説明

無線LAN装置及びその制御方法

【課題】サイズ及びコストの増大を抑制しつつ、長時間に亘る通信不能状態の発生を回避できる無線LAN装置を提供する。
【解決手段】レーダーと無線LANシステムとが共用する特定の周波数チャンネルを使用して無線通信を行うことができるアクセスポイント100は、アンテナ101〜104と、アンテナ101〜104毎に設けられた送受信回路140,150,160,170を用いてMIMO方式の無線通信を行う無線通信部180と、無線通信に使用中の周波数チャンネルが、上記特定の周波数チャンネルである場合に、送受信回路140,150,160,170のうち送受信回路170を用いて、使用中の周波数チャンネル以外の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行うように無線通信部180を制御する制御部120とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANシステムにおいて多入力多出力(MIMO)方式の無線通信を行う無線LAN装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANシステムでは、有限な周波数リソースを効率的に利用するために、送信側が複数のアンテナを介して同一周波数帯で複数のストリーム(データ系列)を同時に送信するとともに、受信側が複数のアンテナを介して当該ストリームを受信して各ストリームに分離する多入力多出力(MIMO)方式が用いられている。このようなMIMO方式によれば、周波数利用効率を向上させることができ、データ伝送速度を高速化できる。
【0003】
また、無線LANシステムでは、従来使用されてきた2.4GHz帯に加えて、5GHz帯、例えば、W52と称される5.15〜5.25GHz帯に含まれる周波数チャンネル36,40,44,48と、W53と称される5.25〜5.35GHz帯に含まれる周波数チャンネル52,56,60,64と、W56と称される5.47〜5.725GHz帯に含まれる周波数チャンネル100,104,…,140とが使用可能になっている。
【0004】
しかし、W53及びW56のそれぞれの周波数帯では船舶用、航空機用、軍用等の移動レーダーや、気象用の固定レーダーが使用されており、当該周波数帯をレーダーと無線LANシステムとが共用することになる。このため、無線LANシステムにおいて親局となるアクセスポイントには、レーダー波との干渉を避けるための動的周波数選択(DFS)の搭載が義務づけられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
DFSは、レーダー波に対する運用前モニタリング、運用中モニタリング及び立退き、再利用規制のそれぞれの機能からなる。なお、以下において、DFSが要求されるW53及びW56等の周波数帯を「DFSバンド」と称し、DFSが要求されないW52等の周波数帯を「非DFSバンド」と称する。
【0006】
運用前モニタリングは、CAC(Channel Availabilty Check)と称され、DFSバンドに含まれる周波数チャンネルでの通信を開始する前に、当該周波数チャンネルを対象として、1分間レーダー波のモニタリングを行い、レーダー波が検出されないことを確認する機能である。レーダー波が検出された場合には、当該周波数チャンネルを使用できない。
【0007】
運用中モニタリングは、ISM(In Service Monitoring)と称され、DFSバンドに含まれる周波数チャンネルでの通信を行う間は、当該周波数チャンネルに対して常時レーダー波のモニタリングを継続する。レーダー波を検出した場合には、通信相手である無線LAN端末に対して当該周波数チャンネルによる通信を10秒以内に停止させ、別周波数チャンネルによる通信を再開させる。
【0008】
再利用規制は、レーダー波が検出された周波数チャンネルは、その検出以降の30分間において通信を禁止する機能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−325041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、アクセスポイントが、DFSバンドに含まれる周波数チャンネルにおいて、通信中にレーダー波を検出した後、DFSバンドに含まれる別の周波数チャンネルにおいて通信を再開しようとすると、上述したCACを行う必要があるため、少なくとも1分間は通信を再開することができない。従って、アクセスポイントが長時間に亘って通信不能な状態になる問題がある。
【0011】
このような問題を回避するためには、レーダー波モニタリング専用の回路をアクセスポイントに追加し、DFSバンドに含まれる周波数チャンネルにおいて通信を行いながら、当該モニタリング専用回路を用いて別の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行っておくことが考えられる。しかし、このような方法では、モニタリング専用回路を追加することによって、アクセスポイントのサイズ及びコストが増大する問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、サイズ及びコストの増大を抑制しつつ、長時間に亘る通信不能状態の発生を回避できる無線LAN装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明に係る無線LAN装置の特徴は、レーダーと無線LANシステムとが共用する特定の周波数チャンネルを使用して無線通信を行うことができる無線LAN装置(アクセスポイント100)であって、複数のアンテナ(アンテナ101〜104)と、前記複数のアンテナ毎に設けられた複数の送受信回路(送受信回路140,150,160,170)を含み、前記複数の送受信回路を用いてMIMO方式の無線通信を行う無線通信部(無線通信部180)と、無線通信に使用中の周波数チャンネルが、前記特定の周波数チャンネルである場合に、前記複数の送受信回路のうち一の送受信回路(送受信回路170)を用いて、前記使用中の周波数チャンネル以外の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行うように前記無線通信部を制御する制御部(制御部120)とを具備することを要旨とする。
【0014】
このような特徴によれば、無線LAN装置は、無線通信に使用中の周波数チャンネルが、レーダーと無線LANシステムとが共用する特定の周波数チャンネル(すなわちDFSバンドに含まれる周波数チャンネル)である場合には、MIMO方式の無線通信に用いられる複数の送受信回路のうち一の送受信回路を用いて、使用中の周波数チャンネル以外の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行う。
【0015】
これにより、DFSバンドに含まれる周波数チャンネルにおいて無線通信を行いながら、別の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行っておくことができるため、使用中の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出されても、無線LAN装置が長時間に亘って通信不能な状態になることを回避できる。
