説明

無線通信用半導体装置

【課題】電力漏れを低減し、電力効率の向上を実現可能な無線通信用半導体装置を提供する。
【解決手段】例えば、外部端子Ptp,Ptmに、アンテナANTを駆動するアンテナドライバ部ADRVと、ANTからの入力電力を整流する整流部RECTを接続する。ADRVは、プルアップ用PMOSトランジスタMPup,MPumと、プルダウン用NMOSトランジスタMNdp,MNdmを含んでいる。RECTでは、全波整流回路FWRCTによって生成された電源が昇圧回路UPCによって昇圧される。例えば、バッテリーからの電源電圧(txvcc)の供給が停止した際には、UPCによって昇圧した電源電圧(vccrect2)がMPup,MPumのバルクに供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信用半導体装置に関し、特に、携帯電話機においてNFC(Near Field Communication)機能を実現する無線通信用半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、アンテナコイルの両端に対して、整流回路と、2個の復調回路と、変調回路が並列接続された非接触ICカードが示されている。また、特許文献2には、アンテナコイルに対して、整流回路および信号受信ノードを接続するか、送信ノードを接続するかを選択可能な非接触データ記憶システムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−172806号公報
【特許文献2】特開平5−298498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、日本を代表として海外においても、携帯電話システムにNFC(Near Field Communication)機能の搭載が進んでいる。携帯電話システムに搭載されるNFC機能では、携帯電話システムがICカード(UICC:Universal Integrated Circuit Card)として動作するカードモードと、リーダライタ(RW)として動作するRWモードが存在する。このカードモードならびにRWモードとしての無線通信動作は、携帯電話システム内に搭載された無線通信用の半導体チップ(NFCチップと呼ぶ)によって実現される。
【0005】
ここで、ICカードは、RWから出力される磁界から電力供給を受けて動作を行うため、基本的に、ICカード自体には電池などを搭載する必要は無い。しかし、携帯電話システムに搭載されるNFCチップは、通常、電池等の外部電源が不可欠となる。例えば、RWモードで動作する際には、外部から入力される磁界が無いため、外部電源からの電力供給を受ける必要がある。また、カードモードで動作する際にも、一般的な単機能のICカード(例えばSuica(登録商標)カード)と異なり、多機能(例えばSuica(登録商標)カードとEdy(登録商標)カードの実現)が必要とされ、消費電力の増大と共に磁界からの電力供給では不足する恐れがある。更に、カードモードで動作する際、NFCチップは、携帯電話システムのセキュリティを保つ必要性などから携帯電話システム内の他のチップ(UIM(User Identity Module)チップ等)を駆動する必要性があり、NFCチップ自体が磁界からの電力供給で動作しても、システムとして動作しないということも起こり得る。
【0006】
しかし、NFCチップがカードモードで動作する際にも外部電源が不可欠であるものとすると、実使用上の問題が生じる恐れがある。例えば、携帯電話システムに搭載されたSuica(登録商標)機能で電車に乗った後、携帯電話システムの電池が消耗し、Suica(登録商標)機能が使用できなくなった場合、改札を通過することが出来なくなってしまう。そのほかにも、NFC機能が社会インフラとしての重要性を増すに従って、電池等の外部電源に頼ったシステムでは問題があるということになってきている。
【0007】
このような問題を解決するため、例えば、Lowバッテリーモードに対応したNFCチップが考えられる。これは、携帯電話システムのシステム自体が動作できなくなる電圧より低い電圧でもNFCチップの動作を可能にするものである。すなわち、携帯電話システムの電池が消耗し、電池の出力電圧が低下すると、システム自体が停止する。携帯電話システムは、実際に使用(通話、メール等)しているとき以外も、基地局と通信を行っており、電池の消耗が激しい。したがって、システム自体が停止すると、それ以上の電池の消耗がほぼ抑えられ、NFC機能をこの状態でも動作可能なように構成することで、NFC機能としての電池寿命を格段に延ばすことが出来る。
【0008】
しかしながら、Lowバッテリーモードを用いた場合、NFC機能としての電池寿命を長くすることは可能であるが、無限ではないため本質的な解決が図れる訳ではない。携帯電話システムのシステム自体が停止しているといっても、漏れ電流による電池の消耗、電池の自己放電などで、電池の電圧は徐々に下がっていき最後にはLowバッテリーモードでも対応不可になる。また、携帯電話システムで使用される電池(リチウム電池等)は、過放電が起こると2次電池としての機能が損なわれるため、Lowバッテリーモードで対応不可になるまで電池の電圧が下がった際には完全に電池の出力を遮断する必要がある。この場合、2段階の閾値電圧が必要となるため、携帯電話システムの構成が複雑化する恐れがある。
【0009】
そこで、NFCチップにアンテナから入力電力を整流することで電力生成を行う機能を設け、携帯電話システムのバッテリーからの電力供給が行われない場合でも使用できる(バッテリーレス動作)システムが望まれる。この際には、前述したように、NFCチップがそれ以外のチップ(UIMチップ等)を駆動する必要性があるため、電力生成機能には、例えば高効率化等が求められる。図23は、本発明の前提として検討した無線通信用半導体装置において、その構成の一例を示す概略図である。図23に示す無線通信用半導体装置(NFCチップ)NFCIC’は、整流回路RECTC’、受信ブロックRXBK、および送信ブロックTXBK’を備えている。
【0010】
TXBK’は、送信用の外部端子Ptp,Ptmならびに外部のインピーダンス整合回路MACHを介して外部のアンテナANTに結合される。ANTは、インダクタやQ値調整用の抵抗等から構成される。RXBKは、受信用の外部端子Prp,Prn、振幅制限用の外部抵抗Rrp,Rrn、ならびに直流カット用の外部容量Crp,Crnを介してANTに結合される。RECTC’は、電力入力用の外部端子Pvp,Pvnならびに直流カット用の外部容量Cvp,Cvnを介してANTに結合される。NFCIC’は、RWモードで動作する場合、バッテリー(図示せず)によって動作し、TXBK’からANTに向けて送信信号を出力し、またANTからの入力信号をRXBKで受信する。一方、NFCIC’は、バッテリーレスモード(バッテリーの電力を用いずにカード動作するモード)で動作する場合、外部のRWからANTに供給された入力電力を用いてRECTC’が電力を生成し、当該電力を用いてRXBKやTXBK’が動作する。具体的には、RXBKがANTからの入力信号を適宜処理することで外部のRWからの命令を認識し、また、NFCIC’が外部のRWに向けて返信を行う際には、TXBK’がPtpとPtm間の負荷を変調し、これに伴いANTに生じた磁界の変化を外部のRWに認識させる。
【0011】
しかしながら、図23のような構成を用いた場合、次のようなことが懸念される。まず、整流回路RECTC’に伴う外部端子Pvp,Pvnの増加が挙げられる。この端子は、電力用の端子であるため、チップ内部の配線も含めて面積増大(コスト増大)に対する影響が大きい。次に、電力漏れに伴う電力効率の低下が挙げられる。外部端子Ptp,PtmからANTまでは、NFCIC’の送信時におけるロスを低減するため、インピーダンスが十分に整合されるように設計される。また、ANTから外部端子Pvp,Pvnまでも、入力電力のロスを低減するためインピーダンスが十分に整合されるように設計される。ただし、これらを両立させると、RWモードにおいては、NFCIC’からの送信電力が整流回路RECTC’側に漏洩してしまい、アンテナ駆動用トランジスタの効率が落ちる恐れがある。逆に、バッテリーレスモードでは、ANTからの入力電力がTXBK’側に漏洩してしまい、整流効率が落ちる恐れがある。
【0012】
本発明は、このようなことを鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、電力漏れを低減し、電力効率の向上を実現可能な無線通信用半導体装置を提供することにある。本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
本実施の形態による無線通信用半導体装置は、アンテナ接続用端子となる第1端子と、第1端子を外部電源となる第1電源電圧でプルアップするpチャネル型の第1MISFETと、第1端子を外部電源となる第2電源電圧でプルダウンするnチャネル型の第2MISFETと、第1端子に接続された整流回路部とを備える。整流回路部は、アンテナを介して第1端子に入力された交流信号を用いて、第1電源電圧よりも高くかつ前記交流信号の最大振幅時に第1端子に生じる高電位側の電圧値よりも高い電圧値を持つ第3電源電圧を生成する。そして、この第3電源電圧は、第1MISFETのバルク電圧として使用される。これによって、第1MISFETの寄生PNPバイポーラトランジスタを通して第1端子の整流用電力が接地電源電圧に漏れることを防止することができ、電力効率の向上が図れる。
【0015】
また、本実施の形態による無線通信用半導体装置は、更に、第2MISFETが3重ウエル構造を備え、3重ウエル構造内の中間層となるn型の半導体層に第2電源電圧と同電位の電圧レベルが供給されるものとなっている。これによって、第2MISFETの寄生NPNバイポーラトランジスタを通して、電源から第1端子に電流が漏れることを防止することができ、電力効率の向上が図れる。
【0016】
そして、これらによって、アンテナ駆動用の端子と整流用の端子を第1端子で兼用できるようになることから、アンテナ駆動用の端子と整流用の端子を分離する場合と比較して、面積やコストの低減が図れ、加えて、各端子間での電力漏れが無くなることから電力効率の向上が図れる。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、リーダライタ機能とICカード等の機能を兼ね備えた無線通信用半導体装置において、電力漏れを低減し、電力効率の向上が実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態による無線通信用半導体装置において、その全体構成の一例を示す概略図である。
【図2】(a)〜(c)は、図1の無線通信用半導体装置において、アンテナ駆動用の外部端子に整流部を単純に接続した場合の問題点を示す説明図である。
【図3】図1の無線通信用半導体装置において、その主要部の詳細な構成例を示す回路ブロック図である。
【図4】(a)〜(c)は、図3の無線通信用半導体装置において、そのバッテリーレスモード時の動作例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態による無線通信用半導体装置において、それを適用した携帯電話システムの構成例を示すブロック図である。
【図6】図1の無線通信用半導体装置における全体のより詳細な構成例を示すブロック図である。
【図7】図6の無線通信用半導体装置において、その送信ブロックの詳細な構成例を示すブロック図である。
【図8】図7の送信ブロックにおいて、そのアンテナドライバ部の詳細な構成例を示す回路図である。
【図9】図8の補足図である。
【図10】図7の送信ブロックにおいて、そのアンテナドライバ駆動部の詳細な構成例を示す回路図である。
【図11】図10のアンテナドライバ駆動部の動作例を示すものであり、(a)はRWモード時における波形図、(b)はカードモード(バッテリーレスモード)時における波形図を示すものである。
【図12】図7の送信ブロックにおいて、その送信制御部の詳細な構成例を示す回路図である。
【図13】図7の送信ブロックにおいて、その整流部の詳細な構成例を示す回路図である。
【図14】図7の送信ブロックにおいて、その整流レギュレータおよび整流レギュレータドライバの詳細な構成例を示す回路図である。
【図15】図14の整流レギュレータにおけるスタートアップ回路の動作例を示す説明図である。
【図16】図14の整流レギュレータにおいて、そのロジック回路部の動作例を示す真理値表である。
【図17】図7の送信ブロックにおいて、そのクロック抽出部の詳細な構成例を示す回路図である。
【図18】図7の送信ブロックにおけるキャリア検出部の詳細を示すものであり、(a)はその構成例を示す回路図、(b)は(a)の動作例を示す波形図である。
【図19】図7の送信ブロックにおいて、その内部電流源の詳細な構成例を示す回路図である。
【図20】図6の電源制御部において、その主要部の詳細な構成例を示す回路図である。
【図21】図20の補足図である。
【図22】図20の他の補足図である。
【図23】本発明の前提として検討した無線通信用半導体装置において、その構成の一例を示す概略図である。
【図24】図3の比較例として検討したプルアップ用PMOSトランジスタの構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0020】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0021】
また、実施の形態の各機能ブロックを構成する回路素子は、特に制限されないが、公知のCMOS(相補型MOSトランジスタ)等の集積回路技術によって、単結晶シリコンのような半導体基板上に形成される。なお、実施の形態では、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)の一例としてMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)(MOSトランジスタと略す)を用いるが、ゲート絶縁膜として非酸化膜を除外するものではない。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
《NFCチップ全体の概略構成》
