説明

無線通信ネットワークにおける現在のチャネル状態を評価する方法

本方法では、現在のチャネル状態が、前のチャネル品質インジケータ、およびこの前のチャネル品質インジケータの後に受信された電力制御情報に少なくとも部分的に基づき評価される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に無線通信ネットワークに関し、より詳細には無線通信ネットワークにおける現在のチャネル状態を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には携帯通信ネットワークは、無線または有線の接続により接続され、異なるタイプの通信チャネルを通してアクセスされる様々な通信ノードを含む。通信ノードのそれぞれは、通信チャネルを介して送信され受信されるデータを処理するプロトコル・スタックを含む。通信システムのタイプにより、様々な通信ノードの動作と構成は異なる可能性があり、しばしば異なる名称で呼ばれる。このような通信システムには、例えば符号分割多重接続2000(CDMA2000:Code Division Multiple Access 2000)システムおよびユニバーサル移動体通信システム(UMTS:Universal Mobile Telecommunications System)が含まれる。
【0003】
UMTSは、プロトコル規格のセットを表す無線データ通信および電話通信の規格である。UMTSは、基地局(BS:Base Station)またはNodeBと移動体またはユーザ装置(UE:User Equipment)との間の音声およびデータの送信のためのプロトコル規格を規定している。典型的にはUMTSシステムは、複数の無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)を含む。UMTSネットワークのRNCは、GSM/GPRSネットワークにおける通信制御装置(BSC:Base Station Controller)機能と同等の機能を提供する。しかし、RNCは、例えば移動交換局(MSC:Mobile Switching Center)およびサービング汎用パケット無線サービス(GPRS:General Packet Radio Service)サポート・ノード(SGSN:Serving GPRS Support Node)を必要とせずにハンドオーバーを自律的に管理することを含む追加機能を有してよい。NodeBは、エア・インターフェース処理およびいくつかの無線リソース管理機能に責任を持つ。UMTSネットワークにおけるNodeBは、GSM/GPRSネットワークにおける無線基地局装置(BTS:Base Transceiver Station)と同等の機能を提供する。典型的にはNodeBは、UMTS実施の費用を低減し計画承認の制約を最小化するために既存のGSMベースの無線基地局装置(BTS)と物理的に同じ所に配置される。
【0004】
図1は、UMTSプロトコルに準拠して動作する従来の通信システム100を示す。図1を参照すると、通信システム100は、NodeB120、122および124などのいくつかのNodeBを含んでよく、各NodeBはそれぞれのサービスエリア内のUE105および110などのUEの通信要求に応える。NodeBはRNC130および132などのRNCに接続され、RNCはMSC/SGSN140に接続される。RNCは、上述したように、MSCおよびSGSNを必要とせずにハンドオーバーを自律的に管理するなどの特定の通話およびデータの処理機能を扱う。MSC/SGSN140は、通話および/またはデータをネットワーク内の他の要素(例えば、RNC130/132およびNodeB120/122/124)または外部ネットワークにルーティングすることを行う。さらに、これらの要素の間の従来のインターフェースUu、Iub、IurおよびIuが図1に示されている。
【0005】
第三世代無線通信プロトコル規格(例えば、3GPP−UMTS、3GPP2−CDMA等)は、アップリンク内に専用通信チャネル(例えば、移動局(MS:Mobile Station)またはUEと基地局(BS)またはNodeBとの間の通信フロー)を採用してよい。この専用通信チャネルは、データ部(例えば、UMTSプロトコルに準拠した専用物理データ・チャネル(DPDCH:Dedicated Physical Data Channel)、CDMA2000プロトコルに準拠した基本チャネルまたは補助チャネル等)および制御部(例えば、UMTSプロトコルに準拠した専用物理制御チャネル(DPCCH:Dedicated Physical Control Channel)、CDMA2000プロトコルに準拠したパイロット/電力制御サブチャネル等)を含んでよい。
【0006】
