説明

無線通信端末、通信システム及び通信方法

【課題】無線通信端末の送信器の出力特性の設定を、最新の電波法で規定された内容に基づくものに自動的に変更する。
【解決手段】第1の周波数帯の電波を用いて基地局との通信を行う通信処理部21と、電波の使用に関する取り決めが規定された条例における規定項目が記述されたテーブルT2を記憶する記憶部26と、第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯の電波を用いて他の通信装置にデータを送信する送信器30とを備えた。そして、記憶部26のテーブルT2に記憶された規定項目である第1の規定項目に基づいて送信器30の出力特性を制御するとともに、サーバ1に蓄積された条例における最新の規定項目である第2の規定項目と、第1の規定項目とを比較し、第1の規定項目を更新する必要があると判断した場合に、サーバ1から第2の規定項目を取得して第1の規定項目を上書きするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばFM電波の送信機能を備えた携帯電話端末に適して好適な無線通信端末と通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯電話端末は、多機能化が進み、携帯電話網へ接続するための送受信機の他に、例えばFMトランスミッタなどの送信器を備えているものも登場しつつある。
【0003】
ここで、携帯電話端末に内蔵された送信器(FMトランスミッタ等)は、一般的にその送信レベルが規定されており、具体的には電波法に違反しない範囲で最大送信レベルが得られるように設定されている。また、携帯電話端末に搭載されるFMトランスミッタなどの送信機は、各国の仕様に合わせて、送信レベルや周波数帯、さらには送信の可・不可などについても設定されている。
【0004】
このため、自国の電波法に準拠している設定のまま携帯電話端末を外国に持ち込んだ場合には、以下に説明するような様々な問題が生じてしまう。図6は、送信器の使用が許可されているa国から、送信器の使用が禁止されているb国に携帯電話端末100が持ち込まれた場合の例を示した図である。a国の内部で使用される携帯電話端末100内の送信器(図示略)においては、携帯電話端末2から出力される電波の出力レベルが、a国の電波法の規定の範囲内となるように設定されている。この設定を変えずに携帯電話端末100をb国に持ち込んだ場合には、送信器を使用した電波の送信が行えてしまう。ところが、b国においては、送信器を用いた電波の送信は、電波法に違反した行為となる。
【0005】
図7は、送信器による電波の出力レベルの許容値が異なるa国とb国の間で、携帯電話端末100が持ち運びされる例を示したものである。図7において、a国の電波法で規定された電波の出力レベルの上限値R1は、b国において規定された電波の出力レベル上限値L2よりも低いものとする。このため、a国の国内での使用が想定された携帯電話端末100では、出力レベル上限値R2よりも大きな出力で電波を送信できない設定がされている(a国仕様)。
【0006】
このように設定されたa国仕様の携帯電話端末100をb国に持ち込んだ場合、b国では出力レベルL2までの電波を送信できるにも関わらず、携帯電話端末100から出力される電波のレベルは、出力レベルL1までしか上げることができない。つまり、b国国内で使用されている、出力レベルL2までの出力が可能な携帯電話端末と比較して電波の送信距離が短くなるため、使用感に差が出てしまう。
【0007】
また反対に、出力レベルL2までの出力を行える設定がされた携帯電話端末100を、出力レベルL1までの出力しか許可していないa国に持ち込んだ場合には、a国の電波法に違反してしまうことになる。
【0008】
このような問題を解決する手法として、例えば特許文献1には、書き換え可能無線装置の無線構成情報保存部に保存されている情報を、出国審査場もしくは入国審査場に消去することにより、ある国の規格で機能する無線装置を別の国に持ち出していった際の雑音電波の発信を、防止できるようにする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−247819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、電波法は各国において随時更新されるものであり、電波法の改定によって、電波の出力レベルの上限値や送信器の使用の可否情報が変更される場合がある。ところが、特許文献1に記載のような従来の技術では、電波法が改定された場合にも、携帯電話端末100内の送信器の設定や制御内容は変更されない。このため、設定を変えずに長期間携帯電話端末100を使用し続けた場合で、その間に電波法の改定が行われた場合には、送信器を使用する行為そのものや、送信器からの電波の出力レベルが、電波法に違反してしまうケースも想定される。