説明

無鉛ガソリン

【課題】エーテル類やアルコール類などをガソリンへ配合したときのオクタン価向上効果を最も高め得るように、ガソリン基材中の組成及び成分の比率を最適化させることで、オクタン価を効率よく確保できる無鉛ガソリンを提供すること。
【解決手段】特定の組成、成分比等を有する接触分解ガソリン基材(1)、及び接触改質ガソリン基材(2a)または(2b)、並びにエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)またはエタノールを1〜30容量%配合してなり、かつRONが98以上103未満等の特定の性状を有する無鉛ガソリン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用燃料としての無鉛ガソリンに関し、詳しくは、ガソリンのオクタン価確保の観点から特定された基材、特定された蒸留性状、及び特定された成分組成を有する、エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)またはエタノールを含有する無鉛ガソリンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンエンジン用燃料油としては、高オクタン価で運転性能に優れるとともに、環境性能にも優れるものが要望されるようになってきた。従来、ガソリンは、原油を接触分解装置や接触改質装置等の各種精製装置で処理することにより得られるガソリン留分の基材を、1種又は2種以上配合することにより製造されている。また、ガソリンの基材には、原油以外の資源を利用することも可能であり、エタノール等のアルコール類、メチルターシャリーブチルエーテルやETBE等のエーテル類がある。
【0003】
一般に、ガソリンのオクタン価は、下記式1のように、各成分のオクタン価とその成分の体積混合率を掛け合わせたものを積算して算出することができるといわれているが、実際には混合効果により、下記式2のように、オクタン価ボーナス(又はマイナス)分が付加される。
オクタン価=Σ{(成分iのオクタン価)×(成分iの体積混合率)} ………(1)
オクタン価=Σ{(成分iのオクタン価)×(成分iの体積混合率)}+(ボーナス) ………(式2)
【0004】
オクタン価ボーナス(即ちオクタン価向上効果)については、ガソリンを構成する組成によってボーナスの付き方が変わることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1では、オクタン価ボーナスは、ガソリン中のオレフィン量や芳香族量などから算出されるとしているが、これらは米国等で販売されているようなガソリンには当てはまるものの、日本国内で販売されている配合処方のガソリンには適合していない。また、アルコール類やエーテル類はオクタン価が高く、高オクタン価基材として注目されているが、これらを配合したときのオクタン価ボーナスは、配合するベースガソリンにより変化し、その挙動について不明な点が多かった。
【0005】
また、アルコール類やエーテル類を混合した時のオクタン価向上効果に関する特許が出されている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかし、これらは、アルコール類やエーテル類を混合するベースガソリンの組成(ノルマルパラフィン量、イソパラフィン量、オレフィン量、芳香族量(全て容量%))から、エタノールやETBEを混合した時のオクタン価(リサーチ法オクタン価及びモータ法オクタン価)を算出するものであって、それぞれ組成の総量からアルコール類やエーテル類のオクタン価向上効果を算出しているが、そのオクタン価向上効果をより高く効率よく確保するには十分なものではない。
また、FT合成基材を用いたときの、アルコール類やエーテル類のオクタン価挙動を記載した特許が出されている(例えば、特許文献5参照)。これは、FT合成基材の配合量を規定することで、アルコール類やエーテル類といった含酸素化合物のオクタン価向上効果がより高くなることを提供しているが、ガソリン基材の組成や成分についての記載はなく、そのオクタン価向上効果をより高く効率よく確保するには十分なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−029760号公報
【特許文献2】特開2005−029761号公報
【特許文献3】特開2005−029762号公報
【特許文献4】特開2005−029763号公報
【特許文献5】特開2007−270091号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Automotive Fuels Reference Book Second Edition, Keith Owen and Trevor Coley, Society of Automotive Engineers, Inc.,P58−60(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記のような状況に鑑み、アルコール類やエーテル類などをガソリンへ配合したときのオクタン価向上効果を最も高めるために、ガソリン配合に用いるガソリン基材中の組成及び成分の比率を最適化させることで、オクタン価を効率よく確保できる無鉛ガソリンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ガソリンに配合する基材として、流動床接触分解装置及び接触改質装置から留出する各特定の組成、性状のガソリン基材を用いる場合に、アルコール類やエーテル類のオクタン価向上効果を最も高めることができ、オクタン価を効率よく確保できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記(1)の性状を満たすガソリン基材と下記(2a)または(2b)の性状を満たすガソリン基材、及び含酸素化合物としてETBEまたはエタノールを配合してなり、かつ(3)〜(13)の性状を満たすことを特徴とする無鉛ガソリンを提供するものである。
