説明

無菌包装方法および無菌包装装置

【課題】 多数の包装袋からなる連続包装袋の内面および外面を確実に殺菌する。
【解決手段】 一対の連続フィルム2a,2bの各々の内面に対して、内面放射線照射部10により放射線が照射され、連続フィルム2a,2bの各々の内面が殺菌される。次に一対の連続フィルム2a,2bが内面を向い合わせて重ね合わされ、一対の連続フィルム2a,2bがヒートシールされて連続包装袋9が作製される。連続包装袋9の外面が外面殺菌部12により殺菌され、切断部13において連続包装袋9が幅方向に切断されて開口8aを有する個々の包装袋8が作製され、包装袋8内に開口8aから内容物が充てんされて密封される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品および医薬品等の内容物を無菌状態で包装する無菌包装方法および無菌包装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から食品および医薬品等の内容物を無菌状態で包装する方法として、一対の連続フィルムを重ね合わせてシールすることにより連続包装袋を作製し、この連続包装袋を過酸化水素(H)により殺菌した後、無菌充てん室内に送って包装袋内に内容物を充てんする方法が知られている。
【0003】
この方法によれば、Hにより殺菌された連続包装袋は、切断されて一つずつの包装袋となり、その後無菌充てん室内において各包装袋内に内容物が充てんされる。内容物が充てんされた包装袋は、その後密封されて出荷される。
【0004】
上述のように、従来は連続包装袋をHにより殺菌しており、この場合、連続包装袋の外面のみ殺菌されることにより、連続包装袋の内面を十分に殺菌することはできない。
【0005】
また連続包装袋に対して放射線を外方から照射して殺菌する方法も知られている(公知文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−7113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、公知文献1に示す方法では、フィルムの材質および厚みによっては放射線が内面まで透過せず、フィルム内面を十分に殺菌できないことがある。
【0007】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、フィルムの厚みが大きくても、またフィルムの材質によることなく、包装袋の内面および外面を確実に殺菌することができる無菌包装方法および無菌包装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一対の連続フィルムの内面を、内面放射線照射部において放射線で照射する工程と、一対の連続フィルムを互いの内面を向い合わせて重ね合わせるとともに、一対の連続フィルムをシールすることにより多数の包装袋からなる連続包装袋を作製する工程と、連続包装袋の一対の連続フィルムの外面を外面殺菌部において殺菌する工程と、切断部において連続包装袋を幅方向に切断して開口を有する個々の包装袋を作製する工程と、無菌充てん室内において包装袋内に開口から内容物を充てんして密封する工程と、を備えたことを特徴とする無菌包装方法である。
【0009】
本発明は、各連続フィルムは外面から内面に向って順に配置された、基材層と、シーラント層とを有することを特徴とする無菌包装方法である。
【0010】
本発明は、各連続フィルムは、基材層とシーラント層との間に設けられた中間層を更に有することを特徴とする無菌包装方法である。
【0011】
本発明は、各連続フィルムは全厚が30〜200μmとなっていることを特徴とする無菌包装方法である。
【0012】
本発明は、基材層はPET、Ny等からなり、シーラント層はPE、PP等からなり、中間層はAl、Ny等からなることを特徴とする無菌包装方法である。
【0013】
本発明は、一対の連続フィルムの内面を殺菌する内面殺菌装置と、一対の連続フィルムを互いの内面を向い合わせて重ね合わせるとともに、一対の連続フィルムをシールすることにより多数の包装袋からなる連続包装袋を作製するシール装置と、連続包装袋の一対の連続フィルムの外面を殺菌する外面殺菌部と、連続包装袋を幅方向に切断して、開口を有する個々の包装袋を作製する切断部と、包装袋内に開口から内容物を充てんして密封する無菌充てん室と、を備えたことを特徴とする無菌包装装置である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、内面放射線照射部において、連続包装袋作製前の一対の連続フィルムの内面に対して放射線を照射し、かつ一対の連続フィルム2a,2bからなる連続包装袋の外面を外面殺菌部により殺菌することができるので、連続包装袋の内面および外面を確実に殺菌することができる。このため、内容物を無菌状態に保った状態で包装しかつ密封することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図4は本発明の実施の形態を示す図である。
【0016】
まず、図3および図4により、連続包装袋を作製する方法について説明する。図3に示すように、供給部1a,1bから一対の熱可塑性樹脂製連続フィルム2a,2bが繰り出される。
【0017】
連続フィルム2a,2bは、図4に示すように、PETまたはNY等からなる基材層31と、CPPまたはPE等からなるシーラント層33と、基材層31とシーラント層33との間に設けられ、Al等の金属層、またはNyからなる中間層32とからなっている。連続フィルム2a,2bは後述のように互いに重ね合わされるが、この場合、連続フィルム2a,2bの基材層31は外面を向き、シーラント層33は内面を向く。
