説明

無線通信監視装置、無線通信監視システム、無線通信監視方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】通信におけるデータの欠落を未然に防止できるようにする。
【解決手段】無線通信監視装置12は、検出送信装置からの無線信号を受信する通信部31、通信部31にて順次受信される無線信号の受信強度を検出する信号強度検出部32、信号強度検出部32にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、順次記憶装置に記憶させる信号強度記憶部33、記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める信号強度演算部34、判定用演算値と所定の閾値とを比較して、通信部31における無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する判定部36とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信に使用される通信制御装置および通信制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線機による通信においては、無線機周辺の建物や人の存在が通信の障害となることが多い。そこで、良好な通信環境を得るために、無線機にて受信する場合の信号強度や通信の成功率を監視し、一定の条件が満たされない場合に、通信の設定を変更することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、移動局と基地局とのパケット通信において、移動局にてパケットデータを受信する場合のエラー率を測定し、このエラー率が閾値以上となった場合に、通信に使用するチャネルを変更することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、無線LAN等のデータ通信において、受信機が複数のアンテナを備え、受信機により受信したデータのエラーの発生頻度を監視し、エラーの発生頻度が所定値以下と判定されたアンテナのうち、受信電波強度が最大と判定されたアンテナを選択することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−374560号公報(2002年12月26日公開)
【特許文献2】特開平8−65223号公報(1996年3月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、通信におけるデータの欠落を未然に防止することができないという問題点を有している。
【0007】
すなわち、特許文献1に記載の技術では、移動局にて受信する場合のエラー率が閾値以上となった場合に通信に使用するチャネルを変更するものであるため、実際に受信データに欠落が生じた後に対応するものとなっている。したがって、通信におけるデータの欠落を未然に防止することができない。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、使用するアンテナを、受信機により受信したエラーの発生頻度が所定値以下のアンテナのうち、受信電波強度が最大のアンテナに切り替えるものであるため、実際に受信データに欠落が生じた後に対応するものとなっている。したがって、同様に、通信におけるデータの欠落を未然に防止することができない。
【0009】
なお、信号強度が弱くても無線信号の経路が一定であれば通信に失敗することはないため、そのような信号強度が弱い位置であっても、無線機は本来設置可能であるはずである。しかしながら、そのような設置位置を信号強度が弱いことによって排除してしまうと、本来設置可能な場所でも無線機を設置できないという問題がある。また、無線機の通信環境は、無線機を設置する際に、設置時の確認やテストで充分な信号強度であったとしても、設置場所におけるその後のレイアウト変更などで変化する。このため、無線機の実際の運用時に通信不可能となるトラブルが発生することが考えられ、上記従来の技術では、このような問題に適切に対応することができない。
【0010】
したがって、本発明は、通信におけるデータの欠落を未然に防止することができる無線通信監視装置、無線通信監視システム、無線通信監視方法、プログラムおよび記録媒体の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の無線通信監視装置は、センサにより計測を行い、得られた計測データを順次無線信号として送信する検出送信装置からの無線信号を受信する受信部と、前記受信部にて順次受信される前記無線信号の受信強度を検出する信号強度検出部と、前記信号強度検出部にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、前記最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、求めた通信余裕度を順次記憶装置に記憶させる信号強度記憶部と、前記記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、さらに通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める信号強度演算部と、前記判定用演算値と所定の閾値とを比較して、前記受信部における前記無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する判定部とを備えていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の無線通信監視方法は、センサにより計測を行い、得られた計測データを順次無線信号として送信する検出送信装置からの無線信号を受信する受信工程と、前記受信工程にて順次受信される前記無線信号の受信強度を検出する信号強度検出工程と、前記信号強度検出工程にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、前記最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、求めた通信余裕度を順次記憶装置に記憶させる信号強度記憶工程と、前記記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、さらに通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める信号強度演算工程と、前記判定用演算値と所定の閾値とを比較して、前記受信工程における前記無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する判定工程とを備えていることを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、受信部は(受信工程では)、センサの計測データを順次無線信号として送信する検出送信装置からの無線信号を受信し、信号強度検出部は(信号強度検出工程では)、受信部(受信工程)にて順次受信される無線信号の受信強度を検出する。