無線通信装置
【課題】公平な媒体の共有を図ることができる。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る無線通信装置は、保持部、選択部および送受信処理部を含む。保持部は、1以上の種別のフレーム間隔を含む第1セットと、第1セットに含まれるフレーム間隔の種別と同一種別のフレーム間隔の長さが該第1セットに含まれる同一種別のフレーム間隔以上の長さであり、かつ少なくとも1つの第1種別のフレーム間隔の長さが前記第1セットに含まれる該第1種別のフレーム間隔よりも長い1以上の種別のフレーム間隔を含む第2セットと、を保持する。選択部は、前記第1セット及び前記第2セットのどちらを用いて通信するかを選択する。送受信処理部は、前記選択部の選択結果に応じて、前記第1セットまたは前記第2セットのフレーム間隔を用いて、第1通信方式を用いる第1装置と通信する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る無線通信装置は、保持部、選択部および送受信処理部を含む。保持部は、1以上の種別のフレーム間隔を含む第1セットと、第1セットに含まれるフレーム間隔の種別と同一種別のフレーム間隔の長さが該第1セットに含まれる同一種別のフレーム間隔以上の長さであり、かつ少なくとも1つの第1種別のフレーム間隔の長さが前記第1セットに含まれる該第1種別のフレーム間隔よりも長い1以上の種別のフレーム間隔を含む第2セットと、を保持する。選択部は、前記第1セット及び前記第2セットのどちらを用いて通信するかを選択する。送受信処理部は、前記選択部の選択結果に応じて、前記第1セットまたは前記第2セットのフレーム間隔を用いて、第1通信方式を用いる第1装置と通信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信に関する。
【背景技術】
【0002】
他の無線システムからの干渉及び他の無線システムへの干渉を抑えるために、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)を用いた送信停止期間を制御する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−237849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、CSMA/CAにおける送信停止期間を推定するには、他の無線システムが送信の周期性が期待できるものでなければならず、周期的な送信が必ずしも見込めない無線システムに対しては適用することができない。また、CSMA/CAとは、複数の無線通信装置と通信し、及び複数の無線通信装置と競合する可能性のある無線システムで適用する際に適した方式である。よって、1対1での近接通信システムの場合は、CSMA/CAを常に適用することはオーバーヘッドが多くなり、効率が低下する。結果として、効率的な1対1での近接通信を追求すると、周期的な送信が見込めない他の無線システムの無線通信装置との共存時に媒体共有の公平性を図ることができない。
【0005】
本発明の一観点は、他の無線システムの無線通信装置と共存時に公平な媒体共有を実現することができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る無線通信装置は、保持部、選択部および送受信処理部を含む。保持部は、1以上の種別のフレーム間隔を含む第1セットと、第1セットに含まれるフレーム間隔の種別と同一種別のフレーム間隔の長さが該第1セットに含まれる同一種別のフレーム間隔以上の長さであり、かつ少なくとも1つの第1種別のフレーム間隔の長さが前記第1セットに含まれる該第1種別のフレーム間隔よりも長い1以上の種別のフレーム間隔を含む第2セットと、を保持する。選択部は、前記第1セット及び前記第2セットのどちらを用いて通信するかを選択する。送受信処理部は、前記選択部の選択結果に応じて、前記第1セットまたは前記第2セットのフレーム間隔を用いて、第1通信方式を用いる第1装置と通信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る1対1近接通信システムの概念図。
【図2】第1の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態に係る無線通信装置の、他システムとの共存時のフレーム交換の一例を示す図。
【図4】イニシエータのアクセスと他システムでの優先的なアクセスとが同時となる場合の動作シーケンスの一例を示す図。
【図5】フレーム送受信中にフレーム間隔を変更した場合の一例を示す図。
【図6】第2の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例を示す図。
【図7】第4の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換のうち、イニシエータからデータ送信する一例を示す図。
【図8】第4の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換のうち、レスポンダーからデータ送信する一例を示す図。
【図9】第4の実施形態に係る1対1近接通信システムの無線通信装置と他システムの無線装置との共存時の動作例を示す図。
【図10】第5の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換のうち、イニシエータからデータ送信する一例を示す図。
【図11】第5の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換のうち、レスポンダーからデータ送信する一例を示す図。
【図12】第6の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例を示す図。
【図13】第7の実施形態に係る無線通信装置におけるフレーム交換のセットの切り替え例を示す図。
【図14】1対1近接通信システムにおける物理的な無線リンク切断の一例を示す図。
【図15】1対1無線通信システムにおける一般的なフレーム交換の一例を示す図。
【図16】IEEE802.11無線LAN(Local Area Network)におけるコンテンション期間のフレーム交換の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本開示の一実施形態に係る無線通信装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
(第1の実施形態)
本実施形態では、2つの無線通信装置が、1対1の近接通信システムを構成していると想定する。1対1の通信とは、ある無線通信装置と接続確立後は、接続が切断するまで同じ無線通信装置とのみ通信を行なうことを示す。近接通信は、通信レンジを極端に狭く制限した通信方式である。例えば通信距離が3cmといった、数cmオーダーの通信レンジに存在する無線通信装置が通信可能であるとする。なお、無線通信装置にアンテナを含む場合は、機器同士を接触させることにより通信を行なってもよい。
【0009】
また、本実施形態では、1対1近接通信システムとは異なる通信方式を用いる他の通信方式を用いた無線通信システム(以下、他システムという)と共存する場合を想定する。「共存」とは、例えば、1対1近接通信システムの無線通信装置からの無線信号を他の通信方式による通信レンジの広い無線通信システムの無線通信装置が検知できる状況である。すなわち、1対1近接通信システムにおける通信が通信レンジの広い無線通信システム側にも影響、例えば干渉を与える。本実施形態では、このような状況を他システムと「共存」すると定義する。通信レンジの差は、詳細は後述するが、最大送信電力とアンテナ利得との和で決まる。よって、1対1近接通信システムの通信レンジが他システムの通信レンジより狭ければ、1対1近接通信システムにおける最大送信電力とアンテナ利得との和は、他システムにおける最大送信電力とアンテナ利得との和より小さい。
【0010】
1対1近接通信システムの概念図について図1を参照して説明する。
近接通信システム100は、無線通信装置101及び無線通信装置102を含む。図1の例では、無線通信装置101の通信レンジ151内に無線通信装置102が存在し、無線通信装置102の通信レンジ152内に無線通信装置101が存在するため、無線通信装置101と無線通信装置102との間で無線通信を行なうことができる。
無線通信を行うための接続確立の手順、すなわち通信設定を行なう手順は、無線通信を実現するために必要な互いの情報を把握するため、互いの情報を通知し合う手順である。互いの情報とは、例えば無線通信装置の識別子(IDentifier:ID)、または通信方式として複数のバージョンがある場合は対応するバージョン番号である。さらに、本無線アクセスプロトコル層の上の層での整合性を照らし合わせて、他の無線通信装置を通信相手とするかどうかの判定に用いるために、上位層のパラメータ情報などを含んでもよい。
【0011】
接続確立を行なう際、2つの無線通信装置のうち、一方がイニシエータとなり、もう一方がレスポンダーとなる。イニシエータとレスポンダーとの関係を決める手順は例えば次のようになる。
無線通信装置101は接続要求フレームを無線通信装置102に送信し、無線通信装置102が接続要求フレームを受信する。無線通信装置102は、無線通信装置101を接続相手として受け付ける判定を行なって、接続相手となる旨を通知するための接続受付フレームを無線通信装置101に送信する。
無線通信装置101は、接続受付フレームを受信し、無線通信装置102を接続相手として受け付ける判定を行なって、接続受付フレームに対する応答フレームを通信相手となる無線通信装置102に送信する。この手順により、無線通信装置101と無線通信装置102との接続が確立する。このような接続確立の手順において、接続要求フレームを送信した無線通信装置、すなわちこの例では無線通信装置101がイニシエータに、接続受付フレームを送信した無線通信装置、すなわちこの例では無線通信装置102がレスポンダーになる。
【0012】
次に、第1の実施形態に係る無線通信装置について図2を参照して説明する。
第1の実施形態にかかる無線通信装置200は、アンテナ201、周波数変換部202、PHY(PHYsical)処理部203、パラメータ保持部204、パラメータ選択部205、送受信処理部206および上位処理部207を含む。
【0013】
アンテナ201は、後述の周波数変換部202に接続され、外部からの無線信号を受信し、または、外部に無線信号を送信する。アンテナの構成は、ダイポールアンテナ、パッチアンテナなど一般的な構成であればよいため、ここでの詳細な説明は省略する。第1の実施形態に係る無線通信装置200は、アンテナ201を含むことで、アンテナ201まで含めた1つの装置として構成することができるため、実装面積を少なくすることができる。また、アンテナ201を送信及び受信で共用することにより、無線通信装置200を小型化することができる。なお、アンテナ201は、ここでは1つの例を示すが、複数でもよい。
【0014】
周波数変換部202は、受信処理の場合は、アンテナ201から無線信号を受け取り、後述のPHY処理部203で処理可能な基底帯域(Baseband)信号に復調する。送信処理の場合は、PHY処理部203から物理パケットを受け取り、送信するための周波数帯、例えば60GHzのミリ波帯の無線信号に変調する。
【0015】
PHY処理部203は、受信処理の場合は、周波数変換部202から基底帯域信号を受け取り、基底帯域信号に対して物理パケット復号化処理、またプリアンブル及び物理ヘッダなどを取り除く処理を行なう。PHY処理部203は、これらの処理が行われた後のペイロード部をフレームとして抽出する。また送信処理の場合は、PHY処理部203は、送受信処理部206からフレームと送信指示とを受け取り、符号化などの処理を行って物理パケットに変換する。
なお、PHY処理部203は、フレームを送受信処理部206に送る前には、物理パケットの受信開始の通知信号を、フレームを送受信処理部206に送った後には、物理パケットの受信終了の通知信号をそれぞれ送受信処理部206に送る。さらに、物理パケットのエラー検出の通知や、無線媒体の状況に関する情報についても送受信処理部206に送る。
【0016】
パラメータ保持部204は、フレーム間隔に関するパラメータのセットを2つ保持する。フレーム間隔は、フレームを送信する前に空ける時間を示す。より具体的には、フレーム間隔は、自装置からのフレーム送信後、同一システムの無線通信装置からのフレーム受信後、異なる無線システムの無線通信装置からの無線信号を受信後、または無線媒体上でのキャリアセンスの結果、キャリアをビジーと検出しそれが再びアイドルとなったことを検出した後、のいずれかからフレームを送信するまでに空ける時間のことである。自装置からのフレーム送信中もキャリアがビジーと認識させる動作を含めるなら、上記いずれの場合も最終的には、フレーム間隔とは無線媒体上でのキャリアセンスの結果、キャリアをビジーと検出しそれが再びアイドルとなったことを検出した後からフレームを送信するまでの時間である。
【0017】
パラメータ保持部が保持する1つ目のセットは通常時、つまり干渉対策が不要の場合に用いるフレーム間隔であり、具体的には、initiator interframe space(InitIFS)、responder interframe space(RspIFS)及びSIFSである。例えばこれを第1セットと呼ぶ。2つ目のセットは、干渉対策が必要である場合に用いるフレーム間隔であり、第1セットに含まれるフレーム間隔の種別と同一種別のフレーム間隔の長さが、第1セットに含まれるフレーム間隔以上の長さである。これをInitIFS_C、RspIFS_C及びSIFS_Cと定義する。例えばこれを第2セットと呼ぶ。なお、ERIFSを設ける場合には、同様にERIFSとERIFS_Cとをそれぞれのセットに加える。各セットに含まれるフレームの種別については後述する。
なお、パラメータ保持部204は、1つのセット(上述の例ではInitIFS、RspIFS及びSIFS)とオフセット値とを保持しておくようにしてもよい。
【0018】
パラメータ保持部204は、後述のパラメータ選択部205によって選択されたセットを送受信処理部206が用いるようにさせる。すなわち、送受信処理部206が、使用するセットを参照できるようにしてもよいし、あるいは送受信処理部206に使用するセットを送ってもよい。
【0019】
また、パラメータ保持部204で保持するセットは、送受信処理部206またはパラメータ選択部205により設定変更できるようになっていてもよい。
【0020】
パラメータ選択部205は、パラメータ保持部204でのフレーム間隔に関するセットのどちらを用いるかを選択する。パラメータ保持部204が1つのセットとオフセット値とを保持する場合は、パラメータ選択部205は、オフセット値を用いるかどうかの選択を行う。セットの選択は、例えば送受信処理部206を介して取得する再送回数や送信失敗といった送信エラーに関する情報、復号できないまたは途中でキャリアをロスト(欠落)したといった受信エラーに関する情報に基づいて行なう。また、キャリアセンスビジー時間や送信フレームを準備してからの実際の送信までにかかる時間といったアクセスに関する情報などに基づいてセットの選択を行なってもよい。
【0021】
つまり、上述の情報に基づいて、ある値が閾値以上となる場合に、他システムが近傍に存在するまたは存在する可能性があるとして、換言すれば通信が他システムから影響を受けているまたは受けている可能性があるとして、パラメータ選択部205は、他システムとの間の干渉を回避する必要があると判定する。例えば、再送回数が閾値以上となった場合に、パラメータ選択部205は、干渉対策及び共存対策が必要であると判定して、フレーム間隔として第2セットを選択すればよい。なお、パラメータ選択部205は、選択したセットをパラメータ保持部204に通知し、パラメータ保持部204がパラメータ選択部205が選択したセットを把握できるようにする。
なお、パラメータ選択部205は、上位処理部207からの指示により、判定手法を変更できるようにしてもよい。すなわち、パラメータ保持部204で保持するセットのどちらを用いるかをパラメータ選択部205が選択し、選択されたセットを送受信処理部206が用いてフレームの送受信を行なうことができればよい。また、送受信処理部206でセットが変更されるタイミングは、データフレームもしくは管理フレームを送信する時点、すなわち無線媒体上でアクセス権を取得する時点である。
送受信処理部206は、1対1近接通信システムで用いられるフレームの種別、データフレーム、制御フレーム及び管理フレームを扱い、パラメータ選択部205から第1セットまたは第2セットのどちらのフレーム間隔を用いるかの指示を受け取る。送受信処理部206は、パラメータ保持部204に保持されるフレーム間隔のセットを参照して、第1セットまたは第2セットのどちらかのフレーム間隔を用いて他の無線通信装置との間で無線リンク(接続)を確立してフレーム交換を行う。
【0022】
また、送受信処理部206は、媒体アクセス制御(Media Access Control:MAC)に関する処理を行う。なお、データフレームに関しては、データを交換する無線通信装置間のアプリケーション層レベルでデータ送信の順序とデータ受信の順序とが一致するように、送信側でのデータフレーム送信の制御と受信側でのデータの並べ直しとの処理を行なってもよい。具体的に、受信処理の場合、送受信処理部206は、PHY処理部203からデータフレームを受信し、データフレームに対する送達確認用の応答フレームを生成する。送受信処理部206は、データフレームを含んだ物理パケットの受信終了後から、Short Interframe Space(SIFS)の期間を空けて応答フレームをPHY処理部203に送る。SIFSに関しては後述する。また、送受信処理部206は、受信したデータフレームを必要に応じて並べ直し、各データフレームからデータを抽出する。
【0023】
一方、送信処理の場合、送受信処理部206は、後述の上位処理部207からデータを受け取り、データをデータフレームに変換する。送受信処理部206は、送信タイミングを計り、生成したデータフレームと送信指示とを共にPHY処理部203に送る。このとき、送受信処理部206は、送信に必要な変調及び符号化方式の指示なども合わせて行うようにしてもよい。生成したフレームが再送処理の対象となるフレーム(データフレームあるいは管理フレーム)の場合は、その送信後、所定時間内に、送信したフレームに対する応答フレームを受信開始しなければ送信失敗と判定し、フレームを再送する。これらの再送にかかる処理は、従来知られている技術と同様であるのでここでの説明は省略する。送信したフレームに対する応答フレームを受信した場合は送信したフレームの再送処理は不要と判定する。
【0024】
上位処理部207は、受信処理の場合は、送受信処理部206からデータを受け取り、データをアプリケーションへ入力するといった処理を行なう。また、送信処理の場合は、上位処理部207は、ユーザの操作などによってアプリケーションから送信すべきデータを受け取り、送受信処理部206にデータを送る。
【0025】
また、第1の実施形態に係る無線通信装置200では、PHY処理部203と送受信処理部206とは1つずつである。しかし、これに限らず、複数の異なるPHY処理部があり、それぞれに対応する送受信処理部があってもよいし、または異なるPHY処理部にまたがった共通処理部があってもよい。
【0026】
次に、第1の実施形態に係る無線通信装置の他システムとの共存時のフレーム交換の一例について図3を参照して説明する。
図3に示す無線通信装置のシーケンス300は、イニシエータとレスポンダーとのフレーム交換を時系列で表したものであり、図3中の時間軸の上段がイニシエータとなる無線通信装置の動作を示し、下段がレスポンダーとなる無線通信装置の動作を示す。
【0027】
1対1近接通信システムで用いられる通常のフレーム間隔は、InitIFS、RspIFS、SIFSの3つの種別がある。但し、後述の他システムでの場合と区別するためここではSIFSは便宜上SIFS1と表記する。
InitIFSは、イニシエータがフレーム交換の開始を行う際に空けるフレーム間隔である。RspIFSは、レスポンダーがフレーム交換の開始を行う際に空けるフレーム間隔である。SIFS1は、データフレームあるいは管理フレームに対する送達確認である応答フレームを送信する際に用いられるフレーム間隔である。フレーム交換は例えば、データフレームあるいは管理フレームの送信で開始され、データフレームあるいは管理フレームに対する送達確認である応答フレームの受信を受けて終了する。応答フレームを受信しないとフレーム交換が失敗したとする。
例えば、InitIFSは最小で3.0μsであり、それ以上空いていればよく、RspIFSは最小7.0μsであり、それ以上空いていればよく、SIFS1は最小2.0μsであり最大2.5μsである。
【0028】
通常のInitIFS301は、上述のように最小で3μsであるが、第1の実施形態では、InitIFS301を他システムにおいて優先的な送信のために用意されたフレーム間隔であるPIFSと同等な概念で用いられるフレーム間隔であると想定する。よって、PIFSと同一の期間となるように、InitIFS301にオフセット期間302を付加してフレーム間隔の期間長を長くする。第1の実施形態では、他システムのPIFS(8μs)と同一の期間とするためオフセット期間302を5μsに設定する。ここで、InitIFS301にオフセット期間302(5μs)を付加したフレーム間隔をInitIFS_C303と呼ぶ。同様に、SIFS305に対してオフセット期間302(5μs)を付加したフレームをSIFS_C306と呼ぶ。
イニシエータは、InitIFS_C303期間が経過した後に、データ(DATA1)304をレスポンダーに送信する。その後、データ304を受信したレスポンダーはSIFS_C306期間経過した後にACK307をイニシエータに送信する。
【0029】
このように、イニシエータでのフレーム交換の開始時に用いるフレーム間隔の値を、他システムでの優先的な送信のために用意されたフレーム間隔(第1の実施形態ではPIFS)に合わせるようにすることで、イニシエータでのアクセスと他システムでの優先的なアクセスが対等になる。よって、レスポンダーは他システムでの優先的なアクセスよりも劣勢となることから、イニシエータとレスポンダーとが他システムの無線通信装置に対し短いフレーム間隔で有利にフレーム交換の開始できる状況を改善することができる。
なお、図3では、イニシエータからデータフレームを送信する場合を説明したが、レスポンダーでも同様にオフセットを設ければよい。例えば、RspIFSに5μsのオフセット期間を付加し、最小期間が7μs+5μs=12μsとなるRspIFS_Cを定義し、RspIFS_Cをフレーム交換の開始時に用いてもよい。
【0030】
次に、イニシエータのアクセスと他システムでの優先的なアクセスとが同時になる場合のシーケンスについて図4を参照して説明する。
図4は、上段が本実施形態に係る1対1近接通信システムの無線通信装置の動作シーケンスを示し、下段が他システムの無線装置の動作シーケンスを示す。
ステップS401では、イニシエータと他システムの無線通信デバイスとが、キャリアセンスビジー終了(すなわちキャリアセンスがアイドルに戻ったこと)を検出する。ここでキャリアセンスビジーは例えばいずれか一方の無線システムでの送信によるものである。
【0031】
ステップS402では、第1の実施形態に係る1対1無線通信システムのイニシエータがInitIFS_Cの期間を空け、他システムの無線装置がPIFSの期間を空ける。
【0032】
ステップS403では、イニシエータと他システムの無線装置とがそれぞれデータフレーム(DATA1とW_DATA1)の送信を行なう。InitIFS_CとPIFSとは、同じ8μsの期間を有するため、DATA1とW_DATA1とが衝突し、データフレーム受信側の無線通信装置(レスポンダー及び他システムでのデータフレームの送信先となる無線装置)はデータフレームの受信及び復号ができない。よって、レスポンダーでは応答フレームであるACK1を送信せず、他システムでのW_DATA1フレームの送信先となる無線装置では応答フレームであるW_ACK1を送信しない。
【0033】
ステップS404では、他システムのデータ送信側の無線装置では、それぞれ応答フレームの有無の確認動作の結果、応答フレームがないと判定してデータフレームの再送処理を行う。なお、ここではDATA1とW_DATA1とがたまたま同一期間を占有したものとする。他システムとしてIEEE802.11無線LAN(Local Area Network)システムを想定した場合、PIFS経過後にデータフレーム送信を行なう無線装置では、応答フレームの有無の判定は、データフレームW_DATA1を送信して、SIFS2(3μs)後のSLOT2(5μs)の期間の前半部で判定する。つまり、この期間でキャリアセンスビジーを検出しないと、そのSLOT2の期間内に受信から送信への切り替え動作を行い、SLOT2の期間経過後にW_DATA1の再送を行う。つまり、W_DATA1を送信してSIFS2+SLOT2(すなわち8μs)後にW_DATA1の再送を行うことになる。
