説明

無線通信装置

【課題】 無線通信装置と外部装置との間で無線接続を適切に確立させるための技術を提供する。
【解決手段】 プリンタ10は、OKボタンの操作が実行されることを契機として、Probe Request信号をPC60から受信して、Probe Response信号をPC60に送信するためのListen処理と、Probe Request信号をPC60に送信して、Probe Response信号をPC60から受信するためのSearch処理と、を実行する。そして、プリンタ10は、OKボタンの操作が実行される場合に、PC60との間で無線プロファイルを通信して、無線プロファイルを用いてPC60と無線接続を確立する。プリンタ10は、さらに、OKボタンの操作が実行される前に、WFDI/FONの設定に変更するための操作が実行されることを契機として、Listen処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、Wi−Fi Allianceによって策定されたWi−Fi Direct(以下では「WFD」と呼ぶ)について記載されている。WFDでは、外部装置との間で無線接続を確立させるべき無線通信装置に所定の操作を加えると、無線通信装置は、外部装置からProbe Request信号を受信してProbe Response信号を送信する応答処理と、外部装置にProbe Request信号を送信してProbe Response信号を受信する検索処理と、を実行する。例えば、外部装置は、無線通信装置を見つけることができれば、接続要求信号を無線通信装置に送信する。この結果、外部装置と無線通信装置との間で無線接続を確立させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Wi−Fi Alliance、「Wi−Fi Peer−to−Peer(P2P) Technical Specification Version1.1」、2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、無線通信装置と外部装置との間で無線接続を適切に確立させるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される無線通信装置は、通信制御部と、確立制御部と、を備える。通信制御部は、第1の操作が実行されることを契機として、第1の操作の後の第1の期間に、特定の外部装置が無線通信装置を検索するための検索信号を特定の外部装置から受信して、検索信号に対する応答信号を特定の外部装置に送信するための応答処理と、無線通信装置が特定の外部装置を検索するための検索信号を特定の外部装置に送信して、応答信号を特定の外部装置から受信するための検索処理と、を実行する。確立制御部は、第1の操作が実行される場合に、特定の外部装置との間で無線プロファイルを通信して、無線プロファイルを用いて特定の外部装置との間で無線接続を確立する。通信制御部は、さらに、第1の操作が実行される前の第2の期間に、応答処理を実行する。
【0006】
上記の技術では、無線通信装置は、第1の操作が実行されることを契機として、第1の期間に、応答処理及び検索処理を実行する。従って、無線通信装置は、特定の外部装置を見つけ得るし、外部装置は、無線通信装置を見つけ得る。しかも、無線通信装置は、第1の操作が実行される前の第2の期間にも、応答処理を実行する。従って、仮に、無線通信装置で第1の操作が実行される前に、特定の外部装置が検索処理を実行する場合に、無線通信装置は、第2の期間内の応答処理において、特定の外部装置からの検索信号を受信して、応答信号を特定の外部装置に送信し得る。即ち、第2の期間に無線通信装置で応答処理が実行されるために、特定の外部装置が無線通信装置を見つける可能性を高めることができる。この結果、特定の外部装置と無線通信装置との間で無線接続を適切に確立させ得る。
【0007】
なお、上記の無線通信装置を実現するための制御方法、コンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを格納するコンピュータ読取可能記録媒体も、新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】通信システムの構成の一例を示す。
【図2】プリンタ処理のフローチャートを示す。
【図3】無線接続処理のフローチャートを示す。
【図4】認証接続処理のフローチャートを示す。
【図5】ケースAのシーケンス図を示す。
【図6】ケースBのシーケンス図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例)
(システムの構成)
図1に示されるように、通信システム2は、プリンタ10(PC60,70の周辺機器)と、複数個のPC60,70と、を備える。各機器10,60,70は、それぞれ、後述のWi−Fi Directに従った無線通信機能を実行可能である。なお、以下では、Wi−Fi Directのことを「WFD」と呼び、WFDに従った無線通信機能のことを「WFD機能」と呼ぶ。各機器10,60,70は、WFDに従って無線接続を確立可能であり、これにより、無線ネットワークが構築される。この結果、各機器10,60,70は、印刷データ等の通信対象の対象データの無線通信を実行可能になる。
【0010】
(プリンタ10の構成)
プリンタ10は、操作部12と、表示部14と、印刷実行部16と、有線インターフェイス18と、無線インターフェイス20と、制御部30と、を備える。上記の各部12〜30は、バス線(符号省略)に接続されている。
【0011】
操作部12は、複数のキーによって構成される。ユーザは、操作部12を操作することによって、様々な指示をプリンタ10に与えることができる。操作部12を構成する複数のキーは、切換キー12aを含む。表示部14は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。印刷実行部16は、インクジェット方式、レーザ方式等の印刷機構を備え、制御部30からの指示に従って印刷を実行する。有線インターフェイス18は、有線通信を実行するためのインターフェイスであり、有線回線(例えばLAN回線)に接続される。無線インターフェイス20は、無線通信を実行するためのインターフェイスである。なお、無線インターフェイス20には、2個のMACアドレスが割り当てられている。一方のMACアドレスは、WFDに従った無線通信のためのアドレスであり、他方のMACアドレスは、WFDとは異なる規格に従った通常の無線通信のためのアドレスである。
【0012】
制御部30は、CPU32とメモリ34とを備える。CPU32は、メモリ34に格納されているプログラムに従って、様々な処理を実行する。メモリ34は、ROM、RAM、ハードディスク等によって構成される。メモリ34は、CPU32によって実行される上記のプログラムを格納したり、CPU32が処理を実行する過程で取得又は生成されるデータを格納したりする。CPU32が上記のプログラムに従って処理を実行することによって、通信制御部40及び確立制御部42の各機能が実現される。
【0013】
(切換キー12a)
