説明

無限軌道式走行装置

【課題】無限軌道の案内が安定した状態で駆動操作の運転騒音が低い無限軌道式走行装置を提供する。
【解決手段】周方向の歯36を備え、軸Xの周囲に回転駆動される起動輪Tと、無限軌道Rの内側で軸Xの周囲で自由に回転する少なくとも1つの遊動輪とを有する路面仕上げ機又はフィーダの無限軌道帯式走行装置において、減衰材料を備える制振層D及び半径方向のみの摺動ガイドが、軸Xと無限軌道Rの間で起動輪T及び/又は遊動輪に一体化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載のタイプの無限軌道式走行装置(tracklaying gear)に関する。
【背景技術】
【0002】
WO03/018388A号から知られている一般的な無限軌道式走行装置における遊動輪は、個々のセグメントで構成されたU字形断面の外側部分と、増厚した外リムにより内側から外側部分のU字溝と係合する軸の周囲に回転可能であるように装着された内側部分とを備える。各セグメントは、2つの軸方向ピンにより増厚したリムに可動可能に固定される。リムの外側で中心を囲むカラーの両側には、ほぼ矩形の断面のエラストマーリングがプレテンション方式で挿入され、両側に半径方向並びに軸方向に隙間がある状態で、相対的に移動可能な状態で内側部分上にて外側部分を維持する。弾性リングの予張力により、これらは軸方向並びに半径方向に加重伝達能力を有する。内側部分と外側部分の間には、直接的な半径方向のみの摺動ガイドがない。セグメントを固定する横方向のピンは、周方向にフォームフィットがある状態で、外側部分と内側部分の間に駆動型締結部を形成する。
【0003】
US3730013A号から知られている一般的な無限軌道式走行装置における遊動輪又は起動輪では、それぞれの外側環状部分が、その間に挿入された予張力付与のエラストマーリングのみを介して、内側のハブ状部分と接続される。内側部分では、軸側に、周方向に分散した回転要素と、回転要素によって内側部分に対して半径方向に移動可能なリングとを有する振り子式釣り合いシステムが設けられる。外側部分には、外側部分と内側部分との間の減衰リングに加えて、位置決め溝内に追加の外部エラストマーリングが挿入される。
【0004】
US2010/0141026A号から知られている無限軌道式走行装置における遊動輪では、内側部分の周方向フランジにて、リング本体が歪みねじによって外側から両側に固定され、これは周方向フランジの外周を越えて外側へと幅広化した肩部分が突出して、自身の間でT字形断面の外リングの基部を受け、したがって基部の内径が周方向フランジの外径に対して半径方向の隙間を有する。外側に開口した2つのリング本体の位置決め溝内には、予張力が付与された基部の両側にエラストマーリングが挿入され、したがって荷重伝達能力を得て、半径方向荷重並びに軸方向荷重を伝達する。リング本体の内壁には内側部分の周方向フランジの外壁に対して張力が加えられる一方、外リングの基部の外壁は各々リング部分の内壁との軸方向隙間を維持し、したがって外リングは予張力が付与されたエラストマーリングによって内側部分に対して半径方向及び軸方向に芯合わせされる。軸方向隙間の程度は片側で0.5mmから2.0mmの間にすることができ、したがって外リングは内側部分に対して軸方向に最大4.0mm移動する部分を有することができ、したがって排他的に相対的な摺動ガイドはない。
【0005】
JP56138068A号から知られている遊動輪では、2つの外側部分が内側金属部分の周囲に周方向に装着され、したがって自身の間に外側に開口した周方向の溝を画定する。周方向の溝内には、加圧エラストマーホースが外側部分の内壁と内側部分の外周との間に設けられ、ホースが環状部材に対して外側へと半径方向に作用し、軌道ジョイントのジョイントスリーブに当たり、環状部材は、摩擦によって磨耗し、内側部分と外側部分の金属材料とは異なる材料である。環状部材はH字断面を有し、圧力ホースの膨張又は収縮に適応して半径を拡大又は低減することができる。