(1)炭素数5の炭化水素含有量が55容量%以下、炭素数5の炭化水素含有量に対する炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.60以下、炭素数6の炭化水素含有量が45容量%以下、炭素数6の炭化水素含有量に対する炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.55以下であって、流動床接触分解装置から留出する10容量%留出温度が30℃以上、90容量%留出温度が100℃以下の蒸留性状を有するガソリン基材
(2a)炭素数7の芳香族含有量が50容量%以下、炭素数8の芳香族含有量が50容量%以下、炭素数9の芳香族含有量が25容量%以下であって、接触改質装置から留出する10容量%留出温度が70℃以上、90容量%留出温度が150℃以下の蒸留性状を有するガソリン基材
(2b)接触改質装置から留出する、10容量%留出温度が100℃以上、90容量%留出温度が120℃以下の蒸留性状を有し、炭素数7の芳香族含有量が85容量%以下、芳香族含有量が90容量%以下であるガソリン基材Xと、接触改質装置から留出する、10容量%留出温度が155℃以上、90容量%留出温度が180℃以下の蒸留性状を有し、炭素数9の芳香族含有量が98容量%以下であるガソリン基材Yを、容量混合比Y/Xが1.5以下で混合したガソリン基材
(3)リサーチ法オクタン価が98以上103未満
(4)モータ法オクタン価が85以上92未満
(5)含酸素化合物として、ETBEまたはエタノールが1〜30容量%
(6)15℃における密度が0.710〜0.783g/cm
(7)50容量%留出温度が75〜110℃
(8)70℃留出量が18〜40容量%
(9)リード蒸気圧が45〜93kPa
(10)ベンゼン含有量が1容量%以下
(11)硫黄分含有量が10質量ppm以下
(12)脂肪族不飽和炭化水素含有量が25容量%以下
(13)芳香族含有量が15〜45容量%
【発明の効果】
【0011】
本発明の無鉛ガソリンは、ガソリンへETBEまたはエタノールを配合したときのオクタン価向上効果を最も高めることができ、高オクタン価のガソリンを効率良く提供できる。そして、製油所における高オクタン価ガソリン製造用のガソリン基材の製造時に必要なエネルギーや温暖化ガスの排出を押えることができる。また、本発明の無鉛ガソリンは、燃費性能や運転性能に優れたものであり、実用性能を維持しつつ大気環境の保全が図られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の内容を更に詳しく説明する。
本発明の無鉛ガソリンは、流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)、接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)または(2b)、及びエチルターシャリーブチルエーテル(以下、ETBE)またはエタノールを必須基材として含む。
【0013】
基材(1)のガソリン基材は、灯・軽油から常圧残油に至る石油留分、好ましくは重質軽油や減圧軽油を、従来から知られている流動接触分解法(UOP法、シェル二段式法、フレキシクラッキング法、ウルトラオルソフロー法、テキサコ法、ガルフ法、ウルトラキャットクラッキング法、RCC法、HOC法等)により、固体酸触媒(例えば、シリカアルミナにゼオライトを配合したもの等)で分解して得られた接触分解ガソリンを蒸留して得られる軽質接触分解ガソリンである。
【0014】
重質な炭化水素から接触分解ガソリンを製造する流動接触分解法とは、詳しくは、流動している触媒と炭化水素油とを高温で接触させて、ガソリンや中間留分等を得るプロセスである。例えば、HYDROCARBON PROCESSING /NOVEMBER 2000の107〜110ページに、ABB Lummus Global InC.や、 Kellogg Brown & Roots, Inc.、さらにはShell Global Solutions International B.V.、 またStone & Webster Inc.、 A Shaw Group Co./Institut Francais du Petorole.や、UOP LLC.などの様々なプロセスメーカーが提案するFCC(Fluid Catalytic Cracking)プロセスが記載されている。
【0015】
本発明で基材(1)に用いる軽質接触分解ガソリンを得るためには、上記のFCCプロセスを用い、ガソリンの沸点以上で沸騰する炭化水素油(炭化水素混合物)を、ゼオライトやシリカアルミナ、アルミナなどいわゆる固体酸性を示す触媒と高温で接触させればよい。商業的規模でのFCCプロセスは、通常、垂直に据え付けられたクラッキング反応器と触媒再生器との2種の容器からなるFCC装置に、固体酸性を有するFCC触媒を連続的に循環させて行う。即ち、触媒再生器から出てくる熱い再生触媒を、分解すべき炭化水素油と混合し、クラッキング反応器内を上向の方向に導く。その結果、触媒上に析出したコークによって失活した触媒を、分解生成物から分離し、ストリッピング後、触媒再生器に移す。触媒再生器に移した使用済みの触媒を、該触媒上のコークを空気燃焼による除去で再生し、再びクラッキング反応器に循環する。一方、分解生成物は、ドライガス、LPG、ガソリン留分、並びにLCO、及びHCOあるいはスラリー油のような1種以上の重質留分に蒸留分離する。もちろん、これらの分解生成物の一部あるいは全部をクラッキング反応器内に再循環させて分解反応をより進めることもできる。本発明では、上記分解生成物から分離された留分の内、ガソリン留分を蒸留して得られる軽質ガソリン留分が基材(1)の軽質接触分解ガソリンとして用いられる。