図1は、本発明の一実施の形態による無線通信用半導体装置において、その全体構成の一例を示す概略図である。図1に示す無線通信用半導体装置(NFCチップ)NFCICは、送信ブロックTXBKおよび受信ブロックRXBKを備え、TXBK内に整流部RECTが備わった構成となっている。TXBKは、送信用(アンテナ駆動用)の外部端子Ptp,Ptmならびに外部のインピーダンス整合回路MACHを介して外部のアンテナANTに結合される。ANTは、インダクタやQ値調整用の抵抗等から構成される。RXBKは、受信用の外部端子Prp,Prn、振幅制限用の外部抵抗Rrp,Rrn、ならびに直流カット用の外部容量Crp,Crnを介してANTに結合される。NFCICは、バッテリー(図示せず)の電力を用いてリーダライタ(RW)として動作するRWモードと、ICカードとして動作するカードモードおよびバッテリーレスモードとを備えている。カードモードでは、バッテリーの電力を用いるが、バッテリーレスモードではバッテリーの電力を用いない。
【0024】
TXBKは、整流部RECTとアンテナドライバ部ADRVを備えている。RWモードのライト時(送信時)には、TXBK内のADRVが、Ptp,Ptmに向けて送信信号(tp,tm)を出力し、それがMACHを介してANTから出力される。RWモードのリード時(受信時)には、ANTからの入力信号(相手先からの返信信号)がCrp,Crn等を介してPrp,Prnに伝送され、それをRXBKが受信信号(rxinp,rxinn)として適宜処理する。一方、バッテリーレスモードで動作する場合、外部のリーダライタ(RW)からANTに供給された入力電力がPtp,Ptmに電力信号(tp,tm)として伝送され、これを用いてRECTが電力を生成し、当該電力を用いてRXBKやADRVが動作する。具体的には、RXBKがANTからの入力信号を適宜処理することで外部のRWからの命令を認識し、また、NFCICが外部のRWに向けて返信を行う際には、ADRVが、PtpとPtm間の負荷を変調し、これに伴いANTに生じた磁界の変化を外部のRWに認識させる。なお、カードモードで動作する場合は、RXBKやADRVの動作電力がバッテリーに代わることを除いて前述したバッテリーレスモードと同様である。
【0025】
このような構成例を用いると、前述した図23の構成例と比較して、外部端子数を削減できることがNFCチップ(ならびにそれを適用したシステム)の小型化や低コスト化が図れる。更に、図23で述べたような、RWモードの送信時におけるアンテナドライバ部ADRVでの送信電力漏れや、バッテリーレスモード時においてANTからの入力電力が整流部RECTではなくADRV側に漏れるのを低減することができる。
【0026】
前者のADRVでの送信電力漏れに関して説明すると、図23のような構成例を用いた場合、例えば、外部端子Pvp,Pvnを無負荷状態(開放状態)などに設定できれば送信電力漏れ(有効電力のロス)を低減することができる。しかし、実際には、仮にPvp,Pvnを無負荷状態などにすると、例えば外付け部品のLC共振等によってPvp,Pvnにおける振幅が過大となりトランジスタの耐圧を超える恐れがある。したがって、実際には、何らかの抵抗負荷によって振幅を制限する必要があり、有効電力のロスが生じてしまう。また、Ptp,PtmからPvp,Pvnに到るまでの各種外付け部品には、実際には抵抗成分が存在するため、これによっても有効電力のロスが生じ得る。
【0027】
そこで、図1の構成例のように、送信用(アンテナ駆動用)の外部端子Ptp,Ptmを整流用の外部端子として兼用させると、RWモード時には、例えば整流部RECTがオフ状態となることで、送信電力漏れ(有効電力のロス)を低減することができる。すなわち、RWモード時にはPtp,Ptmの電位は、内部回路によって駆動され、電源電圧もしくは接地電圧にされる。よって、Ptp,Ptmの電位は接地電源電圧から電源電圧までに制限される。ダイオードブリッジを使用した整流回路によって生成された整流電源は、原理的に入力振幅を越えることはできない。よって、整流電源を開放とするとある程度の電位に達した後は、整流動作が行われなくなるため、整流部RECTがオフとなる。この際に、トランジスタの耐圧に関しては、RWモード時には、前記のとおりPtp,Ptmに対して自らが送信電力を発生しているため、アンテナドライバ部ADRVの電源電圧を超えることはない。
【0028】
一方、後者のバッテリーレスモード時に関しても同様に、アンテナドライバ部ADRVをオフ状態に制御することで、整流部RECTがアンテナ駆動用の外部端子Ptp,Ptmに入力された電力をロス無く整流することができる。ただし、単純に、外部端子Ptp,Ptmに整流部RECTを接続しただけでは、図2に説明するように、整流動作時にTXBK内で大きな電力漏れが生じる場合がある。本実施の形態による無線通信用半導体装置では、この問題を見出すと共に、それに対して対策(詳細は後述)を行ったことが主要な特徴の一つとなっている。
【0029】
《送信ブロックのおける問題点の一例》
図2(a)〜(c)は、図1の無線通信用半導体装置において、アンテナ駆動用の外部端子に整流部を単純に接続した場合の問題点を示す説明図である。図2(a)では、バッテリーレスモード時において、アンテナドライバ部ADRV内のプルアップ用PMOSトランジスタの状態が模式的に示されている。この例では、プルアップ用PMOSトランジスタは、図2(a)、(c)に示すように、整流部RECT内の全波整流回路FWRCTによって生成された電源電圧(vccrf(例えば2.7V))でオフにされている。バッテリーレスモード時なので、アンテナ駆動用としてバッテリーから供給される外部電源電圧(txvcc)は0Vである。この時、vccrfは電力信号(tp,tm)を整流して得られるため、図2(c)に示すように、tp,tmの電位はvccrfを超えることがある。この場合、プルアップ用PMOSトランジスタは、tp,tmをソース、txvccをドレインとして動作する。このとき、「tp(又はtm)−vccrf>Vthp」であれば、tp,tmからtxvcc(=0V)に電流が逆流し、整流動作が阻害される。
【0030】
また、図2(a)に示すように、プルアップ用PMOSトランジスタには、p型拡散層(p)をエミッタ、n型ウエル(nwell)をベース、p型半導体基板(psub)をコレクタとする寄生PNPバイポーラトランジスタが存在する。p型拡散層(p)にはtp,tmが印加され、p型半導体基板(psub)にはtxvccに対する接地電源電圧txvss(=0V)が印加される。通常時では、n型ウエル(nwell)に最高電位であるvccrfをプルアップ用PMOSトランジスタのバックバイアス(バルク電圧)として供給することで問題は生じない。しかしながら、実際には、図2(c)に示すように、「tp(又はtm)−vccrf>0.6V」になり得るため、寄生PNPバイポーラトランジスタがオンとなり、tp,tmからp型基板(psub)の電位となるtxvss(=0V)に電流が流れ、整流動作を阻害する。
【0031】
また、図2(b)に示すように、同様の問題がアンテナドライバ部ADRV内のプルダウン用NMOSトランジスタ側でも起こる。図2(b)では、バッテリーレスモード時において、ADRV内のプルダウン用NMOSトランジスタの状態が模式的に示されている。この例では、プルダウン用NMOSトランジスタは、接地電源電圧(txvss(=0V))でオフにされている。現在のCMOSプロセスでは、3重ウエル構造が基本となっており、プルダウン用NMOSトランジスタのp型ウエル(pwell)は、それを覆うディープn型ウエル(deep nwell)によってp型半導体基板(psub)から分離されている。この場合、プルダウン用NMOSトランジスタには、n型拡散層(n)をエミッタ、p型ウエル(pwell)をベース、ディープn型ウエル(deep nwell)をコレクタとする寄生NPNバイポーラトランジスタが存在する。
【0032】
型拡散層(n)にはtp,tmが印加され、p型ウエル(pwell)にはプルダウン用NMOSトランジスタのバックバイアス(バルク電圧)として最低電位であるtxvss(=0V)が印加される。一般的に、ディープn型ウエル(deep nwell)は、電源電圧(vccrf)に接続される。しかしながら、図2(c)に示すように、整流動作を行っているとき、tp,tmは−0.6V程度まで低下することがある。そうすると、寄生NPNバイポーラトランジスタのコレクタに大電流が流れ、vccrfから電流を引き抜いてしまう。
【0033】
このように、アンテナ駆動用の外部端子Ptp(信号tp),Ptm(信号tm)に整流部RECTを単純に接続した場合、バッテリーレスモード時においてPtp,Ptmとアンテナドライバ部ADRV内のトランジスタとの間でリークパスが生成されるため、RECTの動作が阻害されることになる。なお、例えば図23のような構成例を用いた場合には、整流用の外部端子(Pvn,Pvp)とアンテナ駆動用のPtp,Ptmが外部容量Cvp,Cvn等で分離されており、Pvn,Pvpにアンテナドライバ部が直接接続される訳ではないため図2のような問題は生じない。ただし、図23の構成例では前述したように他の問題があるため、図1の構成例において図2の問題を解決することが望まれる。
【0034】
《NFCチップ(主要部)の概略構成》
図3は、図1の無線通信用半導体装置において、その主要部の詳細な構成例を示す回路ブロック図であり、図2で述べた問題点を解決する構成例である。図3に示すNFCチップNFCICは、送信ブロックTXBK内に、整流部RECT、アンテナドライバ部ADRV、整流レギュレータドライバRCTRGDRV、および整流レギュレータRECTREGを備えている。
【0035】
整流部RECTは、全波整流回路FWRCT、昇圧回路UPC、スイッチSW1a,SW1b、および容量Cm,Cpを含んでいる。FWRCTは、アンテナANTから入力された電力信号(tp,tm)を接地電源電圧を基準として全波整流することで電源電圧(vccrect)を生成する。UPCは、前述した電力信号(tp,tm)をCm,Cpを介して受け、それをFWRCTからの電源電圧(vccrect)を基準として全波整流することで電源電圧(vccrect2)を生成する。SW1a,SW1bは、相補的にオン・オフが制御され、バッテリーレスモードの場合には電源電圧(vccrf)としてvccrectを出力し、そうでない場合(カードモード、RWモード)にはvccrfとしてバッテリーからの電源電圧(mvdd)を出力する。
【0036】
アンテナドライバ部ADRVは、PMOSトランジスタMPup,MPum、NMOSトランジスタMNdp,MNdm、およびスイッチSW2a,SW2bを含んでいる。MPupは、アンテナANTの一端(外部端子Ptp)をバッテリーからのアンテナ駆動用電源電圧(txvcc)でプルアップし、MNdpはPtpをバッテリーからのアンテナ駆動用接地電源電圧(txvss)でプルダウンする。MPumは、ANTの他端(外部端子Ptm)をtxvccでプルアップし、MNdpはPtmをtxvssでプルダウンする。SW2a,SW2bは、相補的に動作し、バッテリーレスモードの際には整流部RECTからの昇圧電源電圧(vccrect2)をMPup,MPumのバックバイアス(バルク電圧)として供給し、そうでない場合(カードモード、RWモード)にはtxvccをMPup,MPumのバックバイアスとして供給する。
【0037】
整流レギュレータRECTREGは、オペアンプ回路OPAMP10を含み、整流レギュレータドライバRCTRGDRVは、NMOSトランジスタMNrgを含む。OPAMP10は、電源電圧(vccrf)の抵抗分圧値と基準電圧(bgr08)を比較し、その比較結果でMNrgのゲートを駆動する。MNrgは、ソースが接地電源電圧に、ドレインが電源電圧(vccrect)に接続される。したがって、例えば、vccrfが所定の電圧(例えば2.7V)よりも高い場合、OPAMP10は、MNrgを介してvccrectの電圧を低下させ、その結果、SW1bを介してvccrfの電圧を低下させる。
【0038】
図4(a)〜(c)は、図3の無線通信用半導体装置において、そのバッテリーレスモード時の動作例を示す説明図である。図4(a)では、バッテリーレスモード時において、アンテナドライバ部ADRV内のプルアップ用PMOSトランジスタ(MPup,MPum)の状態が模式的に示されている。この例では、プルアップ用PMOSトランジスタは、図4(a)、(c)に示すように、整流部RECT内の昇圧回路UPCによって生成された電源電圧(vccrect2(例えば5V))でオフにされている。バッテリーレスモード時なので、アンテナ駆動用としてバッテリーから供給される外部電源電圧(txvcc)は0Vである。この時、図2(c)に示すように、tp,tmの電位は全波整流回路FWRECTからのvccrf(=2.7V)を超えることはあるが、vccrect2を超えることは無い。したがって、図2(a)の場合と異なり、プルアップ用PMOSトランジスタがオンすることはないため、整流動作の阻害を防止することができる。
【0039】
また、図4(a)に示すように、プルアップ用PMOSトランジスタには、p型拡散層(p)をエミッタ、n型ウエル(nwell)をベース、p型半導体基板(psub)をコレクタとする寄生PNPバイポーラトランジスタが存在する。p型拡散層(p)にはtp,tmが印加され、p型半導体基板(psub)にはtxvccに対する接地電源電圧txvss(=0V)が印加される。ここで、n型ウエル(nwell)には、図2(a)の場合と異なり昇圧電源電圧(vccrect2(例えば5V))が供給されている。この場合、エミッタとなるtp,tmの電位がベースとなるvccrect2の電位を超えることは無く、寄生PNPバイポーラトランジスタはオフ状態を維持するため、整流動作の阻害を防止することができる。
【0040】
一方、図4(b)では、バッテリーレスモード時において、ADRV内のプルダウン用NMOSトランジスタ(MNdp,MNdm)の状態が模式的に示されている。この例では、プルダウン用NMOSトランジスタは、接地電源電圧(txvss(=0V))でオフにされている。プルダウン用NMOSトランジスタは、3重ウエル構造で形成され、チャネル領域となるp型ウエル(pwell)が、それを覆うディープn型ウエル(deep nwell)によってp型半導体基板(psub)から分離されている。この場合、プルダウン用NMOSトランジスタには、n型拡散層(n)をエミッタ、p型ウエル(pwell)をベース、ディープn型ウエル(deep nwell)をコレクタとする寄生NPNバイポーラトランジスタが存在する。
【0041】