【0006】
US5758932A号から知られている無限軌道式走行装置では、標準化された周方向の歯ではなく、ウェットタイヤのトレッドと同様に設計され、無限軌道と係合するダイヤモンド形の隆起部及び浸入した不純物を排出するために間に位置する流路を有する輪郭部が、起動輪の外周に取り付けられる。この周方向の歯構造は、起動輪の金属材料で形成されるか、又は溶接又は鋳造によって取り付けられ、したがって金属材料で構成される。また、無限軌道式走行装置の駆動動作には多角形の効果もあるので、無限軌道又は無限軌道のリンクは、起動輪に周期的に当たり、大きい騒音及び望ましくない磨耗を生じる。
【0007】
EP2050664A号から知られている路面仕上げ機の無限軌道式走行装置では、中実ゴムジャケットが金属製の遊動輪の周囲で加硫処理され、これを介して遊動輪が無限軌道に接触する。中実ゴムジャケットが全荷重を引き受けて、それを遊動輪の金属部分に伝達し、その結果、強度の磨耗と浮遊した運転感覚が生じることがある。
【0008】
US2007/0029878A号から知られている無限軌道式走行装置では、遊動輪及び起動輪は完全に金属で製作され、荷重が金属製の接触面を介して走行装置のサスペンションに伝達され、したがって無限軌道への不可避的影響が大きい騒音の発生につながる。
【0009】
US3647270A号から知られている無限軌道式走行装置では、起動輪(タンブラ)及び遊動輪が金属製であり、その結果、走行中に大きい走行音が生じる。
【0010】
EP0721879B1号は、遊動輪の2つの軸方向に離間した外部ゴムライニングを示している。
【0011】
US2002/0113489A号は、無限軌道式走行装置の走行輪の周囲で、ゴムスリーブに含まれる横方向のピンによりハブ部分に結合されたリングセグメントを示す。ゴムスリーブは、ハブ部分の周囲にあるリングセグメントのソーサ型凹部内に配置される。リングセグメントは、横方向のピンにより相互に移動可能に結合される。この走行輪の外部ライニングを軸方向に案内することは不可能である。
【0012】
DE3537665A号は、無限軌道式走行装置の多部分遊動輪又は走行輪に関し、走行輪の内側部分と外側部分の間に2つの環状制振層が挿入され、中心には隆起したガイドカラーが設けられ、両側に支持肩部が設けられる。分かりやすい半径方向の案内がない。
【0013】
DE2617342A号は、ハブに固着した2つの外冠歯車の間で2つのゴムライニングが外側からハブに取り付けられ、その上で無限軌道が自立することができ、その間で無限軌道の横方向案内の案内凹部が離れたままになるタンブラを示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の根本となる目的は、冒頭で言及したタイプの無限軌道式走行装置を提供することであり、無限軌道式走行装置は、無限軌道の案内が安定した状態で駆動操作の運転騒音が低いことを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
設定した目的は、請求項1の特徴で達成される。
【0016】
