説明

無菌ポリヌクレオチド系薬剤の製造方法

本発明は、ポリヌクレオチドと、ブロック・コポリマーと、カチオン性界面活性剤とを含む配合物の新規の製造方法に関する。本方法によって製造された配合物は、ポリヌクレオチド系薬剤において使用するのに適している。本明細書中に開示された適切な製造方法はさらに、ポリヌクレオチドと、ブロック・コポリマー及びカチオン性界面活性剤との混合物を低温濾過し、これにより配合物を滅菌することを含む。本発明の方法はまた、配合物の熱サイクル処理の必要性を排除し、これにより、商業生産中に大量の配合物を製造するのに必要な時間及びコストを低減する。本発明はまた新規のカチオン性脂質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヌクレオチドと、ブロック・コポリマーと、カチオン性界面活性剤とを含む配合物の新規の製造方法に関する。本方法によって製造された配合物は、ポリヌクレオチド系薬剤において使用するのに適している。
【背景技術】
【0002】
遺伝子及びワクチンの送達におけるアジュバントとして、非イオン性ブロック・コポリマーを使用することが当業界において記録されている。Newman他(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 15(2):89-142(1998))は、アジュバント活性を示す非イオン性ブロック・コポリマーのクラスを概説している。その基礎構造は、ポリオキシエチレン(POE)とポリオキシプロピレン(POP)とのブロック、例えばPOE-POP-POEブロック・コポリマーを含む。Newman他は同文献において、インフルエンザ・タンパク質系ワクチンに対するアジュバントとして、或る特定のPOE-POP-POEブロック・コポリマー、つまり、分子量が約9000ダルトン−約20,000ダルトンを上回る中央POPブロックと、コポリマーの総分子量の最大約20%を含む側方POEブロックとを含有する、高分子量POE-POP-POEブロック・コポリマーが有用であり得ることを開示している(これらのPOE-POP-POEブロック・コポリマーに関しては、全てEmanuele他による、米国再発行特許第36,665号、米国特許第5,567,859号、同第5,691,387号、同第5,696,298号及び同第5,990,241号を参照されたい)。国際公開第WO96/04932号にさらに開示された高分子量POE/POPブロック・コポリマーは、界面活性剤特性を有し、そしてワクチン・アジュバントとしての生物学的有効性を示す。
【0003】
米国特許第5,656,611号及び国際公開第WO99/06055号に開示された組成物は、ポリヌクレオチド、及び非イオン性部分とポリカチオン性部分とを含有するブロック・コポリマーを含む。界面活性剤を添加して溶解度を増大させると、その最終結果としてミセルが形成される。この配合物はポリ核酸の安定化を可能にし、そしてトランスフェクション効率を高める。国際公開第WO99/21591号には、ポリヌクレオチドと、ベンジルアンモニウム基含有カチオン性界面活性剤との水性混合物を含む可溶性イオン複合体、並びにワクチン及び遺伝子送達におけるこの複合体の使用が開示されている。
【0004】
国際公開第WO02/00844号(この内容全体を参考のため、本明細書中に引用する)における最近の開示には、ポリヌクレオチドと、ブロック・コポリマーと、カチオン性界面活性剤とを含むポリヌクレオチド・ワクチン・アジュバントが発表されている。配合物中にカチオン性界面活性剤を含むことにより、ブロック・コポリマー/カチオン性界面活性剤アジュバントと会合するポリヌクレオチドのパーセンテージが増大する。加えて、この配合物は、ポリヌクレオチド・ワクチン及び/又は遺伝子治療に基づくトランス遺伝子に対するin vivo免疫応答を高めることを実証した。
【0005】
しかし、国際公開第02/00844号パンフレットに記載された、このポリヌクレオチド/ブロック・コポリマー/カチオン性界面活性剤の組成物を製造する方法は、ポリヌクレオチド複合体を形成するために、ブロック・コポリマーの曇り点を通して数回、混合物を熱サイクル処理することを必要とする。これらの複数回の加熱・冷却サイクルは、特に商業生産中には大量の配合物の製造が必要とされることを考えると、高価であり、また時間がかかる。加えて、国際公開第WO02/00844号には滅菌工程が開示されていない。滅菌条件下で配合物を混合して製造する前に、全ての成分を滅菌することが必要となると、大量生産のコストがかなり上がり、また、この配合物の製造を商業生産のために規模拡大する可能性が阻まれることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、拡張可能な製造プラットフォームをも可能にする、上述の無菌配合物の製造方法が当業者には依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、(1)配合物を滅菌する低温濾過プロセス、及び(2)溶液が曇り点を通してサイクル処理されることを必要としない製造方法を提供することにより、当業者のニーズに対処し、そしてこれを満たす。この方法の結果、前述の配合物と同様の粒子サイズ及び表面電荷(ゼータ電位)を有する複合体が生じる。
【0008】
本発明はまた、本発明の方法において使用するためのいくつかの新規のカチオン性脂質:(±)-N-(ベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ヘキシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(Bn-DHxRIE)、(±)-N-(2-アセトキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ヘキシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(DHxRIE-OAc)、(±)-N-(2-ベンゾイルオキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ヘキシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(DHxRIE-OBz)、(±)-N-(3-アセトキシプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オクチルオキシ)-1-プロパンアミニウムクロリド(Pr-DOctRIE-OAc)、の使用を発表している。
【0009】
本発明は、ポリヌクレオチド系薬剤において使用するのに適切なポリヌクレオチド配合物の新規の製造方法に関する。具体的には、この方法は、(a)(i)カチオン性界面活性剤;(ii)ブロック・コポリマー及び;(iii)ポリヌクレオチド分子の個体群とを、前記ブロック・コポリマーの曇り点未満の温度で混合することにより、混合物を形成し;そして、(b)該混合物を低温濾過することにより、無菌配合物を生成する、ことを含む。
【0010】
ある実施態様の場合、この方法はさらに、該混合物の温度を、工程(b)の前又は後に、前記ブロック・コポリマーの曇り点を上回る温度に上昇させることを含むことができる。さらに、この方法は、前記ブロック・コポリマーの曇り点を上回る温度と下回る温度との間で、該混合物を複数回のサイクルにわたってサイクル処理することを含むことができる。
【0011】
本発明の有用なカチオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウム(BAK)及びPr-DOctRIE-OAcを含む。本発明は、ポリオキシエチレン(POE)/ポリオキシプロピレン(POP)タイプのような非イオン性ブロック・コポリマーを含む方法に関する。具体的にはこのポリマーは、ポロキサマー(Poloxamer)CRL-1005のようなブロック・コポリマーである。
【0012】
本発明の方法は、サイズ範囲約100nm−約2000nmのミクロ粒子を形成するブロック・コポリマーを含む無菌配合物の製造に関する。ブロック・コポリマーは約1℃−約20℃の曇り点を有し、そして、ブロック・コポリマー及び核酸分子と会合し得るカチオン性界面活性剤と会合することにより、ミクロ粒子を形成する。
【0013】
本発明は、本明細書中により詳細に記載されているように、ポリヌクレオチド系薬剤の改善された製造方法を提供する。具体的には、本発明の方法は、商業生産のために容易に拡張可能であり、そして無菌ポリヌクレオチド系薬剤を製造するためのコスト効率のよい2工程法を提供する。
【0014】
本発明はまた、Bn-DHxRIE、DHxRIE-OAc、DHxRIE-OBz及びPr-DOctRIE-OAcから成る群から選択されたカチオン性脂質に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用された「PBS」とは、--リン酸緩衝生理食塩水--を意味する。
【0016】
本明細書中で使用された「BAK」とは、--塩化ベンザルコニウム--を意味する。
【0017】
本明細書中で使用された「BEC」とは、--塩化ベンゼトニウム--を意味する。
【0018】
本明細書中で使用された「CPC」とは、--塩化セチルピリジニウム--を意味する。
【0019】
本明細書中で使用された「CTAC」とは、--塩化セチルトリメチルアンモニウム--を意味する。
【0020】
本明細書中で使用された「PS-80」とは、--ポリソルベート80--を意味する。
【0021】
本明細書中で使用された「混合物」と「溶液」とは入れ替え可能である。
【0022】
本明細書中で使用された語「粒子」と「ミクロ粒子」とは入れ替え可能である。
【0023】
本明細書中で使用された「曇り点」という用語は、透明な溶液が曇ってきたときの、すなわち、溶液中に溶解された成分が溶液から析出し始めるときの、温度シフト又は他の滴定における点を意味する。
【0024】
本明細書中で使用された「アジュバント」という用語は、抗原に対する免疫応答を非特異的に高める任意の物質、又は物質の組み合わせであり;そしてまた、脊椎動物宿主又は哺乳動物宿主、例えばヒト又はヒト以外の哺乳動物宿主内部におけるポリヌクレオチド送達に直接に関連する免疫応答を高める任意の物質に関し、従って、ポリヌクレオチドとの組み合わせにおいてアジュバントを投与する結果、所期抗原又はポリヌクレオチドによってコードされた抗原の発現に対してin vivo免疫応答が高められる。この定義中には、遺伝子送達の促進因子として作用し、これにより所期抗原を発現させることができる細胞に送達されるプラスミドDNAの量を増大させ得る物質である。プラスミドDNAの送達を増進することができる物質は、プラスミドDNAと相互作用する配合物及び物質中のプラスミドDNAと実質的には相互作用しない物質を含み、in vitro又はin vivoにおいて、アジュバントとプラスミドDNAとの緊密に結合された複合体、又は弱く結合された複合体を形成することになる。
【0025】
本明細書中で使用された用語「ポリヌクレオチド」は、必須調節要素を含有する核酸分子であり、従って、生きている脊椎動物細胞中に導入されると、核酸分子は、核酸分子を含む遺伝子によってコードされる翻訳生成物を生成するように、細胞機構を導くことができる。
【0026】
