説明

無線通信装置、運用周波数の変更動作方法及びプログラム

【課題】動作周波数帯域内で柔軟にエッジ周波数を設定可能とし、エッジ周波数を跨ぐ運用周波数の変更に対応して適切な動作を実現する。
【解決手段】周波数区画設定処理部111は、無線通信部120に対応して予め設定された動作周波数帯域内を複数の周波数区画に分割するためのエッジ周波数を設定し、各周波数区画を送信可能区画又は送信禁止区画に設定する。このとき、電波形式の種類に応じて異なるエッジ周波数を設定可能とする。周波数変更判定処理部113は、運用周波数がエッジ周波数を跨いで変更されたか否かを判定する。エッジ周波数を跨いで変更されたときには、変更判定時動作制御部114の制御により、送信可能区画又は送信禁止区画への変更に応じて異なる報知態様で報知動作を行う。送信禁止区画へと変更されたときには、無線通信部120による送信を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、運用周波数の変更動作方法及びプログラムに関する。より詳しくは、予め設定された動作周波数帯域内で運用周波数を変更する場合の動作に関する。
【背景技術】
【0002】
無線信号を送信可能な無線通信装置として、現在位置で使用が許可されている通信周波数帯に通信周波数が該当しているか否かを判定するものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−336638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線信号を送信する場合には、各種の電波法規や無線通信システムの仕様などにより、予め規定された周波数帯域の範囲内で送信周波数となる運用周波数を設定する必要がある。ただし、こうした周波数帯域内であっても、電波形式によって使用できる帯域が制限されることがある。また、一定の周波数帯域内に送信が禁止される帯域が散在することもある。さらに、無線送信を行うユーザーが有する資格に応じて、送信が許可される帯域が異なることもある。
【0005】
このように、無線信号を送信できる周波数帯域は、ユーザーが有する資格や使用する電波形式などに応じて、柔軟に設定できることが望ましい。しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、現在位置に応じて送信可能か否かを判定できる程度であり、柔軟性に欠けるという問題があった。また、無線信号を送信できるか否かをユーザーが認識できずに、送信を禁止した状態が継続してしまうおそれもある。
【0006】
この発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、動作周波数帯域内で柔軟に境界周波数を設定可能とし、その境界周波数を跨ぐ運用周波数の変更に対して適切に動作する無線通信装置や運用周波数の変更動作方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る無線通信装置は、
予め設定された動作周波数帯域内にて運用周波数を変更して無線信号を送信又は受信することの少なくともいずれか一方を実行可能な無線通信手段と、
前記動作周波数帯域内を複数の周波数区画に分割するための境界周波数を設定する境界周波数設定手段と、
前記運用周波数が、前記境界周波数設定手段によって設定された前記境界周波数を跨いで変更されたか否かを判定する周波数変更判定手段と、
前記周波数変更判定手段によって前記境界周波数を跨いで変更された旨の判定がなされたときに、所定動作を実行する変更判定時動作手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記無線信号の信号形式を複数種類のいずれかに設定する信号形式設定手段を備え、
前記境界周波数設定手段は、前記信号形式設定手段によって設定された信号形式の種類に応じて異なる境界周波数を設定する。
【0009】
前記境界周波数設定手段は、前記複数の周波数区画として、前記無線信号の送信を禁止する送信禁止区画と、前記無線信号の送信を可能とする送信可能区画とに分割し、
前記周波数変更判定手段は、前記運用周波数が前記送信禁止区画から前記送信可能区画へと変更される第1周波数変更動作、及び、前記運用周波数が前記送信可能区画から前記送信禁止区画へと変更される第2周波数変更動作のうち、いずれの周波数変更動作が実行されたかを特定可能に判定する。
【0010】
前記変更判定時動作手段は、前記所定動作として、前記周波数変更判定手段によって前記第1周波数変更動作が実行された旨の判定がなされたときに、前記第2周波数変更動作が実行された旨の判定がなされたときとは異なる報知態様で、前記周波数変更動作の検出を報知する。
【0011】
前記変更判定時動作手段は、前記所定動作として、前記周波数変更判定手段によって前記第2周波数変更動作が実行された旨の判定がなされたときに、前記無線通信手段による無線信号の送信を制限する。
【0012】
また、本発明の第2の観点に係る運用周波数の変更動作方法は、予め設定された動作周波数帯域内にて運用周波数を変更して無線信号を送信又は受信することの少なくともいずれか一方を実行可能な無線通信装置における運用周波数の変更動作方法であって、
前記動作周波数帯域内を複数の周波数区画に分割するための境界周波数を設定し、
前記運用周波数が、前記境界周波数を跨いで変更されたか否かを判定し、
前記境界周波数を跨いで変更された旨の判定がなされたときに、所定動作を実行することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
予め設定された動作周波数帯域内にて運用周波数を変更して無線信号を送信又は受信することの少なくともいずれか一方を実行可能な無線通信装置を制御するコンピュータに、
前記動作周波数帯域内を複数の周波数区画に分割するための境界周波数を設定する境界周波数設定機能と、
前記運用周波数が、前記境界周波数設定機能により設定された境界周波数を跨いで変更されたか否かを判定する周波数変更判定機能と、
前記周波数変更判定機能により前記境界周波数を跨いで変更された旨の判定がなされたときに、所定動作を実行する変更判定時動作機能、
