説明

無電解めっき方法、無電解めっき装置及び電磁波シールド材料

【課題】無電解めっきにおいてめっき速度を上げると共に、めっき液の長寿命化を図る。
【解決手段】無電解めっき装置10には、めっき液16Aで満たされた無電解めっき槽16と、積層体12のメッシュ状の細線パターンからなる導電性金属パターン12Aに電気通電し、無電解めっきの最中に導電性金属パターン12Aを加温する電気通電装置20と、が設けられている。電気通電装置20には、無電解めっき槽16の入口側で積層体12の導電性金属パターン12Aに接触するカソード側の給電ローラ22と、無電解めっき槽16の出口側で積層体12の導電性金属パターン12Aに接触するアノード側の給電ローラ24と、が設けられている。給電ローラ22、24により導電性金属パターン12Aが電気通電され、めっき液中で導電性金属パターン12A近傍が加温される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性金属パターンを含む基体上に無電解めっきをする無電解めっき方法、無電解めっき装置、及び無電解めっき方法によって形成された電磁波シールド材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀塩写真技術や印刷法を用いて細線パターニングし、PDP(プラズマディスプレイパネル)の電磁波シールド膜を作製する技術が検討されている。
電磁波シールド機能を果たす要件は、細線上に金属を積層することであり、積層法の1つとして無電解めっきを用いることが可能である。無電解めっきでは、高速短時間めっきのためには通常めっき液液温を上げるが、この場合、時間当たりのめっき金属残存量が減少し、めっき液の寿命が短くなるという問題がある。このため、無電解めっきの高速化とめっき液の長寿命化を同時に満たすことができない。
【0003】
一方、特許文献1には、ガルバニックスタートについて記載されており、無電解めっき液中で析出反応電位に相当する電位を与えて電気化学的に反応を起こさせる方法が開示されている。この方法では、被めっきサンプルと電極とをめっき液中で対向するように設置してめっき反応させている。
【0004】
特許文献2には、金属イオンを含まない前処理剤で一次めっき膜の表面電位を、その一次めっき膜の表面電流密度が二次めっきの無電解処理液中で最も卑な表面電位よりも、さらに卑となるように調整した後、二次めっきを施す方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、貴金属を含有した活性化液浸漬中に、現像銀に対して負電位を与える方法が開示されている。この方法によれば、拡散転写法により形成した現像銀パターン上に吸着した貴金属が、還元されてめっき触媒として作用し、無電解めっきが可能となることが記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1から特許文献3のいずれの方法でも、めっきの高速化とめっき液の長寿命化を同時に達成することは困難である。
【特許文献1】特開2001−131760号公報
【特許文献2】特開2003−155573号公報
【特許文献3】特開2004−269992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、無電解めっきにおいてめっき速度を上げると共に、めっき液の長寿命化を図ることができる無電解めっき方法、無電解めっき装置、及び無電解めっき方法で形成された電磁波シールド材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、導電性金属パターンを含む基体上に金属めっきをする無電解めっき方法であって、前記無電解めっきの最中に前記導電性金属パターンに電気通電し、前記導電性金属パターンを加温しながら無電解めっきすることを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、無電解めっきの最中に導電性金属パターンに電気通電することで、導電性金属パターン近傍のみを加温しながら無電解めっきする。これにより、形成した金属パターンへのめっき速度を上げることができ、時間当たりのめっき量を増大させ抵抗値を下げることができる。また、めっき液の全体温度を高くしないため、経時時間あたりのめっき金属残存率が多くなり、めっき液の寿命が長くなる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無電解めっき方法において、前記電気通電量が、1.5A/dm2以下の範囲で通電を行うことを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、被無電解めっき物が樹脂フィルム上に導電性金属パターンが形成されており通電量がこの範囲である時に、めっき速度を十分に上げることができ、発熱による基体もしくは細線パターンの損傷を抑制できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、導電性金属パターンを含む基体上に金属めっきをする無電解めっき方法であって、前記導電性金属パターンにエネルギー照射を行うことにより、前記無電解めっきの最中に前記導電性金属パターンを加温しながら無電解めっきすることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、導電性金属パターンにエネルギー照射を行うことにより金属パターンが加温され、無電解めっきの最中に金属パターン近傍のみが加温され、無電解めっきが行われる。