本明細書中で使用された用語「ポリヌクレオチド系薬剤」は、ポリヌクレオチド系組成物を示すために使用される。これらの組成物は、ビヒクルが当該トランス遺伝子を脊椎動物宿主、例えばヒト又はヒト以外の哺乳動物宿主に送達するか、或いは、トランス遺伝子の検出可能なレベル及び/又は治療レベルの発現を提供又は促進し、且つ/又は、トランス遺伝子発現生成物に対する免疫応答を生成又は促進するのに有用な、本明細書中に開示されたブロック・コポリマー及びカチオン性界面活性剤を含む組成物を含む。
【0027】
本明細書中で使用された用語「ベクター」は、抗原又は抗原エピトープを発現させるトランス遺伝子又はその部分をおそらくは含むDNAフラグメントを、宿主生物又は宿主組織内に導入することができるビヒクルを意味する。種々のタイプのベクターがあり、DNAプラスミドベクターを含む組換えベクターに制限されず、組換えウィルス・ベクター、例えばアデノウィルス・ベクター、レトロウィルス・ベクター及びアデノ随伴ウィルス・ベクター、並びに、バクテリオファージ・ベクター及びコスミッド・ベクターを含む。
【0028】
用語「遺伝子」又は「トランス遺伝子」は、不連続的なタンパク質又はその一部、例えば、宿主内部の適切な免疫応答を誘導することになる全長タンパク質の一部をコードする核酸分子セグメントを意味する。
【0029】
本発明は、ポリヌクレオチド系薬剤に使用するのに適切な無菌配合物を生成する新規の方法に関する。この方法を実施する結果、ポリヌクレオチド分子個体群とブロック・コポリマーとカチオン性界面活性剤とを含む無菌配合物をもたらす。本発明の方法は、前述の方法の改善形である。それというのも、本発明の方法は2つの工程のみを含み、このことは、商業規模での生産を容易にし、そしてコスト効率を改善するからである。
【0030】
本発明の方法は、
(i) カチオン性界面活性剤;
(ii) ブロック・コポリマー;及び
(iii)ポリヌクレオチド
を、前記ブロック・コポリマーの曇り点未満の温度で混合することにより、混合物を形成することを含む。本発明の適切な成分は本明細書中に発表されている。
【0031】
混合物の成分が添加される順序は変化してよい。混合物の成分の適切な添加順序は、制限されず:(1)ポリヌクレオチド;(2)ブロック・コポリマー;そして(3)カチオン性界面活性剤を含む。或いは、添加順序は、(1)カチオン性界面活性剤;(2)ブロック・コポリマー;そして(3)ポリヌクレオチドであってもよい。全ての成分を添加したら、成分を添加している間に並行して、或いは成分の添加と添加との間に、混合物を撹拌することができる。
【0032】
本明細書において開示するポリヌクレオチド系薬剤配合物中で有用なブロック・コポリマーは、室温(ブロック・コポリマー曇り点を上回る温度)でミクロ粒子を形成し、そして核酸分子個体群、例えばプラスミドDNA分子個体群と、カチオン性界面活性剤の添加の有無にかかわらず会合することができるブロック・コポリマーである。本発明の核酸分子は、デオキシリボ核酸分子(DNA)、例えばゲノムDNA及び相補DNA(cDNA)、並びにリボ核酸分子(RNA)を含むことができる。ブロック・コポリマーに関して、本発明の方法において使用される適切なコポリマー群は、非イオン性ブロック・コポリマーを含み、これらのコポリマーは、ポリオキシエチレン(POE)とポリオキシプロピレン(POP)とのブロックを含む。
【0033】
本発明は、非イオン性ブロック・コポリマーを部分的に含むポリヌクレオチド系薬剤において使用するのに適切な無菌配合物を製造する方法に関する。本発明は、本明細書中に発表されているような粒度及び表面電荷の生成を促進する任意のブロック・コポリマーの使用を検討するが、適切な非イオン性ブロック・コポリマーは、ポリオキシエチレン(POE)/ポリオキシプロピレン(POP)ブロック・コポリマー、特に高分子量POE-POP-POEブロック・コポリマーである。これらの化合物は、米国再発行特許第36,665号、米国特許第5,567,859号、同第5,691,387号、同第5,696,298号及び同第5,990,241号、及び国際公開第96/04932号(これら全てを参考のため本明細書中に引用する)に発表されている。
【0034】
簡潔に言えば、これらの非イオン性ブロック・コポリマーは下記一般式:HO(C2H4O)x(C3H6O)y(C2H4O)xHを有し、上記式中(y)は、疎水性POP部分(C3H6O)の分子量が最大約20,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性POE部分(C2H4O)のパーセンテージが約1重量%−50重量%であるような数を表す。
【0035】
本発明の方法において使用することができる、適切なPOE-POP-POEブロック・コポリマーは、下記式:HO(C2H4O)x(C3H6O)y(C2H4O)xHを有し、上記式中(y)は、疎水性部分(C3H6O)の分子量が約9,000ダルトン−約15,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性部分(C2H4O)のパーセンテージが約3−35%であるような数を表す。
【0036】
本発明の方法において使用することができる別のPOE-POP-POEブロック・コポリマーは、下記式:HO(C2H4O)x(C3H6O)y(C2H4O)xHを有し、上記式中(y)は、疎水性部分(C3H6O)の分子量が約9,000ダルトン−約15,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性部分(C2H4O)のパーセンテージが約3−10%であるような数を表す。
【0037】
本発明の方法において使用することができるさらに別の適切な界面活性コポリマーは、下記式:HO(C2H4O)x(C3H6O)y(C2H4O)xHを有し、上記式中(y)は、疎水性部分(C3H6O)の分子量が約9,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性部分(C2H4O)のパーセンテージが約3−5%であるような数を表す。
【0038】
本発明の方法において使用することができるさらに別の界面活性コポリマーは、下記式:HO(C2H4O)x(C3H6O)y(C2H4O)xHを有し、上記式中(y)は、疎水性部分(C3H6O)の分子量が約9,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性部分(C2H4O)のパーセンテージが約3%であるような数を表す。
【0039】
本発明の方法において使用することができる、適切な界面活性コポリマーは、CRL-1005である。CRL-1005は下記式:HO(C2H4O)x(C3H6O)y(C2H4O)xHを有し、上記式中(y)は、疎水性部分(C3H6O)の分子量が約12,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性部分(C2H4O)のパーセンテージが約5%であるような数を表し、(x)は約7,±1そして、(y)は約12,000ダルトンであり、約207単位,±7である。
【0040】
本明細書中で利用される典型的なPOE/POPブロック・コポリマーは、Newman他(Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 15(2):89−142(1998))において概説されているようなPOE-POP-POEの構造を含むことになる。本発明の方法において使用するための適切なブロック・コポリマーは、分子量範囲が約1000ダルトン−最大約20,000ダルトンの中央POPブロックと、コポリマーの総分子量の最大約50%を含む側方POEブロックとを有するPOE-POP-POEブロック・コポリマーである。以前に開示されたプルロニック(Pluronic)系POE/POPブロック・コポリマーよりも著しく大型のこれらのようなブロック・コポリマーは、米国再発行特許第36,665号に詳細に記載されている。本発明のポリヌクレオチド系配合物を例示するのに利用される代表的なPOE-POP-POEブロック・コポリマーは、国際公開第WO96/04932号に開示されており、Newman他(同文献)にも詳細に記載されており、CRL-1005(CytRx Corp)と呼ばれている。
【0041】
本発明において使用するための別の適切なブロック・コポリマー群は、「逆」ブロック・コポリマーであり、分子の疎水性部分(C3H6O)と親水性部分(C2H4O)とが逆転されていることにより、ポリマーは、式:HO(C3H6O)y(C2H4O)x(C3H6O)yHを有し、上記式中(y)は、疎水性POP部分(C3H6O)の分子量が最大約20,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性POE部分(C2H4O)のパーセンテージが約1重量%−50重量%であるような数を表す。これらの「逆」ブロック・コポリマーは構造POP-POE-POPを有しており、米国特許第5,656,611号明細書及び同第6,359,054号明細書に記載されている。
【0042】
本発明において使用することができる適切なPOP-POE-POPブロック・コポリマーは、下記式: HO(C3H6O)y(C2H4O)x(C3H6O)yHを有し、上記式中(y)は、疎水性部分(C3H6O)の分子量が約9000−約15,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性部分(C2H4O)のパーセンテージが約3−35%であるような数を表す。
【0043】
本発明において使用することができる別の好適なPOP-POE-POPブロック・コポリマーは、下記式: HO(C3H6O)y(C2H4O)x(C3H6O)yHを有し、上記式中(y)は、疎水性部分(C3H6O)の分子量が約9000−約15,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性部分(C2H4O)のパーセンテージが約3−10%であるような数を表す。
【0044】
本発明において使用することができる別の適切な界面活性コポリマーは、下記式: HO(C3H6O)y(C2H4O)x(C3H6O)yHを有し、上記式中(y)は、疎水性部分(C3H6O)の分子量が約12,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性部分(C2H4O)のパーセンテージが約5%であるような数を表す。
【0045】
本発明において使用することができる別の界面活性コポリマーは、下記式: HO(C3H6O)y(C2H4O)x(C3H6O)yHを有し、上記式中(y)は、疎水性部分(C3H6O)の分子量が約9,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性部分(C2H4O)のパーセンテージが約3−5%であるような数を表す。
【0046】
本発明において使用することができる別の適切な界面活性コポリマーは、下記式: HO(C3H6O)y(C2H4O)x(C3H6O)yHを有し、上記式中(y)は、疎水性部分(C3H6O)の分子量が約9,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性部分(C2H4O)のパーセンテージが約3%であるような数を表す。
【0047】