本実施例では、切換キー12aは、いわゆるソフトスイッチであるが、変形例では、切換キー12aは、いわゆるハードスイッチでもよい。切換キー12aは、有線インターフェイス18をON状態にするための設定(以下では「有線I/FONの設定」と呼ぶ)と、無線インターフェイス20をON状態にするための設定(以下では「無線I/FONの設定」と呼ぶ)と、の間で設定を切り換えるためのスイッチである。切換キー12aは、いわゆるトグルタイプのスイッチである。従って、ユーザは、切換キー12aを操作して、有線I/FONの設定又は無線I/FONの設定を、排他的に選択することができる。
【0014】
有線I/FONの設定が選択されている状態では、通信制御部40(図1参照)は、有線インターフェイス18を利用した有線通信を実行可能であるが、無線インターフェイス20を利用した無線通信を実行不可能である。また、無線I/FONの設定が選択されている状態では、通信制御部40は、有線インターフェイス18を利用した有線通信を実行不可能であるが、無線インターフェイス20を利用した無線通信を実行可能である。
【0015】
上述したように、無線インターフェイス20には、WFDに従った無線通信のためのMACアドレスと、通常の無線通信のためのMACアドレスと、が割り当てられている。ユーザは、無線I/FONの設定が選択されている状態では、切換キー12aを操作して、さらに、WFDに従った無線通信を実行するための設定(以下では「WFDI/FONの設定」と呼ぶ)、又は、通常の無線通信を実行するための設定(以下では「通常無線I/FONの設定」と呼ぶ)を、排他的に選択することができる。
【0016】
WFDI/FONの設定が選択されている状態では、通信制御部40は、WFDに従った無線通信のためのMACアドレスを利用して、WFDに従った無線通信を実行可能であるが、通常の無線通信のためのMACアドレスを利用して、通常の無線通信を実行不可能である。通常無線I/FONの設定が選択されている状態では、通信制御部40は、通常の無線通信を実行可能であるが、WFDに従った無線通信を実行不可能である。なお、以下では、有線I/FONの設定、及び、通常無線I/FONの設定のことを、まとめて、「WFDI/FOFFの設定」と呼ぶ。
【0017】
(PC60の構成)
PC60は、図示省略のCPU、メモリ、ディスプレイ等を備える。PC60のメモリは、プリンタ10のためのプリンタドライバプログラムを格納している。PC60のCPUは、プリンタドライバプログラムを利用して、印刷対象の印刷データを生成することができる。プリンタ10とPC60との間に無線接続が確立されている状態では、PC60は、印刷データをプリンタ10に無線で送信可能である。なお、PC70は、PC60と同様の構成を備える。
【0018】
(WFD)
上述したように、各機器10,60,70は、WFD機能を実行可能である。WFDは、Wi−Fi Allianceによって策定された規格である。WFDは、Wi−Fi Allianceによって作成された「Wi−Fi Peer−to−Peer(P2P) Technical Specification Version1.1」に記述されている。
【0019】
WFDでは、機器の状態として、Group Owner状態(以下では「G/O状態」と呼ぶ)、クライアント状態、及び、デバイス状態の3つの状態が定義されている。WFD機能を実行可能な機器は、上記の3つの状態のうちの1つの状態で選択的に動作可能である。
【0020】
G/O状態の機器とクライアント状態の機器とによって、1個の無線ネットワークが構成される。1個の無線ネットワークでは、G/O状態の機器が1個しか存在し得ないが、クライアント状態の機器が1個以上存在し得る。G/O状態の機器は、1個以上のクライアント状態の機器を管理する。具体的に言うと、G/O状態の機器は、1個以上のクライアント状態の機器のそれぞれの識別情報(即ちMACアドレス)が記述された管理リストを生成する。G/O状態の機器は、クライアント状態の機器が無線ネットワークに新たに参加すると、当該機器の識別情報を管理リストに追加し、クライアント状態の機器が無線ネットワークから離脱すると、当該機器の識別情報を管理リストから削除する。
【0021】
G/O状態の機器は、管理リストに登録されている機器、即ち、クライアント状態の機器との間で、通信対象の対象データ(例えば、OSI参照モデルのネットワーク層の情報を含むデータ(印刷データ等))の無線通信を実行可能である。しかしながら、G/O状態の機器は、管理リストに登録されていない機器との間で、無線ネットワークに参加するためのデータ(例えば、ネットワーク層の情報を含まないデータ(Probe Request信号、Probe Response信号等の物理層のデータ)の無線通信を実行可能であるが、上記の対象データの無線通信を実行不可能である。例えば、G/O状態のプリンタ10は、管理リストに登録されているPC60(即ち、クライアント状態のPC60)から印刷データを無線で受信可能であるが、管理リストに登録されていないPCから印刷データを無線で受信不可能である。
【0022】
また、G/O状態の機器は、複数個のクライアント状態の機器の間の対象データ(印刷データ等)の無線通信を中継可能である。例えば、クライアント状態のPC60がクライアント状態のPC70に対象データを無線で送信すべき場合には、PC60は、まず、対象データをG/O状態のプリンタ10に無線で送信し、プリンタ10は、対象データを上記のPC70に無線で送信する。即ち、G/O状態の機器は、無線ネットワークのAP(アクセスポイント)の機能を実行可能である。
【0023】
なお、無線ネットワークに参加していない機器(即ち管理リストに登録されていない機器)が、デバイス状態の機器である。デバイス状態の機器は、無線ネットワークに参加するためのデータ(Probe Request信号、Probe Response信号等の物理層のデータ等)の無線通信を実行可能であるが、当該無線ネットワークを介して対象データ(印刷データ等)の無線通信を実行不可能である。
【0024】
(WFDの無線接続を実行するための方式)
WFDの無線接続を実行するための方式として、WPS(Wi-Fi Protected Setup)の無線接続方式が利用される。WPSの無線接続方式は、PIN(Personal Identification Number)コード方式と、PBC(Push Button Configuration)方式と、を含む。以下では、まず、PINコード方式の概要を説明し、次いで、PBC方式の概要を説明する。
【0025】
(PINコード方式)
例えば、デバイス状態のプリンタ10とデバイス状態のPC60との間で、WPSのPINコード方式で無線接続が確立されるべき状況を想定する。このような状況では、ユーザは、プリンタ10の操作部12において、PBC方式及びPINコード方式の中からPINコード方式を選択するための方式選択操作を実行する。さらに、ユーザは、PC60の操作部において、PINコード方式を選択するための方式選択操作を実行する。
【0026】
この場合、プリンタ10及びPC60のそれぞれは、他方を見つけるための検索処理(詳しくは後述する)を実行する。例えば、PC60がプリンタ10を見つけた場合には、ユーザは、PC60の操作部において、プリンタ10を選択するための機器選択操作を実行する。この結果、PC60は、プリンタ10に接続要求信号を送信する。この場合、例えば、プリンタ10は、PINコードを生成して表示する。ユーザは、当該PINコードをPC60に入力する。
【0027】