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、無線通信端末の送信器の出力特性の設定を、最新の電波法で規定された内容に基づくものに自動的に変更することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線通信端末は、第1の周波数帯の電波を用いて基地局との通信を行う通信処理部と、電波の使用に関する取り決めが規定された条例における規定項目が記述されたテーブルを記憶する記憶部と、第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯の電波を用いて他の通信装置にデータを送信する送信器とを備える。そして、記憶部のテーブルに記憶された規定項目である第1の規定項目に基づいて送信器の出力特性を制御するとともに、通信処理部を介して取得した、サーバに蓄積された条例における最新の規定項目である第2の規定項目と、第1の規定項目とを比較し、前記第1の規定項目を更新する必要があると判断した場合に、サーバから第2の規定項目を取得して第1の規定項目を上書きするようにした。
【0013】
このようにしたことで、無線通信端末内に記憶されたテーブルに記載された第1の規定項目と、サーバに記憶された第2の規定項目とが異なる場合、具体的には第1の規定項目の情報が古い場合等に、最新の規定項目である第2の規定項目によって第1の規定項目が上書きされる。そして、上書きされた第1の規定項目を用いて、無線通信端末の送信特性が制御されるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、最新の規定項目に基づいて無線通信端末の送信特性が制御されるため、送信器を使用する行為そのものや、送信器からの電波の出力レベルが、その国での電波法に違反してしまうことがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態によるシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態による携帯電話端末内のテーブルの構成例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態による携帯電話端末の動作の例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施の形態による携帯電話端末の出力特性設定の変更例を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態による携帯電話端末の出力特性設定の変更例を示す説明図である。
【図6】従来の他国への移動時に生じる問題の例を示す説明図である。
【図7】従来の他国への移動時に生じる問題の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[システムの内部構成例]
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図5を参照して説明する。本実施の形態(以下、本例とも称する)では、本発明の無線通信端末を、送信器としてFMトランスミッタを備えた携帯電話端末に適用した例を挙げる。
【0017】
なお、送信器についてはFMトランスミッタには限定されるものではない。例えば、無線LAN(Local Area Network)やRFID(Radio Frequency IDentification)、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)、GSM(Global System for Mobile Communications)等の無線通信を行う送信器に適用してもよい。また、無線通信端末として、PDA(Personal Digital Assistants)やゲーム機器、音楽又は映像の再生機器等の他の端末に適用してもよい。
【0018】
図1に、本例のシステム構成例を示すブロック図を示す。本例のシステムは、サーバ1と携帯電話端末2とで構成される。サーバ1は、例えば図示せぬ電話通信用の基地局や中継局の構内等に設置されているものとする。
【0019】
まずサーバ1の構成から説明すると、サーバ1には、制御部11と、通信処理部12と、記憶部14(第1の記憶部)とが含まれる。制御部11はマイクロプロセッサ等よりなり、通信処理部12と記憶部14の制御を行う。通信処理部12は、携帯電話端末2との無線での通信を制御するものであり、接続されたアンテナ13を介して、携帯電話通信用の第1の周波数帯を使用して、携帯電話端末2とのデータの送受信を行う。
【0020】
記憶部14は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等で構成され、電波法データベースD1(以下、単にデータベースD1とも称する)が格納される。データベースD1では、各国の電波法で規定された各規定項目(第1の規定項目)が記載されたテーブルT1が管理されている。テーブルT1に格納されている各データは、携帯電話端末2からのデータ取得要求に応じて、通信処理部12を介して携帯電話端末2に送信される。携帯電話端末2からがデータ取得要求が出されるタイミングについては後述する。
【0021】