本発明のブロック・コポリマーは、水性媒質中で逆溶解性特性を有する両親媒性化合物である。これらのコポリマーはその曇り点(1−20℃)未満では水溶性であり、そして濾過滅菌することができる透明な溶液を形成する。この溶液プロセスは、コポリマー及び水分子中に酸素原子とヒドロキシル基との水素結合を形成することを伴う。コポリマーの溶液が加熱されてその曇り点を通過すると、熱運動が増大して水素結合を破断するのに十分になり、そしてコポリマーは溶液から出るのに伴って、自己集合してミクロ粒子になる(Todd. C. W., Pozzi, L.-A.M., Guarnaccia, J.R., Balusubramanian, M., Henk, W.G., Younger, L.E.,及びNewman, M.J. Vaccine 15,564-570(1997)及びTodd, C.W., Lee, E., Balusubramanian, M., Shah, H., Henk, W.G., Younger, L.E., 及びNewman, M.J. 「Modulation of the immune response to vaccine antigen(ワクチン抗原に対する免疫応答の調節)」(Brown, F.,及びHaaheim, L.R.編)Dev. Biol. Stand. 92, 343-353. Karger, Basel(1997))。このプロセスは可逆的である。
【0048】
CRL-1005粒子へのプラスミドDNAの会合が免疫応答の改善を導くことを示唆する証拠はあるものの、免疫応答を高めるメカニズムは目下のところ不明である。いずれの場合も理論には束縛されないが、CRL-1005粒子へ会合したDNAが、細胞によってより容易に取り込まれ、そして発現されることが可能である。また、CRL-1005/BAK粒子へのプラスミドDNAの会合によって生成された、CRL-1005粒子の負の表面電荷が、CRL-1005粒子のアジュバント特性を増強するのに必要であるとも考えられる。本発明は、免疫応答を高めるこれら2つの考えられ得るメカニズムを区別しない。
【0049】
プラスミドDNA/ブロック・コポリマー(CRL-1005)とカチオン性界面活性剤(例えばBAK)との相互作用に関する1つのモデルは、疎水性相互作用によってCRL-1005粒子にBAKが結合する結果、CRL-1005粒度が減小し、正荷電CRL-1005粒子が形成されることを示唆する。ポリヌクレオチド(プラスミドDNA)の結合は、カチオン性界面活性剤(BAK)の正荷電荷頭基とDNAリン酸基との間の静電相互作用によって発生し、これに対してカチオン性界面活性剤の疎水性尾部は、ブロック・コポリマー(CRL-1005)粒子内部に埋め込まれる。
【0050】
ブロック・コポリマーCRL-1005とカチオン性界面活性剤とDNAとを含む物理的に明確な粒子が発生することにより、ブロック・コポリマー及びDNAが単独である場合と比べて、プラスミドDNAとブロック・コポリマーとの会合がさらに促進される。3種全ての成分を含有する粒子はまた、結果として細胞免疫応答を著しく高める。
【0051】
国際公開第WO02/00844号には、上述の粒子の製造方法が開示されている。しかし、国際公開第WO02/00844号に発表された方法は、粒度200−500nmを達成するために、全ての成分の渦流形成、及び、複数回の冷却・加熱サイクルを必要とする。複数回の冷却・加熱サイクルのプロセスは、商業生産中の大量の配合物の製造時に、極めて高価で時間がかかるものとなるおそれがある。本発明の方法は、カチオン性界面活性剤、ブロック・コポリマー及びDNAを、前記ブロック・コポリマーの曇り点未満の温度のPBSのような緩衝液中で混合することを含む。曇り点を上回る温度まで混合物の温度を上昇させる必要も、複数回の加熱・冷却工程の必要もない。図2A及び2Bが実証するように、この方法は、前述の方法と同様の粒度及び多分散性をもたらす。
【0052】
さらに、本発明の方法は、混合後に低温濾過工程を提供し、その結果、患者のポリヌクレオチド系薬剤に使用することができる無菌配合物を生じさせる。低温濾過工程を加えることにより、無菌成分を使用した無菌状態での大量商業生産を可能にする。このことは製造コストを大幅に低減し、また生産を容易にする。
【0053】
本発明は、商業的な大量生産が簡単な、ポリヌクレオチド薬剤において使用するのに適切な無菌配合物の製造方法に関する。その方法の結果、ブロック・コポリマー、カチオン性界面活性剤及びポリヌクレオチド分子を含むミクロ粒子が(CRL-1005又は別の代表的なブロック・コポリマーの曇り点を上回る温度で)発生する。最終的にミクロ粒子を含むことになる成分を、ブロック・コポリマーの曇り点未満の温度で撹拌することにより、緩衝液、例えばPBS中で混合する。この溶液を次いで低温濾過し、任意には滅菌バイアル中にアリコートし、そして-80℃の温度で貯蔵する。注射又は任意のその他の手段によって患者に投与する前に、バイアルを室温に、又はブロック・コポリマーの曇り点を上回る温度にもたらし、ミクロ粒子がその加熱プロセス中に形成されることになる。国際公開第WO02/00844号に発表されているような、BAKは存在するがしかしポリヌクレオチドは添加されない場合には、わずかに正のゼータ電位測定値を有し(CRL-1005及び0.71mM BAKの場合約2.5mV)、そしてポリヌクレオチド(5mg/mL)が存在する場合には負のゼータ電位(CRL-1005及び0.71mM BAK及び5mg/mLプラスミドDNAの場合約-46.6 mV)を有する直径約200nm−約600nmのミクロ粒子を生成するために、ミクロ粒子形成(又はブロック・コポリマーとカチオン性界面活性剤とポリヌクレオチドを含有する混合物を、ブロック・コポリマーの曇り点を上回る温度まで加熱すること)が滅菌又は-80℃での貯蔵の前に発生する必要はないと意外にも判断されている。さらに、発明者は上述の特徴及び国際公開第WO02/00844号における特徴を有するミクロ粒子を得るために、加熱・冷却サイクルを実施する必要はないことも発見した。
【0054】
当業者であれば、種々のブロック・コポリマー、カチオン性界面活性剤及び賦形剤を混合して適合させ、また、これらの成分の種々の濃度を利用することが可能になる。当業者であれば、本明細書に示された本発明の方法によって生成された任意のポリヌクレオチド系薬剤のin vitro構造特性を測定することが可能になる。
【0055】
本発明の特定の実施態様の場合、ポリヌクレオチドをポロキサマーCRL-1005及びBAK(Ruger Chemical Co. Inc.から利用可能な塩化ベンザルコニウム50%溶液)と混合する。配合物の各成分の特定の最終濃度は詳細な実施例において記載するが、しかし、これらの方法のいずれに関しても、各成分の濃度は、所望の濃度を有する最終溶液を形成するために当業者に知られた基礎化学量論的計算によって変化させることができる。
【0056】
本発明の方法において、ブロック・コポリマーの濃度は、例えばトランスフェクション効率、発現効率又は免疫原性に応じて調節される。有用な1つの実施態様において、ブロック・コポリマーの最終濃度は約1mg/mL−約75mg/mLであり、例えば約3mg/mL−約50mg/mL、約5mg/mL−約40mg/mL、約6mg/mL−約30mg/mL、約6mg/mL、約6.5mg/mL、約7mg/mL、約7.5mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mLのブロック・コポリマーである。
【0057】
本発明の方法において、ポロキサマーの濃度は、例えばトランスフェクション効率、発現効率又は免疫原性に応じて調節される。有用な1つの実施態様において、ポロキサマーCRL-1005の最終濃度は約1mg/mL−約75mg/mLであり、例えば約3mg/mL−約50mg/mL、約5mg/mL−約40mg/mL、約6mg/mL−約30mg/mL、約6mg/mL、約6.5mg/mL、約7mg/mL、約7.5mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約15mg/mL、約20mg/mL、約25mg/mL、約30mg/mLのCRL-1005である。
【0058】
同様に、本発明の方法におけるDNAの濃度も、送達されるべき配合物の量、対象の年齢及び体重、ポリペプチドの送達方法及び送達経路を含む多数のファクターに応じて調節される。適切な実施態様において、DNAの最終濃度は約1ng/mL−約30mg/mLのプラスミド(又はその他のポリヌクレオチド)である。例えば、本発明の配合物は、約0.1mg/mL−約20mg/mL、約1mg/mL−約10mg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約2.5mg/mL、約3mg/mL、約3.5mg/mL、約4mg/mL、約4.5mg/mL、約5mg/mL、約5.5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約20mg/mL、又は約30mg/mLの最終濃度のプラスミド(又はその他のポリヌクレオチド)であってよい。
【0059】
本発明の方法には、任意のタイプのポリヌクレオチド、例えばプラスミドDNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA断片及びRNAを組み入れることができる。本発明の或る特定の配合物は、プラスミドのカクテルを含む。カクテル中に望まれる種々のプラスミドは、他の成分に添加する前に、PBS又はその他の希釈剤中で合体させる。本発明の方法に使用することができる種々異なるタイプの数の上限はない。さらに、プラスミドはカクテル中に等しい比率で存在してよく、或いは、これらの比は、例えば抗原の相対発現レベル、又はコードされた抗原の相対免疫原性に応じて調節することができる。こうして、カクテル中の種々のプラスミドは等しい比率で存在してよく、或いは、カクテル中の他のプラスミドに対して、2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10倍又はそれ以上もの1プラスミドが含まれてよい。
【0060】
本発明の方法によって生成されたポリヌクレオチド配合物はまた、カチオン性界面活性剤を含む。当業者には明らかなように、数多くのカチオン性界面活性剤がこれらの配合物中に使用するための候補となり得る。従って本発明は、ブロック・コポリマー及びポリヌクレオチドとともに本明細書中に記載された粒度及び表面電荷の発生を促進する任意のカチオン性界面活性剤の使用をも考えに入れる。