説明

無線通信装置、無線通信方法及びプログラム

【課題】使用する地域に対応する電波設定により簡単に通信を開始できるようにする。
【解決手段】X線画像データを送信するX線センサ1と、X線センサ1から無線通信によりX線画像データを受信する無線アクセスポイント6と、近距離無線通信によりX線センサ1と通信を行うエントリー装置10とを備えており、無線設定装置15は、X線センサ1と無線アクセスポイント6との無線通信を開始するための無線通信パラメータを無線アクセスポイント6に設定するとともに、エントリー装置10から近距離無線通信を行うことにより無線アクセスポイント6に設定した無線通信パラメータと同一の無線通信パラメータをX線センサ1に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信装置、無線通信方法及びプログラムに関し、特に、設置時の無線通信設定を行うために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線を発生させることによりX線センサからX線画像データを取得してA/D変換によってデジタルX線画像データとし、このデジタルX線画像データに画像処理を施して診断に供するデジタルX線撮影装置が製品化されている。例えば、図3に示すように、従来のデジタルX線撮影装置では、X線センサ1001を架台や臥台に設置して使用するのが一般的である。ところが、撮影手法によってはX線センサを固定せず、フリーポジションでの撮影が必要な場合もある。そこで、このような要求に対してX線センサを薄型且つ軽量にし、取扱いを容易にした装置が例えば特許文献1に開示されている。さらには、X線センサと同期中継器との間を無線化し、図4に示すように、X線センサ1101のケーブルによる設置制限をなくした装置も例えば特許文献2に開示されている。
【0003】
高品位のX線画像を提供するために、X線センサの画素ピッチは100〜200μm程度であり、16bitの濃度分解能が用いられている。また、画像領域サイズを半切(43×35cm)とすると、1画像を構成するデータサイズはおおむね7.5〜30Mbyteのデータサイズとなる。フリーポジションで撮影し、このサイズのX線画像データを取得してから数秒というスピードでX線画像をディスプレイ等に表示するためには、無線通信手段も相応の高速性が要求される。そこで、容易に高速性を実現するために、無線通信には電波方式が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−172783号公報
【特許文献2】特許第3494683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、電波については国や地域ごとに異なる電波法が存在し、使用可能な周波数帯域が国や地域ごとに規制されている。したがって、装置に対して国や地域ごとに異なる電波設定を行うことが要求される。そこで、従来は人的作業により、装置を出荷した時に出荷地域に応じた電波設定を行ったり、設置時にその地域に応じて電波設定を行ったりしている。
【0006】
しかしながら、人的作業により電波設定を行うと、作業ミスが発生するリスクは回避できず、作業ミスが発生して規制外の電波に設定されると、電波法に抵触する可能性がある。
【0007】
本発明は前述の問題点に鑑み、使用する地域に対応する電波設定により簡単に通信を開始できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線通信装置は、画像データを送信する送信装置と、前記送信装置から無線通信により画像データを受信する受信装置とを備えた無線通信装置であって、電波方式とは異なる方式により前記送信装置と通信を行う通信手段と、前記受信装置と前記送信装置との無線通信を開始するための無線通信パラメータを前記受信装置に設定するとともに、前記通信手段から通信を行うことにより前記受信装置に設定した無線通信パラメータと同一の無線通信パラメータを前記送信装置に設定する設定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用者に負担をかけることなく、使用する地域に対応する電波設定により通信を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る無線X線撮影装置の全体構成例を示す図である。
【図2】無線通信パラメータの設定例を示すタイミングチャートである。
【図3】従来の有線X線撮影装置の全体構成例を示す図である。
【図4】従来の無線X線撮影装置の全体構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る無線X線撮影装置100の全体構成例を示す図である。本実施形態の無線X線撮影装置100は、X線センサ1、無線アクセスポイント6、エントリー装置10及び無線設定装置15を備えている。
