説明

無線通信装置及び無線通信方法

【課題】複数のアンテナを用いて通信を行う際の送信性能を向上することが可能な技術を提供する。
【解決手段】送信ウェイト取得部124は、通信部11が有する複数のアンテナ110aでの送信指向性に関してヌルステアリングを行うための複数の送信ウェイトを求める。干渉強度取得部160は、通信部11で受信される受信信号に含まれる干渉波成分の強度を求める。送信ウェイト調整部122は、干渉強度取得部160で取得される干渉波成分の強度が小さいほど、複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いた通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信に関して様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、複数のアンテナを用いて通信する無線通信装置について、当該複数のアンテナに関する送信指向性を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3956739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、無線通信装置においては、その送信性能を向上することが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、複数のアンテナを用いて通信する際の送信性能を向上することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る無線通信装置は、複数のアンテナを用いて通信を行う通信部と、前記複数のアンテナでの送信指向性に関してヌルステアリングを行うための複数の送信ウェイトを求める送信ウェイト取得部と、前記複数の送信ウェイトを、前記複数のアンテナからそれぞれ送信される複数の送信信号にそれぞれ設定する送信ウェイト設定部と、前記通信部で受信される受信信号に含まれる干渉波成分の強度を求める干渉強度取得部と、前記干渉波成分の強度が小さいほど、前記複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする送信ウェイト調整部とを備える。
【0007】
また、本発明に係る無線通信装置は、複数のアンテナを用いて通信を行う通信部と、前記複数のアンテナでの送信指向性に関してヌルステアリングを行うための複数の送信ウェイトを求める送信ウェイト取得部と、前記複数の送信ウェイトを、前記複数のアンテナからそれぞれ送信される複数の送信信号にそれぞれ設定する送信ウェイト設定部と、前記通信部で受信される受信信号に含まれる干渉波成分の強度を求める干渉強度取得部と、前記干渉波成分の強度がしきい値よりも小さい場合には、前記複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくし、前記干渉波成分の強度が前記しきい値よりも大きい場合には、前記複数の送信ウェイトを調整しない送信ウェイト調整部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る無線通信装置の一態様では、前記複数のアンテナは、N個(N≧2)のアンテナであって、前記送信ウェイト調整部は、前記複数の送信ウェイトにおいて、振幅が1番目に大きい送信ウェイトからM番目(1≦M<N)に大きい送信ウェイトの振幅は調整せずに、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする。
【0009】
また、本発明に係る無線通信装置の一態様では、前記送信ウェイト調整部は、前記複数の送信ウェイトにおいて、振幅が1番目に大きい送信ウェイトからM番目に大きい送信ウェイトの振幅は調整せずに、振幅がM番目に大きい送信ウェイトに対して他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅が近づくように当該他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする。
【0010】
また、本発明に係る無線通信装置の一態様では、前記複数のアンテナは、N個(N≧2)のアンテナであって、前記N個のアンテナでそれぞれ受信されるN個の受信信号について受信レベルを求める受信レベル取得部がさらに設けられ、前記送信ウェイト調整部は、前記N個の受信信号において、前記受信レベルが1番目に大きい受信信号からM番目(1≦M<N)に大きい受信信号がそれぞれ受信されるM個のアンテナから送信される送信信号にそれぞれ設定されるM個の送信ウェイトは調整せずに、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする。
【0011】
また、本発明に係る無線通信装置の一態様では、前記送信ウェイト調整部は、送信ウェイトの振幅を大きくするとともに、振幅を大きくする前の当該送信ウェイトと、振幅を大きくした後の当該送信ウェイトとの間の相関が高くなるように、振幅を大きくした後の当該送信ウェイトの位相を調整する。
【0012】
また、本発明に係る無線通信方法は、(a)複数のアンテナを用いて通信する工程と、(b)前記複数のアンテナでの送信指向性に関してヌルステアリングを行うための複数の送信ウェイトを求める工程と、(c)前記複数の送信ウェイトを、前記工程(a)において前記複数のアンテナからそれぞれ送信される複数の送信信号にそれぞれ設定する工程と、(d)前記工程(a)で受信される受信信号に含まれる干渉波成分の強度を求める工程と、(e)前記干渉波成分の強度が小さいほど、前記複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする工程とを備える。
【0013】
また、本発明に係る無線通信方法は、(a)複数のアンテナを用いて通信する工程と、(b)前記複数のアンテナでの送信指向性に関してヌルステアリングを行うための複数の送信ウェイトを求める工程と、(c)前記複数の送信ウェイトを、前記工程(a)において前記複数のアンテナからそれぞれ送信される複数の送信信号にそれぞれ設定する工程と、(d)前記工程(a)で受信される受信信号に含まれる干渉波成分の強度を求める工程と、(e)前記干渉波成分の強度がしきい値よりも小さい場合には、前記複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくし、前記干渉波成分の強度が前記しきい値よりも大きい場合には、前記複数の送信ウェイトを調整しない工程とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、送信性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】基地局の構成を示す図である。
【図3】基地局の送信指向性の一例を示す図である。
【図4】CIRと送信ウェイトの調整係数との関係を示す図である。
【図5】基準係数取得テーブルの一例を示す図である。
【図6】基地局の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本実施の形態に係る無線通信装置を備える無線通信システム100の構成を示す図である。本実施の形態に係る無線通信装置は、例えば、通信端末と通信を行う基地局である。以後、本実施の形態に係る無線通信装置を「基地局1」と呼ぶ。