次に、携帯電話端末2の構成について説明する。携帯電話端末2は、マイクロプロセッサ等よりなる制御部21を備え、制御部21は、制御信号が伝送される制御ライン51又はデータが伝送されるデータライン52を介して、携帯電話端末2内の各部と接続されている。そして制御部21は、これらのラインを通して各部と通信を行い、各部の動作制御を行う。
【0022】
また携帯電話端末2は、通信端末として必要な無線通信処理を行う無線電話用の通信処理部22を備え、通信処理部22にはアンテナ23が接続されている。この通信処理部22が、無線電話用の基地局と無線通信を行って、基地局との間で、双方向のデータ伝送を行う。通信処理部22は、基地局側から受信したデータを、データライン52を介して端末内の各部に送出する。また、端末内の各部からデータライン52を介して伝送されたデータを、基地局側に送信させる。
【0023】
制御ライン51には、通信処理部22の他に、表示部24と操作部25と記憶部26(第2の記憶部)とが接続されている。表示部24は、液晶表示ディスプレイや有機ELディスプレイなどが表示手段として使用され、制御部21による制御に基づいて、各種情報の表示を行う。操作部25は、携帯電話端末として必要な数字や記号などのダイヤルキー、各種機能キーなどで構成される。
【0024】
操作部25を構成する各キーのユーザによる操作情報は、制御部21に供給される。各種設定操作を行う際には、例えば表示部24で操作を案内する表示を行い、その表示に従ってユーザは操作部25で操作を行って、該当する設定が行われる。記憶部26は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)で構成され、携帯電話端末2を動作させるために必要なプログラムや、ユーザにより保存されたオーディオデータ等が記憶される。また、サーバ1のデータベースD1から取得したデータを蓄積するテーブルT2が記憶されるとともに、後述するFMトランスミッタ30の前回使用時の日時の情報も記憶される。
【0025】
制御ライン51には、音声処理部29と、FMトランスミッタ30と、測位部としてのGPS(Global Positioning System)35も接続されている。音声処理部29は、オーディオ信号の再生に関する処理を行う処理部であり、スピーカ27及びマイクロフォン28とが接続されている。このスピーカ27及びマイクロフォン28は、通話時に受話器として使用されるものである。即ち、通信処理部22から音声処理部29に供給される音声データを、音声処理部29で復調してアナログ音声信号とし、増幅などのアナログ処理を行ってスピーカ27から放音させる。また、マイクロフォン28が集音した音声信号を、音声処理部29でデジタル音声データに変調し、その変調された音声データを通信処理部22に供給して、無線送信などを行う。音声処理部29への音声データの供給は、制御部21の制御に基づいて行われる。
【0026】
FMトランスミッタ30には、発振器32と、ミキサ33と、可変ゲインアンプ(VGA:Variable Gain Amplifier)34とが含まれる。発振器32は、制御部21から供給される発振周波数制御信号に応じた周波数を発振してミキサ33に供給する。ミキサ33は、制御部21から供給される例えばオーディオデータ等の周波数と、発振器32から供給される発振周波数とを混合して、FM変調波を生成する。VGA34は、制御部21から供給されるゲイン制御信号に基づいて、FM変調波のゲインを調整してアンテナ31に供給する。アンテナ31は、ゲインが調整されたFM変調波を電波として放射する。
【0027】
なお、図1には発振器32を1つしか記載していないが、実際には、FMトランスミッタ30からの送信周波数帯(第2の周波数帯)として想定される数に応じて、複数設けられているものとする。そして、どの発振器32を使用するかの選択も、制御部21の制御に基づいて決定される。
【0028】
制御部21によるこのようなFMトランスミッタ30の制御は、記憶部26に記憶されたテーブルT2に記述された値(第2の規定項目)に基づいて行われる。ここで、図2を参照して、テーブルT2の構成例について説明する。テーブルT2には、項目として「国識別コード」と、「電波法改定日」と、「送信器の使用可否」と、「電界強度の最大許容値」と、「下限周波数」と、「上限周波数」と、「初期設定周波数」とが含まれる。
【0029】
「国識別コード」とは、MCC(Mobile Country Code)とも称され、基地局が設置されている国を識別することに用いられるコードである。このコードは世界各国で共通に使用されているものであり、国毎に異なる番号が割り振られている。図2においては、国識別コードとして、A国の識別コードであるCAから、Z国の識別コードであるCZまでのコードが登録されている。
【0030】
「電波法改定日」には、電波法の改定があった日時の情報が記載される。図2に示す例では、国識別コードがCAのA国における最新の改定日は2007年4月1日であり、国識別コードがCBのB国での最新の改定日は2009年9月1日であることが示されている。
【0031】