型拡散層(n)にはtp,tmが印加され、p型ウエル(pwell)にはプルダウン用NMOSトランジスタのバックバイアス(バルク電圧)として最低電位であるtxvss(=0V)が印加される。ここで、ディープn型ウエル(deep nwell)には、図2(b)の場合と異なり、接地電源電圧(txvss(=0V))が供給されている。これによって、図4(c)に示すように、整流動作を行っている際に仮にtp,tmが−0.6V程度まで低下した場合でも、寄生NPNバイポーラトランジスタのコレクタが0Vであるため大電流が流れることはなく、またvccrfから電流を引き抜くことも無いため整流動作の阻害を防止できる。なお、ディープn型ウエル(deep nwell)を0Vに接続した場合でも、ディープn型ウエル内にPMOSトランジスタが存在しなければ特に問題は生じない。
【0042】
以上のように、図1ならびに図3の無線通信用半導体装置(NFCチップ)を用いることで、整流動作時ならびに送信動作時の電力漏れを低減でき、電力効率の向上が実現可能になる。なお、図3のアンテナドライバ部ADRVにおいて、スイッチSW2a,SW2bを設けているのは、ここでは、バッテリーレスモード以外では整流動作の停止に伴い電源電圧(vccrect2)が0V付近に固定されるためである。すなわち、この際には、プルアップ用PMOSトランジスタのバックバイアスおよびオフ電圧となるvccnwellは、バッテリーからの電源電圧(txvcc)に切り替えられる。
【0043】
また、図3の構成例は、電源電圧(vccrf)の値を整流レギュレータRECTREGで検出し、整流レギュレータドライバRCTRGDRVで全波整流回路FWRCTの電源電圧(vccrect)を制御することで、間接的にvccrfの値を制御する構成となっている。これは、スイッチSW1bの抵抗とvccrfに対する外付け容量C1とのロウパスフィルタ効果により、vccrectを直接的に制御する場合と比べて電源制御が容易となり、結果的にvccrfの安定化が図れるためである。すなわち、vccrfの変動量はvccrectに比べてロウパスフィルタ効果により小さくなるため、vccrfを制御対象とする方が結果的にvccrfの安定化が図れる。
【0044】
《プルアップ用PMOSトランジスタの比較例》
図24は、図3の比較例として検討したプルアップ用PMOSトランジスタの構成例を示す回路図である。図3においては、プルアップ用PMOSトランジスタMPup,MPumのバックバイアスを制御することで整流動作時の電力漏れを防止したが、各プルアップ用PMOSトランジスタを図24に示すような構成とすることでも電力漏れの防止が図れる。図24では、各プルアップ用PMOSトランジスタが、直列接続された2個のPMOSトランジスタで構成され、そのバックバイアスが共通接続ノードに接続されることで最高電位がバックバイアスとして供給される。しかしながら、このような構成例を用いた場合、図3のプルアップ用PMOSトランジスタと同一の駆動能力を確保するためには、直列接続に伴いゲート長が2倍になるためゲート幅も2倍にする必要があり、結果的に図3の場合と比較して4倍のトランジスタ面積が必要になる。特に、図3のMPup,MPum等は、アンテナ駆動用であるため元々サイズが大きく、図24のような構成例ではデメリットが大きい。
【0045】
《携帯電話システムの概略構成》
図5は、本発明の一実施の形態による無線通信用半導体装置において、それを適用した携帯電話システムの構成例を示すブロック図である。図5に示す携帯電話システムは、バッテリーBAT、電源回路VGEN、NFCチップNFCIC、近距離用のアンテナANT、UIMチップUIM、携帯通信用高周波処理部RFIC、遠距離用のアンテナANTrf、メインプロセッサCPU、およびヒューマンインターフェースHMIF等を備えている。電源回路VGENは、バッテリーBATあるいはその他の外部電源が供給され、NFC電源、UIM電源、RF電源、その他の各種電源を生成する。携帯通信用高周波処理部RFICは、RF電源によって動作し、ANTにおける例えば数百MHz〜数GHzの電波信号を介してCPUと携帯電話システム外部との間の通信を適宜制御する。ヒューマンインターフェースHMIFは、VGENからの電源によって動作し、例えば各種ボタン等から入力された情報をCPUに通知したり、あるいはCPUからの情報に応じてディスプレイに所定の表示を行ったり等の各種ユーザ処理を行う。
【0046】
NFCチップNFCICは、本実施の形態による無線通信用半導体装置に該当するものである。NFCICは、前述したRWモードあるいはカードモードの際にはVGENからのNFC電源によって動作し、ANTにおける例えば13.56MHzの電磁界信号を介してCPUと携帯電話システム外部との間の通信を適宜制御する。一方、バッテリーレスモードの際には、ANTから入力された電力から電源を生成し、これによって動作を行う。ここで、カードモードまたはバッテリーレスモードの際、NFCICは、UIM(例えばSIMカード(Subscriber Identity Module Card))との間で所定の通信を行う。この際に、NFCICはUIMに向けて動作用の電源を供給する必要がある。そこで、NFCICは、カードモードの場合にはVGENからのUIM電源を供給し、バッテリーレスモードの場合にはANTから入力された電力によって生成した電源を供給する。したがって、バッテリーレスモードの場合には、特に前述した整流部RECTでの整流効率が重要となるため、本実施の形態によるNFCチップを用いることが有益となる。
【0047】
《NFCチップ(全体)の詳細構成》
図6は、図1の無線通信用半導体装置における全体のより詳細な構成例を示すブロック図である。図6に示す無線通信用半導体装置(NFCチップ)NFCICは、例えば、1個の半導体チップ上に形成され、送信ブロックTXBK、電源制御部VCTL、受信ブロックRXBKと、マイクロプロセッサMPUを中心としてTXBK,RXBKを介した通信や、TXBK,RXBK,VCTLの制御を行う各種制御ブロックから構成される。MPUには内部バス(図示せず)等を介して各種周辺回路が接続される。各種周辺回路の中には、揮発性メモリRAM、不揮発性メモリROM、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フェーズロックドループ回路PLL、発振回路OSC、外部入出力回路IO、セキュリティ関連回路SECU等が含まれている。
【0048】
OSCは、外部の水晶発振器XTAL等に基づいて基準クロック信号を生成し、PLLは、当該基準クロック信号を用いて所定の周波数の内部クロック信号を生成する。IOは、MPUと外部との間で例えばUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、SWP(Single Wire Protocol)、USB(Universal Serial Bus)等を介した通信を制御する。この内、MPUとUIMチップ(UIM)との間の通信はSWPを介して行われる。MPUは、RAM,ROM,EEPROMを用いて所定のプログラム(RWモード用制御プログラムやICカード用制御プログラム等)を実行し、また、その過程でSECUを用いてセキュリティの確保を行う。
【0049】
送信ブロックTXBKは、バッテリーから生成された電源電圧(アンテナドライバ用(txvcc/txvss),送信ブロック全体用(mvdd/mvss))が供給され、MPUとの間で各種信号を用いた通信を行いながらアンテナ駆動用の送信信号(tp,tm)を生成する。また、TXBKは、バッテリーレスモード時には、前述したように、アンテナ(図示せず)からの電力信号(tp,tm)を整流して電源電圧(vccrf,vccnwell)を生成する。更に、TXBKには、受信ブロック用の電源電圧(rxvcc/rxvss)や、リファレンス生成回路REFGからの基準電圧(バンドギャップ電圧)(bgr08)ならびに基準電流(tx_iref)等も供給される。
【0050】
受信ブロックRXBKは、アンテナからの受信信号(rxinp,rxinn)や受信用の基準電圧(rxinpとrxinnのコモン電圧)(rxvmid)が入力され、ASK(Amplitude shift keying)変調された受信信号を復調したのちMPUに出力する。この際に、RXBKは、rxvmidのレベル制御や、受信信号の振幅制御等も行う。電源制御部VCTLは、バッテリーからのSWP用の電源電圧(swvccin)が入力され、MPUからの制御信号(swvccout_on)に応じて外部入出力回路IOに接続されるSWP用デバイス(すなわちUIMチップ)に向けてSWP用の電源電圧(swvccout)を供給する。この際に、VCTLは、バッテリーレスモードの場合には、TXBKから供給された電源電圧(vccrf,vccnwell)に基づいてswvccoutを生成し、そうでない場合にはswvccinに基づいてswvccoutを生成する。なお、VCTLからの制御信号(swext)は、例えば、swvccinとswvccoutを外付けのスイッチで接続する際などで、当該スイッチのオン・オフ信号等として使用される。また、VCTLは、前述した受信ブロック用の電源電圧(rxvcc)をTXBKに向けて供給する。
【0051】
このような構成において、TXBKは、前述したRWモード、カードモード、バッテリーレスモードに応じて所定の動作を行うと共に、RFセンサモード(RFSモード)での動作や、クロック抽出動作等も行う。これらの動作概要について簡単に説明すると、まず、RWモードにおいて、TXBKは、MPUからの制御信号(carr_on)の‘H’レベルを受け、MPUからの制御信号(modp[5:0],modn[5:0])により設定された駆動力で、外付けのアンテナを駆動する。この際に、MPUからの制御信号(modp[5:0],modp2_[5:0],modn[5:0])が適宜制御されることで、TXBKはASK変調信号を生成する。制御信号(modp[5:0],modp2_[5:0],modn[5:0])の値は、MPU内の設けられたレジスタ回路(図示せず)によって適宜変更可能である。また、TXBKは、carr_onが‘H’レベルである時に、送信信号(tp/tm)に高電圧(例えばtxvcc+0.6V程度)が発生した場合(すなわちアンテナからの電力逆流やアンテナ出力中に強磁界が入力された場合等)には検出信号(emer)を出力する。
【0052】
次にカードモードにおいて、TXBKは、MPUからの制御信号(ld_on)が‘H’レベルの際にmodn[5:0]により設定された強度で、負荷変調動作(すなわち外部のRWに向けた返信)を行う。続いて、バッテリーレスモードにおいて、TXBKは、アンテナからの電力信号(tp,tm)を整流(ならびに電圧制御)することで例えば2.7V等の電源電源(vccrf)を生成し、加えて、それを昇圧することで例えば5V程度の電源電圧(vccnwell)を生成する。また、カードモードと同様に、MPUからの制御信号(ld_on)に応じて負荷変調動作を行う。更に、バッテリーレスモードである(すなわち外部電源が供給されていない)ことを判定し、検出信号(bless)を出力する。
【0053】
次にRFSモードにおいて、TXBKは、受信信号(rxinp,rxinn)の振幅が一定以上となったとき(すなわちキャリアの入力を検出したとき)、検出信号(cdet)を立ち下げる。このキャリア検出の際の感度には、ヒステリシス特性を持たせている。TXBKは、検出信号(cdet)を立ち下げた際には、それを例えば100〜500μs期間保持する。すなわち、本実施の形態によるNFCチップでは、カードモードやバッテリーレスモードの際、省電力化のためキャリア検出を行う回路ブロック以外は基本的に非活性状態とされており、キャリア検出を受けて各回路ブロックが活性化される構成となっている。ここで、検出されるキャリアは、ASK変調が行われているため、検出信号(cdet)が不必要に切り替わらないように、前述したヒステリシス特性やレベル保持などの機能が備わっている。続いてクロック抽出動作において、TXBKは、受信信号(rxinp)からクロック信号を抽出する。rxinpに振幅が存在しないときは、‘L’レベルを出力する。
【0054】
《送信ブロックTXBK(全体)の詳細構成》
図7は、図6の無線通信用半導体装置において、その送信ブロックTXBKの詳細な構成例を示すブロック図である。図7において、アンテナドライバ部ADRVは、外付けアンテナを送信信号(tp,tm)で駆動するブロックであり、プルアップ用PMOSトランジスタ、プルダウン用NMOSトランジスタ、変調率補正用プルダウンPMOSトランジスタを備えている。また、図3、図4で説明したように、バッテリーレスモード時に、プルアップ用PMOSトランジスタの寄生PNPトランジスタが整流動作を阻害することを防ぐために、バックバイアスを制御するスイッチを備えている。さらに、RWモード時に、外部端子(送信信号(tp,tm))に異常電圧が発生した際に検出信号(emer)を出力する。
【0055】
アンテナドライバ駆動部ADRVCTLp,ADRVCTLmは、前述したADRV内の各アンテナ駆動用のMOSトランジスタを駆動する。この際には、駆動するMOSトランジスタの数を制御する。また、この駆動の際にアンテナからの出力波形を整形するため、ADRV内の各MOSトランジスタのゲート電位の変化を鈍らせるCRフィードバック回路が存在する。送信制御部TXCTLは、主としてアンテナ駆動機能の制御を行う。また、ディジタル入力信号をバッファする機能も持つ。整流部RECTは、アンテナから入力された波形を整流し、電源電圧を生成する。また、ADRV内のプルアップ用PMOSトランジスタのバルク電圧を生成するための2段昇圧回路を備える。さらに、外部電源(mvdd)と整流電源の切り替え機能や、バッテリーレスモードの判定機能を持つ。
【0056】
整流レギュレータRECTREGは、整流部RECTで生成された電源電圧の大きさを制御するために、整流レギュレータドライバRCTRGDRVを駆動する。整流電源が立ち上がる前には、図6のリファレンス生成回路REFGからの基準電圧(bgr08)が立ち上がらないため、内部電流源IREGからの基準電圧(vref_vccrf)で整流電源を立ち上げる。整流レギュレータドライバRCTRGDRVは、整流レギュレータRECTREGからの出力を受け、整流電源から電流を引き抜く。また、カードモード時は、外部端子(信号tp,tm)の振幅を制限し、外部端子(信号tp,tm)からの電流逆流を防ぐため、電源電圧(vccrect)から電流を最大限に引き抜く。
【0057】