信号強度記憶部は(信号強度記憶工程では)、信号強度検出部(信号強度検出肯定)にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、求めた通信余裕度を順次記憶装置に記憶させる。信号強度演算部は(信号強度演算工程では)、記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、さらに通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める。判定部は(判定工程では)、判定用演算値と所定の閾値とを比較して、無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する。
【0014】
上記のように、判定部は(判定工程では)、通信余裕度の平均値とばらつきとの比である判定用演算値と所定の閾値とを比較して、無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する。したがって、判定部(判定工程)において不安定通信状態と判定された場合には、検出送信装置からの無線信号の受信において、受信データの欠落が発生する可能性を予測することができる。この場合には、判定部(判定工程)での不安定通信状態との判定に基づいて、ユーザが検出送信装置の配置位置を変更し、検出送信装置からの無線信号の受信状態を安定通信状態とすることにより、受信データの欠落の発生を未然に防止することができる。
【0015】
上記の無線通信監視装置において、前記判定部が使用する閾値には、前記受信部における前記無線信号についての複数回の受信結果から、前記無線信号についての受信成功率が所定値以上となる場合の前記判定用演算値の値が設定されている構成としてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、判定部において検出送信装置からの無線信号の受信における安定通信状態および不安定通信状態を判定するための閾値として、適切な閾値を設定することができ、判定部での良好な判定が可能となる。
【0017】
上記の無線通信監視装置において、前記判定部が使用する閾値は、時間帯に応じて変更される構成としてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、検出送信装置と無線通信監視装置との間の、時間帯に応じた回避不可能な通信環境の変化に適切に対応でき、判定部において頻繁に不安定通信状態との判定が行われる事態を防止することができる。
【0019】
上記の無線通信監視装置は、前記判定部にて不安定通信状態と判定された場合に警報出力を行う警報出力部を備えている構成としてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、判定部にて検出送信装置からの無線信号の受信状態が不安定通信状態と判定された場合には、警報出力部から警報出力が行われる。これにより、ユーザは警報出力により検出送信装置からの受信状態が不安定通信状態であることを明確に知ることができる。したがって、ユーザが検出送信装置の配置位置を変更し、検出送信装置からの無線信号の受信状態を安定通信状態とすることにより、受信データの欠落の発生を未然に防止することができる。
【0021】
本発明の無線通信監視システムは、前記判定部にて不安定通信状態と判定された場合に警報出力を行う警報出力部を有する無線通信監視装置と検出送信装置とを備え、前記検出送信装置は、計測を行うセンサと、前記センサから得られた計測データを順次無線信号として送信する送信部とを備えていることを特徴としている。
【0022】
すなわち、本発明の無線通信監視システムは、無線通信監視装置と検出送信装置とを備え、検出送信装置は、計測を行うセンサと、前記センサから得られた計測データを順次無線信号として送信する送信部とを備え、無線通信監視装置は、前記検出送信装置からの無線信号を受信する受信部と、前記受信部にて順次受信される前記無線信号の受信強度を検出する信号強度検出部と、前記信号強度検出部にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、前記最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、求めた通信余裕度を順次記憶装置に記憶させる信号強度記憶部と、前記記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、さらに通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める信号強度演算部と、前記判定用演算値と所定の閾値とを比較して、前記受信部における前記無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する判定部と、前記判定部にて不安定通信状態と判定された場合に警報出力を行う警報出力部とを備えている構成である。
【0023】
上記の構成によれば、検出送信装置において、センサは計測を行い、送信部はセンサから得られた計測データを順次無線信号として送信する。
【0024】
また、無線通信監視装置において、受信部は、検出送信装置からの無線信号を受信し、信号強度検出部は、受信部にて順次受信される無線信号の受信強度を検出する。信号強度記憶部は、信号強度検出部にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、求めた通信余裕度を順次記憶装置に記憶させる。信号強度演算部は、記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、さらに通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める。判定部は、判定用演算値と所定の閾値とを比較して、無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する。警報出力部は、判定部にて不安定通信状態と判定された場合に警報出力を行う。