プリンタ10及びPC60は、どちらがG/O状態になり、どちらがクライアント状態になるのか、を決定するためのG/Oネゴシエーション(詳しくは後述する)を実行する。次いで、プリンタ10及びPC60は、WPSネゴシエーションを実行する。具体的に言うと、G/O状態になることが決定された機器(例えばプリンタ10)は、無線接続を確立するための必要な情報である無線プロファイル(SSID、認証方式、暗号化方式、パスワード等)を、クライアント状態になることが決定された機器(例えばPC60)に無線で送信する。その結果、プリンタ10とPC60とは、同じ無線プロファイルを用いて、無線接続を確立することができる。なお、WPSネゴシエーションの過程で、PINコードの認証が実行される。
【0028】
(PBC方式)
ユーザは、プリンタ10及びPC60のそれぞれにおいて、PBC方式を選択するための方式選択操作を実行することができる。この場合、プリンタ10及びPC60は、ユーザにPINコードを入力させない。PBC方式では、無線接続が確立されるべき各機器の間で予め決められたPINコードが利用される。その他の点(検索処理、G/Oネゴシエーション、及び、WPSネゴシエーション)については、PINコード方式と同様である。
【0029】
(プリンタ処理;図2)
続いて、図2を参照して、本実施例のプリンタ10によって実行される処理の内容について説明する。
【0030】
ユーザは、切換キー12a(図1参照)において、WFDI/FOFFの設定(例えば有線I/FONの設定)からWFDI/FONの設定に変更するための操作を実行することができる。この場合、制御部30は、S10でYESと判断して、S12に進む。S12では、通信制御部40は、後述のListen処理を開始する。
【0031】
また、ユーザは、切換キー12aにおいて、WFDI/FONの設定からWFDI/FOFFの設定(例えば有線I/FONの設定)に変更するための操作を実行することができる。この場合、制御部30は、S10でNO、及び、S14でYESと判断して、S16に進む。S16では、通信制御部40は、Listen処理を終了する。
【0032】
S18において、通信制御部40は、接続要求信号を無線で受信することを監視する。なお、接続要求信号は、OSI参照モデルの物理層のデータを含み、物理層よりも上位層(例えばネットワーク層)のデータを含まない。通信制御部40は、接続要求信号を無線で受信すると、S10でNO、S14でNO、及び、S18でYESと判断して、S20に進む。S20では、通信制御部40は、接続要求信号の送信元の機器である特定の機器に関する情報をメモリ34内の所定の記憶領域に記憶させる。具体的に言うと、接続要求信号は、特定の機器のMACアドレス、特定の機器のIPアドレス、特定の機器でPINコード方式及びPBC方式のどちらが選択されたのかを示す情報等を含む。通信制御部40は、これらの情報を上記の所定の記憶領域に記憶させる。
【0033】
なお、通信制御部40は、複数個の機器から複数個の接続要求信号を受信する可能性がある。通信制御部40は、接続要求信号を受信する毎に、上記の所定の記憶領域に記憶されている情報を消去して、当該接続要求信号の送信元の機器に関する情報を上記の所定の記憶領域に記憶させる。この結果、上記の所定の記憶領域には、最後に受信された接続要求信号の送信元の機器に関する情報が記憶されることになる。なお、上記の所定の記憶領域の記憶内容は、WFDI/FONの設定からWFDI/FOFFの設定に変更された場合、又は、上記の所定の記憶領域に最後に情報が記憶されてから所定の時間が経過した場合に、消去される。
【0034】
また、ユーザは、操作部12に含まれる所定のキーにおいて、PINコード方式又はPBC方式を選択するための方式選択操作を実行することができる。この場合、制御部30は、S10でNO、S14でNO、S18でNO、及び、S22でYESと判断して、S24の無線接続処理に進む。なお、プリンタ10は、プリンタ10自身がG/O状態又はデバイス状態である間に上記の方式選択操作が実行されると、プリンタ10の現在の状態(即ちG/O状態又はデバイス状態)を維持しながらS24の無線接続処理を実行し、プリンタ10自身がクライアント状態である間に上記の方式選択操作が実行されると、クライアント状態からデバイス状態に移行し(即ち、プリンタ10がクライアント状態で参加していた無線ネットワークから離脱し)、デバイス状態でS24の無線接続処理を実行する。
【0035】
(無線接続処理;図3)
S24では、制御部30は、無線接続処理を実行する。図3に示されるように、S40では、制御部30は、プリンタ10の現在の設定が、WFDI/FONの設定であるのか否かを判断する。プリンタ10の現在の設定が、WFDI/FONの設定である場合(S40でYESの場合)には、S42〜S46をスキップしてS48に進む。一方において、プリンタ10の現在の設定が、WFDI/FOFFの設定である場合(S40でNOの場合)には、S42において、制御部30は、WFDI/FONの設定に変更することを促す画面を表示部14に表示させる。これにより、ユーザは、操作部12を操作して、WFDI/FONの設定に変更するのか、WFDI/FOFFの設定を維持するのか、を選択することができる。
【0036】
WFDI/FONの設定に変更することがユーザによって選択された場合には、制御部30は、S44でYESと判断して、S46に進む。S46では、通信制御部40は、後述のListen処理を開始する。S46を終えると、S48に進む。一方において、WFDI/FOFFの設定を維持することがユーザによって選択された場合には、制御部30は、S44でNOと判断して、S46以降の処理をスキップして、無線接続処理を終了する。
【0037】
S48では、制御部30は、プリンタ10との間で無線接続が確立されるべき対象機器(例えばPC60)をWFDI/FONの設定に変更することを促す画面を表示部14に表示させる。これにより、ユーザは、対象機器の操作部を操作して、対象機器の設定をWFDI/FONの設定に変更し、その後、プリンタ10の操作部12を操作して、OKボタンを選択する。なお、S48で画面が表示された際に、対象機器の設定が既にWFDI/FONの設定である場合には、ユーザは、対象機器の操作部を操作することなく、プリンタ10の操作部12を操作して、OKボタンを選択する。OKボタンが操作されると、制御部30は、S50でYESと判断して、S52に進む。
【0038】
S52では、制御部30は、メモリ34内の上記の所定の記憶領域(図2のS20参照)に情報が記憶されているのか否かを判断する。上記の所定の記憶領域に情報が記憶されている場合(S52でYESの場合)とは、プリンタ10が対象機器(例えばPC60)から接続要求信号を既に受信済みであることを意味する。この場合、通信制御部40は、S54〜S60をスキップして、S62に進む。一方において、上記の所定の記憶領域に情報が記憶されていない場合(S52でNOの場合)には、S54に進む。
【0039】
S54では、通信制御部40は、Scan処理とListen処理とSearch処理を実行する。通信制御部40は、これらの3個の処理のうちの2個以上の処理を同時に実行することができず、1個の処理を実行した後に、他の1個の処理を実行する。即ち、通信制御部40は、Scan処理とListen処理とSearch処理を順次実行する。
【0040】
Scan処理は、プリンタ10の周囲に存在するG/O状態の機器を検索するための処理である。具体的に言うと、通信制御部40は、Scan処理において、1ch〜13chの13個のチャネルを順次利用して、Probe Request信号を無線で順次送信する。