【0016】
また、MIMO方式の無線通信に用いられる複数の送受信回路のうち一の送受信回路を用いてレーダー波モニタリングを行う構成としているため、レーダー波モニタリング専用の回路を追加する必要がなく、無線LAN装置のサイズ及びコストの増大を抑制できる。
【0017】
従って、上記特徴によれば、サイズ及びコストの増大を抑制しつつ、長時間に亘る通信不能状態の発生を回避できる無線LAN装置が提供される。
【0018】
本発明に係る無線LAN装置の他の特徴は、上記特徴に係る無線LAN装置において、前記制御部は、前記使用中の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出された場合に、前記使用中の周波数チャンネルを、前記一の送受信回路を用いた前記レーダー波モニタリングによってレーダー波が検出されていない周波数チャンネルに切り替えるように前記無線通信部を制御することを要旨とする。
【0019】
本発明に係る無線LAN装置の他の特徴は、上記特徴に係る無線LAN装置において、前記制御部は、前記使用中の周波数チャンネルが前記特定の周波数チャンネルである場合に、前記一の送受信回路を用いて前記レーダー波モニタリングを行いながら、残りの送受信回路(送受信回路140,150,160)を用いてMIMO方式の無線通信を行うように前記無線通信部を制御することを要旨とする。
【0020】
本発明に係る無線LAN装置の他の特徴は、上記特徴に係る無線LAN装置において、前記制御部は、前記使用中の周波数チャンネルが前記特定の周波数チャンネルでない場合に、前記複数の送受信回路の全てを用いてMIMO方式の無線通信を行うように前記無線通信部を制御することを要旨とする。
【0021】
本発明に係る制御方法の特徴は、レーダーと無線LANシステムとが共用する特定の周波数チャンネルを使用して無線通信を行うことができる無線LAN装置の制御方法であって、複数のアンテナ毎に設けられた複数の送受信回路を用いてMIMO方式の無線通信を行うステップと、無線通信に使用中の周波数チャンネルが、前記特定の周波数チャンネルである場合に、前記複数の送受信回路のうち一の送受信回路を用いて、前記使用中の周波数チャンネル以外の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行うステップとを含むことを要旨とする。
【0022】
本発明に係る制御方法の他の特徴は、上記特徴に係る制御方法において、前記使用中の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出された場合に、前記使用中の周波数チャンネルを、前記一の送受信回路を用いた前記レーダー波モニタリングによってレーダー波が検出されていない周波数チャンネルに切り替えるステップをさらに含むことを要旨とする。
【0023】
本発明に係る制御方法の他の特徴は、上記特徴に係る制御方法において、前記レーダー波モニタリングを行うステップでは、前記使用中の周波数チャンネルが前記特定の周波数チャンネルである場合に、前記一の送受信回路を用いて前記レーダー波モニタリングを行いながら、残りの送受信回路を用いてMIMO方式の無線通信を行うことを要旨とする。
【0024】
本発明に係る制御方法の他の特徴は、上記特徴に係る制御方法において、前記使用中の周波数チャンネルが前記特定の周波数チャンネルでない場合に、前記複数の送受信回路の全てを用いてMIMO方式の無線通信を行うステップをさらに含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、サイズ及びコストの増大を抑制しつつ、長時間に亘る通信不能状態の発生を回避できる無線LAN装置及びその制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る無線LANシステムの概要を説明するための概略構成図である。図1(a)はシングルユーザMIMO(SU−MIMO)方式で無線通信を行う形態を示し、図1(b)はマルチユーザMIMO(MU−MIMO)方式で無線通信を行う形態を示す。
【図2】5GHz帯に含まれる各周波数チャンネルを説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態に係るアクセスポイントの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る発振回路の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るアクセスポイントの概略動作を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係る詳細動作例1のレーダー波モニタリング処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る詳細動作例1の通信処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る詳細動作例1の通信系統及びモニタリング系統の状態遷移を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る詳細動作例2のレーダー波モニタリング処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態に係る詳細動作例2の通信処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る詳細動作例2の通信系統及びモニタリング系統の状態遷移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照して、本発明の実施形態について、(1)無線LANシステムの概要、(2)アクセスポイントの構成、(3)アクセスポイントの動作、(4)実施形態の効果、(5)その他の実施形態の順に説明する。以下の各実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0028】
(1)無線LANシステムの概要
まず、本実施形態に係る無線LANシステム1の概要を説明する。本実施形態では、IEEEで仕様が策定されているIEEE802.11n、又はIEEEで仕様策定中のIEEE802.11acに基づく無線LANシステムについて説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る無線LANシステム1の概要を説明するための概略構成図である。図1(a)は、IEEE802.11nでサポートされるシングルユーザMIMO(SU−MIMO)方式で無線通信を行う無線LANシステム1を示す。図1(b)は、IEEE802.11acでサポートされるマルチユーザMIMO(MU−MIMO)方式で無線通信を行う無線LANシステム1を示す。
【0030】
図1(a)に示す無線LANシステム1は、アクセスポイント100及び無線LAN端末200を具備する。アクセスポイント100は、図示を省略するネットワークに接続され、無線通信が可能な固定型の無線LAN装置である。無線LAN端末200は、ユーザが所持する可搬型の無線LAN装置であり、例えば無線LANカード、USB無線LANアダプタ、無線LAN搭載型ゲーム機、無線LAN搭載型ノートPC、無線LAN搭載型携帯電話機等である。