これにより、形成した金属パターンへのめっき速度を上げることができ、時間当たりのめっき量を増大させ抵抗値を下げることができる。また、請求項1と同様にめっき液の寿命が長くなる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の無電解めっき方法において、前記エネルギー照射は、レーザービーム、電子ビーム、イオンビームまたは熱線から選択される少なくとも1種類により行うことを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、エネルギー照射は、レーザービーム、電子ビーム、イオンビームまたは熱線から選択される少なくとも1種類により行うので、導電性金属パターンを局所的に加温することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法において、前記導電性金属パターンが1〜50μmのメッシュ状細線を含むパターンであることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、導電性金属パターンが1〜50μmのメッシュ状細線を含むパターンであるので、電気通電によるジュール熱またはエネルギー照射により導電性金属パターンが加熱され、導電性金属パターン近傍のみを加温することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法において、前記導電性金属パターンの表面抵抗値が10〜1000Ω/□であることを特徴としている。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、導電性金属パターンの表面抵抗値が10〜1000Ω/□であるので、電気通電によるジュール熱またはエネルギー照射により導電性金属パターンが加熱され、導電性金属パターン近傍のみを加温することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法において、前記導電性金属パターンが、ハロゲン化銀を含有する感光材料を露光、現像して形成されることを特徴としている。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、導電性金属パターンが、ハロゲン化銀を含有する感光材料を露光、現像して形成されており、所望の細線パターンを形成することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法において、前記基体は、導電性金属パターンが連続して形成された長尺状基体であり、前記長尺状基体を連続搬送して無電解めっきをすることを特徴としている。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、基体は、導電性金属パターンが連続して形成された長尺状基体であり、長尺状基体を連続搬送して無電解めっきをするので、枚様処理に比べて時間あたりのめっき処理長が多く、効率よく無電解めっきを行うことができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、導電性金属パターンを含む基体上に金属めっきをする無電解めっき装置であって、無電解めっき液で満たされ、前記基体が導入される無電解めっき槽と、前記導電性金属パターンに電気通電し、前記無電解めっきの最中に前記導電性金属パターンを加温する電気通電装置と、を有することを特徴としている。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、無電解めっき液で満たされた無電解めっき槽に導電性金属パターンを含む基体が導入される。さらに、電気通電装置によって導電性金属パターンが電気通電されることで、無電解めっきの最中に導電性金属パターン近傍のみが加温され、無電解めっきが行われる。これにより、めっき速度を上げることができ、時間当たりのめっき量を増大させ抵抗値を下げることができる。また、めっき液の全体温度を高くしないため、経時時間あたりのめっき金属残存率が多くなり、めっき液の寿命が長くなる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、導電性の金属パターンを含む基体上に金属めっきをする無電解めっき装置であって、無電解めっき液で満たされ、前記基体が導入される無電解めっき槽と、前記導電性金属パターンにエネルギー照射を行い、前記無電解めっきの最中に前記導電性金属パターンを加温するエネルギー照射装置と、を有することを特徴としている。