焦点情報決定方法および装置並びに環境音速取得方法および装置
【課題】処理効率や診断効率の低下を招くことなく、高精度に環境音速を取得する。
【解決手段】超音波プローブの各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を行い、その送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて各素子によって受信された受信信号に基づいて、上記送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置またはその焦点位置を含む有効域を決定する。
【解決手段】超音波プローブの各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を行い、その送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて各素子によって受信された受信信号に基づいて、上記送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置またはその焦点位置を含む有効域を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関するものであり、特に、超音波プローブから送波された超音波の実際の焦点位置、またはその焦点位置が存在する有効域を決定する焦点情報決定方法および装置並びに環境音速取得方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を用いて被検者の断層画像を取得して医療診断に供する超音波診断装置が提案されている。このような超音波診断装置においては、超音波画像の方位分解能を向上させるために、超音波プローブから超音波を送波する際には、超音波プローブの各素子から送波される各超音波に対して送信遅延時間を設定するいわゆる送信フォーカスが行われ、受信信号を取得する際には、各素子によって受信された各受信信号に対して受信遅延時間を設定するいわゆる受信フォーカスが行われている。
【0003】
そして、このような送信フォーカスおよび受信フォーカスを行う際には、対象となる診断部位の代表的な音速を仮定し、その仮定音速に基づいて上述した送信遅延時間および受信遅延時間が設定される。
【0004】
しかしながら、被検者の環境音速は一様ではなく組織によって異なり、仮定音速と環境音速が異なると画質が劣化するという問題が生じる。
【0005】
ここで、画質劣化の原因は、対象に送信焦点を適切に形成する送信遅延または対象から反射された超音波の各素子受信時刻に対して、送信フォーカスの送信遅延時間または受信フォーカスの受信遅延時間が異なるからである。
【0006】
なお、本願で言う環境音速とは、所定の対象に対して超音波を送信したときに、その対象から各素子までの距離と各素子の受信時刻とに基づいて決定される音速のことである。
【0007】
そして、従来、この環境音速と仮定音速とを一致させ、画質劣化を防ぐ試みがなされてきた。
【0008】
たとえば、特許文献1においては以下のような方法が提案されている。まず、所定の開口中心を中心とした所定幅の開口から標準的な設定音速で焦点Tに収束するように遅延させた超音波を送波する。
【0009】
そして、被検体からの反射波を超音波プローブの全素子で受信し、その信号に対して異なる設定音速で焦点P1と焦点P2とについてそれぞれ受信フォーカスを実施し、その各焦点に対応する設定音速毎のビームプロファイルを生成する。
【0010】
そして、各焦点のビームプロファイルにおいて、最も半値幅が狭いビームプロファイルが選択され、そのビームプロファイルに対応する設定音速が被検体のその部位の環境音速と推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−7045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の方法において、受信焦点P1、P2を環境音速を求める着目点と見ると、各着目点と送信焦点Tとの深さは異なっている。着目点がT近傍であれば良好な精度で環境音速は求まることもあるが、その距離が離れると環境音速の精度が劣化してしまう。特に、スペックルの場合には着目店の周囲からの干渉によって著しく精度が劣化し、環境音速を求めることができない場合もある。
【0013】
また、特許文献1に記載の方法において、送信焦点Tは標準的な設定音速で集束する深さであることから、環境音速と設定音速が異なる場合には送信焦点の深さがTと異なり、その場合、着目点と送信焦点との距離が離れ、環境音速精度が劣化し、求められない事もある。
【0014】
また、着目点が送信焦点Tの近傍であったとしても、干渉によって正確な環境音速を求められない場合がある。すなわち、送信波面は、焦点近傍において図11のようになるが、各深さにおいて無数の散乱点による反射により疑似的に送信波面と同一の反射波面が形成され、その結果、求められる環境音速に誤差を生じてしまう。具体的には、図11に示すように、送信焦点より浅い領域においては環境音速が速くなり、深い領域においては遅くなってしまう。図12は、上述したような環境音速の誤差が生じる場合における深さに対する環境音速をグラフに示したものである。
【0015】
このような問題を解決するために、着目点に対して受信フォーカスだけでなく、送信フォーカスの設定音速も変化させる方法が考えられるが、送信フォーカスの設定音速を変化させてその都度、超音波を送波するようにしたのでは膨大な送信回数が必要となり、環境音速を取得するまでに時間がかかり過ぎて処理効率の低下や診断効率の低下を招くことになる。
【0016】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、処理効率や診断効率の低下を招くことなく、良好に環境音速を取得することができる送信フォーカスの焦点情報決定方法および装置並びに環境音速取得方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の焦点情報決定方法は、被検体内に超音波を送波するとともに、該送波によって被検体から反射された反射波を受信して受信信号を出力する複数の素子が配列された超音波プローブを用い、超音波プローブの各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定の送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を行い、送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて各素子によって受信された受信信号に基づいて、送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域を決定することを特徴とする。