【0018】
連続フィルム2a,2bの基材層31を上述の他、OPP、シリカ・蒸着フィルムから形成してもよく、中間層32をOPP、シリカ・AL蒸着フィルムから形成してもよい。
【0019】
また基材層31の厚みは10〜30μm、中間層32の厚みは5〜30μm、シーラント層の厚みは20〜100μmとなっており、各連続フィルム2a,2bは総厚30〜200μmとなっている。
【0020】
このような連続フィルム2a,2bは、供給部1a,1bから繰り出された後、各々独個に設けられた内面放射線照射部(内面殺菌部)10において内面側のシーラント層33が放射線により照射され、このようにして連続フィルム2a,2bの内面が殺菌される。内面放射線照射部10から照射される放射線としては、γ線、δ線、電子線(EB線)、あるいはX線等が考えられる。
【0021】
なお、内面放射線照射部10により内面殺菌部を構成した例を示したが、これに限らず連続フィルム2a、2bの内面を薬剤で殺菌する手段、あるいは連続フィルム2a、2bの内面を紫外線を照射して殺菌する手段を設けてもよい。
【0022】
このように、各連続フィルム2a,2bに対して、互いに重ね合わせる前にその内面を殺菌するので、連続フィルム2a,2bの材質、厚みによらず、連続フィルム2a,2bの内面を確実に殺菌することができる。
【0023】
すなわち、連続フィルム2a,2bを重ね合わせた後に外方から放射線を照射した場合、連続フィルム2a,2bの材質または厚みによっては、放射線が連続フィルム2a,2bを十分に透過せず、その内面を確実に殺菌することができないことも考えられる。これに対して本発明によれば、互いに重ね合わせる前に各々の連続フィルム2a,2bの内面を確実に殺菌することができる。
【0024】
一対の連続フィルム2a,2bは、その後ガイドロール3によって互いに重ね合わされ、次に長手方向ヒータ4および幅方向ヒータ5によってヒートシールされ、このようにして多数の包装袋8からなる連続包装袋9が得られる(図2参照)。連続包装袋9は、その後巻取られて連続包装袋9の巻体9aとなる。
【0025】
図2に示すように、連続包装袋9の各包装袋8は、長手方向ヒータ4によって連続包装袋9の長手方向両側縁に形成されたヒートシール部7aと、幅方向ヒータ5によって幅方向に形成されたヒートシール部7bとによって四方シールされている。このうち長手方向ヒータ4と幅方向ヒータ5とによりシール装置が構成されている。また長手方向両側縁に延びるヒートシール部7aのうち、後述する切断部13のカッタ13a(図1参照)により幅方向Lに沿って切断される部分にノッチ30が形成されている。なお、ノッチ30は、図1の長手方向ヒータ4に内蔵されたカッタ(図示せず)や、長手方向ヒータ4によるシールが行われた後、連続包装袋9を巻体9aに巻取る前の工程に設けられたカッタ(図示せず)により形成したり、あるいは連続包装袋9が巻取られた巻体9aを繰り出して、別の工程でカッタにより形成してもよい。
【0026】
上述した連続包装袋9を製造する際用いられる一対の連続フィルム2a,2bは、少なくとも連続包装袋9の最内層となる内面にヒートシール性を有するシーラント層33を有し、上述のようにした複合層、すなわち基材層31、中間層32、シーラント層33からなっている。
【0027】
連続フィルム2a,2bはガスバリア性、遮光性、水蒸気バリア性等の包装袋に必要な各種性能を有する熱可塑性樹脂製フィルム、アルミ箔、無機蒸着膜等の公知の素材を適宜積層することにより形成される。
【0028】
複合層で形成された連続フィルム2a,2bの一例として、PET/SiOx蒸着膜/NY/CPPの層構成からなるものを挙げることができる。
【0029】
次に、無菌包装方法を行なう無菌包装装置について述べる。無菌包装装置は、上述した内面放射線照射部10と、シール装置を構成する長手方向ヒータ4および幅方向ヒータ5とを備えている。
【0030】
さらに無菌包装装置は、図1に示すように、連続包装袋の巻体9aから連続包装袋9を繰り出す供給部11と、連続包装袋9の上方および下方の外面に対して電子線(EB)を照射する電子線照射部(外面殺菌部)12と、連続包装袋9を幅方向Lに沿って切断して開口8aを有する各々の包装袋8を作製するカッタ13aを有する切断部13と、無菌充てん室15とを備えている。
【0031】
なお、上記構成要素中、内面放射線照射部10およびシール装置4、5と、供給部11、電子線放射部12、切断部13および無菌充てん室15とを別個独立して設けてもよい。
【0032】
無菌充てん室15内には、図1に示すように、一対のスプロケット28,29と、一対のスプロケット28,29に掛け渡された搬送チェーン30とが配設されている。また搬送チェーン30の外周には、包装袋8の開口8a(図2)を開く開口手段22と、包装袋8内に内容物を充てんする充てん手段23と、包装袋8の開口8aをヒートシールして密封する密閉手段25とが設置されている。
【0033】
また無菌充てん室には、入口15aと出口15bとが各々設けられ、出口15bには排出コンベア27が連結されている。
【0034】
図1において、まず連続包装袋9の巻体9aが供給部11に装着され、この供給部11から連続包装袋9が繰り出される。供給部11から繰り出された連続包装袋9に対して、電子線照射部12においてEB照射が行なわれ、このEB照射によって連続包装袋9の外面が殺菌される。