【0041】
例えば、プリンタ10の周囲にG/O状態の機器(以下では「特定のG/O機器」と呼ぶ)が存在する場合には、特定のG/O機器は、1ch〜13chのうちの1個のチャネルを利用することを予め決定している。従って、特定のG/O機器は、プリンタ10からProbe Request信号を無線で受信する。この場合、特定のG/O機器は、Probe Response信号をプリンタ10に無線で送信する。このProbe Response信号は、特定のG/O機器がG/O状態であることを示す情報を含む。この結果、プリンタ10の通信制御部40は、特定のG/O機器を見つけることができる。なお、上記のProbe Response信号は、さらに、特定のG/O機器のデバイス名と、特定のG/O機器の機種(例えば、プリンタ、PC等)を示す情報と、特定のG/O機器のMACアドレスと、を含む。この結果、通信制御部40は、特定のG/O機器に関する情報を取得することができる。
【0042】
なお、例えば、プリンタ10の周囲にデバイス状態の機器(以下では「特定のデバイス機器」と呼ぶ)が存在する場合には、特定のデバイス機器は、1ch、6ch、11chのうちの1個のチャネルを利用することを予め決定している。従って、特定のデバイス機器も、プリンタ10からProbe Request信号を無線で受信する。この場合、特定のデバイス機器は、Probe Response信号をプリンタ10に無線で送信する。ただし、このProbe Response信号は、デバイス状態であることを示す情報を含み、G/O状態であることを示す情報を含まない。また、クライアント状態の機器は、プリンタ10からProbe Request信号を無線で受信しても、Probe Response信号をプリンタ10に無線で送信しない。従って、通信制御部40は、Scan処理において、特定のG/O機器を適切に見つけることができる。
【0043】
Listen処理は、後述のSearch処理を実行している特定のデバイス機器から無線で送信されるProbe Request信号に応答するための処理である。即ち、通信制御部40は、特定のデバイス機器からProbe Request信号を無線で受信すると、Probe Response信号を無線で送信する。このProbe Response信号は、プリンタ10がデバイス状態であることを示す情報と、プリンタ10のデバイス名と、プリンタ10の機種を示す情報と、プリンタ10のMACアドレスと、を含む。通信制御部40がProbe Response信号を送信することによって、特定のデバイス機器は、プリンタ10を見つけることができる。
【0044】
Search処理では、通信制御部40は、1ch、6ch、11chの3個のチャネルを順次利用して、Probe Request信号を無線で順次送信する。これにより、通信制御部40は、特定のデバイス機器からProbe Response信号を無線で受信する。このProbe Response信号は、特定のデバイス機器がデバイス状態であることを示す情報と、特定のデバイス機器のデバイス名と、特定のデバイス機器の機種を示す情報と、特定のデバイス機器のMACアドレスと、を含む。この結果、通信制御部40は、特定のデバイス機器を見つけることができる。なお、特定のG/O機器も、プリンタ10のSearch処理で送信されるProbe Request信号に応じて、Probe Response信号を無線でプリンタ10に送信し得る。ただし、このProbe Response信号は、G/O状態であることを示す情報を含み、デバイス状態であることを示す情報を含まない。また、上述したように、クライアント状態の機器は、プリンタ10からProbe Request信号を無線で受信しても、Probe Response信号をプリンタ10に無線で送信しない。従って、通信制御部40は、Search処理において、特定のデバイス機器を適切に見つけることができる。
【0045】
なお、S54では、通信制御部40は、最初に1回のScan処理を実行した後に、所定の時間が経過するまで、Listen処理及びSearch処理のセットを複数回に亘って繰り返し実行する。図3のフローチャートでは図示省略しているが、制御部30は、上記の所定の時間が経過すると、Listen処理及びSearch処理を継続するのか終了するのかをユーザに選択させるための画面を表示部14に表示させる。ユーザが「継続」を選択すれば、通信制御部40は、上記の所定の時間が再び経過するまで、Listen処理及びSearch処理のセットを複数回に亘って繰り返し実行する。ユーザが「終了」を選択すれば、S56に進む。
【0046】
S56では、通信制御部40は、S54の処理の間に対象機器から接続要求信号を無線で受信したのか否かを判断する。S54の処理の間に接続要求信号を無線で受信した場合(S56でYESの場合)には、S58及びS60をスキップして、S62に進む。一方において、接続要求信号を受信しなかった場合(S56でNOの場合)には、S58に進む。
【0047】
S58では、制御部30は、機器リストを表示部14に表示させる。制御部30は、上記のScan処理(S54参照)において、特定のG/O機器を見つけることができ、上記のSearch処理(S54参照)において、特定のデバイス機器を見つけることができる。制御部30は、S54の処理で見つかった各機器に関する情報(即ちS54で得られた情報)を表示部14に表示させる。図3の例では、S58において、デバイス名「XXX」に対応する機器に関する情報(G/O状態、プリンタ、MACアドレス)と、デバイス名「YYY」に対応する機器に関する情報(デバイス状態、プリンタ、MACアドレス)と、が表示部14に表示される。
【0048】
ユーザは、S58で表示される機器リストを見ることによって、プリンタ10の周囲に存在する機器を知ることができ、プリンタ10とどの機器との間で無線接続を確立させるのかを選択するための機器選択操作(即ち対象機器(例えばPC60)を選択するための操作)を操作部12に実行することができる。機器選択操作が実行されると、制御部30は、S60でYESと判断し、S62の認証接続処理に進む。
【0049】
(認証接続処理;図4)
S62では、制御部30は、認証接続処理を実行する。図4のS82の処理が実行される前に、まず、以下の処理が実行される。プリンタ10及び対象機器の接続方式がPINコード方式であれば、プリンタ10及び対象機器の一方においてPINコードが表示され、ユーザは、プリンタ10及び対象機器の他方に当該PINコードを入力する。プリンタ10でPINコードの表示又は入力が実行されれば、S82に進む。一方において、プリンタ10及び対象機器の接続方式がPBC方式であれば、PINコードの表示又は入力が実行されることなく、S82に進む。
【0050】
S82では、確立制御部42は、プリンタ10の現在の状態がデバイス状態であり、かつ、対象機器の現在の状態がデバイス状態であるのか否かを判断する。S82でYESの場合(プリンタ10の現在の状態=デバイス状態、かつ、対象機器の現在の状態=デバイス状態)には、S84に進む。
【0051】