【0018】
また、上記本発明の焦点情報決定方法においては、送信フォーカス位置に対応する受信信号に対して、複数の設定音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を施すことによって設定音速毎の被検体の深さ方向に延びるライン画像信号を取得し、設定音速毎のライン画像信号に基づいて被検体の深さ方向についての仮環境音速の分布を取得し、その取得した仮環境音速の分布に基づいて、焦点位置または焦点有効域を決定することができる。
【0019】
また、環境音速の分布のバラつきに基づいて、焦点位置または焦点有効域を決定することができる。
【0020】
また、環境音速の分布のバラつきが最小となる深さを実際の焦点位置として取得することができる。
【0021】
また、複数の送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を行い、各送信フォーカス位置への超音波の送波による受信信号に基づいて、各送信フォーカス位置の実際の焦点位置を決定するようにしてもよい。
【0022】
また、本発明の環境音速取得方法は、上記焦点情報決定方法により決定された焦点位置または焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、被検体内の任意の着目点の環境音速を取得することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の環境音速取得方法は、上記焦点情報決定方法により決定された複数の実際の焦点位置のそれぞれに対応する送信フォーカス位置への超音波の送波により取得された受信信号に基づいて、被検体内の任意の着目点の環境音速を取得することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の環境音速取得方法は、上記焦点情報決定方法により決定された焦点位置または焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境音速取得方法であって、仮環境音速を取得する際に用いるライン画像信号の深さ方向の範囲の方が環境音速を取得する際に用いる深さ方向の範囲よりも狭いことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の焦点情報決定装置は、被検体内に超音波を送波するとともに、その送波によって被検体から反射された反射波を受信して受信信号を出力する複数の素子が配列された超音波プローブと、超音波プローブの各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を行う送信制御部と、送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて各素子によって受信された受信信号に基づいて、送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域を決定する焦点情報決定部とを備えたことを特徴とする。
【0026】
また、上記本発明の焦点情報決定装置においては、送信フォーカス位置に対応する受信信号に対して、複数の設定音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を施すことによって設定音速毎の被検体の深さ方向に延びるライン画像信号を取得する受信制御部を設け、焦点情報決定部を、設定音速毎のライン画像信号に基づいて被検体の深さ方向についての仮環境音速の分布を取得し、その取得した仮環境音速の分布に基づいて、焦点位置または焦点有効域を決定するものとすることができる。
【0027】
また、焦点情報決定部を、仮環境音速の分布のバラつきに基づいて、焦点位置または焦点有効域を決定するものとすることができる。
【0028】
また、焦点情報決定部を、仮環境音速の分布のバラつきが最小となる深さを実際の焦点位置として取得するものとすることができる。
【0029】
また、送信制御部を、複数の送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を行うものとし、焦点情報決定部を、各送信フォーカス位置への超音波の送波による受信信号に基づいて、各送信フォーカス位置の実際の焦点位置を決定するものとできる。
【0030】
本発明の環境音速取得装置は、上記焦点情報決定装置と、焦点情報決定装置において決定された実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域に基づいて被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境速度取得部とを備えたことを特徴とする。
【0031】
本発明の環境音速取得装置は、上記焦点情報決定装置と、焦点情報決定装置において決定された複数の実際の焦点位置のそれぞれに対応する送信フォーカス位置への超音波の送波により取得された受信信号に基づいて、被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境速度取得部を備えたことを特徴とする。
【0032】
本発明の環境音速取得装置は、上記焦点情報決定装置と、焦点情報決定装置において決定された実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域に基づいて被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境音速取得部とを備え、焦点情報決定部において仮環境音速を取得する際に用いられるライン画像信号の深さ方向の範囲の方が、環境音速取得部において環境音速を取得する際に用いられる深さ方向の範囲よりも狭いことを特徴とする。