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、無電解めっき液で満たされた無電解めっき槽に導電性金属パターンを含む基体が導入される。さらに、エネルギー照射装置によって導電性金属パターンにエネルギー照射されることで、無電解めっきの最中に導電性金属パターン近傍のみが加温され、無電解めっきが行われる。これにより、めっき速度を上げることができ、時間当たりのめっき量を増大させ抵抗値を下げることができる。また、めっき液の全体温度を高くしないため、経時時間あたりのめっき金属残存率が多くなり、めっき液の寿命が長くなる。
【0028】
請求項11に記載の発明に係る電磁波シールド材料は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法で形成されたことを特徴としている。
【0029】
請求項11に記載の発明によれば、電磁波シールド材料は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法で形成されているので、めっき速度を上げて短時間の処理で表面抵抗値を下げることができ、生産性に優れた電磁波シールド材料を提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、無電解めっきにおいてめっき速度を上げることができると共に、めっき液の長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
図1には、本発明の第1実施形態に係る無電解めっき方法が適用される無電解めっき装置10が示されている。無電解めっき装置10は、基体12上に積層された導電性金属パターン12A(以下、積層体12と記載)に無電解めっきにより金属(本実施形態では、Cu)を積層する装置である。
【0032】
無電解めっき装置10では、図示しない送り出しロール及び巻き取りロールにより、積層体12が一定方向(図1中の矢印方向)に搬送される。無電解めっき装置10には、積層体12の裏面をガイドする支持ローラ14が設けられており、支持ローラ14よりも搬送方向下流側に、めっき液16Aが貯留された無電解めっき槽16が配設されている。無電解めっき槽16内には、積層体12の裏面をガイドする2本の支持ローラ18が、無電解めっき槽16の長手方向両端部付近に所定の間隔をおいてほぼ平行に配設されている。積層体12は、2本の支持ローラ18によってガイドされた状態でめっき液16A中を一定方向(図1中の矢印方向)に搬送される。本実施形態では、支持ローラ14、18のローラ部分はポリプロピレンで形成されている。
【0033】
無電解めっき装置10には、電気通電することにより、無電解めっきの最中に導電性金属パターン12Aを加温する電気通電装置20が設けられている。電気通電装置20は、支持ローラ14と上流側(図中左側)の支持ローラ18との間、すなわち無電解めっき槽16の入口側の上部で導電性金属パターン12Aに接触するカソード側の給電ローラ22と、無電解めっき槽16の出口側の上部で導電性金属パターン12Aに接触するアノード側の給電ローラ24と、を備えている。また、積層体12を挟んで給電ローラ22と対向する位置には、導電性金属パターン12Aを給電ローラ22に押し付けるゴム製の押圧ローラ28が配設されている。本実施形態では、給電ローラ22、24はSUS316で形成されている。なお、図1中の符号26は、給電ローラ22、24を介して導電性金属パターン12Aに電気通電するための電源である。無電解めっき装置10では、支持ローラ14、18等によって長尺帯状の積層体12を連続的に搬送し、無電解めっきすることができる。
【0034】
この無電解めっき装置10に配設した積層体12を搬送しながら、導電性金属パターン12Aへ給電ローラ22を介して電気通電する。通電は直流電源または交流電源のどちらを用いて行っても良く、1.5A/dm2以下が好ましく、0.3A/dm2以上1.5A/dm2以下がより好ましい。なお、導電性金属パターンの抵抗値にもよるが、発熱量を増やすために通電量を増やしすぎた場合には、積層体12がめっき液に浸漬されると同時に導電性金属パターン12Aの細線の一部が断裂する可能性がある。このため通電量は、導電性金属パターンの抵抗値により適宜調整することが好ましく、本発明での好ましい電流範囲は1.5A/dm2以下となる。
【0035】
また図2には、本発明の第2実施形態に係る無電解めっき方法が適用される無電解めっき装置30が示されている。なお、第1実施形態と同一の部材には同じ符号を付与し、重複する説明は省略する。図2に示されるように、無電解めっき装置30には、無電解めっき槽16の入口側と出口側に、図1に示す給電ローラ22、24に代えて、2本の支持ローラ32が配設されている。また、無電解めっき装置30には、無電解めっき槽16の入口側の上部であって、上流側(図2中右側)の支持ローラ32よりも下流側に、積層体12の導電性金属パターン12Aにエネルギーを照射するエネルギー照射装置34が配設されている。エネルギー照射装置34は、導電性金属パターン12Aと対向する位置に配置されており、導電性金属パターン12Aにエネルギーを照射するものである。