【0031】
図1(a)に示すように、SU−MIMO方式では、例えば下りリンクにおいて、アクセスポイント100が複数のアンテナを介して同一周波数帯で複数のストリームS1〜S4を同時に送信するとともに、1つの無線LAN端末200が複数のアンテナを介して当該ストリームを受信して各ストリームを分離及び抽出する。具体的には、アクセスポイント100は、各ストリームを異なるアンテナで送信する、又は各ストリームを異なる指向性で送信する。
【0032】
図1(b)に示す無線LANシステム1は、アクセスポイント100及び複数の無線LAN端末200を具備する。アクセスポイント100は、図示を省略するネットワークに接続され、無線通信が可能な固定型の無線LAN装置である。複数の無線LAN端末200のそれぞれは、ユーザが所持する可搬型の無線LAN装置であり、例えば無線LANカード、USB無線LANアダプタ、無線LAN搭載型ゲーム機、無線LAN搭載型ノートPC、無線LAN搭載型携帯電話機等である。
【0033】
図1(b)に示すように、MU−MIMO方式では、例えば下りリンクにおいて、アクセスポイント100が複数のアンテナを介して同一周波数帯で複数のストリームS1〜S4を同時に送信するとともに、複数の無線LAN端末200が複数のアンテナを介して当該ストリームを受信して自端末宛のストリームを分離及び抽出する。具体的には、アクセスポイント100は、各ストリームを異なる指向性で送信することによって、無線LAN端末200#1〜#4毎の伝送路を空間的に多重(空間多重)する。
【0034】
このように、SU−MIMO方式やMU−MIMO方式等のMIMO方式では、同一周波数帯で複数のストリームを並列に伝送できるため、周波数利用効率を向上させることができる。
【0035】
本実施形態では、無線LANシステム1は、5GHz帯に含まれる各周波数チャンネルを使用して無線通信を行うことができる。図2は、5GHz帯に含まれる各周波数チャンネルを説明するための図である。
【0036】
図2に示すように、5GHz帯において、無線LANシステム1は、W52と称される5.15〜5.25GHz帯に含まれる周波数チャンネル36,40,44,48と、W53と称される5.25〜5.35GHz帯に含まれる周波数チャンネル52,56,60,64と、W56と称される5.47〜5.725GHz帯に含まれる周波数チャンネル100,104,…,140とが使用可能である。また、日本では使用不可であるが、5.735〜5.835GHz帯に含まれる周波数チャンネル149,153,157,161,165も使用可能とされている国がある。
【0037】
5.15〜5.25GHz帯(W52)は、レーダーと共用されない周波数帯であり、DFSが要求されない非DFSバンドである。5.25〜5.35GHz帯(W53)は、レーダーと共用される周波数帯であり、DFSが要求されるDFSバンドである。5.15〜5.25GHz帯(W52)は、レーダーと共用されない周波数帯であり、DFSが要求されるDFSバンドである。以下においては、W52の周波数帯に含まれる周波数チャンネル52,56,60,64と、W53の周波数帯に含まれる周波数チャンネル100,104,…,140とを適宜「特定の周波数チャンネル」と称する。
【0038】
なお、IEEE802.11aでは、周波数チャンネルが1つずつ使用されるが、IEEE802.11nでは、2つの周波数チャンネルを束ねて使用することも可能であり、IEEE802.11acでは、4つの周波数チャンネルを束ねて使用することも可能である。
【0039】
(2)アクセスポイントの構成
次に、本実施形態に係るアクセスポイント100の構成を説明する。図2は、アクセスポイント100の構成を示す図である。
【0040】
図2に示すように、アクセスポイント100は、MIMO方式の無線通信を行うための複数のアンテナ101〜104と、アンテナ101〜104を介してMIMO方式の無線通信を行うように構成された無線通信部180と、ネットワークとの通信を行うように構成されたネットワークI/F110とを具備する。なお、本実施形態ではアンテナ本数が4本である構成を説明するが、アンテナ本数は2本又は8本等としてもよい。
【0041】
無線通信部180は、アンテナ101〜104毎に設けられた送受信回路140,150,160,170と、送受信回路140,150,160,170に接続されたメディアアクセスコントローラ(MAC)/ベースバンドプロセッサ(BBP)130とを含む。
【0042】
送受信回路140,150,160,170のそれぞれは、対応するアンテナを介して無線信号を送受信する。MAC/BBP130は、MAC部及びBBPの各モジュールを収納した半導体集積回路であり、MAC部は、データリンク層(第2層)の下位に位置して、所定形式のフレームを単位とする送受信や、誤り検出などを行う。BBP部は、通信信号の変調/復調や、符号化/復号化などの処理を行う。さらに、MAC/BBP130は、MIMO方式の無線通信に必要な各種の信号処理や、レーダー波モニタリングに必要な各種の信号処理を行うように構成される。これらの信号処理については従来技術の範疇であるため、詳細な説明は省略する。
【0043】
送受信回路140は、送信系統として、MAC/BBP130からの出力が入力されるデジタル/アナログ変換器(DAC)141と、DAC141からの出力が入力されるフィルタ142と、フィルタ142からの出力及び発振信号f1が入力されるミキサ143と、ミキサ143からの出力が入力される電力増幅器(PA)144と、PA144からの出力が入力され当該出力をアンテナ101に伝達する送受信切り替えスイッチ145とを含む。また、送受信回路140は、受信系統として、アンテナ101からの出力が入力される送受信切り替えスイッチ145と、送受信切り替えスイッチ145からの出力が入力される低雑音増幅器(LNA)146と、LNA146からの出力及び発振信号f1が入力されるミキサ147と、ミキサ147からの出力が入力されるフィルタ148と、フィルタ148からの出力が入力されるアナログ/デジタル変換器(ADC)149とを含む。
【0044】
送受信回路150は、送信系統として、MAC/BBP130からの出力が入力されるDAC151と、DAC151からの出力が入力されるフィルタ152と、フィルタ152からの出力及び発振信号f1が入力されるミキサ153と、ミキサ153からの出力が入力されるPA154と、PA154からの出力が入力され当該出力をアンテナ102に伝達する送受信切り替えスイッチ155とを含む。また、送受信回路150は、受信系統として、アンテナ102からの出力が入力される送受信切り替えスイッチ155と、送受信切り替えスイッチ155からの出力が入力されるLNA156と、LNA156からの出力及び発振信号f1が入力されるミキサ157と、ミキサ157からの出力が入力されるフィルタ158と、フィルタ158からの出力が入力されるADC159とを含む。
【0045】