なお、上述したように、対象機器は、各ケースに応じて以下のように決定される。(ケース1)図3のS52でYESの場合には、ユーザによって方式選択操作が実行される前に、接続要求信号が受信された場合(S18でYESの場合)に、図3のS52でYESと判断される。この場合、最後に受信された接続要求信号の送信元の機器(即ち図2のS20で記憶された情報を有する機器)が、対象機器である。(ケース2)ユーザによって方式選択操作が実行された後に、接続要求信号が受信された場合に、図3のS56でYESと判断される。この場合、図3のS56で受信された接続要求信号の送信元の機器が、対象機器である。(ケース3)接続要求信号が受信されない場合には、図3のS58で機器リストが表示される。機器リストからユーザによって選択された機器が、対象機器である。
【0052】
S84では、確立制御部42は、対象機器との間でG/Oネゴシエーションを実行する。上述したように、1個の無線ネットワークでは、G/O状態の機器が1個しか存在し得ない。従って、確立制御部42は、G/Oネゴシエーションを実行して、プリンタ10及び対象機器のどちらか一方の機器をG/Oとして決定し、他方の機器をクライアントとして決定する。
【0053】
S84では、まず、確立制御部42は、対象機器に接続要求信号を無線で送信して、対象機器からOK信号を無線で受信する。次いで、確立制御部42は、プリンタ10のG/O優先度を示す情報を対象機器に無線で送信すると共に、対象機器のG/O優先度を示す情報を対象機器から無線で受信する。なお、プリンタ10のG/O優先度は、プリンタ10がG/Oになるべき程度を示す指標であり、プリンタ10において予め決められている。同様に、対象機器のG/O優先度は、対象機器がG/Oになるべき程度を示す指標である。例えば、CPU及びメモリの能力が比較的に高い機器(例えばPC)は、G/Oとして動作しながら、他の処理を高速で実行することができる。従って、このような機器は、通常、G/Oになるべき程度が高くなるように、G/O優先度が設定される。一方において、例えば、CPU及びメモリの能力が比較的に低い機器は、G/Oとして動作しながら、他の処理を高速で実行することができない可能性がある。従って、このような機器は、通常、G/Oになるべき程度が低くなるように、G/O優先度が設定される。
【0054】
確立制御部42は、プリンタ10のG/O優先度と対象機器のG/O優先度とを比較して、優先度が高い方の機器(プリンタ10又は対象機器)をG/Oとして決定し、優先度が低い方の機器(対象機器又はプリンタ10)をクライアントとして決定する。対象機器は、プリンタ10と同じ手法を利用して、プリンタ10のG/O優先度と対象機器のG/O優先度とに基づいて、G/O及びクライアントを決定する。S84のG/Oネゴシエーションが終了すると、S86に進む。
【0055】
なお、S84のG/Oネゴシエーションが終了すると、プリンタ10は、デバイス状態から決定済みの状態(即ちG/O状態又はクライアント状態)に移行する。また、対象機器も、デバイス状態から決定済みの状態(即ちクライアント状態又はG/O状態)に移行する。
【0056】
また、S82において、対象機器の現在の状態がG/O状態であると判断された場合(S82でNOの場合)には、S84のG/Oネゴシエーションが実行されずに、プリンタ10は、デバイス状態又はG/O状態からクライアント状態に移行する。1個の無線ネットワークではG/O状態の機器が1個しか存在し得ないために、プリンタ10がG/O状態になることが不可能だからである。また、S82において、プリンタ10の現在の状態がG/O状態であると判断された場合(S82でNOの場合)には、S84のG/Oネゴシエーションが実行されずに、プリンタ10の現在の状態であるG/O状態が維持される。この場合、対象機器は、デバイス状態からクライアント状態に移行する。S82でNOの場合には、S86に進む。
【0057】
S86では、確立制御部42は、プリンタ10の現在の状態がG/O状態であり、かつ、対象機器の現在の状態がクライアント状態であるのか否かを判断する。S86でYESの場合(プリンタ10の現在の状態=G/O状態、かつ、対象機器の現在の状態=クライアント状態)には、S88に進む。一方において、S86でNOの場合(プリンタ10の現在の状態=クライアント状態、かつ、対象機器の現在の状態=G/O状態)には、S90に進む。
【0058】
S88では、確立制御部42は、G/O状態用のWPSネゴシエーションを実行する。例えば、図2のS22で選択された接続方式がPINコード方式である場合には、確立制御部42は、プリンタ10で表示されたPINコード又はプリンタ10に入力されたPINコードを用いて、特定のデータ(例えば、プリンタ10と対象機器との間で最後に通信されたパケットデータ)をハッシュコードに変換する。この場合、対象データも、対象機器で表示されたPINコード又は対象機器に入力されたPINコードを用いて、上記の特定のデータをハッシュコードに変換する。また、例えば、図2のS22で選択された接続方式がPBCコード方式である場合には、確立制御部42は、予め決められたPINコードを用いて、上記の特定のデータをハッシュコードに変換する。この場合、対象データも、予め決められたPINコードを用いて、上記の特定のデータをハッシュコードに変換する。
【0059】
プリンタ10及び対象機器のどちらかは、プリンタ10で生成されたハッシュコードと、対象機器で生成されたハッシュコードと、が一致するのか否かを判断する(即ち、PINコードの認証を実行する)。2つのハッシュコードが一致した場合、即ち、PINコードの認証に成功した場合には、確立制御部42は、無線接続を確立するために必要な無線プロファイル(SSID、認証方式、暗号化方式、パスワード等)を、対象機器に無線で送信する。この構成によると、プリンタ10は、G/O状態で動作する場合に、対象機器との間で無線プロファイルを適切に通信することができる。なお、認証方式及び暗号化方式は、予め決められている。また、SSID及びパスワードは、S88の処理の際に確立制御部42によって生成されてもよいし、予め決められていてもよい。
【0060】
対象機器は、プリンタ10から無線プロファイルを無線で受信する。これにより、プリンタ10及び対象機器が同じ無線プロファイルを利用することができる。即ち、プリンタ10及び対象機器は、無線プロファイルを用いて、Authentication Request、Authentication Response、Association Request、Association Response、及び、4way handshakeの無線通信を実行する(プリンタ10では確立制御部42がこれらの無線通信を実行する)。この過程で、プリンタ10及び対象機器は、SSIDの認証、認証方式及び暗号化方式の認証、パスワードの認証等を様々な認証処理を実行する。全ての認証が成功した場合に、プリンタ10及び対象機器の間に無線接続が確立される。なお、PINコードの認証に失敗した場合には、プリンタ10及び対象機器の間に無線接続が確立されることなく、認証接続処理が終了する。
【0061】
なお、S88で無線接続が確立されると、制御部30は、さらに、対象機器のMACアドレスを管理リストに追加する。これにより、G/O状態のプリンタ10は、クライアント状態の対象機器との間で、通信対象の対象データ(印刷データ等)の通信を実行することができるようになる。なお、対象データは、OSI参照モデルの物理層よりも上位層であるネットワーク層のデータを含む。即ち、G/O状態のプリンタ10は、クライアント状態の対象機器との間で、ネットワーク層の無線通信を実行することができる。さらに、G/O状態のプリンタ10は、クライアント状態の対象機器と、管理リストに登録されている他の機器と、の間の無線通信を中継することができるようになる。