【0016】
本発明で基材(1)に用いる軽質接触分解ガソリンを得るために使用する原料の重質な炭化水素としては、ガソリン沸点範囲以上で沸騰する炭化水素混合物、即ち、原油の常圧あるいは減圧蒸留で得られる軽油留分や常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油などを意味し、もちろんコーカー軽油、溶剤脱瀝油、溶剤脱瀝アスファルト、タールサンド油、シェールオイル油、石炭液化油などをも包括するものである。更に、これらの原料炭化水素は、当業者に周知の水素化処理、即ちNi−Mo系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−Co−Mo系触媒、Ni−W系触媒などの水素化処理触媒の存在下、高温・高圧下で水素化脱硫した水素化処理油も原料炭化水素油としてFCCプロセスに使用できることは言うまでもない。
【0017】
本発明で基材(1)に用いる軽質接触分解ガソリンを得るためのFCC装置におけるクラッキング反応器の運転条件としては、温度が約400〜600℃、好ましくは約450〜550℃、圧力が常圧〜0.49MPa、好ましくは常圧〜0.29MPa、触媒/原料炭化水素油の質量比が約2〜20、好ましくは約4〜15とすることが適している。
【0018】
反応温度が400℃以上であれば、炭化水素油の分解反応の進行が遅くなり、分解された生成物の得られる量が低くなり経済的に不経済になることを防ぐことができる。また、600℃以下であれば、脂肪族不飽和炭化水素が多量に生成することを防止し、本発明で規定するガソリン基材(1)における脂肪族不飽和炭化水素の容量比を確保し、所望のETBEまたはエタノールのオクタン価向上効果を得ることができる。圧力が0.49MPa以下であれば、分解反応がモル数の増加する反応であるために分解反応の進行が困難となり、不利となることを防ぐことができる。また、触媒/原料炭化水素油の質量比が2以上であれば、クラッキング反応器内の触媒濃度が低くなりすぎ、原料油分解の進行が低下し、不利となることを防ぐことができる。また、20以下であれば、触媒濃度を上げる効果が飽和してしまい、触媒濃度を上げる効果が得られずに同じく不経済となることを防ぐことができる。
【0019】
基材(2a)のガソリン基材は、重質の直留ナフサなどを接触改質法(プラットフォーミング法、マグナフォーミング法、アロマイジング法、レニフォーミング法、フードリフォーミング法、ウルトラフォーミング法、パワーフォーミング法等)により、水素気流中で高温・加圧下で触媒(例えば、アルミナ担体に白金やロジウムと塩素とを担持したもの等)と接触処理して得られた改質ガソリンからベンゼン留分を蒸留により取り除いた接触改質ガソリンである。
【0020】
本発明で基材(2a)に用いる接触改質ガソリンを得るための接触改質装置は、固定床半再生式、サイクリック式、連続再生式等いずれの方法であってもよい。接触改質反応に使用される触媒としては、種々のものを用いることができるが、白金を0.2〜0.8質量%含有している白金/アルミナ系触媒を好ましく用いることができ、更に第2成分としてレニウム、ゲルマニウム、すず、イリジウム等が含まれるものも用いることができる。
【0021】
接触改質装置の運転条件としては、固定床半再生式の場合には、反応温度約470〜540℃、反応圧力1〜3.5MPa、水素油比76〜3000NL/L、LHSV:1〜4h−1であることが好ましい。反応温度が470℃以上であれば、得られる接触改質処理油のオクタン価を向上させることができ、540℃以下であれば、水素化分解が進行して液収率が低下することや、コークの生成により触媒活性が低下することを抑制できる。反応圧力が1MPa以上であれば、コークの生成を抑制することができる。反応圧力が3.5MPa以下であれば、脱水素環化反応が抑制されずにオクタン価の高い接触改質処理油を得ることができる。また、連続再生式の場合には、反応温度510〜530℃、反応圧力0.35〜1MPa、水素油比140〜530NL/L、LHSV:1〜4h−1であることが好ましい。反応温度が510℃以上であれば、得られる接触改質処理油のオクタン価を向上させることができ、530℃以下であれば、水素化分解が進行して液収率が低下することや、コークの生成により触媒活性が低下することを抑制できる。反応圧力が0.35MPa以上であれば、コークの生成を抑制することができる。反応圧力が1MPa以下であれば、脱水素環化反応が抑制されずにオクタン価の高い接触改質処理油を得ることができる。
【0022】
本発明の無鉛ガソリンにおける基材(2a)の接触改質ガソリンは、上記のような運転条件にて接触改質装置から得られた接触改質油を公知の技術を用いて脱ベンゼン処理を行ったときに留出する重質接触改質油留分である。例えば、蒸留法により、接触改質油を軽質接触改質油留分と粗ベンゼン留分と重質接触改質油留分に分留することにより得られる重質接触改質油留分である。
【0023】
本発明の無鉛ガソリンはオクタン価向上効果を高めるため、ETBEまたはエタノールを含有し、且つ、特定の性状を有する流動接触分解装置から得られるガソリン基材(1)と接触改質装置から得られるガソリン基材(2a)を含有する物であるが、オクタン価向上効果は配合する基材によってその向上効果が大きく変わるため、ガソリン組成物を構成する基材から考えると、前記ガソリン基材(2a)の代わりに、接触改質ガソリンからキシレン留分を除いたガソリン基材(2b)を用いても同様な無鉛ガソリンを得ることができる。