【0017】
図1に示されるように、無線通信システム100は複数の基地局1を備えており、各基地局1は複数の通信端末2と通信を行う。各基地局1のサービスエリア10は、周辺基地局1のサービスエリア10と部分的に重なっている。複数の基地局1は、図示しないネットワークに接続されており、当該ネットワークを通じて互いに通信可能となっている。また、ネットワークには図示しないサーバ装置が接続されており、各基地局1は、ネットワークを通じてサーバ装置と通信可能となっている。
【0018】
図2は各基地局1の構成を示す図である。基地局1は、送受信アンテナとしてアレイアンテナを有し、アダプティブアレイアンテナ方式を用いてアレイアンテナの指向性を制御することが可能である。
【0019】
図2に示されるように、基地局1は、通信部11と、当該通信部11を制御する制御部12とを備えている。通信部11は、複数のアンテナ110aから成るアレイアンテナ110を有している。図2の例では、アレイアンテナ110は4つのアンテナ110aで構成されている。以後、この4つのアンテナ110aを、第1アンテナ110a〜第4アンテナ110aとそれぞれ呼ぶことがある。アレイアンテナ110を構成するアンテナ110aの数は4つに限られず、2つ以上であれば良い。
【0020】
通信部11は、アレイアンテナ110で受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。
【0021】
また、通信部11は、制御部12で生成されるベースバンドの複数の送信信号のそれぞれに対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の複数の送信信号を生成する。そして、通信部11は、生成した搬送帯域の複数の送信信号を、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aにそれぞれ入力する。これにより、各アンテナ110aから送信信号が無線送信される。
【0022】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)及びメモリなどで構成されている。制御部12では、CPU及びDSPがメモリ内の各種プログラムを実行することによって、送信ウェイト処理部120、受信ウェイト処理部130、送信信号生成部140、受信データ取得部150及び干渉強度取得部160などの複数の機能ブロックが形成される。
【0023】
送信信号生成部140は、基地局1の通信相手装置である、通信対象の通信端末2(以後、「通信対象端末2」と呼ぶ)に送信する送信データを生成する。そして、送信信号生成部140は、生成した送信データを含むベースバンドの送信信号を生成する。この送信信号は、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aの数だけ生成される。
【0024】
送信ウェイト処理部120は、送信ウェイト設定部121、送信ウェイト調整部122、送信ウェイト正規化部123及び送信ウェイト取得部124を備えている。
【0025】
送信ウェイト取得部124は、受信ウェイト処理部130で算出された複数の受信ウェイトに基づいて、アレイアンテナ110での送信指向性を制御するための複数の送信ウェイトを算出する。
【0026】
送信ウェイト正規化部123は、送信ウェイト取得部124で算出された複数の送信ウェイトを正規化する。送信ウェイト調整部122は、送信ウェイト正規化部123で正規化された複数の送信ウェイトを調整する。送信ウェイト正規化部123及び送信ウェイト調整部122の動作については後で詳細に説明する。
【0027】
送信ウェイト設定部121は、送信信号生成部140で生成された複数の送信信号に対して、送信ウェイト調整部122で調整された複数の送信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、送信ウェイト設定部121は、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号を通信部11に出力する。
【0028】
受信ウェイト処理部130は、アレイアンテナ110での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトを算出する。受信ウェイト処理部130は、通信部11から入力される複数の受信信号に対して、算出した複数の受信ウェイトをそれぞれ設定する。受信ウェイト処理部130は、複数の受信ウェイトがそれぞれ設定された複数の受信信号を合成して新たな受信信号を生成する。
【0029】
受信データ取得部150は、受信ウェイト処理部130で生成された新たな受信信号に対して等化処理及び復調処理等を行って、当該受信信号に含まれる制御データ及びユーザデータを取得する。
【0030】
本実施の形態に係る基地局1は、通信部11、送信ウェイト処理部120及び受信ウェイト処理部130の働きによって、アレイアンテナ110の指向性を適応的に制御しながら通信端末2と通信を行う。基地局1は、通信端末2と通信する際に、アレイアンテナ110の受信指向性及び送信指向性のそれぞれを制御する。具体的には、受信ウェイト処理部130が、受信信号に乗算する受信ウェイトを調整することより、アレイアンテナ110での受信指向性を制御する。また、送信ウェイト処理部120が、送信信号に乗算する送信ウェイトを調整することより、アレイアンテナ110での送信指向性を制御する。送信ウェイトは受信ウェイトから求めることができ、受信ウェイトは通信端末2から出力されるパイロット信号などの既知信号に基づいて求めることができる。基地局1では、受信ウェイト処理部130及び送信ウェイト取得部124によって、通信部11で受信される既知信号に基づいて複数の送信ウェイトを求める算出部が構成される。
【0031】
また、本実施の形態に係る基地局1は、通信対象端末2からの信号を受信する際のアレイアンテナ110の受信指向性の制御(以後、「アレイ受信制御」と呼ぶことがある)に関して、ビームフォーミング及びヌルステアリングの両方を同時に行う。また、基地局1は、通信対象端末2に対して信号を送信する際のアレイアンテナ110の送信指向性の制御(以後、「アレイ送信制御」と呼ぶことがある)に関して、ビームフォーミング及びヌルステアリングの両方を同時に行う。受信ウェイトを求める手法として、SMI(Sample Matrix Inversion)やLMS(Least Mean Square)などの最小二乗誤差法(MMSE:Minimum Mean Square Error)が知られているが、この最小二乗誤差法を用いて受信ウェイトを算出することによって、受信時にヌルステアリング及びビームフォーミングの両方を同時に行うことができる。また、この最小二乗誤差法を用いて求められた受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを算出することによって、送信時にヌルステアリング及びビームフォーミングの両方を同時に行うことができる。
【0032】