高速ダウンリンク・パケット・アクセス(HSDPA:High Speed Downlink Packet Access)は、3GPP−UMTSのための第三世代無線規格のリリース5で採用されている。高速データ送信を達成するために、ダウンリンクに2つの新しいチャネルが採用されている。すなわち、高速共有制御チャネル(HS−SCCH:High Speed Shared Control Channel)および高速ダウンリンク共有チャネル(HS−DSCH:High Speed Downlink Shared Channel)である。HS−SCCHは、HS−DSCHのための制御情報(実際のパケット・データ)を搬送する。HS−DSCHは、高速物理ダウンリンク共有チャネル(HS−PDSCH:High Speed Physical Downlink Shared Channel)を用いて送信される。1つのセル(例えば、NodeB120、122、124等のうちの1つ)に対するHS−SCCHおよびHS−PDSCHは、そのセル内のすべてのHSDPAユーザ(例えば、UE105、UE110等)により共有される。NodeBのスケジューラ(例えば、NodeB120、NodeB122、NodeB124等のうちの1つに対する)は、瞬時ダウンリンク品質、サービス品質(QoS:Quality of Service)要求等などのいくつかの要因に基づいて、どのUE(例えば、UE105/110)に送信するかと、送信する所与のデータ量と、送信のための所与の電力レベルと、送信のための所与の変調/符号化フォーマットとを決定する。NodeBのスケジューラが送信のためのパラメータを決定した後に、この送信はスケジュール化される。データ・フォーマットおよびユーザ識別情報は、HS−PDSCHを伴うHS−SCCH内で搬送される。
【0007】
NodeBのスケジューラにおけるリアルタイムのダウンリンク・チャネル品質の知識がHSDPAシステムの効率に影響を及ぼす可能性がある。現在のUMTS−HSDPA規格では、ダウンリンク・チャネル品質は、UE(例えば、UE105、UE110等)におけるチャネル品質を計測し、UEにこの計測したチャネル品質をアップリンク内のコード・チャネルを通してNodeB(例えば、NodeB120、NodeB122、NodeB124等)へ報告させることにより決定される。このアップリンク・コード・チャネルとは、新たに採用された高速専用物理制御チャネル(HS−DPCCH:High Speed Dedicated Physical Control Channel)である。HS−DPCCHは、HSDPA動作をサポートするために3GPP−UMTSのための第三世代無線規格のリリース5で採用され、肯定応答(ACK:Acknowledgment)および否定応答(NACK:Negative ACK)の信号、ならびにチャネル品質インジケータ(CQI:Channel Quality Indicator)信号を搬送してよい。計測されたチャネル品質はUEにおいて量子化(例えば、5ビットの2進数に)され、CQI信号を生成してよい。NodeBにおいて、このCQI信号は、チャネル品質メトリクス、例えば共通パイロット・チャネル(CPICH:Common Pilot Channel)搬送波対雑音比(Ec/Nt)へ変換されてよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
静止または非常に低い移動性(例えば、低速で移動中である)のUEに対しては、このUEが低速で移動中であり、そのCPICH Ec/NtがこのUEの現在のチャネル品質に近いとしてよいため、NodeBのスケジューラは、このUEの現在のチャネル品質の測定値としてこのCPICH Ec/Ntを使用してよい。しかし、このUEの移動性または速度が増すと、CPICH Ec/NtはこのUEの現在のチャネル品質の正確なインジケータとして機能しなくなっていく恐れがある。例えば、ある無線通信システムが9ミリ秒(ms)の待ち時間を有すると、これはNodeBのスケジューラが現在のCPICH Ec/Ntよりおよそ9ms前のCPICH Ec/Ntの値を使用中であることを意味する。この例では、CPICH Ec/Ntの従来の計測は、10キロメータ/時間(Kmph)より低い速度のUEに対しては有効であるが、より高速のUEに対しては有効であるとは限らない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態例は、現在のチャネル状態を評価する方法を対象とする。この評価は、少なくとも部分的に、前のチャネル品質インジケータ、およびこの前のチャネル品質インジケータの後に受信する電力制御情報に基づいてよい。一例では、この電力制御情報は少なくとも1つの送信電力制御(TPC:Transmit Power Control)命令を含んでよい。
【0010】