キャリア検出部TXCDETは、RFSモード時に、外部端子(受信信号rxinp,rxinn)に生じた振幅を検出する。検出信号は、100〜500μs保持される。他のモード時もキャリアの検出は停止しない。クロック抽出部CLKEXTは、受信信号(rxinp)に入力された信号からクロックを抽出し、クロック信号(exclk1356)を出力する。クロック停止時は、exclk1356として‘L’レベルを出力する。内部電流源IREGは、整流レギュレータRECTREG及び、キャリア検出部TXCDETに基準電流を供給する。また、整流電源の立ち上がり時のために、MOSトランジスタのVth差を用いた低精度の基準電圧を出力する。
【0058】
《アンテナドライバ部ADRVの詳細構成》
図8は、図7の送信ブロックTXBKにおいて、そのアンテナドライバ部ADRVの詳細な構成例を示す回路図である。ADRVは、TP/TM駆動部TPTMDVと、vccnwell生成部VCNWELGと、エマージェンシ検出部EMERDETを備えている。TP/TM駆動部TPTMDVは、一方の外部端子(信号tp)を対象として、6個のプルアップ用PMOSトランジスタMPup_xと、6個のプルダウン用NMOSトランジスタMNdp_xと、6個の変調率補正用プルダウンPMOSトランジスタMPdp_xを備えている。ここで「x」は、1,2,4,8,16,32の値を持ち、この値に応じた駆動力(すなわちトランジスタサイズ比)を持っている。6個のMPup_xは6本の駆動信号drv_pp[5:0]によってそれぞれ駆動され、6個のMNdp_xは6本の駆動信号drv_pn[5:0]によってそれぞれ駆動され、6個のMPdp_xは6本の駆動信号drv_pp2[5:0]によってそれぞれ駆動される。それぞれの駆動信号の動作/非動作を切り替えることで、プルアップ用PMOSトランジスタ、プルダウン用NMOSトランジスタ、変調率補正用プルダウンPMOSトランジスタの駆動力を64段階で調整できる。
【0059】
同様に、TPTMDVは、他方の外部端子(信号tm)を対象として、6個のプルアップ用PMOSトランジスタMPum_xと、6個のプルダウン用NMOSトランジスタMNdm_xと、6個の変調率補正用プルダウンPMOSトランジスタMPdm_xを備えている。6個のMPum_xは6本の制御信号drv_mp[5:0]によってそれぞれ駆動され、6個のMNdm_xは6本の制御信号drv_mn[5:0]によってそれぞれ駆動され、6個のMPdm_xは6本の制御信号drv_mp2[5:0]によってそれぞれ駆動される。ここで、プルアップ用PMOSトランジスタMPup_x,MPum_xおよびプルダウン用NMOSトランジスタMNdp_x,MPdm_xにおける各ノードの詳細な電位は、図3および図4に示したものとなる。変調率補正用プルダウンPMOSトランジスタMPdp_x,MPdm_xは、「Type B」規格のASK変調時に、PVT(プロセス、電圧、温度)ばらつきに対し変調率を8.5〜13.5%の範囲のばらつきに抑えるために使用するトランジスタである。それぞれの信号の制御方法は後述する。
【0060】
図8において、vccnwell生成部VCNWELGは、クロススイッチ回路CRSSW10と、選択スイッチ回路SELSW10と、3個のインバータ回路IV10〜IV12を備えている。CRSSW10は、ソース・ドレイン間が直列接続されたと2個のPMOSトランジスタからなり、その共通接続ノードが電源電圧(vccnwell)に接続されている。vccnwellは、前述したように、アンテナドライバ部ADRVにおけるプルアップ用PMOSトランジスタのゲート電圧やバルク電圧等で使用される。CRSSW10内の2個のPMOSトランジスタは、一方のトランジスタにおけるvccnwellでない方のノードが他方のトランジスタのゲートにクロス接続され、整流部RECTで生成した昇圧電源電圧(vccrect2)と外部電源電圧(txvcc)を比較して高電位な方をvccnwellとして出力する。なお、2個のPMOSトランジスタのバックバイアスは、vccnwellに接続される。
【0061】
選択スイッチ回路SELSW10は、直列接続された2個のPMOSトランジスタからなり、その共通接続ノードがCRSSW10と同じくvccnwellに接続されている。また、2個のPMOSトランジスタのバックバイアスも、vccnwellに接続される。SELSW10は、単純に、バッテリーレスモードか否かを示す検出信号(bless)に従ってtxvccかvccrect2を選択してvccnwellに正しい電位を供給する。このときSELSW10を駆動する各インバータIV10〜IV12の電源電位を工夫する。図9は、図8の補足図であり、vccnwell生成部VCNWELGにおける各ノードの電位例を示すものである。
【0062】
通常、バッテリーレスモード時にはblessは2.7Vを出力している。このとき、要求されるvccnwell≒5Vであり、SELSW10をオフにするためには、2.7→5.0Vのレベルシフタが必要である。ただし、その実動作を考慮し、レベルシフタよりも簡単な回路で実現可能なインバータ回路IV10〜IV12を用いている。IV10は、vccrfを電源として例えば‘H’レベルのblessを反転駆動し、0Vを出力する。この出力を入力としてIV11は、vccnwellを電源として反転駆動し、例えば5V等の信号を出力する。通常このような方法では、blessが‘L’レベルの場合にうまく動作しない。しかし、blessが‘L’レベル(すなわちバッテリーレスモード以外)では、vccnwell=txvcc=3.0Vである。この場合、blessの‘L’レベルをvccrfで駆動するIV10で信号を反転させると、出力電位はvccrf=mvdd−0.1=txvcc−0.2=2.8Vとなる(最悪値)。この2.8Vの電位をvccnwell駆動のIV11に入力した場合、問題なく‘L’レベルを出力することができ、SELSW10を正しく動作させることができる。
【0063】
なお、電源電圧(vccnwell)を生成するにあたり、2種類のスイッチ回路(CRSSW10,SELSW10)を設けているのは、次のような理由による。まず、CRSSW10を設けているのは、整流部RECTの起動直後等で電源電圧(vccrf,vccrect2)が完全に立ち上がっておらず、これを電源とするインバータ回路IV10〜IV12によるblessの駆動が不完全な場合でも、正しい電位をvccnwellに生成するためである。また、CRSSW10に加えて、SELSW10を設けているのは、例えば何らかの原因でvccrect2とtxvccが同等の電位となった場合には、CRSSW10のPMOSトランジスタは共にオフとなるため、より安全性を確保するためである。
【0064】
図8において、エマージェンシ検出部EMERDETは、バルク電圧がvccnwellとなるPMOSトランジスタを使用するので、アンテナドライバ部ADRVに設けている。EMERDETは、制御信号(carr_on)が‘H’レベルかつ制御信号(emer_off)が‘L’レベルの際にノア演算回路NOR10を介して起動が行われる。EMERDETが起動すると、カレントミラー回路CM10がクロック抽出部CLKEXT(図7)からのiref_emer=10μAを用いてバイアス用のPMOSトランジスタMPm1に20μAのバイアス電流を供給し、これに伴いemer検出用のPMOSトランジスタMPm2,MPm3のゲートがバイアスされる。
【0065】
ここで、信号tp,tmがtxvccを超えると、MPm2,MPm3のVgsがMPm1のVgsを上回り、MPm2,MPm3に20μAを超える過剰な電流が流れる。MPm2,MPm3に流れる電流の過剰分は、NMOSトランジスタMNc1に流れ込む。これにより、信号(emer_sense)の電位が上昇し、アンド演算回路AD10の出力が‘L’レベルから‘H’レベルに反転し、検出信号(emer)が出力される。なお、EMERDETが起動していない場合には、emer_senseが不定となるが、AD10の一方には‘L’レベルが入力されるため問題はない。
【0066】
《アンテナドライバ駆動部ADRVCTLの詳細構成》
図10は、図7の送信ブロックTXBKにおいて、そのアンテナドライバ駆動部ADRVCTLの詳細な構成例を示す回路図である。アンテナドライバ駆動部ADRVCTLp,ADRVCTLmは、前述したADRV内のアンテナ駆動用の各MOSトランジスタ(プルアップ用、プルダウン用、変調率補正用)を駆動し、駆動するMOSトランジスタの数を制御する回路である。図10において、6個のナンド演算回路ND20_xは、vccnwellを電源として動作し、それぞれdrv_p2[0]〜drv_p2[5]を出力する。ここで、「x」は1,2,4,8,16,32であり、この値に応じた比でND20_xの駆動力が調整されている。drv_p2[0]〜drv_p2[5]は、変調率補正用プルダウンPMOSトランジスタの駆動信号となる。なお、図10と図8の関係において、drv_p2[0]〜drv_p2[5]は、図10がADRVCTLpの場合には図8のdrv_pp2[0]〜drv_pp2[5]に対応し、図10がADRVCTLmの場合には図8のdrv_mp2[0]〜drv_mp2[5]に対応する。
【0067】
同様に6個のナンド演算回路ND21_xは、vccnwellを電源として動作し、それぞれdrv_p[0]〜drv_p[5]を出力する。drv_p[0]〜drv_p[5]は、プルアップ用PMOSトランジスタの駆動信号となる。また、6個のノア演算回路NR20_xは、vccrfを電源として動作し、それぞれdrv_n[0]〜drv_n[5]を出力する。drv_n[0]〜drv_n[5]は、プルダウン用NMOSトランジスタの駆動信号となる。ここで、プルアップ用/プルダウン用のMOSトランジスタに向けた駆動信号には、出力波形整形(具体的には高調波成分の低減)のためにゲート電位の変化を鈍らせるCRフィードバック回路が付加されている。
【0068】
例えば、プルアップ用PMOSトランジスタの駆動信号(drv_p[0]〜drv_p[5])は、それぞれ容量C10_x(x=1,2,4,8,16,32であり、容量値の比率を表す)を介して共通に接続され、この共通接続ノードがスイッチ回路MSW10および抵抗R10を介してtp(又はtm)に接続される。すなわち、tp(又はtm)が、CR回路を介してdrv_p[0]〜drv_p[5]にフィードバックされている。なお、変調率補正用のMOSトランジスタでは、特に電位変化を鈍らせてはいない。CRフィードバック回路は、RWモードにおける送信動作時以外はスイッチ回路(MSW10,MSW11)を介してオフとなり、特に整流動作時においてアンテナ駆動用の各MOSトランジスタを誤って駆動することで漏れ電流が発生する等の事態を防いでいる。
【0069】
図11は、図10のアンテナドライバ駆動部ADRVCTLの動作例を示すものであり、図11(a)はRWモード時における波形図、図11(b)はカードモード(バッテリーレスモード)時における波形図を示すものである。図11(a)において、RWモードでは、ADRVCTLは主に13.56MHzでアンテナを駆動し、ASK変調を行う。RWモード時は、vccnwell=txvcc≒vccrfであるため、電源電圧の不一致は問題ない。制御信号(carr_on)が‘L’レベルの場合、送信制御部TXCTL(図7)からgate_pp=‘L’、gate_pn=vccrf、gate_mp=‘L’、gate_mn=vccrfが出力される。よって、drv_pp2(mp2)[5:0]はすべてvccnwellとなり、drv_pp(mp)[5:0]はすべてvccnwellとなり、drv_pn(mn)[5:0]はすべて‘L’レベルを出力する。これにより、アンテナドライバ部ADRV内の各MOSトランジスタはすべてオフ状態となり、tp,tmはハイインピーダンス状態となる。
【0070】
一方、carr_onに‘H’レベルが入力されると、TXCTL(図7)からgate_pp,gate_pn,gate_mp,gate_mnが13.56MHzのクロックとして入力される。この時、gate_ppとgate_pnは同位相であり、同じく、gate_mpとgate_mnも同位相である。そして、gate_ppとgate_mp(gate_pnとgate_mn)が逆位相となる。この時、TXCTL(図7)からのmodp_t[5:0]のうち、‘H’レベルが入力されているビットに対応するdrv_pp(mp)[5:0]はクロックが出力され、‘L’レベルが入力されているビットに対応するdrv_pp(mp)[5:0]はvccnwellに固定される。これにより、図6のMPUから入力されるmodp[5:0]に従って、プルアップ用PMOSトランジスタの駆動力が調整される。
【0071】
同じく、TXCTLからのmodp2_t[5:0]のうち、‘H’レベルが入力されているビットに対応するdrv_pp2(mp2)[5:0]はクロックが出力され、‘L’レベルが入力されているビットに対応するdrv_pp2(mp2)[5:0]はvccnwellに固定される。これにより、MPUから入力されるmodp2[5:0]に従って、変調率補正用プルダウンPMOSトランジスタの駆動力を調整できる。また、TXCTLからのmodn_b[5:0]のうち、‘L’レベルが入力されているビットに対応するdrv_pn(mn)[5:0]はクロックが出力され、‘H’レベルが入力されているビットに対応するdrv_pn(mn)[5:0]は‘L’レベルに固定される。これにより、MPUから入力されるmodn[5:0]に従って、プルダウン用NMOSトランジスタの駆動力が調整される。なお、キャリア出力時にはCRで構成されたフィードバック回路が有効になり、drv_pp(mp),drv_pn(mn)の波形が鈍っている。それ以外の動作時は、特にバッテリーレスモード時に整流動作を阻害するので、フィードバック回路はオフになっている。
【0072】
図11(b)において、カードモードでは、アンテナドライバ駆動部ADRVCTLは主に負荷変調用の制御信号(ld_on)に従って負荷変調動作を行う。カードモード時は、vccnwell=txvcc≒vccrfであるため、電源電圧の不一致は問題ない。ld_on=‘L’の時は、RWモード時でのcarr_on=‘L’の時と同様に、送信制御部TXCTL(図7)からgate_pp=‘L’、gate_pn=vccrf、gate_mp=‘L’、gate_mn=vccrfが出力される。よって、drv_pp2(mp2)[5:0]はすべてvccnwellとなり、drv_pp(mp)[5:0]はすべてvccnwellとなり、drv_pn(mn)[5:0]はすべて‘L’レベルとなる。これにより、アンテナドライバ部ADRVの各MOSトランジスタはすべてオフ状態となり、tp,tmはハイインピーダンス状態となる。