なお、本実施の形態に係る送信ウェイト取得部124は、受信ウェイト処理部130で求められた受信ウェイトをキャリブレーション情報に基づいて補正し、補正後の受信ウェイトを送信ウェイトとしている。キャリブレーション情報は、基地局1での送信系回路と受信系回路の特性の相違に基づいて生成される情報である。送信ウェイト取得部124は、受信ウェイト処理部130で求められた受信ウェイトをそのまま送信ウェイトとして採用することによって、送信ウェイトを取得することが可能である。しかしながら、送信系回路と受信系回路の特性には相違(例えば、送信系回路と受信系回路の増幅部の特性の相違)があるため、本実施の形態では、精度の良い送信ウェイトを取得するために、送信ウェイト取得部124は、キャリブレーション情報を使用して、その相違を吸収するように受信ウェイトを補正し、補正後の受信ウェイトを送信ウェイトとしている。
【0033】
干渉強度取得部160は、通信部11で受信される通信対象端末2からの受信信号に含まれる干渉波成分の強度(以後、「干渉強度」と呼ぶ)を求める。本実施の形態では、例えば、通信対象端末2からの受信信号に含まれる所望波成分の強度に対する、当該受信信号に含まれる干渉波成分の相対的な強度を求める。具体的には、通信対象端末2からの受信信号に含まれる所望波成分及び干渉波成分の信号電力比を示すCIR(Carrier-to-Interference Ratio)を求める。CIRについては、その値が小さいほど、所望波成分の強度に対する干渉波成分の強度が大きいことを意味している。以下に、CIRの算出方法の一例について説明する。
【0034】
干渉強度取得部160は、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aでそれぞれ受信される、通信対象端末2からの複数の既知信号(既知の複素信号)に基づいてCIRを求める。干渉強度取得部160は、通信部11から出力される、複数のアンテナ110aでそれぞれ受信された複数の既知信号のそれぞれについて、当該既知信号と参照信号との相関値を、当該参照信号を時間方向に少しずつずらしながら算出し、算出した相関値の最大値を特定する。ここで、参照信号とは、既知信号についての理想状態での信号(本来の状態での信号)である。次に、干渉強度取得部160は、複数のアンテナ110aにそれぞれ対応する、算出した複数の相関値の最大値の平均値を求める。そして、干渉強度取得部160は、求めた平均値を電力値に換算し、それによって得られた値をCIRとする。このようにして求められたCIR(干渉強度)は、送信ウェイト調整部122が送信ウェイトを調整する際に使用される。
【0035】
<送信ウェイトの正規化>
本実施の形態に係る通信部11では、複数のアンテナ110aにそれぞれ対応して複数の送信アンプ(図示せず)が設けられている。通信部11に入力される複数の送信信号は、この複数の送信アンプでそれぞれ増幅された後に、複数のアンテナ110aにそれぞれ入力される。基地局1では、通信部11の各送信アンプの性能や電波法によって、各アンテナ110aから送信される送信信号の送信電力が制限値(以後、「送信電力制限値」と呼ぶ)を越えないようにする必要がある。
【0036】
一方で、各アンテナ110aの送信電力を送信電力制限値よりも十分に小さくすると、基地局1全体での送信電力が小さくなることから、基地局1の送信性能が低下することになる。
【0037】
そこで、本実施の形態に係る送信ウェイト正規化部123は、複数のアンテナ110aのうち、送信電力が最大のアンテナ110aの送信電力が送信電力制限値と一致するように、送信ウェイト取得部124で算出された複数の送信ウェイトを正規化する。これにより、各アンテナ110aの送信電力を送信電力制限値以下に抑えつつ、基地局1全体の送信電力が低下することを抑制することができる。以下に、送信ウェイト正規化部123の動作について詳細に説明する。以下の説明では、例えば、振幅の二乗が“1”の送信ウェイトが設定された送信信号がアンテナ110aから送信される場合に、当該アンテナ110aの送信電力が送信電力制限値(例えば1W)に一致するものとする。この場合には、送信ウェイトの振幅の二乗(以後、「ウェイト電力」と呼ぶ)の制限値(以後、「ウェイト電力制限値」と呼ぶ)が“1”に設定されていると言える。
【0038】
送信ウェイト正規化部123は、送信ウェイト取得部124で算出された複数の送信ウェイトのそれぞれのウェイト電力を求める。次に、送信ウェイト正規化部123は、複数の送信ウェイトのうち、ウェイト電力が最大(振幅が最大)の送信ウェイトを特定する。以後、複数の送信ウェイトのうち、ウェイト電力が最大の送信ウェイト、言い換えれば振幅が最大の送信ウェイトを「最大送信ウェイト」と呼ぶ。
【0039】
次に、送信ウェイト正規化部123は、複数の送信ウェイトのそれぞれを、最大送信ウェイトの振幅(ウェイト電力の平方根)で除算する。これにより、最大送信ウェイトのウェイト電力がウェイト電力制限値“1”となるように、各送信ウェイトが正規化される。つまり、最大送信ウェイトが設定される送信信号を送信するアンテナ110a、つまり送信電力が最大のアンテナ110aの送信電力が送信電力制限値と一致するように、各送信ウェイトが正規化される。
【0040】
例えば、送信ウェイト取得部124で算出される4つの送信ウェイトW1〜W4が、W1=0.1+j0.6、W2=−0.1−j0.4、W3=0.3+j0.7、W4=1+j0.6とすると、それらのウェイト電力P1〜P4は、P1=0.37、P2=0.17、P3=0.58、P4=1.36となる。したがって、この場合には、送信ウェイトW4が、最大送信ウェイトとなり、送信ウェイトW4の振幅(ウェイト電力P4の平方根)は“1.17”となる。4つの送信ウェイトW1〜W4のそれぞれを“1.17”で除算して正規化すると、正規化後の4つの送信ウェイトW1〜W4である正規化送信ウェイトNW1〜NW4は、NW1=0.09+j0.51、NW2=−0.09−j0.34、W3=0.26+j0.6、W4=0.86+j0.51となる。正規化送信ウェイトNW1〜NW4のウェイト電力NP1〜NP4は、NP1=0.27、NP2=0.12、NP3=0.43、NP4=1となる。このようにして、最大送信ウェイトのウェイト電力がウェイト電力制限値“1”となるように、各送信ウェイトが正規化される。
【0041】
<干渉強度に基づく送信ウェイトの調整>
上述の説明から理解できるように、各アンテナ110aの送信電力は送信電力制限値まで上げることが可能である。したがって、基地局1の最大送信電力は、アレイアンテナ110が有するアンテナ110aの数と送信電力制限値とを掛け合わせた値となる。
【0042】
ここで、複数の送信ウェイトは、複数のアンテナ110aから成るアレイアンテナ110の送信指向性を制御するためのものであることから、複数の送信ウェイトの振幅(ウェイト電力)はどうしてもばらついてしまう。したがって、複数の送信ウェイトを上記のように正規化したとしても、すべてのアンテナ110aの送信電力を送信電力制限値に一致させることはできない。つまり、基地局1は最大送信電力で信号を送信することができず、基地局1はその送信能力を十分に発揮することができない。
【0043】
一方で、基地局1の送信電力を大きくするために、送信ウェイトの振幅(ウェイト電力値)を大きくすると、アレイアンテナ110の送信指向性が変化する可能性があり、適切なヌルステアリングを行うことができない可能性がある。つまり、アレイアンテナ110の送信指向性に関して、ヌルでの利得については、送信ウェイトの振幅を変化させると大きく変化して、適切なヌルステアリングを行うことができない可能性がある。
【0044】