本発明は、以下に本明細書で行われる詳細な説明、および例としてのみ与えられる添付の図面からより十分に理解され、これらの図面では、同様の参照番号は様々な図面内の対応する部分を指し示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明をよりよく理解するために、UMTS無線通信システムの従来のアップリンク・フレーム構造の例および従来のダウンリンク・チャネル品質報告の通信フロー図例を説明し、次に本発明の実施形態例によるダウンリンク・チャネル品質予測の説明を行う。
【0012】
従来のUMTSアップリンク・フレーム構造
図2は、DPDCH240と、DPCCH220と、高速専用物理制御チャネル(HS−DPCCH)235とを含むUMTSアップリンク専用通信チャネル250のフレーム200の例を示す。各フレーム200は、例えば10ミリ秒(ms)の長さを有してよく、DPCCH220に対しては、複数のスロット205(例えば、15スロット)に分割されてよい。各スロット205は、例えば2560チップの長さを有してよく、これは1電力制御周期に対応してよく、例えば2/3msの継続時間を有してよい。DPCCH220を、図3に関して以下にさらに詳細に説明する。
【0013】
DPCCH220およびDPDCH240のそれぞれは符号多重化可能である。DPDCH240は移動局またはユーザ装置(UE)から送信される情報を含んでよい。HS−DPCCH235は、フレーム200内に複数のサブフレーム230を含んでよい。HS−DPCCHの各サブフレーム230は、DPCCHの複数のスロット205に対応してよい。
【0014】
図3は、DPCCH220の所与のスロット205に対するスロット構造例を示す。DPCCH220のフレーム200内の各スロット205は、制御情報、例えばパイロット信号221、送信電力制御(TPC)命令222、転送フォーマット組合せインジケータ(TFCI:Transport Format Combination Indicator)ビット223、およびフィードバック情報(FBI:Feedback Information)224を含んでよい。
【0015】
一例では、各スロット205は合計10ビットを含んでよく、これは所与の個数のパイロット・ビット(例えば、パイロット信号221)および制御ビット(例えば、TPC命令222内のTPCビット、TFCIビット223、およびFBIビット224の組合せ)を有する。別の例では、各スロット205は、5パイロット・ビット、2TFCIビット、1FBIビット、および2TPCビットを有する10ビットを含んでよい。しかし、各スロット205の合計ビットの個数および各スロット205のビット構成(例えば、別の個数のTFCIビット、FBIビット、パイロット・ビット、TPCビット等)は異なってよく、RNC(例えば、RNC130、RNC132等)により制御されてよい。
TFCI223は、UEから送信された情報の転送形式(例えば、音声および/またはデータ・パケット、フレーム等)をNodeBに通知してよい。
【0016】
UEおよびNodeBのそれぞれは、互いに送信電力を制御するためにアップリンクDPCCH220およびダウンリンクDPCCH(図示せず)のTPC命令222内のTPCビットをそれぞれ生成して送信してよい。UEが例えば単一のNodeBと通信するとき(例えば、UEがソフト・ハンドオフ状態でないとき)、単一のTPC命令222は各タイムスロット内で受信されてよい。
【0017】
一例では、フレーム200内の各スロット205は、1TPCビットまたは2TPCビットのどちらかを有するTPC命令222を含んでよい。所与のスロット205が2TPCビットを含む場合、2TPCビットのそれぞれの値は同一であってよい。すなわち、TPC命令222内のTPCビットは両方「0」かまたは両方「1」のどちらかであり、それぞれ「00」および「11」として与えられる。TPC命令222内のTPCビットを用いて、ダウンリンク送信電力を所望の目標電力に収束させるためにダウンリンク送信電力を調節できる。例えば、TPC命令222内のTPCビットが「0」または「00」である場合、ダウンリンク送信電力は減少されてよい。別の例では、TPC命令222内のTPCビットが「1」または「11」である場合、ダウンリンク送信電力は増加されてよい。
【0018】
図2および図3は3GPP−UMTSアップリンク・フレーム構造を示しているが、3GPP2−UMTSアップリンク・フレーム構造は同様のものであってよい。しかし、典型的な3GPP2−UMTSアップリンク・フレーム構造は上述のTFCI223およびFBI224を含まない。
【0019】