使用することができるカチオン性界面活性剤は制限されずに、塩化ベンザルコニウム(BAK)、塩化ベンゼトニウム、セトラミド(臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、及び場合によっては少量の臭化ドデシルトリメチルアンモニウム及び臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムを含有する)、塩化セチルピリジニウム(CPC)及び塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、1級アミン、2級アミン、3級アミン、例えばN, N', N'-ポリオキシエチレン(10)-N-タロー-1,3-ジアミノプロパン、その他の4級アミン塩、例えば臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチル-アンモニウム、混合型臭化アルキル-トリメチル-アンモニウム、塩化ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムメトキシド、臭化セチルジメチルエチルアンモニウム、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、塩化メチルベンゼトニウム、塩化デカメトニウム、メチル混合型塩化トリアルキルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-[2(2-メチル-4-(1,1,3,3テトラメチルブチル)-フェノキシ]-エトキシ)エチル]-ベンゼンメタナミニウムクロリド(DEBDA)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)-プロピル]-N,N,N,トリメチルアンモニウムクロリド、1,2-ジアシル-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(アシル基=ジミリストイル、ジパルミトイル、ジステアロイル、ジオレオイル)、1,2-ジアシル-3(ジメチルアンモニオ)プロパン(アシル基=ジミリストイル、ジパルミトイル、ジステアロイル、ジオレオイル)、1,2-ジオレオイル-3-(4'-トリメチル-アンモニオ)ブタノイル-sn-グリセロール、1,2-ジオレオイル3-スクシニル-sn-グリセロールコリンエステル、コレステリル(4'-トリメチルアンモニオ)ブタノエート)、N-アルキルピリジニウム塩(例えば臭化セチルピリジニウム及び塩化セチルピリジニウム)、N-アルキルピペリジニウム塩、ジカチオン性ボラフォーム電解質(C12Me6;C12Bu6)、ジアルキルグリセチルホスホリルコリン、リゾレシチン、L-aジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)、コレステロールヘミスクシネート・コリンエステル、リポポリアミン、例えばジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、ジパルミトイルホスファチジルエタノール-アミドスペルミン(DPPES)、リポポリ-L(又はD)-リシン(LPLL, LPDL)、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミンに共役されたポリ(L(又はD)-リシン、ペンダントアミノ基を有するジドデシルグルタメート・エステル(Cl2GluPhCnN+)、ペンダントアミノ基を有するジテトラデシルグルタメート・エステル(Cl4GluCnN+)、コレステロールのカチオン性誘導体、例えばコレステリル-3β-オキシスクシンアミドエチレントリメチルアンモニウム塩、コレステリル-3β-オキシスクシンアミドエチレンジメチルアミン、コレステリル-3β-カルボキシアミドエチレントリメチルアンモニウム塩、コレステリル-3β-カルボキシアミドエチレンジメチルアミン、及び3β-[N-(N',N'-ジメチルアミノエタンカルボモイル]コレステロール)(DC-Chol)を含む。
【0061】
本発明において使用するためのカチオン性界面活性剤の他の例は、N-(3-アミノプロピル)-N,N-(ビス-(2-テトラデシルオキシエチル))-N-メチル-アンモニウムブロミド(PA-DEMO)、N-(3-アミノプロピル)-N,N-(ビス-(2-ドデシルオキシエチル))-N-メチル-アンモニウムブロミド(PA-DELO)、N,N,N-トリス-(2-ドデシルオキシ)エチル-N-(3-アミノ)プロピル-アンモニウムブロミド(PA-TELO)、及びN1-(3-アミノプロピル)((2-ドデシルオキシ)エチル)-N2-(2-ドデシルオキシ)エチル-1-ピペラジンアミニウムブロミド(GA-LOE-BP)、DL-1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアミノプロピル-β-ヒドロキシエチルアンモニウム(DORIジエステル)、1-O-オレイル-2-オレオイル-3-ジメチルアミノプロピル-β-ヒドロキシエチルアンモニウム(DORIエステル/エーテル)を含むカチオン性脂質の群から選択される。
【0062】
本発明の或る特定の実施態様において使用するための付加的な特定の制限されないカチオン性脂質は、DMRIE((±)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド)、GAP-DMORIE((±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(syn-9-テトラデセンイルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド、及びGAP-DLRIE((±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ビス-ドデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミドを含む。
【0063】
本発明において使用するためのその他のカチオン性脂質は、米国特許第5,264,618号、同第5,459,127号及び同第5,994,317号に発表された化合物を含む。これらのカチオン性脂質の制限されない例としては、(±)-N,N-ジメチル-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-2,3-ビス(ジオレイルオキシ)-1-プロパンイミニウムペンタヒドロクロリド(DOSPA)、(±)-N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンイミニウムブロミド(β-アミノエチル-DMRIE又はβAE-DMRIE)、及び(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパンイミニウムブロミド(GAP-DLRIE)を含む。
【0064】
本発明にとって有用なDMRIE誘導型カチオン性脂質の他の例は、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-(ビス-デシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(GAP-DDRIE)、(±)-N-(4-アミノブチル)-N,N-ジメチル-2,3-(ビス-デシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(DAB-DDRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-(ビス-テトラデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(GAP-DMRIE)、(±)-N-((N''-メチル)-N'-ウレイル)プロピル-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(GMU-DMRIE)、(±)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(DLRIE)、及び(±)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス-([Z]-9-オクタデセニルオキシ)プロピル-1-プロパンイミニウムブロミド(HP-DORIE)である。
【0065】
本発明の適切な観点において、カチオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトラミド、塩化セチルピリジニウム、及び塩化セチルトリメチルアンモニウムから成る群から選択される。塩化ベンザルコニウムは商業的に入手可能であり、一般式[C6H5CH2N(CH3)2R]Cl(この式中、Rはn-C8H17−n-C16H33で始まる基の全て又はいくらかを含むアルキルの混合物を表す)の塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物として存在することが知られている。BAKの平均MWは360である(Handbook of Pharmaceutical Excipients, Wade及びWeller編、1994年、第2版、第27−29頁)。塩化ベンゼトニウムは、N,N-ジメチル-N-[2-[2-[4-(1,1,3,3テトラメチルブチル)フェノキシ]エトキシ]エチル]ベンゼン-メタンアミニウムクロリド(C27H42ClNO2)であり、この分子量は448.10である(Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第30−31頁)。セトラミドは、主に臭化トリメチルテトラデシルアンモニウム(C17H38BrN)から成り、臭化トリメチルテトラデシルアンモニウムは少量の臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(C15H34BrN)及び臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(C19H42BrN)を含有してよく、その分子量は336.40である(Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第96−98頁)。
【0066】
本発明の有用なカチオン性脂質の例は、(±)-N-(ベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ヘキシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(Bn-DHxRIE)、(±)-N-(2-アセトキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ヘキシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(DHxRIE-OAc)、(±)-N-(2-ベンゾイルオキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ヘキシルオキシ)-1-プロパンアミニウムブロミド(DHxRIE-OBz)、(±)-N-(3-アセトキシプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オクチルオキシ)-1-プロパンアミニウムクロリド(Pr-DOctRIE-OAc)を含む。これらの化合物の構造を図7に示す。これらの脂質は、米国特許第5,264,618号及び同第5,459,127号に発表された一般構造を有する。
【0067】
本発明の脂質、及び本発明において有用な脂質は、米国特許第5,264,618号及び同第5,459,127号明細書において概略が示された方法及び調製プロトコルを使用して開発された(これらの調製方法を参考のため本明細書中に引用する)。次いで、分子の親水性部分に改変を加えることにより、トランスフェクション配合物中に、また本発明のポリヌクレオチド/ブロック・コポリマー/カチオン性界面活性剤配合物中に使用するのにこれらの脂質を特に適切なものにする。次いで本発明の別の観点において、本発明の方法に使用するためのカチオン性界面活性剤は、Bn-DHxRIE、DHxRIE-OAc、DHxRIE-OBz及びPr-DOctRIE-OAcから成る群から選択される。本発明のさらに別の観点において、カチオン性界面活性剤は、Pr-DOctRIE-OAcである。
【0068】