【0073】
一方、図6のMPUよりld_on=‘H’が入力されると、gate_pn,gate_mnが‘L’レベルに遷移する。これにより、modn_b[5:0]のうち、‘L’レベルが入力されているビットに対応するdrv_n[5:0]ではvccrfが出力され、‘H’レベルが入力されているビットに対応するdrv_n[5:0]は‘L’レベルに固定される。これにより、MPUから入力されるmodn[5:0]に従った駆動力で、アンテナドライバ部ADRVのプルダウン用NMOSトランジスタがオンとなり、ld_onに応じた負荷変調動作が行われる。この際に、gate_pp,gate_mpはld_onにかかわらず‘L’レベルのままであるため、drv_pp(mp)[5:0],drv_pp2(mp2)[5:0]はすべてvccnwellに固定され、アンテナ駆動部ADRVのプルアップ用PMOSトランジスタ及び変調率補正用プルダウンPMOSトランジスタはオフ状態のままである。
【0074】
また、バッテリーレスモードにおいては、基本的に、負荷変調動作を行うだけなので、前述したカードモード時と動作自体は変わらない。唯一変化するのは、電源電圧設定であり、vccnwell≒5Vとなり、入力信号のvccrfでの電圧振幅に対し、電源電圧の不一致が起こる。しかし、図11(b)で示したとおり、gate_pp,gate_mp=‘L’で終始固定されるため、この信号は電源電圧の変化に対して問題は起こらない。また、modp_t[5:0]とmodp2_t[5:0]は‘H’/‘L’のどちらも有りえるが、gate_pp,gate_mp=‘L’である限り、ナンド演算回路ND20_x,ND21_x(x=1,2,4,8,16,32)に貫通電流が流れることはないため問題ない。しかし、念のためmodp_t[5:0]とmodp2_t[5:0]はすべて‘L’レベルに設定しておいたほうがより安全である。
【0075】
《送信制御部TXCTLの詳細構成》
図12は、図7の送信ブロックTXBKにおいて、その送信制御部TXCTLの詳細な構成例を示す回路図である。TXBKは、主として図6のMPUからの各種制御信号を受けて、アンテナ駆動機能の制御を行う。また、ディジタル入力信号をバッファする機能も持つ。図12において、vmidporもしくはtx_stopが‘H’レベルの場合、送信動作を行わない(tx_en=‘L’)。一方、tx_en=‘H’でcarr_on=‘H’の場合、tx_en_modt_t=‘H’となり、rfclk1356tおよびrfclk1356bが有効となり、gate_pp(mn,mp,pn)へクロック信号が出力される。rfclk1356tとrfclk1356bはトランスファーゲートTFG10を用いて位相を一致させており、gate_pp(mn,mp,pn)もトランスファーゲートTFG11,TFG12を用いて位相を一致させている。
【0076】
tx_en=‘L’の場合、gate_pp(mp)が‘H’レベル固定、gate_pn(mn)が‘L’レベル固定になり、tx_en_modt_t=‘H’の場合はgate_pp,gate_pnに出力されるクロックが同位相、gate_mp,gate_mnも同位相、gate_pp,gate_mpが逆位相となるように適宜正極信号(true)/負極信号(bar)が使用されている。また、tx_en=‘H’でcarr_on=‘L’の場合、tx_en_modb_t=‘H’となり、ld_onが有効となり、gate_pn(mn)へld_onが出力される。この際に、gate_pp(mp)は‘H’レベル固定となる。また、modp2[5:0],modp[5:0],modn[5:0]はそれぞれtrue/barを考慮に入れてバッファリングされ、modp2_t[5:0],modp_t[5:0],modn_b[5:0]として出力される。
【0077】
《整流部RECTの詳細構成》
図13は、図7の送信ブロックTXBKにおいて、その整流部RECTの詳細な構成例を示す回路図である。整流部RECTは、整流回路RECTC、電源切替部PSWBK、およびバッテリーレス判定部BLSJGを備えている。整流回路RECTCは、主として、整流電圧出力である電源電圧(vccrect)を生成する初段の全波整流回路FWRCTと、昇圧電圧である電源電圧(vccrect2)を生成する2段目の昇圧回路UPCから構成される。FWRCTは、ダイオード接続された4個のNMOSトランジスタによるダイオードブリッジで構成される。
【0078】
ダイオードブリッジの2個の入力ノードはそれぞれtp,tmに接続され、2個の出力ノードの一方は接地電源電圧に接続され、2個の出力ノードの他方からtp,tmを全波整流した信号が出力される。バッテリーレスモードの際、出力ノードからの信号は、vccrectと接地電源電圧の間に接続されたNMOSトランジスタMNc1によるMOS容量で平滑化され、これによって電源電圧(vccrect)が生成される。なお、ダイオードブリッジを構成する各NMOSトランジスタは、ここでは、低しきい値電圧仕様となっている。また、FWRCTは、カードモード時およびRWモード時でキャリア出力が行われていない時には、後述する整流レギュレータRECTREG及び整流レギュレータドライバRCTRGDRVの働きでvccrectが‘L’レベルに固定される。これにより、整流回路RECTCは、tp,tmの振幅を制限するシャント回路として動作する。
【0079】
2段目の昇圧回路UPCは、FWRCTと同様に、4個の低しきい値電圧仕様のNMOSトランジスタによるダイオードブリッジで構成され、tp,tmから容量Cp,Cmを介して入力されたtp_h,tm_hを全波整流し、その出力をNMOSトランジスタMNc2で構成した容量に蓄える。UPCにおける2個の出力ノードの一方ならびに容量(MNc2)の一端はvccrectに接続されており、これによって、UPCは、2個の出力ノードの他方において、vccrectからさらに1段分高い電源電圧(vccrect2)を生成する。なお、このFWRCT,UPC,および各種容量(Cp,Cm,MNc1,MNc2)からなる構成は、ディクソン型チャージポンプをtrue/barの両方で駆動している構成として見ることもできる。vccrect2はバッテリーレスモード時に、アンテナドライバ部ADRVのプルアップ用PMOSトランジスタのバルク電圧等として使用される電圧である。
【0080】
また、整流回路RECTCには、vccrect2が破壊電圧に達しないように、リミット回路LMTが備わっている。LMTは、vccrect2をvccrfからNMOSトランジスタ2段分の電位に制限する。また、RECTCには、前述したようにRECTCがシャント回路として動作しているときに、vccrect2も‘L’レベルに固定するために、シャント用のNMOSトランジスタMNsh10が備わっている。MNsh10は、shunt_drv_gate=‘H’の時は、vccrect2から接地電源電圧に電流を引き抜く。
【0081】
電源切替部PSWBKは、電源電圧(vccrf)を生成し、バッテリーレスモードの場合にはvccrfをvccrectから生成し、それ以外の場合にはvccrfを外部電源電圧(mvdd)から生成する。PSWBKは、選択スイッチ回路SELSW20,SELSW21と、クロススイッチ回路CRSSW20と、NMOSダイオードスイッチ回路DNSW21を備えている。SELSW21は、直列接続された2個のPMOSトランジスタからなるメインスイッチであり、その共通接続ノードがvccrfに接続される。SELSW21は、バッテリーレス判定部BLSJGでの判定結果に基づいて一方のPMOSトランジスタをオンに制御し、vccrfをvccrectあるいはmvddに接続する。
【0082】
ここで、vccrfの電位が低い場合、バッテリーレス判定部BLSJGがうまく動作せず、SELSW21が正確に動作できない場合がある。これを防ぐため(vccrfを早期に立ち上げるため)、NMOSダイオードスイッチ回路DNSW21が設けられる。DNSW21は、直列接続された2個のNMOSトランジスタで構成され、その共通接続ノードがvccrfに接続されている。各NMOSトランジスタは、低しきい値電圧仕様であり、それぞれvccrect側およびmvdd側がアノードとなるようにダイオード接続されている。vccrfがvccrectもしくはmvddの電位に近づくと、DNSW21は電流駆動力が弱くなるが、その頃にはBLSJGが動作し、SELSW21が動作するので問題ない。
【0083】
また、SELSW21を動作させる上で更に問題となるのが、SELSW21内のPMOSトランジスタのバルク(nwell)電位である。そこで、図8に示したクロススイッチ回路CRSSW10と同様に、図13のCRSSW20は、vccrectとmvddのうち、高いほうの電圧を電源電圧(hnwell_rect)とし、SELSW21におけるバルク電圧に供給する。更に、SELSW20は、BLSJGの判定結果を基に、vccrectとmvddのどちらかをhnwell_rectとし、SELSW21におけるバルク電圧に供給する。
【0084】
バッテリーレス判定部BLSJGは、それぞれ、vccrfを電源とする回路によって構成される。BLSJGは、起動時に外部電源電圧(mvdd)の電位を見て、バッテリーレスモードか否かを判定している。バッテリーレスモード時は、mvddが‘L’レベルに落ちているはずであり、mvddが‘L’レベルの場合にインバータ回路IV20の論理しきい値によってバッテリーレスモードと判定される。IV20による判定結果は、反転リセット信号(rstb)が‘H’レベルに遷移することでラッチ回路LT10によってラッチされ、以後rstbが‘L’レベルに落ちるまで(rxvccが‘L’レベルに落ちるまで)保持される。ただし、IV20によってバッテリーレスモードと判定されてから、rstbが立ち上がるまでの間に、vccrect→vccrf→mvddと漏れ電流が発生し、この判定結果が反転する恐れがある。そこで、バッテリーレスモードと判定された際にオンとなるNMOSトランジスタMN10を設け、mvddから弱く電流を引き抜いている。
【0085】
《整流レギュレータRECTREGおよび整流レギュレータドライバRCTRGDRVの詳細構成》
図14は、図7の送信ブロックTXBKにおいて、その整流レギュレータRECTREGおよび整流レギュレータドライバRCTRGDRVの詳細な構成例を示す回路図である。整流レギュレータRECTREGは、整流部RECTCで生成された電源電圧の値を制御するために、整流レギュレータドライバRCTRGDRVを駆動する。RCTRGDRVは、RECTREGからの出力を受け、整流電源(vccrect)から電流を引き抜く。なお、整流電源が立ち上がる前には図6のリファレンス生成回路REFGからの基準電圧(bgr08)が立ち上がらないため、RECTREGは、図7の内部電流源IREGからの基準電圧(vref_vccrf)を用いて整流電源電圧を立ち上げる。
【0086】
また、カードモード時に、外部端子(信号tp,tm)の振幅を制限し、tp,tmからの電流逆流を防ぐため、RCTRGDRVは、vccrectから電流を最大限に引き抜く。すなわち、カードモード時には、例えば受信系の動作に影響を与えないように、送信系の外部端子(信号tp,tm)の振幅をできるだけ制限することが望ましいが、過剰に制限すると外部のRWに向けた返信が困難となる。そこで、ここでは、vccrectから電流を最大限に引き抜くことで図13の整流回路RECTCをシャント回路として動作させ、外部端子(信号tp,tm)の振幅をダイオードブリッジの順方向電圧内に制限する。
【0087】
図14に示すように、整流レギュレータRECTREGは、基本的には、オペアンプ回路OPAMP10を含む単純なシャントレギュレータとなっている。OPAMP10は、差動対となるPMOSトランジスタMP20,MP21、テール電流源となるPMOSトランジスタMP23、負荷トランジスタとなるNMOSトランジスタMN25,MN26等を含む。OPAMP10は、自身の電源電圧(vccrf)を抵抗R20〜R22からなる抵抗分圧で検知し、それを基準電圧(bgr08)(例えば800mV)と比較して制御信号(drv_gate)を生成する。vccrfが2.7Vより高電位であればdrv_gateの電位がより高くなり、これに応じて、整流レギュレータドライバRCTRGDRVは、NMOSトランジスタMNrgを介して電源電圧(vccrect)から接地電源電圧(txvss)に向けて電流をより多く引き抜く。逆に、vccrfが2.7Vより低電位であればdrv_gateの電位がより低くなり、これに応じて、RCTRGDRVは、MNrgを介してvccrectから引き抜く電流を減少させる。
【0088】
ここで、vccrfから直接ではなく、vccrectから電流を引き抜いている理由は、図3で述べたように、vccrectとvccrfを接続するスイッチ回路(図13のPSWBKにおけるSELSW21等)の抵抗があるため、ASK 100%などでアンテナからの入力電力が激しく変動した場合でもvccrfの変化量が抑えられるためである。また、RCTRGDRVにおいて、電流をmvss(送信ブロック全般用)ではなくtxvss(主としてアンテナドライバ部用)に流している理由は、最大で200mA以上の電流を流す必要があるため、他の回路に影響しにくく大電流に対応した端子(txvss)に流すためである。RECTREGとRCTRGDRVは、カレントミラーではないため接地電源電圧の電位が違っていても問題はない。
【0089】
また、図14に示すように、位相補償にはNMOSトランジスタMNcpからなるMOS容量を用いることで面積の縮小を行っている。図14を一見すると、支配極補償に見えるが、drv_gateが上昇すると、vccrectから引き抜く電流が増加し、vccrfが降下する。よって、drv_gate→vccrfにはゲインがあるため、ミラー補償となっており、MOS容量のサイズは最小限に抑えられている。一般的なシリーズレギュレータにおけるミラー補償は、電源からの高周波ノイズを通しやすいためPSRR(Power Supply Rejection Ratio)が悪化するが、このような構成にすると、vccrectの降下→キャパシタカップリングによるdrv_gateの降下→引き抜き電流の減少→vccrfの上昇、とスピードアップコンデンサの役割も兼ねているため、PSRRは改善する。
【0090】