図4はHS−DPCCH235の所与のサブフレーム230を示す。この例では、各フレーム200が10msの継続時間を有する場合、HS−DPCCH235の各サブフレーム230は2msの継続時間を有してよく、これは、各スロット205が2/3msの継続時間を有する場合、DPCCH220の3個のスロット205に相当してよい。各サブフレーム230はハイブリッド自動再送要求(HARQ:Hybrid Automatic Request)−肯定応答(ACK)410およびチャネル品質インジケータ(CQI)420を含んでよい。一例では、HARQ−ACK410は2560チップ(例えば、サブフレーム230の第1のスロット205に対応する)を割り当てられてよく、CQI420は5120チップ(例えば、サブフレーム230の第2および第3のスロット205に対応する)を割り当てられてよい。
【0020】
CQI420は各サブフレーム230に対して1度、例えばそのCQI420が報告されている所与のサブフレーム230の最後に報告されてよい。したがって、UEがCQI420をNodeBに送信可能な最高速度は、3個のスロット205(例えば、2ms)ごとに対して1度の割合であってよい。しかし、UEのバッテリ電力を節約するために、3GPP−UMTS規格はCQI420がより低速度で、例えば80個のサブフレーム230または240個のスロット205ごとの割合で送信可能としている。
【0021】
従来のダウンリンク・チャネル品質報告
図5は従来のCQI420報告の通信図を示す。
所与のUE(例えば、UE105、110等)におけるチャネル品質はCQI計測ウィンドウ内で(S505で)計測される。チャネル品質が(S505で)計測された後に、所与のUEはその計測したチャネル品質をCQI420に変換し、計測したチャネル品質を表すそのCQI420をNodeB(例えば、NodeB120、122、124等)に(S510で)送信する。このCQI420は、UEからNodeBへの送信中に伝搬遅延を(S515で)受け、所与のUEにより最初に送信された時よりも遅くNodeBに到着する。NodeBは、このCQI420を(S520で)受信し、NodeBのスケジューラにこのCQI420を転送し、CQI420はこの転送中に処理遅延を(S525で)受ける。NodeBのスケジューラはこのCQI420を(S530で)受信し、受信したCQI420に基づいて、NodeBから所与のUEへの送信のため、ダウンリンク電力(例えば、HS−SCCH電力)に対する調整をスケジュール化し、および/またはHS−PDSCHのためのMCSを選択する。スケジュール化されたダウンリンク電力に対する調整は、次のダウンリンク送信で(S535で)効果が生じてよい。所与の個数のサブフレームが、チャネル品質の計測(工程S505における)とスケジュール化されたダウンリンク電力に対する調整(S535における)の間に消滅してしまう可能性があり、この所与の個数のサブフレームは少なくともmin_CQI_Tの数に達し、max_CQI_Tを超えない数に達する。一例では、min_CQI_Tは、およそ9msであってよく、これは、4.5サブフレームまたは13.5スロットに相関する可能性がある。工程S515およびS525の伝搬遅延/処理遅延などの様々な要因がmin_CQI_Tに影響する可能性がある。
【0022】
CQI420の報告における上述の遅延は、例えばUEのチャネル品質が急速に変化する状態で(例えば、UEが高速で移動中である場合)、ダウンリンク電力がNodeBのスケジューラにおいてより古いおよび/または不正確な情報に基づき調整される原因となる恐れがある。
【0023】
TPC調整を用いたダウンリンク・チャネル品質予測
本発明の実施形態例が次に説明されるが、この実施形態例では、現在のチャネル品質が、NodeBのスケジューラで受信した前のCQI420に基づき、前のCQI420の後にNodeBのスケジューラで受信したTPC命令222をさらに考慮して予測される。上述のように、従来技術は現在のチャネル品質として前のCQI420のみを用いる。
【0024】
図3に示しまた上述のように、TPC命令222は、DPCCH220の各スロット205内に1ビットまたは2ビットのどちらかを有するTPCビットを含んでよい。さらに、2ビットがTPC命令222に割り当てられている場合、1ビットまたは2ビットのそれぞれは「0」または「1」のいずれかであってよい。したがって、DPCCH220内で所与のUEからNodeBで受信した各スロット205に対して、TPC命令222は「0」、「00」、「1」および「11」のうちの1つを有するTPCビットを含んでよい。NodeBは、TPC命令222に基づき所与のステップ・サイズだけダウンリンクDPCCH(図示せず)および/またはDPDCH(図示せず)の電力を調整してよい。例えば、TPC命令222内のTPCビットが「0」または「00」である場合、ダウンリンク送信電力は所与の量またはステップ・サイズだけ減少されてよい。他の例では、TPC命令222内のTPCビットが「1」または「11」である場合、ダウンリンク送信電力は所与の量またはステップ・サイズだけ増加されてよい。例えば、所与のステップ・サイズは0.5デシベル(dB)、1.0dB、1.5dB、2.0dB等のうちの1つであってよい。RNC(例えば、RNC130、132等)は、各NodeBに対するTPC命令222に対応する所与のステップ・サイズを選択してよい。