【0012】
図1において、X線センサ1は、X線制御装置2の制御に従ってX線発生装置3から発生したX線を検知してデジタルX線画像データを生成する。X線インタフェース装置4は、X線制御装置2とスイッチングハブ7とを接続するためのものである。
【0013】
電波通信部5は、無線アクセスポイント6とIEEE802.11等による無線通信を実施する。無線アクセスポイント6は、電波通信部5と対向して電波方式により無線通信を実施するとともに、X線インタフェース装置4及び画像処理装置8とEthernet(登録商標)による通信を実施する。スイッチングハブ7は、Ethernetによって接続される機器をスター型で接続する。画像処理装置8は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)など、画像処理を行うものである。ディスプレイ装置9は、画像処理されたデジタルX線画像や操作画面を表示するものである。
【0014】
エントリー装置10は、IrDA(Infrared Data Association)など近距離無線通信に対応した装置であり、画像処理装置8とUSBなどにより接続されている。近距離無線通信部11は、エントリー装置10と近距離無線通信を行うためのものである。スイッチ12は、X線センサ1に備えられ、近距離無線通信を開始するためのものであり、バッテリパック13は、X線センサ1に電源を供給するためのものである。基幹ネットワーク14は、画像処理装置8を接続する院内LANなどである。また、無線設定装置15は、画像処理装置8上で動作するソフトウェアとして画像処理装置8に実装されている。
【0015】
ここで、X線センサ1は、出荷後の初期状態、すなわち、この後の動作によって設定されるリージョンコードの設定がなされない状態においては、電波通信部5は動作しないようになっている。このため、製品を出荷した時には国別・地域別に電波設定を実施する必要が生じないため、設定作業を不要にするとともに、製品の出荷地管理を軽減することができる。
【0016】
まず、使用者がスイッチ12を押下すると、X線センサ1は近距離無線通信部11によりエントリー装置10と通信を開始する。このとき、エントリー装置10は待ち受け状態であり、X線センサ1の近距離無線通信部11からの受信をトリガに、無線通信パラメータ設定シーケンスを開始する。
【0017】
図2は、無線通信パラメータの設定シーケンスの一例を示すタイミングチャートである。
図2に示すように、スイッチ12が押下されることにより、近距離無線通信部11よりエントリー装置10に設定要求が送信される(T1)。そして、設定要求を受けたエントリー装置10は、接続されている画像処理装置8上で動作する無線設定装置15へ設定要求を転送する(T2)。無線設定装置15は、無線X線撮影装置100を構成する各ユニットをネットワーク結合するための各種設定を実施する。
【0018】
ここで、X線センサ1にてX線画像を撮影するためには、X線センサ1の内部動作に同期してX線発生装置3からX線を曝射する必要がある。同期してX線を曝射するためには、X線センサ1とX線制御装置2との間でX線同期信号を授受する必要がある。例えば、図3に示すような有線接続によるX線撮影装置の場合は、同期中継器1007を介してX線センサ1001とX線制御装置1002との間でX線同期信号のやり取りをしていた。
【0019】
これに対して本実施形態においては、X線センサ1とX線制御装置2との間で無線通信によりX線同期信号をやり取りする必要がある。そこで、X線制御装置2に接続されたX線インタフェース装置4において、X線制御装置2と接続するX線同期信号とEthernet上で通信するプロトコルとを相互変換する。
【0020】
X線センサ1がX線インタフェース装置4にアクセスするためには、X線インタフェース装置4のIPアドレス(xif_ip)をX線センサ1に伝達する必要がある。また、無線アクセスポイント6に対しリージョンコードを要求したり無線通信パラメータを設定したりするため、無線アクセスポイント6にもIPアドレス(ap_ip)を割り振る必要がある。そこで、X線インタフェース装置4と無線アクセスポイント6とに対し、事前に固定IPアドレスを設定し、その情報を無線設定装置15に設定することにより、アクセスは可能である。
【0021】
さらに、無線設定装置15にDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ機能を実装し、X線インタフェース装置4及び無線アクセスポイント6をDHCPクライアントとして動作させることも可能である。図2に示すように、DHCPクライアントであるX線インタフェース装置4及び無線アクセスポイント6にIPアドレスが設定されていない場合は、無線設定装置15にIPアドレス要求を送り、この応答として無線設定装置15はIPアドレスを割り当てる。これにより、X線インタフェース装置4及び無線アクセスポイント6へIPアドレスを簡単に設定することができ、使用者の作業負担を軽減できる。また、この動作は無線通信パラメータ設定シーケンスとは独立したタイミングで動作させることができる。