【0036】
積層体12の導電性金属パターン12Aにエネルギーを与える手段は、マイクロ波等の電磁波、レーザービーム、電子ビーム、イオンビーム、熱線等が挙げられる。特に局所的に微細に加熱できる点でレーザービーム、電子ビーム、イオンビーム、熱線が好ましく、これらから選択される少なくとも1種類により導電性金属パターン12Aにエネルギー照射を行うことが好ましい。比較的小型で、簡易にエネルギー照射が可能な点ではレーザービームが好ましく用いられる。
【0037】
レーザービームの波長としては、導電性金属パターンが吸収を有するものであれば、紫外光から赤外光まで任意のものを選択できるが、好ましくは700nm〜1700nmの赤外光および/または360nm以下の紫外光である。代表的なレーザーとしては、AlGaAsやInGaAsPなどの半導体レーザー、Nd:YAGレーザー、ArF、KrF、XeClなどのエキシマレーザー、色素レーザーなどが挙げられる。また面発光型半導体レーザーやこれを1次元又は2次元に配列したマルチモードアレイを用いることもできる。
また、これらのレーザービームでは第二高調波、第三高調波等の高次高調波を利用しても良い。これらのレーザービームは連続的に照射しても、パルス状に複数回照射しても良い。
【0038】
このような無電解めっき装置30では、積層体12は支持ローラ14、32によってガイドされて矢印方向に搬送され、積層体12は無電解めっき槽16内のめっき液16Aに導入される。無電解めっき槽16内では、積層体12は2本の支持ローラ18によってガイドされた状態でめっき液16A中を矢印方向に搬送される。無電解めっき槽16の入口では、エネルギー照射装置34によって、積層体12の導電性金属パターン12Aにレーザービームが照射されるので、導電性金属パターン12Aが局所的に加熱される。このため、無電解めっきの最中に積層体12の導電性金属パターン12A近傍のみを加温しながら無電解めっきすることができる。
【0039】
基体上へ導電性金属パターンを形成する方法としては、例えば帯状の基体フィルム上にハロゲン化銀乳剤を含む乳剤層を塗設し、その材料を露光装置(図示省略)によって露光し、現像処理装置(図示省略)によって現像・定着・洗浄等を行う写真技術を用いた方法、または基体上に印刷もしくはインクジェットプリンタ等により導電性粒子を含有したインクを描画し、導電性金属パターンを形成する方法等が用いられる。これらの処理により、積層体12においてはパターン化された細線状の導電性金属パターン12Aを形成することができる。
【0040】
また、上記の方法等により形成された導電性金属パターンは、無電解めっきの効率を高めるために還元剤との接触による還元、および/または触媒を含有する溶液で処理することにより活性の付与を行うことができる。還元剤としては例えば水素化ホウ素ナトリウム等の公知の還元剤を用いることができる。使用可能な触媒としてはPd等の貴金属類が挙げられ、イオンであっても金属であってもよい。触媒をイオンとして付与する場合は、付与後に還元処理等を組み合わせることも可能である。これらの処理により無電解めっき速度を促進させることができる。
【0041】
金属パターン上へのめっき処理は、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、または無電解めっきと電解めっきの両方の併用等を用いることができる。本発明の無電解めっきは、金属パターン上にめっきして、所望の表面抵抗値を得られる無電解めっきであれば、無電解めっき液中のめっき金属種にはこだわらないが、好ましいのは無電解銅めっきである。
【0042】
無電解銅めっき液に含まれる化学種としては、硫酸銅や塩化銅、還元剤として、ホルマリンやグリオキシル酸、銅の配位子として、EDTA,トリエタノールアミン等、その他、浴の安定化やメッキ皮膜の平滑性向上の為の添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジン等が挙げられる。電解銅めっき浴としては、硫酸銅浴やピロリン酸銅浴が挙げられる。
【0043】
めっき処理を行う前の導電性金属パターン12Aの表面抵抗値は、10〜1000Ω/□であることが好ましく、20〜500Ω/□であることがさらに好ましく、30〜200Ω/□であることが最も好ましい。また、めっき処理後の金属パターンの表面抵抗値は、10Ω/□以下であることが好ましく、1.0Ω/□以下であることがより好ましく、0.5Ω/□以下であることがさらに好ましく、0.1Ω/□以下であることが最も好ましい。
【0044】