を実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、予め設定された動作周波数帯域内で柔軟に境界周波数を設定可能とし、その境界周波数を跨ぐ運用周波数の変更に対して適切な動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。ここでは、予め設定された動作周波数帯域内にて送信周波数となる運用周波数を変更して無線信号を送信することができる無線送信機について説明する。図1は、この発明の実施の形態に係る無線送信機100の構成例を示している。図1に示すように、この無線送信機100は、制御部110と、無線通信部120と、アンテナ121と、入力部130と、出力部140と、記憶部150とを備えて構成されている。
【0016】
制御部110は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)を含んだマイクロコンピュータなどを用いて構成され、無線送信機100の各部を制御するとともに、記憶部150に格納されている所定の動作プログラムに基づいて後述する各処理を実行する。一例として、制御部110が備えるCPUは、記憶部150に設けられたROM(Read Only Memory)などから固定データを読み出す固定データ読出動作や、記憶部150に設けられたRAM(Random Access Memory)などに各種の変動データを書き込んで一時記憶させる変動データ書込動作、RAMなどに一時記憶されている各種の変動データを読み出す変動データ読出動作、制御部110の外部から各種信号の入力を受け付ける信号入力動作、制御部110の外部へと各種信号を出力する信号出力動作などを、実行できればよい。
【0017】
無線通信部120は、例えばアンプやチューナ、フィルタといった、各種の信号処理回路などを用いて構成され、アンテナ121を介して無線信号の送信を行う。無線通信部120では、例えば無線送信機100の設計仕様などに基づき、予め設定された動作周波数帯域内にて送信周波数となる運用周波数を変更して無線信号を送信することができる。
【0018】
入力部130は、例えば操作キーを形成するプッシュスイッチや操作ダイヤルを形成するダイヤルスイッチといった各種のスイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス、あるいは、これらの一部又は全部を含んで構成され、ユーザーによる入力操作などに応じて、無線送信機100に対して各種の設定情報や動作指示等を入力するための入力インタフェースとして機能する。なお、入力部130は、ユーザーの操作によって情報や指示を入力するものに限定されず、例えば外部のコンピュータといった情報処理装置とケーブル接続して伝送された設定情報等を受信するためのケーブルコネクタ、あるいは、インターネットやLAN(Local Area Network)といった電気通信ネットワークに接続してサーバ等の情報処理装置から配信された設定情報等を受信するためのネットワークインタフェースなどを含んでいてもよい。
【0019】
出力部140は、例えば液晶表示装置といった画像表示装置、スピーカといった音声出力装置、ランプやLED(Light Emitting Diode)といった発光装置、あるいは、これらの一部又は全部を含んで構成され、ユーザーに対して種々の情報出力や動作報知などを行うための出力インタフェースとして機能する。
【0020】
記憶部150は、例えばRAMやROM、フラッシュメモリといった半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)といった磁気ディスク記憶装置、CDROMやDVDといった光ディスク記憶装置、あるいは、これらの一部又は全部を含んで構成され、制御部110が実行する動作プログラムの他、各処理の実行に必要となるデータや各処理の実行により生成されたデータなどを格納する。なお、記憶部150の一部又は全部は、制御部110を構成するマイクロコンピュータに内蔵されるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。また、記憶部150の一部又は全部は、無線送信機100の内部に固定されて設置されるものであってもよいし、着脱可能に設置されるものであってもよい。
【0021】
記憶部150に格納される動作プログラムとしては、無線送信機100の全体における基本動作を司る任意の基本プログラムが含まれていればよい。また、この動作プログラムには、制御部110などにより後述する各処理を実行して各機能を実現させるためのソフトウェアが含まれていればよい。制御部110は、こうした記憶部150に格納されている動作プログラムを読み出して実行することにより、図1に示すような構成として機能する。すなわち、制御部110は、周波数区画設定処理部111、送信動作制御部112、周波数変更判定処理部113、変更判定時動作制御部114として動作する機能を有している。なお、これらの制御部110における機能構成は、ソフトウェアによって論理的に実現されてもよいが、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアデバイスによって、これらの機能構成が物理的に実現されてもよい。
【0022】
周波数区画設定処理部111は、無線通信部120に対応して予め設定された動作周波数帯域内にて、境界周波数となるエッジ周波数を設定することにより、動作周波数帯域内を複数の周波数区画に分割するための処理を実行する境界周波数設定手段として機能する。ここで、複数の周波数区画としては、例えば入力部130からの入力情報などに基づき、無線信号の送信を禁止する送信禁止区画と、無線信号の送信を可能とする送信可能区画とを、設定することができる。また、エッジ周波数を設定する際には、例えば入力部130からの入力情報などに基づき、無線信号の信号形式となる電波形式の種類が予め使用可能とされた複数種類のいずれであるかに応じて、異なるエッジ周波数を設定することができる。
【0023】
周波数区画設定処理部111によって複数の周波数区画などが設定されたときには、その設定内容を示すデータが、記憶部150の所定領域(例えばRAMやフラッシュメモリといった書換可能な記憶装置にて予め設けられたユーザ領域など)に記憶されるようにすればよい。すなわち、記憶部150は、境界周波数となるエッジ周波数の設定内容を示すデータが記憶される設定データ記憶手段としての機能を有している。
【0024】