図3は、各送信ウェイトを変化させた際にアレイアンテナ110の送信指向性がどのように変化するかを示す図である。図3では、横軸にはアレイアンテナ110の周囲の方向が角度で示されており、縦軸には横軸に示される方向(角度)での、所定の基準値に対するアレイアンテナ110の相対的な送信利得が示されている。
【0045】
また図3では、実線で示される送信指向性200は、送信ウェイト正規化部123で正規化された複数の送信ウェイトをそのまま複数の送信信号にそれぞれ設定した際の送信指向性を示している。波線で示される送信指向性210は、送信ウェイト正規化部123で正規化された複数の送信ウェイトを、それらの振幅を変化させた上で複数の送信信号にそれぞれ設定した際の送信指向性を示している。一点鎖線で示される送信指向性220は、送信ウェイト正規化部123で正規化された複数の送信ウェイトを、それらの位相を変化させた上で複数の送信信号にそれぞれ設定した際の送信指向性を示している。二点鎖線で示される送信指向性230は、送信ウェイト正規化部123で正規化された複数の送信ウェイトを、それらの振幅及び位相の両方を変化させた上で複数の送信信号にそれぞれ設定した際の送信指向性を示している。
【0046】
図3に示されるように、送信ウェイトを変化させると、アレイアンテナ110の送信指向性に関して、ビームでの利得よりもヌルでの利得の方が大きく変化して、ヌルでの利得が大きくなる。よって、送信ウェイトを変化させると、適切なヌルステアリングが困難となる。
【0047】
以上のように、基地局1の送信電力を大きくする点においては送信ウェイトの振幅を大きくすることが望ましいものの、ヌルステアリングを適切に行う点においては送信ウェイトの振幅を大きくすることは望ましくない。
【0048】
そこで、本実施の形態に係る送信ウェイト調整部122は、通信対象端末2からの受信信号での干渉強度が小さいほど、複数のアンテナ110aから当該通信対象端末2に送信する複数の送信信号に設定する複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする。これにより、通信対象端末2からの受信信号での干渉強度が大きい場合には、複数の送信ウェイトの値をできるだけ維持して送信時のヌルステアリングを適切に行うことができる。一方で、通信対象端末2からの受信信号での干渉強度が小さい場合には、送信時のヌルステアリングの効果が弱まる可能性があるものの、送信ウェイトの振幅を大きくして、基地局1の送信電力を大きくすることができる。
【0049】
ここで、基地局1において干渉波が到来する方向(以後、「干渉方向」と呼ぶ)では、当該基地局1に近いところに、周辺基地局1と通信する通信端末2などの、干渉源となっている他の通信装置(以後、「干渉源装置」と呼ぶことがある)が存在することになる。したがって、基地局1が干渉方向に信号を送信すると、干渉源装置に干渉を与える可能性がある。
【0050】
そして、通信対象端末2からの受信信号での干渉強度が大きい場合には、基地局1に対して干渉源装置が非常に近い場所に存在する可能性が高いことから、当該干渉強度が大きい場合に、上述のように、複数の送信ウェイトの値を維持して、通信対象端末2への送信時にヌルステアリングの効果を十分に発揮させることによって、干渉源装置に干渉を与えることを確実に防止することができる。
【0051】
これに対して、通信対象端末2からの受信信号での干渉強度が小さい場合には、基地局1に対して干渉源装置はそれほど近い場所には存在していない可能性が高いことから、当該干渉強度が小さい場合に、上述のように、基地局1の送信電力を大きくするために送信ウェイトの振幅を大きくし、通信対象端末2への送信時にヌルステアリングの効果が弱まったとしても、干渉源装置に干渉を与える可能性は低いと言える。
【0052】
以上より、本実施の形態のように、通信対象端末2からの受信信号での干渉強度が小さいほど、複数のアンテナ110aから当該通信対象端末2に送信する複数の送信信号に設定する複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくすることによって、基地局1では、周囲に干渉を与えることを抑制しつつ、その送信電力を大きくすることができる。よって、基地局1の送信性能が向上する。以下に送信ウェイト調整部122での送信ウェイトの調整方法の具体例について説明する。
【0053】
本実施の形態では、送信ウェイト正規化部123で得られた複数の正規化送信ウェイトのうち、例えば、振幅が2番目に大きい正規化送信ウェイトが、振幅を調整する対象の送信ウェイトとなっている。以後、振幅を調整する対象の送信ウェイトを「調整対象ウェイト」と呼ぶことがある。送信ウェイト調整部122は、送信ウェイト正規化部123で得られた複数の正規化送信ウェイトのうちの振幅が2番目に大きい正規化送信ウェイトの振幅を、干渉強度取得部160で求められる干渉強度が小さいほど、つまりCIRが大きいほど大きくする。
【0054】
また、本実施の形態では、干渉強度取得部160で求められるCIRがとり得る範囲が例えば4つの段階(4つの範囲)に分けてられている。この4つの段階をそれぞれ段階0〜3と呼ぶ。CIRについては段階0〜3の順で大きくなっている。つまり、段階0〜3の順で干渉強度が小さくなっている。
【0055】
そして、本実施の形態では、送信ウェイト調整部122は、干渉強度取得部160で求められたCIRが段階0に属する場合(干渉強度が大きい場合)には、調整対象ウェイト(振幅が2番目に大きい正規化送信ウェイト)の振幅を調整せずに、当該CIRが段階1に属する場合(干渉強度がやや大きい場合)、段階2に属する場合(干渉強度がやや小さい場合)、段階3に属する場合(干渉強度が小さい場合)には、調整対象ウェイトの振幅を調整する。言い換えれば、送信ウェイト調整部122は、干渉強度取得部160で求められた干渉強度がしきい値よりも大きい場合には、振幅が2番目に大きい正規化送信ウェイトの振幅を調整せずに、当該干渉強度が当該しきい値よりも小さい場合には、振幅が2番目に大きい正規化送信ウェイトの振幅を調整する。
【0056】
送信ウェイト調整部122は、干渉強度取得部160で求められたCIRが段階1に属する場合には、調整対象ウェイトに調整係数α1を掛け合わせて、その振幅を大きくする。また、送信ウェイト調整部122は、干渉強度取得部160で求められたCIRが段階2に属する場合には、調整対象ウェイトに調整係数α2を掛け合わせて、その振幅を大きくする。そして、送信ウェイト調整部122は、干渉強度取得部160で求められたCIRが段階3に属する場合には、調整対象ウェイトに調整係数α3を掛け合わせて、その振幅を大きくする。調整係数α1〜α3は、この順で大きくなっており、送信ウェイト調整部122によって算出される。図4は、CIRの段階1〜3と調整係数α1〜α3との対応関係を示す図である。
【0057】
送信ウェイト調整部122は、複数の正規化送信ウェイトにおいて、振幅が2番目に大きい正規化送信ウェイトの振幅を調整すると、当該正規化送信ウェイトと、残りの正規化送信ウェイト(振幅が調整されていない正規化送信ウェイト)とを送信ウェイト設定部121に出力する。送信ウェイト設定部121は、送信ウェイト調整部122から受け取った複数の正規化送信ウェイト(振幅が調整された正規化送信ウェイトを含む)のそれぞれを、当該正規化送信ウェイトに対応するアンテナ110aから送信される送信信号に設定する。