【0025】
図6は、本発明の実施形態例による現在のチャネル品質を予測する通信フロー図を示す。図6はUE105とNodeB120の間の通信を説明しているが、図6に関して説明された例は任意のNodeBまたはBSとUEまたは移動体との間の通信に適用できることが理解されよう。
【0026】
サブフレーム(X+1)に先立つ前のサブフレームX(図示せず)において、UE105はHS−DPCCH235上で前のCQI420をNodeB120に送信する。サブフレーム(X+1)の最初の第1のスロット205において、UE105はDPCCH220上で第1のTPC命令TPC(1)をNodeB120に送信する。サブフレーム(X+1)の第2のスロット205において、UE105は第2のTPC命令TPC(2)をNodeB120に送信する。サブフレーム(X+1)の第3のスロット205において、UE105は第3のTPC命令TPC(3)をNodeB120に送信する。工程S604において、式1を参照して後にさらに詳しく説明されるように、NodeBは、前のCQI420および後に受信したTPC命令TPC(1)、TPC(2)およびTPC(3)を用いて現在のチャネル品質を評価する。
【0027】
上述の処理は、現在のチャネル品質の評価に関して最新の受信CQIが前のCQI420に取って代わりながら、任意の個数のスロットまたはサブフレームの間続いてよい。NodeBのスケジューラは、評価した現在のチャネル品質に基づきダウンリンク電力に対する調整をスケジュール化してよい。
【0028】
前のCQI420および後に受信したTPC命令(例えば、TPC(1)、TPC(2)、TPC(3)等)に基づき、現在のチャネル品質評価(CCQE:Current Channel Quality Estimate)または現在のCPICH_Ec/Ntを生成する一方法例が式1により与えられることが可能である。
【数1】

ただし、Previous_CPICH_Ec/NtはサブフレームXで計測された前のCQI420であり、TPC_step_size(n)はTPC(n)に基づくダウンリンク電力調整量を指し、TPC(n)はその実際のデジタル表現と相関がある「0」または「1」の値を有してよい2進数の電力制御命令であり、値nは図6の処理における前のCQI420の後のスロットの個数を示す。
【0029】
式1では、総和は(n=1)に始まり値Yまで続き、Yはスロット205の所与の個数を示す自然数である。一例では、Yはmin_CQI_Tであってよい。別の例では、Yはmin_CQI_Tより大きくてよい。この例では、Yは例えば(min_CQI_T+k+1)に等しくてよく、kは[0,K−1]の範囲の自然数であってよく、Kは2つの連続したCQI報告の間のスロット205の個数である。
【0030】
本発明の別の実施形態例では、NodeBのスケジューラは移動局の通信状態およびチャネル・インジケータのうちの少なくとも1つに基づき、現在のチャネル品質を評価する際に電力制御情報を用いるかどうかを決定してよい。例えば、移動局が複数の基地局またはNodeBとソフト・ハンドオフを行っている場合、その移動局がNodeBのサービスエリアを去りつつある可能性があるため、NodeBのスケジューラはTPC命令222をさらに検証してよい。この例では、チャネル・インジケータなどの追加のメトリクスを用いて、現在のチャネル品質評価のためにTPC命令222を考慮するかどうかを決定してよい。一例では、チャネル・インジケータはアップリンクDPCCHチャネル品質であってよい。移動局の通信状態および追加のメトリクスの分析に基づき、NodeBのスケジューラが現在のチャネル品質の評価にTPC命令222を無視すると決める場合、TPC調整を伴わない前のCQI420が現在のチャネル品質として用いられてよい。
【0031】
上述の実施形態例は前のCQI420の後に受信した電力制御情報(例えば、TPC命令222)に基づきダウンリンク送信電力を調整することを対象とするが、本発明の他の実施形態例は電力制御情報に基づき任意のダウンリンク送信パラメータを調整してよい。一例では、ダウンリンク送信パラメータはデータ符号化パラメータであってよい。この例では、調整工程(例えば、ダウンリンク電力に関して式1に上記で表されている)は、HS−DSCHおよび/またはHS−PDSCH上で符号化するレベルを増加または減少してよい。別の例では、この符号化はエラー符号化であってよく、調整工程はダウンリンク・データ送信における周期的冗長検査(CRC:Cyclic Redundancy Check)ビットのレベルを増加または減少してよい。