【0025】
このように、判定部において不安定通信状態と判定された場合に、警報出力部から警報出力が行われる。したがって、ユーザは、検出送信装置からの無線信号の無線通信監視装置での受信状態が不安定通信状態であり、このために受信データの欠落が発生する可能性があることを明確に知ることができる。これにより、ユーザが警報対象の検出送信装置の配置位置を変更し、その検出送信装置からの無線信号の無線通信監視装置での受信状態を安定通信状態とすることにより、受信データの欠落の発生を未然に防止することができる。
【0026】
本発明の無線通信監視装置は、送信装置からの無線信号を順次受信する受信部と、前記受信部にて順次受信される前記無線信号の受信強度を検出する信号強度検出部と、前記信号強度検出部にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、前記最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、求めた通信余裕度を順次記憶装置に記憶させる信号強度記憶部と、前記記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、さらに通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める信号強度演算部と、前記判定用演算値と所定の閾値とを比較して、前記受信部における前記無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する判定部とを備えていることを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、受信部は、送信装置からの無線信号を受信し、信号強度検出部は、受信部にて順次受信される無線信号の受信強度を検出する。信号強度記憶部は、信号強度検出部にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、求めた通信余裕度を順次記憶装置に記憶させる。信号強度演算部は、記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、さらに通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める。判定部は、判定用演算値と所定の閾値とを比較して、無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する。
【0028】
上記のように、判定部は、通信余裕度の平均値とばらつきとの比である判定用演算値と所定の閾値とを比較して、無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する。したがって、判定部において不安定通信状態と判定された場合には、検出送信装置からの無線信号の受信において、受信データの欠落が発生する可能性を予測することができる。この場合には、判定部での不安定通信状態との判定に基づいて、ユーザが検出送信装置の配置位置を変更し、検出送信装置からの無線信号の受信状態を安定通信状態とすることにより、受信データの欠落の発生を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の構成によれば、ユーザは、検出送信装置からの無線信号の受信状態が不安定通信状態である場合に、その事態を知ることができ、受信データの欠落が発生する可能性を予測することができる。これにより、ユーザが検出送信装置の配置位置を変更し、検出送信装置からの無線信号の受信状態を安定通信状態として、受信データの欠落の発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の無線通信監視システムを備えた空調制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した無線通信監視装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した設定部にておいて設定される閾値を求めるために構築された無線通信監視システムの構成を示すブロック図である。
【図4】図4に示した無線通信監視システムでの検証実験にて得られた、通信余裕度の平均値、通信余裕度のばらつきσ、通信余裕度の平均値とばらつきの比(平均値/σ)、および通信成功率を示す説明図である。
【図5】図4に示した計測結果から得られた、通信成功率と通信余裕度の平均値とばらつきの比(平均値/σ)との関係を示すグラフである。
【図6】一般的な無線機器同士の通信における、平均通信強度、および通信強度のばらつきに影響する要素(通信環境)の例を示す説明図である。
【図7】図1に示した温度検出送信装置と無線通信監視装置との間の通信環境の変化が人の介在の多少により生じる場合の、図2に示した設定部での時間帯に応じた閾値の設定例を示す説明図である。
【図8】本実施の形態の無線通信監視システムでのデータの流れを示す説明図である。
【図9】図2に示した無線通信監視装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】図1に示した空調制御システムにおける、ビル内での温度検出送信装置および無線通信監視装置の配置例を示す模式図である。
【図11】温度検出送信装置が配置されている図10に示した部屋の構造を示す模式図である。
【図12】図11に示した部屋において、警報出力部からの警報出力に応じて温度検出送信装置の配置位置を変更した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の実施の形態の無線通信監視システムを備えた空調制御システムの構成を示すブロック図である。
【0032】
図1に示すように、空調制御システム1は、複数の温度検出送信装置(検出送信装置、送信装置)11、無線通信監視装置12および空調制御装置13を備えている。複数の温度検出送信装置11および無線通信監視装置12は、無線通信監視システムを構成している。
【0033】
温度検出送信装置11は、温度センサ41、送信部42および時計部43を備え、温度測定対象物、例えば部屋の壁や生産設備等に配置される。なお、図1では、一つの温度検出送信装置11のみについて構成を詳細に示しているが、他の温度検出送信装置11も同一の構成である。
【0034】
温度検出送信装置11において、温度センサ41は温度測定対象物の温度を所定時間毎に測定する。送信部42は温度センサ41にて測定されえた温度を示す温度計測データの無線信号を無線通信監視装置12に送信する。