また、導電性金属パターン12Aは、1〜50μmのメッシュ状細線を含むパターンであることが好ましい。メッシュ状細線を含む導電性金属膜が透光性電磁波シールド材料として用いられる場合、金属パターンの線幅は30μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。更に、金属パターンの線間隔は、50μm以上1000μm以下であることが好ましく、200μm以上500μm以下であることがさらに好ましく、250μm以上400μm以下であることが最も好ましい。また、金属パターンは、アース接続などの目的においては、その線幅が50μmより広い部分を有していてもよい。
【0045】
また、上記の金属パターン以外の部分は、透明性を有している(以下、この金属パターン以外の透明性を有する部分を光透過性部という。)。光透過性部の透過率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、97%以上であることが最も好ましい。なお、現像処理並びに本発明のめっき処理後に、酸化処理等で光透過性部の光透過率を高める処理をすることもできる。酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理など、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。
上記の光透過性部の透過率とは、支持体の光吸収および反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の平均で示される透過率を指し、(透光性電磁波シールド材料の透明部の透過率)/(支持体の透過率)×100(%)で表される。
【0046】
金属パターンにおいて、コントラストを高くし、かつ金属パターンが経時的に劣化するのを防止する観点から、金属パターンの表面が黒化処理することも好適に行われる。黒化処理は、黒化銅、黒化ニッケル、黒化スズ、黒化ニッケル−スズ、黒化ニッケル−亜鉛等の電解めっきや、プリント配線板分野で行われている酸化処理等を用いて行うことができる。
【0047】
本発明に係る導電性金属膜は、高い電磁波シールド性及び透光性を有しているため、CRT、EL、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、その他の画像表示グラットパネル、あるいはCCDに代表される撮像用半導体集積回路などに組み込んで、電磁波シールド膜として用いることができる。特に、プラズマディスプレイに対して、その輝度を著しく損なわずに、その画質を維持または向上させることができるため、プラズマディスプレイに用いることが好ましい。
【0048】
なお、本発明に係る導電性金属膜の用途としては、上記表示装置等に限定されず、電磁波を発生する測定装置、測定機器や製造装置の内部をのぞくための窓や筐体や、電波塔や高圧線等により電磁波障害を受ける恐れのある建造物の窓や自動車の窓等に設けることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明がこれらによって限定されるものではない。
【0050】
下記に示す方法に従ってハロゲン化銀乳剤Aを作製した。
(乳剤Aの調整)
・1液:
水 750ml
ゼラチン 20g
塩化ナトリウム 1.6g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005% KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001% NaCl 20%水溶液) 7ml
【0051】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005% KCl 20%水溶液)およびヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001% NaCl20% 水溶液)は、粉末をそれぞれKCl 20%水溶液、NaCl20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0052】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.15μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.18μmまで粒子を成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0053】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0054】