「送信器の使用可否」には、送信器、本例の場合はFMトランスミッタの使用が許可されているか、もしくは禁止されているかを示すフラグが格納される。フラグの値は、その国の電波法においてFMトランスミッタの使用が許可されている場合には“1”、禁止されている場合には“0”となる。図2に示した例では、国識別コードがCBのB国でフラグが“0”に設定されている以外は、フラグの値はすべて“1”となっている。従って、B国以外の各国では、FMトランスミッタの使用が許可されており、B国では使用が禁止されていることが分かる。
【0032】
「電界強度の最大許容値」には、電波法で規定されている、微弱電波の電界強度の最大許容値(単位:dBuV/m)が登録される。日本においては、無線設備から3メートルの距離での電界強度の許容値が、無線設備が使用する周波数毎に定められている。本例では、電波法でいうところの無線設備にはFMトランスミッタが該当するため、この項目には、FMトランスミッタが使用する周波数帯での電界強度の最大許容値が記載される。図2に示した例では、国識別コードがCAであるA国においては、電界強度の最大許容値は54dBuV/mに設定されており、国識別コードがCCであるC国においては、電界強度の最大許容値は50dBuV/mに設定されていることが示されている。
【0033】
「下限周波数」と「上限周波数」は、微弱電波として無免許での使用が許可されている周波数帯の下限値と上限値を示す。図2に示した例では、A国とB国においては88MHz(下限周波数)〜108MHz(上限周波数)までの使用が許可されており、Z国においては88.2MHz〜107.8MHzまでの範囲の周波数帯の使用が許可されていることが示されている。
【0034】
「初期設定値周波数」とは、携帯電話端末2においてFMトランスミッタのアプリケーションを起動したときに最初に設定されている送信周波数を示す。一般的には、下限周波数と上限周波数の間の値に設定されている場合が多い。
【0035】
続いて、制御部21によるFMトランスミッタ30の制御の詳細について説明する。例えば、携帯電話端末2がB国の国内に持ち込まれている場合には、図2のテーブルT1に記載されているようにB国では送信器(FMトランスミッタ30)の使用が禁止されているため、FMトランスミッタ30の機能を停止する制御を行う必要がある。具体的には、オーディオデータ等の送信データの出力先を、FMトランスミッタ30ではなく音声処理部29(図1参照)に切り替える制御や、FMトランスミッタ30内のVGA34のゲインを最小限にする制御等が行われる。
【0036】
また、例えば携帯電話端末2が、「電界強度の最大許容値」がより高い国に持ち込まれた場合には、VGA34のゲイン調整に対するフィードバックを行うことでアンテナ31から放射される電力を制御する。これにより、アンテナ31から出力される電波の電界強度が、電波法で規定された範囲内での最大のものに調整される。
【0037】
また、例えば携帯電話端末2が、微弱電波として無免許での使用が許可されている周波数帯の幅が異なる国に持ち込まれた場合には、複数の発振器32の中から、最適な送信周波数幅を実現可能な発振器32を選択する制御が行われる。
【0038】
再び図1に戻って説明を続けると、GPS35は、接続されたアンテナ36を介して複数のGPS衛星からの電波を受信し、それぞれの衛星との距離を割り出すことにより、携帯電話端末2の現在位置を測位する。GPS35による測位は、制御部21による制御に基づいて行われる。
【0039】
[第1の実施形態の処理フロー]
次に、携帯電話端末2の動作の例について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
まず、携帯電話端末2の電源がオンされているか否かが判断され(ステップS1)、オフされている場合にそこで終了となる。電源がオンされている場合には、次に、ユーザによってFMトランスミッタ30(図1参照)が起動されたか否かが判断される(ステップS2)。FMトランスミッタ30が起動されていない間は、ステップS2の判断が続けられる。
【0041】
FMトランスミッタ30が起動された場合には、アンテナ23(図1参照)が、基地局からの電波を捕捉したか否かが判断される(ステップS3)。基地局からの電波を捕捉できた場合には、続いて、アンテナ23を介して受信した国識別コードが確認される(ステップS4)。通常、携帯電話端末2は、複数の基地局から送信された複数の電波を受信するため、ここでは電波を通して取得した複数の国識別コードがチェックされる。次に、受信した複数の国識別コードの中に、異なる国識別コードが混在しているか否かが判断される(ステップS5)。
【0042】
複数種類の国識別コードが含まれていた場合には、携帯電話端末2が国境付近に位置していると考えられるため、正確な現在位置情報を把握するためにGPS35(図1参照)による測位が行われて、位置情報が取得される(ステップS6)。そして、取得した位置情報に基づいて、設定に使用する国識別コードが特定される(ステップS7)。
【0043】