起動輪及び/又は遊動輪は、車軸と無限軌道との間で内側部分と外側環状部分とに分割され、これらは相互に対して半径方向にのみ移動可能で、相互に対して摺動するように、車軸に対して案内される。この部分間の内側に少なくとも2つの制振層が配置される。ここで、制振層は、無限軌道が起動輪又は遊動輪の金属部分に加える荷重を引き受けるが、無限軌道との直接の接触はない。この方法で、部分間に相対的な半径方向の動作がある状態で、制振層内で基本的に半径方向に作用する衝撃からのエネルギーを消費することによって、効果的な内部の減衰が達成される。部分は相互に対して半径方向にのみ摺動するように案内されるので、摺動ガイドを介して伝達される衝撃はないが、横方向の案内力が蓄積する。したがって、駆動動作中に無限軌道によって不可避的に加えられる衝撃は、一体型制振層によって減衰され、これにより特に運転騒音及び磨耗も低下する。しかし、制振層の一体化は、制振層に過荷重をかけないか、又はそれを時期尚早に磨耗させず、主に横方向の案内力を伝達するために、少なくとも起動輪と無限軌道の間にもやはり金属接触があるように設計しなければならない。運転騒音を最小化する制振層があるにもかかわらず、本発明では、半径方向のみの摺動ガイドによって制振層内の剪断力が回避され、これは寿命を延長させて、車輪上の無限軌道の安定した有向走行を確実に行う。
【0017】
1つの適切な実施形態では、遊動輪及び/又は任意選択で起動輪内で、さらにほぼ同一の直径の2つの環状制振層が軸方向外側に設けられて、空間によって軸方向に離間され、空間の領域内には、起動輪の金属製の外歯又は遊動輪のガイドカラーが配置され、したがって、ここでは主に荷重の伝達が生じる一方、追加の制振層は、プロセスの過荷重を受けずに、無限軌道によって生じた衝突による突然のエネルギーピークを減衰するが、それは内部制振層も有効だからである。それぞれの追加の制振層がそれぞれの支持肩部の外側に、例えば遊動輪に取り付けられ、好ましくは引き上げ、オーバーサイズの焼嵌め、溶射、接着又は加硫によって遊動輪に固着する。隆起したガイドカラーが少なくとも横方向の案内力を、任意選択で無限軌道と直接接触した状態で伝達する一方、無限軌道の衝撃も追加の制振層によって減衰されるが、これは遊動輪の中実ゴムジャケットのように無限軌道の総荷重は伝達しなくてもよい。この解決法は、特に遊動輪の場合に非常に小さい運転騒音にすることができる。
【0018】
制振層の減衰材料は、強化エラストマー又は非強化エラストマーであることが適切であり、例えば約80から約92のショアA硬さなどのポリウレタンゴム及び/又は硬質ゴムなどのゴムである。
【0019】
ある適切な実施形態では、起動輪の外側部分は、周方向の歯を備え、単一部分のリングディスクとして、又は周方向の内部基部と少なくとも1つの第1の半径方向案内構造とを有するセグメントから組み立てられたリングディスクとして実施され、組み立てるために分離可能であることが好ましい内側部分は、基部と一致する周方向のクラウン、及び第1の半径方向案内構造と一致する少なくとも1つの第2の半径方向案内構造で実施され、相互に対面する円筒状又は円錐状の支持面が基部及びクラウンに設けられ、それぞれの制振層が支持面の間に配置されて、任意選択で支持面に固着し、第1及び第2の半径方向案内構造は、半径方向に自由運動がある状態で相互に係合する。起動輪のこの実施形態は構造的に簡単で、半径方向摺動ガイドによりフェールセーフである。
【0020】
別の実施形態では、ガイドカラー及び両側の支持肩部を備える遊動輪の外側部分は、少なくとも1つの第1の内部半径方向案内構造と、第1の半径方向案内構造のいずれかの側にある円筒状又は円錐状の支持面とを有する支持リングとして実施され、車軸に回転可能に装着された内側部分は、第1の半径方向案内構造と一致する少なくとも1つの第2の半径方向案内構造と、第2の半径方向案内構造のいずれかの側にあり、支持リングと一致する周方向のクラウン内にある円筒状又は円錐状の支持面とを有する環状ハブとして実施され、1つの制振層が各々支持内面と支持外面の間に配置され、好ましくは支持面に固着し、第1及び第2の半径方向案内構造は、半径方向の自由運動のみがある状態で相互に係合する。ガイドを介して伝達される横方向の案内力を除き、無限軌道のほぼ全ての荷重が制振層を介して伝達され、したがって効率的に減衰し、任意選択でガイドカラーのいずれかの側にある追加の外部制振層によって支持される。均一な動力伝達のために、摺動ガイドが案内面の対と軸方向に同心円で適切に配置される。