送信動作制御部112は、無線通信部120に各種の制御信号を出力することなどにより、無線通信部120による無線信号の送信動作を制御するための処理を実行する送信動作制御手段として機能する。ここで、無線信号の送信動作制御としては、例えば無線信号の信号形式となる電波形式を、CWモード(電信)、電話モード、画像モード、狭帯域デジタルモードといった複数種類のうちから選択して設定すること、搬送波の変調方式を、例えばDSB(Double Side Band:両側波帯変調)、SSB(Single Side Band:単側波帯変調)、FM(Frequency Modulation:周波数変調)といった複数種類のうちから選択して設定すること、無線信号の送信周波数を変更可能に調整すること、無線信号の出力電力を変更可能に調整することなどが、含まれていればよい。このように、送信動作制御部112は、電波形式を複数種類のいずれかに設定する信号形式設定手段としての機能を含んでいる。なお、無線信号の送信周波数を変更する際の変更幅(周波数ステップ)は、例えば入力部130に対するユーザーの操作や無線送信機100における初期設定などに応じて、複数種類(例えば0.1kHz/1kHz/5kHz/9kHz/10kHz/12.5kHz/20kHz/25kHzなど)のうちから選択できるようにしてもよいし、予め定められた固有単位となるようにしてもよい。
【0025】
周波数変更判定処理部113は、例えば無線信号の送信周波数が変更されたか否かを判定することや、送信周波数が変更された場合に境界周波数となるエッジ周波数を跨いで変更されたか否かを判定することといった、送信周波数の変更に関する各種の判定をするための処理を実行する周波数変更判定手段として機能する。ここで、送信周波数がエッジ周波数を跨いで変更される場合としては、エッジ周波数の高域側から、エッジ周波数を越えて低域側へと変更される場合と、エッジ周波数の低域側から、エッジ周波数を越えて高域側へと変更される場合とがある。こうしてエッジ周波数を跨いで変更された送信周波数は、複数の周波数区画のうち、送信禁止区画から送信可能区画へと移行することもあれば、送信可能区画から送信禁止区画へと移行することもある。周波数変更判定処理部113は、周波数区画設定処理部111による設定内容などに基づき、送信周波数がエッジ周波数を跨いで変更された場合に、その周波数変更動作が、送信周波数を送信禁止区画から送信可能区画へと移行させる第1周波数変更動作と、送信周波数を送信可能区画から送信禁止区画へと移行させる第2周波数変更動作とのうち、いずれであるかを特定可能に判定する。
【0026】
変更判定時動作制御部114は、送信周波数がエッジ周波数を跨いで変更された場合に、予め設定された各種動作としての所定動作を制御するための処理を実行することにより、変更判定時動作制御手段として機能する。一例として、変更判定時動作制御部114は、出力部140に含まれる各種装置(例えば、画像表示装置、音声出力装置、発光装置、あるいは、これらの一部又は全部など)の動作制御などにより、送信周波数が送信禁止区画から送信可能区画へと変更されたときに、送信周波数が送信可能区画から送信禁止区画へと変更されたときとは異なる報知態様で、周波数変更動作の検出を報知させる。すなわち、変更判定時動作制御部114は、周波数変更判定処理部113によって第1周波数変更動作が実行された旨の判定がなされたときに、第2周波数変更動作が実行された旨の判定がなされたときとは異なる報知態様で、周波数変更動作の検出を報知させる。他の一例として、変更判定時動作制御部114は、送信周波数が送信可能区画から送信禁止区画へと変更されたときに、無線通信部120による無線信号の送信を制限(停止)させる。すなわち、変更判定時動作制御部114は、周波数変更判定処理部113によって第2周波数変更動作が実行された旨の判定がなされたときに、無線通信部120による無線信号の送信を制限(停止)させる。このように、変更判定時動作制御手段114は、出力部140や無線通信部120などと協働することにより、変更判定時動作手段としての機能を実現させる。
【0027】
次に、この実施の形態における無線送信機100の動作(作用)について、制御部110によって実行される処理を中心として説明する。図2は、制御部110などによって実行される周波数区画設定処理の一例を示すフローチャートである。この周波数区画設定処理は、例えばユーザーが入力部130を操作して周波数区画の設定開始を指示したことなどを契機として、周波数区画設定処理部111により実行が開始されればよい。
【0028】
図2に示す周波数区画設定処理において、制御部110が備える周波数区画設定処理部111は、まず、電波形式を複数種類のうちから選択する(ステップS101)。このとき、周波数区画設定処理部111は、例えば出力部140に含まれる画像表示装置に電波形式の選択画面を表示させ、その表示に応じたユーザーによる入力部130の操作に基づいて、予め選択可能に用意された複数種類の電波形式から、所望の電波形式を選択すればよい。また、電波形式とともに、無線通信部120における動作周波数帯域のうちから、周波数区画を設定する帯域を選択するようにしてもよい。なお、電波形式の選択画面を表示させずに、例えばユーザーが入力部130に対して所定のキー操作を行ったことなどに応じて、電波形式が選択されるようにしてもよい。
【0029】
ステップS101における電波形式の選択に続いて、境界周波数となるエッジ周波数を設定する(ステップS102)。このとき、周波数区画設定処理部111は、例えば出力部140に含まれる画像表示装置にエッジ周波数の設定画面を表示させ、その表示に応じたユーザーによる入力部130の操作に基づいて、無線通信部120における動作周波数帯域内において、単一又は複数のエッジ周波数を設定すればよい。なお、無線通信部120における動作周波数帯域の上限周波数と下限周波数は、予めエッジ周波数として設定されていてもよい。この場合には、ステップS102の処理において動作周波数帯域内で単一のエッジ周波数を設定するだけでも、動作周波数帯域内を複数(2つ)の周波数区画に分割することができる。また、エッジ周波数の設定画面を表示させずに、例えばユーザーが入力部130に対して所定のキー操作を行ったことなどに応じて、エッジ周波数が設定されるようにしてもよい。
【0030】
ステップS102にてエッジ周波数を設定した後には、そのエッジ周波数によって分割された複数の周波数区画について、送信可能区画とするか送信禁止区画とするかを設定する(ステップS103)。このとき、周波数区画設定処理部111は、例えば出力部140に含まれる画像表示装置に送信可能/禁止の設定画面を表示させ、その表示に応じたユーザーによる入力部130の操作に基づいて、各周波数区画を送信可能区画と送信禁止区画のいずれかに設定すればよい。なお、送信可能/禁止の設定画面を表示させずに、例えばユーザーが入力部130に対して所定のキー操作を行ったことなどに応じて、送信可能区画と送信禁止区画の設定が行われるようにしてもよい。