一方、本実施形態に係る1対1近接通信システムのイニシエータでは、応答フレームの有無の判定は、データフレームDATA1を送信してから5.0μsのオフセット期間を付加したSIFS1_C(最小で7μs)後のスロット時間内(ここではSLOT1と示す)にACK1の有無を判定する。SLOT1は、通常の状態においても干渉対策でフレーム間隔を長く調整する場合においても共通で1.0μsの期間とする。なお、フレーム間隔に係るパラメータの1つとして、干渉対策時には他のフレーム間隔と同様に5.0μsのオフセット期間を付加し、SLOT1_C(1.0μs+5.0μs=6.0μs)と新たに定義して用いるようにしてもよい。図4に示すデータフレームが衝突する例では、イニシエータがACK1を所定の時間内に受信しないため、再度キャリアセンスの状態を確認し、DATA1の再送を行う動作に移行する。
【0034】
SLOT1(1.0μs)経過後にイニシエータが動作する場合では、SLOT1経過後から再度InitIFS_Cを空けてDATA1を再送しようとするが、図4の例では他システムのW_DATA1の送信がある。また、続いて他システムではW_DATA1に対してSIFS2(3μs)経過後にW_ACK1が送信される。さらに、他システムでまだ送信すべきデータフレームがある場合で、送信バースト時間制限内であれば3μsのSIFS2後に、次のデータフレームW_DATA2が送信されるといった、一連のフレーム交換が行われることが想定される。その間イニシエータでは、InitIFS_Cのキャリアセンスアイドル期間が取れないことになり、他システム側でのそのような一連のフレーム交換が終了するまではDATA1の再送が行えないことになる。
【0035】
このようにして、イニシエータのアクセスと他システムでの優先的なPIFSを用いたアクセスは最初の媒体へのアクセス時には同等であるものの、リカバリ動作(すなわち再送)では他システム側が圧倒的に有利となる。一方、イニシエータの媒体アクセス時に用いられるInitIFS_Cは、他システムで最も優先度の高いPIFS以外のアクセス時に用いられるフレーム間隔(正常時のAIFS、DIFS、またエラー発生時に用いられるEIFS)よりも短いため、イニシエータ側に有利となる。また、レスポンダーのアクセス時に用いるフレーム間隔RspIFS_Cは12μsであるので、他システムでのPIFS以外のアクセス時に用いられるフレーム間隔のデフォルト値(後述)のいずれよりも短くなり、レスポンダー側に有利となる。
【0036】
なお、上述した例では、InitIFS_CとPIFSとが同等の期間になるようなオフセット期間の設定の例を示したが、これに限らず、他のフレーム間隔と同等の期間となるようにオフセット期間を設定してもよい。例えば、PIFSの代わりに他システムでの競合のために用いられる、アクセスカテゴリごとに値が異なるAIFS、またはDIFSのいずれかにInitIFS_Cが等価な値となるようにオフセット期間を設定してもよい。具体的には、AIFSの一種別であるAC_VI/AC_VOのデフォルト値(13μs)とInitIFSが同じ期間長になるように、InitIFSにオフセット期間10μsを付加し、1対1近接通信システムで用いる他のフレーム間隔にもそれぞれオフセット期間10μsを付加すればよい。
【0037】
以上に示した第1の実施形態によれば、他のシステムのフレーム間隔を考慮したオフセット期間を本実施形態に係る1対1近接通信システムのフレーム間隔に付加することで、近接通信システムと他システムとの間で公平な媒体の共有を図ることができる。すなわち、少なくとも一方の無線通信システムがもう一方の無線通信システムで通信切断と判定されるほど、長期間独占的に媒体を占有せずに、それぞれの無線通信システムにおいて通信機会を得ることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、イニシエータとレスポンダーとで、通常のフレーム間隔であるIFSの第1セットと、全てのフレーム間隔に固定長のオフセットを追加したIFSの第2セットとを両方ともそれぞれ保持している。よって、互いに同じフレーム間隔のセットを用いなければ互いのIFSにずれが生じる。第2の実施形態では、イニシエータとレスポンダーとのどちらか一方がフレーム間隔を長く設定するように判定した場合に、もう一方に長いフレーム間隔のセット(セット2)を用いることを通知する。このようにすることで、動的にイニシエータとレスポンダーとで同じフレーム間隔のセットを切り替えながら用いることができる。
【0039】
ここで、第1の実施形態に係る1対1近接通信システムにおいて、フレーム送受信中にフレーム間隔を変更した場合の一例について図5を参照して説明する。
図5は、上段がイニシエータの動作シーケンスを、下段がレスポンダーの動作シーケンスを示す。
1対1近接通信システムにおいて、フレーム間隔のセットを変更するタイミングは、データフレームまたは管理フレームを送信するとき、すなわち無線媒体上でアクセス権を取得するときである。よって、受信したデータフレームまたは管理フレームに対する応答フレームを送信するときにフレーム間隔のセットを変更してはならない。具体的には、イニシエータがDATA1をレスポンダーに送信する前は、イニシエータにおいてInitIFSからInitIFS_Cにフレーム間隔を変更してもよい。しかし、レスポンダーでは、DATA1を受信した応答フレームであるACKをイニシエータに送信する際に、SIFSからSIFS_Cにフレーム間隔を変更してはならない。
【0040】
図5の例では、イニシエータは、DATA1を送信後、SIFS1(最小2.0μs)+SLOT1(1.0μs)の期間内でレスポンダーからのACK1があるかどうかを確認する。そのため、レスポンダーが、DATA1を受信してからSIFS1_C(最小7μs)後に応答フレームACK1を送信しようとしても、イニシエータでは、応答フレームACK1が送信されていないとして再送処理に移り、DATA1を「SIFS1+SLOT1+InitIFS」(最小6μs)でレスポンダーに送信する。
【0041】
一方、レスポンダーは、SIFS1_CでACK1をイニシエータに送信するため、1.0μsの切替時間を要すると想定すると、たとえキャリアセンスの結果を待つ動作を行なうとしても、DATA1受信後6.0μs経過後には受信、つまりキャリアセンスを停止してDATA1を再送するための処理に移る。そのため、再送されたDATA1をキャリアセンスで検知しACK1の送信を待機するということなしに、7.0μs経過後にACK1をイニシエータに送信する。その結果、ACK1と再送されたDATA1とが衝突し、イニシエータ及びレスポンダー間のフレーム交換が失敗する。
【0042】
応答フレームを送信する時からもフレーム間隔のセットを変更してよいとする場合は、短いフレーム間隔のセットから長いフレーム間隔のセットに変更する際には、少なくとも1回はフレーム交換が失敗するものとして考慮する必要がある。
【0043】
そこで第2の実施形態では、イニシエータ及びレスポンダーは、接続確立時にはフレーム間隔の第1セットを用い、接続確立後、一方の無線通信装置がフレーム間隔の第2セットを用いると判定した場合に、第2セットを用いてアクセス後に送信するデータフレームまたは管理フレームの中で第2セットを用いるという情報を追加する。この情報は、例えば、送受信処理部206が、データフレームまたは管理フレームのフレームヘッダに、1ビット(以下、通知ビットという)を用意する。そして、「0」なら第1セット、「1」なら第2セットを用いるとすればよい。このデータフレームを受信した無線通信装置は通知ビットの状態から、通信相手の無線通信装置がどちらのフレーム間隔のセットを用いているかを判定し、そのフレーム間隔のセットに合わせる。
【0044】
第2の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例について図6を参照して説明する。
上段がイニシエータの動作シーケンスを、下段がレスポンダーの動作シーケンスを示す。
ステップS601では、イニシエータが第1セットの通常のフレーム間隔を用いてInitIFS経過後にDATA1をレスポンダーに送信し、レスポンダーがSIFS1経過後にACK1をイニシエータに送信する。ここでは、イニシエータが第1セットのフレーム間隔を用いているため、DATA1中のフレーム間隔のセットを示す通知ビットを「0」と設定する。
ステップS602では、イニシエータが第2セットのフレーム間隔を用い、InitIFS_C経過後にDATA2をレスポンダーに送信する。ここでは、イニシエータが第2セットのフレーム間隔を用いているため、フレーム間隔のセットを示す通知ビットを「1」と設定する。
ステップS603では、レスポンダーがDATA2を受信して、DATA2から通知ビットを抽出すると、値が「1」と設定されていることを把握し、第2セットのフレーム間隔を用いるようにする。その後、SIFS_C経過後にACK1をイニシエータに送信する。
【0045】
なお図6に示すように、応答フレームをイニシエータに送信する際から第2セットのSIFS1_Cを用いることが望ましい。しかし、データフレームまたは管理フレームの内容の解析(ここでは特にフレームセットに関する通知ビット)を行ってSIFS1とSIFS1_Cを即時に切り替えにくい場合がある。特に長いセット(第2セット)から短いセット(第1セット)に切り替える場合に即時に対応しにくい。
この場合は、最初のセットの切り替えの通知を含めたフレーム交換では1つ前の古いフレーム間隔のセットを使用し、その後のフレーム交換から新しいセットを使用するようにしてもよい。応答フレームでも上述したように例えばフレームヘッダに通知ビットを用意し、用いるフレーム間隔のセットを通知するようにする。
このようにすることで、データフレーム及び管理フレーム送信側の無線通信装置において、受信側の無線通信装置が、まだ応答時間は更新されていなくてもフレーム間隔の変更の認識をしたと把握することができる。よって、この後のフレーム交換では更新したフレーム間隔のセットを用いることができる。また、その後のフレーム交換時にもフレーム間隔のセットに関する通知ビットを常に使用することで、逐次双方の無線通信装置で、フレーム間隔のセットを確認しつつ同一のフレーム間隔のセットを用いて動作することができる。
【0046】
なお、接続確立後の通信開始時にイニシエータとレスポンダーとで第1セットを用いる動作を上述したが、接続確立時にフレーム間隔の調整をするようにしてもよい。例えば、一方の無線通信装置(接続確立前であるのでイニシエータまたはレスポンダーは決定していない)が長いフレーム間隔の第2セットを用いる判定を、通信相手となる無線通信装置の探索時に行なった場合を想定する。ここで、便宜上、接続要求フレームを送信する無線通信装置を第1無線通信装置、接続要求フレームを受信して接続受付フレームを送信する無線通信装置を第2無線通信装置とする。
【0047】
第1無線通信装置が接続要求フレームを第2無線通信装置に送信する場合、上述の接続確立後の場合と同様に、接続要求フレームのヘッダに、使用するフレーム間隔のセットを通知する通知ビットを設定し、通知ビットにより第2セットを使用することを第2無線通信装置に通知すればよい。接続要求フレームを受信した第2無線通信装置で接続要求を受け付ける場合には、接続要求フレームを送信した第1無線通信装置に合わせて第2セットを用いることを通知するために、接続受け付けフレームのヘッダに、同様の通知ビットを設定する。そして、第2セットのフレーム間隔を用いることを第1無線通信装置に通知する。第1無線通信装置において、接続受付フレームを送信した第2無線通信装置との接続を許可する場合には、接続受付フレームに対する確認応答フレームを第2無線通信装置に送信する。従って、確認応答フレームのヘッダにも通知ビットを設定して確認応答フレームを第2無線通信装置に送信し、再確認の意味で第2セットのフレーム間隔を用いることを第2無線通信装置に通知する。
【0048】
反対に、受信した接続要求フレームではデフォルトとなる第1セットのままであるが、第2無線通信装置側で第2セットを用いる判定を下した場合は、その接続要求フレームに対して返信する接続受付フレームヘッダに設定した通知ビットを設定する。これによって、第2セットを使用することを第1無線通信装置に通知することができる。その後、第1無線通信装置で、接続受付フレームを送信した第2無線通信装置との接続を許可する場合には、上述のように接続受付フレームに対し確認応答フレームを第2無線通信装置に送信する。従って、確認応答フレームヘッダに設定した通知ビットを用いて、接続受付フレームを送信した無線通信装置に合わせて第2セットのフレーム間隔を用いることを相手の無線通信装置に通知する。
【0049】
このようにすれば、接続確立前に一方の無線通信装置が長い方のフレーム間隔のセットを用いるべきと判定した場合に接続確立の手順で接続相手の無線通信装置にその判定を通知することができ、同じフレーム間隔のセットを用いてすぐに接続確立後のフレーム交換を行なうことができる。
【0050】
さて、1対1近接通信では接続確立は可能な限り短い時間で完了したいという要求がある。上述のように、他システムとして想定するIEEE802.11無線LANに比べて接続確立手順で送信されるフレーム数は極めて少ないことから、接続確立時に他システムに及ぼす干渉の影響は極めて少ないといえる。また上述のように、確認応答フレームの送受信は、短い固定時間内に行ない、その受信期待時間に基づいて再送処理がある。これらのことから、接続確立手順におけるフレーム間隔は、通常の第1セットのフレーム間隔を用いることが望ましい。
【0051】
以上に示した第2の実施形態によれば、フレーム送受信中にフレーム間隔の変更を示すビットを、送信するフレームに含めることで、互いに使用すべきフレーム間隔のセットを認識することができ、動的にフレーム間隔のセットを変更しつつ安定して通信を行なうことができる。
【0052】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、第2セットのフレーム間隔は予め定められた値を用いるが、第3の実施形態では、接続確立時に第2セットのフレーム間隔の値に関しても設定可能とする点が上述の実施形態とは異なる。
【0053】
すなわち、接続確立時に用いられる管理フレームである接続要求フレームまたは接続受付フレームに、任意のフレーム間隔の値を設定する。例えば、フレームボディ部に、第2セットとして使用するフレーム間隔の値を追加できるようにすれば、接続確立時に第2セットとして具体的に使用する各フレーム間隔の値を任意に設定することができる。
【0054】
なお、想定される他システムとして複数の候補がある場合には、各候補となるシステム用に、調整するフレーム間隔のセットを用意して、候補のシステムに応じてセットを用いればよい。具体的には、例えばパラメータ保持部204に用意しておき、どのシステムが干渉するかがパラメータ選択部205により指定された場合に、その所定のセットを選択して用いるようにしてもよい。他システムが複数ある場合は、第2の実施形態で説明した1ビットの通知ビットでは情報が足りないため、複数の候補対象のセットが全て表現できるような通知用フィールドを設ければよい。
【0055】
以上に示した第3の実施形態によれば、フレーム間隔の値の情報を参照することで、任意のフレーム間隔を用いることができる。また、1対1近接通信以外の他システムの候補がある場合に、それぞれのシステムに応じたフレーム間隔を設定することができ、より柔軟な媒体の共有を図ることができる。
【0056】
(第4の実施形態)
第1の実施形態と第2の実施形態では、フレーム交換内で用いる全てのフレーム間隔にオフセットを付加していたため、応答フレームの送受の際に接続している無線通信装置間で同じフレーム間隔のセットを用いていないと適切なフレーム送受信の動作が行えない。第4の実施形態では、フレーム交換を開始する際の無線媒体へのアクセス時に用いるフレーム間隔にのみオフセットを付加する点が異なる。
【0057】
第4の実施形態に係る無線通信装置の構成は第1の実施形態に係る無線通信装置200と同様であるが、パラメータ保持部204に保持されるセットが異なる。
【0058】
パラメータ保持部204は、第1セットとして(InitIFS、RspIFS、SIFS1)を保持し、第2セットとして(InitIFS_C、RspIFS_C、SIFS1)を保持する。
【0059】
次に、第4の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例について図7及び図8を参照して説明する。
図7は、イニシエータがアクセスしDATA1をイニシエータに送信する場合を想定する。上段がイニシエータの動作シーケンスを示し、下段がレスポンダーの動作シーケンスを示す。
【0060】
ステップS701では、第1の実施形態と同様に、干渉を回避するため、イニシエータが長いフレーム間隔(第2セット)を用いた場合と想定する。その後、通常のInitIFS(3μs)の代わりに、例えば他システムのPIFS(8μs)と同等となるように5μsのオフセット期間をInitIFSに付加したInitIFS_C(8μs)を用いて、InitIFS_Cが経過するまで待機する。
【0061】
ステップS702では、イニシエータが、InitIFS_C経過後に、DATA1をレスポンダーに送信する。
【0062】
ステップS703では、フレーム交換内で用いるフレーム間隔に関しては、オフセット期間を付加せず通常時のSIFS1をそのまま用いる。従って、レスポンダーはDATA1を受信すると、DATA1の受信が終了した時点からSIFS1経過後に、ACK1をイニシエータに送信する。
【0063】
次に、レスポンダーがアクセスしDATA1を送信する場合を図8に示す。上段がレスポンダーの送信フレームを示し、下段がイニシエータの送信フレームを示す。
ステップS801では、レスポンダーは、他システムでの競合期間に用いられるフレーム間隔AIFSのデフォルトでの最小値、13μs(AC_VIとAC_VOとでのデフォルト値)と同一となるようなフレーム間隔を設定する。具体的には、レスポンダーは、通常のRspIFS(7μs)に6μsのオフセット期間を付加したRspIFS_C(13μs)を用いて、RspIFS_Cが経過するまで待機する。このように、レスポンダーが用いるアクセス時のフレーム間隔についても他システムの別種のフレーム間隔に合わせることができる。
【0064】
ステップS802では、レスポンダーが、RspIFS_C経過後に、DATA1をイニシエータに送信する。
【0065】
ステップS803では、イニシエータは、フレーム交換内で用いるフレーム間隔に関しては、図7に示す場合と同様にそのままの値を用いて、SIFS1経過後にACK1をレスポンダーに送信する。
【0066】
なお、図7及び図8では、イニシエータとレスポンダーとが、アクセス時のフレーム間隔を他システムのPIFSとデフォルトで最小のAIFSとにそれぞれ合わせた例を示した。しかし、他のシステムのフレーム間隔の組み合わせはこれに限らず、デフォルトでの最小のAIFSとデフォルトで2番目に短いAIFSとに合わせるなどでもよい。
【0067】
上述したように、無線通信装置間において、フレーム交換の際に用いるフレーム間隔のセットを同等としなくともフレームの送受信を行なうことができる。例えば、先に他システムとの共存のためにフレーム間隔を変更する判定した無線通信装置がイニシエータである場合を想定する。
イニシエータは、図7のようにInitIFS_C(8μs)でレスポンダーにアクセスする。一方、レスポンダーは、まだその時点ではフレーム間隔の変更をする判定に至っていないため、通常のRspIFS(7μs)でイニシエータにアクセスする。この場合は、レスポンダーの方が優先的にアクセスすることができる。しかし、1対1近接通信では、一方の無線通信装置(ここでは、イニシエータ)が他システムと干渉し合う状況を把握できる場合、もう一方の無線通信装置(ここでは、レスポンダー)も当然同様の状況にあると想定される。従って、無線通信装置がそれぞれ使用するフレーム間隔の切り替え判定を適切に行えるとしたら、もう一方の無線通信装置もフレーム間隔の切り替え判定を一定期間内に行なうことになる。よって、上述の例ではレスポンダーもRspIFS_Cを使用する判定を行って図8に示すようなアクセスをすると考えられ、最終的にイニシエータとレスポンダーとでアクセス機会の力関係が保持される。
【0068】
なお、第2の実施形態に示したように、一方の無線通信装置が、使用するフレーム間隔の情報(第1セットか第2セットか、すなわち通常のフレーム間隔か共存のために調整したフレーム間隔か)を、例えばフレームヘッダに入れて通信相手の無線通信装置に通知するようにしてもよい。
【0069】
次に、第4の実施形態に係る1対1近接通信システムの無線通信装置と他システムの無線通信装置との共存時の動作について図9を参照して説明する。ここでは、例えばイニシエータが他システムで優先的な送信を行う際のフレーム間隔PIFSに合わせる場合を想定する。
【0070】
ステップS401からステップS403までの処理は図4と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0071】
ステップS901では、イニシエータは、DATA1の送信後SIFS1(2μs)+SLOT1(1μs)の期間経過したのち、ACK1の送信がないと判定し、さらにInitIFS_C(8μs)のアイドル期間を空けてからDATA1を再送しようとする。
【0072】
しかし、ステップS902において、他システムの無線装置では、第1の実施形態における図4と同様に、W_DATA1を送信後、SIFS2(3μs)+SLOT2(5μs)の期間経過後、W_DATA1の再送を行う。
従って、イニシエータは、W_DATA1の信号をキャリアセンスで検出し、DATA1の再送を延期する。第1の実施形態と同様に、イニシエータのアクセスと他システムでの優先的なフレーム間隔(PIFS)を用いたアクセスとは、最初の媒体へのアクセス時の機会は同等であるものの、リカバリ動作(すなわち再送)では他システム側が圧倒的に有利となる。
【0073】
一方、レスポンダーは、他システムでの競合期間に用いられるフレーム間隔AIFSのデフォルトでの最小値(13μs)と等価になるように、アクセスに用いるフレーム間隔を調整すると想定する。他システムでは、AIFS後にさらにランダムバックオフ期間が設けられる。これらの期間キャリアセンスアイドルでないと他システムの無線装置は、アクセスできない。従って、他システムとのアクセスのフレーム間隔にAIFSを用いる他システムの無線装置に対し、レスポンダーは同等のアクセス時間を有するが、ランダムバックオフ期間を設けない分、確率的に有利になる。これは再送処理の動作で比較しても同様である。反対に、レスポンダーは、他システムでの優先的なPIFSを用いたアクセスに対しては圧倒的に不利になる。従って、1対1近接通信システムと他システムとの間で公平な媒体の共有を図ることができる。
【0074】
イニシエータとレスポンダーとが、フレーム間隔をそれぞれ他システムのデフォルトで最小のAIFSとデフォルトで2番目に小さいAIFSとに合わせると設定する場合は、イニシエータとレスポンダーとは共に、他システムでの優先的なPIFSを用いる無線装置に対しては圧倒的に不利になる。しかし、イニシエータが他システムで競合期間用に動作する無線装置に対しては確率的に有利になり、レスポンダーもランダムバックオフ期間を設けない分比較的有利になる。
【0075】
以上に示した第4の実施形態によれば、フレーム交換を開始する際の無線媒体へのアクセス時に用いるフレーム間隔にのみオフセットを付加し、フレーム交換中のフレーム間隔は通常のフレーム間隔の長さとすることで、他システムとの間で、公平な媒体の共有を図ることができる。
【0076】
(第5の実施形態)
1対1近接通信システムでは、ランダムバックオフを行わないため、他システムで媒体アクセス時に用いる固定長のフレーム間隔と同等のフレーム間隔にしても、確率的に1対1近接通信システムにおける無線通信装置のほうがフレーム送信において有利になる。そこで、第5の実施形態では、フレーム間隔を調整する際に他システムでの競合期間で用いるいずれかのフレーム間隔と同等にすることに加えて、さらに他システムでの平均ランダムバックオフ期間を設定する。これにより、他システムでのランダムバックオフ期間を考慮したアクセス機会の公平性を図ることができる。
【0077】
次に、第5の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例について図10及び図11に示す。
図10は、イニシエータがアクセスしDATA1をレスポンダーに送信する場合を想定する。上段がイニシエータの動作シーケンスを示し、下段がレスポンダーの動作シーケンスを示す。
【0078】