その後、常法にしたがってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、下記に示すアニオン性沈降剤−1を3g加え、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた。(pH3.2±0.2の範囲であった)次に上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返し(第三水洗)て水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤にゼラチン8gを加え、pH5.6、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgと塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7-テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.18μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。(最終的に乳剤として、pH=5.7、pAg=7.5、電導度=60μS/m、密度=1.28×103kg/m3、粘度=60mPa・sとなった。)
【0055】
【化1】

【0056】
(塗布物の作製)
下記に示す処方に従い、塗布物である乳剤層、UL層を作製した。
【0057】
<乳剤層>
乳剤Aに増感色素(D−1)5.7×10−4モル/モルAgを加えて分光増感を施した。さらにKBr3.4×10−4モル/モルAg、化合物(Cpd−3)8.0×10−4モル/モルAgを加え、良く混合した。
次いで1,3,3a,7-テトラアザインデン1.2×10−4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10−2モル/モルAg、クエン酸3.0×10−4モル/モルAg、界面活性剤(Sa−1)、(Sa−2)、(Sa−3)を各々塗布量が60mg/m、40mg/m、2mg/mになるように添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0058】
<UL層>
ゼラチン 0.23g/m
化合物(Cpd−7) 40mg/m
化合物(Cpd−14) 10mg/m
防腐剤(プロキセル) 1.5mg/m
なお、各層の塗布液は、下記構造(Z)で表される増粘剤を加え、粘度調整した。
【0059】
【化2】

【0060】
【化3】

【0061】
<支持体>
二軸延伸したポリエチレンテレフタレート支持体(厚み100μm)の乳剤面側及びバック面側に、基体に近い側から下記組成の下塗層第1層及び第2層を塗布した。塗布はバーコート法で行い、各層の塗布前の基体にはコロナ放電処理を施した。
【0062】
<下塗層1層>
コア−シェル型塩化ビニリデン共重合体(1) 15g
2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 0.25g
ポリスチレン微粒子(平均粒径3μ) 0.05g
化合物(Cpd−20) 0.20g
コロイダルシリカ 0.12g
(スノーテックスZL:粒径70〜100μm 日産化学(株)製)
水を加えて 100g
【0063】
さらに、10重量%のKOHを加え、pH=6に調整した塗布液を乾燥温度180℃2分間で、乾燥膜厚が0.9μmになるように塗布した。
【0064】
<下塗層第2層>
ゼラチン 1g
メチルセルロース 0.05g
化合物(Cpd−21) 0.02g
1225O(CHCHO)10H 0.03g
プロキセル 3.5×10−3
酢酸 0.2g
水を加えて 100g
【0065】
この塗布液を乾燥温度170℃2分間で、乾燥膜厚が0.1μmになるように塗布した。
【0066】
[バック面側]
(下塗層第1層)
アクリル系ラテックス 1g
アニオン系界面活性剤 0.06g
ノニオン系界面活性剤 0.06g
SbドープSnO2微粒子 0.3g
球状シリカ微粒子(平均粒子径0.3μ) 0.05g
カルボジイミド架橋剤 0.05g
水を加えて 100g
【0067】
上記塗布液を乾燥温度180℃2分間で、乾燥膜厚が0.9μmになる様に塗布した。
【0068】
(下塗層第2層)
アクリル系ラテックス 1g
アニオン系界面活性剤 0.06g
カルナバワックス分散物 0.05g
エポキシ架橋剤 0.05g
水を加えて 100g
【0069】
この塗布液を乾燥温度170℃2分間で、乾燥膜厚が0.1μmになる様に塗布した。
【0070】
【化4】

【0071】
(試料S−1、S−2の作製)
上記下塗層を施した支持体上に、まず乳剤面側として支持体に近い側よりUL層、乳剤層の順に2層を、35℃に保ちながらスライドビードコーター方式により同時重層塗布し、冷風セットゾーン(5℃)を通過させた。ここで、硬膜剤であるCpd−7は塗布直前にUL層へ前述の量添加し、UL層から拡散させることにより乳剤層へ含有させた。そして、乳剤面とは反対側には、支持体に近い側より、導電層、バック層の順に、カーテンコーター方式により硬膜剤液を加えながら同時重層塗布し、冷風セットゾーン(5℃)を通過させた。各々のセットゾーンを通過した時点では、塗布液は充分なセット性を示した。引き続き乾燥ゾーンにて両面を同時に乾燥した。このようにして得られた試料S−1は、塗布銀量が4g/m、試料S−2は塗布銀量が7.5g/mの感光材料であった。