【0031】
ステップS103における送信可能区画と送信禁止区画の設定に続いて、例えばユーザーによる入力部130の操作などに基づいて、さらに周波数区画の設定を行うか否かを判定する(ステップS104)。このとき、さらなる周波数区画の設定がなければ(ステップS104;No)、周波数区画設定処理は終了する。これに対して、さらなる周波数区画の設定があるときには(ステップS104;Yes)、ステップS101の処理に戻って、新たな周波数区画の設定を行うようにすればよい。なお、ステップS101の処理に戻るだけでなく、ステップS102又はステップS103の処理にも戻れるようにして、エッジ周波数や送信可能/禁止の設定を、個別に行うことができるようにしてもよい。
【0032】
こうした周波数区画設定処理は、無線送信機100において実行されてもよいが、例えば無線送信機100とは異なる外部のコンピュータといった、別個の情報処理装置によって実行されるようにしてもよい。この場合には、周波数区画設定処理による各種の設定内容を示すデータが、外部の情報処理装置から接続ケーブルや電気通信ネットワークなどを介して無線送信機100へと伝送されればよい。そして、例えば入力部130に含まれるケーブルコネクタやネットワークインタフェースを経て受信されたデータが、記憶部150にて読込可能に記憶されるようにすればよい。あるいは、周波数区画設定処理による各種の設定内容を示すデータが記録された情報記録媒体を、記憶部150にて読込可能に装着された状態となるようにしてもよい。
【0033】
ここで、無線送信機100が使用される地域(例えば国など)や、ユーザーが有する資格(例えばアマチュア無線技士資格の等級など)、無線送信機100で使用する電波形式といった、無線送信機100の使用状況に応じた周波数区画の設定内容は、各国の電波法規や無線通信システムの仕様などにより、ある程度までは固定的かつ統一的に規定できることがある。このような場合には、例えば無線送信機100の製造メーカーやメンテナンス事業者などにおいて、上記の周波数区画設定処理による各種の設定内容を示すデータを、無線送信機100の様々な使用状況に対応して複数種類作成しておき、記憶部150に予め記憶させておくようにしてもよい。そして、周波数区画設定処理部111は、入力部130から入力された情報や指示に基づき、記憶部150に記憶されている複数種類のデータから、無線送信機100の使用状況に応じたものを選択して、選択されたデータが示すエッジ周波数の設定などを行うようにしてもよい。これにより、無線送信機100を使用するユーザーは、例えば入力部130を操作することなどにより、無線送信機100が使用される地域や、ユーザーが有する資格、使用する電波形式といった、無線送信機100の使用状況を特定するための情報や指示を入力するだけで、その使用状況に適したエッジ周波数の設定などを、柔軟かつ容易に行うことができる。
【0034】
また、例えば無線送信機100の製造メーカーやメンテナンス事業者などにおいて作成されたエッジ周波数の設定内容などを示すデータを、記憶部150において着脱可能となる情報記録媒体に記録して配布し、ユーザーなどが記憶部150にて読込可能に装着された状態とするようにしてもよい。これにより、個々の無線送信機100が備える固定的(着脱不可)な記憶部150における記憶容量の増大を抑制しつつ、無線送信機100の様々な使用状況に適したエッジ周波数の設定などを、柔軟かつ容易に行うことができる。
【0035】
さらに、例えば無線送信機100の製造メーカーやメンテナンス事業者などにおいて作成されたエッジ周波数の設定内容などを示すデータを、インターネットなどの電気通信ネットワークを介して無線送信機100の外部に設置された情報処理装置(サーバ等を含むコンピュータ)から配信し、入力部130に含まれるネットワークインタフェースなどを経て受信されたデータが、記憶部150にて読込可能に記憶されるようにしてもよい。これにより、個々の無線送信機100が備える記憶部150における記憶容量の増大を抑制しつつ、無線送信機100の様々な使用状況に適したエッジ周波数の設定などを、柔軟かつ容易に行うことができる。
【0036】
なお、無線送信機100の使用状況を特定するための情報や指示は、ユーザーが入力部130の操作により入力するものに限定されない。例えば、無線送信機100が使用される地域(例えば国など)は、制御部110に内蔵又は外付けされたGPS(Global Positioning System)装置や電子コンパス回路といった位置情報取得装置を使用すること、あるいは、無線通信部120が所定の無線基地局との間で無線通信を行うことなどにより、特定されるようにしてもよい。
【0037】
以下に、上記の周波数区画設定処理によるエッジ周波数などの具体的な設定内容の一例について説明する。この具体例では、無線送信機100がアマチュア無線用の送信機として使用されるものとする。日本では、こうしたアマチュア無線用の送信機に対応して、例えば図3(A)〜(D)に示すような1.9MHz帯(1,810kHz〜1,912.5kHz)、3.8MHz帯(3,702kHz〜3,805kHz)、7MHz帯(7,000kHz〜7,100kHz)、14MHz帯(14,000kHz〜14,350kHz)等を含んだ周波数帯域(使用区分)が使用可能とされている。無線送信機100では、例えば無線通信部120の動作周波数帯域として、これらの周波数帯域が予め設定されていればよい。
【0038】
ここで、各周波数帯域内では、電波形式の種類によって使用できる帯域が制限されることがある。例えば、7MHz帯であれば、7,000kHz〜7,030kHzではCWモード(電信)のみの送信が認められる一方、電話モードでの送信は認められていない。また、一定の周波数帯域内に送信が禁止される帯域が散在することもある。例えば、1.9MHz帯であれば1,825kHz〜1,907.5kHzの範囲での送信が認められておらず、3.8MHz帯であれば3,716kHz〜3,745kHzの範囲及び3,770kHz〜3,791kHzの範囲での送信が認められていない。
【0039】