さらに、vccrfとdrv_gateがキャパシタカップリングされているため、vccrfの立ち上がり時にオペアンプ回路OPAMP10が完全に起動する前でも、drv_gateを引き上げることができ、vccrf立ち上がり時の跳ね上がりも抑えることが出来る。このように、位相補償容量により、vccrfの跳ね上がりを抑えることが出来るが、逆にvccrfの立ち上がりは遅くなる傾向にある。特に、vccrfが低い→OPAMP10が起動しない→drv_gateが動作しない→vccrfが低いまま、というデッドロックは避ける必要がある。そこで、整流レギュレータRECTREGには、MOSトランジスタMN21〜MN23からなるスタートアップ回路が備わっている。
【0091】
図15は、図14の整流レギュレータにおけるスタートアップ回路の動作例を示す説明図である。スタートアップ時において、まずtp,tmに電力が入力されると、vccrfは立ち上がり、整流レギュレータドライバRCTRGDRVの電流駆動力と釣り合う電位で安定する(S150)。このとき、drv_gateはvccrfとカップリングされているため、vccrfとほぼ等しい電位となる。この時に、OPAMP10の動作有無に関わらずOPAMP10内のMN25に電流は流れないため、これとカレントミラー回路を構成するスタートアップ用のMN21にも電流は流れない。これにより、スタートアップ用のMN23のゲートはキャパシタカップリングされたまま、vccrfにほぼ等しい電位となっている。
【0092】
一方、詳細は後述するが、図7の内部電流源IREGは、ごく低電圧でも起動するように構成されている。したがって、スタートアップ用のMN22は、IREGからの基準電流(iref_vccrf_rfreg)をバイアス回路BIAS10を介してカレントミラーすることで電流が流れ、スタートアップ用のMN23を通してdrv_gateから電流を引き抜く。drv_gateから電流が引き抜かれることで、drv_gateの電位が下降し、vccrfが上昇を始める(S151)。vccrfが充分に上昇し、OPAMP10の制御が行われる領域に電圧が入ると、OPAMP10内のMN25及びスタートアップ用のMN21に電流が流れ、スタートアップ用のMN23のゲートから電流が引き抜かれる(S152)。MN23のゲート電圧が充分に下降した後は、スタートアップ回路は不活性化され、OPAMP10の動作を妨げない。
【0093】
また、本実施の形態によるNFCチップでは、vccrfが立ち上がった後、図6のリファレンス生成回路REFGからの基準電圧(bgr08)が立ち上がるため、基準電圧が無い状態でvccrfを立ち上げる必要がある。そのため、図7の内部電流源IREGでMOSトランジスタのVth差を利用した基準電圧(vref_vccrf)を生成し、これを利用してvccrfを立ち上げる。図6のMPUからの制御信号(spor5v)が‘H’レベルの状態では、選択回路SEL10によって、OPAMP10の比較電圧がvref_vccrfに設定される。vref_vccrfは約200mVなので、選択回路SEL11を用いて、抵抗分圧値も同時に切り替えられる。その後、spor5vが‘L’レベルに遷移した際には、OPAMP10の比較電圧としてbgr08が選択され、抵抗分圧値が切り替えられると共にbgr08を基準としてvccrfが制御される。
【0094】
さらに図13の整流部RECTでも説明したが、カードモード時およびRWモード時でキャリア出力が行われていない時は、vccrectが‘L’レベルに固定され、整流回路RECTCがtp,tmのシャント回路として動作する。逆に、RWモードでキャリアを出力している時は、vccrectをハイインピーダンス状態とすることで、図1で述べたように整流回路RECTCをオフ状態とし、キャリアの出力を阻害しないようにする(すなわち送信電力漏れを防止する)。そこで、整流レギュレータRECTREGは、drv_gateをプルアップするPMOSトランジスタMPpuと、drv_gateをプルダウンするNMOSトランジスタMNpdを備え、ロジック回路部を用いてこれらのオン・オフを適宜切り替える構成となっている。図16は、図14の整流レギュレータRECTREGにおいて、そのロジック回路部の動作例を示す真理値表である。
【0095】
図16において、図6のMPUからの制御信号(txreg_off)が‘H’レベルの時、OPAMP10は動作を停止し、drv_gateはプルアップされる。txreg_off=‘L’で図13のBLSJGからの検出信号(bless)が‘H’レベルの時、OPAMP10は動作し、drv_gateはプルアップ/ダウンされない。txreg_off=‘L’、bless=‘L’であり図6のMPUからの制御信号(carr_on)が‘H’レベルの時(すなわちRWモードでキャリア出力中の時)、OPAMP10は動作を停止し、drv_gateはプルダウンされる。その結果、vccrectはハイインピーダンス状態となる。txreg_off=‘L’、bless=‘L’,carr_on=‘L’の時(すなわちカードモードもしくはRWモードでキャリア出力が行われていない時)、OPAMP10は動作を停止し、drv_gateはプルアップされている。
【0096】
drv_gateがプルアップされている時は、信号(shunt_drv_gate)が‘H’レベルとなり、vccrfに加えてさらに強い駆動力でvccrectを‘L’レベルに固定している。すなわち、RCTRGDRV内でMNrgと並列にシャント用のNMOSトランジスタMNsh20を設け、MNsh20をshunt_drv_gateで駆動している。これは、図14のレギュレータ(RECTREGおよびRCTRGDRV内のMNrg)は、通常の制御動作を前提として最大電力入力時にvccrf=2.7Vに制御できるだけの電流駆動力を備えているが、シャント動作時にはさらに低い電位にvccrectを落とす必要があるためである。なお、図13に示したように、shunt_drv_gate=‘H’の場合、整流回路RECTCにおいてvccrect2も‘L’レベルに固定される。vccrect,vccrect2が‘L’レベルに固定されると、図13の整流回路RECTCにおける各ダイオードブリッジは、tp,tmの振幅をその順方向電圧(ダイオード接続されたMOSトランジスタのしきい値電圧)内に制限する。
【0097】
《クロック抽出部CLKEXTの詳細構成》
図17は、図7の送信ブロックTXBKにおいて、そのクロック抽出部CLKEXTの詳細な構成例を示す回路図である。クロック抽出部CLKEXTは、図6における受信側の外部端子に入力された受信信号(rxinp,rxinn)からクロックを抽出する回路である。また、クロック停止時は‘L’レベルを出力する。なお、図17では予備素子が省いてある。
【0098】
クロック抽出部CLKEXTの本体は、オペアンプ回路OPAMP20を用いた単純なコンパレータである。コンパレータ(オペアンプ回路OPAMP20)の2入力をPMOSトランジスタMP30,MP31で受けているのは、バッテリーレスモード時にrxvmid=‘L’となることから、低電圧入力に対応できる構成とするためである。コンパレータの2入力の一方は、rxvmidより25mV高い電位となる。この25mVは、図6のリファレンス生成回路REFGからの基準電流(tx_iref)をカレントミラーすることで生成した10μAの電流と2.5kΩの抵抗によって生成される。コンパレータの2入力の他方は、rxinpをrxvmidを基準にDC成分を除去した信号となる。
【0099】
コンパレータは、この2入力を比較し、アンド演算回路AD20を介してクロック信号(exclk1356)を出力する。なお、rxinpに入力振幅が無い場合にはexclk1356として‘L’レベルが出力されるように、前述した25mVのオフセットが加えられている。また、tx_irefをカレントミラーすることでiref_emerが出力されているのは、tx_irefをクロック抽出部CLKEXTと図8に示したADRV内のエマージェンシ検出部EMERDETの両方で使用するためである。そのため、tx_irefをカレントミラーするバイアス回路BIAS20は、exclk_off=‘H’かつemer_off=‘H’の場合にのみ停止する。また、spor5vが解除されると、コンパレータが起動し、vmidporが解除されるとクロックが出力されるようになる。
【0100】
《キャリア検出部TXCDETの詳細構成》
図18は、図7の送信ブロックTXBKにおけるキャリア検出部TXCDETの詳細を示すものであり、図18(a)はその構成例を示す回路図、図18(b)は図18(a)の動作例を示す波形図である。キャリア検出部TXCDETは、RFSモード時に受信用の外部端子(受信信号rxinp,rxinn)に生じた振幅を検出する。検出した信号は100〜500μs保持される。他のモード時もキャリアの検出は停止しない。図18(a)において、まず、図7の内部電流源IREGから例えば20nAの基準電流(iref_vccrf_cdet2)が入力され、ダイオード接続されたバイアス用のNMOSトランジスタMN40がバイアスされる。流れる電流が少ないため、MN40のVgsはほぼVthである。
【0101】
rxinp,rxinnは、それぞれ2種類のハイパスフィルタに入力される。1種類目のハイパスフィルタHPFpl,HPFnlは、DCレベルが接地電源電圧(rxvss)レベルに設定されており、2種類目のハイパスフィルタHPFph,HPFnhはDCレベルがVthレベルに設定されている。HPFpl,HPFnlにはそれぞれrxinp,rxinnが入力され、HPFph,HPFnhにもそれぞれrxinp,rxinnが入力される。ここで、rxinp,rxinnにAC信号が入力されていない場合(DCレベルは問題にならない)、HPFph,HPFnhの出力信号となるtp_ac_h,tm_ac_hはVthレベルとなり、HPFpl,HPFnlの出力信号となるtp_ac,tm_acは0Vレベルとなる。
【0102】
検出用のNMOSトランジスタMNcd1は、ソースがtm_acに、ゲートがtp_ac_hに接続され、検出用のNMOSトランジスタMNcd2は、ソースがtp_acに、ゲートがtm_ac_hに接続される。したがって、AC信号が入力されていない場合には、MNcd1,MNcd2のVgsはほぼVthにバイアスされる。この状態では、バイアス用のMN40と検出用のMNcd1,MNcd2はカレントミラーであると言って良く、ミラー比に応じた電流が検出用のMNcd1,MNcd2に流れることになる(約4nAに設定されている)。なお、低電流のカレントミラーは誤差が大きいが、この回路ではほとんど電流が流れない状態を設定しているに過ぎないため、カレントミラー誤差は問題にならない。
【0103】
ここで、rxinp,rxinnにAC信号が入力した場合、検出用のMNcd1,MNcd2のソースとゲートにAC信号が伝達される。ここで、MNcd1,MNcd2のゲートとソースには、それぞれ逆位相のAC信号が伝達されるように接続されるため、MNcd1,MNcd2においてVgs>Vthとなる瞬間が存在する。Vgs>Vth状態の時にはMNcd1,MNcd2から電流が流れ、電流比較用のPMOSトランジスタMPr1,MPr2との間で信号(cdet_sense)を介して電流駆動力の比較が行われる。rxinp,rxinnの振幅が大きくなるに従って、検出用のMNcd1,MNcd2に流れる電流が大きくなり、電流比較用のMPr1,MPr2の電流値を超えたときに、その後段の各回路を介して検出信号(cdet)が‘H’レベル→‘L’レベルに遷移し、キャリアの入力が検出される。
【0104】
キャリア非検出時にはMPr1に直列接続されたPMOSトランジスタMPsw20がオンに駆動されることで、電流比較用のMPr1,MPr2の両方が有効になっており、より大きな電流が閾値となる。すなわち、より大きい振幅を検出する設定となっている。一方、キャリア検出時には、MPr2のみが有効となっており、より小さい振幅を検出する設定となっている。この電流比較用のMPr1,MPr2の切替により、キャリア検出振幅にヒステリシスを持たせている。また、ノード(sense_hold)は、その出力段のプルアップ側に直列接続された複数のPMOSトランジスタMPgに伴い、‘H’レベル→‘L’レベルへの駆動力は大きいが、‘L’レベル→‘H’レベルへの駆動力は小さく設定されている。これとノード(sense_hold)に接続されたMOS容量(MPc1)の働きにより、cdetは‘H’レベル→‘L’レベルは一瞬で遷移するが、‘L’レベル→‘H’レベルは100〜500μs程度保持するように構成されている。
【0105】
《内部電流源IREGの詳細構成》
図19は、図7の送信ブロックTXBKにおいて、その内部電流源IREGの詳細な構成例を示す回路図である。内部電流源IREGは、整流レギュレータRECTREG及び、キャリア検出部TXCDETに電流源を供給する回路である。また、整流電源立ち上がり時のために、MOSトランジスタのVth差を利用した基準電圧(低精度)を出力する。図19に示すように、内部電流源IREGの本体となる電流源回路CSCは、基本的なワイドラーカレントミラー回路WCM10を用いて各種基準電流(iref_vccrf_cdet1,iref_vccrf_cdet2,iref_vccrf_rfreg)を生成している。ここで、起動時には、スタートアップ回路STRCが、WCM10に付加されたMOSトランジスタMPsu1,MNsu1をオンすることで、高速起動及び電流源停止を防止している。また、基準電位発生回路VTHREFGは、低しきい値電圧仕様のNMOSトランジスタMNlvと、標準しきい値電圧仕様のNMOSトランジスタMNnlに同じ電流を流し、そのVthの差を基準電圧(vref_vccrf)として出力する。
【0106】
《電源制御部VCTL(主要部)の詳細構成》
図20は、図6の電源制御部VCTLにおいて、その主要部の詳細な構成例を示す回路図である。図20に示すように、電源制御部VCTLは、SWP電源切り替え部SWPPSWを含んでいる。SWPPSWは、図5、図6等で説明したように、UIMチップに対して適切な電源電圧(swvccout)を供給する回路である。前述したように、携帯電話システム上でNFCチップを動作させるためには、セキュリティのためUIMとの通信が必要となる。ここで、バッテリーレス動作を実現する際に問題となるのがバッテリーレス動作時のUIMへの電力供給である。直接UIMの電源端子に電力を供給すると、レギュレータを通して、バッテリーに電力が逆流する可能性がある。外部スイッチで逆流を防ぐという方法もあるが、電源無しでの制御が難しいことと、携帯電話システムの複雑さが増すことを避けたいという要求がある。それを防ぐためには、NFCチップ内に電源スイッチを内蔵し、携帯電話システムからの電力供給とバッテリーレスモード時の整流電力供給とを切り替える必要がある。そのとき問題となるのが、電源スイッチのバルク電圧である。
