説明

無線電話システム

【課題】事前に代替音源の登録の準備をすることなく、着信者の状態をリングバックトーンを用いて発信者に通知する。
【解決手段】無線電話機を収容する交換機を備える無線電話システムであって、リングバックトーンとして再生するための音響信号を生成する再生装置と、センサによって取得された前記無線電話機の状態を判定する状態判定装置と、テキストデータを読み上げて音声データに変換する変換装置と、を備え、着信側の前記無線電話機は、前記交換機から着信通知を受けた場合、前記センサによってその状態を取得し、前記状態判定装置は、前記センサが取得した前記無線電話機の状態を示すテキストデータを生成し、前記変換装置は、前記生成されたテキストデータを音声データに変換し、前記再生装置は、前記変換装置によって変換された音声データを、リングバックトーンとして発信側の前記無線電話機に送信することを特徴とする無線電話システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電話システムに関し、特に、リングバックトーンを用いて着信側携帯電話機の状態を発信側携帯電話機へ通知する無線電話システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声通信において、加入者が指定した代替音源をリングバックトーンに用いることによって、発信者に音楽を聞かせる付加サービスを提供するシステムが実用化されている。このような代替音源を再生するシステムとして、現在位置に対応するリングバックトーンを出力するリングバックトーン制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、特許文献1に記載されたリングバックトーン制御装置によると、ユーザ毎にエリア毎にリングバックトーンで再生するための音源の対応表をあらかじめ用意し、ユーザの位置情報に基づいて再生する音源を選択している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−74133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述したように、特許文献1に記載されたリングバックトーン制御装置は、ユーザ毎にエリア毎にリングバックトーンで再生するための音源の対応表を用意する必要があった。すなわち、対応表に従って、再生する代替音源を選択するので、再生する音源を動的に生成することができなかった。
【0005】
また、既存の第三者測位サービスは、測位要求者に通知されるのは位置情報のみであり、着信者の動きや状況を知得することができない。さらに、既存の第三者測位サービスは、GPSなど位置測位装置を用いて着信者の位置情報を取得しているので、屋内など測位ができない場所では情報を取得することができない。
【0006】
本発明は、着信者の位置のみならず、着信者の状態(動き、状況など)を取得し、事前に代替音源の登録の準備をすることなく、着信者の状態をリングバックトーンを用いて発信者に通知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、無線電話機を収容する交換機を備える無線電話システムであって、前記無線電話機は、その状態を測定するセンサを備えるものであって、前記無線電話システムは、前記無線電話機からリングバックトーンとして再生するための音響信号を生成する再生装置と、前記センサによって取得された前記無線電話機の状態を判定する状態判定装置と、テキストデータを読み上げて音声データに変換する変換装置と、を備え、着信側の前記無線電話機は、前記交換機から着信通知を受けた場合、前記センサによってその状態を取得し、前記状態判定装置は、前記センサが取得した前記無線電話機の状態を示すテキストデータを生成し、前記変換装置は、前記生成されたテキストデータを音声データに変換し、前記再生装置は、前記変換装置によって変換された音声データを、リングバックトーンとして発信側の前記無線電話機に送信する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施の形態によると、特別な操作を必要とせず、電話をかけて来た相手に、自動的に自分の状態を教えることができる。さらに、発信者に通知される状態と再生する音声(又は、音楽)との対応表を予め作成せずに、自分の状態を発信者に教えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態の携帯電話システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態において、リングバックトーンによって着信側携帯電話機の状態を知らせる処理のシーケンス図である。
【図3】本発明の実施の形態の着信側携帯電話機106に備わるセンサ107の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態の着信側携帯電話機106の状態を判定する処理208の詳細のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態の携帯電話システムの構成を示すブロック図である。
【0012】
本実施の形態の携帯電話システムは、交換機(MSC)102、リングバックトーン再生装置103、位置測定装置104、及び、音声読み上げ装置105を備える。交換機102は、基地局(図示省略)を介して、発信側携帯電話機101及び着信側携帯電話機106に接続されている。
【0013】
交換機102は、発信側携帯電話機101と着信側携帯電話機106とを接続する回線を設定する。
【0014】