こうした制約に対応して、周波数区画設定処理部111が上記の周波数区画設定処理を実行することなどにより、例えば図4に示すような周波数区画管理テーブル200を構成するテーブルデータを作成して、エッジ周波数の設定などを行うようにすればよい。図4に示す周波数区画管理テーブル200では、予め設定された無線通信部120の動作周波数帯域と、無線信号の信号形式となる電波形式と、無線信号の送信を可能とする送信可能区画と、境界周波数となるエッジ周波数とが、対応付けられている。なお、周波数区画管理テーブル200において対応付けられる事項は、図4に示すものに限定されず、エッジ周波数などの設定を特定可能な任意の事項であればよい。例えば、送信可能区画の設定に代えて、送信禁止区画が設定されてもよい。また、送信可能区画や送信禁止区画の設定における上限周波数と下限周波数とをエッジ周波数に指定すれば、別個にエッジ周波数の項目を設ける必要はない。
【0040】
これにより、予め設定された無線通信部120の動作周波数帯域内において、新たに送信可能区画と送信禁止区画とを設けることができる。例えば、1.9MHz帯であれば、1,825kHzと1.907.5kHzとをエッジ周波数に指定し、1,810kHz〜1,825kHzの範囲及び1,907.5kHz〜1,912.5kHzの範囲を送信可能区画とし、1,825kHz〜1,907.5kHzの範囲を送信禁止区画とすればよい。ここで、送信可能区画や送信禁止区画の個数は、それぞれ任意(単一又は複数)に設定することができる。例えば、3.8MHz帯であれば、3,716kHz及び3,745kHz及び3,770kHz及び3,791kHzをエッジ周波数に指定し、3,702kHz〜3,716kHzの範囲及び3,745kHz〜3,770kHzの範囲及び3,791kHz〜3,805kHzの範囲を送信可能区画とし、3,716kHz〜3,745kHzの範囲及び3,770kHz〜3,791kHzの範囲を送信禁止区画とすればよい。また、電波形式に応じて異なる周波数区画を送信禁止区画とすることができる。例えば、7MHz帯であれば、7,000kHz〜7,030kHzの範囲をCWモードのみに対応した送信可能区画とする一方で電話モードでは送信禁止区画とし、7,030kHz〜7,100kHzの範囲をCWモード及び電話モードの双方に対応した送信可能区画とすればよい。
【0041】
なお、図4に示す周波数区画管理テーブル200のようなエッジ周波数の設定などを示すデータが、無線送信機100とは別個の情報処理装置によって作成されてもよいことは、前述したとおりである。また、図3に示したアマチュア無線の使用区分などのように、電波法規や無線通信システムの仕様などにより一定程度までは固定的かつ統一的に規定される周波数区画の設定については、その設定内容を示すデータが、無線送信機100の製造メーカーやメンテナンス事業者などにおいて作成され、情報記録媒体に記録された状態で配布されたり、電気通信ネットワークを介して配信されたりしてもよいことも、前述したとおりである。
【0042】
また、例えば無線送信機100を使用するユーザーが有する資格などに応じて、無線通信部120で使用可能として予め設定された動作周波数帯域のうち、一定範囲の周波数帯域の全体を、送信禁止区画として設定することもできる。例えば、ユーザーが有するアマチュア無線技士資格の等級が「4級」である場合には、図3(D)に示すような14MHz帯での送信が認められていない。この場合であれば、14MHz帯について、14,100kHzと14,350kHzとをエッジ周波数に指定し、14MHz帯の全体を送信禁止区画とすればよい。
【0043】
さらに、例えば電波法規や無線通信システムの仕様などによる一定程度の固定的かつ統一的な規定とは異なる無線送信機100の使用状況に応じて、任意の周波数区分を設定することもできる。例えば、アマチュア無線技術の習熟度を競うコンテストでは、使用できる送信周波数を限定されることがある。具体的な一例として、7MHz帯において、使用できる送信周波数が7,040kHz〜7,080kHzの範囲に限定されるものとする。この場合には、7,040kHzと7,080kHzとをエッジ周波数に指定し、7,040kHz〜7,080kHzの範囲を送信可能区画とし、7,000kHz〜7,040kHzの範囲及び7,080kHz〜7,100kHzの範囲を送信禁止区画とすればよい。
【0044】
こうして設定された周波数区画に基づいて、無線送信機100では、送信周波数が変更されたときに、所定動作となる各種の動作を行うことができる。図5は、制御部110などによって実行される送信動作制御処理の一例を示すフローチャートである。この送信動作制御処理は、例えばユーザーが入力部130を操作して無線信号の送信開始を指示したことなどを契機として、送信動作制御部112などにより実行が開始されればよい。
【0045】
図5に示す送信動作制御処理において、制御部110が備える送信動作制御部112は、まず、無線信号を送信するために使用する電波形式を選択する(ステップS121)。このとき、送信動作制御部112は、例えば出力部140に含まれる画像表示装置に電波形式の選択画面を表示させ、その表示に応じたユーザーによる入力部130の操作に基づいて、予め選択可能に用意された複数種類の電波形式から、所望の電波形式を選択すればよい。なお、ユーザーによる入力部130の操作に基づいて電波形式を選択するものに限定されず、例えば記憶部150における記憶データを読み取ることにより、初期設定として指定された電波形式を選択してもよいし、前回の使用終了時に指定されていた電波形式を選択してもよい。
【0046】
ステップS121における電波形式の選択に続いて、送信周波数の初期設定を行う(ステップS122)。このとき、送信動作制御部112は、例えば出力部140に含まれる画像表示装置に送信周波数の設定画面を表示させ、その表示に応じたユーザーによる入力部130の操作に基づいて、無線通信部120により無線信号を送信する際の送信周波数(運用周波数)を設定すればよい。このときには、無線通信部120における動作周波数帯域のうちから、送信周波数が設定される周波数帯域を選択できるようにしてもよい。なお、ユーザーによる入力部130の操作に基づいて送信周波数を設定するものに限定されず、例えば記憶部150における記憶データを読み取ることにより、初期設定として指定された送信周波数としてもよいし、前回の使用終了時に指定された送信周波数としてもよい。また、ステップS122において送信周波数の初期設定を行ってから、ステップS121における電波形式の選択が行われるようにしてもよい。