【0024】
ガソリン基材(2b)としては、接触改質装置から留出する、10容量%留出温度が100℃以上、90容量%留出温度が120℃以下の蒸留性状を有し、炭素数7の芳香族含有量が85容量%以下、芳香族含有量が90容量%以下であるガソリン基材Xと、接触改質装置から留出する、10容量%留出温度が155℃以上、90容量%留出温度が180℃以下の蒸留性状を有し、炭素数9の芳香族含有量が98容量%以下であるガソリン基材Yを、容量混合比Y/Xが1.5以下で混合したガソリン基材を用いるものである。
【0025】
ガソリン基材(2b)は、重質の直留ナフサなどを接触改質法(プラットフォーミング法、マグナフォーミング法、アロマイジング法、レニフォーミング法、フードリフォーミング法、ウルトラフォーミング法、パワーフォーミング法等)により、水素気流中で高温・加圧下で触媒(例えば、アルミナ担体に白金やロジウムと塩素とを担持したもの等)と接触処理して得られた改質ガソリンからベンゼン留分、キシレン留分を取り除いた後の接触改質ガソリンである。
【0026】
基材(2b)の接触改質ガソリンは、接触改質装置から得られた接触改質油を公知の技術を用いて脱ベンゼン処理を行ったときに留出する重質接触改質留分を、更に公知の技術を用いて脱キシレン処理を行い、この脱キシレン処理のときに留出する炭素数7の芳香族分が主成分である留分X(ガソリン基材X)と、炭素数9の芳香族分が主成分である留分Y(ガソリン基材Y)を混合した留分である。例えば、脱ベンゼン処理を蒸留法により、軽質接触改質留分と粗ベンゼン留分と重質接触改質留分に分留し、更にこの重質接触改質留分を蒸留法や抽出法といった手法により、留分Xとキシレン留分と留分Yに分留し、キシレン留分を取り除いて留分Xと留分Yを得ることができる。
【0027】
ETBEまたはエタノールのオクタン価向上効果は、配合する無鉛ガソリン中の組成や成分によって変化する。本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、オクタン価向上効果を高めるためには、ガソリン基材として用いる基材のうち、前述に説明した流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)と接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)または(2b)の組成及び成分などを、下記に記載の範囲に規定、選択することで、ガソリン基材そのものが有するオクタン価を維持しつつ、配合するETBEまたはエタノールのオクタン価向上効果を最も高くすることができることがわかった。
【0028】
即ち、本発明の無鉛ガソリンにおける流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)の炭素数5の炭化水素含有量は55容量%以下、好ましくは50容量%以下であり、下限は好ましくは10容量%である。また、炭素数6の炭化水素含有量は45容量%以下、好ましくは40容量%以下であり、下限は好ましくは10容量%である。炭素数5の炭化水素含有量が55容量%以下、炭素数6の炭化水素含有量が45容量%以下ならば、軽質接触分解ガソリンのオクタン価を維持しつつ、蒸気圧を抑えることができ、得られる無鉛ガソリンの大気環境に及ぼす蒸発ガスを低減することができる。
【0029】
また、炭素数5の炭化水素含有量に対する炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比は0.60以下、好ましくは0.50以下であり、下限は好ましくは0.15である。また、炭素数6の炭化水素含有量に対する炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比は0.55以下、好ましくは0.45以下であり、下限は好ましくは0.15である。炭素数5の炭化水素含有量に対する炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.60以下、炭素数6の炭化水素含有量に対する炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.55以下ならば、軽質接触分解ガソリンのオクタン価を維持しつつ、ETBEまたはエタノールのオクタン価向上を抑制する働きのある炭素数5及び炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素含有量を抑えることができるため、ETBEまたはエタノールのオクタン価向上効果を高めることができ、高オクタン価のガソリンを効率良く得ることができる。また、脂肪族不飽和炭化水素含有量を抑えることで接触分解ガソリンや得られる無鉛ガソリンの酸化安定性も向上する。
【0030】
また、本発明の無鉛ガソリンにおける流動床接触分解装置から留出するガソリン基材(1)の10容量%留出温度(T10)は30℃以上、90容量%留出温度(T90)は100℃以下、好ましくは10容量%留出温度が35℃以上、90容量%留出温度が90℃以下、より好ましくは10容量%留出温度が35℃以上、90容量%留出温度が80℃以下である。10容量%留出温度が30℃以上、90容量%留出温度が100℃以下ならば、軽質接触分解ガソリンのオクタン価を高く維持することができるため、高オクタン価の無鉛ガソリンを効率良く製造することができ、更に該ガソリン基材を用いて製造した無鉛ガソリンは運転性やエンジン清浄性に優れた性能を有する。
【0031】