【0035】
具体的には、送信部42は、温度センサ41にて検出される温度を例えば1分毎に温度計測データとして送信する。この場合、送信する温度計測データには、温度センサ41を識別するための温度センサID、および温度の計測時刻が付加される。
【0036】
無線通信監視装置12は、無線機21および収集機22を備えている。無線機21は、温度検出送信装置11から送信されてくる所定時間毎の温度計測データの無線信号を受信するとともに、温度計測データの無線信号の信号強度すなわち受信強度を測定する。さらに、受信した温度計測データに、受信強度を示す情報を付与して収集機22に出力する。
【0037】
収集機22は、信号監視部51および温度計測データ処理部52を備えている。信号監視部51は、無線機21から入力した温度計測データの受信強度を示す情報を監視し、その監視結果からユーザへの警報が必要な場合に警報出力を行う。温度計測データ処理部52は、無線機21から入力した温度計測データから、空調制御装置13が使用する空調設定データを作成し、空調制御装置13に出力する。
【0038】
空調制御装置13は、収集機22から入力した空調設定データに基づいて、空調装置61(図10参照)の動作を制御する。空調装置61は、温度検出送信装置11による温度測定対象である部屋や生産設備等の温度を調節する。
【0039】
次に、無線通信監視装置12の構成について詳細に説明する。図2は図1に示した無線通信監視装置12の構成を示すブロック図である。なお、図2では、収集機22は信号監視部51の構成のみを示している。
【0040】
図2に示すように、無線通信監視装置12は、詳細には、無線機21、収集機22および時計部38を備えている。無線機21は、通信部(受信部)31および信号強度検出部32を備えている。収集機22は、信号強度記憶部33、信号強度演算部34、設定部35、判定部36および警報出力部37を備えている。
【0041】
通信部31は、各温度検出送信装置11から送信されてくる所定時間毎の温度計測データの無線信号を受信する。信号強度検出部32は、通信部31が受信した各温度検出送信装置11からの温度計測データの無線信号の受信強度を検出し、検出した受信強度を示す情報を温度計測データに付与して信号強度記憶部33に出力する。なお、信号強度検出部32は、例えば無線信号の振幅から受信強度を検出するものであってもよく、検出した受信強度は、温度計測データ中に含ませても、温度計測データに添付してもよい。
【0042】
信号強度記憶部33は、記憶装置を備え、信号強度検出部32から入力した温度計測データと計測時刻とを温度検出送信装置11毎に順次保存する。また、無線通信監視装置12の最低受信強度に対する各温度計測データの受信強度の差分を求め、求めた差分を通信余裕度として、温度計測データの計測時刻と共に、温度検出送信装置11毎に記憶装置に記憶する。なお、最低受信強度は、無線通信監視装置12の仕様において、無線通信監視装置12が最低限必要とする受信強度として設定されているものである。また、通信余裕度としては、最低受信強度に対する受信強度の差分に限らず、最低受信強度に対する受信強度の比を使用してもよい。
【0043】
信号強度演算部34は、温度検出送信装置11毎に、信号強度記憶部33に記憶されている所定個の通信余裕度について、あるいは所定期間(所定時間)の通信余裕度について、通信余裕度の平均値と通信余裕度のばらつきσとを求め、さらに判定用演算値として、ばらつきσに対する平均値比を求める。なお、通信余裕度の平均値と通信余裕度のばらつきσとを求める期間等については、設定部35に設定されており、その期間等にしたがって行う。
【0044】
具体的には、信号強度演算部34は、温度検出送信装置11毎に、例えば、信号強度記憶部33において通信余裕度が算出されるたびに、過去2時間分の通信余裕度の平均値と同じ過去2時間分の通信余裕余裕度のばらつきσを算出し、さらに平均値/σを判定用演算値として算出する。
【0045】
設定部35には、ユーザ入力により各種設定が可能となっており、判定部36において判定用演算値の適否を判定するための閾値が設定される。また、信号強度演算部34において、通信余裕度の平均値と通信余裕度のばらつきσとを求める期間等が設定される。さらに、警報出力部37での警報出力の要否の設定、および警報出力が要設定となっている場合であって、警報出力部37から複数種類の警報出力が可能である場合に、その種類等が設定される。
【0046】
判定部36は信号強度演算部34にて算出された温度検出送信装置11毎の判定用演算値と設定部35にて設定された閾値とを比較し、判定用演算値の適否を判定する。具体的には、判定用演算値が閾値よりも小さい場合、その温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との通信を不安定通信状態と判定し、判定用演算値が閾値以上の場合、その温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との通信を安定通信状態と判定する。
【0047】
警報出力部37は、判定部36にて温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との通信が不安定通信状態と判定された場合に、ユーザに対して、対応する温度検出送信装置11の位置の変更を促す警報出力を行う。この警報出力は、ブザーやスピーカからの警報、LEDランプなどのランプの点灯、表示装置での画面上での警報表示、あるいは電子メールによる警報の報知などである。なお、警報出力部37での警報出力については、設定部35に対するユーザ設定により、警報出力の要否の設定、および複数種類の警報出力が可能である場合にその種類の設定が可能である。
【0048】
次に、設定部35において設定される閾値の設定方法について説明する。
本実施の形態において、閾値は実際の検証実験により求めて設定している。閾値を求めるために、図3に示す無線通信監視システムの構成により検証実験を行った。図3は、設定部35にておいて設定される閾値を求めるために構築された無線通信監視システムの構成を示すブロック図である。
【0049】
検証実験では、オフィスフロアに温度検出送信装置11を8点設置した。温度検出送信装置11から無線通信監視装置12の無線機21に対し、00:00〜06:59の時間帯において、20分間通信を行った。各設置位置の温度検出送信装置11について、通信余裕度の平均値、通信余裕度のばらつきσ、通信余裕度の平均値とばらつきの比(平均値/σ)、および通信成功率を計測し、それらの関係を取得した。8点の温度検出送信装置11についての設置のパターンは8パターンとし、温度検出送信装置11ののべ数は64点とした。