【0021】
クラウンは基部又は支持リングより軸方向に幅広であり、外側へと半径方向に突出する環状フランジは、突出状態が好ましくは制振層の半径方向の厚さより小さいので、金属接触がない状態で、軸方向にそれぞれ基部又は支持リングを固定するクラウンの縁部に設けられるので適切である。これは、また、制振層の横方向の剛性も向上させる。
【0022】
特に有利なある実施形態では、起動輪及び/又はさらに遊動輪の内側部分と外側部分の間、好ましくはさらに第1の半径方向案内構造と第2の半径方向案内構造との間に、周方向のフォームフィット、及び半径方向の隙間を有する駆動型締結部が設けられる。噛合い歯がこの目的に役立つ。それにより、制振層内で周方向に作用する剪断力が最小になり、制振層を越えてトルクを伝達することができる。駆動型締結部の歯は、第1の半径方向案内構造の環状フランジの内周にある内冠歯車、及び第2の半径方向案内構造の環状溝の基部にある外冠歯車であることが製造に関しては有利である。これらの冠歯車は、駆動又は遊動輪の部分の材料から直接形成するか、又は別個に製造し、次に固定することができる。これらは、適切にフライス加工、突合せ加工又はブローチ加工によって製造したサイクロイド冠歯車であり、汚れや環境の影響に比較的よく耐える。
【0023】
1つの有利な実施形態では、制振層又は各制振層の軸方向の幅は、周方向の歯又はガイドカラーの軸方向外幅とほぼ等しいか、又はそれより大きく、及び/又はクラウンの軸方向の幅は、周方向の歯又はガイドカラーそれぞれの軸方向外幅のほぼ3倍に対応する。
【0024】
1つの適切な実施形態では、環状ハブは、車軸を画定する旋回部上の外部を密封型転がり軸受を介して、遊動輪内に支持され、好ましくはかしめなどの捻り防止保護部で締め付けナットにより少なくとも一方側が固定される。これは、組立に関して有利な減衰遊動輪の1つの解決策である。
【0025】
遊動輪及び/又は起動輪の内側部分及び外側部分は、鋼又は鋳鋼で適切に構成される。
【0026】
構造的に簡単なある実施形態では、第1の半径方向案内構造は、隣接する支持面からほぼ矩形の断面を有する内側へと突出する環状フランジを有し、第2の半径方向案内構造は、環状溝を備え、これもほぼ矩形の断面を有し、支持面に対して内側に窪んでいる。反対の構造形状も可能である。すなわち、内側部分から外側へ及び外側部分に浸漬された環状溝へと把持する環状フランジである。環状フランジは、環状溝内で大きい表面にわたって半径方向に安定して案内され、損傷する可能性がある屈曲及び剪断力から制振層を緩和する。ここでは、金属が直接接触することがあるか、又は案内面が摺動又は保護カバーを備えることができる。
【0027】
図面には、本発明の主題である実施形態が図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】無限軌道式走行装置を有する路面仕上げ機又はフィーダの概略側面図を示す。
【図2】無限軌道式走行装置の遊動輪の実施形態の半径方向部分断面図を示す。
【図3】無限軌道式走行装置の起動輪の半径方向部分断面図を示す。
【図4】無限軌道式走行装置の遊動輪の別の実施形態の半径方向部分断面図を示す。
【図5】無限軌道式走行装置の部分区域の部分断面側面図を示す。
【図6】図2の変形の部分断面詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に概略的に示された路面仕上げ機又はフィーダFは、前部材料バンカー2を有するシャーシ1と、高置の主動力装置3、例えば、油圧作動の作動構成要素に対して図示省略のポンプ式移送装置を有するディーゼルエンジンと、その背後の運転台4と、底部側の各側面に無限軌道式走行装置5と、を有する。無限軌道式走行装置5は、例えば、ハイドロスタット(hydrostat)6によって駆動される起動輪T(タンブラ)、及び遊動輪Lを含み、これらは支持ローラ8とともに、支持構造体40に、かつ、無限軌道R内に配置され、図示されていない懸架装置を介してシャーシ1に接続される。遊動輪Lは、張力調整装置9の作用を受けて、無限軌道Rに必要な動作張力をかけ続ける(図5も参照)。