【0047】
こうしたステップS121における電波形式の選択結果や、ステップS122における送信周波数の設定結果に基づいて、無線信号の送信を開始するための設定が行われる(ステップS123)。このとき、送信動作制御部112は、無線通信部120に対して各種の制御信号を出力することなどにより、無線通信部120による無線信号の送信を開始させるように設定を行えばよい。また、送信動作制御部112は、例えば電波形式の選択結果や送信周波数の設定結果に基づき、周波数区分管理テーブル200などを参照して、送信周波数が送信可能区画の範囲内であるか否かを判定してもよい。このとき、送信可能区画の範囲内であれば、無線通信部120による送信動作を開始させる一方、送信禁止区画の範囲内であれば、送信動作の開始を制限してもよい。そして、送信動作の開始を制限したときには、その旨を出力部150などにより報知してもよい。
【0048】
その後、制御部110では、例えば周波数変更判定処理部113により、無線信号の周波数変更があったか否かを判定する(ステップS124)。一例として、周波数変更判定処理部113は、ユーザーが入力部130に含まれる周波数設定ダイヤルなどを操作したか否かを判定し、その判定結果に応じて、周波数変更の指示があったか否かを特定すればよい。
【0049】
ステップS124にて周波数変更がある旨の判定がなされたときには(ステップS124;Yes)、その周波数変更がエッジ周波数を越えるものであるか否かを判定する(ステップS125)。このとき、例えば周波数変更判定処理部113は、変更前と変更後の送信周波数を特定する。そして、例えば図4に示すような周波数区画管理テーブル200を参照することなどにより、動作周波数帯域や電波形式に応じて設定されたエッジ周波数のうちに、送信周波数が跨いで変更されたものがあるか否かを判定すればよい。すなわち、変更前の送信周波数が特定のエッジ周波数より高域側となる一方で変更後の送信周波数が当該エッジ周波数より低域側となる場合や、変更前の送信周波数が特定のエッジ周波数より低域側となる一方で変更後の送信周波数が当該エッジ周波数より高域側となる場合には、そのエッジ周波数を跨いで送信周波数が変更されたことから、エッジ周波数を越える周波数変更であると判定する。
【0050】
ステップS125にてエッジ周波数を越える周波数変更である旨の判定がなされたときには(ステップS125;Yes)、その周波数変更が送信可能区画への変更であるか否かを判定する(ステップS126)。このとき、例えば周波数変更判定処理部113は、例えば図4に示すような周波数区画管理テーブル200を参照することなどにより、変更後の送信周波数が動作周波数帯域や電波形式に応じて設定された送信可能区画の範囲内であるか否かを判定すればよい。
【0051】
ステップS126にて送信可能区画への変更である旨の判定がなされたときには(ステップS126;Yes)、例えば変更判定時動作制御部114により、予め定められた第1報知態様での報知動作を行うように設定する(ステップS127)。ここで、第1報知態様での報知動作を制御するための報知動作制御パターンとして、送信禁止区画から送信可能区画へと移行する周波数変更が行われた場合に対応した第1報知動作制御パターンを構成するデータが、記憶部150などに予め記憶されていればよい。この場合、変更判定時動作制御部114は、記憶部150から読み出した第1報知動作制御パターンに従った制御信号を出力部140に対して出力することにより、第1報知態様での報知動作を実行させる。
【0052】
ステップS127における設定に続き、送信禁止区画から送信可能区画へと移行する周波数変更が行われたことに対応して、無線信号の送信を許可する設定を行う(ステップS128)。例えば、ステップS128の処理では、変更判定時動作制御部114が無線通信部120に対して送信許可を示す制御信号を出力することにより、無線通信部120による無線信号の送信を開始(又は再開)させるように制御すればよい。なお、変更判定時動作制御部114は、送信動作制御部112に対して送信可能区画となった旨の通知を送り、送信動作制御部112から無線通信部120に対して送信許可を示す制御信号が伝送されるようにしてもよい。
【0053】
ステップS126にて送信禁止区画への変更であって送信可能区画への変更ではない旨の判定がなされたときには(ステップS126;No)、例えば変更判定時動作制御部114により、第1報知態様とは異なる報知態様として予め定められた第2報知態様での報知動作を行うように設定する(ステップS129)。ここで、第2報知態様での報知動作を制御するための報知動作制御パターンとして、送信可能区画から送信禁止区画へと移行する周波数変更が行われた場合に対応した第2報知動作制御パターンを構成するデータが、記憶部150などに予め記憶されていればよい。この場合、変更判定時動作制御部114は、記憶部150から読み出した第2報知動作制御パターンに従った制御信号を出力部140に対して出力することにより、第2報知態様での報知動作を実行させる。
【0054】
ステップS129における設定に続き、送信可能区画から送信禁止区画へと移行する周波数変更が行われたことに対応して、無線信号の送信を禁止する設定を行う(ステップS130)。例えば、ステップS130の処理では、変更判定時動作制御部114が無線通信部120に対して送信禁止を示す制御信号を出力することにより、無線通信部120による無線信号の送信を禁止(停止)させるように制御すればよい。なお、変更判定時動作制御部114は、送信動作制御部112に対して送信禁止区画となった旨の通知を送り、送信動作制御部112から無線通信部120に対して送信禁止を示す制御信号が伝送されるようにしてもよい。
【0055】
ステップS124にて周波数変更がない旨の判定がなされたときや(ステップS124;No)、ステップS125にてエッジ周波数を越える周波数変更ではない旨の判定がなされたとき(ステップS125;No)、あるいは、ステップS128又はステップS130の処理が実行された後には、例えばユーザーによる入力部130の操作などに基づいて、無線信号の送信動作を終了するか否かを判定する(ステップS131)。このとき、送信動作を終了する旨の判定がなされれば(ステップS131;Yes)、例えば送信動作制御部112から無線通信部120に対して送信終了を示す制御信号を出力することなどにより、無線信号の送信動作を終了させる設定を行ってから(ステップS132)、送信動作制御処理を終了する。これに対して、送信動作を終了しない旨の判定がなされたときには(ステップS131;No)、ステップS124の処理に戻り、さらに周波数変更があったか否かの判定を行うようにすればよい。また、動作周波数帯域や電波形式の変更が指示された場合には、その指示に応じて送信動作制御部112が無線通信部120に対して各種の制御信号を出力することなどにより、動作周波数帯域や電波形式を変更するための制御が実行されればよい。