【0072】
(現像サンプルの作成)
以下の方法に従って試料S−1及びS−2の露光現像処理を行い、現像銀基盤サンプル(現像サンプル)SD−1及びSD−2を得た。得られたサンプルの表面抵抗値は、各々110Ω/□、50Ω/□であった。
【0073】
(露光処理)
乾燥させた各試料の乳剤層上にライン/ピッチ=15μm/485μmの現像銀像を与えうる格子状のパターンを、大日本スクリーン(株)製のイメージセッターFT−R5055を使用して露光した。このとき露光量は各試料に合わせて最適となるよう調節した。
【0074】
(現像処理)
露光後の試料に、以下に示す現像処理を施すことにより、格子状の細線パターンからなる現像サンプルSD−1及びSD−2を作成した。
【0075】
・現像処理
処理工程 温 度 時 間
黒白現像 20℃ 60秒
定着 35℃ 40秒
リンス1* 35℃ 60秒
リンス2* 35℃ 60秒
乾 燥 50℃ 60秒
【0076】
各処理液の組成は以下の通りである。
〔黒白現像液 1L処方〕
ハイドロキノン 20g
亜硫酸ナトリウム 50g
炭酸カリウム 40g
エチレンジアミン・四酢酸 2g
臭化カリウム 3g
ポリエチレングリコール2000 1g
水酸化カリウム 4g
pH 10.3に調整
【0077】
〔定着液 1L処方〕
ATS 1.2 モル
沃化アンモニウム 5g
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25g
酢酸 5g
アンモニア水(27%) 1g
pH 6.2に調整
【0078】
(無電解めっき液の作製)
表1に示す処方の無電解めっき液を作製し、pHを12.3に調節した。
【0079】
【表1】

【0080】
〔実施例1〕
得られた基盤サンプルSD−1をPdCl 1mM水溶液に25℃にて5分間浸漬し、その後図1に示す無電解めっき装置10にて0.5A/dm2で通電しながらめっき時間が5minとなるように搬送して無電解めっきを実施した。めっき液の液温度は40℃で行った。
【0081】
〔実施例2〜5〕
無電解めっき装置10にて通電する電流値を変更したこと以外は実施例1と同様にして無電解めっきを実施した。通電量と得られたサンプルの表面抵抗値をまとめて表2に示した。
【0082】
〔実施例6〕
使用する基盤サンプルをSD−2に変更すること以外は実施例1と同様にして無電解めっきを実施した。
【0083】
〔実施例7〜8〕
通電する電流値を変更したこと以外は実施例6と同様にして無電解めっきを実施した。
【0084】
〔実施例9〕
基盤サンプルSD−1をPdCl 1mM水溶液に25℃にて5分間浸漬し、その後搬送しているサンプルに20J/cmのエネルギーで830nmの赤外線レーザーを照射しながら図2に示す無電解めっき装置30にてめっき時間が5minとなるように搬送してめっき液温度を40℃で無電解めっきを実施した。
【0085】
〔実施例10〕
使用する基盤サンプルをSD−2に変更すること以外は実施例9と同様にして無電解めっきを実施した。
【0086】
〔比較例1〕
得られた基盤サンプルSD−1をPdCl 1mM水溶液に浸漬し、めっき時間が5minとなるように搬送してめっき液温度を40℃にて無電解めっきを実施した。無電解めっき時は基盤サンプルへの電気通電又はエネルギー照射を行わずにめっきを実施した。
【0087】
〔比較例2〕
使用する基盤サンプルをSD−2に変更すること以外は比較例1と同様にして無電解めっきを実施した。
【0088】
〔実施例11〕
5gの硝酸銀と20gのクエン酸3ナトリウムを150mlのイオン交換水に溶解し、ここに5gの水素化ホウ素ナトリウムを50mlのイオン交換水に溶解した水溶液を撹拌しながらゆっくりと添加した。得られた分散液にメタノールを加えてAg粒子を沈降させ、上澄み液を除去して洗浄した。洗浄した粒子をシクロヘキサノールと2−エトキシエタノールの混合溶媒(容量比率50:50)に再分散させ、10重量%濃度のAg/AgO混合微粒子分散物を作製した。
この分散液用いて、予めコンピュータ入力した485ピッチ15μ線幅の図形情報に従ってピエゾ方式のインクジェットプリンタを用いて基板上に描画して乾燥させ、120Ω/□の基盤サンプルSD−3を作製した。
得られた基盤サンプルSD−3を実施例2と同様の方法で無電解めっきを実施した。
【0089】
〔比較例3〕
実施例11で得られた基盤サンプルSD−3をPdCl 1mM水溶液に浸漬し、めっき時間が5minとなるように搬送してめっき液温度を40℃で無電解めっきを実施した。無電解めっき時は基盤サンプルへの電気通電又はエネルギー照射を行わずにめっきを実施した。
【0090】
〔比較例4〕
めっき液温度を52℃にすること以外は比較例1と同様にして無電解めっきを実施した。
【0091】
以上の無電解めっき後サンプルの表面抵抗値とめっき液を使用温度で1日経過させた後のCuの残存率を表2に示した。