本発明の無鉛ガソリンにおける接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)の炭素数7の芳香族含有量は50容量%以下、好ましくは45容量%以下であり、下限は好ましくは5容量%である。また、炭素数8の芳香族含有量は50容量%以下、好ましくは48容量%以下であり、下限は好ましくは5容量%である。更に炭素数9の芳香族含有量は25容量%以下、好ましくは22容量%以下であり、下限は好ましくは3容量%である。炭素数7の芳香族含有量が50容量%以下、炭素数8の芳香族含有量が50容量%以下、炭素数9の芳香族含有量は25容量%以下ならば、運転性を維持しつつ、くすぶり性の悪化を防止し、エンジン内デポジット量の増加を防ぎ、排出ガス中の有害成分の増加を抑制できる。
【0032】
本発明の無鉛ガソリンにおける接触改質装置から留出するガソリン基材(2a)の10容量%留出温度(T10)は70℃以上、90容量%留出温度(T90)は150℃以下、好ましくは10容量%留出温度が80℃以上、90容量%留出温度が148℃以下、更に好ましくは10容量%留出温度が90℃以上、90容量%留出温度が146℃以下である。10容量%留出温度が70℃以上、90容量%留出温度が150℃以下ならば、接触改質ガソリンの重質化を防止できるとともに、運転性を維持しつつ、排出ガス中の有害成分の増加及びエンジン清浄性の悪化を防止できる。
【0033】
本発明の無鉛ガソリンにおける接触改質装置から留出するガソリン基材からキシレン留分を取り除いたガソリン基材(2b)は、10容量%留出温度が100℃以上、90容量%留出温度が120℃以下、好ましくは10容量%留出温度が102℃以上、90容量%留出温度が118℃以下、より好ましくは10容量%留出温度が103℃以上、90容量%留出温度が116℃以下の蒸留性状を有し、炭素数7の芳香族含有量が85容量%以下、好ましくは83容量%以下、より好ましくは80容量%以下、下限は好ましくは40容量%、芳香族含有量が90容量%以下、好ましくは88容量%以下、より好ましくは85容量%以下、下限は好ましくは50容量%であるガソリン基材Xと、接触改質装置から留出する、10容量%留出温度が155℃以上、90容量%留出温度が180℃以下、好ましくは10容量%留出温度が158℃以上、90容量%留出温度が178℃以下、より好ましくは10容量%留出温度が160℃以上、90容量%留出温度が175℃以下の蒸留性状を有し、炭素数9の芳香族含有量が98容量%以下、好ましくは97.5容量%以下、より好ましくは97容量%以下、下限は好ましくは50容量%であるガソリン基材Yを、容量混合比Y/Xが1.5以下、好ましくは1.0以下で混合したガソリン基材である。
ガソリン基材Xとガソリン基材Yの容量混合比Y/Xが1.5以下ならば、この混合物の基材(2b)の重質化を防止できるとともに、運転性を維持しつつ、排出ガス中の有害成分の増加及びエンジン清浄性の悪化を防止できる。
【0034】
本発明の無鉛ガソリンに配合するETBEは、公知の製造法から得られるもの全て使用可能であり、その製造方法は特に限定されるものではない。本発明の無鉛ガソリンにおけるETBEの配合量は1〜30容量%、好ましくは3〜25容量%、より好ましくは5〜20容量%、最も好ましくは5〜10容量%である。ETBEの配合量が上記範囲内であれば、発熱量の低下による燃費への悪影響の懸念がなく、排出ガス中のCO、THC等の低減などを図ることができる。
【0035】
本発明の無鉛ガソリンに配合するエタノールは、公知の製造法から得られるもの全て使用可能であり、その製造方法は特に限定されるものではない。本発明の無鉛ガソリンにおけるエタノールの配合量は1〜30容量%、好ましくは3〜25容量%、より好ましくは3〜20容量%、最も好ましくは3〜10容量%である。エタノールの配合量が上記範囲内であれば、発熱量の低下による燃費への悪影響の懸念がなく、排出ガス中のCO、THC等の低減などを図ることができる。
【0036】
上記ガソリン基材(1)、ガソリン基材(2a)または(2b)、ETBEまたはエタノールなどを配合してなる本発明の無鉛ガソリンは、リサーチ法オクタン価(RON)が98以上103未満、好ましくは98〜102、モータ法オクタン価(MON)が85以上92未満、好ましくは85〜90である。RONが98以上ならば、高い運転性能を維持することが可能となり、MONが85以上であれば高速走行時のアンチノック性の低下を防止することができる。なお、このRON及びMONは、JIS K 2280に準拠して測定した値である。
【0037】
更に、本発明の無鉛ガソリンは、以下のような性状を有している。
15℃における密度が0.710〜0.783g/cm、好ましくは0.710〜0.770g/cmである。この密度が0.710g/cm以上とすることで良好な燃費を確保することができる。また、密度を0.783g/cm以下とすることで高密度の芳香族分を低減でき、排出ガスによる大気への芳香族排出量を低減することができる。なお、この密度は、JIS K 2249に準拠して測定した値である。
【0038】
50容量%留出温度(T50)が75〜110℃、好ましくは75〜105℃であり、70℃留出量(E70)が18〜40容量%、好ましくは20〜38容量%である。T50、及びE70が上記範囲内であれば、始動性、運転性、加速性に不具合が生じる場合を防ぐことができる。なお、これらの蒸留性状はJIS K 2254に準拠して測定した値である。
【0039】
リード蒸気圧(RVP)が45〜93kPa、好ましくは50〜90kPaである。RVPを93kPa以下にすることによって蒸発ガスの量を少なくすることができ、45kPa以上とすることで低温始動性、暖気性の低下を防ぐことができる。なお、このリード蒸気圧は、JIS K 2258に準拠して測定した値である。
【0040】
ベンゼン含有量が1容量%以下、好ましくは0.8容量%以下である。このベンゼン含有量が1容量%以内であれば、大気中のベンゼン濃度の増加を防止し、環境汚染を低減できる可能性がある。なお、このベンゼン含有量は、石油学会法JPI-5S-33-90(ガスクロマトグラフ法)に準拠して測定した値である。