【0056】
図6は、第1報知態様や第2報知態様での報知動作について、具体的な動作例を示している。送信禁止区画から送信可能区画へと移行する周波数変更に対応した第1報知態様での報知動作としては、図6(A1)〜(A3)に示すような各種の報知動作の一部又は全部が実行されればよい。その一方で、送信可能区画から送信禁止区画へと移行する周波数変更に対応した第2報知態様での報知動作としては、図6(B1)〜(B3)に示すような各種の報知動作の一部又は全部が実行されればよい。
【0057】
ここで、図6(A1)及び(B1)は、出力部140に含まれるスピーカ141による音声出力動作が報知動作として実行される場合の具体例を示している。そして、第1報知態様では、例えば図6(A1)に示すような「ピンポーン」という音声をスピーカ141から出力させる。これに対して、第2報知態様では、例えば図6(B1)に示すような「ブッブー」という音声をスピーカ141から出力させる。第1報知態様と第2報知態様とでは、例えばスピーカ141から出力される音程(音声周波数)や音声内容、メロディーなどを異ならせることにより、送信可能区画となったか送信禁止区画となったかをユーザーが識別できるようにすればよい。
【0058】
図6(A2)及び(B2)は、出力部140に含まれるLED142の点灯(又は消灯)動作が報知動作として実行される場合の具体例を示している。そして、第1報知態様では、例えば図6(A2)に示すような緑色でLED142を点灯させる。これに対して、第2報知態様では、例えば図6(B2)に示すような赤色でLED142を点灯させる。または、第2報知態様では、LED142を消灯させてもよい。第1報知態様と第2報知態様とでは、例えばLED142の点灯/消灯を切り替えること、あるいは、LED142を点灯する場合の発光色などを異ならせることにより、送信可能区画となったか送信禁止区画となったかをユーザーが識別できるようにすればよい。
【0059】
図6(A3)及び(B3)は、出力部140に含まれる画像表示装置143による画面表示が報知動作として実行される場合の具体例を示している。そして、第1報知態様では、例えば図6(A3)に示すような「送信可能となりました」の文字を表示させる。これに対して、第2報知態様では、例えば図6(B3)に示すような「送信禁止です」の文字を表示させる。なお、表示させる文字は、第1報知態様と第2報知態様とで異なるものであれば任意の文字でよい。また、文字を表示する動作に限定されず、例えば所定のキャラクタ画像や背景画像、動画像を表示する動作、表示色を変更する動作、点滅表示と固定表示とを切り替える動作といった、任意の表示動作により、第1報知態様や第2報知態様での報知動作が行われるものであればよい。第1報知態様と第2報知態様とでは、画像表示装置143における表示動作内容を異ならせることにより、送信可能区画となったか送信禁止区画となったかをユーザーが識別できるようにすればよい。
【0060】
以上説明したように、この発明によれば、無線通信部120に対応して予め設定された動作周波数帯域内を複数の周波数区画に分割するための境界周波数となるエッジ周波数を設定し、各周波数区画を送信可能区画と送信禁止区画のいずれかに設定する。このときには、無線信号の信号形式となる電波形式の種類に応じて、異なるエッジ周波数を設定することができる。そして、エッジ周波数を跨ぐ周波数変更があったか否かを判定し、このような周波数変更があったときには、例えば送信可能区画へと変更されたことに対応した第1報知態様での報知動作や、送信禁止区画へと変更されたことに対応した第2報知態様での報知動作、あるいは、送信禁止区画へと変更されたことに対応した無線信号の送信制限(停止)といった、所定動作を実行する。これにより、動作周波数帯域内で柔軟にエッジ周波数(境界周波数)を設定可能とし、そのエッジ周波数を跨ぐ送信周波数の変更に対して適切な動作を実現することができる。
【0061】
この発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、様々な変形及び応用が可能である。
【0062】
上記実施の形態における無線送信機100は、無線信号を受信する無線受信機と一体的に構成されて、無線信号の送受信が可能な無線通信装置に含まれるものとしてもよい。この場合には、運用周波数が送信周波数だけでなく受信周波数としても使用され、その運用周波数にて無線信号の送信又は受信を行うことができればよい。そして、周波数変更判定処理部113は、例えば運用周波数が変更されたか否かを判定することや、運用周波数が変更された場合に境界周波数となるエッジ周波数を跨いで変更されたか否かを判定することといった、運用周波数の変更に関する各種の判定をするための処理を実行するものとして機能すればよい。また、変更判定時動作制御部114は、運用周波数がエッジ周波数を跨いで変更された場合に、上記実施の形態と同様にして、周波数変更動作の検出を報知させることなどができればよい。ただし、無線信号を受信する場合には、運用周波数が送信可能区画から送信禁止区画へと変更されたときでも、無線信号の受信を制限(停止)させずに、送信禁止区間にて伝送された無線信号を受信できるようにしてもよい。これにより、例えばアマチュア無線技術のコンテストなどにおいて、運用周波数が送信可能区間から送信禁止区間へと変更されたことを容易に認識できるように報知しつつ、その送信禁止区間にて伝送された無線信号を受信して無線技術の習熟度審査に用いることなどが可能になる。こうした受信動作を行うための構成は、例えば無線信号の受信のみが可能な無線受信機にも適用することができる。
【0063】
すなわち、この発明は、予め設定された動作周波数帯域内にて運用周波数を変更して無線信号を送信又は受信することの少なくともいずれか一方を実行可能な無線通信装置に関して、その動作周波数帯域内を複数の周波数区画に分割するための境界周波数となるエッジ周波数を設定し、運用周波数がエッジ周波数を跨いで変更されたか否かを判定し、エッジ周波数を跨いで変更された旨の判定がなされたときに、所定動作を実行することができるものであればよい。