イニシエータが他システムとの干渉を考慮して長いフレーム間隔を用いた方がよいと判定した場合を想定する。このとき、通常のInitIFSに、他システムのPIFSと同一の期間とするための5μsのオフセット期間(第1オフセット期間とも呼ぶ)と、他システムのランダムバックオフを想定した期間(第2オフセット期間とも呼ぶ)を付加したInitIFS_Cを定義する。第2オフセット期間は、図10の例では、他システムでのデフォルトの最小CW(Contention Window)時間幅の半分の期間とする。例えば、IEEE802.11無線LANシステムであれば、CWのデフォルト値は、AC_VOのCWminにおいて最小値3である。他システムの無線通信装置は、AC_VOに分類されたデータフレームを送信する際には、0から3の間の乱数にスロット時間(SLOT2)をかけた時間を待つことになる。従って、AC_VOでの乱数の平均は3/2=1.5でこれにSLOT2(5μs)の時間を乗算した7.5μsが平均のランダムバックオフ時間になる。つまり、算出した値は、CW時間幅(3×5=15μs)の半分の値であり、第5の実施形態では、上述の7.5μsが第2オフセット期間であり、InitIFS_Cは15.5μsとして定義される。
その後のイニシエータとレスポンダーとの通信は、第4の実施形態と同様であるのでここでの説明は省略する。
【0079】
続いて、レスポンダーがアクセスしDATA1をイニシエータに送信する場合を図11に示す。図11は、上段がレスポンダーの動作シーケンスを示し、下段がイニシエータの動作シーケンスを示す。
レスポンダーは、第4の実施形態のようにRspIFS(7μs)に、他システムでのデフォルトで最小値となるAIFSと同等になるように6μsのオフセット期間(第1オフセット期間)を加え、さらに上述と同様に第2オフセット期間7.5μsを付加する。従って、RspIFS_Cは20.5μsとなる。その後のイニシエータとレスポンダーとの通信は、第4の実施形態と同様であるのでここでの説明は省略する。
【0080】
図10及び図11に示すように、イニシエータは、他システムでの優先的なアクセス時に対しては初期のアクセス時にも不利となりえる。また、他システムでの競合期間のAC_VO、AC_VIでのアクセスに対しては、他システムのAIFSがデフォルト値で13μsであることから、InitIFS_C(15.5μs)は、確率的に負けることがありうる。一方、レスポンダーは、他システムでの優先的なアクセス時に対して不利となり、デフォルト値レベルでは他システムでの競合期間のAC_VO、AC_VIでのアクセスに対しても不利になる。また、レスポンダーは、AC_BE及びAC_BKに対しては確率的に多少有利なレベルになる。
【0081】
なお、他システムでのAC_VOのデフォルトCWminに対応するCW時間幅の半分の値を付加する例を説明したが、これに限らず他のフレーム間隔でのCW時間幅を用いてもよい。例えば、レスポンダーにおいて、AC_VIのデフォルトCWminに対応するCW時間幅(7×5=35μs)の半分の値17.5μsを第2オフセット期間としてRspIFSに付加してもよい。このように、ランダムバックオフを想定したオフセット時間としてイニシエータとレスポンダーでさらに差を付けるようにしてもよい。
【0082】
また、図10及び図11では、第4の実施形態に他システムでのランダムバックオフを想定したオフセット時間を追加する手法を示したが、これに限られない。例えば、第1の実施形態のように、全てのフレーム間隔に他システムのフレーム間隔と同等になるように固定長のオフセットを付加した上で、アクセス時に用いるフレーム間隔には他システムでのランダムバックオフを想定したオフセット時間をさらに追加してもよい。
【0083】
以上に示した第5の実施形態によれば、ランダムバックオフを想定したオフセット期間を1対1近接通信システムのフレーム間隔にさらに付加することで、ランダムバックオフを有する他システムに対してさらに公平な媒体アクセスの共有を図ることができる。
【0084】
(第6の実施形態)
1対1近接通信システムの無線通信装置においてフレーム間隔を長く調整することで、他システムの無線通信装置に無線媒体のアクセス権を譲りやすくしている。しかし、他システムの無線装置、具体的に送信するフレームのアクセスカテゴリによっては、1対1近接通信システムのいずれかの無線通信装置でのフレーム送信要求が続く限り、他システムの無線装置はフレーム送信ができないという状況が発生する場合がある。そこで、第6の実施形態では、一度アクセス権を獲得してから、ある期間連続してアクセス権を獲得し続けた場合には、一旦アクセスの試行を一時休止する。このようにすることで、他の通信システムの無線通信装置も必ず送信機会を得ることができる。
【0085】
第6の実施形態に係る無線通信装置は、図1に係る無線通信装置と同様の構成であるが、送受信処理部206及びパラメータ選択部205の動作が異なる。
送受信処理部206は、自装置がアクセス権を取得してから連続してアクセス権を取得し続けた期間(以下、連続期間と呼ぶ)を計測する。連続期間が閾値(ここではT_burstの期間)以上となった場合に、パラメータ選択部205に通知する。
パラメータ選択部205は、一定期間アクセス試行を停止するためのフレーム間隔(T_pause)を選択する。送受信処理部206は、パラメータ選択部205から受け取ったフレーム間隔に基づいて、一定期間(T_pause)をフレーム間隔に追加し、フレームの送信を停止する。
【0086】
次に、第6の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例について図12を参照して説明する。
図12は上段がイニシエータの動作シーケンスを示し、下段がレスポンダーの動作シーケンスを示す。なお、レスポンダーの場合は、図12に示すInitIFS_CをRspIFS_Cに置き換え、同様の処理を行えばよい。
【0087】
連続期間1201は、具体的には、イニシエータではInitIFS_Cで最初にアクセス権を獲得した時から、レスポンダーからの応答フレームを受信してInitIFS_Cの期間待機している間にキャリアセンスビジーであることを検出するまでの期間である。すなわち、レスポンダーからの応答フレームを受信しそれに続いて再びInitIFS_Cでアクセス権を獲得し続けられる間は連続期間中であるとする。
【0088】
図12に示すように、イニシエータが、InitIFS_C経過後に、アクセス権を獲得し、DATA1をレスポンダーに送信する。レスポンダーは、DATA1を受信してACK1をイニシエータに返送する。このような処理を続けて、イニシエータがInitIFS_C経過後にDATAnをレスポンダーに送信する。このとき、1対1近接通信システムにおけるフレーム送信処理が一定期間(T_burst)を超えて続くと、イニシエータは、レスポンダーからのACKnを受信後、一定期間(T_pause)は次のアクセス試行まで待機する。
【0089】
なお、1対1近接通信システムにおいてある期間フレーム交換がないと通信相手の無線通信装置がまだ存在するかどうかを確認するフレームを送り、応答がなければ接続を切断するという手法がある。この期間をT_keepaliveとする。もし1対1近接通信システムがこの手法を用いている場合は、存在確認のために使用する期間T_keepaliveよりもT_pauseの期間を短くする必要がある。
【0090】
イニシエータまたはレスポンダーが、T_burst期間の経過後にT_pauseの期間に移行するタイミングは、フレームを送信し、送信したフレームに対する応答フレームを受信したとき、または応答フレームの有無を確認する固定時間内に応答フレームがないと判定したときとすればよい。その後、イニシエータでのT_burstの期間が経過した後のアクセス試行のタイミングは、T_pause+InitIFS_Cの期間経過後とする。
なお、このT_pause+InitIFS_Cの期間をInitIFS_C_Sとして定義してもよい。
【0091】
パラメータ保持部204では、通常時の第1セットでは連続時間開始時と連続時間内とのアクセス時のフレーム間隔は共に同じ値とし、例えばイニシエータではInitIFS、レスポンダーではRspIFSを格納する。他システムとの共存対応の第2セットでは、イニシエータ用としてInitIFS_C_SとInitIFS_C_Sとを、レスポンダー用としてInitIFS_CとRspIFS_C_S(T_pause+RspIFS)とをそれぞれ格納してもよい。T_pauseの値としては、他システムでの平均ランダムバックオフ期間の値を用いてもよい。
【0092】
上述の例では、T_pause期間もフレーム間隔の1つの種別として、T_pause期間中にキャリアセンスを行なうことを想定するが、T_pauseを単なるアクセス休止期間としてもよい。この場合は、T_pause期間中はキャリアセンスを行わず、その後に実施するアクセス時からキャリアセンスを行えばよい。またこのとき、パラメータ保持部204に格納されるフレーム間隔のセットには、T_pauseの概念に相当する値は格納しなくともよい。例えば、送受信処理部206が、パラメータ選択部205から第2セットを利用することを示す通知がある場合は、連続期間を計測し、連続期間がT_burst以上となった場合に、T_pauseが経過するまで待機する処理を行えばよい。
【0093】
なお、ここでは誤りが発生するなどした場合も連続期間が終了したとする。但し、1対1近接通信システム内で、無線信号がキャリアセンスビジーであると判定できる場合には、連続時間が継続しているとしてもよい。キャリアセンスビジーであると判定できる場合とは、具体的には、例えば無線信号を受信してPHYパケットのプリアンブルを正しく検出できる場合である。
イニシエータ及びレスポンダーのそれぞれで、連続時間を把握及び管理する例を説明したが、このように1対1近接通信システム内で、無線信号がキャリアセンスビジーであると判定できる場合に連続時間を継続するようにできれば、1対1近接通信システム全体としての連続時間を管理及び制御できるようになり、システム間での媒体共有の公平性を図ることができる。
【0094】
以上に示した第6の実施形態によれば、無線通信装置がある期間連続してアクセス権を獲得し続けた場合には、一旦アクセスの試行を一時休止することで、他の通信システムの無線装置も必ず送信機会を得ることができ、媒体アクセスの共有の公平性を図ることができる。
【0095】
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、フレーム間隔のセットを期間に応じて切り替える点が他の実施形態と異なる。
第7の実施形態に係る無線通信装置におけるフレーム間隔のセットの切り替え例を図13に示す。
イニシエータとレスポンダーとがそれぞれ、通常時のフレーム間隔である第1セットと他システムとの共存時のフレーム間隔である第2セットとを、一定期間ごとに交互に設定して通信する。ここでは、通常フレーム間隔使用期間1301では第1セットを、共存用フレーム間隔使用期間1302では第2セットをそれぞれ用いる。
【0096】
第7の実施形態に係る無線通信装置は、図1に係る無線通信装置と同様の構成であるが、送受信処理部206、パラメータ保持部204及びパラメータ選択部205の動作が異なる。
【0097】
パラメータ保持部204は、通常フレーム間隔使用期間1301の終了を判定するため時間T_genを設定し、共存用フレーム間隔使用期間1302の終了を判定するため時間T_coexを設定して保持する。
【0098】
パラメータ選択部205は、他システムとの共存が必要であると判定した場合に、送受信処理部にT_gen及びT_coexの時間管理をするように指示する。
【0099】
送受信処理部206は、T_genまたはT_coexの時間経過に合わせて、パラメータ保持部204から第1セットまたは第2セットのフレーム間隔を参照してフレームの送信処理を行なう。
あるいは、パラメータ選択部205が、他システムとの共存が必要であると判定した場合に、T_gen及びT_coexの時間管理を行い、T_gen及びT_coexのどちらかの時間が経過すると、パラメータ選択部205が送受信処理部206に対して次に移るフレーム間隔使用期間で使用するフレーム間隔のセットを、パラメータ保持部204から参照させるように指示してもよい。
【0100】
T_genとT_coexとをイニシエータとレスポンダーとで共通の値として認識するには、例えば予めシステムとして設定してもよいし、接続確立時に決めるようにしてもよい。また、T_genとT_coexとはイニシエータとレスポンダーとのそれぞれで、自立分散的に時間管理するが、第6の実施形態における連続時間のように一方のアクセスが連続で成功するという条件はない。よって、単純に無線通信装置内で第1セットまたは第2セットのフレーム間隔を用いている期間を観測すればよい。
【0101】
システム全体として他システムとの媒体の共有の公平性を図る場合は、フレームヘッダを用いて現フレームで使用するフレーム間隔のセットを一方から他方に通知する。このようにすることで、イニシエータとレスポンダーとでT_gen及びT_coexのタイミングを合わせられる。
【0102】
また、上述の1対1近接通信システムでT_keepaliveの間フレーム交換がないと、確認フレームを送信し、その結果応答がなければ接続を切断するという手法を用いる場合を想定する。この場合、第2セットの設定によっては、共存用フレーム間隔使用期間1302には1対1近接通信システムでの通信実現が難しいこともありえるので、共存用フレーム間隔使用期間1302はT_keepaliveよりも短くすることが好ましい。
【0103】
以上に示した第7の実施形態によれば、1対1近接通信システムの無線通信装置は、時間軸上で統計的に他システムの無線装置と媒体の共有の公平性を図ることができる。
【0104】
(第8の実施形態)
上述の実施形態では、他システムとして1対1近接通信システムとは別のシステム、例えばCSMA/CAを用いるIEEE802.11無線LANを想定する。第8の実施形態では、同一の1対1近接通信システムが近傍に存在して干渉する場合を想定する点が異なる。CSMA/CAは、媒体つまり周波数チャネル上で他の無線装置が送信しているかを観測するキャリアセンスを行い、その結果他の無線装置が送信していることを把握するとその送信終了からランダム時間待って送信(ランダムアクセス)を行うものである。このランダムアクセスがCarrier Avoidance(CA)に対応した動作である。
【0105】
この場合、無線通信装置は、他システムが近傍に存在し共存のための動作が必要であると判定すると、第7の実施形態と同様に、通常フレーム間隔使用期間T_genと共存用フレーム間隔使用期間T_coexを使い分ける動作を行う。
ここで他システムとは、他の1対1近接通信システムであると把握した場合であってもよいし、他の1対1近接通信システムの可能性がある場合と判定した場合でもよい。また、他システムの種別を問わないが、その場合は第7の実施形態と同様になる。
通常フレーム間隔使用期間では第1実施形態から第7の実施形態と同様に第1セットのフレーム間隔を用いる。共存フレーム間隔使用期間では、第1の実施形態から第6の実施形態のいずれかに示す第2セットを用いるようにしてもよいし、これに限らない。すなわち、アクセス時のフレーム間隔が第1セットの使用時よりも不利になるように、つまり長くなるように第2セットがなっていればよい。
【0106】
ここで、第2セットを第1の実施形態から第6の実施形態のいずれかで記載された第2セットを用いるようにすれば、他システムとして1対1近接通信システムと媒体を共有する場合でも異種のシステムと媒体を共有する場合でも区別せずに公平な共有を図ることができる。
第2セットをアクセス時のフレーム間隔が第1セットを使用時よりも不利になる、つまりフレーム間隔が長くなるようにする調整し、必要最低限の長さの違いを有するように定義する。例えば送受の切り替え時間中はキャリアセンスをできないことから、その時間より大きな差分があるように定義する。このようにすることで、無駄な無信号期間を抑制しつつ1対1近接通信システム同士の共存に適した状況、つまり効率的な1対1近接通信システム間の共存状態を作りだすことができる。
【0107】
具体的には、例えば1対1近接通信システムが2つ互いの干渉領域に存在する場合には、T_gen内で送信するイニシエータが最も優先度が高く、次にT_gen内で送信するレスポンダー、その次にT_coex内で送信するイニシエータ、最も優先度が低いのはT_coex内で送信するレスポンダー、となるように4段階のアクセス時のフレーム間隔の差分があるようにすればよい。あるいは、T_gen内で送信するイニシエータが最も優先度が高く、次にT_coex内で送信するイニシエータ、その次にT_gen内で送信するレスポンダー、最も優先度が低いのはT_coex内で送信するレスポンダー、となるように4段階のアクセス時のフレーム間隔の差分があるようにしてもよい。
以上に示した第8の実施形態によれば、自立分散的に各無線通信装置がT_genとT_coexとを切り替えて動作することで、時間軸上で統計的に他システムの無線装置と媒体の共有の公平性を図ることができる。また、現フレームで使用するフレーム間隔のセットを同一のシステム内の一方の無線通信装置から他方に通知して、イニシエータとレスポンダーとでT_genとT_coexとのタイミングを合わせることにより、システム全体として他の1対1近接通信システムと媒体の共有の公平性を図ることができる。
【0108】
(第9の実施形態)
上述の実施形態では、1対1近接通信システムはCSMAするが、少なくとも接続確立後にCarrier Avoidanceは行わないとしている。第9の実施形態では、他システムとの媒体の公平な共有を考慮していない通常動作時はCarrier Avoidanceは行わないが、他システムの干渉がある場合にはCarrier Avoidanceを行う。Carrier Avoidanceは、例えばIEEE802.11無線LANでのランダムアクセスと同様の動作を行えばよい。
【0109】
第9の実施形態に係る無線通信装置の構成は、図1と同様であるが、パラメータ保持部204と送受信処理部206との動作がそれぞれ異なる。
パラメータ保持部204は、第1セットのみを保持する。
送受信処理部206は、パラメータ選択部205から他システムとの共存が必要であると指示がある場合、アクセス時には第1セットのアクセス時に用いるフレーム間隔(InitIFSもしくはRspIFS)にさらにランダム関数が生成した値に第1セットのスロット時間(Slot1)をかけた値を追加した時間だけキャリアセンスを行う。
フレーム送信をする前にキャリアセンスがビジーであると検出した場合の動作は、ランダムアクセスを用いる既存システムでの動作を参照すればよい。接続確立時のフレーム送信でランダムアクセスを行うなら、その際用いるランダム関数を利用し、ランダムアクセスする詳細な動作も接続時の方法を用いればよい。送受信処理部206は他システムとの共存が必要であるとの指示がない場合には前述の第1の実施形態から第9の実施形態と同様、第1セットのみを用いる。
【0110】
また、ランダム値の生成幅(ランダム関数が0からいくつまでの間の値を返すようにするか)を少なく制限することによって、1対1近接通信システム間の共存として最適化を図ることができる。
【0111】
またパラメータ保持部204は、第2セットも保持し、想定する他システムを考慮し、例えば第2セットとしてアクセス時のフレーム間隔を第1セットのものより長くし(InitIFS_C、RspIFS_C)、さらにスロット時間も長くする(Slot1_C)。その上で、他システムと共存の必要があるとの指示がある場合には、第2セットを使用して、アクセス時にはランダム関数が生成した値に第2セットのスロット時間(Slot1_C)をかけた値を追加した時間だけキャリアセンスを行うようにすれば、異種のシステムとの媒体の公平性を図ることもできる。
【0112】
以上に示した第9の実施形態によれば、CSMA/CAを行うことによって、上述した実施形態と同様に、他システムの無線装置と媒体の共有の公平性を図ることができる。
【0113】
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、バッファを備える。このように、バッファを無線通信装置に含める構成とすることにより、送受信フレームをバッファに保持することが可能となり、再送処理や外部出力処理を容易に行うことが可能となる。
【0114】
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、第10の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、バス、プロセッサ部、及び外部インターフェース部を備える。プロセッサ部及び外部インターフェース部は、バスを介してバッファと接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。
【0115】
(第12の実施形態)
第12の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
【0116】
(第13の実施形態)
第13の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
【0117】
(第14の実施形態)
第14の実施形態では、第13の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、NFC(Near Field Communications)送受信部を追加し、電源制御部及び送受信処理部206と接続したものである。このように、NFC送受信部を無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となるとともに、NFC送受信部をトリガとして電源制御を行うことによって待受け時の低消費電力化を図ることが可能となる。
【0118】
(第15の実施形態)
第15の実施形態では、第13の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、送受信処理部206と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
【0119】
(第16の実施形態)
第16の実施形態では、第11の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
【0120】
(第17の実施形態)
第17の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、送受信処理部206あるいはPHY処理部203と接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
【0121】
(第18の実施形態)
第18の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、送受信処理部206あるいはPHY処理部203と接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
【0122】
(第19の実施形態)
第19の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、複数の異なるPHY処理部203を設け、無線切替部を含む。無線切替部は、複数の異なるPHY処理部203に接続され、異なるPHY処理部203による通信の間を切替える。このように、複数の異なるPHY処理部203を無線通信装置に備える構成とすることにより、状況に応じて適切なPHY処理部203を用いた通信に切替えることが可能となる。
【0123】
(第20の実施形態)
第20の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、複数の異なるPHY処理部203を設け、またこれら各々のPHY処理部203に対応する送受信処理部206を設け、無線切替部を含む。無線切替部は、送受信処理部206を切り替えられるように接続され、異なる送受信処理部206及びPHY処理部203による複数の通信方式の間を切替える。送受信処理部206及びPHY処理部203の対の1つは例えば無線LANに対応する。このように、複数の異なる送受信処理部206及びPHY処理部203のセットを無線通信装置に備える構成とすることにより、状況に応じて適切な送受信処理部206及びPHY処理部203のセットを用いた通信に切替えることが可能となる。また各送受信処理部206に対応させてパラメータ保持部204とパラメータ選択部205も設けるようにしてもよい。このように複数の異なる送受信処理部206、パラメータ保持部204、パラメータ選択部205及びPHY処理部203のセットを無線通信装置に備える構成とすることにより、状況に応じて適切な送受信処理部206、パラメータ保持部204、パラメータ選択部205及びPHY処理部203のセットを用いた通信に切替えることが可能となる。
【0124】
(第21の実施形態)