次に、特定された国識別コードを用いてサーバ1のデータベースD1(図1参照)へアクセスが行われる(ステップS8)。具体的には、携帯電話端末2からサーバ1に対して、データの取得要求が送信される。
【0044】
そして、データの取得要求に基づいて、サーバ1のデータベースD1内のテーブルT1から電波法改正日の情報が読み出されて、携帯電話端末2に送信される。つまり、電波法改正日の情報が携帯電話端末2によって取得される(ステップS9)。続いて、携帯電話端末2において前回FMトランスミッタ30が使用された日付より、ステップS11で取得した電波法改正日の日付の方が後であるか(大きいか)が判断される(ステップS10)。
【0045】
前回のFMトランスミッタ30の使用日時より、電波法改正日の方が後であった場合には、続いて、ステップS7で特定された国識別コードが、前回使用時と同じものであるか否かが判断される(ステップS11)。特定された国識別コードが前回使用時のものとは異なる場合には、今回新たに取得した国識別コードに対応付けられたデータがテーブルT2に記憶される(ステップS12)。そして、記憶されたデータがテーブルT2から読み出される(ステップS13)。
【0046】
ステップS3で基地局からの電波を捕捉できなかったと判断された場合と、ステップS11においてステップS7で特定された国識別コードが前回参照した国識別コードとが同一であると判断された場合には、前回参照した国識別コードに対応付けられたデータが、携帯電話端末2の送信特性設定用のパラメータとして読み出される(ステップS14)。
【0047】
読み出されたテーブルT2内の「送信器の使用可否」の項目がチェックされ、送信器(本例ではFMトランスミッタ30)の使用が許可されているか否かが確認される(ステップS15)。送信器の使用が許可されている場合には、制御部21(図1参照)の制御によって、FMトランスミッタ30の出力レベルと周波数範囲が調整される(ステップS16)。送信器の使用が禁止されている場合には、制御部21によってFMトランスミッタ30の送信機能が無効化される(ステップS17)。
【0048】
次に、ユーザによってFMトランスミッタ30の終了操作が行われたか否かが判断され(ステップS18)、行われていない間は、ステップS18の判断が繰り返される。FMトランスミッタ30の終了操作を受け付けた場合には、続いて、携帯電話端末2の電源がオフされたか否かが判断される(ステップS19)。電源がオフされていない場合には、ステップS2に戻って判断が続けられる。電源がオフされた場合には、ステップS1に戻る。
【0049】
次に、様々な状況における携帯電話端末2での具体的な処理の例を、図4及び図5を参照して説明する。図4と図5におけるA国、B国、C国は、図2のテーブルT2内のA国、B国、C国と対応しているものとする。
【0050】
図4は、FMトランスミッタ30の使用が許可されているA国から、FMトランスミッタ30の使用が禁止されているB国に、携帯電話端末2が持ち込まれた場合の例を示した図である。
【0051】
FMトランスミッタ30の使用が許可されているA国では、携帯電話端末2のFMトランスミッタ30は、電波法に準拠する範囲内の強度で電波Raを放出できるように設定されている(A国仕様)。このようなA国仕様の携帯電話端末2を、FMトランスミッタ30の使用が禁止されているB国に持ち込んだ場合には、FMトランスミッタ30が起動されたことをトリガとして、基地局から送信された国識別コードの確認が行われる(図3のステップS8)。
【0052】
そして、取得した国識別コードが前回FMトランスミッタ30を使用した際に参照したコードと異なる場合には、携帯電話端末2が異なる国に移動していると判断し、サーバ1のデータベースD1へのアクセスが行われる(図3のステップS9)。このときアクセスされるデータベースD1には、B国の電波法に記述された各規定項目が記載されていることになる。これにより、B国ではFMトランスミッタ30の使用が禁止されていることが分かるため、制御部21(図1)によって、オーディオデータ等の送信データの出力先を、FMトランスミッタ30ではなく音声処理部29に切り替える制御が行われる。もしくは、FMトランスミッタ30内のVGA34のゲインを最小限にする制御が行われる。
【0053】
携帯電話端末2内の制御部21においてこのような制御が行われることにより、B国においては、ユーザがFMトランスミッタ30を使用しようとしても、アンテナ23(図1参照)からは電波が放出されなくなる。
【0054】
図5は、FMトランスミッタ30から放出可能な電波の強度に関する規定が異なるA国とC国との間で、携帯電話端末2が持ち運びされた場合の例を示す図である。C国の電波法では、図2に国識別コードCCとして示されるように、電界強度の最大許容値は50dBuV/mに規定されている。このため、C国内で使用される携帯電話端末2では、FMトランスミッタ30からは50dBuV/mまでの電波しか出力できないように設定されている(C国仕様)。
【0055】
一方、A国においては、図2に国識別コードCAとして示されるように、電界強度の最大許容値は54dBuV/mと規定されている。すなわち、A国内で使用される携帯電話端末2では、FMトランスミッタ30からは54dBuV/mまでの電波が出力できるように設定されている(A国仕様)。