カチオン性脂質の濃度は、例えば所望の粒度及び改善された安定性に応じて調節することができる。実際に、或る特定の実施態様の場合、本発明の方法は、ブロック・コポリマー及びDNAを含むが、しかしいかなるカチオン性脂質をも含有しない。一般に、本発明のカチオン性脂質含有配合物は、カチオン性脂質の最終濃度約0.01mM−約5mMを有するように調節される。本発明の好適な配合物のカチオン性脂質最終濃度は、約0.06mM−約1.2mM、又は約0.1mM−約1mM、又は約0.2mM−約0.7mMを有してよい。例えば、本発明の配合物のカチオン性脂質最終濃度は、約0.05mM、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM又は0.5mM又は約0.6mM、又は0.7mMを有してよい。
【0069】
加えて、特定のカチオン性脂質、BAKの濃度は、例えば所望の粒度及び改善された安定性に応じて調節することができる。実際に、或る特定の実施態様の場合、本発明の方法は、CRL-1005及びDNAを含むが、しかしBAKは含有しない。一般に、本発明のBAK含有配合物は、BAKの最終濃度約0.01mM−約5mMを有するように調節される。本発明の適切な配合物のBAK最終濃度は、約0.06mM−約1.2mM、又は約0.1mM−約1mM、又は約0.2mM−約0.7mMを有してよい。例えば、本発明の配合物のBAK最終濃度は、約0.05mM、0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM又は0.5mM又は約0.6mM、又は0.7mMを有してよい。
【0070】
本発明の方法によって製造される配合物の総容積は、比例的なサイズの装置を選ぶことにより、拡大・縮小することができる。最後に、下記方法のいずれかを実施する際に、配合物の3種の成分であるカチオン性界面活性剤、ブロック・コポリマー及びプラスミドDNAは任意の順序で添加することができる。下記のこれらの方法のそれぞれにおいて、「曇り点」という用語は、透明な溶液が曇ってきたときの、すなわち、溶液中に溶解された成分が溶液から析出し始めるときの、温度シフト又は他の滴定における点を意味する。
【0071】
本発明の方法によって製造されるポリヌクレオチド系薬剤は、宿主への投与にとって製薬上効果的な任意の配合物中で調製することができる。任意のこのような配合物は例えば、生理食塩水、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)であってよい。本発明のDNA系薬剤の長期安定性をも可能にする製薬上許容可能な配合物を利用することが有用となる。製薬存在物としての貯蔵中に、DNAプラスミドは生化学的変化を被ることがある。この変化において、スーパーコイル状プラスミドは開環形及び線状形に変換する。種々の貯蔵条件(低pH、高温、低イオン強度)がこのプロセスを促進することができる。従って、DNAプラスミド溶液から、又は配合緩衝液から、又はバイアル及びクロージャから、(琥珀酸又はリンゴ酸を用いて、又は複数のホスフェート・リガンドを含有するキレート剤を用いて、又はEDTAのようなキレート剤を用いて)微量金属イオンを除去及び/又はキレート化することにより、貯蔵中のこの分解経路からDNAプラスミドを安定化する。
【0072】
加えて、非還元性フリーラジカル・スカベンジャー、例えばエタノール又はグリセロールを含むことは、一見したところでは脱金属済の溶液中にさえ依然として生じるおそれのあるフリーラジカル生成から、DNAプラスミドの損傷を防止するのに有用である。さらに、緩衝液のタイプ、pH、塩濃度、露光、並びにバイアルを調製するのに使用される滅菌プロセスのタイプを配合物中で制御することにより、ポリヌクレオチド系薬剤の安定性を最適化することができる。従って、ポリヌクレオチド系薬剤の最大の安定性をもたらすことになる配合物は、pH7−8の緩衝液(重炭酸塩)を含有する脱金属溶液、100−200mMの塩(NaCl, KCl又はLiCl)、金属イオン・キレート剤(例えばEDTA、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、リンゴ酸塩、非還元性フリーラジカル・スカベンジャー(例えばエタノール、グリセロール、メチオニン又はジメチルスルホキシド)、及びヌクレアーゼなしの高純度ポリヌクレオチドを光から保護するようにパッケージングされた、滅菌グラス・バイアル内の最適なポリヌクレオチド濃縮物、を含む配合物である。ポリヌクレオチド系薬剤の長期安定性を高めることになる配合物は、pH約8.0−約9.0のTris-HCl緩衝液;約0.5−3%w/vのエタノール又はグリセロール;約5mMまでの濃度のEDTA又はDTPA;及び50mM−約500mMの濃度のNaClを含む。このような安定化されたDNAベクター系薬剤及び、この適切な配合範囲に対する種々の代替物の使用が、PCT国際出願PCT/US97/06655号、国際公開第WO97/40839号に詳しく記載されている。これらの内容を参考のため本明細書中に引用する。
【0073】
本発明の1つの実施態様の場合、本方法によって形成される粒子の直径は約100nm−約2000nmである。カチオン性界面活性剤の存在における非イオン性ブロック・コポリマー粒子は、正表面電荷を有するのに対し、カチオン性界面活性剤及びDNAの存在におけるポリマー粒子は、ポリマー粒子単独よりも著しく負の表面電荷を有することになっている。実施例に記載されたミクロ粒子例は、直径約200−600nmであり、BAKが存在してはいるがしかしポリヌクレオチドは添加されていない状態では、わずかに正のゼータ電位測定値(CRL-1005及び0.71mM BAKの場合約2.5mV)を有し、そしてポリヌクレオチド(5mg/mL)が存在する場合には負のゼータ電位(CRL-1005及び0.71mM BAK及び5mg/mLプラスミドDNAの場合約-46.6 mV)を有する。これらの値は有益ではあるが、決して限定的なものではない。
【0074】
カチオン性界面活性剤を添加することにより、粒子の構成又は構造完全性を変化させることができ、粒子は、変化した構造がポリヌクレオチド分子とより良好に相互作用する能力を増大させることができる。従って、種々の粒子の表面電荷及びサイズの測定値範囲は有益ではあるものの、必ずしも限定的ではない。当業者であれば、1タイプのブロック・コポリマー及び1タイプのカチオン性界面活性剤の濃度を調節することにより、明確なミクロ粒子を形成することができる。ミクロ粒子は詰まるところ、特定のポリヌクレオチド分子個体群と会合する能力の増大によって特徴付けられる。
【0075】
本発明の方法によって製造された配合物は、貯蔵のための適切な容器内にアリコートすることができる。適切な容器は、制限されず、ガラス・バイアル、ガラス瓶、滅菌可能なプラスチック・バッグ、ポリエチレン/ポリプロピレン管、ポリエチレン/ポリプロピレン・バイアル、ポリエチレン/ポリプロピレン瓶、シリンジ、又は薬剤を含むキットの調製の際に用いられる容器を含む。
【0076】
本発明の方法はまた、カチオン性界面活性剤と、ブロック・コポリマーと、ポリヌクレオチドと、これらの任意の組み合わせとを、前記ブロック・コポリマーの曇り点を上回る温度で混合することに関する。曇り点は、本発明の混合物中に使用されるブロック・コポリマーに依存する。しかし、曇り点は約1℃−約20℃であってよい。CRL-1005がブロック・コポリマーである場合、本発明の混合物を混合するときの温度は、約8℃−約35℃であってよい。
【0077】
本発明の組成物中に使用するための助剤は制限されず、非イオン性洗剤及び界面活性剤IGEPAL CA 630(登録商標)CA630、NONIDET NP-40、Nonidet(登録商標)P40、Tween-20(登録商標)、Tween-80(登録商標)、Triton X-100(商標)、及びTriton X-114(商標);アニオン性洗剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);糖スタキオース;縮合剤DMSO;及びキレート剤/DNAse阻害剤EDTAを含む。或る特定の実施態様の場合、助剤は、DMSO、Nonidet P40(登録商標)である。例えば2002年2月14日付けで発行された米国特許出願公開第20020019358号を参照されたい。この内容全体を参考のため本明細書中に引用する。
【0078】
本発明の方法によって生成されたポリヌクレオチド配合物は任意には、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート-80を含むこともできる。ポリソルベート-80は、ポリヌクレオチドの存在において粒子凝集を制御するのに有用な賦形剤である場合がある。付加的な非イオン性界面活性剤が当業者に知られており、本発明のこの部分を実施するのに使用することができる。これらの付加的な非イオン性界面活性剤は制限されずに、他のポリソルベート、-アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル、n-アルキルポリオキシエチレンエーテル(例えばTritons(商標))、ソルビタンエステル(例えばSpans(商標))、ポリグリコールエーテル界面活性剤(Tergitol(商標))、ポリオキシエチレンソルビタン(例えばTweens(商標))、ポリ-オキシエチル化グリコールモノエーテル(例えばBrij(商標)、ポリオキシルエチレン9ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン10エーテル、ポリオキシエチレン10トリデシルエーテル)、ルブロール、ペルフルオロアルキルポリオキシル化アミド、N,N-ビス[3D-グルコンアミドプロピル]コールアミド、デカノイル-N-メチルグルカミド、-デシルβ-D-グルコピラノジド、n-デシルβ-D-グルコピラノジド、n-デシルβ-D-マルトピアノジド、n-ドデシルβ-D-グルコピラノジド、n-ウンデシルβ-D-グルコピラノジド、n-ヘプチルβ-D-グルコピラノジド、n-ヘプチルβ-D-チオグルコピラノジド、n-ヘキシルβ-D-グルコピラノジド、n-ノナノイルβ-グルコピラノジド1-モノオレイル-ラク-グリセロール、ノナノイル-N-メチルグルカミド、-ドデシルβ-D-マルトシド、N,Nビス[3-グルコンアミドプロピル]デオキシコールアミド、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジギトニン、ヘパノイル-N-メチルグルカミド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、n-オクチルβD-グルコピラノジド、n-オクチルβ-D-グルコピラノジド、n-オクチルβ-D-チオガラクトピラノジド、n-オクチルβ-D-チオグルコピラノジドを含む。
【0079】
このために、本発明はまた、第1に本明細書中に記載されたようなポリヌクレオチドとブロック・コポリマーとカチオン性界面活性剤とを含み、そして第2に非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80又はその他の賦形剤を含むポリヌクレオチド系薬剤に関し、これらの賦形剤は、制限されずに当業者に知られた賦形剤、例えばグリセロール又はプロピレングリコール、又は粒子凝集を制御するのに有用な賦形剤であり得る本明細書中に挙げた非イオン性界面活性剤を含む。
【0080】
本発明の中核を成すのは、ポリヌクレオチドとブロック・コポリマーとカチオン性界面活性剤との溶液を低温濾過することである。この濾過は、配合物中に含まれるブロック・コポリマーの曇り点未満の温度で行わなければならない。曇り点は、その温度を上回ると、ブロック・コポリマー分子が溶液から分離してミクロ粒子を形成する温度である。低温濾過工程は或いは、約-2℃−約8℃の温度で実施される。例えば低温濾過工程は、約-2℃、約-1℃、約0℃、約1℃、約2℃、約3℃、約4℃、約5℃、約6℃、約7℃、及び約8℃で行うことができる。