第21の実施形態では、第19の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、スイッチ(SW)を含む。スイッチは、アンテナ201、複数の異なるPHY処理部203、無線切替部に接続される。このように、スイッチを無線通信装置に備える構成とすることにより、アンテナ201を共用しながら状況に応じて適切なPHY処理部203を用いた通信に切替えることが可能となる。
【0125】
(第22の実施形態)
第22の実施形態では、第20の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、スイッチ(SW)を含む。スイッチは、アンテナ201、送受信処理部206、及び無線切替部に接続される。このように、スイッチを無線通信装置に備える構成とすることにより、アンテナを共用しながら状況に応じて適切な送受信処理部206(またパラメータ保持部204とパラメータ選択部205も各送受信処理部206に対応して設ける場合はこれらも含む)及びPHY処理部203のセットを用いた通信に切替えることが可能となる。
【0126】
ここで、上述の実施形態に係る無線通信装置における通信レンジについて説明する。
通信レンジは主に送信電力とアンテナ利得とで決まる。ある無線通信装置(第1無線通信装置)が、ある送信電力で任意の周波数の無線信号を送信する場合、方向に依存する送信アンテナ利得を持つと想定する。また、この無線信号を受信する他方の無線通信装置(第2無線通信装置)では、方向に依存する受信アンテナ利得を持つと想定する。第1無線通信装置からある距離、ある方向における第2無線通信装置での無線信号の受信電力は、統計的に送信電力、周波数、無線通信装置間の距離、その方向の第1無線通信装置側の送信アンテナ利得及びその方向の第2無線通信装置側の受信アンテナ利得に依存する。
【0127】
送信電力からの統計的な電力の減衰量は、無線通信装置間の距離と無線信号が使用する周波数とから求めることができる。使用する周波数が高いほど減衰量は大きくなる。受信電力は、デシベル表記では送信電力と送受のアンテナ利得の和からこの減衰量を差し引いたものと言い換えることができる。無線信号を復号する際の誤り率、ひいては復号により再現した物理(PHY)パケットのペイロードから抽出されるフレームの誤り率は、無線信号の受信電力に依存する。すなわち、受信電力が小さくなればなるほど誤り率は高くなることから、無線通信が成立可能な範囲、つまり通信レンジが導かれる。
【0128】
このようにして、ある周波数を用いる無線信号の通信レンジを送信電力と送受のアンテナ利得とによって制限することができる。また、より積極的に通信レンジを制限するには、受信電力がある値以上の無線信号に対してのみ復号処理を行うようにすればよい。例えば、図1において無線通信装置101と無線通信装置102とは、送信電力を0dBmに制限し、検討の便宜上、無指向性アンテナで送受を行う(つまり送受のアンテナ利得は各々0dB)とする。さらに、60GHzのミリ波帯を用いるとし、その結果およそ3cmの距離で−48dBmの受信電力になるとすると、受信電力が−48dBm以上の無線信号を受信した場合にのみ復号処理を行うように設定できる。
なお、当然この復号処理を行う受信電力の基準値以上では、復号処理が行える変調符号化方式(Modulation and Coding Scheme;MCS)が1つ以上はある、ということを前提とする。すなわち、最低受信感度が当該受信電力の基準値以下となるMCSが1つ以上はあるということが前提である。
【0129】
この復号処理を行う受信電力の基準値未満の無線信号に関しては、復号処理を行わないので、受信電力の基準値をキャリアセンスレベルとし、当該受信電力の基準値以上の無線信号ではキャリアをビジーと認識し、それ未満の無線信号に関してはキャリアをアイドルと認識するようにしてもよい。このようにして、ある周波数を用いる際の無線信号の通信レンジを送信電力と送受のアンテナ利得と受信電力の復号処理の基準値とによって制限することができる。言い換えると、受信電力の復号処理の基準値とキャリアセンスレベルとを同じにするなら、ある周波数を用いる際の無線信号の通信レンジを送信電力と送受のアンテナ利得とキャリアセンスレベルによって制限することができる。
【0130】
次に、一般的な通信システムにおけるフレーム種別について説明する。
一般的に通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。
【0131】
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
【0132】
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
【0133】
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。
【0134】
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、接続確立の手順においては、接続要求フレームと接続受付フレームが管理フレームであり、接続受付フレームへの確認フレームは制御フレームの応答フレームを用いることができる。
【0135】
次に、無線通信装置間の接続切断の手法について説明する。
接続の切断には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続している無線通信装置のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。このフレームは管理フレームに分類される。切断のためのフレームは、例えば接続をリリースするという意味でリリースフレームと呼ぶことがある。通常、リリースフレームを送信する側の無線通信装置ではリリースフレームを送信した時点で、リリースフレームを受信する側の無線通信装置ではリリースフレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、通信フェーズでの初期状態、例えば通信相手の無線通信装置を探索する状態に戻る。これは、切断のためのフレームを送信する際には、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるといった、物理的な無線リンクが確保できないことがあるからである。
【0136】
1対1近接通信システムにおける物理的な無線リンク切断の一例を図14に示す。
図14に示すように、無線通信装置101の通信レンジ1401と無線通信装置102の通信レンジ1402とには、互いにもう一方の無線通信装置が存在しない。よって、切断のためのフレームを相手の無線通信装置に送信しても、その確認応答を期待できないので、リリースフレーム送信側の無線通信装置では、リリースフレームを送信した時点で接続切断と判定する。
【0137】
一方、暗示的な手法としては、一定期間接続を確立した接続相手の無線通信装置からフレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自装置が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、リリースフレームの受信を期待できないからである。
【0138】
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマ(例えばデータフレーム用の再送タイマ)を起動し、第1のタイマが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマは止められる。
【0139】
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。第1のタイマと同様、第2のタイマでも、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。
【0140】
あるいは接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。この場合も、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマはここでは第2のタイマとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマを用いるようにしてもよい。
【0141】
次に、一般的な1対1近接通信システムでのアクセス方式について説明する。
【0142】
1対1近接通信システムでは、接続確立後には通信相手は1つの無線通信装置だけであり、通信レンジを狭く制限していることにより、通信相手以外の無線通信装置が同一チャネルで近傍に存在する状況、つまり通信相手以外の無線通信装置と同一無線媒体上で干渉または競合することはまれであることから、複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した通信システムとは無線媒体にアクセスする際の条件が異なる。
【0143】
例えば複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した通信システムとして無線LANシステムがある。IEEE802.11(拡張規格なども含む)無線LANではCSMA/CAをアクセス方式の基本としている。ある無線装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線装置の送信を把握した複数の無線装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線装置が1つなら無線装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
【0144】
1対1近接通信システムで考えると、通信相手の無線通信装置が一意に決まる前、つまり接続確立の段階では、複数の無線通信装置が通信相手として候補となる場合も考えられ、その際には無線媒体上での競合の仕組みはあってもよい。しかし一旦接続が確立された後は、通信レンジが狭く制限されていることから基本的に他の無線通信に干渉を与えにくく、かつ1対1の通信に制限されていることから接続確立後に他の無線通信装置との接続及び通信はない。従って、複数の無線通信装置が無線媒体上で競合する仕組みは基本的には不要である。またランダムアクセスは無線媒体上でオーバーヘッドとなり、通信効率という点からも好ましくない。
【0145】
そこで本実施形態に係る1対1近接通信システムは、上述のようにキャリアセンスを行いアクセスはするが、つまりCSMAはするが、少なくとも接続確立後にはCarrier Avoidanceは行わないものであると想定する。
【0146】
ここで、干渉とは他の無線通信システムから受ける場合と与える場合との両方がある。
【0147】
1対1近接通信を考える場合、通信レンジが狭く制限されているため、それよりも通信レンジの広い無線通信システムの無線装置では、多くの場合、1対1近接通信システムからの無線信号を検知せずに送信を行える。しかし、このような場合にも1対1近接通信システム側の無線通信装置では、通信レンジの広い無線通信システムからの無線信号を受信する状況が発生する可能性がある。つまりこの場合、1対1近接通信システムは他の無線通信システムから干渉を受けるが、他の無線通信システムに干渉を与える状況ではない。このような状況では、1対1近接通信システムではキャリアセンスに基づき通信レンジの広い無線通信システムで用いられるPHY方式の復号が行えなくても受信電力によりその送信を検知することはできる。一方、通信レンジの広い無線通信システムの無線装置では、当該1対1近接通信システムからの無線信号を検知せずに送信してしまう。そのため、1対1近接通信システム側でフレーム間隔を調整しても無線媒体を共有することはできない。一方、1対1近接通信システムと通信レンジの広い無線通信システムとの共存時では、前述の実施形態に係る無線通信装置により無線媒体の共有を図る必要がある。
【0148】
次に、1対1無線通信システムにおける一般的なフレーム交換の一例について図15を参照して説明する。
ここでは、2つの無線通信装置は接続確立の手順を経て1対1近接通信システムを構成しているとする。
【0149】
イニシエータは、無線媒体がInitIFSの間空いていることを確認し、データフレーム(DATA1)をレスポンダーに送信する。
レスポンダーは、DATA1をイニシエータから受信し、SIFS1経過後に、応答フレーム(ACK1)をイニシエータに送る。
ここで、例えばレスポンダー内でDATA1受信中にデータフレーム(DATA2)の送信要求が発生したとすると、レスポンダーはその後RspIFSの間が空くまで送信を延期する。図15の例では、レスポンダーは、ACK1送信後にイニシエータからの送信がないため、ACK1送信後RspIFSの間待ってからDATA2をイニシエータに送信する。DATA2を受信したイニシエータは、そのSIFS1後に応答フレーム(ACK2)をレスポンダーに送信する。
【0150】
InitIFSとRspIFSとで最小値を設定する一方最大値を設定しないのは、前述の例とは異なり、送信要求が発生した際にキャリアがビジーとなっていない場合、前のキャリアセンスビジー状態からの時間としては制限がないからである。フレーム間隔の定義を前のキャリアセンスビジー状態からカウントするということから、送信前にキャリアセンスアイドルを確認して空けるべき連続期間、というように変えると、InitIFS、RspIFSはそれぞれ3μs、7μsであると定義することができる。
【0151】
一方、SIFS1には最大値が設定されているのは、データフレーム及び管理フレームを送信した側が応答フレームの受信待ちを行い、応答フレームの送信がない場合に、データフレーム及び管理フレーム送信後に固定時間経過した後は、応答フレームの送信がないということを把握する必要があるためである。
応答フレームの送信がないと判定した場合は、データフレーム及び管理フレーム送信側の無線通信装置は、再送処理を行う。SIFS1を厳密な固定時間として定義することも考えられるが、その際には正確なフレームの受信終了時刻を把握及び保持しておく必要がある。さらに実際には伝搬遅延や無線信号を受信及び復号して応答フレームを生成するまでの実装上の遅延の揺らぎなどもあることから、多少の誤差は許容する幅を持たせておくことが望ましい。
なお、これらのフレーム間隔において、実装上キャリアセンスを行う受信状態からフレームを送信する送信状態に送受信器を切り替える時間が必要であるということから、厳密には送受の切り替え時間を差し引いた時間しかキャリアセンスアイドルの状態を観測していない(例えば送信の直前の送受切り替え時間内のキャリアセンス状態は把握できない)ことになる。
【0152】
上述した例では3種類のフレーム間隔を示したが、これらに加えてフレーム受信に失敗したと判定した際に特別なフレーム間隔を定義してもよい。例えば上記イニシエータとレスポンダーとの送信では、イニシエータに送信の優先権を与えるために、InitIFSの最小値をRspIFSの最小値よりも小さくしている。
ここで、イニシエータがデータフレームまたは管理フレームを送信したが、レスポンダーではデータフレームまたは管理フレームの受信に失敗しエラーとなった場合を想定する。イニシエータが応答フレームがないと判定するタイムアウト時間が、データフレームまたは管理フレームの送信後4.0μs以上であるとすると、イニシエータが再送を開始する最小時間は、データフレームまたは管理フレームの送信後から7.0μs以上となる。これは、レスポンダーが、受信エラーとなった後にRspIFS空けたタイミングと同じかそれ以上であり、イニシエータでの再送に優先権を与えることができない。
【0153】
そこで、レスポンダーでは、受信エラーが発生した場合には例えば10.0μsのERIFS(Extended RspIFS)を設けるようにすればイニシエータでの再送の優先権を保証することができる。
【0154】
次に、他の通信システムとして想定するIEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。
IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)の6種類ある。なお、本実施形態に係る1対1近接通信システムでのSIFSと区別するため、ここではSIFSを便宜上SIFS2と表記する。
【0155】
フレーム間隔の定義は、1対1近接通信システムでの場合と異なり、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするためこのような定義になっているといえる。
【0156】
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
【0157】
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category;AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
【0158】
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。
SIFS2は、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。IEEE802.11無線LANでのSIFS2は、1対1近接通信システムでのSIFS1の概念を包含し、かつフレーム種別とフレーム交換とのバリエーションが多いために適用範囲が広いといえる。
EIFSはフレーム受信に失敗した場合に発動されるフレーム間隔である。IEEE802.11無線LANでのEIFSと1対1近接通信システムでのERIFSとは類似している。しかし、IEEE802.11無線LANでは接続形態において1対1近接通信でのようなイニシエータ及びレスポンダーという関係は設けないため、全ての無線通信装置で適用される。
【0159】
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
【0160】
なお、本実施形態に係る1対1近接通信システムではRIFSに対応するフレーム間隔はない。1対1近接通信システムでは、無線通信装置同士を近づけたときに通信を行うので、通信相手となる無線通信装置が近傍にある間、つまり限られた接続時間中に確実にデータ交換を完了させたいという要求がある。よって、アクセス制御を行う層で上位層に委ねることなくエラー制御、フレーム制御まで責任を持ち、無線通信装置内部での高速な処理を図ることが考えられる。
【0161】
この場合、データは、データ送信側の無線通信装置のアクセス制御層で送信された順にデータ受信側の無線通信装置のアクセス制御層から上位層に送られることとなり、そのためにそれぞれのデータフレームに対して送達確認の応答フレームを送信する必要がある。従って、IEEE802.11無線LANにおけるように、バーストでデータフレームを送信するという動作はしない。つまり、RIFSに対応するようなフレーム間隔の定義は存在しない。
【0162】
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図16に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
【0163】
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxとの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功するとその受信終了時点からSIFS2後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたSIFS2後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
【0164】
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFS2とスロット時間との関数になるが、SIFS2とスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
【0165】
例えば、ミリ波帯を用いる802.11adの規格策定では、SIFSは3μs、スロット時間は5μsであるとして、それによってPIFSは8μs、DIFSは13μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBackground(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が38μs、Best effort(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が18μs、Video(AC_VI)とVoice(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が13μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは15と1023、AC_VIでは7と15、AC_VOでは3と7になるとする。なお、EIFSは、SIFS2とDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。本実施形態では、このようなフレーム間隔のパラメータを用いる無線通信システムを通信レンジの広い干渉システムとして想定する。
【0166】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0167】
100・・・1対1近接通信システム、101,102,200・・・無線通信装置、151,152,1401,1402・・・通信レンジ、201・・・アンテナ、202・・・周波数変換部、203・・・PHY処理部、204・・・パラメータ保持部、205・・・パラメータ選択部、206・・・送受信処理部、207・・・上位処理部、300・・・シーケンス、301・・・InitIFS、302・・・オフセット期間、303・・・InitIFS_C、304・・・データ、305・・・SIFS1、306・・・SIFS1_C、307・・・ACK1、1201・・・連続期間、1301・・・通常フレーム間隔使用期間、1302・・・共存用フレーム間隔使用期間。
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信に関する。
【背景技術】
【0002】
他の無線システムからの干渉及び他の無線システムへの干渉を抑えるために、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)を用いた送信停止期間を制御する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−237849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、CSMA/CAにおける送信停止期間を推定するには、他の無線システムが送信の周期性が期待できるものでなければならず、周期的な送信が必ずしも見込めない無線システムに対しては適用することができない。また、CSMA/CAとは、複数の無線通信装置と通信し、及び複数の無線通信装置と競合する可能性のある無線システムで適用する際に適した方式である。よって、1対1での近接通信システムの場合は、CSMA/CAを常に適用することはオーバーヘッドが多くなり、効率が低下する。結果として、効率的な1対1での近接通信を追求すると、周期的な送信が見込めない他の無線システムの無線通信装置との共存時に媒体共有の公平性を図ることができない。
【0005】
本発明の一観点は、他の無線システムの無線通信装置と共存時に公平な媒体共有を実現することができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る無線通信装置は、保持部、選択部および送受信処理部を含む。保持部は、1以上の種別のフレーム間隔を含む第1セットと、第1セットに含まれるフレーム間隔の種別と同一種別のフレーム間隔の長さが該第1セットに含まれる同一種別のフレーム間隔以上の長さであり、かつ少なくとも1つの第1種別のフレーム間隔の長さが前記第1セットに含まれる該第1種別のフレーム間隔よりも長い1以上の種別のフレーム間隔を含む第2セットと、を保持する。選択部は、前記第1セット及び前記第2セットのどちらを用いて通信するかを選択する。送受信処理部は、前記選択部の選択結果に応じて、前記第1セットまたは前記第2セットのフレーム間隔を用いて、第1通信方式を用いる第1装置と通信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係る1対1近接通信システムの概念図。
【図2】第1の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態に係る無線通信装置の、他システムとの共存時のフレーム交換の一例を示す図。
【図4】イニシエータのアクセスと他システムでの優先的なアクセスとが同時となる場合の動作シーケンスの一例を示す図。
【図5】フレーム送受信中にフレーム間隔を変更した場合の一例を示す図。