【0030】
例えば、図1の無限軌道式走行装置5の動作時には、図5によると、無限軌道R(動作方向F)が点Pの領域で、例えば、遊動輪Lの支持リング15に衝撃を周期的に加える多角形効果が生じ、その衝撃の結果、金属により支持構造体40に伝達されると大きい運転騒音をもたらす。
【0031】
図2は、図1において例として使用される遊動輪Lの実施形態を示し、これは、主に多角形効果による無限軌道Rの衝撃の結果生じる運転騒音を低減する一体型減衰部を備える。
【0032】
無限軌道式走行装置5の遊動輪L及び起動輪Tに減衰部を提供するか、あるいは、遊動輪L及び起動輪Tのいずれか一方のみに減衰部を設けることが想定される。
【0033】
図2に示される遊動輪Lは、軸Xを規定する回転軸10に遊転自在に装着され、張力調整装置に属する構造体の側面(cheeks)11と案内フォーク12が与えられる側部支持装置との間に配置される。
【0034】
(鋼又は鋳鋼の)遊動輪Lは、外側部分13と内側部分14に分割される。その間に、減衰材料(強化又は非強化の、エラストマー及び/又はゴム)の2つの環状制振層Dが組み込まれる。外側部分13は、本実施形態において、軸方向の中央が周方向に突起した略T字形断面のガイドカラー16、及びガイドカラー16の両側に設定され、チェーンリンク部分とともに無限軌道Rが載る窪んだ支持肩部17を有する支持リング15である。支持リング15の軸中心側には、2つの円筒状又は円錐状の支持面18が設けられ、これは軸方向の空間で隔てられ、支持面18の間の空間領域に第1の半径方向案内構造19を有する。第1の半径方向案内構造19は、例えば、軸中心方向に突出する略矩形断面の環状フランジ20によって規定され、半径方向に延びる側面21と内周22を有する。
【0035】
内側部分14は、外クラウン(external crown)42を有する環状ハブ23であり、これは支持リング15より幅広で、第2の半径方向案内構造26の両側に円筒状又は円錐状の支持面25を備え、支持面25は軸方向で環状ハブ23の縁部にて突出する環状フランジ24(又は突起)によって制限される。環状フランジ24は、制振層Dの周囲を外側から把持する。この突起は、制振層Dの半径方向の厚さより小さい。各制振層Dの軸方向の幅は、例えばガイドカラー16の外幅(outer width)にほぼ相当する。クラウン42の軸方向の幅は、例えばガイドカラー16の外幅の3倍にほぼ相当する。制振層Dの半径方向の厚さは、例えばガイドカラー16の突起にほぼ相当する。
【0036】
第2の半径方向案内構造26は、図示の実施形態において、支持面25に対して内方に後退する略矩形断面の環状溝27と、環状フランジ20の外壁を半径方向のみに移動可能となるように案内する半径方向の内面28と、で構成される。環状溝30への環状フランジ20の浸入深さは、環状溝30の半径方向の深さより浅い。これにより、対となる平行案内面を備えた半径方向の摺動ガイドが形成される。
【0037】
図示の実施形態において、任意の選択肢として(遊動輪に必要とは限らないが)、周方向にフォームフィット(form-fit)を有する駆動型締結部Mが、外側部分13と内側部分14の間に設けられる。駆動型締結部Mは、半径方向に隙間がある状態で噛合する歯29、30、すなわち、例えば、環状フランジ20の内径における内向きクラウンギア(internal crown gear)、及び周方向溝27の基部における外向きクラウンギア(external crown gear)によって形成される。これらはサイクロイド曲線のクラウンギアであることが適当である。