【0058】
次に調整係数α1〜α3の求め方について説明する。送信ウェイト調整部122は、複数の正規化送信ウェイトにおいて、振幅が2番目の正規化送信ウェイトに対して係数αを掛け合わせると、当該正規化送信ウェイトの振幅が、最大振幅の正規化送信ウェイトの振幅に一致するような当該係数αを算出する。つまり、係数αは、複数の正規化送信ウェイトにおいて、最大振幅の正規化送信ウェイトの振幅を、振幅が2番目の正規化送信ウェイトの振幅で除算して得られる値である。この係数αが、調整係数α1〜α3を決定する際の基準となる。以後、係数αを「基準係数α」と呼ぶ。また、基準係数αから“1”を差し引いて得られる値を振幅増加率βと呼ぶ。つまり、β=α−1となる。
【0059】
送信ウェイト調整部122は、例えば、基準係数αを調整係数α3とする。したがって、干渉強度が小さい場合に、振幅が2番目の正規化送信ウェイトに対して調整係数α3が掛け合わされると、当該正規化送信ウェイトの振幅は、最大振幅の正規化送信ウェイトの振幅と一致するようになる。
【0060】
また、送信ウェイト調整部122は、例えば、振幅増加率βの75%に対して“1”を足し合わせて得られる値を調整係数α2とする。つまり、α2=1+β×0.75となる。
【0061】
そして、送信ウェイト調整部122は、例えば、振幅増加率βの50%に対して“1”を足し合わせて得られる値を調整係数α1とする。つまり、α1=1+β×0.5となる。
【0062】
例えば、最大振幅の正規化送信ウェイトの振幅が“1”であって、振幅が2番目の正規化送信ウェイトの振幅が“0.8”であるとすると、基準係数α=1/0.8=1.25となり、振幅増加率β=0.25となる。したがって、この場合には、α1=1.125、α2=1.1875、α3=1.25となる。
【0063】
このようにして求められる調整係数α1〜α3のいずれか一つを調整対象ウェイトに掛け合わせて当該調整対象ウェイトの振幅を大きくすることによって、調整対象ウェイトの振幅は、最大振幅の正規化送信ウェイトの振幅に近づくようになる。
【0064】
なお、調整係数α1〜α3については他の方法で決定しても良い。また、上記の例では、送信ウェイト調整部122は、送信ウェイト正規化部123で正規化された送信ウェイトを調整していたが、送信アンプの性能が十分高いなどの理由により送信ウェイトを正規化する必要がない場合には、送信ウェイト取得部124で算出された送信ウェイトを直接調整することになる。
【0065】
以上のように、本実施の形態に係る基地局1では、干渉強度が小さいほど、複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくしているため、干渉強度が大きい場合には複数の送信ウェイトの値を維持して適切なヌルステアリングを実行することができる一方で、ヌルステアリングの効果をあまり発揮する必要がない、干渉強度が小さい場合には、送信ウェイトの振幅を大きくして基地局1の送信電力を大きくすることができる。よって、基地局1では、周囲に干渉を与えることを抑制しつつ、その送信電力を大きくすることができる。その結果、基地局1の送信性能が向上する。
【0066】
本実施の形態に係る基地局1に関して別の見方をすれば、基地局1では、干渉強度が大きい場合には、複数の送信ウェイトの調整を行わずに、干渉強度が小さい場合には、送信ウェイトの振幅を大きくしている。したがって、干渉強度が大きい場合には適切なヌルステアリングを実行することができる一方で、ヌルステアリングの効果をあまり発揮する必要がない、干渉強度が小さい場合には、基地局1の送信電力を大きくすることができる。よって、基地局1では、周囲に干渉を与えることを抑制しつつ、その送信電力を大きくすることができる。その結果、基地局1の送信性能が向上する。
【0067】
また、本実施の形態では、複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする場合には、振幅が最大の送信ウェイトは調整していないため、複数の送信ウェイトのうちの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅の調整によってアレイアンテナ110の送信指向性が大きく変化することを防止することができる。その結果、干渉強度が小さい場合に、ヌルステアリングの効果をある程度発揮することができる。よって、周囲に干渉を与えることをさらに抑制することができる。
【0068】
また、本実施の形態では、複数の送信ウェイトにおいて、振幅が最大の送信ウェイトは調整せずに、当該送信ウェイトの振幅に対して、他の送信ウェイト(上記の例では、振幅が2番目に大きい送信ウェイト)の振幅が近づくように当該他の送信ウェイトの振幅を大きくしているため、送信ウェイトの振幅の調整によって送信指向性が変化することをさらに防止することができる。その結果、干渉強度が小さい場合に、ヌルステアリングの効果をさらに発揮することができる。よって、周囲に干渉を与えることをさらに抑制することができる。
【0069】
なお、上記の例では、複数の送信ウェイトのうち、振幅が2番目に大きい送信ウェイトを調整対象ウェイトとしたが、振幅の大きさが3番目以降の送信ウェイトを調整対象ウェイトとしても良い。振幅の大きさが3番目の送信ウェイトを調整対象ウェイトとする場合には、複数の送信ウェイトにおいて、最大振幅の送信ウェイトの振幅を、振幅が3番目の送信ウェイトの振幅で除算して得られる値を基準係数αとする。これにより、振幅が3番目の送信ウェイトを調整すると、当該送信ウェイトの振幅は、最大振幅の送信ウェイトに近づくようになる。振幅の大きさが4番目以降の送信ウェイトを調整対象ウェイトとする場合には、基準係数αを同様にして求める。
【0070】
また、上記の例では、複数の送信ウェイトのうちの一つを調整対象ウェイトとしたが、複数の送信ウェイトのうちの2つ以上の送信ウェイトを調整対象ウェイトとしても良い。例えば、振幅が2番目に大きい送信ウェイト(以後、「振幅2番目送信ウェイト」と呼ぶ)と、振幅が3番目に大きい送信ウェイト(「振幅3番目送信ウェイト」と呼ぶ)とを調整対象ウェイトにしても良い。この場合には、振幅2番目送信ウェイトを調整するための調整係数α1〜α3と、振幅3番目送信ウェイトを調整するための調整係数α1〜α3とが別々に求められることになる。
【0071】
また、上記の例では、送信ウェイトに対して3つの調整係数α1〜α3を掛け合わせることによって、送信ウェイトの振幅を3段階大きくすることができたが、送信ウェイトの振幅を2段階だけ大きくすることができるようにしても良いし、送信ウェイトの振幅を4段階以上大きくすることができるようにしても良い。
【0072】
また、上記の例では、干渉強度取得部160で求められたCIRが段階0に属する場合には調整対象ウェイトの振幅を調整しなかったが、この場合に、調整対象ウェイトに対して、調整係数α1よりも小さい調整係数(例えば、振幅増加率βの25%に対して“1”を足し合わせて得られる値)を掛け合わせることによって、調整対象ウェイトの振幅を少し大きくしても良い。
【0073】
<各種変形例>
<第1変形例>