【0056】
本例によれば、C国仕様の携帯電話端末2がA国に持ち込まれた場合には、サーバ1のデータベースD1へのアクセスが行われる(図3のステップS9)。そして、FMトランスミッタ30から出力される電波のレベルを、データベースD1に記載されたA国での電界強度の最大許容量まで引き上げる制御が行われる(図3のステップS16)。これにより、FMトランスミッタ30において、54dBuV/mまでの電波を送信できるようになる。
【0057】
反対に、A国仕様の携帯電話端末2がC国に持ち込まれた場合には、FMトランスミッタ30から出力される電波のレベルを、テーブルT2に記載されたC国での電界強度の最大許容量まで引き下げる制御が行われる(図3のステップS16)。これにより、FMトランスミッタ30から出力される電波の強度が、50dBuV/mまでに制限されるようになる。
【0058】
[実施の形態による効果]
上述した実施の形態によれば、送信器の使用が禁止されている国に入国した場合には、制御部21の制御によってFMトランスミッタ30の送信機能が無効化されるため、FMトランスミッタ30から誤って電波が送信されてしまうことがなくなる。
【0059】
また、上述した実施の形態によれば、FMトランスミッタ30から出力される電波の強度が、各国の電波法で規定されている電界強度の最大許容値に基づくものに調整される。従って、最大レベルが高く設定されている国においては、FMトランスミッタ30によるデータの送信距離が伸びるため、ユーザの使用感を向上させることができる。また、最大レベルが低く設定されている国においては、FMトランスミッタ30から出力される電波の強度が制限されるため、その国の電波法に違反してしまうことがなくなる。
【0060】
また、移動先の国の電波法での規定内容に基づいて、FMトランスミッタ30からの送信周波数幅も変更されるため、送信可能な周波数チャンネルの数も、移動先の国の規定に応じた数に自動的に調整されるようになる。
【0061】
また、上述した実施の形態によれば、携帯電話端末2が国境付近に位置する場合にも、GPS35(図1参照)によって正確な現在位置情報が取得されるため、ユーザが位置する国の電波法に基づく制御が適切に行われるようになる。
【0062】
またこの場合、携帯電話端末2が国境付近に位置しない場合にはGPS35を起動させる必要がないため、携帯電話端末2の消費電力を抑えることができる。
【0063】
また、上述した実施の形態によれば、その国のサーバ1内のデータベースD1の参照は、FMトランスミッタ30の起動時に、かつ前回参照した国識別コードと新たに取得した国識別コードとが異なる場合にのみ行われる。従って、FMトランスミッタ30の送信特性設定用のパラメータの、通信を通しての取得回数(アップデートの回数)が、最小限に抑えられるようになる。これにより、携帯電話端末2の消費電力も抑えることができる。
【0064】
なお、上述した実施の形態では、携帯電話端末2が存在する国を識別する情報としてMCCを用いた例を挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、MNC(Mobile Network Code)やLAC(Local Area Code)、Cell Identity等の他の情報を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…サーバ、2…携帯電話端末、11…制御部、12…通信処理部、13…アンテナ、14…記憶部、21…制御部、22…通信処理部、23…アンテナ、24…表示部、25…操作部、26…記憶部、27…スピーカ、28…マイクロフォン、29…音声処理部、30…FMトランスミッタ、31…アンテナ、32…発振器、33…ミキサ、34…可変ゲインアンプ、35…GPS、36…アンテナ、51…制御ライン、52…データライン、D1…電波法データベース、T1,T2…テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯の電波を用いて基地局との通信を行う通信処理部と、
前記電波の使用に関する取り決めが規定された条例における規定項目が記述されたテーブルを記憶する記憶部と、
前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯の電波を用いて他の通信装置にデータを送信する送信器と、
前記記憶部のテーブルに記憶された規定項目である第1の規定項目に基づいて前記送信器の出力特性を制御するとともに、前記通信処理部を介して取得した、サーバに蓄積された前記条例における最新の規定項目である第2の規定項目と、前記第1の規定項目とを比較し、前記第1の規定項目を更新する必要があると判断した場合に、前記サーバから前記第2の規定項目を取得して前記第1の規定項目を上書きする制御部とを備えた
無線通信端末。
【請求項2】
前記第1の規定項目及び第2の規定項目には、前記条例の改定日情報が含まれ、前記第1の規定項目には、さらに国識別コード情報が含まれ、