【図6】第2の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例を示す図。
【図7】第4の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換のうち、イニシエータからデータ送信する一例を示す図。
【図8】第4の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換のうち、レスポンダーからデータ送信する一例を示す図。
【図9】第4の実施形態に係る1対1近接通信システムの無線通信装置と他システムの無線装置との共存時の動作例を示す図。
【図10】第5の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換のうち、イニシエータからデータ送信する一例を示す図。
【図11】第5の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換のうち、レスポンダーからデータ送信する一例を示す図。
【図12】第6の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例を示す図。
【図13】第7の実施形態に係る無線通信装置におけるフレーム交換のセットの切り替え例を示す図。
【図14】1対1近接通信システムにおける物理的な無線リンク切断の一例を示す図。
【図15】1対1無線通信システムにおける一般的なフレーム交換の一例を示す図。
【図16】IEEE802.11無線LAN(Local Area Network)におけるコンテンション期間のフレーム交換の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本開示の一実施形態に係る無線通信装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
(第1の実施形態)
本実施形態では、2つの無線通信装置が、1対1の近接通信システムを構成していると想定する。1対1の通信とは、ある無線通信装置と接続確立後は、接続が切断するまで同じ無線通信装置とのみ通信を行なうことを示す。近接通信は、通信レンジを極端に狭く制限した通信方式である。例えば通信距離が3cmといった、数cmオーダーの通信レンジに存在する無線通信装置が通信可能であるとする。なお、無線通信装置にアンテナを含む場合は、機器同士を接触させることにより通信を行なってもよい。
【0009】
また、本実施形態では、1対1近接通信システムとは異なる通信方式を用いる他の通信方式を用いた無線通信システム(以下、他システムという)と共存する場合を想定する。「共存」とは、例えば、1対1近接通信システムの無線通信装置からの無線信号を他の通信方式による通信レンジの広い無線通信システムの無線通信装置が検知できる状況である。すなわち、1対1近接通信システムにおける通信が通信レンジの広い無線通信システム側にも影響、例えば干渉を与える。本実施形態では、このような状況を他システムと「共存」すると定義する。通信レンジの差は、詳細は後述するが、最大送信電力とアンテナ利得との和で決まる。よって、1対1近接通信システムの通信レンジが他システムの通信レンジより狭ければ、1対1近接通信システムにおける最大送信電力とアンテナ利得との和は、他システムにおける最大送信電力とアンテナ利得との和より小さい。
【0010】
1対1近接通信システムの概念図について図1を参照して説明する。
近接通信システム100は、無線通信装置101及び無線通信装置102を含む。図1の例では、無線通信装置101の通信レンジ151内に無線通信装置102が存在し、無線通信装置102の通信レンジ152内に無線通信装置101が存在するため、無線通信装置101と無線通信装置102との間で無線通信を行なうことができる。
無線通信を行うための接続確立の手順、すなわち通信設定を行なう手順は、無線通信を実現するために必要な互いの情報を把握するため、互いの情報を通知し合う手順である。互いの情報とは、例えば無線通信装置の識別子(IDentifier:ID)、または通信方式として複数のバージョンがある場合は対応するバージョン番号である。さらに、本無線アクセスプロトコル層の上の層での整合性を照らし合わせて、他の無線通信装置を通信相手とするかどうかの判定に用いるために、上位層のパラメータ情報などを含んでもよい。
【0011】
接続確立を行なう際、2つの無線通信装置のうち、一方がイニシエータとなり、もう一方がレスポンダーとなる。イニシエータとレスポンダーとの関係を決める手順は例えば次のようになる。
無線通信装置101は接続要求フレームを無線通信装置102に送信し、無線通信装置102が接続要求フレームを受信する。無線通信装置102は、無線通信装置101を接続相手として受け付ける判定を行なって、接続相手となる旨を通知するための接続受付フレームを無線通信装置101に送信する。
無線通信装置101は、接続受付フレームを受信し、無線通信装置102を接続相手として受け付ける判定を行なって、接続受付フレームに対する応答フレームを通信相手となる無線通信装置102に送信する。この手順により、無線通信装置101と無線通信装置102との接続が確立する。このような接続確立の手順において、接続要求フレームを送信した無線通信装置、すなわちこの例では無線通信装置101がイニシエータに、接続受付フレームを送信した無線通信装置、すなわちこの例では無線通信装置102がレスポンダーになる。
【0012】
次に、第1の実施形態に係る無線通信装置について図2を参照して説明する。
第1の実施形態にかかる無線通信装置200は、アンテナ201、周波数変換部202、PHY(PHYsical)処理部203、パラメータ保持部204、パラメータ選択部205、送受信処理部206および上位処理部207を含む。
【0013】
アンテナ201は、後述の周波数変換部202に接続され、外部からの無線信号を受信し、または、外部に無線信号を送信する。アンテナの構成は、ダイポールアンテナ、パッチアンテナなど一般的な構成であればよいため、ここでの詳細な説明は省略する。第1の実施形態に係る無線通信装置200は、アンテナ201を含むことで、アンテナ201まで含めた1つの装置として構成することができるため、実装面積を少なくすることができる。また、アンテナ201を送信及び受信で共用することにより、無線通信装置200を小型化することができる。なお、アンテナ201は、ここでは1つの例を示すが、複数でもよい。
【0014】
周波数変換部202は、受信処理の場合は、アンテナ201から無線信号を受け取り、後述のPHY処理部203で処理可能な基底帯域(Baseband)信号に復調する。送信処理の場合は、PHY処理部203から物理パケットを受け取り、送信するための周波数帯、例えば60GHzのミリ波帯の無線信号に変調する。
【0015】
PHY処理部203は、受信処理の場合は、周波数変換部202から基底帯域信号を受け取り、基底帯域信号に対して物理パケット復号化処理、またプリアンブル及び物理ヘッダなどを取り除く処理を行なう。PHY処理部203は、これらの処理が行われた後のペイロード部をフレームとして抽出する。また送信処理の場合は、PHY処理部203は、送受信処理部206からフレームと送信指示とを受け取り、符号化などの処理を行って物理パケットに変換する。
なお、PHY処理部203は、フレームを送受信処理部206に送る前には、物理パケットの受信開始の通知信号を、フレームを送受信処理部206に送った後には、物理パケットの受信終了の通知信号をそれぞれ送受信処理部206に送る。さらに、物理パケットのエラー検出の通知や、無線媒体の状況に関する情報についても送受信処理部206に送る。
【0016】
パラメータ保持部204は、フレーム間隔に関するパラメータのセットを2つ保持する。フレーム間隔は、フレームを送信する前に空ける時間を示す。より具体的には、フレーム間隔は、自装置からのフレーム送信後、同一システムの無線通信装置からのフレーム受信後、異なる無線システムの無線通信装置からの無線信号を受信後、または無線媒体上でのキャリアセンスの結果、キャリアをビジーと検出しそれが再びアイドルとなったことを検出した後、のいずれかからフレームを送信するまでに空ける時間のことである。自装置からのフレーム送信中もキャリアがビジーと認識させる動作を含めるなら、上記いずれの場合も最終的には、フレーム間隔とは無線媒体上でのキャリアセンスの結果、キャリアをビジーと検出しそれが再びアイドルとなったことを検出した後からフレームを送信するまでの時間である。
【0017】
パラメータ保持部が保持する1つ目のセットは通常時、つまり干渉対策が不要の場合に用いるフレーム間隔であり、具体的には、initiator interframe space(InitIFS)、responder interframe space(RspIFS)及びSIFSである。例えばこれを第1セットと呼ぶ。2つ目のセットは、干渉対策が必要である場合に用いるフレーム間隔であり、第1セットに含まれるフレーム間隔の種別と同一種別のフレーム間隔の長さが、第1セットに含まれるフレーム間隔以上の長さである。これをInitIFS_C、RspIFS_C及びSIFS_Cと定義する。例えばこれを第2セットと呼ぶ。なお、ERIFSを設ける場合には、同様にERIFSとERIFS_Cとをそれぞれのセットに加える。各セットに含まれるフレームの種別については後述する。
なお、パラメータ保持部204は、1つのセット(上述の例ではInitIFS、RspIFS及びSIFS)とオフセット値とを保持しておくようにしてもよい。
【0018】
パラメータ保持部204は、後述のパラメータ選択部205によって選択されたセットを送受信処理部206が用いるようにさせる。すなわち、送受信処理部206が、使用するセットを参照できるようにしてもよいし、あるいは送受信処理部206に使用するセットを送ってもよい。
【0019】
また、パラメータ保持部204で保持するセットは、送受信処理部206またはパラメータ選択部205により設定変更できるようになっていてもよい。
【0020】
パラメータ選択部205は、パラメータ保持部204でのフレーム間隔に関するセットのどちらを用いるかを選択する。パラメータ保持部204が1つのセットとオフセット値とを保持する場合は、パラメータ選択部205は、オフセット値を用いるかどうかの選択を行う。セットの選択は、例えば送受信処理部206を介して取得する再送回数や送信失敗といった送信エラーに関する情報、復号できないまたは途中でキャリアをロスト(欠落)したといった受信エラーに関する情報に基づいて行なう。また、キャリアセンスビジー時間や送信フレームを準備してからの実際の送信までにかかる時間といったアクセスに関する情報などに基づいてセットの選択を行なってもよい。
【0021】
つまり、上述の情報に基づいて、ある値が閾値以上となる場合に、他システムが近傍に存在するまたは存在する可能性があるとして、換言すれば通信が他システムから影響を受けているまたは受けている可能性があるとして、パラメータ選択部205は、他システムとの間の干渉を回避する必要があると判定する。例えば、再送回数が閾値以上となった場合に、パラメータ選択部205は、干渉対策及び共存対策が必要であると判定して、フレーム間隔として第2セットを選択すればよい。なお、パラメータ選択部205は、選択したセットをパラメータ保持部204に通知し、パラメータ保持部204がパラメータ選択部205が選択したセットを把握できるようにする。
なお、パラメータ選択部205は、上位処理部207からの指示により、判定手法を変更できるようにしてもよい。すなわち、パラメータ保持部204で保持するセットのどちらを用いるかをパラメータ選択部205が選択し、選択されたセットを送受信処理部206が用いてフレームの送受信を行なうことができればよい。また、送受信処理部206でセットが変更されるタイミングは、データフレームもしくは管理フレームを送信する時点、すなわち無線媒体上でアクセス権を取得する時点である。
送受信処理部206は、1対1近接通信システムで用いられるフレームの種別、データフレーム、制御フレーム及び管理フレームを扱い、パラメータ選択部205から第1セットまたは第2セットのどちらのフレーム間隔を用いるかの指示を受け取る。送受信処理部206は、パラメータ保持部204に保持されるフレーム間隔のセットを参照して、第1セットまたは第2セットのどちらかのフレーム間隔を用いて他の無線通信装置との間で無線リンク(接続)を確立してフレーム交換を行う。
【0022】
また、送受信処理部206は、媒体アクセス制御(Media Access Control:MAC)に関する処理を行う。なお、データフレームに関しては、データを交換する無線通信装置間のアプリケーション層レベルでデータ送信の順序とデータ受信の順序とが一致するように、送信側でのデータフレーム送信の制御と受信側でのデータの並べ直しとの処理を行なってもよい。具体的に、受信処理の場合、送受信処理部206は、PHY処理部203からデータフレームを受信し、データフレームに対する送達確認用の応答フレームを生成する。送受信処理部206は、データフレームを含んだ物理パケットの受信終了後から、Short Interframe Space(SIFS)の期間を空けて応答フレームをPHY処理部203に送る。SIFSに関しては後述する。また、送受信処理部206は、受信したデータフレームを必要に応じて並べ直し、各データフレームからデータを抽出する。
【0023】
一方、送信処理の場合、送受信処理部206は、後述の上位処理部207からデータを受け取り、データをデータフレームに変換する。送受信処理部206は、送信タイミングを計り、生成したデータフレームと送信指示とを共にPHY処理部203に送る。このとき、送受信処理部206は、送信に必要な変調及び符号化方式の指示なども合わせて行うようにしてもよい。生成したフレームが再送処理の対象となるフレーム(データフレームあるいは管理フレーム)の場合は、その送信後、所定時間内に、送信したフレームに対する応答フレームを受信開始しなければ送信失敗と判定し、フレームを再送する。これらの再送にかかる処理は、従来知られている技術と同様であるのでここでの説明は省略する。送信したフレームに対する応答フレームを受信した場合は送信したフレームの再送処理は不要と判定する。
【0024】
上位処理部207は、受信処理の場合は、送受信処理部206からデータを受け取り、データをアプリケーションへ入力するといった処理を行なう。また、送信処理の場合は、上位処理部207は、ユーザの操作などによってアプリケーションから送信すべきデータを受け取り、送受信処理部206にデータを送る。
【0025】
また、第1の実施形態に係る無線通信装置200では、PHY処理部203と送受信処理部206とは1つずつである。しかし、これに限らず、複数の異なるPHY処理部があり、それぞれに対応する送受信処理部があってもよいし、または異なるPHY処理部にまたがった共通処理部があってもよい。
【0026】
次に、第1の実施形態に係る無線通信装置の他システムとの共存時のフレーム交換の一例について図3を参照して説明する。
図3に示す無線通信装置のシーケンス300は、イニシエータとレスポンダーとのフレーム交換を時系列で表したものであり、図3中の時間軸の上段がイニシエータとなる無線通信装置の動作を示し、下段がレスポンダーとなる無線通信装置の動作を示す。
【0027】
1対1近接通信システムで用いられる通常のフレーム間隔は、InitIFS、RspIFS、SIFSの3つの種別がある。但し、後述の他システムでの場合と区別するためここではSIFSは便宜上SIFS1と表記する。
InitIFSは、イニシエータがフレーム交換の開始を行う際に空けるフレーム間隔である。RspIFSは、レスポンダーがフレーム交換の開始を行う際に空けるフレーム間隔である。SIFS1は、データフレームあるいは管理フレームに対する送達確認である応答フレームを送信する際に用いられるフレーム間隔である。フレーム交換は例えば、データフレームあるいは管理フレームの送信で開始され、データフレームあるいは管理フレームに対する送達確認である応答フレームの受信を受けて終了する。応答フレームを受信しないとフレーム交換が失敗したとする。
例えば、InitIFSは最小で3.0μsであり、それ以上空いていればよく、RspIFSは最小7.0μsであり、それ以上空いていればよく、SIFS1は最小2.0μsであり最大2.5μsである。
【0028】
通常のInitIFS301は、上述のように最小で3μsであるが、第1の実施形態では、InitIFS301を他システムにおいて優先的な送信のために用意されたフレーム間隔であるPIFSと同等な概念で用いられるフレーム間隔であると想定する。よって、PIFSと同一の期間となるように、InitIFS301にオフセット期間302を付加してフレーム間隔の期間長を長くする。第1の実施形態では、他システムのPIFS(8μs)と同一の期間とするためオフセット期間302を5μsに設定する。ここで、InitIFS301にオフセット期間302(5μs)を付加したフレーム間隔をInitIFS_C303と呼ぶ。同様に、SIFS305に対してオフセット期間302(5μs)を付加したフレームをSIFS_C306と呼ぶ。
イニシエータは、InitIFS_C303期間が経過した後に、データ(DATA1)304をレスポンダーに送信する。その後、データ304を受信したレスポンダーはSIFS_C306期間経過した後にACK307をイニシエータに送信する。
【0029】
このように、イニシエータでのフレーム交換の開始時に用いるフレーム間隔の値を、他システムでの優先的な送信のために用意されたフレーム間隔(第1の実施形態ではPIFS)に合わせるようにすることで、イニシエータでのアクセスと他システムでの優先的なアクセスが対等になる。よって、レスポンダーは他システムでの優先的なアクセスよりも劣勢となることから、イニシエータとレスポンダーとが他システムの無線通信装置に対し短いフレーム間隔で有利にフレーム交換の開始できる状況を改善することができる。
なお、図3では、イニシエータからデータフレームを送信する場合を説明したが、レスポンダーでも同様にオフセットを設ければよい。例えば、RspIFSに5μsのオフセット期間を付加し、最小期間が7μs+5μs=12μsとなるRspIFS_Cを定義し、RspIFS_Cをフレーム交換の開始時に用いてもよい。
【0030】
次に、イニシエータのアクセスと他システムでの優先的なアクセスとが同時になる場合のシーケンスについて図4を参照して説明する。
図4は、上段が本実施形態に係る1対1近接通信システムの無線通信装置の動作シーケンスを示し、下段が他システムの無線装置の動作シーケンスを示す。
ステップS401では、イニシエータと他システムの無線通信デバイスとが、キャリアセンスビジー終了(すなわちキャリアセンスがアイドルに戻ったこと)を検出する。ここでキャリアセンスビジーは例えばいずれか一方の無線システムでの送信によるものである。
【0031】
ステップS402では、第1の実施形態に係る1対1無線通信システムのイニシエータがInitIFS_Cの期間を空け、他システムの無線装置がPIFSの期間を空ける。
【0032】
ステップS403では、イニシエータと他システムの無線装置とがそれぞれデータフレーム(DATA1とW_DATA1)の送信を行なう。InitIFS_CとPIFSとは、同じ8μsの期間を有するため、DATA1とW_DATA1とが衝突し、データフレーム受信側の無線通信装置(レスポンダー及び他システムでのデータフレームの送信先となる無線装置)はデータフレームの受信及び復号ができない。よって、レスポンダーでは応答フレームであるACK1を送信せず、他システムでのW_DATA1フレームの送信先となる無線装置では応答フレームであるW_ACK1を送信しない。
【0033】
ステップS404では、他システムのデータ送信側の無線装置では、それぞれ応答フレームの有無の確認動作の結果、応答フレームがないと判定してデータフレームの再送処理を行う。なお、ここではDATA1とW_DATA1とがたまたま同一期間を占有したものとする。他システムとしてIEEE802.11無線LAN(Local Area Network)システムを想定した場合、PIFS経過後にデータフレーム送信を行なう無線装置では、応答フレームの有無の判定は、データフレームW_DATA1を送信して、SIFS2(3μs)後のSLOT2(5μs)の期間の前半部で判定する。つまり、この期間でキャリアセンスビジーを検出しないと、そのSLOT2の期間内に受信から送信への切り替え動作を行い、SLOT2の期間経過後にW_DATA1の再送を行う。つまり、W_DATA1を送信してSIFS2+SLOT2(すなわち8μs)後にW_DATA1の再送を行うことになる。
一方、本実施形態に係る1対1近接通信システムのイニシエータでは、応答フレームの有無の判定は、データフレームDATA1を送信してから5.0μsのオフセット期間を付加したSIFS1_C(最小で7μs)後のスロット時間内(ここではSLOT1と示す)にACK1の有無を判定する。SLOT1は、通常の状態においても干渉対策でフレーム間隔を長く調整する場合においても共通で1.0μsの期間とする。なお、フレーム間隔に係るパラメータの1つとして、干渉対策時には他のフレーム間隔と同様に5.0μsのオフセット期間を付加し、SLOT1_C(1.0μs+5.0μs=6.0μs)と新たに定義して用いるようにしてもよい。図4に示すデータフレームが衝突する例では、イニシエータがACK1を所定の時間内に受信しないため、再度キャリアセンスの状態を確認し、DATA1の再送を行う動作に移行する。
【0034】
SLOT1(1.0μs)経過後にイニシエータが動作する場合では、SLOT1経過後から再度InitIFS_Cを空けてDATA1を再送しようとするが、図4の例では他システムのW_DATA1の送信がある。また、続いて他システムではW_DATA1に対してSIFS2(3μs)経過後にW_ACK1が送信される。さらに、他システムでまだ送信すべきデータフレームがある場合で、送信バースト時間制限内であれば3μsのSIFS2後に、次のデータフレームW_DATA2が送信されるといった、一連のフレーム交換が行われることが想定される。その間イニシエータでは、InitIFS_Cのキャリアセンスアイドル期間が取れないことになり、他システム側でのそのような一連のフレーム交換が終了するまではDATA1の再送が行えないことになる。
【0035】
このようにして、イニシエータのアクセスと他システムでの優先的なPIFSを用いたアクセスは最初の媒体へのアクセス時には同等であるものの、リカバリ動作(すなわち再送)では他システム側が圧倒的に有利となる。一方、イニシエータの媒体アクセス時に用いられるInitIFS_Cは、他システムで最も優先度の高いPIFS以外のアクセス時に用いられるフレーム間隔(正常時のAIFS、DIFS、またエラー発生時に用いられるEIFS)よりも短いため、イニシエータ側に有利となる。また、レスポンダーのアクセス時に用いるフレーム間隔RspIFS_Cは12μsであるので、他システムでのPIFS以外のアクセス時に用いられるフレーム間隔のデフォルト値(後述)のいずれよりも短くなり、レスポンダー側に有利となる。
【0036】
なお、上述した例では、InitIFS_CとPIFSとが同等の期間になるようなオフセット期間の設定の例を示したが、これに限らず、他のフレーム間隔と同等の期間となるようにオフセット期間を設定してもよい。例えば、PIFSの代わりに他システムでの競合のために用いられる、アクセスカテゴリごとに値が異なるAIFS、またはDIFSのいずれかにInitIFS_Cが等価な値となるようにオフセット期間を設定してもよい。具体的には、AIFSの一種別であるAC_VI/AC_VOのデフォルト値(13μs)とInitIFSが同じ期間長になるように、InitIFSにオフセット期間10μsを付加し、1対1近接通信システムで用いる他のフレーム間隔にもそれぞれオフセット期間10μsを付加すればよい。
【0037】
以上に示した第1の実施形態によれば、他のシステムのフレーム間隔を考慮したオフセット期間を本実施形態に係る1対1近接通信システムのフレーム間隔に付加することで、近接通信システムと他システムとの間で公平な媒体の共有を図ることができる。すなわち、少なくとも一方の無線通信システムがもう一方の無線通信システムで通信切断と判定されるほど、長期間独占的に媒体を占有せずに、それぞれの無線通信システムにおいて通信機会を得ることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、イニシエータとレスポンダーとで、通常のフレーム間隔であるIFSの第1セットと、全てのフレーム間隔に固定長のオフセットを追加したIFSの第2セットとを両方ともそれぞれ保持している。よって、互いに同じフレーム間隔のセットを用いなければ互いのIFSにずれが生じる。第2の実施形態では、イニシエータとレスポンダーとのどちらか一方がフレーム間隔を長く設定するように判定した場合に、もう一方に長いフレーム間隔のセット(セット2)を用いることを通知する。このようにすることで、動的にイニシエータとレスポンダーとで同じフレーム間隔のセットを切り替えながら用いることができる。