【0038】
図示されていない別の例では、駆動型締結部Mを、環状ハブ23から始まって環状フランジ20に点在する横断ピン(transverse pin)によって形成することができる。横断ピンは、挿入された減衰材料とともにスリーブに埋め込むか、又は内腔内に、例えば減衰材料で内側を覆った環状ハブ23内に係合することができる。
【0039】
遊動輪Lの回転取り付けのために、回転軸10に転がり軸受32が装着され、これは、外側がシール33で封止されるとともに、締め付けナット34によって回転軸10に固定される。締め付けナット34への捻り防止保護部35の設定は、例えば、回転軸10でかしめられたカラー状サークリップを有する締め付けナット34により可能である。ここでは、グラブねじも配置することができる。
【0040】
無限軌道Rによって外側部分13に加えられる衝撃は、ここではガイドカラー16及び支持肩部17によって直接吸収されるが、環状ハブ23に伝達されず、第1の半径方向案内構造19と第2の半径方向案内構造26との間の半径方向の自由運動により、又は歯29、30間のバックラッシュにより、制振層D内で消費される。
【0041】
図3は、これも一体型減衰部を有する起動輪Tの実施形態を示す。
【0042】
図3に示した起動輪T(タンブラ)は、図2の遊動輪Lに類似して、外側部分37と内側部分41に分割され、その間に軸方向に離間した2つの制振層Dが設けられる。外側部分37は、チェーンリンク間で無限軌道R内に係合する周方向の歯36を支持するリングディスク(ring disk)38である。リングディスク38の内面において、幅広化した基部39が形成され、その内側には支持面40(円筒状又は円錐状)が設けられ、その間に第1の半径方向案内構造19が位置する(図2と同様)。内側部分41(組立の理由から、任意に2つの部分41a、41bで構成される)はクラウン43を有し、クラウン43は基部39より幅広で、基部39を環状フランジ24で囲む。内側部分41には、制振層Dが間隔を空けて配置される円筒状又は円錐状の支持面46の間に、図2と同様に第2の半径方向案内構造26が設けられる。内側部分41は、ディスク本体44内に続き、その中には駆動トルクを伝達する内腔45が形成される。
【0043】
図3の内側部分37と外側部分41の間にも、周方向にフォームフィットを有する駆動型締結部Mが、噛合い歯29、30の形態で設けられ、これは半径方向のバックラッシュを有し、したがって制振層Dが内側部分37と外側部分41の間の半径方向のみの相対運動で、伝達された衝撃を減衰することができる。
【0044】
図4に示される遊動輪Lの簡略化した実施形態は、ガイドカラー16の両側で支持肩部17上のライニングのように具体化された制振層D’を備え、したがってガイドカラー16は荷重の主要部分を引き受けて伝達し、制振層Dは無限軌道の総荷重及び衝撃の一部のみ引き受けて伝達する。制振層Dは、ここでは図2及び図3と比較して相対的に薄く、それぞれがガイドカラー16の対応する外幅と同様の軸方向の幅を有する。遊動輪Lの外側部分13aは、図2と同様に、転がり軸受32を介して軸Xを画定する回転軸10に遊転自在に装着され、締め付けナット34及び捻り防止保護部35によって固定される。ガイドカラー16は横方向の案内力を回転軸10に伝達し、したがって制振層D’を緩和する。制振層D’は、例えば焼嵌め又は引き上げ(drawing on)によって、又は接着、加硫、溶射、コーティングなどによって、支持肩部17によって形成された支持面上に固着する。
【0045】