上記の例では、通信対象端末2からの受信信号に含まれる所望波成分の強度に対する、当該受信信号に含まれる干渉波成分の相対的な強度を求めて、当該相対的な強度に基づいて送信ウェイトを調整していたが、通信対象端末2からの受信信号に含まれる干渉波成分の絶対的な強度を求めて、当該絶対的な強度に基づいて送信ウェイトを調整しても良い。例えば、通信対象端末2からの受信信号に含まれる干渉波成分の電力の絶対値(以後、「絶対干渉電力」と呼ぶ)を求めて、当該電力の絶対値に基づいて送信ウェイトを調整しても良い。
【0074】
通信対象端末2からの受信信号についての絶対干渉電力AIPは、当該受信信号についての受信電力RPとCIRとを用いて以下の式(1)で表すことができる。
【0075】
AIP=RP×(1/(CIR+1)) ・・・(1)
【0076】
ただし、式(1)中のAIP、RP及びCIRは、デシベルではなく真数で表されている。
【0077】
例えば、受信電力RPが60dBμV、CIRが30dBとすると、それぞれを真数で表現すると、1000000及び1000となる。したがって、この場合には、式(1)より、絶対干渉電力AIP≒1000となり、これをデシベルで表現すると、絶対干渉電力AIPは30dBμVとなる。
【0078】
なお、受信電力RPは、通信対象端末2からの既知信号に基づいて算出することが可能である。
【0079】
<第2変形例>
複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする場合には、最大送信ウェイト及び振幅2番目送信ウェイトを調整しなくしても良い。これにより、送信ウェイトの振幅の調整によって送信指向性が大きく変化することをさらに防止することができ、干渉強度が小さい場合に、ヌルステアリングの効果をさらに発揮することができる。
【0080】
また、複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする場合には、振幅が1番目に大きい送信ウェイト(最大送信ウェイト)から3番目に大きい送信ウェイト(振幅3番目送信ウェイト)までを調整しなくしても良い。
【0081】
また、アレイアンテナ110を構成するアンテナ110aの数が5つ以上の場合には、振幅が1番目に大きい送信ウェイトから4番目に大きい送信ウェイトまでを調整しなくても良い。
【0082】
以上の内容を一般化すると、アレイアンテナ110を構成するアンテナ110aの数をN個(N≧2)とすると、複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする場合には、振幅が1番目に大きい送信ウェイトからM番目(1≦M<N)に大きい送信ウェイトまでを調整しないようにする。これにより、送信ウェイトの振幅の調整によって送信指向性が大きく変化することを防止することができ、干渉強度が小さい場合に、ヌルステアリングの効果を発揮することができる。
【0083】
なお、M=1の場合には、最大送信ウェイトだけが調整されないことになる。
【0084】
また、上記の例では、複数の送信ウェイトにおいて、最大送信ウェイトの振幅は調整せずに、当該振幅に近づくように、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくしていたが、最大送信ウェイト及び振幅2番目送信ウェイトは調整せずに、振幅2番目送信ウェイトの振幅に近づくように、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくしても良い。これにより、送信ウェイトの振幅の調整によって送信指向性が変化することをさらに防止することができ、干渉強度が小さい場合に、ヌルステアリングの効果をさらに発揮することができる。
【0085】
例えば、最大送信ウェイト及び振幅2番目送信ウェイトは調整せずに、振幅2番目送信ウェイトの振幅に近づくように、振幅3番目送信ウェイトの振幅を大きくする場合には、振幅2番目送信ウェイトの振幅を振幅3番目送信ウェイトの振幅で除算して得られる値を基準係数αとする。また、最大送信ウェイト及び振幅2番目送信ウェイトは調整せずに、振幅2番目送信ウェイトの振幅に近づくように、振幅4番目送信ウェイトの振幅を大きくする場合には、振幅2番目送信ウェイトの振幅を振幅4番目送信ウェイトの振幅で除算して得られる値を基準係数αとする。
【0086】
また、最大送信ウェイト及び振幅2番目送信ウェイトは調整せずに、振幅2番目送信ウェイトの振幅に近づくように、他の複数の送信ウェイト、例えば振幅3番目送信ウェイト及び振幅4番目送信ウェイトの振幅を大きくしても良い。この場合には、振幅3番目送信ウェイトを調整するための調整係数α1〜α3と、振幅4番目送信ウェイトを調整するための調整係数α1〜α3とが別々に求められることになる。
【0087】
また、振幅が1番目に大きい送信ウェイト(最大送信ウェイト)から3番目に大きい送信ウェイト(振幅3番目送信ウェイト)までを調整せずに、振幅が3番目に大きい送信ウェイトの振幅に近づくように、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくしても良い。
【0088】
また、アレイアンテナ110を構成するアンテナ110aの数が5つ以上の場合には、振幅が1番目に大きい送信ウェイトから4番目に大きい送信ウェイトまでを調整せずに、振幅が4番目に大きい送信ウェイトの振幅に近づくように、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくしても良い。
【0089】
以上の内容を一般化すると、アレイアンテナ110を構成するアンテナ110aの数をN個(N≧2)とすると、振幅が1番目に大きい送信ウェイトからM番目(1≦M<N)に大きい送信ウェイトまでを調整せずに、振幅がM番目に大きい送信ウェイトの振幅に近づくように、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする。これにより、送信ウェイトの振幅の調整によって送信指向性が大きく変化することを防止することができ、干渉強度が小さい場合に、ヌルステアリングの効果を発揮することができる。
【0090】
なお、M=1の場合には、上述の実施の形態のように、最大送信ウェイトが調整されずに、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅が大きくされることになる。
【0091】
<第3変形例>
基準係数αについてはテーブルを用いて求めても良い。図5は基準係数αを求めるための基準係数取得テーブル300を示す図である。基準係数取得テーブル300では、最大送信ウェイトと調整対象ウェイトの振幅比γの各値に対して、当該調整対象ウェイトの振幅を調整する際に使用する基準係数αの値が対応付けられている。最大送信ウェイトの振幅をAMmとし、調整対象ウェイトの振幅をAMtとすると、振幅比γ=AMt/AMmとなる。基準係数取得テーブル300は送信ウェイト調整部122に記憶されている。
【0092】
本変形例に係る基地局1では、送信ウェイト調整部122は、送信ウェイト正規化部123において正規化された複数の送信ウェイトにおける最大送信ウェイトと、当該複数の送信ウェイトにおける調整対象ウェイト(例えば、振幅2番目送信ウェイト)の振幅比γを求める。そして、送信ウェイト調整部122は、基準係数取得テーブル300に記述されている振幅比γの複数の値において、求めた振幅比γの値に最も近い値を特定する。そして、送信ウェイト調整部122は、基準係数取得テーブル300において、特定した値に対応付けられている基準係数αの値を、調整対象ウェイトの調整に使用する基準係数αの値とする。例えば、送信ウェイト正規化部123において正規化された複数の送信ウェイトにおける最大送信ウェイトと、当該複数の送信ウェイトにおける調整対象ウェイトの振幅比γが“0.78”であるとすると、基準係数取得テーブル300に記述されている振幅比γの複数の値において、“0.78”に最も近い値は“0.8”となることから、これに対応付けられている基準係数αの値“1.25”が、調整対象ウェイトの調整に使用する基準係数αの値となる。