【0039】
ここで、第1の実施形態に係る1対1近接通信システムにおいて、フレーム送受信中にフレーム間隔を変更した場合の一例について図5を参照して説明する。
図5は、上段がイニシエータの動作シーケンスを、下段がレスポンダーの動作シーケンスを示す。
1対1近接通信システムにおいて、フレーム間隔のセットを変更するタイミングは、データフレームまたは管理フレームを送信するとき、すなわち無線媒体上でアクセス権を取得するときである。よって、受信したデータフレームまたは管理フレームに対する応答フレームを送信するときにフレーム間隔のセットを変更してはならない。具体的には、イニシエータがDATA1をレスポンダーに送信する前は、イニシエータにおいてInitIFSからInitIFS_Cにフレーム間隔を変更してもよい。しかし、レスポンダーでは、DATA1を受信した応答フレームであるACKをイニシエータに送信する際に、SIFSからSIFS_Cにフレーム間隔を変更してはならない。
【0040】
図5の例では、イニシエータは、DATA1を送信後、SIFS1(最小2.0μs)+SLOT1(1.0μs)の期間内でレスポンダーからのACK1があるかどうかを確認する。そのため、レスポンダーが、DATA1を受信してからSIFS1_C(最小7μs)後に応答フレームACK1を送信しようとしても、イニシエータでは、応答フレームACK1が送信されていないとして再送処理に移り、DATA1を「SIFS1+SLOT1+InitIFS」(最小6μs)でレスポンダーに送信する。
【0041】
一方、レスポンダーは、SIFS1_CでACK1をイニシエータに送信するため、1.0μsの切替時間を要すると想定すると、たとえキャリアセンスの結果を待つ動作を行なうとしても、DATA1受信後6.0μs経過後には受信、つまりキャリアセンスを停止してDATA1を再送するための処理に移る。そのため、再送されたDATA1をキャリアセンスで検知しACK1の送信を待機するということなしに、7.0μs経過後にACK1をイニシエータに送信する。その結果、ACK1と再送されたDATA1とが衝突し、イニシエータ及びレスポンダー間のフレーム交換が失敗する。
【0042】
応答フレームを送信する時からもフレーム間隔のセットを変更してよいとする場合は、短いフレーム間隔のセットから長いフレーム間隔のセットに変更する際には、少なくとも1回はフレーム交換が失敗するものとして考慮する必要がある。
【0043】
そこで第2の実施形態では、イニシエータ及びレスポンダーは、接続確立時にはフレーム間隔の第1セットを用い、接続確立後、一方の無線通信装置がフレーム間隔の第2セットを用いると判定した場合に、第2セットを用いてアクセス後に送信するデータフレームまたは管理フレームの中で第2セットを用いるという情報を追加する。この情報は、例えば、送受信処理部206が、データフレームまたは管理フレームのフレームヘッダに、1ビット(以下、通知ビットという)を用意する。そして、「0」なら第1セット、「1」なら第2セットを用いるとすればよい。このデータフレームを受信した無線通信装置は通知ビットの状態から、通信相手の無線通信装置がどちらのフレーム間隔のセットを用いているかを判定し、そのフレーム間隔のセットに合わせる。
【0044】
第2の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例について図6を参照して説明する。
上段がイニシエータの動作シーケンスを、下段がレスポンダーの動作シーケンスを示す。
ステップS601では、イニシエータが第1セットの通常のフレーム間隔を用いてInitIFS経過後にDATA1をレスポンダーに送信し、レスポンダーがSIFS1経過後にACK1をイニシエータに送信する。ここでは、イニシエータが第1セットのフレーム間隔を用いているため、DATA1中のフレーム間隔のセットを示す通知ビットを「0」と設定する。
ステップS602では、イニシエータが第2セットのフレーム間隔を用い、InitIFS_C経過後にDATA2をレスポンダーに送信する。ここでは、イニシエータが第2セットのフレーム間隔を用いているため、フレーム間隔のセットを示す通知ビットを「1」と設定する。
ステップS603では、レスポンダーがDATA2を受信して、DATA2から通知ビットを抽出すると、値が「1」と設定されていることを把握し、第2セットのフレーム間隔を用いるようにする。その後、SIFS_C経過後にACK1をイニシエータに送信する。
【0045】
なお図6に示すように、応答フレームをイニシエータに送信する際から第2セットのSIFS1_Cを用いることが望ましい。しかし、データフレームまたは管理フレームの内容の解析(ここでは特にフレームセットに関する通知ビット)を行ってSIFS1とSIFS1_Cを即時に切り替えにくい場合がある。特に長いセット(第2セット)から短いセット(第1セット)に切り替える場合に即時に対応しにくい。
この場合は、最初のセットの切り替えの通知を含めたフレーム交換では1つ前の古いフレーム間隔のセットを使用し、その後のフレーム交換から新しいセットを使用するようにしてもよい。応答フレームでも上述したように例えばフレームヘッダに通知ビットを用意し、用いるフレーム間隔のセットを通知するようにする。
このようにすることで、データフレーム及び管理フレーム送信側の無線通信装置において、受信側の無線通信装置が、まだ応答時間は更新されていなくてもフレーム間隔の変更の認識をしたと把握することができる。よって、この後のフレーム交換では更新したフレーム間隔のセットを用いることができる。また、その後のフレーム交換時にもフレーム間隔のセットに関する通知ビットを常に使用することで、逐次双方の無線通信装置で、フレーム間隔のセットを確認しつつ同一のフレーム間隔のセットを用いて動作することができる。
【0046】
なお、接続確立後の通信開始時にイニシエータとレスポンダーとで第1セットを用いる動作を上述したが、接続確立時にフレーム間隔の調整をするようにしてもよい。例えば、一方の無線通信装置(接続確立前であるのでイニシエータまたはレスポンダーは決定していない)が長いフレーム間隔の第2セットを用いる判定を、通信相手となる無線通信装置の探索時に行なった場合を想定する。ここで、便宜上、接続要求フレームを送信する無線通信装置を第1無線通信装置、接続要求フレームを受信して接続受付フレームを送信する無線通信装置を第2無線通信装置とする。
【0047】
第1無線通信装置が接続要求フレームを第2無線通信装置に送信する場合、上述の接続確立後の場合と同様に、接続要求フレームのヘッダに、使用するフレーム間隔のセットを通知する通知ビットを設定し、通知ビットにより第2セットを使用することを第2無線通信装置に通知すればよい。接続要求フレームを受信した第2無線通信装置で接続要求を受け付ける場合には、接続要求フレームを送信した第1無線通信装置に合わせて第2セットを用いることを通知するために、接続受け付けフレームのヘッダに、同様の通知ビットを設定する。そして、第2セットのフレーム間隔を用いることを第1無線通信装置に通知する。第1無線通信装置において、接続受付フレームを送信した第2無線通信装置との接続を許可する場合には、接続受付フレームに対する確認応答フレームを第2無線通信装置に送信する。従って、確認応答フレームのヘッダにも通知ビットを設定して確認応答フレームを第2無線通信装置に送信し、再確認の意味で第2セットのフレーム間隔を用いることを第2無線通信装置に通知する。
【0048】
反対に、受信した接続要求フレームではデフォルトとなる第1セットのままであるが、第2無線通信装置側で第2セットを用いる判定を下した場合は、その接続要求フレームに対して返信する接続受付フレームヘッダに設定した通知ビットを設定する。これによって、第2セットを使用することを第1無線通信装置に通知することができる。その後、第1無線通信装置で、接続受付フレームを送信した第2無線通信装置との接続を許可する場合には、上述のように接続受付フレームに対し確認応答フレームを第2無線通信装置に送信する。従って、確認応答フレームヘッダに設定した通知ビットを用いて、接続受付フレームを送信した無線通信装置に合わせて第2セットのフレーム間隔を用いることを相手の無線通信装置に通知する。
【0049】
このようにすれば、接続確立前に一方の無線通信装置が長い方のフレーム間隔のセットを用いるべきと判定した場合に接続確立の手順で接続相手の無線通信装置にその判定を通知することができ、同じフレーム間隔のセットを用いてすぐに接続確立後のフレーム交換を行なうことができる。
【0050】
さて、1対1近接通信では接続確立は可能な限り短い時間で完了したいという要求がある。上述のように、他システムとして想定するIEEE802.11無線LANに比べて接続確立手順で送信されるフレーム数は極めて少ないことから、接続確立時に他システムに及ぼす干渉の影響は極めて少ないといえる。また上述のように、確認応答フレームの送受信は、短い固定時間内に行ない、その受信期待時間に基づいて再送処理がある。これらのことから、接続確立手順におけるフレーム間隔は、通常の第1セットのフレーム間隔を用いることが望ましい。
【0051】
以上に示した第2の実施形態によれば、フレーム送受信中にフレーム間隔の変更を示すビットを、送信するフレームに含めることで、互いに使用すべきフレーム間隔のセットを認識することができ、動的にフレーム間隔のセットを変更しつつ安定して通信を行なうことができる。
【0052】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、第2セットのフレーム間隔は予め定められた値を用いるが、第3の実施形態では、接続確立時に第2セットのフレーム間隔の値に関しても設定可能とする点が上述の実施形態とは異なる。
【0053】
すなわち、接続確立時に用いられる管理フレームである接続要求フレームまたは接続受付フレームに、任意のフレーム間隔の値を設定する。例えば、フレームボディ部に、第2セットとして使用するフレーム間隔の値を追加できるようにすれば、接続確立時に第2セットとして具体的に使用する各フレーム間隔の値を任意に設定することができる。
【0054】
なお、想定される他システムとして複数の候補がある場合には、各候補となるシステム用に、調整するフレーム間隔のセットを用意して、候補のシステムに応じてセットを用いればよい。具体的には、例えばパラメータ保持部204に用意しておき、どのシステムが干渉するかがパラメータ選択部205により指定された場合に、その所定のセットを選択して用いるようにしてもよい。他システムが複数ある場合は、第2の実施形態で説明した1ビットの通知ビットでは情報が足りないため、複数の候補対象のセットが全て表現できるような通知用フィールドを設ければよい。
【0055】
以上に示した第3の実施形態によれば、フレーム間隔の値の情報を参照することで、任意のフレーム間隔を用いることができる。また、1対1近接通信以外の他システムの候補がある場合に、それぞれのシステムに応じたフレーム間隔を設定することができ、より柔軟な媒体の共有を図ることができる。
【0056】
(第4の実施形態)
第1の実施形態と第2の実施形態では、フレーム交換内で用いる全てのフレーム間隔にオフセットを付加していたため、応答フレームの送受の際に接続している無線通信装置間で同じフレーム間隔のセットを用いていないと適切なフレーム送受信の動作が行えない。第4の実施形態では、フレーム交換を開始する際の無線媒体へのアクセス時に用いるフレーム間隔にのみオフセットを付加する点が異なる。
【0057】
第4の実施形態に係る無線通信装置の構成は第1の実施形態に係る無線通信装置200と同様であるが、パラメータ保持部204に保持されるセットが異なる。
【0058】
パラメータ保持部204は、第1セットとして(InitIFS、RspIFS、SIFS1)を保持し、第2セットとして(InitIFS_C、RspIFS_C、SIFS1)を保持する。
【0059】
次に、第4の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例について図7及び図8を参照して説明する。
図7は、イニシエータがアクセスしDATA1をイニシエータに送信する場合を想定する。上段がイニシエータの動作シーケンスを示し、下段がレスポンダーの動作シーケンスを示す。
【0060】
ステップS701では、第1の実施形態と同様に、干渉を回避するため、イニシエータが長いフレーム間隔(第2セット)を用いた場合と想定する。その後、通常のInitIFS(3μs)の代わりに、例えば他システムのPIFS(8μs)と同等となるように5μsのオフセット期間をInitIFSに付加したInitIFS_C(8μs)を用いて、InitIFS_Cが経過するまで待機する。
【0061】
ステップS702では、イニシエータが、InitIFS_C経過後に、DATA1をレスポンダーに送信する。
【0062】
ステップS703では、フレーム交換内で用いるフレーム間隔に関しては、オフセット期間を付加せず通常時のSIFS1をそのまま用いる。従って、レスポンダーはDATA1を受信すると、DATA1の受信が終了した時点からSIFS1経過後に、ACK1をイニシエータに送信する。
【0063】
次に、レスポンダーがアクセスしDATA1を送信する場合を図8に示す。上段がレスポンダーの送信フレームを示し、下段がイニシエータの送信フレームを示す。
ステップS801では、レスポンダーは、他システムでの競合期間に用いられるフレーム間隔AIFSのデフォルトでの最小値、13μs(AC_VIとAC_VOとでのデフォルト値)と同一となるようなフレーム間隔を設定する。具体的には、レスポンダーは、通常のRspIFS(7μs)に6μsのオフセット期間を付加したRspIFS_C(13μs)を用いて、RspIFS_Cが経過するまで待機する。このように、レスポンダーが用いるアクセス時のフレーム間隔についても他システムの別種のフレーム間隔に合わせることができる。
【0064】
ステップS802では、レスポンダーが、RspIFS_C経過後に、DATA1をイニシエータに送信する。
【0065】
ステップS803では、イニシエータは、フレーム交換内で用いるフレーム間隔に関しては、図7に示す場合と同様にそのままの値を用いて、SIFS1経過後にACK1をレスポンダーに送信する。
【0066】
なお、図7及び図8では、イニシエータとレスポンダーとが、アクセス時のフレーム間隔を他システムのPIFSとデフォルトで最小のAIFSとにそれぞれ合わせた例を示した。しかし、他のシステムのフレーム間隔の組み合わせはこれに限らず、デフォルトでの最小のAIFSとデフォルトで2番目に短いAIFSとに合わせるなどでもよい。
【0067】
上述したように、無線通信装置間において、フレーム交換の際に用いるフレーム間隔のセットを同等としなくともフレームの送受信を行なうことができる。例えば、先に他システムとの共存のためにフレーム間隔を変更する判定した無線通信装置がイニシエータである場合を想定する。
イニシエータは、図7のようにInitIFS_C(8μs)でレスポンダーにアクセスする。一方、レスポンダーは、まだその時点ではフレーム間隔の変更をする判定に至っていないため、通常のRspIFS(7μs)でイニシエータにアクセスする。この場合は、レスポンダーの方が優先的にアクセスすることができる。しかし、1対1近接通信では、一方の無線通信装置(ここでは、イニシエータ)が他システムと干渉し合う状況を把握できる場合、もう一方の無線通信装置(ここでは、レスポンダー)も当然同様の状況にあると想定される。従って、無線通信装置がそれぞれ使用するフレーム間隔の切り替え判定を適切に行えるとしたら、もう一方の無線通信装置もフレーム間隔の切り替え判定を一定期間内に行なうことになる。よって、上述の例ではレスポンダーもRspIFS_Cを使用する判定を行って図8に示すようなアクセスをすると考えられ、最終的にイニシエータとレスポンダーとでアクセス機会の力関係が保持される。
【0068】
なお、第2の実施形態に示したように、一方の無線通信装置が、使用するフレーム間隔の情報(第1セットか第2セットか、すなわち通常のフレーム間隔か共存のために調整したフレーム間隔か)を、例えばフレームヘッダに入れて通信相手の無線通信装置に通知するようにしてもよい。
【0069】
次に、第4の実施形態に係る1対1近接通信システムの無線通信装置と他システムの無線通信装置との共存時の動作について図9を参照して説明する。ここでは、例えばイニシエータが他システムで優先的な送信を行う際のフレーム間隔PIFSに合わせる場合を想定する。
【0070】
ステップS401からステップS403までの処理は図4と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0071】
ステップS901では、イニシエータは、DATA1の送信後SIFS1(2μs)+SLOT1(1μs)の期間経過したのち、ACK1の送信がないと判定し、さらにInitIFS_C(8μs)のアイドル期間を空けてからDATA1を再送しようとする。
【0072】
しかし、ステップS902において、他システムの無線装置では、第1の実施形態における図4と同様に、W_DATA1を送信後、SIFS2(3μs)+SLOT2(5μs)の期間経過後、W_DATA1の再送を行う。
従って、イニシエータは、W_DATA1の信号をキャリアセンスで検出し、DATA1の再送を延期する。第1の実施形態と同様に、イニシエータのアクセスと他システムでの優先的なフレーム間隔(PIFS)を用いたアクセスとは、最初の媒体へのアクセス時の機会は同等であるものの、リカバリ動作(すなわち再送)では他システム側が圧倒的に有利となる。
【0073】
一方、レスポンダーは、他システムでの競合期間に用いられるフレーム間隔AIFSのデフォルトでの最小値(13μs)と等価になるように、アクセスに用いるフレーム間隔を調整すると想定する。他システムでは、AIFS後にさらにランダムバックオフ期間が設けられる。これらの期間キャリアセンスアイドルでないと他システムの無線装置は、アクセスできない。従って、他システムとのアクセスのフレーム間隔にAIFSを用いる他システムの無線装置に対し、レスポンダーは同等のアクセス時間を有するが、ランダムバックオフ期間を設けない分、確率的に有利になる。これは再送処理の動作で比較しても同様である。反対に、レスポンダーは、他システムでの優先的なPIFSを用いたアクセスに対しては圧倒的に不利になる。従って、1対1近接通信システムと他システムとの間で公平な媒体の共有を図ることができる。
【0074】
イニシエータとレスポンダーとが、フレーム間隔をそれぞれ他システムのデフォルトで最小のAIFSとデフォルトで2番目に小さいAIFSとに合わせると設定する場合は、イニシエータとレスポンダーとは共に、他システムでの優先的なPIFSを用いる無線装置に対しては圧倒的に不利になる。しかし、イニシエータが他システムで競合期間用に動作する無線装置に対しては確率的に有利になり、レスポンダーもランダムバックオフ期間を設けない分比較的有利になる。
【0075】
以上に示した第4の実施形態によれば、フレーム交換を開始する際の無線媒体へのアクセス時に用いるフレーム間隔にのみオフセットを付加し、フレーム交換中のフレーム間隔は通常のフレーム間隔の長さとすることで、他システムとの間で、公平な媒体の共有を図ることができる。
【0076】
(第5の実施形態)
1対1近接通信システムでは、ランダムバックオフを行わないため、他システムで媒体アクセス時に用いる固定長のフレーム間隔と同等のフレーム間隔にしても、確率的に1対1近接通信システムにおける無線通信装置のほうがフレーム送信において有利になる。そこで、第5の実施形態では、フレーム間隔を調整する際に他システムでの競合期間で用いるいずれかのフレーム間隔と同等にすることに加えて、さらに他システムでの平均ランダムバックオフ期間を設定する。これにより、他システムでのランダムバックオフ期間を考慮したアクセス機会の公平性を図ることができる。
【0077】
次に、第5の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例について図10及び図11に示す。
図10は、イニシエータがアクセスしDATA1をレスポンダーに送信する場合を想定する。上段がイニシエータの動作シーケンスを示し、下段がレスポンダーの動作シーケンスを示す。
【0078】
イニシエータが他システムとの干渉を考慮して長いフレーム間隔を用いた方がよいと判定した場合を想定する。このとき、通常のInitIFSに、他システムのPIFSと同一の期間とするための5μsのオフセット期間(第1オフセット期間とも呼ぶ)と、他システムのランダムバックオフを想定した期間(第2オフセット期間とも呼ぶ)を付加したInitIFS_Cを定義する。第2オフセット期間は、図10の例では、他システムでのデフォルトの最小CW(Contention Window)時間幅の半分の期間とする。例えば、IEEE802.11無線LANシステムであれば、CWのデフォルト値は、AC_VOのCWminにおいて最小値3である。他システムの無線通信装置は、AC_VOに分類されたデータフレームを送信する際には、0から3の間の乱数にスロット時間(SLOT2)をかけた時間を待つことになる。従って、AC_VOでの乱数の平均は3/2=1.5でこれにSLOT2(5μs)の時間を乗算した7.5μsが平均のランダムバックオフ時間になる。つまり、算出した値は、CW時間幅(3×5=15μs)の半分の値であり、第5の実施形態では、上述の7.5μsが第2オフセット期間であり、InitIFS_Cは15.5μsとして定義される。
その後のイニシエータとレスポンダーとの通信は、第4の実施形態と同様であるのでここでの説明は省略する。
【0079】
続いて、レスポンダーがアクセスしDATA1をイニシエータに送信する場合を図11に示す。図11は、上段がレスポンダーの動作シーケンスを示し、下段がイニシエータの動作シーケンスを示す。
レスポンダーは、第4の実施形態のようにRspIFS(7μs)に、他システムでのデフォルトで最小値となるAIFSと同等になるように6μsのオフセット期間(第1オフセット期間)を加え、さらに上述と同様に第2オフセット期間7.5μsを付加する。従って、RspIFS_Cは20.5μsとなる。その後のイニシエータとレスポンダーとの通信は、第4の実施形態と同様であるのでここでの説明は省略する。
【0080】
図10及び図11に示すように、イニシエータは、他システムでの優先的なアクセス時に対しては初期のアクセス時にも不利となりえる。また、他システムでの競合期間のAC_VO、AC_VIでのアクセスに対しては、他システムのAIFSがデフォルト値で13μsであることから、InitIFS_C(15.5μs)は、確率的に負けることがありうる。一方、レスポンダーは、他システムでの優先的なアクセス時に対して不利となり、デフォルト値レベルでは他システムでの競合期間のAC_VO、AC_VIでのアクセスに対しても不利になる。また、レスポンダーは、AC_BE及びAC_BKに対しては確率的に多少有利なレベルになる。
【0081】
なお、他システムでのAC_VOのデフォルトCWminに対応するCW時間幅の半分の値を付加する例を説明したが、これに限らず他のフレーム間隔でのCW時間幅を用いてもよい。例えば、レスポンダーにおいて、AC_VIのデフォルトCWminに対応するCW時間幅(7×5=35μs)の半分の値17.5μsを第2オフセット期間としてRspIFSに付加してもよい。このように、ランダムバックオフを想定したオフセット時間としてイニシエータとレスポンダーでさらに差を付けるようにしてもよい。
【0082】
また、図10及び図11では、第4の実施形態に他システムでのランダムバックオフを想定したオフセット時間を追加する手法を示したが、これに限られない。例えば、第1の実施形態のように、全てのフレーム間隔に他システムのフレーム間隔と同等になるように固定長のオフセットを付加した上で、アクセス時に用いるフレーム間隔には他システムでのランダムバックオフを想定したオフセット時間をさらに追加してもよい。
【0083】
以上に示した第5の実施形態によれば、ランダムバックオフを想定したオフセット期間を1対1近接通信システムのフレーム間隔にさらに付加することで、ランダムバックオフを有する他システムに対してさらに公平な媒体アクセスの共有を図ることができる。
【0084】
(第6の実施形態)
1対1近接通信システムの無線通信装置においてフレーム間隔を長く調整することで、他システムの無線通信装置に無線媒体のアクセス権を譲りやすくしている。しかし、他システムの無線装置、具体的に送信するフレームのアクセスカテゴリによっては、1対1近接通信システムのいずれかの無線通信装置でのフレーム送信要求が続く限り、他システムの無線装置はフレーム送信ができないという状況が発生する場合がある。そこで、第6の実施形態では、一度アクセス権を獲得してから、ある期間連続してアクセス権を獲得し続けた場合には、一旦アクセスの試行を一時休止する。このようにすることで、他の通信システムの無線通信装置も必ず送信機会を得ることができる。