【0081】
ポリヌクレオチドとブロック・コポリマーとカチオン性界面活性剤の低温溶液(約-2℃−約8℃)の濾過は、コスト効率及び時間効率が良い溶液滅菌法を提供する。この濾過工程は、ポリヌクレオチド、ブロック・コポリマー及びカチオン性界面活性剤を混合前に前滅菌する必要性を排除する。細菌性病原菌よりも小さな定義済の孔サイズを有する滅菌フィルターに混合物を通すことにより、溶液を滅菌する。滅菌濾過装置に使用するのに許容可能な多種多様のフィルター材料が当業者に知られており、採用することができる。このような材料は、制限されずにポリエーテルスルホン、ナイロン、酢酸セルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート及びポリビニリデンを含む。このような材料を加工することにより、定義された孔サイズを有するフィルターを提供することができる。
【0082】
本発明における低温濾過工程において利用されるフィルターの孔サイズは、約0.01マイクロ約2マイクロ、或いは約0.05マイクロ約0.25マイクロである。例えば、低温濾過工程のためのフィルターの孔サイズは約0.01マイクロ、約0.02マイクロ、約0.03マイクロ、約0.04マイクロ、約0.05マイクロ、約0.06マイクロ、約0.07マイクロ、約0.08マイクロ、約0.09マイクロ、約0.1マイクロ、約0.15マイクロ、約0.16マイクロ、約0.17マイクロ、約0.18マイクロ、約0.19マイクロ、約0.2マイクロ、約0.21マイクロ、約0.22マイクロ、約0.23マイクロ、約0.24マイクロ、約0.25マイクロ、約0.3マイクロ、約0.4マイクロ、約0.5マイクロである。
【0083】
これらの実施例及び実施例の等価物は、本開示内容及び添付の特許請求の範囲に照らして、当業者にとってより明らかになる。しかしいうまでもなく、実施例は例示のために構成されたものであり、本発明の範囲を決して限定するものではない。本明細書中に引用した全ての特許及び刊行物全体を参考のため本明細書中に引用する。
【実施例1】
【0084】
BAK(塩化ベンザルコニウム50%溶液、Ruger Chemical Co. Inc.)とCRL-1005との撹拌溶液にDNA溶液を曇り点未満で添加し、そしてこの溶液を数回熱サイクル処理した後で、結果として生じる粒度に対する効果を調査した。
【0085】
装置:15mL丸底フラスコ、3/8" x 3/16"卵形磁気撹拌棒(Bel-art製品)、コーニング撹拌器/熱板及び氷浴。
【0086】
方法:配合物を下記のように形成した。最終濃度0.3mM(PBS中1.28mM溶液を846μL)を提供するために必要な容積のBAKを、15mL丸底フラスコ内に入れ、そしてCorning 撹拌器/熱板(速度4、熱板オフ)の頂部の氷浴内で溶液を磁気撹拌棒で10分間撹拌した。次いで、100μLの容積式ピペットを使用して、ポロキサマー(27μL)を添加し、そして溶液を氷上でさらに60分間にわたって撹拌した。次いで所要容積のDNA溶液(PBS中6.4mg/mLで2.73mL)を、5mLピペットを使用して1分間にわたって液滴状にゆっくりと撹拌溶液に添加した。この時点での溶液は、これがポロキサマーの曇り点未満にあるため透明であり、この溶液を氷上で15分間にわたって撹拌した。次いで氷浴を除去し、溶液を15分間にわたって周囲温度で撹拌することにより、ポロキサマーが曇り点を通過するのに伴って、曇った溶液を生成した。次いで、溶液の10mLアリコートを取り出し(分析点1、図1A)、2mLの濾過済(0.2μm)PBS中で希釈し、そしてMalvern 3000HS Zetasizerを使用して粒度を測定した。500μLアリコートをさらに取り出し、そして1mLガラス・バイアル内に入れ、曇り点未満に冷却し、次いで-80℃で凍結した。
【0087】
次いでフラスコを氷浴内に戻し、さらに15分間にわたって撹拌することにより、混合物がポロキサマーの曇り点未満で冷却されるのに伴って、透明な溶液を生成した。氷浴を再び除去し、溶液をさらに15分間にわたって撹拌した。曇り点を上回る温度で15分間、そして曇り点を下回る温度で15分間撹拌すること(合計30分間)を、1熱サイクルとして定義した。混合物をさらに6回、サイクル処理した。それぞれの分析点(2−7、図1A)で溶液の10μLアリコートを取り出し、濾過済(0.2μm)PBS 2mL中に希釈し、そして、Malvern 3000HS Zetasizerを使用して粒度を測定した。それぞれの時点(2−7、図1A)で500mLアリコートをさらに取り出し、そして1mLガラス・バイアル内に入れ、曇り点未満に冷却し、次いで-80℃で凍結した。24時間後に、バイアルをポリスチレン・ブロック内で1時間にわたって解凍し、そして粒度を測定した。
【0088】
結果:熱サイクル処理プロセス中、粒度を各分析点(1−7)で測定し、そして各溶液のZ平均及び多分散性を見極め、そしてデータを図1A及び1Bでプロットする。凍結バイアルに関して分析を繰り返し、そのデータも図1A及び1Bでプロットする。
【実施例2】
【0089】
曇り点未満で全ての成分を混合し、次いで充填・貯蔵前に生成物を濾過滅菌する単純化プロセスによって、ポリヌクレオチド配合物を形成した。
【0090】
装置:15mL丸底フラスコ、3/8" x 3/16"卵形磁気撹拌棒(Bel-art製品)、コーニング撹拌器/熱板及び氷浴。0.22μm ミリポア・エクスプレス膜を備えたステリフリップ50mL使い捨て真空濾過装置(cat# SCGP00525)。
【0091】
方法:最終濃度0.3mM(PBS中0.77mM溶液を780μL)を提供するために必要な容積のBAKを、15mL丸底フラスコ内に入れ、そしてCorning 撹拌器/熱板(速度4、熱板オフ)の頂部の氷浴内で溶液を磁気撹拌棒で15分間撹拌した。次いで、25μLの容積式ピペットを使用して、ポロキサマー(15μL)を添加し、そして溶液を氷上でさらに60分間にわたって撹拌した。次いで所要容積のDNA溶液(PBS中8.3mg/mLで1.2mL)を、5mLピペットを使用して1分間にわたって液滴状にゆっくりと撹拌溶液に添加した。この時点での溶液は、これがポロキサマーの曇り点未満にあるため透明であり、この溶液を氷上で15分間にわたって撹拌した。50mL Steriflip濾過システムを、真空ラインを取り付けた氷バケット内に入れ、そして1時間にわたって放置することにより、装置を氷の温度に平衡させておいた。次いで配合物を、曇り点未満で真空下で濾過し、次いで、曇り点を上回る温度に加熱しておいた。溶液の10μLアリコートを取り出し、2mLの濾過済(0.2μm)PBS中で希釈し、そしてMalvern 3000HS Zetasizerを使用して粒度を測定した。次いで2つの900μLアリコートを取り出し、そして2mLガラス・バイアル内に入れ、曇り点未満に冷却し、次いで-80℃で凍結した。24時間後に、バイアルをポリスチレン・ブロック内で1時間にわたって解凍し、そして粒度を測定した。
【0092】
結果:解凍後の溶液のZ平均及び多分散性を図2A及び2Bに示す。
【実施例3】
【0093】
BAK溶液を丸底フラスコ内に入れ、そして溶液を磁気撹拌棒を用いて氷上で15分間にわたって撹拌した。次いで、容積式ピペットを使用して、ポロキサマーCRL-1005を添加し、そして溶液を氷上でさらに60分間にわたって撹拌した。次いで所要量のDNAをフラスコ内に入れ、そしてその溶液をさらに15分間にわたって氷上で撹拌した。実施例1及び2に記載した量で、全ての成分を添加した。この時点での溶液は、これがポロキサマーの曇り点未満にあるため透明であった。次いで溶液を曇り点を通して4回にわたってサイクル処理した。曇り点を上回る温度で15分間、そして曇り点を下回る温度で15分間撹拌することを、1熱サイクルとして定義した。次いで溶液をガラス・バイアル内にアリコートし、溶液の曇り点未満の温度で氷浴内で冷却し、そして-80℃で凍結した。24時間後に、バイアルをポリスチレン・ブロック内で1時間にわたって解凍し、そして粒度を測定した(図2A)。
【実施例4】
【0094】
BAKの所要容積を丸底フラスコ内に入れ、そして溶液を磁気撹拌棒を用いて氷上で15分間にわたって撹拌した。次いで、容積式ピペットを使用してポロキサマーを添加し、そして溶液を氷上でさらに60分間にわたって撹拌した。この時点での溶液は、これがポロキサマーの曇り点未満にあるため透明であった。次いで溶液を曇り点を通してサイクル処理した。次いで、7.5mg/mL CRL-1005及び0.3mM BAKを提供するために必要な容積の低温溶液(4℃未満)を、氷上の丸底フラスコ内のDNA撹拌溶液(最終濃度5mg/mLを提供するのに必要な濃度)に添加した。次いで、この溶液を15分間にわたって氷上で撹拌し、次いで曇り点を通して4回サイクル処理した。次いで溶液をガラス・バイアル内にアリコートし、溶液の曇り点未満の温度で氷上で冷却し、そして-80℃で凍結した。曇り点未満で冷却され、そして-80℃で凍結された、このプロセスを用いて製造された配合物は、ポリスチレン・ブロック内で1時間にわたって解凍することができ、そして最終製造工程中に製造されたものと同様のサイズの粒子を得ることができる(図2A)。これらの粒子は、少なくとも4時間以上にわたって安定的である。
【実施例5】
【0095】
ポリヌクレオチド系薬剤として使用される場合の配合物の重要な観点は、無菌であることである。生成物充填前の最終配合工程として、ポロキサマー/DNA/BAK配合物が真空濾過装置、例えば0.22μm ミリポア・エクスプレス膜を備えたステリフリップ50mL使い捨て真空濾過装置(cat# SCGP00525)を通るようにしておく低温濾過工程が行われた。濾過の前及び後で配合物のDNA濃度を測定し、検出可能なDNA損失はなかった。濾過の前及び後で、曇り点を上回る温度で測定された配合物の粒度及び表面電荷測定値は、膜上に材料の損失がないことと呼応した(表1)。
【表1】

【実施例6】
【0096】
溶液中にDNAが存在しない状態で、PBS中のCRL 1005の7.5mg/mL溶液にBAKを、その濃度を増大させつつ(PBS中0.3から0.9mM)添加したあとで、その結果生じた粒度に対する効果を測定した(図3A)。7.5mg/mLの単独のポロキサマーは、流体力学的な直径1500nmを有する粒子を形成する。BAK(0.3mM)の存在において、この直径は186nmまで減小し、より高い濃度のBAK(0.9mM)では122nmになる。図3Bは、添加されるBAKの濃度が高くなるにつれて、表面電荷がどのようにしてより正になるかを示している。BAK(n-アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド)は、4種の同種化合物の複合混合物を含み、アルキル鎖長はC12、C14、C16又はC18である。我々のモデルシステムとしてこのBAKを使用して、いくつかの新規の水溶性カチオン性脂質を設計し、合成し、そしてスクリーニングすることにより、ポロキサマーと相互作用して小型(200−500nm)粒子を形成することになる脂質化合物を同定した。最初に、Bn-DHxRIE、DHxRIE-OAc及びDHxRIE-OBzを試験した。脂質をポロキサマー(CRL-1005)濃度7.5mg/mLで、4つの異なる濃度(0.1, 0.5, 1.0及び2.0 mM)で試験した。溶液を曇り点を通して2回サイクル処理し、そして、光子相関分光法を使用して、第2のサイクルの終了時に溶液の粒度を測定した。データを図4Aに示す。DHxRIE-OBzは600−400nmの粒子を形成した。アルキル鎖長が増大すると、カチオン性脂質とポロキサマーとの疎水性相互作用が高められ、こうしてPr-DOctRIE-OAcが合成されると仮定された。この化合物はポロキサマーと相互作用することにより、BAKと同じサイズ範囲及び同様の濃度の粒子を形成する(図4B参照)。