送受信回路160は、送信系統として、MAC/BBP130からの出力が入力されるDAC161と、DAC161からの出力が入力されるフィルタ162と、フィルタ162からの出力及び発振信号f1が入力されるミキサ163と、ミキサ163からの出力が入力されるPA164と、PA164からの出力が入力され当該出力をアンテナ103に伝達する送受信切り替えスイッチ165とを含む。また、送受信回路160は、受信系統として、アンテナ103からの出力が入力される送受信切り替えスイッチ165と、送受信切り替えスイッチ165からの出力が入力されるLNA166と、LNA166からの出力及び発振信号f1が入力されるミキサ167と、ミキサ167からの出力が入力されるフィルタ168と、フィルタ168からの出力が入力されるADC169とを含む。
【0046】
送受信回路170は、送信系統として、MAC/BBP130からの出力が入力されるDAC171と、DAC171からの出力が入力されるフィルタ172と、フィルタ172からの出力及び発振信号f2が入力されるミキサ173と、ミキサ173からの出力が入力されるPA174と、PA174からの出力が入力され当該出力をアンテナ104に伝達する送受信切り替えスイッチ175とを含む。また、送受信回路170は、受信系統として、アンテナ104からの出力が入力される送受信切り替えスイッチ175と、送受信切り替えスイッチ175からの出力が入力されるLNA176と、LNA176からの出力及び発振信号f2が入力されるミキサ177と、ミキサ177からの出力が入力されるフィルタ178と、フィルタ178からの出力が入力されるADC179とを含む。
【0047】
なお、無線通信部180の各構成部品は、少なくとも一部が1チップ上に集積化されていてもよい。
【0048】
このように構成された送受信回路140,150,160の動作を、送受信回路140を例に挙げて説明する。送信については、DAC141がMAC/BBP130からのデジタル信号をアナログ信号に変換し、フィルタ142が当該アナログ信号の不要周波数成分を除去し、ミキサ143がフィルタ142の出力信号を発振信号f1と混合することでアップコンバートを行い、PA144がミキサ143の出力信号を増幅し、その結果得られた無線信号が送受信切り替えスイッチ145を介してアンテナ101から送出される。受信については、アンテナ101が受信した無線信号が送受信切り替えスイッチ145を介してLNA146に入力され、LNA146が当該無線信号を増幅し、ミキサ147がLNA146の出力信号を発振信号f1と混合することでダウンコンバートを行い、フィルタ148がミキサ147の出力信号の不要周波数成分を除去し、ADC149がフィルタ148からのアナログ信号をデジタル信号に変換してMAC/BBP130に出力する。なお、送受信切り替えスイッチ145は、制御部120の制御下で、送信及び受信の切り替わりタイミングで切り替えられる。
【0049】
本実施形態では、送受信回路170は、MIMO方式の無線通信に使用されるケースと、レーダー波モニタリング専用として使用されるケースとがある。MIMO方式の無線通信に使用されるケースでは、送受信回路170は、送受信回路140,150,160と同様の動作を行う。この場合、送受信回路170のミキサ173,177に入力される発振信号f2は、発振信号f1と同じ周波数である。これに対し、レーダー波モニタリング専用として使用されるケースでは、送受信回路170の送受信切り替えスイッチ175が受信側に固定されるとともに、送受信回路170のミキサ173,177に入力される発振信号f2は、発振信号f1とは異なる周波数である。すなわち、送受信回路170は、レーダー波モニタリング専用として使用されるときには、MIMO方式の無線通信に使用される周波数チャンネルとは異なる周波数チャンネルで受信のみを行うように制御される。
【0050】
次に、制御部120について説明する。制御部120は、発振回路121、メモリ122及びCPU123を具備する。
【0051】
発振回路121は、CPU123からの制御信号CS1,CS2が入力され、制御信号CS1に応じた発振信号f1をミキサ143,147,153,157,163,167のそれぞれに出力するとともに、制御信号CS2に応じた発振信号f2をミキサ173,177のそれぞれに出力する。このように、送受信回路140,150,160のそれぞれが送受信する無線信号の周波数(周波数チャンネル)と、送受信回路170が送受信する無線信号の周波数(周波数チャンネル)とが、独立して制御できるように構成される。
【0052】
メモリ122は、CPU123に接続されており、CPU123において実行されるプログラム等や当該プログラムによる処理に必要な情報を記憶する不揮発性メモリと、CPU123が処理するデータを一時的に記憶する揮発性メモリとを含んで構成される。メモリ122は、無線通信に使用する周波数チャンネルの優先度を定める情報を予め記憶している。例えば、メモリ122は、デフォルトの周波数チャンネルのチャンネル番号と、第1の切替先の周波数チャンネルのチャンネル番号(CH1)と、第2の切替先の周波数チャンネルのチャンネル番号(CH2)と、第3の切替先の周波数チャンネルのチャンネル番号(CH3)と、第4の切替先の周波数チャンネルのチャンネル番号(CH4)とを記憶する。
【0053】
CPU123は、送受信切り替えスイッチ145,155,165,175、MAC/BBP130、発振回路121、メモリ122、及びネットワークI/F110のそれぞれに接続されており、メモリ122に記憶されているプログラムを実行することによって、送受信切り替えスイッチ145,155,165,175、MAC/BBP130、発振回路121、メモリ122、及びネットワークI/F110のそれぞれを制御する。
【0054】
次に、発振回路121の構成を説明する。図4は、発振回路121の構成を示す図である。
【0055】
図4に示すように、発振回路121は、基準発振器121a、及びPLL回路121b,121cを含む。基準発振器121aは、基準発振信号f0を生成し、基準発振信号f0をPLL回路121b,121cのそれぞれに出力する。PLL回路121bは、基準発振器121aから入力される基準発振信号f0を、CPU123から入力される制御信号CS1に応じた逓倍率で逓倍し、その結果得られた発振信号f1を出力する。PLL回路121cは、基準発振器121aから入力される基準発振信号f0を、CPU123から入力される制御信号CS2に応じた逓倍率で逓倍し、その結果得られた発振信号f2を出力する。
【0056】
(3)アクセスポイントの動作
次に、アクセスポイント100の動作について、(3.1)概略動作、(3.2)第2動作モードにおける詳細動作例1、(3.3)第2動作モードにおける詳細動作例2の順に説明する。
【0057】
(3.1)概略動作
図5は、アクセスポイント100の概略動作を説明するための図である。以下、図3及び図5を参照しながら、アクセスポイント100の概略動作を説明する。なお、図5において、「4×4」とは送信及び受信のそれぞれで4本のアンテナを無線通信に使用することを表しており、「3×3」とは送信及び受信のそれぞれで3本のアンテナを無線通信に使用することを表している。
【0058】
図5に示すように、制御部120は、MIMO方式の無線通信に使用中の周波数チャンネルが、特定の周波数チャンネル(すなわち、DFSバンドに含まれる周波数チャンネル)であるか否かに応じて、無線通信部180の動作モードを切り替える。