【0085】
第6の実施形態に係る無線通信装置は、図1に係る無線通信装置と同様の構成であるが、送受信処理部206及びパラメータ選択部205の動作が異なる。
送受信処理部206は、自装置がアクセス権を取得してから連続してアクセス権を取得し続けた期間(以下、連続期間と呼ぶ)を計測する。連続期間が閾値(ここではT_burstの期間)以上となった場合に、パラメータ選択部205に通知する。
パラメータ選択部205は、一定期間アクセス試行を停止するためのフレーム間隔(T_pause)を選択する。送受信処理部206は、パラメータ選択部205から受け取ったフレーム間隔に基づいて、一定期間(T_pause)をフレーム間隔に追加し、フレームの送信を停止する。
【0086】
次に、第6の実施形態に係る無線通信装置のフレーム交換の一例について図12を参照して説明する。
図12は上段がイニシエータの動作シーケンスを示し、下段がレスポンダーの動作シーケンスを示す。なお、レスポンダーの場合は、図12に示すInitIFS_CをRspIFS_Cに置き換え、同様の処理を行えばよい。
【0087】
連続期間1201は、具体的には、イニシエータではInitIFS_Cで最初にアクセス権を獲得した時から、レスポンダーからの応答フレームを受信してInitIFS_Cの期間待機している間にキャリアセンスビジーであることを検出するまでの期間である。すなわち、レスポンダーからの応答フレームを受信しそれに続いて再びInitIFS_Cでアクセス権を獲得し続けられる間は連続期間中であるとする。
【0088】
図12に示すように、イニシエータが、InitIFS_C経過後に、アクセス権を獲得し、DATA1をレスポンダーに送信する。レスポンダーは、DATA1を受信してACK1をイニシエータに返送する。このような処理を続けて、イニシエータがInitIFS_C経過後にDATAnをレスポンダーに送信する。このとき、1対1近接通信システムにおけるフレーム送信処理が一定期間(T_burst)を超えて続くと、イニシエータは、レスポンダーからのACKnを受信後、一定期間(T_pause)は次のアクセス試行まで待機する。
【0089】
なお、1対1近接通信システムにおいてある期間フレーム交換がないと通信相手の無線通信装置がまだ存在するかどうかを確認するフレームを送り、応答がなければ接続を切断するという手法がある。この期間をT_keepaliveとする。もし1対1近接通信システムがこの手法を用いている場合は、存在確認のために使用する期間T_keepaliveよりもT_pauseの期間を短くする必要がある。
【0090】
イニシエータまたはレスポンダーが、T_burst期間の経過後にT_pauseの期間に移行するタイミングは、フレームを送信し、送信したフレームに対する応答フレームを受信したとき、または応答フレームの有無を確認する固定時間内に応答フレームがないと判定したときとすればよい。その後、イニシエータでのT_burstの期間が経過した後のアクセス試行のタイミングは、T_pause+InitIFS_Cの期間経過後とする。
なお、このT_pause+InitIFS_Cの期間をInitIFS_C_Sとして定義してもよい。
【0091】
パラメータ保持部204では、通常時の第1セットでは連続時間開始時と連続時間内とのアクセス時のフレーム間隔は共に同じ値とし、例えばイニシエータではInitIFS、レスポンダーではRspIFSを格納する。他システムとの共存対応の第2セットでは、イニシエータ用としてInitIFS_C_SとInitIFS_C_Sとを、レスポンダー用としてInitIFS_CとRspIFS_C_S(T_pause+RspIFS)とをそれぞれ格納してもよい。T_pauseの値としては、他システムでの平均ランダムバックオフ期間の値を用いてもよい。
【0092】
上述の例では、T_pause期間もフレーム間隔の1つの種別として、T_pause期間中にキャリアセンスを行なうことを想定するが、T_pauseを単なるアクセス休止期間としてもよい。この場合は、T_pause期間中はキャリアセンスを行わず、その後に実施するアクセス時からキャリアセンスを行えばよい。またこのとき、パラメータ保持部204に格納されるフレーム間隔のセットには、T_pauseの概念に相当する値は格納しなくともよい。例えば、送受信処理部206が、パラメータ選択部205から第2セットを利用することを示す通知がある場合は、連続期間を計測し、連続期間がT_burst以上となった場合に、T_pauseが経過するまで待機する処理を行えばよい。
【0093】
なお、ここでは誤りが発生するなどした場合も連続期間が終了したとする。但し、1対1近接通信システム内で、無線信号がキャリアセンスビジーであると判定できる場合には、連続時間が継続しているとしてもよい。キャリアセンスビジーであると判定できる場合とは、具体的には、例えば無線信号を受信してPHYパケットのプリアンブルを正しく検出できる場合である。
イニシエータ及びレスポンダーのそれぞれで、連続時間を把握及び管理する例を説明したが、このように1対1近接通信システム内で、無線信号がキャリアセンスビジーであると判定できる場合に連続時間を継続するようにできれば、1対1近接通信システム全体としての連続時間を管理及び制御できるようになり、システム間での媒体共有の公平性を図ることができる。
【0094】
以上に示した第6の実施形態によれば、無線通信装置がある期間連続してアクセス権を獲得し続けた場合には、一旦アクセスの試行を一時休止することで、他の通信システムの無線装置も必ず送信機会を得ることができ、媒体アクセスの共有の公平性を図ることができる。
【0095】
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、フレーム間隔のセットを期間に応じて切り替える点が他の実施形態と異なる。
第7の実施形態に係る無線通信装置におけるフレーム間隔のセットの切り替え例を図13に示す。
イニシエータとレスポンダーとがそれぞれ、通常時のフレーム間隔である第1セットと他システムとの共存時のフレーム間隔である第2セットとを、一定期間ごとに交互に設定して通信する。ここでは、通常フレーム間隔使用期間1301では第1セットを、共存用フレーム間隔使用期間1302では第2セットをそれぞれ用いる。
【0096】
第7の実施形態に係る無線通信装置は、図1に係る無線通信装置と同様の構成であるが、送受信処理部206、パラメータ保持部204及びパラメータ選択部205の動作が異なる。
【0097】
パラメータ保持部204は、通常フレーム間隔使用期間1301の終了を判定するため時間T_genを設定し、共存用フレーム間隔使用期間1302の終了を判定するため時間T_coexを設定して保持する。
【0098】
パラメータ選択部205は、他システムとの共存が必要であると判定した場合に、送受信処理部にT_gen及びT_coexの時間管理をするように指示する。
【0099】
送受信処理部206は、T_genまたはT_coexの時間経過に合わせて、パラメータ保持部204から第1セットまたは第2セットのフレーム間隔を参照してフレームの送信処理を行なう。
あるいは、パラメータ選択部205が、他システムとの共存が必要であると判定した場合に、T_gen及びT_coexの時間管理を行い、T_gen及びT_coexのどちらかの時間が経過すると、パラメータ選択部205が送受信処理部206に対して次に移るフレーム間隔使用期間で使用するフレーム間隔のセットを、パラメータ保持部204から参照させるように指示してもよい。
【0100】
T_genとT_coexとをイニシエータとレスポンダーとで共通の値として認識するには、例えば予めシステムとして設定してもよいし、接続確立時に決めるようにしてもよい。また、T_genとT_coexとはイニシエータとレスポンダーとのそれぞれで、自立分散的に時間管理するが、第6の実施形態における連続時間のように一方のアクセスが連続で成功するという条件はない。よって、単純に無線通信装置内で第1セットまたは第2セットのフレーム間隔を用いている期間を観測すればよい。
【0101】
システム全体として他システムとの媒体の共有の公平性を図る場合は、フレームヘッダを用いて現フレームで使用するフレーム間隔のセットを一方から他方に通知する。このようにすることで、イニシエータとレスポンダーとでT_gen及びT_coexのタイミングを合わせられる。
【0102】
また、上述の1対1近接通信システムでT_keepaliveの間フレーム交換がないと、確認フレームを送信し、その結果応答がなければ接続を切断するという手法を用いる場合を想定する。この場合、第2セットの設定によっては、共存用フレーム間隔使用期間1302には1対1近接通信システムでの通信実現が難しいこともありえるので、共存用フレーム間隔使用期間1302はT_keepaliveよりも短くすることが好ましい。
【0103】
以上に示した第7の実施形態によれば、1対1近接通信システムの無線通信装置は、時間軸上で統計的に他システムの無線装置と媒体の共有の公平性を図ることができる。
【0104】
(第8の実施形態)
上述の実施形態では、他システムとして1対1近接通信システムとは別のシステム、例えばCSMA/CAを用いるIEEE802.11無線LANを想定する。第8の実施形態では、同一の1対1近接通信システムが近傍に存在して干渉する場合を想定する点が異なる。CSMA/CAは、媒体つまり周波数チャネル上で他の無線装置が送信しているかを観測するキャリアセンスを行い、その結果他の無線装置が送信していることを把握するとその送信終了からランダム時間待って送信(ランダムアクセス)を行うものである。このランダムアクセスがCarrier Avoidance(CA)に対応した動作である。
【0105】
この場合、無線通信装置は、他システムが近傍に存在し共存のための動作が必要であると判定すると、第7の実施形態と同様に、通常フレーム間隔使用期間T_genと共存用フレーム間隔使用期間T_coexを使い分ける動作を行う。
ここで他システムとは、他の1対1近接通信システムであると把握した場合であってもよいし、他の1対1近接通信システムの可能性がある場合と判定した場合でもよい。また、他システムの種別を問わないが、その場合は第7の実施形態と同様になる。
通常フレーム間隔使用期間では第1実施形態から第7の実施形態と同様に第1セットのフレーム間隔を用いる。共存フレーム間隔使用期間では、第1の実施形態から第6の実施形態のいずれかに示す第2セットを用いるようにしてもよいし、これに限らない。すなわち、アクセス時のフレーム間隔が第1セットの使用時よりも不利になるように、つまり長くなるように第2セットがなっていればよい。
【0106】
ここで、第2セットを第1の実施形態から第6の実施形態のいずれかで記載された第2セットを用いるようにすれば、他システムとして1対1近接通信システムと媒体を共有する場合でも異種のシステムと媒体を共有する場合でも区別せずに公平な共有を図ることができる。
第2セットをアクセス時のフレーム間隔が第1セットを使用時よりも不利になる、つまりフレーム間隔が長くなるようにする調整し、必要最低限の長さの違いを有するように定義する。例えば送受の切り替え時間中はキャリアセンスをできないことから、その時間より大きな差分があるように定義する。このようにすることで、無駄な無信号期間を抑制しつつ1対1近接通信システム同士の共存に適した状況、つまり効率的な1対1近接通信システム間の共存状態を作りだすことができる。
【0107】
具体的には、例えば1対1近接通信システムが2つ互いの干渉領域に存在する場合には、T_gen内で送信するイニシエータが最も優先度が高く、次にT_gen内で送信するレスポンダー、その次にT_coex内で送信するイニシエータ、最も優先度が低いのはT_coex内で送信するレスポンダー、となるように4段階のアクセス時のフレーム間隔の差分があるようにすればよい。あるいは、T_gen内で送信するイニシエータが最も優先度が高く、次にT_coex内で送信するイニシエータ、その次にT_gen内で送信するレスポンダー、最も優先度が低いのはT_coex内で送信するレスポンダー、となるように4段階のアクセス時のフレーム間隔の差分があるようにしてもよい。
以上に示した第8の実施形態によれば、自立分散的に各無線通信装置がT_genとT_coexとを切り替えて動作することで、時間軸上で統計的に他システムの無線装置と媒体の共有の公平性を図ることができる。また、現フレームで使用するフレーム間隔のセットを同一のシステム内の一方の無線通信装置から他方に通知して、イニシエータとレスポンダーとでT_genとT_coexとのタイミングを合わせることにより、システム全体として他の1対1近接通信システムと媒体の共有の公平性を図ることができる。
【0108】
(第9の実施形態)
上述の実施形態では、1対1近接通信システムはCSMAするが、少なくとも接続確立後にCarrier Avoidanceは行わないとしている。第9の実施形態では、他システムとの媒体の公平な共有を考慮していない通常動作時はCarrier Avoidanceは行わないが、他システムの干渉がある場合にはCarrier Avoidanceを行う。Carrier Avoidanceは、例えばIEEE802.11無線LANでのランダムアクセスと同様の動作を行えばよい。
【0109】
第9の実施形態に係る無線通信装置の構成は、図1と同様であるが、パラメータ保持部204と送受信処理部206との動作がそれぞれ異なる。
パラメータ保持部204は、第1セットのみを保持する。
送受信処理部206は、パラメータ選択部205から他システムとの共存が必要であると指示がある場合、アクセス時には第1セットのアクセス時に用いるフレーム間隔(InitIFSもしくはRspIFS)にさらにランダム関数が生成した値に第1セットのスロット時間(Slot1)をかけた値を追加した時間だけキャリアセンスを行う。
フレーム送信をする前にキャリアセンスがビジーであると検出した場合の動作は、ランダムアクセスを用いる既存システムでの動作を参照すればよい。接続確立時のフレーム送信でランダムアクセスを行うなら、その際用いるランダム関数を利用し、ランダムアクセスする詳細な動作も接続時の方法を用いればよい。送受信処理部206は他システムとの共存が必要であるとの指示がない場合には前述の第1の実施形態から第9の実施形態と同様、第1セットのみを用いる。
【0110】
また、ランダム値の生成幅(ランダム関数が0からいくつまでの間の値を返すようにするか)を少なく制限することによって、1対1近接通信システム間の共存として最適化を図ることができる。
【0111】
またパラメータ保持部204は、第2セットも保持し、想定する他システムを考慮し、例えば第2セットとしてアクセス時のフレーム間隔を第1セットのものより長くし(InitIFS_C、RspIFS_C)、さらにスロット時間も長くする(Slot1_C)。その上で、他システムと共存の必要があるとの指示がある場合には、第2セットを使用して、アクセス時にはランダム関数が生成した値に第2セットのスロット時間(Slot1_C)をかけた値を追加した時間だけキャリアセンスを行うようにすれば、異種のシステムとの媒体の公平性を図ることもできる。
【0112】
以上に示した第9の実施形態によれば、CSMA/CAを行うことによって、上述した実施形態と同様に、他システムの無線装置と媒体の共有の公平性を図ることができる。
【0113】
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、バッファを備える。このように、バッファを無線通信装置に含める構成とすることにより、送受信フレームをバッファに保持することが可能となり、再送処理や外部出力処理を容易に行うことが可能となる。
【0114】
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、第10の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、バス、プロセッサ部、及び外部インターフェース部を備える。プロセッサ部及び外部インターフェース部は、バスを介してバッファと接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。
【0115】
(第12の実施形態)
第12の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
【0116】
(第13の実施形態)
第13の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
【0117】
(第14の実施形態)
第14の実施形態では、第13の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、NFC(Near Field Communications)送受信部を追加し、電源制御部及び送受信処理部206と接続したものである。このように、NFC送受信部を無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となるとともに、NFC送受信部をトリガとして電源制御を行うことによって待受け時の低消費電力化を図ることが可能となる。
【0118】
(第15の実施形態)
第15の実施形態では、第13の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、送受信処理部206と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
【0119】
(第16の実施形態)
第16の実施形態では、第11の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
【0120】
(第17の実施形態)
第17の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、送受信処理部206あるいはPHY処理部203と接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
【0121】
(第18の実施形態)
第18の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、送受信処理部206あるいはPHY処理部203と接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
【0122】
(第19の実施形態)
第19の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、複数の異なるPHY処理部203を設け、無線切替部を含む。無線切替部は、複数の異なるPHY処理部203に接続され、異なるPHY処理部203による通信の間を切替える。このように、複数の異なるPHY処理部203を無線通信装置に備える構成とすることにより、状況に応じて適切なPHY処理部203を用いた通信に切替えることが可能となる。
【0123】
(第20の実施形態)
第20の実施形態では、図2の無線通信装置の構成に加えて、複数の異なるPHY処理部203を設け、またこれら各々のPHY処理部203に対応する送受信処理部206を設け、無線切替部を含む。無線切替部は、送受信処理部206を切り替えられるように接続され、異なる送受信処理部206及びPHY処理部203による複数の通信方式の間を切替える。送受信処理部206及びPHY処理部203の対の1つは例えば無線LANに対応する。このように、複数の異なる送受信処理部206及びPHY処理部203のセットを無線通信装置に備える構成とすることにより、状況に応じて適切な送受信処理部206及びPHY処理部203のセットを用いた通信に切替えることが可能となる。また各送受信処理部206に対応させてパラメータ保持部204とパラメータ選択部205も設けるようにしてもよい。このように複数の異なる送受信処理部206、パラメータ保持部204、パラメータ選択部205及びPHY処理部203のセットを無線通信装置に備える構成とすることにより、状況に応じて適切な送受信処理部206、パラメータ保持部204、パラメータ選択部205及びPHY処理部203のセットを用いた通信に切替えることが可能となる。
【0124】
(第21の実施形態)
第21の実施形態では、第19の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、スイッチ(SW)を含む。スイッチは、アンテナ201、複数の異なるPHY処理部203、無線切替部に接続される。このように、スイッチを無線通信装置に備える構成とすることにより、アンテナ201を共用しながら状況に応じて適切なPHY処理部203を用いた通信に切替えることが可能となる。
【0125】
(第22の実施形態)
第22の実施形態では、第20の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、スイッチ(SW)を含む。スイッチは、アンテナ201、送受信処理部206、及び無線切替部に接続される。このように、スイッチを無線通信装置に備える構成とすることにより、アンテナを共用しながら状況に応じて適切な送受信処理部206(またパラメータ保持部204とパラメータ選択部205も各送受信処理部206に対応して設ける場合はこれらも含む)及びPHY処理部203のセットを用いた通信に切替えることが可能となる。
【0126】
ここで、上述の実施形態に係る無線通信装置における通信レンジについて説明する。
通信レンジは主に送信電力とアンテナ利得とで決まる。ある無線通信装置(第1無線通信装置)が、ある送信電力で任意の周波数の無線信号を送信する場合、方向に依存する送信アンテナ利得を持つと想定する。また、この無線信号を受信する他方の無線通信装置(第2無線通信装置)では、方向に依存する受信アンテナ利得を持つと想定する。第1無線通信装置からある距離、ある方向における第2無線通信装置での無線信号の受信電力は、統計的に送信電力、周波数、無線通信装置間の距離、その方向の第1無線通信装置側の送信アンテナ利得及びその方向の第2無線通信装置側の受信アンテナ利得に依存する。
【0127】
送信電力からの統計的な電力の減衰量は、無線通信装置間の距離と無線信号が使用する周波数とから求めることができる。使用する周波数が高いほど減衰量は大きくなる。受信電力は、デシベル表記では送信電力と送受のアンテナ利得の和からこの減衰量を差し引いたものと言い換えることができる。無線信号を復号する際の誤り率、ひいては復号により再現した物理(PHY)パケットのペイロードから抽出されるフレームの誤り率は、無線信号の受信電力に依存する。すなわち、受信電力が小さくなればなるほど誤り率は高くなることから、無線通信が成立可能な範囲、つまり通信レンジが導かれる。
【0128】
このようにして、ある周波数を用いる無線信号の通信レンジを送信電力と送受のアンテナ利得とによって制限することができる。また、より積極的に通信レンジを制限するには、受信電力がある値以上の無線信号に対してのみ復号処理を行うようにすればよい。例えば、図1において無線通信装置101と無線通信装置102とは、送信電力を0dBmに制限し、検討の便宜上、無指向性アンテナで送受を行う(つまり送受のアンテナ利得は各々0dB)とする。さらに、60GHzのミリ波帯を用いるとし、その結果およそ3cmの距離で−48dBmの受信電力になるとすると、受信電力が−48dBm以上の無線信号を受信した場合にのみ復号処理を行うように設定できる。
なお、当然この復号処理を行う受信電力の基準値以上では、復号処理が行える変調符号化方式(Modulation and Coding Scheme;MCS)が1つ以上はある、ということを前提とする。すなわち、最低受信感度が当該受信電力の基準値以下となるMCSが1つ以上はあるということが前提である。
【0129】
この復号処理を行う受信電力の基準値未満の無線信号に関しては、復号処理を行わないので、受信電力の基準値をキャリアセンスレベルとし、当該受信電力の基準値以上の無線信号ではキャリアをビジーと認識し、それ未満の無線信号に関してはキャリアをアイドルと認識するようにしてもよい。このようにして、ある周波数を用いる際の無線信号の通信レンジを送信電力と送受のアンテナ利得と受信電力の復号処理の基準値とによって制限することができる。言い換えると、受信電力の復号処理の基準値とキャリアセンスレベルとを同じにするなら、ある周波数を用いる際の無線信号の通信レンジを送信電力と送受のアンテナ利得とキャリアセンスレベルによって制限することができる。
【0130】
次に、一般的な通信システムにおけるフレーム種別について説明する。
一般的に通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。
【0131】
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
【0132】
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
【0133】
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。