【0062】
一方において、S90では、確立制御部42は、クライアント状態用のWPSネゴシエーションを実行する。具体的に言うと、確立制御部42は、S88と同様に実行されるPINコードの認証が成功した後に、無線接続を確立するために必要な無線プロファイル(SSID、認証方式、暗号化方式、パスワード等)を、対象機器から無線で受信する。この構成によると、プリンタ10は、クライアント状態で動作する場合に、対象機器との間で無線プロファイルを適切に通信することができる。その後の処理(Authentication Request等の通信処理)は、S88と同様である。この結果、クライアント状態のプリンタ10は、G/O状態の対象機器との間で、対象データ(印刷データ等)の無線通信を実行することができるようになる。さらに、クライアント状態のプリンタ10は、G/O状態の対象機器を介して、他の機器(即ち、対象機器の管理リストに登録されている他の機器)との間で、対象データの無線通信を実行することができるようになる。S88又はS90が終了すると、図4の接続認証処理が終了する。
【0063】
(ケースA;図5)
図5を参照して、プリンタ10及びPC60が実行する処理の一例(ケースA)を説明する。図5の処理が開始される時点では、プリンタ10の設定は、WFDI/FOFFの設定である。ユーザは、プリンタ10の操作部12において、PINコード方式又はPBC方式を選択するための方式選択操作を実行する。この場合、プリンタ10は、図2のS22でYESと判断し、図3のS40でNOと判断し、図3のS42において、WFDI/FONの設定に変更することを促す画面を表示させる。
【0064】
ユーザは、図3のS42で表示された画面を見ながら、プリンタ10の操作部12において、WFDI/FONの設定に変更するための操作を実行する。この場合、プリンタ10は、図3のS44でYESと判断し、Listen処理を開始する(図3のS46)。この場合、Search処理は実行されない。即ち、本実施例では、WFDI/FONの設定に変更するための操作が実行されること(S44でYES)を契機として、Listen処理のみが実行され、Search処理が実行されない。仮に、S44でYESを契機としてListen処理及びSearch処理の両方を実行する構成を採用すると、Listen処理を実行するための時間が短くなり、この結果、PC60がプリンタ10を見つけにくくなる。本実施例のプリンタ10は、S44でYESを契機としてSearch処理を実行しないために、Listen処理を実行するための時間を長く確保することができ、この結果、PC60がプリンタ10を適切に見つけることができる。ただし、変形例では、WFDI/FONの設定に変更するための操作が実行されること(S44でYES)を契機として、Listen処理及びSearch処理のセットが繰り返し実行されてもよい。
【0065】
ユーザは、PC60の操作部において、PINコード方式又はPBC方式を選択するための方式選択操作を実行する。この場合、PC60は、Scan処理、Listen処理、及び、Search処理を実行する。Search処理の過程で、PC60は、Probe Request信号をプリンタ10に無線で送信する。上述したように、プリンタ10でListen処理が開始されているために、プリンタ10は、Probe Response信号をPC60に無線で送信する。この結果、PC60は、プリンタ10を見つけることができ、プリンタ10に関する情報を含む機器リストを、PC60の表示部に表示させることができる。
【0066】
一方において、プリンタ10は、図3のS48において、対象機器の設定をWFDI/FONの設定に変更することを促す画面を表示させる。ユーザは、図3のS48で表示された画面を見ながら、プリンタ10の操作部12において、OKボタンを選択するための操作を実行する。この場合、プリンタ10は、図3のS50でYESと判断する。プリンタ10は、PC60から接続要求信号を受信していないために、図3のS52でNOと判断し、Scan処理、Listen処理、及び、Search処理を実行する(図3のS54)。Search処理の過程で、プリンタ10は、Probe Request信号をPC60に無線で送信して、PC60からProbe Response信号を無線で受信する。この結果、プリンタ10は、PC60を見つけることができ、PC60に関する情報を含む機器リストを、表示部14に表示させることができる(図3のS58)。
【0067】
(ケースA1)
例えば、ユーザは、PC60で表示される機器リストからプリンタ10を選択するよりも先に、プリンタ10の表示部14で表示される機器リストからPC60を選択することができる。この場合、プリンタ10は、図3のS60でYESと判断し、図3のS62の認証接続処理を実行する。認証接続処理(図4のS84)において、プリンタ10は、接続要求信号をPC60に無線で送信する。この説明から明らかなように、ケースA1でプリンタ10から送信される接続要求信号は、プリンタ10がPC60を見つける場合(即ちプリンタ10がPC60からProbe Response信号を受信する場合)に送信する信号である。PC60は、プリンタ10から接続要求信号を無線で受信すると、OK信号をプリンタ10に無線で送信する。なお、この場合、ユーザは、PC60で表示される機器リストからプリンタ10を選択しなくてもよく、PC60は、プリンタ10から受信された接続要求信号に応じて、OK信号をプリンタ10に無線で送信する。その後、図4のS82以降の処理が実行され、プリンタ10とPC60との間で無線接続が確立される。
【0068】
(ケースA2)
例えば、ユーザは、プリンタ10の表示部14で表示される機器リストからPC60を選択するよりも先に、PC60で表示される機器リストからプリンタ10を選択することができる。この場合、PC60は、接続要求信号をプリンタ10に無線で送信する。この説明から明らかなように、ケースA2でPC60から送信される接続要求信号は、PC60がプリンタ10を見つける場合(即ちPC60がプリンタ10からProbe Response信号を受信する場合)に送信する信号である。プリンタ10は、PC60から接続要求信号を受信すると、図3のS56でYESと判断し、図3のS62の認証接続処理を実行する。従って、ユーザは、プリンタ10で表示される機器リストからPC60を選択しなくてもよい。図4のS82以降の処理が実行され、プリンタ10とPC60との間で無線接続が確立される。
【0069】
(ケースB;図6)
図6のケースBでは、ユーザは、プリンタ10の操作部12において、PINコード方式又はPBC方式を選択するための方式選択操作を実行する前に、WFDI/FONの設定に変更するための操作を実行する。この場合、プリンタ10は、図2のS10でYESと判断し、Listen処理を開始する(図2のS12)。この場合、Search処理は実行されない。
【0070】