図2と同様の図で、図6は基本的に図2のように設計された遊動輪Lの詳細な変形を示す。図2の実施形態とは異なり、図6では、軸方向に離間した同じ直径の2つの制振層D’が、外側部分13の支持肩部17に追加的に取り付けられ、これは自身の間にガイドカラー16を囲み、例えば、遊動輪Lの外側部分13と内側部分14の間の内部制振層Dとほぼ同じ強度及び幅を有する。
【0046】
この原則は遊動輪に十分に当てはまるが、このような追加の制振層D’は(例えば図3の)起動輪にも設けることができる。制振層D、D’は、例えば約80から92のショアA硬度を有するポリウレタンゴムで構成することができ、補強しても補強しなくてもよい。追加の制振層D’は、オーバーサイズで焼嵌めするか、又はコーティングを付加することができる。
【0047】
図6には、トラックジョイント36のトラックピン37及び/又は連結板39に接続された無限軌道Rのクッション38が図示されている。少なくとも連結板39が追加の制振層D’に接触する一方、ガイドカラー16は少なくとも幾つかのケースで、無限軌道Rの横方向の案内力を生成し、この力は図6に図示されていない半径方向の摺動ガイド、及び支持構造体40(図1)の遊動輪の回転装着により吸収される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向の歯(36)を備え、軸(X)の周囲に回転駆動される起動輪(T)と、無限軌道(R)の内側で軸(X)の周囲で自由に回転する少なくとも1つの遊動輪(L)とを有する、特に路面仕上げ機又はフィーダ(F)の無限軌道式走行装置(5)であって、前記遊動輪(L)が、少なくとも同心の隆起したガイドカラー(16)の片側に、低下した周方向の支持肩部(17)を備え、前記起動輪(T)又は前記遊動輪(L)が前記軸(X)と前記無限軌道(R)の間で内側部分と外側部分(13,14;37,41)に同軸で分割されること、及び前記内側部分と前記外側部分(13,14)の間に少なくとも2つの軸方向に離間された制振層(D)が配置されることによって、減衰材料を備える少なくとも1つの制振層(D,D’)が、前記軸(X)と前記無限軌道(R)の間で前記起動輪(T)又は前記遊動輪(L)に一体化され、前記内側部分及び前記外側部分(13,14;37,41)が、相互内で半径方向のみに摺動するように、前記軸(X)に対して案内され、前記制振層(D)を介して相互に対して半径方向のみに移動可能であることを特徴とする無限軌道式走行装置。
【請求項2】
前記起動輪(T)及び/又は前記遊動輪(L)の前記外側部分に、空間によって軸方向に離間されたほぼ同じ直径を有する2つの外部環状制振層(D’)が追加的に設けられ、前記空間の領域に、それぞれ前記無限軌道(R)と直接接触する前記金属製の外歯(36)又は前記ガイドカラー(16)が配置され、前記歯又はガイドカラーが前記外部制振層(D’)を越えて外側へと突出し、前記それぞれの外部制振層(D’)が、前記支持肩部(17)に取り付けられて、引き上げ、オーバーサイズの焼嵌め、溶射、接着、コーティング又は加硫によってそれに固着することを特徴とする請求項1に記載の無限軌道式走行装置。
【請求項3】
前記制振層(D)の前記減衰材料が、ポリウレタン及びゴムの少なくとも一方の、強化エラストマー又は非強化エラストマーを備えることを特徴とする請求項1に記載の無限軌道式走行装置。
【請求項4】
前記起動輪(T)の前記外側部分(37)が、前記周方向の歯(36)を備え、内周基部(39)及び第1の半径方向案内構造(19)の一体又は組み立てたセグメントで構成された金属製のリングディスク(38)として実施され、好ましくは分離可能な前記内側部分(41)が、前記基部(39)と一致する周方向のクラウン(43)及び前記第1の半径方向案内構造(19)と一致する第2の半径方向案内構造(26)を備え、前記基部(39)及び前記クラウン(43)で、少なくとも前記半径方向案内構造の軸方向の側に、相互に面する円筒状又は円錐状の支持面(40,46)が設けられ、前記制振層(D)が前記支持面(40,46)間に配置され、好ましくはそれぞれ1つの支持面に固着し、前記第1及び第2の半径方向案内構造が、半径方向の自由運動のみがある状態で噛み合う好ましくは金属製の摺動ガイドを形成することを特徴とする請求項1に記載の無限軌道式走行装置。