【0050】
この場合の無線通信監視システムの動作は次のとおりである。温度検出送信装置11は、無線通信監視装置12の無線機21に対して、温度計測データを10秒毎に送信する。
無線機21は、温度検出送信装置11から受信した温度計測データ、およびその受信強度を収集機22に対して送信する。収集機22は、温度計測データを収集する。
【0051】
上記のべ64点の温度検出送信装置11を使用した実験結果を図4に示す。図4には、64点の計測結果のそれぞれについて、通信余裕度の平均値、通信余裕度のばらつきσ、通信余裕度の平均値とばらつきの比(平均値/σ)、および通信成功率を示している。さらに、図5のグラフには、図4の計測結果から得られた通信成功率と、通信余裕度の平均値とばらつきの比(平均値/σ)との関係を示している。
【0052】
図5および図4から分かるように、通信成功率は、通信余裕度の平均値とばらつきの比が5未満では、74.4〜100%の範囲に分散しており、通信余裕度の平均値とばらつきの比が5以上では、99%以上(99〜100%)となっている。すなわち、通信余裕度の平均値とばらつきの比が5未満の場合には、実験結果において通信成功率が100%であったとしても、長い期間の通信においては、通信成功率が低下する可能性が高いと判断できる。そこで、上記の場合には、設定部が設定する閾値は5とするのが好ましい。この場合、判定部36では、判定用演算値(平均値/σ)が5未満であれば不安定通信状態と判定し、判定用演算値(平均値/σ)が5以上であれば安定通信状態と判定する。
【0053】
なお、閾値を5とした場合の通信成功率99%の場合において、通信が不成功となった残り1%分のデータについては、通信のリトライ処理によって収集可能である。
【0054】
次に、設定部35での時間帯に応じた閾値の設定動作について説明する。
温度検出送信装置11と無線通信監視装置12と間の無線通信環境は、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間の人の動きや物体の配置の変更によって変化する。特に、無線通信監視システムがビル内に設置されている場合には、基本的に人が介在する時間帯において通信強度のばらつきが大きくなり、人が介在しない時間帯において通信強度のばらつきが小さくなる傾向にある。また、通信環境に影響する要素のうち、人の介在は、無線通信監視システムの設置環境上、排除できない要素である。
【0055】
このような通信環境において、企業の勤務時間外などの人が介在し難い第1の時間帯に設定した閾値と同一の閾値を、企業の勤務時間内などの人が介在し易い第2の時間帯において設定した場合には、第2の時間帯において、警報出力部37から頻繁に警報出力が行われる可能性が高くなる。
【0056】
このような場合には、第2の時間帯において警報出力部37から頻繁に警報出力が行われる事態を防止するために、設定部35は、第1の時間帯と第2の時間帯とで閾値を変更することが好ましい。なお、時間帯毎の閾値は、図3〜図5により説明した検証実験を時間帯毎に行うことにより、同様にして求めることができる。
【0057】
図6には、一般的な無線機器同士の通信において、平均通信強度および通信強度のばらつきに影響する要素(通信環境)の例を示す。図6に示すように、平均通信強度は、無線機同士の距離が近い場合に大きく、無線機同士の距離が遠い場合に小さくなる。また、通信強度のばらつきは、無線機同士の物理的な間隔に人が入り込む場合に大きく、無線機同士の物理的な間隔の環境変化が少ない場合に小さくなる。なお、平均通信強度および通信強度のばらつきは、本実施の形態に合わせて、それぞれ、通信余裕度の平均値および通信余裕度のばらつきと見なすことができる。
【0058】
ここで、通信余裕度の平均値が大(高)の場合と小(低)の場合、および通信余裕度のばらつきが大の場合と小の場合から、これら各場合の組み合せは、下記のように(1)〜(4)の4通りとなる。また、判定部36にて温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との通信が不安定状態と判定された場合における不安定状態の深刻さは、(1)→(2)→(3)→(4)の順序となる。したがって、判定部36にて無線通信監視装置12と複数の温度検出送信装置11との通信について不安定状態と判定された場合には、それら温度検出送信装置11についての対応すべき優先順位は、(1)→(2)→(3)→(4)の順位となる。
【0059】
(1)通信余裕度の平均値が低く、かつ通信余裕度のばらつきが大きい場合:温度計測データの欠落可能性が一番高い状態。温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との物理的な距離が遠く、かつ温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間において通信環境の変化を生じさせる移動物が頻繁に移動している状態。
【0060】
(2)通信余裕度の平均値が高く、かつ通信余裕度のばらつきが大きい場合:温度計測データの欠落可能性が二番目に高い状態。温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との物理的な距離は近いものの、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間において通信環境の変化を生じさせる移動物が頻繁に移動している状態。
【0061】
(3)通信余裕度の平均値が低く、かつ通信余裕度のばらつきが小さい場合:温度計測データの欠落可能性が三番目に高い状態。温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との物理的な距離は遠いものの、通信状態が安定している。ただし、今後、通信環境の変化が生じれば、通信余裕度のばらつきが大きくなる可能性がある状態。
【0062】
(4)通信余裕度の平均値が大きく、かつ通信余裕度のばらつきが小さい場合:温度計測データの欠落の可能性が低い状態。
【0063】
一方、人が介在し難い第1の時間帯内であっても、通信強度のばらつきが変化することがある。これは、例えばビルの窓際に温度検出送信装置11と無線通信監視装置12とが設置されている場合において、温度検出送信装置11からの電波が、ビル内では直接に無線通信監視装置12に届かずに、ビル外からの反射によって無線通信監視装置12に届くような場合である。このような場合には、人が介在している第2の時間帯での通信強度のばらつきよりも小さいながらも、例えばビル周辺での通信環境の変化、例えば車両の通過量の変化等により、通信強度のばらつきが発生する。