【0093】
このように、基準係数αをテーブルを用いて求める場合であっても、上記の例と同様の効果を得ることができる。
【0094】
<第4変形例>
一つのアンテナ110aが受信する受信信号についての受信レベルと、当該一つのアンテナ110aに対応する、送信ウェイト取得部124で求められる一つの送信ウェイトの振幅との間には相関がある。つまり、一つのアンテナ110aが受信する、通信対象端末2から受信信号についての受信レベルが大きいほど、当該一つのアンテナ110aから通信対象端末2に送信される送信信号に設定される、送信ウェイト取得部124で求められる一つの送信ウェイトの振幅は大きくなる傾向にある。
【0095】
そこで、本変形例では、アレイアンテナ110を構成するN個のアンテナ110aで受信されるN個の受信信号において、受信レベルが1番目に大きい受信信号からM番目に大きい受信信号をそれぞれ受信するM個のアンテナ110aにそれぞれ対応するM個の送信ウェイトを調整せずに、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする。これにより、複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする場合に、振幅が1番目に大きい送信ウェイトからM番目に大きい送信ウェイトまでが調整されない可能性が高くなり、上記の例と同様に、アレイアンテナ110の送信指向性が大きく変化することを防止することができる。よって、干渉強度が小さい場合に、ヌルステアリングの効果をある程度発揮することができる。以下に本変形例について具体的に説明する。
【0096】
図6は本変形例に係る基地局1の構成を示す図である。本変形例に係る基地局1は、上述の図2に示される基地局1において、制御部12が機能ブロックとして受信レベル取得部170をさらに備えるものである。
【0097】
受信レベル取得部170は、複数のアンテナ110aでそれぞれ受信される複数の受信信号のそれぞれについての受信レベルを求める。具体的には、受信レベル取得部170は、通信部11から出力されるベースバンドの複数の受信信号のそれぞれについて、当該受信信号の振幅の二乗を求めて、当該振幅の二乗を当該受信信号の受信レベルとする。
【0098】
送信ウェイト調整部122は、アレイアンテナ110を構成するN個のアンテナ110aでそれぞれ受信されるN個の受信信号において、受信レベルが1番目に大きい受信信号からM番目に大きい受信信号がそれぞれ受信されるM個のアンテナ110aにそれぞれ対応するM個の送信ウェイトを調整せずに、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする。
【0099】
送信ウェイト調整部122は、調整対象ウェイトの調整に使用する調整数α1〜α3を決定する際には、M番目に大きい受信レベルを、調整対象ウェイトに対応するアンテナ110aでの受信信号の受信レベルで除算して得られる値の平方根を基準係数αとする。そして、送信ウェイト調整部122は、求めた基準係数αを用いて、上述のようにして、調整対象ウェイトについての調整係数α1〜α3を求める。
【0100】
例えば、アレイアンテナ110を構成する第1アンテナ110a〜第4アンテナ110aにそれぞれ対応する複数の正規化送信ウェイトNW1〜NW4が、NW1=0.09+j0.51、NW2=−0.09−j0.34、W3=0.26+j0.6、W4=0.86+j0.51であって、第1アンテナ110a〜第4アンテナ110aでそれぞれ受信された複数の受信信号について受信レベルRL1〜RL4が、RL1=0.3、RL2=0.1、RL3=0.4,RL4=1であって、M=2とする。このような場合には、受信レベルが1番目に大きい受信信号が受信される第4アンテナ110aに対応する正規化送信ウェイトNW4と、受信レベルが2番目に大きい受信信号が受信される第3アンテナ110aに対応する正規化送信ウェイトNW3とは調整されない。そして、例えば、3番目に受信レベルが大きい受信信号が受信される第1アンテナ110aに対応する正規化送信ウェイトNW1を調整対象ウェイトとすると、この調整対象ウェイトの基準係数αは、2番目に大きい受信レベル“0.4”を、第1アンテナ110aでの受信信号の受信レベル“0.3”で除算して得られる値“4/3”の平方根となる。また、4番目に受信レベルが大きい受信信号が受信される第2アンテナ110aに対応する正規化送信ウェイトNW2を調整対象ウェイトとすると、この調整対象ウェイトの基準係数αは、2番目に大きい受信レベル“0.4”を、第2アンテナ110aでの受信信号の受信レベル“0.1”で除算して得られる値“4”の平方根、つまり“2”となる。
【0101】
なお、受信レベルと送信ウェイトの振幅とは相関があるものの、最大の受信レベルの受信信号が受信されるアンテナ110aに対応する送信ウェイトが、最大送信ウェイトとならない可能性がある。したがって、最大送信ウェイトが調整対象ウェイトとなる可能性がある。そこで、本変形例においては、送信ウェイト正規化部123で得られた正規化送信ウェイトを調整する場合には、最大振幅の正規化送信ウェイトのウェイト電力がウェイト電力制限値を越えないように、最大振幅の正規化送信ウェイトを調整対象ウェイトとすることを禁止するようにする。一方で、送信ウェイトを正規化する必要がなく、つまり基地局1の送信電力を制限する必要がなく、送信ウェイト取得部124で算出された送信ウェイトを直接調整する場合には、最大送信ウェイトを調整対象ウェイトに設定することを可能とする。
【0102】
また、本変形例では、受信レベルに基づいて基準係数αが決定されることから、調整係数α1〜α3をそのまま用いて、送信ウェイト正規化部123で得られた正規化送信ウェイトを調整すると、調整後の正規化送信ウェイトのウェイト電力がウェイト電力制限値を超える可能性がある。したがって、本変形例では、正規化送信ウェイトの振幅の上限値を、ウェイト電力制限値の平方根に制限して、調整後の正規化送信ウェイトのウェイト電力がウェイト電力制限値を超えないようにする。
【0103】
<第5変形例>
上記の例では、送信ウェイト調整部122は、調整対象ウェイトの振幅だけを調整していたが、調整対象ウェイトの振幅と位相の両方を調整しても良い。以下に本変形例に係る送信ウェイト調整部122の動作について説明する。
【0104】
本変形例に係る送信ウェイト調整部122は、調整対象ウェイトの振幅を上述のようにして大きくすると、振幅を大きくする前の調整対象ウェイト(以後、「振幅調整前ウェイト」と呼ぶ)と、振幅を大きくした後の調整対象ウェイト(以後、「振幅調整後ウェイト」と呼ぶ)との間の相関が高くなるように、当該振幅を大きくした後の調整対象ウェイトの位相を調整する。
【0105】