前記制御部が前記第1の規定項目を更新する必要があると判断する場合とは、前記第1の周波数帯の電波を通して前記基地局から送信されて前記通信処理部で取得された国識別コードと、前記送信器の前回使用時に参照した前記第1の規定項目中の前記国識別コードとが異なる場合であり、かつ、前記第2の規定項目中の前記条例の改定日が、前記第1の規定項目中の前記条例の改定日よりも後である場合である
請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記制御部は、前記送信器の起動時に、前記第1の規定項目を更新する必要があるか否かの判断を行う
請求項2記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記第1の規定項目及び前記第2の規定項目には、前記送信器の出力特性を決定する項目として、前記送信器からの電波の出力レベル情報及び/又は前記送信器から出力される電波の周波数の範囲情報及び/又は前記送信器の使用の可・不可情報が記載され、前記送信器の出力特性を決定する項目は、前記第1の規定項目において、前記国識別コードと対応づけられている
請求項3記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記制御部は、前記通信処理部で取得された国識別コードと対応する前記送信器の出力特性を決定する項目を用いて、前記送信器を制御する
請求項4記載の無線通信端末。
【請求項6】
当該無線通信端末の現在位置情報を取得する測位部を備え、
前記制御部は、複数の前記基地局から送信され、前記通信処理部によって受信された国識別コードが複数個あり、かつ前記複数の国識別コードの種類がすべて同一でなかった場合には、前記測位部に当該無線通信端末の現在位置情報を取得させ、前記現在位置情報に基づいて前記第1の規定項目中の前記国識別コードを特定する
請求項5記載の無線通信端末。
【請求項7】
音声信号を音声に変換して出力するスピーカを備え、
前記送信器には、前記送信器から出力する電波の出力レベルを調整するゲインアンプが含まれ、
前記制御部は、前記送信器の使用を不可とする場合には、前記音声信号の出力先を前記送信器から前記スピーカに切り替える処理又は、前記ゲインアンプのゲインを最小限とする処理を行う
請求項6記載の無線通信端末。
【請求項8】
前記送信器は、FM(Frequency Modulation)変調波又は、無線LAN(Local Area Network)で使用される電波又は、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)規格に基づく電波又は、GSM(Global System for Mobile Communications)方式に基づく電波を生成・出力する
請求項7記載の無線通信端末。
【請求項9】
電波の使用に関する取り決めが規定された条例における最新の規定項目である第2の規定項目を記憶する第1の記憶部と、
前記記憶部から読み出した前記第2の規定項目を無線通信端末に送信する送信部とを備えたサーバと、
第1の周波数帯の電波を用いて基地局との通信を行う通信処理部と、
前記電波の使用に関する取り決めが規定された条例における規定項目が記述されたテーブルを記憶する第2の記憶部と、
前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯の電波を用いて他の通信装置にデータを送信する送信器と、
前記記憶部のテーブルに記憶された規定項目である第1の規定項目に基づいて前記送信器の出力特性を制御するとともに、前記通信処理部を介して取得した前記第2の規定項目と前記第1の規定項目とを比較し、前記第1の規定項目を更新する必要があると判断した場合に、前記サーバから前記第2の規定項目を取得して前記第1の規定項目を上書きする制御部とを備えた無線通信端末とを含む
通信システム。
【請求項10】
電波の使用に関する取り決めが規定された条例における規定項目が記述されたテーブルを記憶するステップと、
サーバに蓄積された前記条例における最新の規定項目である第2の規定項目を取得するステップと、
前記第2の規定項目と、前記第1の規定項目とを比較し、前記第1の規定項目を更新する必要があると判断した場合に、前記サーバから前記第2の規定項目を取得して前記第1の規定項目を上書きするステップと、
前記テーブルに記憶された規定項目である第1の規定項目に基づいて、前記第1の周波数帯とは異なる第2の周波数帯の電波を用いて他の通信装置にデータを送信する送信器の出力特性を制御するステップと、
前記制御に基づいて、前記送信器が他の通信装置に前記データを送信するステップとを含む、
通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−278558(P2010−278558A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126845(P2009−126845)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】