【0064】
そこで、設定部35において設定される閾値は、時間帯により、具体的には時間により変化する通信環境の変化に応じて、変更することが好ましい。この場合、無線通信監視システムの温度検出送信装置11および無線通信監視装置12を設置している施設や場所によって通信環境が異なる。したがって、通信環境が変化する時間帯や、時間帯毎における信号強度および信号強度のばらつきの変化の方向も異なる。したがって、設定部35の時間帯に応じた閾値は、ユーザにより任意に設定可能となっている。
【0065】
図7には、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間の通信環境の変化が人の介在の多少により生じる場合の、設定部35での時間帯に応じた閾値の設定例を示す。図7の例では、人の介在が相対的に多くなる7:00〜23:00の時間帯の閾値が、それ以外の時間帯の閾値よりも小さく設定されている。これにより、人の介在が相対的に多くなる7:00〜23:00の時間帯において、人が介在することによる温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間の通信環境の悪化により、無線通信監視装置12の警報出力部37から頻繁に警報出力が行われる事態を防止することができる。
【0066】
上記の構成において、本実施の形態の無線通信監視システムの動作を図8および図9に基づいて以下に説明する。
【0067】
図8は、本実施の形態の無線通信監視システムでのデータの流れを示す説明図、図9は、無線通信監視装置12の動作を示すフローチャートである。
【0068】
温度検出送信装置11は、測定対象の温度を測定するように配置されている。温度検出送信装置11では、例えば1分毎に温度センサ41にて測定対象の温度を計測し、取得した温度計測データに、温度センサIDおよび計測時刻を付加して、送信部42から無線データとして送信する。
【0069】
無線通信監視装置12において、通信部31は、温度検出送信装置11からの無線データを受信すると(S11)、受信した無線データが監視対象の温度検出送信装置11からの無線データであるか否かを判定する(S12)。
【0070】
S12の判定において、受信した無線データが監視対象の温度検出送信装置11からの無線データであれば、信号強度検出部32は無線データの受信強度を検出する。信号強度記憶部33は、信号強度検出部32にて検出された無線データの受信強度、および無線通信監視装置12に設定されている最低受信強度から、その無線データについての通信余裕度を求める(S13)。この通信余裕度は、最低受信強度に対する無線データの受信強度の差分である。求めた通信余裕度は、温度検出送信装置11毎に、信号強度記憶部33が備える記憶装置に時計部38が示す現在時刻とともに記憶する(S14)。
【0071】
次に、信号強度演算部34は、温度検出送信装置11毎に、例えば信号強度記憶部33において通信余裕度が算出されるたびに、設定部35に設定されている期間の通信余裕度の平均値と通信余裕度のばらつきσとを求める。さらに判定用演算値として、ばらつきσに対する平均値の比(平均値/ばらつきσ)を求める(S15)。
【0072】
次に、判定部36は、信号強度演算部34にて求められた判定用演算値(平均値/ばらつきσ)と設定部35に設定された閾値とを比較する(S16)。S16での判定の結果、判定用演算値(平均値/ばらつきσ)が閾値以上であれば(S17)、S11に戻ってそれ以下の処理を繰り返す。
【0073】
一方、S16での判定の結果、判定用演算値(平均値/ばらつきσ)が閾値未満であり(S17)、設定部35において警報出力を行う旨の設定がされていれば(S18)、警報出力部37は警報出力を行う(S19)。
【0074】
その後、無線通信監視装置12は、処理を継続する場合にはS11に戻る一方、処理を継続しない場合には動作を終了する(S20)。
【0075】
警報出力部37から警報出力が行われた場合には、警報対象の温度検出送信装置11は、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間の通信が不安定通信状態となっている。そこで、該当する温度検出送信装置11について、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間の通信が安定通信状態となるように、ユーザにより配置位置が変更される。
【0076】
ここで、無線通信監視装置12では、警報出力部37からの警報出力は、上記のように、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間の通信が不安定通信状態の場合に行われる。すなわち、警報出力は、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間の通信において、通信エラーが発生してから行われるのではなく、通信エラーが発生する可能性が高い場合に行われる。したがって、警報出力部37からの警報出力に応じて、ユーザにて警報対象の温度検出送信装置11の配置位置が変更されることにより、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間の通信エラーの発生を事前に防止することができる。
【0077】
また、無線通信監視装置12では、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間の通信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定するための閾値、すなわち警報出力部37からの警報出力の要否を判定するための閾値は、時間帯に応じて変更される。例えば、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との通信環境において、人が介在することが多くなって不安定通信状態となりやすい時間帯は、人が介在することが少ない時間帯よりも、閾値は緩く設定され、通信状態が不安定通信状態と判定され難くしている。これにより、回避不可能な事情によって、警報出力部37から頻繁に警報出力が行われてしまう事態を防止することができる。
【0078】
次に、無線通信監視システムにおける温度検出送信装置11および無線通信監視装置12の配置例、および警報出力部37から警報出力が行われた場合に温度検出送信装置11の配置位置を変更するユーザの対応例について、図10〜図12に基づいて説明する。
【0079】