【0064】
上記実施の形態では、制御部110や入力部130、出力部140、記憶部150が、無線通信部120やアンテナ121とともに単一の無線送信機100を構成するものとして説明した。これに対して、制御部110や入力部130、出力部140、記憶部150などを備えたコンピュータといった情報処理装置を、無線通信部120やアンテナ121とは別体として構成するようにしてもよい。この場合、例えば情報処理装置としてのコンピュータに、上記実施の形態における制御部110などによる各機能構成を実現させる動作プログラムをインストールすることで、汎用のコンピュータに上記実施の形態での各処理を実行させることができる。すなわち、上記実施の形態で制御部110が実行した動作プログラムと同様の動作プログラムを、既存のコンピュータにより実行させることで、この発明における無線送信機100としての機能を実現させてもよい。
【0065】
このような動作プログラムを提供する形態は任意であり、例えば所定の情報記録媒体に格納して提供されてもよいし、インターネットなどの電気通信ネットワークを介して配信されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施の形態に係る無線送信機の構成例を示す図である。
【図2】周波数区画設定処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】アマチュア無線用の送信機に対応して使用可能な周波数帯域を例示する図である。
【図4】図3の周波数帯域に対応する周波数区画管理テーブルの構成例を示す図である。
【図5】送信動作制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】第1報知態様や第2報知態様での報知動作における具体例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
100 無線送信機
110 制御部
111 周波数区画設定処理部
112 送信動作制御部
113 周波数変更判定処理部
114 変更判定時動作制御部
120 無線通信部
121 アンテナ
130 入力部
140 出力部
141 スピーカ
142 LED
143 画像表示装置
150 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された動作周波数帯域内にて運用周波数を変更して無線信号を送信又は受信することの少なくともいずれか一方を実行可能な無線通信手段と、
前記動作周波数帯域内を複数の周波数区画に分割するための境界周波数を設定する境界周波数設定手段と、
前記運用周波数が、前記境界周波数設定手段によって設定された前記境界周波数を跨いで変更されたか否かを判定する周波数変更判定手段と、
前記周波数変更判定手段によって前記境界周波数を跨いで変更された旨の判定がなされたときに、所定動作を実行する変更判定時動作手段とを備える、
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記無線信号の信号形式を複数種類のいずれかに設定する信号形式設定手段を備え、
前記境界周波数設定手段は、前記信号形式設定手段によって設定された信号形式の種類に応じて異なる境界周波数を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記境界周波数設定手段は、前記複数の周波数区画として、前記無線信号の送信を禁止する送信禁止区画と、前記無線信号の送信を可能とする送信可能区画とに分割し、
前記周波数変更判定手段は、前記運用周波数が前記送信禁止区画から前記送信可能区画へと変更される第1周波数変更動作、及び、前記運用周波数が前記送信可能区画から前記送信禁止区画へと変更される第2周波数変更動作のうち、いずれの周波数変更動作が実行されたかを特定可能に判定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記変更判定時動作手段は、前記所定動作として、前記周波数変更判定手段によって前記第1周波数変更動作が実行された旨の判定がなされたときに、前記第2周波数変更動作が実行された旨の判定がなされたときとは異なる報知態様で、前記周波数変更動作の検出を報知する、
ことを特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記変更判定時動作手段は、前記所定動作として、前記周波数変更判定手段によって前記第2周波数変更動作が実行された旨の判定がなされたときに、前記無線通信手段による無線信号の送信を制限する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
予め設定された動作周波数帯域内にて運用周波数を変更して無線信号を送信又は受信することの少なくともいずれか一方を実行可能な無線通信装置における運用周波数の変更動作方法であって、
前記動作周波数帯域内を複数の周波数区画に分割するための境界周波数を設定し、
前記運用周波数が、前記境界周波数を跨いで変更されたか否かを判定し、
前記境界周波数を跨いで変更された旨の判定がなされたときに、所定動作を実行する、
ことを特徴とする運用周波数の変更動作方法。
【請求項7】
予め設定された動作周波数帯域内にて運用周波数を変更して無線信号を送信又は受信することの少なくともいずれか一方を実行可能な無線通信装置を制御するコンピュータに、
前記動作周波数帯域内を複数の周波数区画に分割するための境界周波数を設定する境界周波数設定機能と、
前記運用周波数が、前記境界周波数設定機能により設定された境界周波数を跨いで変更されたか否かを判定する周波数変更判定機能と、
前記周波数変更判定機能により前記境界周波数を跨いで変更された旨の判定がなされたときに、所定動作を実行する変更判定時動作機能、
を実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−157817(P2010−157817A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333803(P2008−333803)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】