【0059】
具体的には、制御部120は、MIMO方式の無線通信に使用中の周波数チャンネルが、特定の周波数チャンネルでない場合には、無線通信部180の動作モードを第1動作モードとしている。一方、制御部120は、MIMO方式の無線通信に使用中の周波数チャンネルが、特定の周波数チャンネルである場合には、無線通信部180の動作モードを第2動作モードとしている。
【0060】
第1動作モードでは、制御部120は、送受信回路140,150,160,170の全てを用いてMIMO方式の無線通信を行うように無線通信部180を制御する。
【0061】
一方、第2動作モードでは、制御部120は、送受信回路170を用いて、MIMO方式の無線通信に使用中の周波数チャンネル以外の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行いながら、残りの送受信回路140,150,160を用いて、MIMO方式の無線通信を行うように無線通信部180を制御する。当該レーダー波モニタリングは上述したCACを含む。
【0062】
制御部120は、メモリ122に記憶されているチャンネル優先度の情報に従って、送受信回路170を用いたレーダー波モニタリングを制御する。例えば、送受信回路140,150,160がデフォルトとして使用している周波数チャンネルが特定の周波数チャンネルである場合に、送受信回路170を用いて、まず第1の切替先の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行い、次いで第2の切替先の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行う。このようなモニタリング処理の詳細については後述する。
【0063】
また、第2動作モードでは、送受信回路140,150,160は、MIMO方式の無線通信を行いながら、上述したISMを行っている。当該ISMにより、使用中の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出された場合には、制御部120は、当該使用中の周波数チャンネルを、送受信回路170を用いたレーダー波モニタリングによってレーダー波が検出されていない周波数チャンネルに切り替えるように無線通信部180を制御する。
【0064】
(3.2)第2動作モードにおける詳細動作例1
次に、第2動作モードにおける詳細動作例1について、(3.2.1)詳細動作例1に係るレーダー波モニタリング処理、(3.2.2)詳細動作例1に係る通信処理、(3.2.3)詳細動作例1の状態遷移の順に説明する。
【0065】
アクセスポイント100は、設定された周波数チャンネル、SSIDやWEPキーなどを用いて、無線LAN端末200との無線通信を行う。このうち、周波数チャンネルについては、デフォルトの設定値は存在するが、5GHzの周波数チャンネルで通信している場合には、レーダー波を検出すると、通信を継続するためには、周波数チャンネルを変更する必要が生じる。
【0066】
以下においては、デフォルトの周波数チャンネル番号を「デフォルトCHD」、切替先の周波数チャンネル番号を「切替先CH1,CH2,CH3,CH4」と称する。
【0067】
(3.2.1)詳細動作例1に係るレーダー波モニタリング処理
図6は、詳細動作例1に係るレーダー波モニタリング処理を示すフローチャートである。第2動作モードにおいて、当該レーダー波モニタリング処理は、送受信回路170を用いて、所定のインターバルで繰り返し実行される。
【0068】
図6に示すように、レーダー波モニタリング処理ルーチンが所定のインターバルで起動されると、ステップS80において、CPU123は、まず自装置が電源投入直後であるか否かを確認する。
【0069】
電源投入直後には、モニタ周波数チャンネルなどの設定がなされていないので、ステップS81において、CPU123は、初期のモニタ周波数チャンネルを設定する。メモリ122には、無線LAN通信を行うためのデフォルトの周波数チャンネルCHDと、そのデフォルトCHDでレーダー波が検出されて使用できない状態となった場合の切り替え先の周波数チャンネルである切替先CH1,CH2,CH3,CH4が予め記憶されている。電源投入時には、CPU123は、メモリ122の内容を参照して、無線通信に用いる周波数チャンネルをデフォルトCHDに設定し、レーダー波モニタリング処理のための周波数チャンネルを切替先CH1に設定する。
【0070】
ステップS82において、CPU123は、モニタリング対象の周波数チャンネルの状況を反映するフラグF1を初期化する。フラグF1はメモリ122の所定のアドレスに設定された値であり、初期化とはそのアドレスに値0を書き込む処理である。フラグF1の初期化に合わせて、フラグF1の次のアドレス+1に、レーダー波モニタリング処理の対象となった周波数チャンネルのチャンネル番号が書き込まれる。
【0071】
ステップS85において、CPU123は、設定したモニタリング対象の周波数チャンネルでレーダー波を探索する処理を開始する。電源投入直後でなければ、CPU123は、上述したステップS81,S82を行うことなく、モニタリング対象の周波数チャンネルでレーダー波を探索する。
【0072】
ステップS86において、CPU123は、モニタリング対象の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出されたか否かを確認する。なお、CPU123は、MAC/BBP130とやり取りすることにより、モニタリング対象の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出されたか否か(すなわち干渉が生じたか否か)を確認できる。
【0073】
レーダー波を検出しなかった場合(ステップS86:NO)、ステップS87においてCPU123は、モニタリング対象の周波数チャンネルでの探索を開始してから1分が経過したか否かを確認する。1分が経過していないことが確認された場合(ステップS87:NO)、処理がステップS85に戻る。
【0074】
一方、CPU123は、モニタリング対象の周波数チャンネルでの探索を始めてから、レーダー波を検出しない状態が1分以上継続した場合(ステップS87:YES)、ステップS88において、モニタリング対象の周波数チャンネルに対して継続使用のためのレーダー波モニタリング(ISM)を行う状態とし、メモリ122の所定のアドレスに設定された上記のフラグF1を設定する。具体的には、所定のアドレスに値1を書き込む。この状態では、フラグF1には値1が、その次のアドレス+1には、継続使用のためのレーダー波モニタリングの対象となった周波数チャンネル番号が設定された状態となっている。この周波数チャンネル番号は、後述する通信処理において利用される。
【0075】
一方、ステップS85においてモニタリング対象の周波数チャンネルを探索した結果、レーダー波が検出された場合(ステップS86:YES)、CPU123は、モニタリング対象の周波数チャンネルを変更し、上記フラグF1を値0にリセットし(ステップS89)、モニタリング対象の周波数チャンネルを切り替える(ステップS90)。フラグF1のリセットは、対応するアドレスを値0に設定することにより行なわれる。また、モニタリング対象の周波数チャンネルについては、次の切替先CHが設定される。なお、レーダー波が検出された場合のモニタリング対象の周波数チャンネルについては、ランダムに決定するものとしてもよい。