図10は、空調制御システム1における、ビル内での温度検出送信装置11および無線通信監視装置12の配置例を示す模式図である。図11は、温度検出送信装置11が配置されている図10に示した部屋の構造を示す模式図である。図12は、図11に示した部屋において、警報出力部37からの警報出力に応じて温度検出送信装置11の配置位置を変更した状態を示す模式図である。この例にいて、空調制御システム1は、例えば企業の会議室の室温を監視して、室温を最適に保つような空調制御を行っている。
【0080】
図10および図11に示すように、ビル内の各部屋には、空調装置61および温度検出送信装置11が配置されている。具体的には、部屋の中央にテーブル75および椅子74が配置され、テーブル75の周りに会議用のホワイトボード73および他のテーブル75が配置され、部屋の隅に温度検出送信装置11および空調装置61が配置されている。なお、72は窓およびブラインドであり、71はドアである。制御ルームには、無線通信監視装置12および空調制御装置13が配置されている。
【0081】
空調装置61によって温度が調節される部屋の温度は、温度検出送信装置11にて検出される。無線通信監視装置12は、各部屋の温度検出送信装置11から温度計測データを収集し、収集した温度計測データに基づいて、各部屋の空調設定データを作成する。この空調設定データは空調制御装置13に入力され、空調制御装置13は、入力された空調設定データに基づいて、各部屋の空調装置61の動作を制御する。
【0082】
ここで、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との通信状態は、空調制御システム1の設置当初には安定通信状態であった。しかしながら、その後、無線通信監視装置12の判定部36により、いずれかの部屋の温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との通信状態が不安定通信状態と判定された。
【0083】
上記のような一般的な会議室のような部屋では、机75やホワイトボード73の移動、ブラインドの開け閉め、あるいは人の移動などの要因により無線通信環境が大きく変化する。人の動作は、姿勢を変えるなどの動作が数秒単位で通信環境を変化させる。すなわち、温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との間の通信強度をばらつかせる。また、ホワイトボード73や机75の移動は、一度移動された後では短時間のうちに再度移動されることがないため、通信強度をばらつかせることはないものの、通信強度を変化させる。このようなことから、通信余裕度の平均値/ばらつきσの値が変化し、無線通信監視装置12の判定部36での判定において、安定通信状態であったものが不安定通信状態に変化することがある。
【0084】
無線通信監視装置12の判定部36により、いずれかの部屋の温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との通信状態が不安定通信状態と判定された場合、警報出力部37から警報出力が行われる。この警報出力をユーザが確認すると、図12に示すように、ユーザは警報対象の温度検出送信装置11の配置位置を変更する。なお、配置位置を変更した警報対象の温度検出送信装置11について、再度警報出力が行われた場合、温度検出送信装置11の配置位置が再度変更されることになる。このようにして、各温度検出送信装置11と無線通信監視装置12との安定通信状態が維持されることにより、無線通信監視装置12では、温度検出送信装置11から受信する温度測定データの欠落を未然に防止することができる。
【0085】
なお、以上の実施の形態では、無線通信監視装置12は温度検出送信装置11からの温度計測データを収集するものとして説明した。しかしながら、本願発明は、これに限定されることなく、例えば生産設備に配置された、電力センサを有する電力検出送信装置からの電力計測データの収集など、種々の計測データの収集に対応可能である。
【0086】
また、図2に示した無線通信監視装置12を構成する無線機21、時計部38および収集機22(51)、並びに収集機22(51)を構成する信号強度検出部33、信号強度演算部34、設定部35、判定部36および警報出力部37は、全て無線通信監視装置12としての一つの筐体内に収納されている構成であってもよい。あるいは、これら各ブロックが、見かけ上独立した装置として、適当な組み合せにより複数の筐体に分散して収納され、それら装置が適宜通信することにより、無線通信監視装置12を構成するものであってもよい。
【0087】
例えば、信号強度演算部34、設定部35、判定部36および警報出力部37の4つのブロックの機能は、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンと称する)に持たせることができる。この場合、無線通信監視装置12は、上記パソコンと、信号強度演算部34、設定部35、判定部36および警報出力部37以外の、無線機21、時計部38および信号強度検出部33を含む装置とによって構成される。
【0088】
また、以上の実施の形態において、無線通信監視装置12は、図2に示した各ブロックを備えたものとして説明しているが、これに限定されることなく、例えば警報出力部37を除いた各ブロックを備え、判定部36による判定結果を出力する構成であってもよい。この場合、警報出力部37は無線通信監視装置12とは独立した装置として存在し、無線通信監視装置12の判定部36からの判定結果を受けて、適宜警報出力を行うものとなる。
【0089】
また、以上の実施の形態では、設定部35での時間帯に応じた閾値の設定に関して、一日のうちの時間帯に応じて異なる閾値を設定するものとして説明している。しかしながら、時間帯に応じた閾値の設定は、これに限定されることなく、カレンダーの曜日(土、日)や、日にちに応じて行われるものであってもよい。
【0090】
例えば、無線通信監視システムがビル内に設置されている場合において、土曜、日曜に会社が休みとなる環境では、土曜、日曜の閾値として人が介在し難い場合の閾値を設定するのが好ましい。また、土曜、日曜以外でも、ゴールデンウィークや夏期休暇など、人が介在し難い日には、土曜、日曜と同様、人が介在し難い場合の閾値を設定するのが好ましい。
【0091】
また、図1および図2に示した無線通信監視装置12は表示部を備え、その表示部に適宜情報を表示する構成であってもよい。
【0092】
最後に、無線通信監視装置12の各ブロック、特に収集機22の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0093】