【0035】
なお、電子線照射部12の代わりに、外面殺菌部としてH等の殺菌剤を連続包装袋9の外面に塗布する手段を設けてもよい。
【0036】
次に連続包装袋9は切断部13に送られ、切断部13のカッタ13aにより幅方向Lに沿って切断される。このように連続包装袋9が幅方向に切断されて、開口8aを有する各々の包装袋8が作製される。この場合、連続包装袋9のヒートシール部7aには予めノッチ30が形成されているので、連続包装袋9をノッチ30を通るよう幅方向に切断することにより、各包装袋8に開口8aを形成するとともに、ノッチ30によって各包装袋8の角部にR部を形成することができる。このように包装袋8の角部にR部を形成することにより、包装袋8によって手に傷を付けたりすることなく、包装袋8をその後安全に取扱うことができる。
【0037】
次に各包装袋8は無菌充てん室15内に挿入され、その後包装袋8は入口15aから搬送チェーン30によって順次開口手段22、充てん手段23、密閉手段25、および出口15bへと搬送される。
【0038】
この間、包装袋8は開口手段22において開口8aが開かれ、次に包装袋8は、充てん手段23へ送られて開口8aから内容物が充てんされる。その後包装袋8は密閉手段25において開口8aがシールされて密封される。その後包装袋8は出口15bから排出コンベア27を経て、無菌充てん室15の外方へ排出される。
【0039】
なお、充てん手段23内で充てんされる内容物としては、包装袋8の内面および外面の殺菌が必要となる、例えば食用クリーム、ソース、だし、つゆ等が考えられる。
【0040】
以上のように、本実施の形態によれば、連続包装袋9を作製する前の一対の連続フィルム2a,2bの内面に対して内面放射線照射部10により放射線を照射し、かつ一対の連続フィルム2a,2bからなる連続包装袋9の外面殺菌部12により殺菌することができるので、連続包装袋9の内面および外面を確実に殺菌することができる。
【0041】
ところで、図3に示すように、一対の連続フィルム2a,2bを長手方向ヒータ4と、幅方向ヒータ5とによりヒートシールして、ヒートシール部7a,7bを形成した例を示したが、連続フィルム2a,2bを一部ヒートシールして連続包装袋9を作製してもよい。
【0042】
この場合、連続包装袋9に長手方向両側縁に連続して延びるヒートシール部7a、および連続包装袋9に幅方向に延びるヒートシール部7bは、後工程で形成される。すなわち長手方向ヒータ4および幅方向ヒータ5を切断部13の上流側近傍または下流側近傍に設置することによりヒートシール部7aおよび7bを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による無菌包装方法を行なう無菌包装装置を示す概略側面図。
【図2】本発明による無菌包装方法に用いられる連続包装袋を示す概略平面図。
【図3】連続包装袋を作製する方法を示す図。
【図4】連続フィルムを示す側断面図。
【符号の説明】
【0044】
2a,2b 連続フィルム
4 長手方向ヒータ
5 幅方向ヒータ
7a,7b ヒートシール部
8 包装袋
8a 開口
9 連続包装袋
10 内面放射線照射部
11 供給部
12 電子線照射部
13 切断部
13a カッタ
15 無菌充てん室
22 開口手段
23 充てん手段
25 密閉手段
27 排出コンベア
28,29 スプロケット
30 搬送チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の連続フィルムの内面を、内面放射線照射部において放射線で照射する工程と、
一対の連続フィルムを互いの内面を向い合わせて重ね合わせるとともに、一対の連続フィルムをシールすることにより多数の包装袋からなる連続包装袋を作製する工程と、
連続包装袋の一対の連続フィルムの外面を外面殺菌部において殺菌する工程と、
切断部において連続包装袋を幅方向に切断して開口を有する個々の包装袋を作製する工程と、
無菌充てん室内において包装袋内に開口から内容物を充てんして密封する工程と、
を備えたことを特徴とする無菌包装方法。
【請求項2】
各連続フィルムは外面から内面に向って順に配置された、基材層と、シーラント層とを有することを特徴とする請求項1記載の無菌包装方法。
【請求項3】
各連続フィルムは、基材層とシーラント層との間に設けられた中間層を更に有することを特徴とする請求項2記載の無菌包装方法。
【請求項4】
各連続フィルムは全厚が30〜200μmとなっていることを特徴とする請求項1記載の無菌包装方法。
【請求項5】
一対の連続フィルムの内面を殺菌する内面殺菌部と、
一対の連続フィルムを互いの内面を向い合わせて重ね合わせるとともに、一対の連続フィルムをシールすることにより多数の包装袋からなる連続包装袋を作製するシール装置と、
連続包装袋の一対の連続フィルムの外面を殺菌する外面殺菌部と、
連続包装袋を幅方向に切断して、開口を有する個々の包装袋を作製する切断部と、
包装袋内に開口から内容物を充てんして密封する無菌充てん室と、
を備えたことを特徴とする無菌包装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−232381(P2006−232381A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53764(P2005−53764)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】