【0076】
以上説明したレーダー波モニタリング処理ルーチンが所定のインターバルで繰り返し実行されると、モニタリング対象の周波数チャンネルで1分間以上レーダー波が検出されなければ、メモリ122の所定のアドレスに置かれたフラグF1は値1に設定されることになる。このとき、その次のアドレス+1に設定された番号の周波数チャンネルは、継続使用のためのレーダー波モニタリングが行なわれている状態となる。他方、レーダー波が検出された場合には、このフラグF1は値0に一旦リセットされ、レーダー波が検出されない周波数チャンネルが見つかるまで、モニタリング対象の周波数チャンネルは順次変更されていくことになる。
【0077】
変更された周波数チャンネルで1分間以上レーダー波が検出されなければ、フラグF1が設定される。したがって、以下に説明する通信処理ルーチンでは、このフラグF1の値を参照し、レーダー波モニタリング中の周波数チャンネルの状況をいつでも検出できる。また、フラグF1の値を参照することにより、1分以上に亘ってレーダー波を検出していない周波数チャンネルが存在するか否かを知ることができる。
【0078】
(3.2.2)詳細動作例1に係る通信処理
図7は、詳細動作例1に係る通信処理を示すフローチャートである。
【0079】
ステップS100において無線LAN端末200との通常の通信処理を実行した後、ステップS120においてCPU123は、レーダー波を検出したか否かを確認する。レーダー波の存在については無線通信部180に問い合わせることにより知ることができる。レーダー波を検出してない場合には、そのままステップS100の通信処理に戻って、無線通信を継続する。
【0080】
一方、CPU123は、レーダー波を検出した場合(ステップS120:YES)、ステップS130においてメモリ122の所定のアドレスに設定されたフラグF1の値を参照し、フラグF1に値1が設定されているか否かを確認する。
【0081】
フラグF1が値1であれば、レーダー波モニタリング処理ルーチンにおいて1分間以上レーダー波の検出されなかった周波数チャンネルが存在することになる。続いて、ステップS140においてCPU123は、レーダー波が検出された周波数チャンネルを変更する。上述したように、レーダー波を検出した場合には10秒以内にその周波数チャンネルの使用を中止する必要があるため、直ちに、それまでの周波数チャンネルの使用を中止して変更する。
【0082】
ここで変更した先の新たな周波数チャンネルは、レーダー波モニタリング処理ルーチンにおいて1分間以上レーダー波が検出されなかったとして設定された周波数チャンネルであり、かつその後もISM(ステップS88)されていた周波数チャンネルであるため、当該周波数チャンネルについては、改めて1分間待つことなく、直ちに通信用の周波数チャンネルとして用いることができる。
【0083】
ステップS140の終了後、ステップS100に戻って、通常の通信処理を実行する。具体的には、CPU123は、変更後の周波数チャンネルにおいて、ビーコン信号を直ちにブロードキャスト送信するよう無線通信部180を制御する。アクセスポイント100の通信範囲内にある無線LAN端末200は、このビーコン信号を検出して、自らの利用周波数チャンネルを変更する。これは、通常の無線LANにおける周波数チャンネル変更の手続である。
【0084】
なお、本実施形態では、アクセスポイント100は、周波数チャンネルの変更に際して、切替先を無線LAN端末200に通知していないが、フラグF1の次のアドレス+1に設定されていた値を、切替先の周波数チャンネルとして通知してもよい。アクセスポイント100は、レーダー波を検出したとき、10秒以内にその周波数チャンネルの使用を中止する必要があるが、10秒以内でかつ合計送信時間が260msec以内であれば、既定の周波数チャンネルを用いて通信できる。従って、無線LANの通信範囲に存在し、通信を行なってきた無線LAN端末200に対して、切替先の周波数チャンネルを通知することも可能である。なお、周波数チャンネルの番号を通知するだけでなく、この周波数チャンネルがCAC済みの周波数チャンネルであることも併せて通知してもよい。
【0085】
一方、ステップS130においてフラグF1が値1でない場合にも、ステップS150において、CPU123は、周波数チャンネルを変更する処理を行なう。更に、CPU123は、ステップS160において、レーダー波が検出されたか否かを確認し、レーダー波が検出されていなければ、ステップS170において、更に周波数チャンネルの変更から1分が経過したか否かを確認する。
【0086】
1分が経過していなければ、CPU123は、処理をステップS160に戻して、上記の処理を繰り返す。そして、周波数チャンネル変更処理の後、1分間に亘ってレーダー波を検出しなければ、CAC済みの周波数チャンネルであるとして、通常の通信処理(ステップS100)に復帰する。ここで、1分間に亘ってレーダー波が検出されるか否かを確認しているのは、DFS処理の規格を満たすためである。
【0087】
仮に、この1分間に、再度レーダー波が検出された場合には、CPU123は、処理を一旦ステップS150に戻し、通信用の周波数チャンネルを変更する。その後、同様に、1分間、レーダー波が検出されているか否かの確認を行ない(ステップS160、S170)、1分間に亘ってレーダー波を検出しなければ、通信処理(ステップS100)に復帰する。
【0088】
通信処理(ステップS100)に復帰した後、アクセスポイント100は、直ちに変更後の周波数チャンネルでビーコン信号をブロードキャスト送信する。無線LANの通信範囲内にある無線LAN端末200は、ビーコン信号を受信し、変更後の周波数チャンネルを検出して、自らの通信周波数チャンネルを設定し、その後、アクセスポイント100との通信処理を行う。
【0089】
(3.2.3)詳細動作例1の状態遷移
図8は、詳細動作例1における通信系統及びモニタリング系統の状態遷移を示す図である。ここでは、送受信回路170を用いて切替先CH1をモニタし、継続使用のためのモニタ(ISM)の状態になっているときに、送受信回路140,150,160を用いた無線通信においてレーダー波を検出した場合を示している。
【0090】
図8に示すように、モニタリング系統がISMの状況となっていれば(F=1)、送受信回路140,150,160で使用していた周波数チャンネルであるデフォルトCHDを、モニタされていた切替先CH1に変更したあと、通信ISMに戻ることができ、この周波数チャンネルをすぐに使用できる。
【0091】
他方、レーダー波を検出した時に、モニタリング系統がISMの状況になければ(F1=0)、周波数チャンネルは切り替えられるが、送受信回路140,150,160は、CACに移行する。
【0092】
なお、本実施形態では、レーダーを検出した時でフラグF1が設定されていない場合には、送受信回路140,150,160を用いて1分間のレーダー検出を行なっているが、モニタリング系統の結果(F1=1)を待っても良いし、通信系統(送受信回路140,150,160)及びモニタリング系統(送受信回路170)のいずれか早い方の結果を利用してもよい。