例えば、送信ウェイト調整部122は、振幅調整後ウェイトの位相に関して、互いに異なる複数の調整値を記憶している。この複数の調整値には“0”が含まれるものとする。送信ウェイト調整部122は、複数の調整値のそれぞれについて、当該調整値だけ位相を変化させた振幅調整後ウェイトと、振幅調整前ウェイトとの間の相関値を求める。これにより、複数の調整値にそれぞれ対応する複数の相関値が得られる。そして、送信ウェイト調整部122は、求めた複数の相関値のうちの最大の相関値を求める際に使用された、位相調整後の振幅調整後ウェイトを、送信ウェイト設定部121で使用される送信ウェイトとする。これにより、振幅調整前ウェイトと振幅調整後ウェイトとの間の相関が低い場合には、当該相関が高くなるように、当該振幅調整後ウェイトの位相が調整されるようになる。
【0106】
このように、振幅調整前ウェイトと振幅調整後ウェイトとの間の相関が高くなるように、当該振幅調整後ウェイトの位相を調整することによって、基地局1の送信電力を大きくするために送信ウェイトの振幅を大きくしたとしてもアレイアンテナ110の送信指向性が大きく変化することを防止することができる。よって、干渉強度が小さい場合に、ヌルステアリングの効果をある程度発揮することができる。
【0107】
<その他の変形例>
上記の例では、本願発明を基地局に適用する場合について説明したが、複数のアンテナの送信指向性を制御する無線通信装置であれば、他のどのような無線通信装置であっても本願発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 基地局
11 通信部
110a アンテナ
121 送信ウェイト設定部
122 送信ウェイト調整部
124 送信ウェイト取得部
160 干渉強度取得部
170 受信レベル取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを用いて通信を行う通信部と、
前記複数のアンテナでの送信指向性に関してヌルステアリングを行うための複数の送信ウェイトを求める送信ウェイト取得部と、
前記複数の送信ウェイトを、前記複数のアンテナからそれぞれ送信される複数の送信信号にそれぞれ設定する送信ウェイト設定部と、
前記通信部で受信される受信信号に含まれる干渉波成分の強度を求める干渉強度取得部と、
前記干渉波成分の強度が小さいほど、前記複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする送信ウェイト調整部と
を備える、無線通信装置。
【請求項2】
複数のアンテナを用いて通信を行う通信部と、
前記複数のアンテナでの送信指向性に関してヌルステアリングを行うための複数の送信ウェイトを求める送信ウェイト取得部と、
前記複数の送信ウェイトを、前記複数のアンテナからそれぞれ送信される複数の送信信号にそれぞれ設定する送信ウェイト設定部と、
前記通信部で受信される受信信号に含まれる干渉波成分の強度を求める干渉強度取得部と、
前記干渉波成分の強度がしきい値よりも小さい場合には、前記複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくし、前記干渉波成分の強度が前記しきい値よりも大きい場合には、前記複数の送信ウェイトを調整しない送信ウェイト調整部と
を備える、無線通信装置。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載の無線通信装置であって、
前記複数のアンテナは、N個(N≧2)のアンテナであって、
前記送信ウェイト調整部は、前記複数の送信ウェイトにおいて、振幅が1番目に大きい送信ウェイトからM番目(1≦M<N)に大きい送信ウェイトの振幅は調整せずに、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする、無線通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信装置であって、
前記送信ウェイト調整部は、前記複数の送信ウェイトにおいて、振幅が1番目に大きい送信ウェイトからM番目に大きい送信ウェイトの振幅は調整せずに、振幅がM番目に大きい送信ウェイトに対して他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅が近づくように当該他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする、無線通信装置。
【請求項5】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載の無線通信装置であって、
前記複数のアンテナは、N個(N≧2)のアンテナであって、
前記N個のアンテナでそれぞれ受信されるN個の受信信号について受信レベルを求める受信レベル取得部をさらに備え、
前記送信ウェイト調整部は、前記N個の受信信号において、前記受信レベルが1番目に大きい受信信号からM番目(1≦M<N)に大きい受信信号がそれぞれ受信されるM個のアンテナから送信される送信信号にそれぞれ設定されるM個の送信ウェイトは調整せずに、他の少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする、無線通信装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の無線通信装置であって、
前記送信ウェイト調整部は、送信ウェイトの振幅を大きくするとともに、振幅を大きくする前の当該送信ウェイトと、振幅を大きくした後の当該送信ウェイトとの間の相関が高くなるように、振幅を大きくした後の当該送信ウェイトの位相を調整する、無線通信装置。
【請求項7】
(a)複数のアンテナを用いて通信する工程と、
(b)前記複数のアンテナでの送信指向性に関してヌルステアリングを行うための複数の送信ウェイトを求める工程と、
(c)前記複数の送信ウェイトを、前記工程(a)において前記複数のアンテナからそれぞれ送信される複数の送信信号にそれぞれ設定する工程と、
(d)前記工程(a)で受信される受信信号に含まれる干渉波成分の強度を求める工程と、
(e)前記干渉波成分の強度が小さいほど、前記複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくする工程と
を備える、無線通信方法。
【請求項8】
(a)複数のアンテナを用いて通信する工程と、
(b)前記複数のアンテナでの送信指向性に関してヌルステアリングを行うための複数の送信ウェイトを求める工程と、
(c)前記複数の送信ウェイトを、前記工程(a)において前記複数のアンテナからそれぞれ送信される複数の送信信号にそれぞれ設定する工程と、
(d)前記工程(a)で受信される受信信号に含まれる干渉波成分の強度を求める工程と、
(e)前記干渉波成分の強度がしきい値よりも小さい場合には、前記複数の送信ウェイトの少なくとも一つの送信ウェイトの振幅を大きくし、前記干渉波成分の強度が前記しきい値よりも大きい場合には、前記複数の送信ウェイトを調整しない工程と
を備える、無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46278(P2013−46278A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183509(P2011−183509)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】