【0041】
硫黄分含有量が10質量ppm以下、好ましくは8質量ppm以下である。この硫黄分含有量が10質量ppm以内であれば、排出ガス浄化触媒の能力低下を防止し、排出ガス中のNOx、CO、THCの濃度上昇を防止できる可能性がある。なお、この硫黄分含有量は、JIS K 2541に準拠して測定した値である。
【0042】
芳香族分含有量は15〜45容量%、好ましくは20〜45容量%である。この芳香族分含有量が45容量%以内であれば、排出ガス中の有害成分の増加を防ぐことができる。なお、この芳香族分含有量は、石油学会法JPI‐5S-33-90(ガスクロマトグラフ法)に準拠して測定した値である。
【0043】
脂肪族不飽和炭化水素含有量が25容量%以下、好ましくは2容量%以上23容量%以下である。この脂肪族不飽和炭化水素含有量が25容量%以下であれば、酸化安定性の低下を防ぐことができる。なお、脂肪族不飽和炭化水素含有量は、石油学会法 JPI-5S-33-90(ガスクロマトグラフ法)に準拠して測定した値である。
【0044】
本発明の無鉛ガソリンの製造は、上記ガソリン基材(1)、ガソリン基材(2a)または(2b)、及びETBEまたはエタノールを必須基材として配合すること以外は特に制限はなく、得られる無鉛ガソリンの性状が上記本発明に規定する性状を満たす限りにおいて、必要に応じて、上記必須基材以外の従来からガソリンの基材に用いられている各種基材を、その性状に応じて配合量を適宜選択して用いて本発明の無鉛ガソリンを製造することができる。
【0045】
上記必須基材以外の基材として、下記のような各種留分が挙げられる。
(a)重質の直留ナフサなどを接触改質法により、水素気流中で高温・加圧下で触媒と接触処理して得られた改質ガソリンを蒸留により、軽質留分、ベンゼン留分、重質留分に分けた内の軽質留分(脱ベンゼン軽質接触改質ガソリン)。
(b)原油を常圧蒸留した直留ナフサを軽質留分と重質留分に分けた内の軽質留分を脱硫処理して得られた脱硫直留軽質ナフサ。
(c)イソブタンと低級オレフィン(ブテン、プロピレン等)を原料として、酸触媒(硫酸、フッ化水素、塩化アルミニウム等)の存在下で反応させて得られるアルキレート。
(d)原油や粗油等の常圧蒸留時、改質ガソリン製造時、あるいは分解ガソリン製造時等に蒸留して得られるブタン、ブテン類を主成分としたC4留分。
(e)直鎖の低級パラフィン系炭化水素の異性化によって得られるアイソメレート、あるいはアイソメレートを精密蒸留して得られるイソペンタン等。
【0046】
本発明の無鉛ガソリンには、ポリエーテルアミン、ポリアルキルアミン、ポリイソブテンアミン、コハク酸イミド等の清浄剤を添加することができる。添加量は50〜1000質量ppmが適当であり、好ましくは100〜500質量ppmである。添加量が50質量ppm以上ならばIVD(吸気バルブデポジット)の増加を防ぐことができ、1000質量ppm以内ならばCCD(燃焼室デポジット)の増加を防ぐことができる。清浄剤を上記一定量添加すれば、上記本発明で用いる接触改質ガソリンのエンジン内デポジットの生成抑制効果と相まって、CCDの生成を一層効果的に抑制することができる。
【0047】
本発明の無鉛ガソリンには、更に必要に応じて、各種の添加剤を適宜配合することができる。この添加剤としては、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、チオアミド化合物等の金属不活性剤、有機リン系化合物等の表面着火防止剤、多価アルコール及びそのエーテル等の氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステル等の助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の帯電防止剤、アルケニル琥珀酸エステル等の錆止め剤、及びアゾ染料等の着色剤等、公知の燃料添加剤が挙げられる。これらを1種又は数種組み合わせて添加することができる。これら燃料添加剤の添加量は任意であるが、通常、その合計添加量を0.1質量%以下とすることが好ましい。
【0048】
本発明の無鉛ガソリンは、基材(2a)およびETBEまたはエタノールを配合した場合下記式3で表されるオクタン価ボーナス指数(Ob)が110以上であることが好ましく、112以上であることが更に好ましい。
オクタン価ボーナス指数=(A−B(1−C))/C ………(式3)
式3中、Aは無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価、BはETBEまたはエタノール混合前のベースガソリンのリサーチ法オクタン価、CはETBEまたはエタノールの容量混合割合を示す。A及びBは、JIS K 2280「オクタン価及びセタン価試験方法」により測定する。
式3を整理すると以下の式が得られる。
A=(Ob)C+B(1−C)
ETBE100容量%(C=1)のRON(A)は110である。
【0049】
本発明の無鉛ガソリンは、基材(2b)およびETBEを配合した場合、式3で表されるオクタン価ボーナス指数(Ob)は103以上、好ましくは105以上である。また、この場合、ETBE100%のRON(A)は103である。
【0050】
本発明の無鉛ガソリンは、基材(2a)およびエタノールを配合した場合、式3で表されるオクタン価ボーナス指数(Ob)は113以上、好ましくは115以上である。また、この場合、エタノール100%のRON(A)は113である。
【0051】
本発明の無鉛ガソリンは、基材(2b)およびエタノールを配合した場合、式3で表されるオクタン価ボーナス指数(Ob)は108以上、好ましくは110以上となる。また、この場合、エタノール100%のRON(A)は108である。