【0093】
(3.3)第2動作モードにおける詳細動作例2
次に、第2動作モードにおける詳細動作例2を説明する。詳細動作例2においては、アクセスポイント100が行う処理のうち、上述した詳細動作例1との相違点を説明する。図9は、詳細動作例2に係るレーダー波モニタリング処理を示すフローチャートである。図10は、詳細動作例2に係る通信処理を示すフローチャートである。図11は、詳細動作例2における通信系統及びモニタリング系統の状態遷移を示す図である。
【0094】
図9に示すように、ステップS121においてCPU123は、レーダー波を検出していない場合、そのまま通信処理に復帰するのではなく、通信用チャンネルが初期設定のチャンネルから変更されているか否かを確認する。
【0095】
通信用チャンネルをデフォルトCHDから変更している場合には、ステップS122においてCPU123は、変更から30分経過したか否かをCPU123に内蔵されたタイマを用いて確認する。チャンネルの変更が行なわれていないか、行なわれていてもチャンネルの変更から30分が経過していなければ、何も行なわず、そのまま通常の通信処理に戻って、処理を継続する。
【0096】
一方、チャンネルがデフォルトCHDから変更されており、しかも変更から30分が経過していれば、ステップS123においてCPU123は、チャンネルを元に戻すべく、チャンネル回帰のためにフラグFRを設定する。具体的には、初期値が値0であるフラグFRに、値1を書き込む。
【0097】
図10に示すレーダー波モニタリング処理ルーチンでは、ステップS84aでの確認、即ちデフォルトチャンネルへの回帰要求を示すフラグFRが値1に設定されているか否かの確認が「YES」となり、デフォルトCHDを、モニタリング系統がモニタする対象のチャンネルに設定し(ステップS84b)、モニタを開始することからフラグF1を値ゼロにリセットする(ステップS84c)。
【0098】
その後、設定したデフォルトCHDのチャンネルに対して干渉の有無を探索する処理(ステップS85)以下を実行する。モニタ用処理ルーチンが、新たな設定されたチャンネルでのCACの処理を完了すると、フラグF1は値1に設定される。
【0099】
なお、デフォルトCHDをモニタしている間に再度レーダー波を検出することもあり得るから、この場合には、詳細動作例1で説明したステップS90において、フラグFRはリセットされ、更にデフォルトCHDが変更されてからの時間をカウントしているタイマもリセットされる。
【0100】
ステップS123でフラグFRを設定すると、レーダー波モニタリング処理ルーチンですぐにフラグF1はリセットされるので、レーダー波モニタリング処理ルーチンで、CACの処理が完了するまで、フラグF1は値1に設定されることはない。CACの処理が完了して、フラグF1に値1が設定されると、ステップS124での確認は「YES」となって、通信用のチャンネルをデフォルトCHDに変更し(ステップS125)、そのまま通信処理に復帰することになる。
【0101】
図11に示すように、詳細動作例2では、レーダー波を検出して使用するチャンネルを切替先CH1に切り替えてから30分が経過すると、フラグFRが設定され、モニタリング系統は、モニタするチャンネルをデフォルトCHDに変更する処理に移行する。
【0102】
その上でCACを行ない、1分が経過すれば、フラグF1を設定する。送受信回路140,150,160では、30分経過後にフラグF1を見て、チャンネルの変更処理に移行し、通信用のチャンネルをデフォルトCHDに変更し、通信ISMに移行する。
【0103】
この結果、詳細動作例2では、詳細動作例1と同様に処理が行なわれる上、一旦通信用チャンネルがデフォルトCHDから変更されてから30分が経過すると、通信用のチャンネルをそのデフォルトCHDに戻すことができる。
【0104】
(4)実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態に係るアクセスポイント100は、無線通信に使用中の周波数チャンネルが、レーダーと無線LANシステムとが共用する特定の周波数チャンネル(すなわちDFSバンドに含まれる周波数チャンネル)である場合には、MIMO方式の無線通信に用いられる送受信回路140,150,160,170のうち送受信回路170を用いて、使用中の周波数チャンネル以外の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行う。
【0105】
これにより、DFSバンドに含まれる周波数チャンネルにおいて無線通信を行いながら、別の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行っておくことができるため、使用中の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出されても、アクセスポイント100が長時間に亘って通信不能な状態になることを回避できる。
【0106】
また、MIMO方式の無線通信に用いられる送受信回路140,150,160,170のうち送受信回路170を用いてレーダー波モニタリングを行う構成としているため、レーダー波モニタリング専用の回路を追加する必要がなく、アクセスポイント100のサイズ及びコストの増大を抑制できる。
【0107】
従って、本実施形態によれば、サイズ及びコストの増大を抑制しつつ、長時間に亘る通信不能状態の発生を回避できるアクセスポイント100が提供される。
【0108】
本実施形態では、アクセスポイント100は、使用中の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出された場合に、使用中の周波数チャンネルを、送受信回路170を用いたレーダー波モニタリングによってレーダー波が検出されていない周波数チャンネルに切り替える。これにより、使用中の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出された場合には、事前のレーダー波モニタリングによってレーダー波が検出されていない周波数チャンネルに即座に切り替えることができるため、通信を即座に再開できる。
【0109】
本実施形態では、アクセスポイント100は、使用中の周波数チャンネルが特定の周波数チャンネルである場合に、送受信回路170を用いてレーダー波モニタリングを行いながら、残りの送受信回路140,150,160を用いてMIMO方式の無線通信を行う。これにより、送受信回路170を用いてレーダー波モニタリングを行いながら、残りの送受信回路140,150,160を用いてMIMO方式の無線通信を行うため、MIMO伝送によって周波数利用効率を向上させることができ、高速なデータ伝送を実現できる。
【0110】
本実施形態では、アクセスポイント100は、使用中の周波数チャンネルが特定の周波数チャンネルでない場合に、送受信回路140,150,160,170の全てを用いてMIMO方式の無線通信を行う。これにより、使用中の周波数チャンネルが特定の周波数チャンネルでない場合、すなわち非DFSバンドに含まれる周波数チャンネルである場合には、全ての送受信回路を用いたMIMO伝送によって、周波数利用効率をより一層向上させることができ、高速なデータ伝送を実現できる。