【0107】
図21は、図20の補足図であり、入力される電源と信号に対して期待されるswvccoutの状態を示すものである。図20および図21において、swvccinは携帯電話システムから供給されるSWP用電源、swvccoutはUIMチップに供給するSWP用電源、swregoutは図13の整流部RECTで生成された電源電圧(vccrf)をもとに生成したSWP用電源である。すなわち、図20に示すように、降圧レギュレータ回路DWREGが、vccrf(=2.7V等)を降圧することで1.8V等のswregoutを生成する。ここで、本実施の形態のNFCチップは、SWP規格に基づいて複数の動作モードに対応しており、その各モード毎の動作は以下のようになる。
【0108】
まず、「Class B」モードでは、swvccinに3.0Vが入力され、swvccoutにswvccinが出力される。「Class C」モードでは、swvccinに1.8Vが入力され、swvccoutにswvccinが出力される。バッテリレスモード(BLESS)では、swvccinには電源が供給されず(0V)、swvccoutにswregoutが出力される。「Power Off」モードでは、vccrf及びswregoutには電源が供給されず(0V)、swvccoutにswvccinが出力される。
【0109】
これらの仕様を満足するため、図20のSWPPSWは、swvccoutをswregoutに接続するPMOSトランジスタMPsw11と、swvccinに接続するPMOSトランジスタMPsw10と、swvccoutを接地電源電圧に接続するNMOSトランジスタMNsw10を備えている。これら各トランジスタのオン・オフは、図13の整流部RECTからの検出信号(bless)および図6のMPUからの信号(swvccout_on)に応じて適宜制御される。なお、図21に示すように、swvccinの電圧値はswregout以上であるため、ここでは、MPsw11よりもMPsw10の方が駆動能力が大きくなっている。また、MPsw10,MPsw11は、電源スイッチであるため比較的サイズが大きくなり、それを駆動するため複数段のインバータ回路IVBKが設けられている。
【0110】
このような電源スイッチ(MPsw10,MPsw11)では、前述したアンテナドライバ部ADRV内のプルアップ用PMOSトランジスタ等と同様に、バルク電圧(nwell_swppsw)を適切に制御する必要がある。一例として、例えばMPsw10のバルク電圧をswvccinに接続すると、バッテリーレスモード時にはswvccin=0Vであることからswvccoutからswvccinに向けた電力漏れが発生する。また、例えばMPsw11のバルク電圧をswregoutに接続すると、swvccoutがswvccinを出力している際に電力漏れが発生する。そこで、ここでは、NMOSダイオードスイッチ回路DNSW30、クロススイッチ回路CRSSW30、および選択スイッチ回路SELSW30を設けている。各スイッチ回路は、図13の電源切替部PSWBK等で説明した構成と同様であり、基本的に、swvccinとswregoutのうちの高電位側、もしくはバッテリーレスモードではswregout、それ以外はswvccinがnwell_swppswに供給される。
【0111】
また、swvccout_onが‘L’レベルの際には、UIMに向けた電源供給が遮断され、この場合には、MNsw10がオン、MPsw10,MPsw11が共にオフに駆動される。一方、swvccout_onが‘H’レベルの際には、UIMに向けた電源供給が行われ、MNsw10がオフになり、blessのレベルに応じてMPsw10,MPsw11の一方がオンとなる。この際に、swvccin用となるMNsw10は、信号(swext)が‘L’レベルの際にオンとなる仕様になっている。この信号(swext)は、NFCチップ外部に出力され、例えば図22に示すように、外部においてMPsw10と並列接続される外部スイッチOSWの駆動用として用いられる。
【0112】
NFCチップでは、バッテリーレスモード時に整流電力で生成された電力をレギュレータで降圧した電源をUIMに対して供給する必要があるため、バッテリーレスモード以外の動作モードでも一旦NFCチップを通してUIMに電源を供給する構成となっている。しかし、NFCチップ内部のスイッチでは、比較的高抵抗のスイッチとなってしまうため、外部スイッチOSWを使用して、スイッチ抵抗を低減することができる。図22に示したとおり、外部スイッチOSWはMPsw10と同じ動作をする必要がある。そのため、外部スイッチOSWの構成としては、PMOSトランジスタを使用することが望ましい。またバッテリーレスモードでswvccinからの電源供給が途絶えるため、単純なPMOSスイッチでは電源が逆流する。そのため、図24で示したようなPMOSを2段構成とし、バルクからの電流の逆流を防ぐ必要がある。
【0113】
以上に説明したように、本実施の形態のNFCチップが備える主要な特徴を纏めると以下のようになる。
【0114】
(1)本実施の形態のNFCチップでは、アンテナ駆動端子と整流電力入力端子を共用化するため、アンテナ駆動用PMOSトランジスタのバルク電圧を整流動作時に高い電圧に接続する。その高い電圧は、2段整流回路(又はディクソン型チャージポンプ回路)を使用して生成される。すなわち、単純に、アンテナ駆動端子と整流電力入力端子を共用化すると、アンテナ駆動用PMOSトランジスタの寄生PNPバイポーラトランジスタを通して整流電力が接地電源電圧に流出する恐れがある。そこで、当該PMOSトランジスタのバルク電圧を2段昇圧電圧に接続することで、寄生PNPトランジスタがオフ状態となり、整流電力の流出がなくなる。
【0115】
(2)同じく、アンテナ駆動用NMOSトランジスタに3重ウエルプロセスを使用している場合、「deep nwell」層が接地電源電圧に接続される。すなわち、当該NMOSトランジスタに3重ウエルプロセスを用いている場合、寄生NPNバイポーラトランジスタを通して、電源からアンテナ駆動端子に電流が流出する恐れがある。そこで、「deep nwell」層の電位を接地電源電圧とすることで、電源からの電流流出がなくなる。
【0116】
(3)前記(1)、(2)により、アンテナ駆動端子と整流電力入力端子を共用できる。すなわち、アンテナ駆動端子と整流電力入力端子は、ともに大電力を流す端子であるため、並列に配置すると面積やコストの増大が発生し、加えて電力漏れが生じる恐れもある。そこで、アンテナ駆動端子と整流電力入力端子を共用化することで、面積やコストを低減すると共に、電力の漏れを防ぐことができる。
【0117】
(4)本実施の形態のNFCチップでは、整流動作を妨げないように、アンテナ駆動端子からアンテナ駆動用の各MOSトランジスタのゲートにフィードバック接続される、高調波低減用のフィードバックCR回路を、整流動作時は切断する。すなわち、整流動作中は、フィードバックCR回路がアンテナ駆動用の各MOSトランジスタのゲートをわずかながら駆動し、アンテナからの入力電力がアンテナ駆動用のMOSトランジスタから漏れるため、整流効率が悪化する恐れがある。そこで、フィードバックCR回路を遮断することで、アンテナ駆動用の各MOSトランジスタのゲート電圧が動かなくなり、整流動作を阻害することがなくなる。
【0118】
(5)本実施の形態のNFCチップでは、PMOSトランジスタのバルク電圧を切り替えるため、スイッチを含んだ電源切替部が設けられる。電源切替部のスイッチは、電源が無くなった状態でも逆流しない、面積はなるべく小さく、整流動作開始時の低電圧状態でも確実に動作するなどの課題が存在する。そこで、電源切替部において、PMOSトランジスタのバルク電圧を、例えば外部電源(mvdd)か整流電源(vccrect)かに切り替えることで、mvddのオン/オフにかかわらず当該PMOSトランジスタを介した電流の逆流を防ぐ。これにより、例えば図24に示したように、PMOSトランジスタを2段構成にする必要がなくなり、面積の縮小が図れる。
【0119】
電源切替部のスイッチとしては、例えばダイオード接続のNMOSスイッチを用いることで、低電圧時にバッテリーレスか否か示す信号(bless)が不定の時にでも確実に出力電源電圧(vccrf)を立ち上げることができる。また、ある程度vccrfの電圧が上昇し、blessが定まった際には、メインスイッチとしてPMOSスイッチを用い、これをblessで制御することで、確実な動作で電源の接続を行うことができる。PMOSスイッチを用いる場合には、その他に、クロスカップル型のPMOSスイッチを用いることが有益である。クロスカップル型のPMOSスイッチは、2種類の電源電圧の内のどちらか高い方の電源電圧を出力することができる。これにより、低電圧時にblessが不定の時にでも確実に出力電源電圧を立ち上げることが可能になる。
【0120】
(6)本実施の形態のNFCチップでは、ASKの変調率が、アンテナ駆動用のプルアップ用PMOS、プルダウン用NMOS、変調率補正用プルダウンPMOSで制御され、MPU内のレジスタ設定などを用いて、外部アンテナの構成などに最適な設定を選択可能となっている。例えばASK振幅を80%に落としたい場合、アンテナ駆動用MOSの電流駆動力を80%にすれば良いというわけではない。アンテナ電流駆動力とASK振幅とは非線形の関係にあり、さらにアンテナ毎に関係が変化する。さらにPVT変動により、MOSの電流駆動力が変化した場合、電流駆動力の変化が同じでもASK変調率が変化してしまう。
【0121】
そこで、ASK変調率としてプルアップ用PMOS/プルダウン用NMOSの設定をレジスタで設定できるようにすることで、アンテナの種類にかかわらず、ASK変調に伴う最適な電流駆動力の変化を設定することができ、安定したASK変調率を得ることができる。さらに、変調率補正用プルダウンPMOSはオンすることでASK振幅を下げる事ができる。すなわち、プルアップ用PMOS/プルダウン用NMOSはオンするMOSの数を減少させてASK振幅を下げる。そのため、PVT変動でMOSの電流駆動力が変動した場合のASK変調率の変動は、プルアップ用PMOS/プルダウン用NMOSと変調率補正用プルダウンPMOSとで逆方向になる。よって、変調率補正用プルダウンPMOSを適宜使用することで、PVT変動によらず安定したASK変調率を得ることができる。ただし、変調率補正用プルダウンPMOSの効果もアンテナ毎に違うため、レジスタ設定できるようにする。
【0122】
(7)本実施の形態のNFCチップでは、バッテリーレスモードの判定信号により、バッテリーレス動作を行っていることをチップが認識し、チップ全体を低消費電力動作モードに移行し、バッテリーレスモードにおいて通信距離を稼ぐことが可能な構成となっている。すなわち、NFCチップは携帯電話システムから電力を得ているため、通常のNFC対応ICカード(アンテナ電力のみで動作)と比較して、より大きな電力で動作することができる。しかしながら、その反面、バッテリーレスモードで動作する時には大きな電力を必要とされるため、ICカードと比較して通信距離が極端に短くなってしまう。そのため、バッテリーレス動作を検知して、低消費電力モードに移行することが望まれるが、例えば外部電源に整流電力を直接供給するような構成とすると、NFCチップ自体はバッテリーレスモードを検知することが困難になってしまう。そこで、外部電源と整流電源を切り離すことで、NFCチップ自体がバッテリーレスモードで動作していることを検知することができる(外部電源が低下していればバッテリーレスモード)。これにより、NFCチップ全体を低消費電力モードで動作させ、ICカードほどではないものの通信距離を伸ばすことができる。
【0123】
(8)本実施の形態のNFCチップは、外部から入力されたキャリアを検出するキャリア検出部を備え、当該キャリア検出部は、ハイパスフィルタを用いてMOSトランジスタのVthを補正することでMOSトランジスタのVthばらつきによらず安定したキャリア感度が得られる構成となっている。キャリア検出部は、NFCチップがRFセンサモードでも動作する。RFセンサモードとは、アンテナからの信号入力の有る無しを監視するモードであり、この際に、キャリア検出部を除いたNFCチップ全体はスタンバイ状態(電源遮断状態)である。そのため、キャリア検出部の電力消費は、携帯電話の待受時間に関係する。そのため、複雑な回路を使用することは難しく、Vthのばらつきや温度変化等により、キャリア検出の閾値が大きく変動するという問題があった。そこで、ハイパスフィルタを用いてMOSのVthを補正することで、Vthの変化に関係なくキャリア振幅を監視することができるため、PVT変動に比較的強い回路構成が実現できる。
【0124】
(9)本実施の形態のNFCチップは、SWP電源切り替え部を備え、当該SWP電源切り替え部では、各MOSスイッチのバルク電圧を適宜切り替える構成となっている。通常、電源スイッチは、入力側と出力側の電源がオンであるかオフであるか分からない。電源スイッチとして、例えばPMOSトランジスタ1段構成のスイッチを用いた場合、バルクを通して電流が逆流してしまう。これを防ぐため、前述した図24のような構成例が挙げられるが、面積の増大を招いてしまう。特に、電源スイッチは、流れる電流が大きく電圧降下が低いことが要求されるため、非常に大きなスイッチになってしまう。そこで、MOSスイッチのバルク電圧を適宜切り替えることで、バルクを通した電流逆流を防止することができる。これにより、PMOSトランジスタ1段構成のスイッチを使用することができるため、面積を削減することができる。
【0125】
(10)本実施の形態のNFCチップは、SWP電源切り替え部を備え、当該SWP電源切り替え部では、携帯電話システムからの供給電源をUIMに供給するか、遮断するかを切り替える制御信号が‘L’レベル時に遮断を示す信号となっている。携帯電話システムの立ち上げ時には、すべての制御信号が‘L’レベルとなっている。携帯電話システムからの供給電源をUIMに供給するか、遮断するかを切り替える制御信号を‘H’レベル時に遮断とすると、携帯電話システムの立ち上げ時にUIMに電力が供給されたまま立ち上がってしまう。そこで、携帯電話システムからの供給電源をUIMに供給するか、遮断するかを切り替える制御信号を‘L’レベルで遮断とすることで、携帯電話システムの立ち上げ時にUIMには電力が供給されず、システム立ち上げのシーケンスを正しく制御することができる。