【0022】
次に、設定要求を受信した無線設定装置15は、画像処理装置8に接続されている無線アクセスポイント6に無線通信の地域情報であるリージョンコードを要求する(T3)。リージョンコードの要求を受けた無線アクセスポイント6は、自身に内蔵するリージョンコードを応答する(T4)。無線アクセスポイント6はこの内蔵するリージョンコードに対応する電波を設定する。具体的には使用可能周波数(チャネル)以外では動作しないようにすることによって、使用する地域の電波法に対応している。
【0023】
例えば、北米における2.4GHz帯のチャネルは、中心周波数2.412GHzのch1から中心周波数2.462GHzのch11までが利用可能である。一方、日本や欧州においては、ch1から中心周波数2.472GHzのch13までが利用可能であり、国や地域によって利用可能なチャネルが異なっている。無線アクセスポイント6は内蔵するリージョンコードから対応するチャネル範囲内で自身が利用するチャネルを選択する。
【0024】
さらに、無線アクセスポイント6を利用するためには、無線ネットワークの識別子となるSSID(Service Set Identifier)、秘匿化のための暗号鍵(PSK)等を無線アクセスポイント6及びX線センサ1の双方に設定が必要となる。図1に示すように、無線アクセスポイント6は、スイッチングハブ7を介して画像処理装置8に有線接続されている。このため、画像処理装置8上の無線設定装置15は、SNMP(Simple Network Management Protocol)等を用いて無線アクセスポイント6に対してリモート設定を実施できる。
【0025】
一方、X線センサ1に対しては、電波通信部5とは異なる方式の、例えばIrDAやTransferJet等の近距離無線通信を用いて電波通信部5の設定を行う。これにより、ケーブル接続を必要とせずに無線アクセスポイント6への接続設定を行うことができる。
【0026】
通常のネットワーク機器の場合、使用者が各々の装置にSSIDやPSKについて同じ設定を行うことにより、同一無線ネットワークを構築する。このため、そのネットワークにおけるSSIDやPSKを使用者が認識する必要がある。これに対して本実施形態においては、無線設定装置15が無線アクセスポイント6とX線センサ1内の電波通信部5との双方を設定するため、使用者がSSIDやPSKを個々の装置に設定する作業は不要となる。
【0027】
なお、無線設定装置15に予めSSID及びPSKを設定してもよいし、無線設定装置15のMACアドレスを流用したり、初回の起動時にランダムな文字列を設定したりするようにしてもよい。いずれの場合も使用者の作業負担を低減させて無線ネットワークを構築することが可能である。
【0028】
以上のような理由により、続いて、無線設定装置15は、無線アクセスポイント6に無線通信パラメータを設定する(T5)。ここで、無線アクセスポイント6への設定項目はSSID、PSKであり、使用するチャネルを必ずしも指定する必要はない。
【0029】
例外的に、例えば隣接する撮影室にまたがって図1に示すような無線X線撮影装置100を設置し、複数台のX線センサ1を運用する場合、各撮影室の無線アクセスポイント6のチャネルを明示的に設定し、同時使用での電波干渉を回避することも可能である。この際、無線アクセスポイント6に内蔵するリージョンコードに対応するチャネル範囲外のチャネルが設定された場合に電波出力を行わないようにする。もしくは、チャネルの設定を無視してリージョンコードに対応するチャネル範囲内において利用するチャネルを選択することによって、使用する地域の電波法に対応する。
【0030】
また、前述したように、X線センサ1にも無線通信パラメータを設定する必要がある。そこで、無線設定装置15は、エントリー装置10に無線通信パラメータを送信する(T6)。これにより、エントリー装置10は、近距離無線通信により無線通信パラメータをX線センサ1の近距離無線通信部11を送信し(T7)、最終的に電波通信部5に設定を反映する(T8)。ここで設定される項目はSSID、PSK、X線インタフェース装置4のIPアドレス(xif_ip)、X線センサ1に割り振られたIPアドレス(det_ip)、及びリージョンコードである。
【0031】