【実施例7】
【0097】
Pr-DOctRIE-OAc(0.3mM)を、ポロキサマー(CRL-1005、7.5mg/mL)及びDNA(5mg/mL)と一緒に、前述のように配合した。手短かに言えば、DNA(PBS中−6.2mg/mL)を丸底フラスコ内に入れ、そして溶液を磁気撹拌棒で、氷上で10分間にわたって撹拌した。容積式ピペットを使用して、ポロキサマー(27μL)を添加し、そして溶液を氷上でさらに30分間にわたって撹拌した。次いで最終濃度0.3mMを提供するために必要な容積のPr-DOctRIE-OAc溶液を、1mLピペットを使用して1分間にわたって液滴状にゆっくりと撹拌溶液に添加した。この時点での溶液は、これがポロキサマーの曇り点未満にあるため透明であり、この溶液を氷上でさらに30分間にわたって撹拌した。次いで氷浴を除去し、溶液を15分間にわたって周囲温度で撹拌することにより、ポロキサマーが曇り点を通過するのに伴って、曇った溶液を生成した。
【0098】
次いでフラスコを氷浴内に戻し、さらに15分間にわたって撹拌することにより、混合物がポロキサマーの曇り点未満で冷却されるのに伴って、透明な溶液を生成した。氷浴を再び除去し、溶液をさらに15分間にわたって撹拌した。曇り点を上回る温度で15分間、そして曇り点を下回る温度で15分間撹拌すること(合計30分間)を、1熱サイクルとして定義した。混合物をさらに3回サイクル処理し、そしてPBSで1:2に希釈した。曇り点(分析点1−5)を通過するたびに、光子相関分光法を使用して行う溶液の粒度分析を図5A及び5Bに示し、そしてBAKを含有する溶液と比較する。曇り点未満で冷却され、そして-80℃で凍結された、このプロセスを用いて製造された配合物は、ポリスチレン・ブロック内で(1時間にわたって)解凍することができ、そして最終製造工程中に製造されたものと同様のサイズの粒子を得ることができる(図6A及び6B)。
【実施例8】
【0099】
2−20mLの小規模調製を、ガラス丸底フラスコ(15−25mL)内で磁気撹拌棒を用いて実施した。容積式ピペットを使用して、ポロキサマーを容器内の適量の水性溶液に添加した。ピペットを使用して、BAK溶液を液滴状に添加した。バイアル内へのアリコート前の、製造プロセスにおける最終工程は、0.22μmミリポア・エクスプレス膜(ポリエーテルスルホン)を備えた、ミリポア・ステリフリップで前滅菌された使い捨て真空濾過システムを通して行われる低温濾過であった。ポロキサマーの曇り点未満の温度で混合を行った。
【0100】
大規模調製の場合、バルクでの商業的な製薬のために使用される混合用容器を採用した。使用される混合用容器は、化学工学分野の当業者によって、実質的により大きなサイズの容器に当てはめるためのパラダイムとして使用することができる。装置は、直径8.5cmの円筒体、平らなブレード付き羽根車、及び羽根車を回転させるための手段とを備えた。
【0101】
容器内の適量の水性ビヒクルに、3mLシリンジ及び16ゲージ・ニードルを使用して、ポロキサマーを添加した。添加速度を制御するためにシリンジ・ドライバーを使用して、22ゲージ生検針を介してBAK溶液を添加した。添加及び溶解が完了すると、配合物を濾過した。ポロキサマーの曇り点未満の温度で混合を行った。化学プロセスの規模を変更するときに共通して直面する実践上の種々の理由から、ミリポア・ステリフリップで前滅菌された使い捨て真空濾過システムを用いることによっては、大規模調製物の濾過は実現可能ではなかった。前記システムではなく、Sartopore 2 150滅菌カートリッジ内のSartorius Sartopore 2膜を使用した。両濾過システムは、比較可能な孔サイズのポリエーテルスルホン膜を採用する。蠕動ポンプを使用して、配合物を容器から管を通して汲み上げ、フィルターを通して滅菌バッグ内に汲み上げた。濾過プロセスを2℃で行うことにより、溶液中のポロキサマーを維持した。
【0102】
上述の装置を使用して、ポロキサマー配合物製造プロセスの規模拡大に成功した。1.7gのDNAを調製し、そしてこの配合物の物理的パラメーター(粒度、粒度分布の多分散性、及び表面電荷)は、小規模製造法のものと匹敵した。これを下記表2に示す。調製済DNAのアガロース・ゲル電気泳動は、未調製ネイクドDNAと比較して、明らかな構造変化を示さなかった。
【表2】

【実施例9】
【0103】
-30℃で貯蔵されたポロキサマー配合物(5mg/ml, 7.5mg/ml CRL 1005, 0.3mM BAK)の安定性試験を、6ヶ月間にわたって実施した。Taqman RT-PCRを使用して、遺伝子発現の印としてmRNAを測定した。TaqMan化学反応を用いたリアルタイムPCRは十分に確立された高感度で再現可能な核酸測定アッセイである。Tse C, Capeau J.「Real time PCR methodology for quantification of nucleic acids」Ann Biol Clin (Paris), 61(3):279-93(2003)を参照されたい。この内容を参考のため本明細書中に引用する。アッセイは、調製済プラスミドをトランスフェクトされた細胞中のmRNA発現を測定する。対照発現プラスミドと比較した、調製済プラスミドの発現相対レベルを測定する。24ウェル・フォーマットにおけるVM92細胞に、脂質:DNA質量比2:1のDMRIE/DOPEと複合されたDNA(調製済又は対照標準) 1.0μgをトランスフェクトした。48時間のトランスフェクション後、QIAGEN(Germantown, MD)RNeasyミニキットを使用して、細胞を総RNAに関して捕集し、そして発現したプラスミド系遺伝子のmRNAレベルをRT-PCRを用いて測定した。
【0104】
結果が示すところによれば、試験されたトランスフェクション用量では、貯蔵期間にわたって、遺伝子発現レベルの検出可能な損失はなかった。このことは、アガロース・ゲル電気泳動法を用いて得られた構造データと合致する。このデータは、所定の時間経過後にDNA構造の検出可能な変化を示さなかった。CRL-1005のゲル透過クロマトグラフィ及びBAKの逆相HPLCは、検出可能な分解を示さなかった。配合物の肉眼による検査は、その外観の変化を示さなかった。解凍後、曇り点を通過すると、配合物は曇った白色の混濁懸濁液のように見えた。バイアルの底部には、眼に見える凝集体はなかった。pH及び粒度の検出可能な変化はなく、粒度分布の多分散性は一定のままである。
【実施例10】
【0105】
下記の同じ一般的な試験プロトコルを使用して、以下のマウス免疫原性研究を行った。6−8週齢の9匹のBALB/cマウス(Harlan-Sprague-Dawley)群に、ネイクド・プラスミドDNA又は調製済プラスミドDNAを両側(50μL/脚)筋内(大腿直筋)に注射した。全ての注射において使用されたプラスミドDNA(VR4700)は、インフルエンザ核タンパク質(NP)をコードする発現ベクターであった。全てのマウスを、(ほぼ)21日−49日目にブーストした。第3回ワクチン接種後(−60日目)に、NPワクチン接種済マウスから血清を捕集した。NP特異的抗体応答をELISAによって測定した。ELISAアッセイは、Ausubel他、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland(1989)(この内容全体を参考のため本明細書中に引用する)によって記載されているように実施する。最後の免疫化から2週間後に3日間連続して、1日当たり1つの群につき3匹のマウスから脾細胞を捕集した。抗原特異的T細胞応答を、下記のようなIFN-γ ELISpotアッセイによって測定した。
【0106】
DNAワクチン接種に応答して生成されたNP特異的抗体を、ELISAによって評価した。簡潔には、96ウェルCostar-hi結合1/2ウェルELISAプレートを、2μg/mLの組換えNPタンパク質(Imgenex, San Diego, CA)でコーティングし、そしてPBS中の10%ウシ胎仔血清(FBS)でブロックした。それぞれの免疫血清の連続希釈物と一緒にウェルをインキュベートし、そしてアルカリ・ホスファターゼ標識付きヤギ抗マウスIgG-Fcγ及び比色分析基質ρ-ニトロフェニルホスフェートを逐次添加することにより、結合した抗NP抗体を検出した。基質の変換を405nmで定量化した。
【0107】
終点希釈力価は、405nmの光学密度が、アッセイ緩衝液を単独で含有するウェル内で測定されたもの(すなわちバックグラウンド値)の2倍を上回る際の逆希釈度として定義する。アッセイ緩衝液を含有する8つのウェルの平均吸収度を用いて、バックグラウンド値を確立した。NP DNAワクチン接種済マウスに由来する血清プールとともにインキュベートされたウェルを、陽性対照として使用した。
【0108】
IFN-γ ELISpotアッセイによって測定して、抗原特異的刺激に応答してIFN-γを分泌する脾細胞の数を定量化することにより、DNAワクチンに対するT細胞応答を測定した。RPMI-1640培地中で脾細胞培養を成長させた。RPMI-1640培地は25mM HEPES緩衝液及びL-グルタミンを含有し、そして10%(v/v)FBS、55μM β-メルカプトエタノール、100U/mLのペニシリンGナトリウム塩、及び100μg/mLのストレプトマイシン硫酸塩が補足されている。ImmunoSpotプレート(Cellular Technology Limited, Cleveland, OH)を、ラット抗マウスIFN-γモノクローナル抗体(BD Biosciences, San Diego, CA)でコーティングし、そしてRPMI-1640培地でブロックした。個々のワクチン接種済マウスから脾細胞懸濁液を生成し、そしてこれらの懸濁液をRPMI培地中に、1 x 106、3 x 105、又は1 x 105細胞/ウェルで、ELISpotプレート内に播種した。RPMI培地は、好適なMHCクラスのI制限ペプチド(M84、297AYAGLFTPL305、Imgenex、San Diego、CA;NP、147TYQRTRALV155、Sigma/Genosys、The Woods, TX)、又は1 U/mLの組換えマウスIL-2(Roche, Indianapolis, IN)を有する(CD8 + T細胞ELISpotアッセイ)又は有さない(CD4 + T細胞ELISpotアッセイ)20μg/mLのタンパク質抗原を含有した。対照ウェルは、IL-2だけを有する(抗原なし)又は有さない培地中でインキュベートされた1 x 106個の脾細胞を含有した。37℃での20時間のインキュベーション後、ビオチン標識付きラット抗マウスIFN-γモノクローナル抗体と、アビジン-ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼとを逐次添加することにより、捕捉されたIFN-γを検出した。比色分析基質3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)の変換によって生成されたスポットを、ImmunoSpotリーダー(Cellular Technology Limited, Cleveland, OH)によって定量化した。
【0109】
試験1