【0052】
本発明において、Cは1〜30容量%であり、Obはその場合のETBEまたはエタノールのオクタン価と考えられ、ベースガソリン組成によって変動し、Obが大きい方が最終組成物のガソリンのオクタン価(A)は大きくなる。本発明はこのベースガソリン組成を特定することによりObの変動幅を小さくするものであり、このObの値が上記ある一定値以上になると、ベースガソリンに影響を受けETBEまたはエタノールのオクタン価が大きくなり、オクタン価向上効果が十分引き出されていることを示している。
【実施例】
【0053】
<実施例1−1〜1−3、比較例1−1〜1−3>
表1に示す性状の軽質接触改質ガソリン、重質接触改質ガソリン、軽質接触分解ガソリン、アルキレート、及びETBEを表2に示す配合比で配合することにより、表2に示す性状の無鉛ガソリンを得た。
なお、表1において、重質接触改質ガソリン1は本発明に規定するガソリン基材(2a)の性状を満たすものであり、重質接触改質ガソリン2はそれを逸脱するものであり、また、軽質接触分解ガソリン1は本発明に規定するガソリン基材(1)の性状を満たすものであり、軽質接触分解ガソリン2はそれを逸脱するものである。
【0054】
〔オクタン価ボーナス指数〕
実施例1−1〜1−3及び比較例1−1〜1−3の無鉛ガソリンについて、ETBEを混合していないベースガソリン、及び無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価(RON)を測定して、前記式3で表されるオクタン価ボーナス指数を算出した。
算出結果を表2に示す。なお、表1におけるC5分は、炭素数5の炭化水素、C5オレフィンは、炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素、C6分は、炭素数6の炭化水素、C6オレフィンは、炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素、C6芳香族分は、炭素数6の芳香族、C7芳香族分は、炭素数7の芳香族、C8芳香族分は、炭素数8の芳香族、C9芳香族分は、炭素数9の芳香族を各々意味する。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
実施例1−1〜1−3の無鉛ガソリンは、いずれも本発明で規定する基材(1)、(2a)の組成及び成分の容量及び容量比を満足する接触分解ガソリン及び接触改質ガソリンを混合しており、比較例1−1〜1−3で得られた、本発明で規定する基材(1)、(2a)の組成及び成分の容量及び容量比を満足していない接触分解ガソリン及び接触改質ガソリンを混合して調整した無鉛ガソリンと比較して、オクタン価ボーナス指数が110以上となり、オクタン価向上効果が増大していることがわかる。
【0058】
<実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−3>
実施例2−1〜比較例2−3では表3に示す性状の軽質接触改質ガソリン、脱キシレン重質接触改質ガソリン、軽質接触分解ガソリン、アルキレート、及びETBEを表4に示す配合比で配合することにより、表4に示す性状の無鉛ガソリンを得た。
なお、表3において、脱キシレン重質接触改質ガソリン1は基材(2b)に規定するガソリン基材Xの性状を満たすものであり、脱キシレン重質接触改質ガソリン2は基材(2b)に規定するガソリン基材Yの性状を満たすものであり、また、軽質接触分解ガソリン1は本発明に規定するガソリン基材(1)の性状を満たすものであり、軽質接触分解ガソリン2はそれを逸脱するものである。
【0059】
実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−3の無鉛ガソリンについて、ETBEを混合していないベースガソリン、及び無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価(RON)を測定して、前記式3で表されるオクタン価ボーナス指数を算出した。オクタン価ボーナス指数の算出結果を表4に示す。
【0060】
なお、表3におけるC5分は、炭素数5の炭化水素、C5オレフィンは、炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素、C6分は、炭素数6の炭化水素、C6オレフィンは、炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素、C7分は、炭素数7の炭化水素、C7オレフィンは、炭素数7の脂肪族不飽和炭化水素、C8分は、炭素数8の炭化水素、C6芳香族分は、炭素数6の芳香族、C7芳香族分は、炭素数7の芳香族、C8芳香族分は、炭素数8の芳香族、C9芳香族分は、炭素数9の芳香族を各々意味する。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
実施例2−1〜2−3と比較例2−1〜2−3を比較すると、オクタン価ボーナス指数が103以上となり、オクタン価向上効果が増大していることがわかる。
【0064】
<実施例3−1〜3−3、比較例3−1〜3−3>
実施例3−1〜比較例3−3では表5に示す性状の軽質接触改質ガソリン、重質接触改質ガソリン、軽質接触分解ガソリン、アルキレート及びエタノールを表6に示す配合比で配合することにより、表6に示す性状の無鉛ガソリンを得た。
なお、表5において、重質接触改質ガソリン1は本発明に規定するガソリン基材(2a)の性状を満たすものであり、重質接触改質ガソリン2はそれを逸脱するものであり、また、軽質接触分解ガソリン1は本発明に規定するガソリン基材(1)の性状を満たすものであり、軽質接触分解ガソリン2はそれを逸脱するものである。