【0111】
本実施形態では、アクセスポイント100は、5GHz帯の特定の周波数チャンネルで無線通信を行なっている場合、常時、同じ5GHzの他の周波数チャンネルの状況をモニタしており、そのモニタの結果及びモニタ中の周波数チャンネル番号を、フラグF1とこれに続くアドレス+1に記憶している。従って、通信中の周波数チャンネルでレーダー波を検出した場合、このモニタ中の周波数チャンネルの状況に応じて、周波数チャンネルの切替を速やかに行うことができる。特に、モニタ中の周波数チャンネルが、継続使用のモニタ(ISM)の状態であれば、これをフラグF1の値により確認し、無線LANのための周波数チャンネルをモニタ中の周波数チャンネルに切り替えた後、直ちにブロードキャストのビーコンを出力し、新しい周波数チャンネルでの無線通信に復し、新しい周波数チャンネルでの無線LANの運用を継続できる。
【0112】
(5)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施形態及び運用技術が明らかとなる。
【0113】
上述した実施形態では、本発明に係る無線LAN装置の一例としてのアクセスポイント100を主に説明したが、本発明に係る無線LAN装置はアクセスポイントに限定されず、DFS機能を搭載し、且つMIMO方式の無線通信をサポートするものであればよい。例えば、無線LANルータを本発明に係る無線LAN装置としてもよい。
【0114】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0115】
101〜104…アンテナ、120…制御部、121…発振回路、121a…基準発振器、121b,121c…PLL回路、122…メモリ、123…CPU、130…MAC/BBP、140,150,160,170…送受信回路、141…DAC、142…フィルタ、143…ミキサ、144…PA、145…送受信切り替えスイッチ、146…LNA、147…ミキサ、148…フィルタ、149…ADC、150…送受信回路、151…DAC、152…フィルタ、153…ミキサ、154…PA、155…送受信切り替えスイッチ、156…LNA、157…ミキサ、158…フィルタ、159…ADC、160…送受信回路、161…DAC、162…フィルタ、163…ミキサ、164…PA、165…送受信切り替えスイッチ、166…LNA、167…ミキサ、168…フィルタ、169…ADC、170…送受信回路、171…DAC、172…フィルタ、173…ミキサ、174…PA、175…送受信切り替えスイッチ、176…LNA、177…ミキサ、178…フィルタ、179…ADC、180…無線通信部、200…無線LAN端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダーと無線LANシステムとが共用する特定の周波数チャンネルを使用して無線通信を行うことができる無線LAN装置であって、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナ毎に設けられた複数の送受信回路を含み、前記複数の送受信回路を用いてMIMO方式の無線通信を行う無線通信部と、
無線通信に使用中の周波数チャンネルが、前記特定の周波数チャンネルである場合に、前記複数の送受信回路のうち一の送受信回路を用いて、前記使用中の周波数チャンネル以外の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行うように前記無線通信部を制御する制御部と
を具備することを特徴とする無線LAN装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記使用中の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出された場合に、前記使用中の周波数チャンネルを、前記一の送受信回路を用いた前記レーダー波モニタリングによってレーダー波が検出されていない周波数チャンネルに切り替えるように前記無線通信部を制御することを特徴とする請求項1に記載の無線LAN装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記使用中の周波数チャンネルが前記特定の周波数チャンネルである場合に、前記一の送受信回路を用いて前記レーダー波モニタリングを行いながら、残りの送受信回路を用いてMIMO方式の無線通信を行うように前記無線通信部を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の無線LAN装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記使用中の周波数チャンネルが前記特定の周波数チャンネルでない場合に、前記複数の送受信回路の全てを用いてMIMO方式の無線通信を行うように前記無線通信部を制御することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の無線LAN装置。
【請求項5】
レーダーと無線LANシステムとが共用する特定の周波数チャンネルを使用して無線通信を行うことができる無線LAN装置の制御方法であって、
複数のアンテナ毎に設けられた複数の送受信回路を用いてMIMO方式の無線通信を行うステップと、
無線通信に使用中の周波数チャンネルが、前記特定の周波数チャンネルである場合に、前記複数の送受信回路のうち一の送受信回路を用いて、前記使用中の周波数チャンネル以外の周波数チャンネルに対するレーダー波モニタリングを行うステップと
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
前記使用中の周波数チャンネルにおいてレーダー波が検出された場合に、前記使用中の周波数チャンネルを、前記一の送受信回路を用いた前記レーダー波モニタリングによってレーダー波が検出されていない周波数チャンネルに切り替えるステップをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記レーダー波モニタリングを行うステップでは、前記使用中の周波数チャンネルが前記特定の周波数チャンネルである場合に、前記一の送受信回路を用いて前記レーダー波モニタリングを行いながら、残りの送受信回路を用いてMIMO方式の無線通信を行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記使用中の周波数チャンネルが前記特定の周波数チャンネルでない場合に、前記複数の送受信回路の全てを用いてMIMO方式の無線通信を行うステップをさらに含むことを特徴とする請求項5〜7の何れか一項に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−120033(P2012−120033A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269451(P2010−269451)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】