【0032】
本発明の実施形態例がこのように説明されてきたが、同じ実施形態例は多くのやり方で変更可能であることは明白であろう。例えば、本発明の実施形態例は3GPP−UMTSに関して説明されてきたが、本発明の他の実施形態例は、他のUMTSプロトコル、CDMA2000プロトコル、および/または任意の他のよく知られた無線通信プロトコルを採用してよいことが理解されよう。さらに、上述の実施形態例は少なくとも1つのTPC命令222を含む電力制御情報を用いるが、本発明の他の実施形態例は、ダウンリンク電力の変化を示す他のタイプの電力制御情報(例えば、他のプロトコルにおける)を採用してよいことが理解されよう。
このような変更は本発明の例示の実施形態の精神および範囲からの逸脱とは見なされず、当業者に明白であるような修正はすべて本発明の範囲内に含まれることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ユニバーサル移動体通信システム(UMTS)プロトコルに準拠して動作する従来の通信システムを示す図である。
【図2】高速専用物理制御チャネル(HS−DPCCH)を含むUMTSアップリンク専用通信チャネルのフレームの例を示す図である。
【図3】DPCCHの所与のスロットのスロット構造例を示す図である。
【図4】HS−DPCCHの所与のサブフレームを示す図である。
【図5】従来のチャネル品質インジケータ(CQI)報告の通信図である。
【図6】本発明の実施形態例による現在のチャネル品質を予測するための通信フロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在のチャネル状態を評価する方法であって、
前のチャネル品質インジケータと前記前のチャネル品質インジケータの後に受信した電力制御情報とに基づき現在のチャネル品質を評価する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記電力制御情報は送信電力を増加または減少させるかを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送信電力に対する前記増加または減少は所与の増分量に基づく、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電力制御情報は少なくとも1つの送信電力制御ビットを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記前のチャネル品質インジケータは前記評価工程の前の最新の受信チャネル品質インジケータである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記評価工程は、
移動局の通信状態とチャネル・インジケータとの少なくとも1つに基づき、前記現在のチャネル品質を評価する際に前記電力制御情報を用いるかを決定する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記通信状態は前記移動局がソフト・ハンドオフを行っているか否かである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記評価された現在のチャネル品質に基づきダウンリンク・チャネル上のダウンリンク送信パラメータを調整する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ダウンリンク送信パラメータはダウンリンク送信電力を含み、前記調整工程は前記ダウンリンク・チャネル上の前記ダウンリンク送信電力を増加または減少させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ダウンリンク送信パラメータはデータ符号化パラメータを含み、前記調整工程は前記ダウンリンク・チャネル上の符号化のレベルを増加または減少させる、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−546310(P2008−546310A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514662(P2008−514662)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/017265
【国際公開番号】WO2006/130304
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(596092698)ルーセント テクノロジーズ インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】