以上のように、無線アクセスポイント6に設定したSSID及びPSKを電波通信部5に設定することにより、無線アクセスポイント6へアクセスするための許可が得られる。続いて、前述したように、無線アクセスポイント6にはチャネルを明示的に指定しなくてもよいため、電波通信部5が無線アクセスポイント6と接続する際にはチャネルスキャンを実施し、無線アクセスポイント6と接続可能なチャネルを探索する。このチャネルスキャンは、無線アクセスポイント6からの電波を一定期間受信し、使用チャネルを確認するパッシブスキャンでもよく、電波通信部5が最初に電波を送信して無線アクセスポイント6との接続を試みるアクティブスキャンでもよい。
【0032】
このとき、電波通信部5に設定されたリージョンコードによって、このチャネルスキャンを行うチャネル範囲を規制する。前述したように、無線アクセスポイント6はリージョンコードに対応するチャネル範囲内から自身が利用するチャネルを選択する。それと同様に、電波通信部5は、近距離無線通信部11にて受信したリージョンコードから対応するチャネル範囲を割り出し、その範囲内でチャネルスキャンを実施する。無線アクセスポイント6も同一のリージョンコードに対応するチャネル範囲にて利用するチャネルが設定されているため、このチャネルスキャンによってX線センサ1と無線アクセスポイント6との通信が確立できる。
【0033】
以上のシーケンスによって、X線センサ1のスイッチ12を押下することによって、X線センサ1と無線アクセスポイント6との無線通信を、使用する地域に対応する電波設定にて実施することができる。
【0034】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0035】
1 X線センサ、6 無線アクセスポイント、8 画像処理装置、10 エントリー装置、15 無線設定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを送信する送信装置と、前記送信装置から無線通信により画像データを受信する受信装置とを備えた無線通信装置であって、
電波方式とは異なる方式により前記送信装置と通信を行う通信手段と、
前記受信装置と前記送信装置との無線通信を開始するための無線通信パラメータを前記受信装置に設定するとともに、前記通信手段から通信を行うことにより前記受信装置に設定した無線通信パラメータと同一の無線通信パラメータを前記送信装置に設定する設定手段とを備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記受信装置は、電波方式の無線通信に関する地域情報を記憶しており、
前記設定手段は、前記受信装置に設定した無線通信パラメータと同一の無線通信パラメータと、前記受信装置に記憶されている地域情報とを前記送信装置に設定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記設定手段によって設定される無線通信パラメータは、SSID、暗号鍵、及びチャネルの情報を含むことを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記送信装置は、前記設定手段により地域情報が設定されるまでは無線通信を実施しないようにすることを特徴とする請求項2または3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記送信装置は、前記設定手段により設定された地域情報に対応するチャネルの範囲に基づいて、前記受信装置との接続を確立する時に前記チャネルの範囲内において、前記受信装置と接続するチャネルをスキャンすることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
画像データを送信する送信装置と、前記送信装置から無線通信により画像データを受信する受信装置とを備えた無線通信装置における無線通信方法であって、
電波方式とは異なる方式により前記送信装置と通信を行う通信工程と、
前記受信装置と前記送信装置との無線通信を開始するための無線通信パラメータを前記受信装置に設定するとともに、前記通信工程において通信を行うことにより前記受信装置に設定した無線通信パラメータと同一の無線通信パラメータを前記送信装置に設定する設定工程とを備えることを特徴とする無線通信方法。
【請求項7】
画像データを送信する送信装置と、前記送信装置から無線通信により画像データを受信する受信装置とを備えた無線通信装置を制御するためのプログラムであって、
電波方式とは異なる方式により前記送信装置と通信を行う通信工程と、
前記受信装置と前記送信装置との無線通信を開始するための無線通信パラメータを前記受信装置に設定するとともに、前記通信工程において通信を行うことにより前記受信装置に設定した無線通信パラメータと同一の無線通信パラメータを前記送信装置に設定する設定工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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