リングバックトーン再生装置103は、プロセッサ、メモリ及びインターフェースを備えるコンピュータであり、発信側携帯電話機101が発信し、着信側携帯電話機106が着信応答するまでの間、発信側携帯電話機101から発生する音楽、音声等の音響信号を生成する。このリングバックトーン再生装置103は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することによって機能する。
【0015】
状態判定装置104は、プロセッサ、メモリ及びインターフェースを備えるコンピュータであり、携帯電話機101等からの要求に基づいて着信側携帯電話機の状態を判定し、判定された携帯電話機の状態のテキスト情報を出力する。
【0016】
音声読み上げ装置105は、プロセッサ、メモリ及びインターフェースを備えるコンピュータであり、入力されたテキストデータを音声データに変換する。例えば、状態判定装置104から出力された状態のテキストデータを音声データに変換し、リングバックトーン再生装置103に出力する。この音声読み上げ装置105は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することによって機能する。
【0017】
携帯電話機101、106は、無線送受信機、制御部、受話器(レシーバ)及び送話器(マイク)を備える無線通信機であり、無線通信回線(基地局)を介して交換機102と接続される。
【0018】
着信側携帯電話機106は、携帯電話機106の状態を取得するセンサ107を備える。このセンサ107は、図3に示すように、加速度センサ301や、ICタグ302や、位置測位装置303を用いることができる。
【0019】
加速度センサ301は、端末の加速度を測定する。加速度センサ301によって測定された加速度を、所定の閾値と比較することによって、着信側携帯電話機106の保持者の状態を判定できる。ICタグ302は、リーダと通信をすることによって取得した情報に基づいて着信側携帯電話機106の状態を判定できる。位置測位装置303では、GPSシステムなどの測位システムを用いて、携帯電話機の地理的な位置を取得することができる。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態において、リングバックトーンによって着信側携帯電話機106の状態を知らせる処理のシーケンス図であり、発信側携帯電話機101が着信側携帯電話機106に電話をかけた後、着信側携帯電話機106から着信者状態の通知を受け、着信側携帯電話機106の着信応答によって、状態通知の再生が停止されるまでの処理を示す。
【0021】
まず、発信者が、発信側携帯電話機101を用いて着信側携帯電話機106へ電話をかける。すると、発信側携帯電話機101は、MSC102へ発信する(201)。発信301要求には、例えば、ISDNで使用されるNo.7共通線信号方式のユーザ部であるISUPのIAMメッセージ等を用いることができる。
【0022】
その後、MSC102は、着信側携帯電話機106に着信を通知し(203)、リングバックトーン再生装置103に再生要求を転送する(202)。再生要求302には、例えば、ISUPのIAMメッセージ等を用いることができる。
【0023】
着信側携帯電話機106は、着呼通知203を受信すると、測定要求204をセンサ107に送信する(204)。
【0024】
センサ107は、測定要求204を受信すると、取得可能な情報を測定し(205)、測定結果を着信側携帯電話機106に送信する(206)。
【0025】
着信側携帯電話機106は、着信者状態判定に必要な情報として(センサ107から取得した測定結果)を状態判定装置104に送信する(207)。
【0026】
状態判定装置104は、着信側携帯電話機106から測定結果207を受信すると、受信した測定結果207に基づいて、着信側携帯電話機の状態を判定し(208)、状態判定完了応答を着信側携帯電話機106に送信する(209)。また、状態判定装置104は、生成された判定情報を音声読み上げ装置105に送信する(210)。判定情報210は、センサ107によって得られた着信側携帯電話機の状態のテキストデータを含む。
【0027】
音声読み上げ装置105は、受信した判定情報210を音声合成し、音声データを生成する(211)。音声データのデータフォーマットは、例えば、G.726 ADPCMフォーマット等によってデジタル化された音データである。音声読み上げ装置105は、生成した音声データをリングバックトーン再生装置103に送信する(212)。
【0028】
リングバックトーン再生装置103は、音声データ312を受信すると、MSC102にIAMの応答をする(213)。応答313には、例えば、ISUPのACMメッセージ等を用いることができる。リングバックトーン再生装置103は、応答313を送信した後、発信側携帯電話機101に、受信した音声データ312を音源ファイルに用いて、リングバックトーンとして着信者の位置を再生する(214)。
【0029】
発信側携帯電話機101は、リングバックトーン再生装置103によって再生されたリングバックトーン314、すなわち、着信側携帯電話機106の位置の情報を音響信号として出力する。
【0030】
その後、着信側携帯電話機106が着信応答すると、MSC102に着信応答を送信する(215)。MSC102は、着信応答215を受信すると、リングバックトーン再生装置103に音声再生停止を要求する(216)。音声再生停止要求216には、例えば、ISUPのRELメッセージなどを用いることができる。
【0031】
図2では、状態判定装置104が、着信側携帯電話機106の状態を判定する場合を例示したが、着信側携帯電話機106が、その状態を判定してもよい。この場合、着信側携帯電話機106は、センサ107から取得した測定結果207に基づいて、その状態を判定し、生成された判定情報を音声読み上げ装置105に送信する。