【0065】
実施例3−1〜3−3および比較例3−1〜3−3の無鉛ガソリンについて、ETBEを混合していないベースガソリン、及び無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価(RON)を測定して、前記式3で表されるオクタン価ボーナス指数を算出した。オクタン価ボーナス指数の算出結果を表6に示す。
【0066】
なお、表5におけるC5分は、炭素数5の炭化水素、C5オレフィンは、炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素、C6分は、炭素数6の炭化水素、C6オレフィンは、炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素、C7分は、炭素数7の炭化水素、C7オレフィンは、炭素数7の脂肪族不飽和炭化水素、C8分は、炭素数8の炭化水素、C6芳香族分は、炭素数6の芳香族、C7芳香族分は、炭素数7の芳香族、C8芳香族分は、炭素数8の芳香族、C9芳香族分は、炭素数9の芳香族を各々意味する。
【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
実施例3−1〜3−3と比較例3−1〜3−3を比較すると、オクタン価ボーナス指数が113以上となり、オクタン価向上効果が増大していることがわかる。
【0070】
<実施例4−1〜4−3、比較例4−1〜4−3>
実施例4−1〜比較例4−3では表3に示す性状の軽質接触改質ガソリン、脱キシレン重質接触改質ガソリン、軽質接触分解ガソリン、アルキレート、及びエタノールを表7に示す配合比で配合することにより、表7に示す性状の無鉛ガソリンを得た。
なお、表3において、脱キシレン重質接触改質ガソリン1は基材(2b)に規定するガソリン基材Xの性状を満たすものであり、脱キシレン重質接触改質ガソリン2は基材(2b)に規定するガソリン基材Yの性状を満たすものであり、また、軽質接触分解ガソリン1は本発明に規定するガソリン基材(1)の性状を満たすものであり、軽質接触分解ガソリン2はそれを逸脱するものである。
【0071】
実施例4−1〜4−3および比較例4−1〜4−3の無鉛ガソリンについて、エタノールを混合していないベースガソリン、及び無鉛ガソリンのリサーチ法オクタン価(RON)を測定して、前記式3で表されるオクタン価ボーナス指数を算出した。オクタン価ボーナス指数の算出結果を表7に示す。
【0072】
【表7】

【0073】
実施例4−1〜4−3と比較例4−1〜4−3を比較すると、オクタン価ボーナス指数が108以上となり、オクタン価向上効果が増大していることがわかる。
【0074】
以上の結果から、本発明の無鉛ガソリンは、ガソリンへETBEまたはエタノールを配合したときのオクタン価向上効果が最も高められており、高オクタン価のガソリンを効率良く提供でき、製油所における高オクタン価ガソリン製造用のガソリン基材の製造時に必要なエネルギーや温暖化ガスの排出を押えることができることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)の性状を満たすガソリン基材と下記(2a)または(2b)の性状を満たすガソリン基材、及び含酸素化合物としてエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)またはエタノールを配合してなり、かつ(3)〜(13)の性状を満たすことを特徴とする無鉛ガソリン。
(1)炭素数5の炭化水素含有量が55容量%以下、炭素数5の炭化水素含有量に対する炭素数5の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.60以下、炭素数6の炭化水素含有量が45容量%以下、炭素数6の炭化水素含有量に対する炭素数6の脂肪族不飽和炭化水素含有量の容量比が0.55以下であって、流動床接触分解装置から留出する10容量%留出温度が30℃以上、90容量%留出温度が100℃以下の蒸留性状を有するガソリン基材
(2a)炭素数7の芳香族含有量が50容量%以下、炭素数8の芳香族含有量が50容量%以下、炭素数9の芳香族含有量が25容量%以下であって、接触改質装置から留出する10容量%留出温度が70℃以上、90容量%留出温度が150℃以下の蒸留性状を有するガソリン基材
(2b)接触改質装置から留出する、10容量%留出温度が100℃以上、90容量%留出温度が120℃以下の蒸留性状を有し、炭素数7の芳香族含有量が85容量%以下、芳香族含有量が90容量%以下であるガソリン基材Xと、接触改質装置から留出する、10容量%留出温度が155℃以上、90容量%留出温度が180℃以下の蒸留性状を有し、炭素数9の芳香族含有量が98容量%以下であるガソリン基材Yを、容量混合比Y/Xが1.5以下で混合したガソリン基材
(3)リサーチ法オクタン価が98以上103未満
(4)モータ法オクタン価が85以上92未満
(5)含酸素化合物として、ETBEまたはエタノールが1〜30容量%
(6)15℃における密度が0.710〜0.783g/cm
(7)50容量%留出温度が75〜110℃
(8)70℃留出量が18〜40容量%
(9)リード蒸気圧が45〜93kPa
(10)ベンゼン含有量が1容量%以下
(11)硫黄分含有量が10質量ppm以下
(12)脂肪族不飽和炭化水素含有量が25容量%以下
(13)芳香族含有量が15〜45容量%

【公開番号】特開2010−229336(P2010−229336A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79756(P2009−79756)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】