ユーザが、PC60をプリンタ10に無線接続させることを望んでいるにも関わらず、間違えて、PC70の操作部において方式選択操作を実行してしまう可能性がある。この場合、PC70は、Search処理を実行して、Probe Request信号をプリンタ10に無線で送信する。上述したように、プリンタ10でListen処理が開始されているために、プリンタ10は、Probe Response信号をPC70に無線で送信する。この結果、PC70は、プリンタ10を見つけることができ、プリンタ10に関する情報を含む機器リストを、PC70の表示部に表示させることができる。
【0071】
ユーザは、PC70で表示される機器リストからプリンタ10を選択することができる。この場合、プリンタ10は、図2のS18でYESと判断し、PC70に関する情報をメモリ34内の上記の所定の記憶領域に記憶させる。
【0072】
次いで、ユーザは、間違えに気づいて、PC60の操作部において方式選択操作を実行する。この場合、PC60は、Search処理を実行して、Probe Request信号をプリンタ10に無線で送信する。上述したように、プリンタ10でListen処理が開始されているために、プリンタ10は、Probe Response信号をPC60に無線で送信する。この結果、PC60は、プリンタ10を見つけることができ、プリンタ10に関する情報を含む機器リストを、PC60の表示部に表示させることができる。
【0073】
ユーザは、PC60で表示される機器リストからプリンタ10を選択することができる。この場合、PC60は、接続要求信号をプリンタ10に無線で送信する。この結果、プリンタ10は、図2のS18でYESと判断し、PC70に関する情報を上記の所定の記憶領域から消去して、PC60に関する情報を上記の所定の記憶領域に記憶させる。即ち、プリンタ10は、上記の所定の記憶領域の記憶内容の更新を実行する。
【0074】
次いで、ユーザは、プリンタ10の操作部12において、PINコード方式又はPBC方式を選択するための方式選択操作を実行する。この場合、プリンタ10は、図2のS22でYESと判断し、次いで、図3のS40でYESと判断する。そして、ユーザは、図3のS48で表示される画面を見ながらOKボタンを選択する。この場合、プリンタ10は、図3のS50でYESと判断し、次いで、図3のS52でYESと判断し、S54〜S60をスキップして、S62の認証接続処理に進む。即ち、プリンタ10は、Listen処理及びSearch処理を実行しないために、認証接続処理を迅速に開始することができる。さらに、プリンタ10で機器リストが表示されないために、ユーザは、機器リストからPC60を選択せずに済む。認証接続処理(図4のS84)において、プリンタ10は、接続要求信号をPC60に無線で送信する。その後、図4のS82以降の処理が実行され、プリンタ10とPC60との間で無線接続が確立される。
【0075】
上述したように、メモリ34内の上記の所定の記憶領域には、最後に受信された接続要求信号の送信元に関する情報のみが記憶される。従って、ユーザは、PC60とプリンタ10との間で無線接続を適切に確立させることができる。
【0076】
(ケースB1)
ケースB1は、プリンタ10とPC60との間で無線接続が確立されており、プリンタ10がG/O状態であり、PC60がクライアント状態であるケースである。
【0077】
プリンタ10がG/O状態である間には、通信制御部40は、宛先不特定であるビーコン信号を無線で送信する。ビーコン信号は、プリンタ10に関する情報(例えばプリンタ10のMACアドレス、IPアドレス等)を含む。従って、クライアント状態のPC60は、ビーコン信号を受信することにより、G/O状態のプリンタ10と通信可能であること(例えばプリンタ10の電源がOFF状態でないこと等)を確認することができる。
【0078】
また、プリンタ10がG/O状態である間には、通信制御部40は、Listen処理を継続して実行する。従って、通信制御部40は、仮に、PC70からProbe Request信号を受信すると、Probe Response信号をPC70に無線で送信することができる。
【0079】
(ケースB2)
ケースB2は、プリンタ10とPC60との間で無線接続が確立されており、プリンタ10がクライアント状態であり、PC60がG/O状態であるケースである。
【0080】
プリンタ10がクライアント状態である間には、通信制御部40は、ビーコン信号を無線で送信しない。また、プリンタ10がクライアント状態である間には、通信制御部40は、Listen処理を実行しない。従って、通信制御部40は、仮に、PC70からProbe Request信号を受信しても、Probe Response信号をPC70に無線で送信しない。
【0081】
なお、図示していないが、プリンタ10がクライアント状態又はデバイス状態である間に、ユーザは、プリンタ10の操作部12において、プリンタ10をG/O状態に変更するための操作を実行することができる。この場合、図6のケースBと同様に(WFDI/FONの設定に変更する場合と同様に)、通信制御部40は、Listen処理を継続して実行する。このために、PC60等は、プリンタ10を適切に見つけることができる。
【0082】
(本実施例の効果)
図5に示されるように、プリンタ10は、図3のS48で表示される画面でOKボタンが選択されると、Listen処理及びSearch処理を実行する。従って、プリンタ10は、PC60を見つけ得るし、PC60は、プリンタ10を見つけ得る。しかも、図5及び図6に示されるように、プリンタ10は、WFDI/FONの設定に変更されることを契機として、OKボタンの選択が実行される前に、Listen処理を実行する。従って、プリンタ10でOKボタンの選択が実行される前に、PC60がSearch処理を実行する場合に、プリンタ10は、PC60からProbe Request信号を受信して、Probe Response信号をPC60に送信することができる。即ち、OKボタンの選択が実行される前にListen処理が実行されるために、PC60がプリンタ10を見つける可能性を高めることができる。この結果、PC60とプリンタ10との間で無線接続を適切に確立させることができる。
【0083】
(対応関係)
プリンタ10、PC60が、それぞれ、「無線通信装置」、「特定の外部装置」の一例である。Listen処理、Search処理が、それぞれ、「応答処理」、「検索処理」の一例である。図3のS48で表示される画面に含まれるOKボタンを選択するための操作、WFDI/FONの設定に変更するための操作が、それぞれ、「第1の操作」、「第2の操作」の一例である。OKボタンの操作の後にListen処理及びSearch処理が実行される期間、WFDI/FONの設定に変更するための操作の後にListen処理が実行される期間が、それぞれ、「第1の期間」、「第2の期間」の一例である。Probe Request信号、Probe Response信号が、それぞれ、「検索信号」、「応答信号」の一例である。また、G/O状態、クライアント状態が、それぞれ、「親局状態」、「子局状態」の一例である。さらに、WFDI/FOFFの設定、WFDI/FONの設定が、それぞれ、「第1の設定」、「第2の設定」の一例である。
【0084】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
【0085】
(変形例1)「無線通信装置」は、プリンタ10に限られず、無線通信可能な他の機器(例えば、携帯電話、PDA、PC、サーバ、FAX装置、コピー機、スキャナ、多機能機等)であってもよい。また、「特定の外部装置」は、PC60に限られず、無線通信可能な他の機器(例えば、携帯電話、PDA、サーバ、プリンタ、FAX装置、コピー機、スキャナ、多機能機等)であってもよい。