【0126】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本実施の形態による無線通信用半導体装置は、特に、リーダライタ機能とICカード機能を併せ持つ製品に適用して有益なものであるが、勿論これに限定されず、例えばRFID(Radio Frequency IDentification)におけるリーダライタ機能とタグ機能を併せ持つ製品等といった各種無線通信用半導体装置全般に対しても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0128】
AD アンド演算回路
ADRV アンテナドライバ部
ADRVCTL アンテナドライバ駆動部
ANT アンテナ
BAT バッテリー
BIAS バイアス回路
BLSJG バッテリーレス判定部
C 容量
CLKEXT クロック抽出部
CM カレントミラー回路
CPU メインプロセッサ
CRSSW クロススイッチ回路
CSC 電流源回路
DNSW NMOSダイオードスイッチ回路
DWREG 降圧レギュレータ回路
EMERDET エマージェンシ検出部
FWRCT 全波整流回路
HMIF ヒューマンインターフェース
HPF ハイパスフィルタ
IO 外部入出力回路
IREG 内部電流源
IV インバータ回路
IVBK インバータ回路
LMT リミット回路
LT ラッチ回路
MACH インピーダンス整合回路
MN NMOSトランジスタ
MP PMOSトランジスタ
MPU マイクロプロセッサ
MSW スイッチ回路
ND ナンド演算回路
NFCIC NFCチップ
NOR ノア演算回路
OPAMP オペアンプ回路
OSC 発振回路
OSW 外部スイッチ
P 外部端子
PLL フェーズロックドループ回路
PSWBK 電源切替部
R 抵抗
RAM 揮発性メモリ
RCTRGDRV 整流レギュレータドライバ
RECT 整流部
RECTC 整流回路
RECTREG 整流レギュレータ
REFG リファレンス生成回路
RFIC 携帯通信用高周波処理部
ROM 不揮発性メモリ
RXBK 受信ブロック
SECU セキュリティ関連回路
SEL 選択回路
SELSW 選択スイッチ回路
STRC スタートアップ回路
SW スイッチ
TFG トランスファーゲート
TPTMDV TP/TM駆動部
TXBK 送信ブロック
TXCDET キャリア検出部
TXCTL 送信制御部
UIM UIMチップ
UPC 昇圧回路
VCNWELG vccnwell生成部
VCTL 電源制御部
VGEN 電源回路
VTHREFG 基準電位発生回路
WCM ワイドラーカレントミラー回路
XTAL 水晶発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源の一つとして高電位側の第1電源電圧および低電位側の第2電源電圧が供給され、
アンテナ接続用端子となる第1端子と、
前記第1端子と前記第1電源電圧の間にソース・ドレイン経路が接続され、前記アンテナを駆動するpチャネル型の第1MISFETと、
前記第1端子と前記第2電源電圧の間にソース・ドレイン経路が接続され、前記アンテナを駆動するnチャネル型の第2MISFETと、
前記第1端子に接続された整流回路部とを備え、
前記整流回路部は、前記アンテナを介して前記第1端子に入力された交流信号を用いて、前記第1電源電圧よりも高くかつ前記交流信号の最大振幅時に前記第1端子に生じる高電位側の電圧値よりも高い電圧値を持つ第3電源電圧を生成し、
前記第3電源電圧は、前記第1MISFETのバルク電圧として使用されることを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信用半導体装置において、
前記第1MISFETは、
p型である第1半導体層と、
n型であり前記第1半導体層内に形成されると共に前記第1MISFETのチャネルが生成される第2半導体層とを備え、
前記第1半導体層には、前記第2電源電圧と同電位の電圧レベルが供給されることを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の無線通信用半導体装置において、
前記第2MISFETは、
p型である第3半導体層と、
n型であり前記第3半導体層内に形成された第4半導体層と、
p型であり前記第4半導体層内に形成されると共に前記第2MISFETのチャネルが生成される第5半導体層とを備え、
前記第4半導体層には、前記第2電源電圧と同電位の電圧レベルが供給されることを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の無線通信用半導体装置において、
前記第3電源電圧は、更に、前記第1MISFETをオフに駆動する際のゲート電圧としても使用されることを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の無線通信用半導体装置において、
前記整流回路部は、
前記交流信号を入力としてダイオード機能を持つ素子を介して整流動作を行う第1整流回路と、
前記第1整流回路の出力ノードと接地電源電圧の間に接続された第1容量と、
前記交流信号が一端に入力される第2容量と、
前記第2容量の他端を入力としてダイオード機能を持つ素子を介して整流動作を行う第2整流回路と、
前記第2整流回路の出力ノードと前記第1整流回路の出力ノードの間に接続された第3容量とを備え、
前記第2整流回路の出力ノードから前記第3電源電圧が生成され、
前記第1整流回路の出力ノードから第4電源電圧が生成されることを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項6】
請求項5記載の無線通信用半導体装置において、更に、
前記第1MISFETのバルク電圧として、前記第3電源電圧か前記第1電源電圧かを選択して供給する第1スイッチ回路を有することを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項7】
請求項6記載の無線通信用半導体装置において、
前記無線通信用半導体装置は、更に、前記整流回路部によって生成された電源電圧を用いて動作し、前記外部電源の大きさを判定する判定回路を備え、
前記第1スイッチ回路は、
ソース・ドレインの一方が前記第1電源電圧に接続され、他方が前記第1MISFETのバルク電圧に接続され、前記判定回路の判定結果に応じてオン・オフが制御されるpチャネル型の第3MISFETと、
ソース・ドレインの一方が前記第3電源電圧に接続され、他方が前記第1MISFETのバルク電圧に接続され、前記判定回路の判定結果に応じて前記第3MISFETと相補的にオン・オフが制御されるpチャネル型の第4MISFETとを有することを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の無線通信用半導体装置において、
前記第1スイッチ回路は、更に、
ソース・ドレインの一方が前記第1電源電圧に接続され、他方が前記第1MISFETのバルク電圧に接続され、ゲートが前記第3電源電圧に接続されたpチャネル型の第5MISFETと、
ソース・ドレインの一方が前記第3電源電圧に接続され、他方が前記第1MISFETのバルク電圧に接続され、ゲートが前記第1電源電圧に接続されたpチャネル型の第6MISFETとを有することを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項9】
請求項5記載の無線通信用半導体装置において、
更に、前記外部電源の他の一つとして高電位側の第5電源電圧および低電位側の第6電源電圧が供給され、
前記無線通信用半導体装置は、更に、内部電源電圧として、前記第4電源電圧か前記第5電源電圧かを選択して供給する第2スイッチ回路を有することを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項10】
請求項9記載の無線通信用半導体装置において、
前記無線通信用半導体装置は、更に、前記第4電源電圧の大きさを制御するレギュレータ回路を備え、
前記レギュレータ回路は、
前記第4電源電圧と接地電源電圧の間にソース・ドレイン経路が接続された第7MISFETと、
前記第4電源電圧に前記第2スイッチ回路を介して接続された前記内部電源電圧を検出対象とし、前記内部電源電圧と予め設定した基準電圧とを比較して、その比較結果に応じて前記第7MISFETのゲートを駆動するアンプ回路とを有することを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項11】
請求項5記載の無線通信用半導体装置において、
前記無線通信用半導体装置は、更に、
前記アンテナから入力された変調信号の受信端子となる第2端子と、
前記変調信号を復調する復調回路と、
前記復調回路の動作時に、前記第1および第2整流回路の出力ノードを接地電源電圧に短絡するシャントスイッチとを有することを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項12】
請求項1記載の無線通信用半導体装置において、
前記無線通信用半導体装置は、更に、
前記第1端子と前記第1MISFETのゲートの間に設けられ、抵抗成分及び容量成分によって前記第1MISFETのゲート電圧の遷移を鈍化させる第1フィードバック経路と、
前記第1端子と前記第2MISFETのゲートの間に設けられ、抵抗成分及び容量成分によって前記第2MISFETのゲート電圧の遷移を鈍化させる第2フィードバック経路とを備え、
前記第1フィードバック経路は、前記第1端子と前記第1MISFETのゲートとの間の導通・非導通を制御する第1接続スイッチを備え、
前記第2フィードバック経路は、前記第1端子と前記第2MISFETのゲートとの間の導通・非導通を制御する第2接続スイッチを備えることを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項13】
請求項1記載の無線通信用半導体装置において、
前記第1MISFETは、それぞれ並列に接続され、それぞれ駆動能力が異なっている複数のMISFETによって構成され、
前記第2MISFETは、それぞれ並列に接続され、それぞれ駆動能力が異なっている複数のMISFETによって構成され、
前記無線通信用半導体装置は、前記第1MISFETをオンに駆動する際、前記第1MISFETを構成する前記複数のMISFETの中から実際にオンに駆動するMISFETを選択し、前記第2MISFETをオンに駆動する際に、前記第2MISFETを構成する前記複数のMISFETの中から実際にオンに駆動するMISFETを選択することを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項14】
請求項13記載の無線通信用半導体装置において、
前記無線通信用半導体装置は、更に、前記第1端子と前記第2電源電圧の間にソース・ドレイン経路が接続され、前記アンテナを駆動するpチャネル型の第8MISFETを備え、
前記第8MISFETは、それぞれ並列に接続され、それぞれ駆動能力が異なっている複数のMISFETによって構成され、
前記無線通信用半導体装置は、前記第8MISFETをオンに駆動する際、前記第8MISFETを構成する前記複数のMISFETの中から実際にオンに駆動するMISFETを選択することを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項15】
外部電源の一つとして第1電源電圧が供給され、
アンテナを介して入力された交流信号が伝送される第1端子と、
前記第1端子に接続され、前記交流信号を整流することで第2電源電圧を生成する整流回路部と、
前記第2電源電圧から所定の値を持つ第3電源電圧を生成するレギュレータ回路と、
外部に向けた直流電源供給用の端子となる第2端子と、
前記第1電源電圧と前記第2端子の間にソース・ドレイン経路が接続されたpチャネル型の第1MISFETと、
前記第3電源電圧と前記第2端子の間にソース・ドレイン経路が接続されたpチャネル型の第2MISFETと、
前記第1電源電圧か第3電源電圧かを選択して第4電源電圧として出力するスイッチ回路とを備え、
前記第4電源電圧は、前記第1および第2MISFETのバルクに供給されることを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項16】
請求項15記載の無線通信用半導体装置において、
前記無線通信用半導体装置は、更に、前記整流回路部によって生成された前記第2電源電圧を用いて動作し、前記外部電源の大きさを判定する判定回路を備え、
前記スイッチ回路は、
ソース・ドレインの一方が前記第1電源電圧に接続され、他方が前記第4電源電圧に接続され、前記判定回路の判定結果に応じてオン・オフが制御されるpチャネル型の第3MISFETと、
ソース・ドレインの一方が前記第3電源電圧に接続され、他方が前記第4電源電圧に接続され、前記判定回路の判定結果に応じて前記第3MISFETと相補的にオン・オフが制御されるpチャネル型の第4MISFETとを有することを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項17】
請求項16記載の無線通信用半導体装置において、
前記スイッチ回路は、更に、
ソース・ドレインの一方が前記第1電源電圧に接続され、他方が前記第4電源電圧に接続され、ゲートが前記第3電源電圧に接続されたpチャネル型の第5MISFETと、
ソース・ドレインの一方が前記第3電源電圧に接続され、他方が前記第4電源電圧に接続され、ゲートが前記第1電源電圧に接続されたpチャネル型の第6MISFETとを有することを特徴とする無線通信用半導体装置。
【請求項18】
請求項16記載の無線通信用半導体装置において、
前記スイッチ回路は、更に、
ドレインおよびゲートが前記第1電源電圧に接続され、ソースが前記第4電源電圧に接続されたnチャネル型の第7MISFETと、
ドレインおよびゲートが前記第3電源電圧に接続され、ソースが前記第4電源電圧に接続されたnチャネル型の第8MISFETとを有することを特徴とする無線通信用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−94051(P2012−94051A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242257(P2010−242257)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】