【0092】
【表2】

【0093】
表2に示されるように、実施例1〜10は、同一時間の無電解めっきで比較例1に比べて表面抵抗が低く、めっき速度が速くなっていることが明らかである。また、比較例4との比較から、実施例1〜10は1日経過後のCu残存率が高く、経時安定性が良好である。従って、実施例1〜10によれば、無電解めっきの高速化とめっき液の長寿命化を同時に達成することができる。更に、実施例11によれば、導電性インクを用いた基盤サンプルに対しても本発明が有効であることが分かる。
【0094】
なお、本実施形態では、光透過性電磁波遮蔽材料を製造する装置及び製造方法について説明したが、これに限られず、例えば、その他工業品などの微細な導電性金属部からなる細線状パターンを有する光透過性導電性材料の製造装置及び製造方法としても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態における無電解めっき方法が適用された無電解めっき装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態における無電解めっき方法が適用された無電解めっき装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0096】
10 無電解めっき装置
12 積層体
12A 導電性金属パターン
16 無電解めっき槽
16A めっき液
20 電気通電装置
22 給電ローラ
24 給電ローラ
30 無電解めっき装置
34 エネルギー照射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属パターンを含む基体上に金属めっきをする無電解めっき方法であって、
前記無電解めっきの最中に前記導電性金属パターンに電気通電し、前記導電性金属パターンを加温しながら無電解めっきすることを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項2】
前記電気通電が、1.5A/dm2以下の範囲で通電を行うことを特徴とする請求項1に記載の無電解めっき方法。
【請求項3】
導電性金属パターンを含む基体上に金属めっきをする無電解めっき方法であって、
前記導電性金属パターンにエネルギー照射を行うことにより、前記無電解めっきの最中に前記導電性金属パターンを加温しながら無電解めっきすることを特徴とする無電解めっき方法。
【請求項4】
前記エネルギー照射は、レーザービーム、電子ビーム、イオンビームまたは熱線から選択される少なくとも1種類により行うことを特徴とする請求項3に記載の無電解めっき方法。
【請求項5】
前記導電性金属パターンが1〜50μmのメッシュ状細線を含むパターンであることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項6】
前記導電性金属パターンの表面抵抗値が10〜1000Ω/□であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項7】
前記導電性金属パターンが、ハロゲン化銀を含有する感光材料を露光、現像して形成されることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項8】
前記基体は、導電性金属パターンが連続して形成された長尺状基体であり、
前記長尺状基体を連続搬送して無電解めっきをすることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法。
【請求項9】
導電性金属パターンを含む基体上に金属めっきをする無電解めっき装置であって、
無電解めっき液で満たされ、前記基体が導入される無電解めっき槽と、
前記導電性金属パターンに電気通電し、前記無電解めっきの最中に前記導電性金属パターンを加温する電気通電装置と、
を有することを特徴とする無電解めっき装置。
【請求項10】
導電性金属パターンを含む基体上に金属めっきをする無電解めっき装置であって、
無電解めっき液で満たされ、前記基体が導入される無電解めっき槽と、
前記導電性金属パターンにエネルギー照射を行い、前記無電解めっきの最中に前記導電性金属パターンを加温するエネルギー照射装置と、
を有することを特徴とする無電解めっき装置。
【請求項11】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の無電解めっき方法で形成されたことを特徴とする電磁波シールド材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−108337(P2009−108337A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278364(P2007−278364)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】