【0134】
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、接続確立の手順においては、接続要求フレームと接続受付フレームが管理フレームであり、接続受付フレームへの確認フレームは制御フレームの応答フレームを用いることができる。
【0135】
次に、無線通信装置間の接続切断の手法について説明する。
接続の切断には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続している無線通信装置のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。このフレームは管理フレームに分類される。切断のためのフレームは、例えば接続をリリースするという意味でリリースフレームと呼ぶことがある。通常、リリースフレームを送信する側の無線通信装置ではリリースフレームを送信した時点で、リリースフレームを受信する側の無線通信装置ではリリースフレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、通信フェーズでの初期状態、例えば通信相手の無線通信装置を探索する状態に戻る。これは、切断のためのフレームを送信する際には、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるといった、物理的な無線リンクが確保できないことがあるからである。
【0136】
1対1近接通信システムにおける物理的な無線リンク切断の一例を図14に示す。
図14に示すように、無線通信装置101の通信レンジ1401と無線通信装置102の通信レンジ1402とには、互いにもう一方の無線通信装置が存在しない。よって、切断のためのフレームを相手の無線通信装置に送信しても、その確認応答を期待できないので、リリースフレーム送信側の無線通信装置では、リリースフレームを送信した時点で接続切断と判定する。
【0137】
一方、暗示的な手法としては、一定期間接続を確立した接続相手の無線通信装置からフレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自装置が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、リリースフレームの受信を期待できないからである。
【0138】
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマ(例えばデータフレーム用の再送タイマ)を起動し、第1のタイマが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマは止められる。
【0139】
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。第1のタイマと同様、第2のタイマでも、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。
【0140】
あるいは接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。この場合も、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマはここでは第2のタイマとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマを用いるようにしてもよい。
【0141】
次に、一般的な1対1近接通信システムでのアクセス方式について説明する。
【0142】
1対1近接通信システムでは、接続確立後には通信相手は1つの無線通信装置だけであり、通信レンジを狭く制限していることにより、通信相手以外の無線通信装置が同一チャネルで近傍に存在する状況、つまり通信相手以外の無線通信装置と同一無線媒体上で干渉または競合することはまれであることから、複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した通信システムとは無線媒体にアクセスする際の条件が異なる。
【0143】
例えば複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した通信システムとして無線LANシステムがある。IEEE802.11(拡張規格なども含む)無線LANではCSMA/CAをアクセス方式の基本としている。ある無線装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線装置の送信を把握した複数の無線装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線装置が1つなら無線装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
【0144】
1対1近接通信システムで考えると、通信相手の無線通信装置が一意に決まる前、つまり接続確立の段階では、複数の無線通信装置が通信相手として候補となる場合も考えられ、その際には無線媒体上での競合の仕組みはあってもよい。しかし一旦接続が確立された後は、通信レンジが狭く制限されていることから基本的に他の無線通信に干渉を与えにくく、かつ1対1の通信に制限されていることから接続確立後に他の無線通信装置との接続及び通信はない。従って、複数の無線通信装置が無線媒体上で競合する仕組みは基本的には不要である。またランダムアクセスは無線媒体上でオーバーヘッドとなり、通信効率という点からも好ましくない。
【0145】
そこで本実施形態に係る1対1近接通信システムは、上述のようにキャリアセンスを行いアクセスはするが、つまりCSMAはするが、少なくとも接続確立後にはCarrier Avoidanceは行わないものであると想定する。
【0146】
ここで、干渉とは他の無線通信システムから受ける場合と与える場合との両方がある。
【0147】
1対1近接通信を考える場合、通信レンジが狭く制限されているため、それよりも通信レンジの広い無線通信システムの無線装置では、多くの場合、1対1近接通信システムからの無線信号を検知せずに送信を行える。しかし、このような場合にも1対1近接通信システム側の無線通信装置では、通信レンジの広い無線通信システムからの無線信号を受信する状況が発生する可能性がある。つまりこの場合、1対1近接通信システムは他の無線通信システムから干渉を受けるが、他の無線通信システムに干渉を与える状況ではない。このような状況では、1対1近接通信システムではキャリアセンスに基づき通信レンジの広い無線通信システムで用いられるPHY方式の復号が行えなくても受信電力によりその送信を検知することはできる。一方、通信レンジの広い無線通信システムの無線装置では、当該1対1近接通信システムからの無線信号を検知せずに送信してしまう。そのため、1対1近接通信システム側でフレーム間隔を調整しても無線媒体を共有することはできない。一方、1対1近接通信システムと通信レンジの広い無線通信システムとの共存時では、前述の実施形態に係る無線通信装置により無線媒体の共有を図る必要がある。
【0148】
次に、1対1無線通信システムにおける一般的なフレーム交換の一例について図15を参照して説明する。
ここでは、2つの無線通信装置は接続確立の手順を経て1対1近接通信システムを構成しているとする。
【0149】
イニシエータは、無線媒体がInitIFSの間空いていることを確認し、データフレーム(DATA1)をレスポンダーに送信する。
レスポンダーは、DATA1をイニシエータから受信し、SIFS1経過後に、応答フレーム(ACK1)をイニシエータに送る。
ここで、例えばレスポンダー内でDATA1受信中にデータフレーム(DATA2)の送信要求が発生したとすると、レスポンダーはその後RspIFSの間が空くまで送信を延期する。図15の例では、レスポンダーは、ACK1送信後にイニシエータからの送信がないため、ACK1送信後RspIFSの間待ってからDATA2をイニシエータに送信する。DATA2を受信したイニシエータは、そのSIFS1後に応答フレーム(ACK2)をレスポンダーに送信する。
【0150】
InitIFSとRspIFSとで最小値を設定する一方最大値を設定しないのは、前述の例とは異なり、送信要求が発生した際にキャリアがビジーとなっていない場合、前のキャリアセンスビジー状態からの時間としては制限がないからである。フレーム間隔の定義を前のキャリアセンスビジー状態からカウントするということから、送信前にキャリアセンスアイドルを確認して空けるべき連続期間、というように変えると、InitIFS、RspIFSはそれぞれ3μs、7μsであると定義することができる。
【0151】
一方、SIFS1には最大値が設定されているのは、データフレーム及び管理フレームを送信した側が応答フレームの受信待ちを行い、応答フレームの送信がない場合に、データフレーム及び管理フレーム送信後に固定時間経過した後は、応答フレームの送信がないということを把握する必要があるためである。
応答フレームの送信がないと判定した場合は、データフレーム及び管理フレーム送信側の無線通信装置は、再送処理を行う。SIFS1を厳密な固定時間として定義することも考えられるが、その際には正確なフレームの受信終了時刻を把握及び保持しておく必要がある。さらに実際には伝搬遅延や無線信号を受信及び復号して応答フレームを生成するまでの実装上の遅延の揺らぎなどもあることから、多少の誤差は許容する幅を持たせておくことが望ましい。
なお、これらのフレーム間隔において、実装上キャリアセンスを行う受信状態からフレームを送信する送信状態に送受信器を切り替える時間が必要であるということから、厳密には送受の切り替え時間を差し引いた時間しかキャリアセンスアイドルの状態を観測していない(例えば送信の直前の送受切り替え時間内のキャリアセンス状態は把握できない)ことになる。
【0152】
上述した例では3種類のフレーム間隔を示したが、これらに加えてフレーム受信に失敗したと判定した際に特別なフレーム間隔を定義してもよい。例えば上記イニシエータとレスポンダーとの送信では、イニシエータに送信の優先権を与えるために、InitIFSの最小値をRspIFSの最小値よりも小さくしている。
ここで、イニシエータがデータフレームまたは管理フレームを送信したが、レスポンダーではデータフレームまたは管理フレームの受信に失敗しエラーとなった場合を想定する。イニシエータが応答フレームがないと判定するタイムアウト時間が、データフレームまたは管理フレームの送信後4.0μs以上であるとすると、イニシエータが再送を開始する最小時間は、データフレームまたは管理フレームの送信後から7.0μs以上となる。これは、レスポンダーが、受信エラーとなった後にRspIFS空けたタイミングと同じかそれ以上であり、イニシエータでの再送に優先権を与えることができない。
【0153】
そこで、レスポンダーでは、受信エラーが発生した場合には例えば10.0μsのERIFS(Extended RspIFS)を設けるようにすればイニシエータでの再送の優先権を保証することができる。
【0154】
次に、他の通信システムとして想定するIEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。
IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)の6種類ある。なお、本実施形態に係る1対1近接通信システムでのSIFSと区別するため、ここではSIFSを便宜上SIFS2と表記する。
【0155】
フレーム間隔の定義は、1対1近接通信システムでの場合と異なり、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするためこのような定義になっているといえる。
【0156】
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
【0157】
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category;AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
【0158】
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。
SIFS2は、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。IEEE802.11無線LANでのSIFS2は、1対1近接通信システムでのSIFS1の概念を包含し、かつフレーム種別とフレーム交換とのバリエーションが多いために適用範囲が広いといえる。
EIFSはフレーム受信に失敗した場合に発動されるフレーム間隔である。IEEE802.11無線LANでのEIFSと1対1近接通信システムでのERIFSとは類似している。しかし、IEEE802.11無線LANでは接続形態において1対1近接通信でのようなイニシエータ及びレスポンダーという関係は設けないため、全ての無線通信装置で適用される。
【0159】
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
【0160】
なお、本実施形態に係る1対1近接通信システムではRIFSに対応するフレーム間隔はない。1対1近接通信システムでは、無線通信装置同士を近づけたときに通信を行うので、通信相手となる無線通信装置が近傍にある間、つまり限られた接続時間中に確実にデータ交換を完了させたいという要求がある。よって、アクセス制御を行う層で上位層に委ねることなくエラー制御、フレーム制御まで責任を持ち、無線通信装置内部での高速な処理を図ることが考えられる。
【0161】
この場合、データは、データ送信側の無線通信装置のアクセス制御層で送信された順にデータ受信側の無線通信装置のアクセス制御層から上位層に送られることとなり、そのためにそれぞれのデータフレームに対して送達確認の応答フレームを送信する必要がある。従って、IEEE802.11無線LANにおけるように、バーストでデータフレームを送信するという動作はしない。つまり、RIFSに対応するようなフレーム間隔の定義は存在しない。
【0162】
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図16に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
【0163】
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxとの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功するとその受信終了時点からSIFS2後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたSIFS2後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
【0164】
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFS2とスロット時間との関数になるが、SIFS2とスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
【0165】
例えば、ミリ波帯を用いる802.11adの規格策定では、SIFSは3μs、スロット時間は5μsであるとして、それによってPIFSは8μs、DIFSは13μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBackground(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が38μs、Best effort(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が18μs、Video(AC_VI)とVoice(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が13μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは15と1023、AC_VIでは7と15、AC_VOでは3と7になるとする。なお、EIFSは、SIFS2とDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。本実施形態では、このようなフレーム間隔のパラメータを用いる無線通信システムを通信レンジの広い干渉システムとして想定する。
【0166】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0167】
100・・・1対1近接通信システム、101,102,200・・・無線通信装置、151,152,1401,1402・・・通信レンジ、201・・・アンテナ、202・・・周波数変換部、203・・・PHY処理部、204・・・パラメータ保持部、205・・・パラメータ選択部、206・・・送受信処理部、207・・・上位処理部、300・・・シーケンス、301・・・InitIFS、302・・・オフセット期間、303・・・InitIFS_C、304・・・データ、305・・・SIFS1、306・・・SIFS1_C、307・・・ACK1、1201・・・連続期間、1301・・・通常フレーム間隔使用期間、1302・・・共存用フレーム間隔使用期間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の種別のフレーム間隔を含む第1セットと、第1セットに含まれるフレーム間隔の種別と同一種別のフレーム間隔の長さが該第1セットに含まれる同一種別のフレーム間隔以上の長さであり、かつ少なくとも1つの第1種別のフレーム間隔の長さが前記第1セットに含まれる該第1種別のフレーム間隔よりも長い1以上の種別のフレーム間隔を含む第2セットと、を保持する保持部と、
前記第1セット及び前記第2セットのどちらを用いて通信するかを選択する選択部と、
前記選択部の選択結果に応じて、前記第1セットまたは前記第2セットのフレーム間隔を用いて、第1通信方式を用いる第1装置と通信する送受信処理部と、を具備することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記第1通信方式の最大送信電力とアンテナ利得との和は、第2通信方式の最大送信電力とアンテナ利得との和よりも小さく、前記第2セットは、該第2無線通信方式に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記第2通信方式を用いる第2装置による該第1通信方式への影響が第1閾値以上である場合に、前記第2セットを選択することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2セットに含まれる各フレーム間隔は、前記第1セットに含まれる同一種別のフレーム間隔と第1期間との和であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1種別のフレーム間隔は、媒体アクセスを開始する場合に用いるフレーム間隔であり、
フレームへの応答を示す応答フレームの送信の場合に用いられる第1フレーム間隔は、前記第1セットに含まれる、該第1フレーム間隔に対応するフレーム間隔と、前記第2セットに含まれる、該第1フレーム間隔に対応するフレーム間隔とが同一であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記第2通信方式における前記第1種別のフレーム間隔は、少なくとも1つの時間幅であるスロット時間から選択される、他装置と競合する期間を示すコンテンション期間と第2フレーム間隔との和であり、
前記第2セットに含まれる前記第1種別のフレーム間隔は、前記第2フレーム間隔と前記スロット時間の半分の期間との和であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記送受信処理部は、媒体アクセス権を取得後にフレームを連続して送信し続ける第2期間を計測し、該第2期間が第2閾値以上となった場合、フレーム送信を休止することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記選択部は、前記第1セットを用いて通信を行なう第3期間と、前記第2セットを用いて通信を行なう第4期間とを設定し、
前記送受信処理部は、前記第3期間の間前記第1セットで通信し、前記第4期間の間前記第2セットで通信することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記送受信処理部は、前記第1装置と通信を行なう際に前記第1通信方式を用いる第2装置を含むシステムと干渉する場合に、前記第3期間の間前記第1セットで通信し、前記第4期間の間前記第2セットで通信することを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。
【請求項1】
1以上の種別のフレーム間隔を含む第1セットと、第1セットに含まれるフレーム間隔の種別と同一種別のフレーム間隔の長さが該第1セットに含まれる同一種別のフレーム間隔以上の長さであり、かつ少なくとも1つの第1種別のフレーム間隔の長さが前記第1セットに含まれる該第1種別のフレーム間隔よりも長い1以上の種別のフレーム間隔を含む第2セットと、を保持する保持部と、
前記第1セット及び前記第2セットのどちらを用いて通信するかを選択する選択部と、
前記選択部の選択結果に応じて、前記第1セットまたは前記第2セットのフレーム間隔を用いて、第1通信方式を用いる第1装置と通信する送受信処理部と、を具備することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記第1通信方式の最大送信電力とアンテナ利得との和は、第2通信方式の最大送信電力とアンテナ利得との和よりも小さく、前記第2セットは、該第2無線通信方式に基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記第2通信方式を用いる第2装置による該第1通信方式への影響が第1閾値以上である場合に、前記第2セットを選択することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2セットに含まれる各フレーム間隔は、前記第1セットに含まれる同一種別のフレーム間隔と第1期間との和であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1種別のフレーム間隔は、媒体アクセスを開始する場合に用いるフレーム間隔であり、
フレームへの応答を示す応答フレームの送信の場合に用いられる第1フレーム間隔は、前記第1セットに含まれる、該第1フレーム間隔に対応するフレーム間隔と、前記第2セットに含まれる、該第1フレーム間隔に対応するフレーム間隔とが同一であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記第2通信方式における前記第1種別のフレーム間隔は、少なくとも1つの時間幅であるスロット時間から選択される、他装置と競合する期間を示すコンテンション期間と第2フレーム間隔との和であり、
前記第2セットに含まれる前記第1種別のフレーム間隔は、前記第2フレーム間隔と前記スロット時間の半分の期間との和であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記送受信処理部は、媒体アクセス権を取得後にフレームを連続して送信し続ける第2期間を計測し、該第2期間が第2閾値以上となった場合、フレーム送信を休止することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記選択部は、前記第1セットを用いて通信を行なう第3期間と、前記第2セットを用いて通信を行なう第4期間とを設定し、
前記送受信処理部は、前記第3期間の間前記第1セットで通信し、前記第4期間の間前記第2セットで通信することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記送受信処理部は、前記第1装置と通信を行なう際に前記第1通信方式を用いる第2装置を含むシステムと干渉する場合に、前記第3期間の間前記第1セットで通信し、前記第4期間の間前記第2セットで通信することを特徴とする請求項8に記載の無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−46354(P2013−46354A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184792(P2011−184792)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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