PBS(1, 10及び100μg/mL)中のネイクドVR4700プラスミドDNAに対する用量応答、及び熱サイクルプロセス及び濾過プロセスを使用してポロキサマーCRL-1005(7.5mg/ml)及び塩化ベンザルコニウム(0.3mM)と配合されたVR4700(5mg/ml)に対する用量応答を下記に示す。配合物を濃縮原液として解凍し、次いで所要濃度に希釈することによって、希釈されたポロキサマー配合物の粒度を維持した。ネイクドVR4700プラスミドDNA、又はCRL-1005及びBAKと配合されたVR4700を増量しながらワクチン接種されたマウスの平均CD4+及びCD8+T細胞応答を、下記表3に示す。
【表3】

【0110】
ネイクドVR4700プラスミドDNA、又はCRL-1005及びBAKと配合されたVR4700を増量しながらワクチン接種されたマウスの平均NP特異的抗体力価を、下記表4に示す。
【表4】

【0111】
試験2
上記一般手順を用いて、in vivoポロキサマー(CRL-1005)用量応答試験を、塩化ベンザルコニウムなしで、DNA濃度を固定した状態で、熱サイクルプロセス及び濾過プロセスを採用して行った。CRL-1005を増量しながら、そしてVR4700プラスミドDNAを用量固定した状態で、これらをワクチン接種されたマウスの平均CD4+及びCD8+T細胞応答を、下記表5に示す。
【表5】

【0112】
CRL1005を増量しながら、そしてVR4700プラスミドDNAの用量を固定した状態で、これらをワクチン接種されたマウスの平均NP特異的抗体力価を、下記表6に示す。
【表6】

【実施例11】
【0113】
PBS中に塩化ベンザルコニウム又はその他の脂質とともに、CRL-1005及びその他のポロキサマーを含有する無菌配合物を、本明細書中に記載したように調製することができる。これらの配合物を、実施例10に記載されているような免疫原性の研究に使用することができる。記載された配合物を注射された動物のT細胞応答を、IFN-γ ELISpotアッセイによって測定し、そして抗原特異的抗体をELISAによって測定することになる。これらのデータから、有利な物理的及び薬学的特性を有する生体活性配合物、及び/又は、生体活性が高められた配合物が同定されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1A及び図1Bは、実施例1の方法に基づいて製造された粒子のZ平均粒度(nm)と、多分散性とをプロットしたグラフである。Z平均及び多分散性は、-80℃での凍結前及び凍結後の熱サイクル処理中の種々の時点で製造されたミクロ粒子に対して測定された。
【0115】
【図2】図2A及び図2Bは、実施例2, 3及び4の方法に基づいて製造された粒子のZ平均粒度(nm)と、多分散性とをプロットしたグラフである。ミクロ粒子のZ平均及び多分散性は、-80℃で貯蔵された後、室温で4時間にわたって毎時測定された。
【0116】
【図3】図3A及び図3Bは、実施例6に基づいてBAKの濃度を増大させながら製造されたミクロ粒子のZ平均粒度(nm)と、ゼータ電位(mV)とをプロットしたグラフである。
【0117】
【図4】図4Aは、実施例6に発表された種々のカチオン性脂質を用いて製造されたミクロ粒子の粒度(nm)をプロットしたグラフである。図4Bは、BAK及びPr-DOctRIE-OAcの添加量を変化させながら、実施例6に基づいて製造されたミクロ粒子の粒度(nm)をプロットするグラフである。
【0118】
【図5】図5A及び図5Bは、実施例7の方法に基づいて製造された粒子のZ平均粒度(nm)と、多分散性とをプロットしたグラフである。Z平均及び多分散性は、-80℃での凍結前の熱サイクル処理中の種々の時点で製造されたミクロ粒子に対して測定された。
【0119】
【図6】図6A及び図6Bは、実施例7の方法に基づいて製造された粒子のZ平均粒度(nm)と、多分散性とをプロットしたグラフである。Z平均及び多分散性は、-80℃での凍結後の熱サイクル処理中の種々の時点で製造されたミクロ粒子に対して測定された。
【0120】
【図7】図7は、下記カチオン性脂質:BAK C12, Bn-DHxRIE、DHxRIE-OAc、DHxRIE-OBz及びPr-DOctRIE-OAcの構造を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合物の製造方法であって、
(a) (i) カチオン性界面活性剤;
(ii) ポリオキシエチレン(POE)とポリオキシプロピレン(POP)とのブロック・コポリマー;及び
(iii)ポリヌクレオチド;
を、前記ブロック・コポリマーの曇り点未満の温度で混合することにより、混合物を形成し;そして、
(b) 該混合物を低温濾過することにより、無菌配合物を生成する
ことを含む、配合物の製造方法。
【請求項2】
さらに、
(c) 該混合物の温度を、工程(b)前に、前記ブロック・コポリマーの曇り点を上回る温度に上昇させる
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、
(c) 該混合物の温度を、工程(b)後に、前記ブロック・コポリマーの曇り点を上回る温度に上昇させる
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、
(c) 該混合物の温度を、工程(b)前に、前記ブロック・コポリマーの曇り点を上回る温度に上昇させ;
(d) 該温度を前記ブロック・コポリマーの曇り点未満に低下させ;そして
(e) 工程(c)及び(d)を工程(b)前に約1−約50回繰り返す
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、
(c) 該混合物の温度を、工程(b)後に、前記ブロック・コポリマーの曇り点を上回る温度に上昇させ;
(d) 該温度を前記ブロック・コポリマーの曇り点未満に低下させ;そして
(e) 工程(c)及び(d)を約1−約50回繰り返す
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記配合物を好適な容器内にアリコートすることを含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ブロック・コポリマーは、一般式:
HO(C2H4O)x(C3H6O)y(C2H4O)xH;
であり、上記式中(y)は、疎水性POP部分(C3H6O)の分子量が最大約20,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性POE部分(C2H4O)のパーセンテージが約1重量%−50重量%であるような数を表す、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ブロック・コポリマーがポロキサマーCRL-1005である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ブロック・コポリマーは、一般式:
HO(C3H6O)y(C2H4O)x(C3H6O)yH
であり、上記式中(y)は、疎水性POP部分(C3H6O)の分子量が最大約20,000ダルトンとなるような数を表し、そして(x)は、親水性POE部分(C2H4O)のパーセンテージがほぼ1重量%−50重量%であるような数を表す、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該カチオン性界面活性剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベネトニウム(benethonium chiloride)、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、塩化アセチルトリエチルアンモニウム、Bn-DHxRIE、DHxRIE-OAc、DHxRIE-OBz及びPr-DOctRIE-OAcから成る群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)が、約-2℃−約8℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(c)が、約8℃−約35℃の温度で実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(c)が、約8℃−約35℃の温度で実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(c)が、約8℃−約35℃の温度で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(c)が、約8℃−約35℃の温度で実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
工程(d)が、約-2℃−約8℃の温度で実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
工程(d)が、約-2℃−約8℃の温度で実施される、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
前記低温濾過が、約-2℃−約8℃の温度で実施される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記低温濾過が、孔サイズ約0.01マイクロ約2マイクロのフィルターを使用して行われる、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記配合物中に存在する前記カチオン性界面活性剤の最終濃度が、約0.01mM−約5mMである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記配合物中に存在する前記ブロック・コポリマーの最終濃度が、約1mg/mL−約50mg/mLである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記配合物中に存在する前記ポリヌクレオチド分子の最終濃度が、約1ng/mL−約10mg/mLである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
カチオン性脂質であって、Bn-DHxRIE、DHxRIE-OAc、DHxRIE-OBz及びPr-DOctRIE-OAcから成る群から選択されるカチオン性脂質。
【請求項24】
前記脂質がBn-DHxRIEである、請求項23に記載のカチオン性脂質。
【請求項25】
前記脂質がDHxRIE-OAcである、請求項23に記載のカチオン性脂質。
【請求項26】
前記脂質がDHxRIE-OBzである、請求項23に記載のカチオン性脂質。
【請求項27】
前記脂質がPr-DOctRIE-OAcである、請求項23に記載のカチオン性脂質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−514046(P2006−514046A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565151(P2004−565151)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/038119
【国際公開番号】WO2004/060363
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(505235783)バイカル インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】