【0032】
また、図2では、着信側携帯電話機106が電話に応答する場合を例示したが、着信側携帯電話機106が着信応答せず、発信側携帯電話機101が電話を切る場合も基地局側の装置(MSC102、リングバックトーン再生装置103、位置測定装置104、音声読み上げ装置105)は、同様のシーケンスで動作する。具体的には、発信側携帯電話機101は、オンフックすると、MSC102に切断要求を含む応答をする。MSC102は、切断要求を受信すると、リングバックトーン再生装置103に音声再生停止要求316を送信する。
【0033】
図4は、本発明の実施の形態の着信側携帯電話機106の状態を判定する処理208の詳細のフローチャートである。
【0034】
まず、状態判定装置104は、着信側携帯電話機106から測定結果207を受信すると、受信した測定結果207に対応する着信側携帯電話機106の状態を特定する。
【0035】
例えば、センサ107が加速度センサ301である場合、加速度センサ301によって加速度が検出されないときは、着信側携帯電話機106の保持者が停止中であると判定できる。定期的に変化する加速度が検出されたときは、着信側携帯電話機106の保持者が歩行中であると判定できる。加速度の大きな変化があるときは、着信側携帯電話機106の保持者が乗物で移動中であると判定できる。これらの状態では、例えば、テキスト文「歩行中です」を判定情報210として出力する。
【0036】
また、センサ107がICタグ302である場合、着信側携帯電話機106の利用者が保持しているリーダと通信可能であるときは、着信側携帯電話機106は利用者が保持していると判定し、他のセンサ107の測定結果によって判定情報を生成する。一方、着信側携帯電話機106の利用者が保持しているリーダと通信不可能であるときは、着信側携帯電話機106は利用者が保持していないと判定し、例えば、テキスト文「携帯電話の近くにいません」を判定情報210として出力する。
【0037】
さらに、センサ107がICタグ302である場合、部屋の入口等に固定的に設置されたリーダの識別子に基づいて、着信側携帯電話機106の位置を特定し、特定された位置のテキスト文を判定情報210として出力する。特に、高いセキュリティが求められる部屋(例えば、会議室、コンピュータルームなど)の出入口設置されたリーダを設置することによって、追跡の困難な場所にいる場合でも位置情報を取得することができる。
【0038】
また、センサ107が位置測位装置303である場合、GPSシステムなどの測位システムを用いて、携帯電話機の地理的な位置を取得し、取得された位置のテキスト文を判定情報210として出力する。
【0039】
以上説明したように、本発明の実施の形態の携帯電話システムによると、特別な操作を必要とせず、電話をかけて来た相手に、自動的に自分の状態を教えることができる。さらに、発信者に通知される状態と再生する音声(又は、音楽)との対応表を予め作成せずに、自分の状態を発信者に教えることができる。これにより、ユーザは電話が掛かってくるだけで、着信者が移動中であるのか、端末を持っているのか、着信応答が可能な場所にいるかなど、どのような状態にあるかを発信者に知らせることができる。
【符号の説明】
【0040】
101 発信側携帯電話機
102 交換機(MSC)
103 リングバックトーン再生装置
104 状態判定装置
105 音声読み上げ装置
106 着信側携帯電話機
107 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電話機を収容する交換機を備える無線電話システムであって、
前記無線電話機は、その状態を測定するセンサを備えるものであって、
前記無線電話システムは、
前記無線電話機からリングバックトーンとして再生するための音響信号を生成する再生装置と、
前記センサによって取得された前記無線電話機の状態を判定する状態判定装置と、
テキストデータを読み上げて音声データに変換する変換装置と、を備え、
着信側の前記無線電話機は、前記交換機から着信通知を受けた場合、前記センサによってその状態を取得し、
前記状態判定装置は、前記センサが取得した前記無線電話機の状態を示すテキストデータを生成し、
前記変換装置は、前記生成されたテキストデータを音声データに変換し、
前記再生装置は、前記変換装置によって変換された音声データを、リングバックトーンとして発信側の前記無線電話機に送信することを特徴とする無線電話システム。
【請求項2】
前記センサは、読取装置と通信するICタグであって、前記着信側の無線電話機の使用者が所持する読取装置との通信可否を測定し、
前記状態判定装置は、前記ICタグと前記読取装置とが通信できない場合、前記着信側の無線電話機の使用者が無線電話機を持っていないことを示すテキストデータを生成することを特徴とする請求項1に記載の無線電話システム。
【請求項3】
前記無線電話機は、前記センサが取得した状態を示すテキストデータを生成し、前記生成されたテキストデータを前記変換装置に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線電話システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−259079(P2011−259079A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130127(P2010−130127)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】