【請求項5】
いずれかの側(17)に前記ガイドカラー(16)及び支持肩部を備える前記遊動輪(L)の前記外側部分(13)が、前記第1の半径方向案内構造のいずれかの側にある前記内部第1の半径方向案内構造(19)及び円筒状又は円錐状の支持構造(18)を有する支持リング(15)として実施され、前記軸(X)に回転可能に装着された前記遊動輪の前記内側部分(14)が、前記第1の半径方向案内構造(29)に一致する第2の半径方向案内構造(26)、及び前記支持リング(15)に一致する周方向のクラウン(42)内で前記第2の半径方向案内構造のいずれかの側にある円筒状又は円錐状の支持面(25)を有する環状ハブ(23)として実施され、1つの制振層(D)がそれぞれ、前記支持面(18,25)の間に配置され、好ましくは支持面に固着し、前記第1及び第2の半径方向案内構造が、半径方向の自由運動のみがある状態で噛み合った摺動ガイドを形成することを特徴とする請求項2に記載の無限軌道式走行装置。
【請求項6】
前記クラウン(42,43)が、それぞれ前記基部(39)又は前記支持リング(15)より軸方向に幅広であり、縁部にて外側へと半径方向に突出する環状フランジ(24)を備え、その突出が前記制振層(D)の半径方向の厚さより小さいことを特徴とする請求項4又は5に記載の無限軌道式走行装置。
【請求項7】
前記内側部分と前記外側部分(13,14;37,41)の間に、好ましくは前記第1の半径方向案内構造と前記第2の半径方向案内構造の間に、駆動型締結部(M)として、半径方向の隙間及び周方向のフォームフィットがある状態で噛合い歯(29,30)が設けられ、前記歯(29,30)が、前記環状フランジ(20)にある内冠歯車、及び前記環状溝(27)の基部にある外冠歯車であり、好ましくは各々がフライス加工、突合せ加工又はブローチ加工によって製造されたサイクロイド冠歯車であることを特徴とする請求項4又は5に記載の無限軌道式走行装置。
【請求項8】
前記制振層(D)の軸方向の幅が、前記周方向の歯(36)又は前記ガイドカラー(16)の軸方向の外幅とほぼ等しいか、又はそれより大きく、及び/又は前記クラウン(42,43)の前記軸方向の幅が、それぞれ前記周方向の歯(36)又は前記ガイドカラー(16)の前記軸方向の外幅のほぼ3倍に対応することを特徴とする前記請求項のうち少なくとも1つに記載の無限軌道式走行装置。
【請求項9】
前記遊動輪(L)の前記環状ハブ(23)が、外部から密封型転がり軸受(32)を介して、前記軸(X)を画定する旋回部(10)上に支持され、少なくとも一方側にて締め付けナット(34)により、好ましくはかしめなどの捻り防止保護部(35)で固定されることを特徴とする請求項5に記載の無限軌道式走行装置。
【請求項10】
前記外側部分の前記第1の半径方向案内構造が、前記支持面から内側へと突出してほぼ矩形の断面を有する環状フランジ(20)であり、前記内側部分の前記第2の半径方向案内構造が、前記支持面に対して内側に窪んだほぼ矩形の断面の環状溝(27)であることを特徴とする請求項4又は5に記載の無限軌道式走行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−23218(P2013−23218A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−159761(P2012−159761)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(596068349)ヨゼフ フェゲーレ アーゲー (35)