すなわち、無線通信監視装置12は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである無線通信監視装置12の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記無線通信監視装置12に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0094】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0095】
また、無線通信監視装置12を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0096】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、部屋の温度を制御する空調制御システムや、生産設備の電力消費量を制御する電力制御システムなど、センサからの計測データを無線通信より収集して制御対象物の動作を制御するシステムなど、種々のシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 空調制御システム
11 温度検出送信装置(検出送信装置、送信装置)
12 無線通信監視装置
13 空調制御装置
31 通信部(受信部)
32 信号強度検出部
33 信号強度記憶部
34 信号強度演算部
35 設定部
36 判定部
37 警報出力部
38 時計部
21 無線機
22 収集機
41 温度センサ
42 送信部
43 時計部
51 信号監視部
52 温度データ処理部
61 空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサにより計測を行い、得られた計測データを順次無線信号として送信する検出送信装置からの無線信号を受信する受信部と、
前記受信部にて順次受信される前記無線信号の受信強度を検出する信号強度検出部と、
前記信号強度検出部にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、前記最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、求めた通信余裕度を順次記憶装置に記憶させる信号強度記憶部と、
前記記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、さらに通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める信号強度演算部と、
前記判定用演算値と所定の閾値とを比較して、前記受信部における前記無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する判定部とを備えていることを特徴とする無線通信監視装置。
【請求項2】
前記判定部が使用する閾値には、前記受信部における前記無線信号についての複数回の受信結果から、前記無線信号についての受信成功率が所定値以上となる場合の前記判定用演算値の値が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の無線通信監視装置。
【請求項3】
前記判定部が使用する閾値は、時間帯に応じて変更されることを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信監視装置。
【請求項4】
前記判定部にて不安定通信状態と判定された場合に警報出力を行う警報出力部を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の無線通信監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信監視装置と検出送信装置とを備え、
前記検出送信装置は、計測を行うセンサと、前記センサから得られた計測データを順次無線信号として送信する送信部とを備えていることを特徴とする無線通信監視システム。
【請求項6】
センサにより計測を行い、得られた計測データを順次無線信号として送信する検出送信装置からの無線信号を受信する受信工程と、
前記受信工程にて順次受信される前記無線信号の受信強度を検出する信号強度検出工程と、
前記信号強度検出工程にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、前記最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、求めた通信余裕度を順次記憶装置に記憶させる信号強度記憶工程と、
前記記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、さらに通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める信号強度演算工程と、
前記判定用演算値と所定の閾値とを比較して、前記受信工程における前記無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する判定工程とを備えていることを特徴とする無線通信監視方法。
【請求項7】
送信装置からの無線信号を順次受信する受信部と、
前記受信部にて順次受信される前記無線信号の受信強度を検出する信号強度検出部と、
前記信号強度検出部にて検出された各受信強度を所定の最低受信強度と比較して、前記最低受信強度に対する各受信強度の強さを示す通信余裕度を求め、求めた通信余裕度を順次記憶装置に記憶させる信号強度記憶部と、
前記記憶装置に記憶されている通信余裕度の平均値とばらつきとを求め、さらに通信余裕度の平均値とばらつきとの比を判定用演算値として求める信号強度演算部と、
前記判定用演算値と所定の閾値とを比較して、前記受信部における前記無線信号の受信状態が不安定通信状態か安定通信状態かを判定する判定部とを備えていることを特徴とする無線通信監視装置。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項、または請求項7に記載の無線通信監視装置の前記各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−195706(P2012−195706A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57279(P2011−57279)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】