【0086】
(変形例2)「親局状態」は、WFDのG/O状態に限られず、無線ネットワークを構成する他のデバイスを管理(例えば、他のデバイスに関する情報のリストを管理すること、他のデバイス間の無線通信を中継すること等)する状態であればよい。また、「子局状態」は、WFDのクライアント状態に限られず、親局状態の機器によって管理される状態であればよい。
【0087】
(変形例3)上記の実施例では、図3のS48で表示される画面に含まれるOKボタンを選択するための操作が「第1の操作」の一例である。しかしながら、「第1の操作」は、検索処理及び応答処理を実行するための契機となる操作であれば、どのような操作であってもよい。
【0088】
(変形例4)上記の各実施例では、プリンタ10のCPU32がソフトウェアに従って処理を実行することによって、各部40,42が実現される。これに代えて、各部40,42のうちの少なくとも一部は、論理回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0089】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0090】
2:通信システム、10:プリンタ、60,70:PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置であって、
第1の操作が実行されることを契機として、前記第1の操作の後の第1の期間に、特定の外部装置が前記無線通信装置を検索するための検索信号を前記特定の外部装置から受信して、前記検索信号に対する応答信号を前記特定の外部装置に送信するための応答処理と、前記無線通信装置が前記特定の外部装置を検索するための前記検索信号を前記特定の外部装置に送信して、前記応答信号を前記特定の外部装置から受信するための検索処理と、を実行する通信制御部と、
前記第1の操作が実行される場合に、前記特定の外部装置との間で無線プロファイルを通信して、前記無線プロファイルを用いて前記特定の外部装置との間で無線接続を確立する確立制御部と、
を備え、
前記通信制御部は、さらに、前記第1の操作が実行される前の第2の期間に、前記応答処理を実行する、無線通信装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、前記特定の外部装置から接続要求信号が受信された後に前記第1の操作が実行されても、前記応答処理と前記検索処理とを実行せず、前記特定の外部装置から前記接続要求信号が受信される前に前記第1の操作が実行されることを契機として、前記第1の期間に、前記応答処理と前記検索処理とを実行し、
前記接続要求信号は、前記特定の外部装置が、前記応答信号を前記無線通信装置から受信する場合に、前記無線通信装置に送信する信号である、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記確立制御部は、前記特定の外部装置を含む複数個の外部装置から複数個の前記接続要求信号が受信された後に、前記第1の操作が実行される場合に、前記複数個の接続要求信号のうちの最後に受信された前記接続要求信号の送信元である前記特定の外部装置との間で前記無線プロファイルを通信する、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記通信制御部は、前記第2の期間に、前記検索処理を実行せずに、前記応答処理を実行する、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記無線通信装置は、無線ネットワークの親局として機能する親局状態と、前記無線ネットワークの子局として機能する子局状態と、を含む複数の状態のうちのいずれかの状態で選択的に動作可能であり、
前記確立制御部は、
前記無線通信装置が前記親局状態で動作する場合に、前記特定の外部装置に前記無線プロファイルを送信することによって、前記特定の外部装置との間で前記無線プロファイルを通信し、
前記無線通信装置が前記子局状態で動作する場合に、前記特定の外部装置から前記無線プロファイルを受信することによって、前記特定の外部装置との間で前記無線プロファイルを通信する、請求項1から4のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記通信制御部は、前記無線通信装置が前記複数の状態のうちのいずれかの状態で選択的に動作不可能な第1の設定から、前記無線通信装置が前記複数の状態のうちのいずれかの状態で選択的に動作可能な第2の設定に変更するための第2の操作が実行されることを契機として、前記第2の期間を開始する、請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
有線通信インターフェイスと、
無線通信インターフェイスと、をさらに備え、
前記通信制御部は、
前記無線通信装置の設定が前記第1の設定である間に、前記有線通信インターフェイスを利用した有線通信を実行可能であると共に、前記無線通信インターフェイスを利用した無線通信を実行不可能であり、
前記無線通信装置の設定が前記第2の設定である間に、前記無線通信インターフェイスを利用した無線通信を実行可能であると共に、前記有線通信インターフェイスを利用した有線通信を実行不可能である、請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記通信制御部は、さらに、前記無線通信装置が前記親局状態で動作する間に、前記無線通信装置に関する情報を含むビーコン信号を無線で送信する、請求項5から7のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記通信制御部は、
前記無線通信装置が前記親局状態で動作する間に、前記応答処理を実行可能であり、
前記無線通信装置が前記子局状態で動作する間に、前記応答処理を実行不可能である、請求項5から7のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
無線通信装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記無線通信装置に搭載されるコンピュータに、以下の各処理、即ち、
第1の操作が実行されることを契機として、前記第1の操作の後の第1の期間に、特定の外部装置が前記無線通信装置を検索するための検索信号を前記特定の外部装置から受信して、前記検索信号に対する応答信号を前記特定の外部装置に送信するための応答処理と、
前記第1の操作が実行されることを契機として、前記第1の期間に、前記無線通信装置が前記特定の外部装置を検索するための前記検索信号を前記特定の外部装置に送信して、前記応答信号を前記特定の外部装置から受信するための検索処理と、
前記第1の操作が実行される場合に、前記特定の外部装置との間で無線プロファイルを通信して、前記無線プロファイルを用いて前記特定の外部装置との間で無線接続を確立する確立制御処理と、
前記第1の操作が実行される前の第2の期間に、前記応答処理と、
を実行させるコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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