができる。
【0068】
[実施例]
以下において、第1実施形態の実施例について説明する。
【0069】
ここでは、無線端末10とアクセスポイント20との間で、以下に示す情報が交換可能であるケースについて例示する。
【0070】
(a1)“Minimum Data Rate”…ユーザデータの伝送に要求される利用帯域幅の下限を定義する情報(単位:Mbps)
(a2)“Minimum PHY Rate”…物理層の送信レートの下限を定義する情報(単位:bps)
(a3)“Medium Time”…アクセスポイント20によって許可されたパケットの送信頻度(単位時間において、ユーザデータを送信可能な専有時間)
また、伝送路の利用状況等に基づいて、以下に示す情報をアクセスポイント20が取得可能であるケースについて例示する。
【0071】
(b1)“Packet Error Rate”…直近の単位時間におけるエラーレート(ビットエラー率等)
(b2)“PHY Rate”…直近の単位時間における物理層のレート(“Packet Error Rate”に基づいて算出可能である)
(b3)“Spatial Utilize”…直近の単位時間において、伝送路を専有していた時間
このようなケースにおいて、選択部24は、例えば、以下のように伝送路を選択する。
【0072】
(1)選択部24は、“Minimum PHY Rate”が“Minimum Data Rate”よりも大きい伝送路を選択する。すなわち、選択部24は、“Minimum PHY Rate”が“Minimum Data Rate”以下の伝送路を除外する。
【0073】
(2)選択部24は、“Minimum PHY Rate”を“PHY Rate”が下回っていない単位時間(x)における“Packet Error Rate”の総和(ΣPER(x))が閾値(Pthresh’)よりも小さい伝送路を選択する。すなわち、選択部24は、“Packet Error Rate”の総和が閾値以上の伝送路を除外する。
【0074】
(3)選択部24は、“Medium Time”が“Spatial Utilize”よりも大きい伝送路を選択する。すなわち、選択部24は、“Medium Time”が“Spatial Utilize”以下の伝送路を除外する。
【0075】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0076】
上述した実施形態では、測定部23、選択部24及び設定部25がアクセスポイント20に設けられるケースについて例示した。しかしながら、しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。測定部23、選択部24及び設定部25は、無線端末10に設けられていてもよい。
【0077】
上述した実施形態では、無線端末10とアクセスポイント20との間の通信に実施形態が適用されるケースについて例示した。しかしながら、実施形態は、これに限定されるものではない。実施形態は、無線端末10間の通信に適用されてもよい。このような場合には、測定部23、選択部24及び設定部25は、無線端末10に設けられていてもよい。
【0078】
選択部24は、品質情報によって要求される品質とスループットとを対応付けるテーブルを有していてもよい。このような場合において、選択部24は、品質情報によって要求される品質と対応付けられたスループットを伝送路のスループットの合計が超えるように、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択してもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…無線端末、11…アンテナ、20…アクセスポイント、21…アンテナ、22…通信部、23…測定部、24…選択部、25…設定部、100…無線通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝送路を設定可能な無線端末を備える無線通信システムであって、
前記複数の伝送路の中から、ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択する選択部と、
前記選択部によって選択された伝送路を設定する設定部とを備え、
前記選択部は、前記ユーザデータの伝送に要求される品質情報に基づいて、前記ユーザデータの伝送に用いる伝送路を選択することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記複数の伝送路のそれぞれのスループットを測定する測定部を備え、
前記選択部は、前記ユーザデータの伝送に用いる伝送路の候補から、スループットが所定閾値よりも低い伝送路を除外することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記設定部は、通信の開始前において、前記複数の伝送路のそれぞれを順に設定し、
前記測定部は、複数の伝送路のそれぞれのスループットを順に測定することを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記設定部は、通信の開始後において、前記複数の伝送路のそれぞれを順に設定し、
前記測定部は、複数の伝送路のそれぞれのスループットを順に測定することを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−114584(P2012−114584A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260394(P2010−260394)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】