【0033】
また、上記本発明の環境音速取得装置においては、任意の着目点の指定の入力を受け付ける着目点入力部をさらに設けることができる。
【0034】
また、環境速度取得部によって取得された環境音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて超音波画像信号を生成する受信制御部を設けることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の焦点情報決定方法および装置並びに環境音速取得方法および装置によれば、超音波プローブの各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して複数の送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を送信フォーカス位置毎について行い、各送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて各素子によって受信された受信信号に基づいて、各送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置、または実際の焦点位置を含む有効域を送信フォーカス位置毎について決定するようにしたので、被検体内の任意の着目点を含む範囲に対応する送信フォーカス位置への超音波の送波に応じた受信信号に基づいて着目点の環境音速を高精度に取得することができる。
【0036】
また、上述したように送信フォーカスの設定音速を変化させてその都度、超音波を送波するような処理を行う必要がないので迅速に環境音速を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の超音波診断装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の超音波診断装置の一実施形態における有効域決定方法を説明するためのフローチャート
【図3】有効域を決定する際に用いられるラインを説明するための図
【図4】有効域決定方法を説明するための説明図
【図5】有効域決定方法を説明するための説明図
【図6】送信フォーカス位置毎の深さ方向についての環境音速の分布を示す図
【図7】送信フォーカス位置毎の環境音速の分布の標準偏差を示す図
【図8】本発明の超音波診断装置の一実施形態によって決定された有効域を模式的に示す図
【図9】受信焦点fとその有効域との距離r1,r2を説明するための図
【図10】環境音速の取得方法の一例を説明するための図
【図11】送信焦点と環境音速との関係を示す図
【図12】深さに対する環境音速の誤差の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の超音波診断装置の一実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態の超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【0039】
本実施形態の超音波診断装置1は、図1に示すように、超音波プローブ10、受信信号処理部12、送信制御部14、走査制御部16、受信制御部18、画像生成部20、焦点情報決定部22、環境音速取得部24、表示画像生成部26、モニタ28および入力部30を備えている。
【0040】
超音波プローブ10は、被検者の体内の診断部位に向けて超音波を送信するとともに体内で反射してきた超音波を受信するものである。本実施形態の超音波プローブ10は、1次元の超音波トランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサを備えており、各超音波トランスデューサは、例えばPZT等の圧電素子の両端に電極を形成した振動子によって構成されている。この電極は信号線によって受信信号処理部12および送信制御部14と接続されている。そして、この電極には、送信制御部14から出力された駆動パルス電圧信号に応じた電圧が印加され、振動子はこの電圧印加に応じて超音波を発生するものである。また、振動子は反射してきた超音波を受信すると電気信号を発生し、この電気信号を受信信号として受信信号処理部12に出力するものである。
【0041】
送信制御部14は、走査制御部16から出力された送信遅延時間に基づいて、超音波プローブ10の各超音波トランスデューサに対して駆動パルス電圧信号を出力し、上記送信遅延時間に応じた超音波を各超音波トランスデューサの振動子から送波させることによって、所定の焦点に収束するような超音波を超音波プローブ10から送波させるものである。
【0042】
受信信号処理部12は、超音波プローブ10の各超音波トランスデューサに対応して設けられた複数の増幅器および複数のA/D変換器を備えている。各超音波トランスデューサから出力された受信信号は、増幅器において増幅され、増幅器から出力されたアナログの受信信号は、A/D変換器によってデジタル信号の受信信号に変換され、そのデジタルの受信信号は受信制御部18に出力される。
【0043】
受信制御部18は、超音波プローブ10の複数の超音波トランスデューサから出力された複数の受信信号に対し、所定の受信遅延時間に基づいて受信フォーカス処理を施すことによって、超音波エコーの焦点が絞りこまれた整相加算信号を出力するものである。上記受信遅延時間は、被検体内の音速に基づいて設定されるものであるが、その設定方法については、後で詳述する。
【0044】
走査制御部16は、送信制御部14および受信制御部18に対し、送信遅延時間や受信遅延時間を出力し、送信フォーカス処理および受信フォーカス処理を制御するものである。
【0045】
画像生成部20は、受信制御部18から出力された整相加算信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報を表す超音波画像信号を生成するものである。
【0046】
焦点情報決定部22は、所定の送信フォーカスの位置に焦点をあわして超音波プローブ10から送波された超音波に応じて取得された受信信号に基づいて、実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む有効域を決定するものである。焦点位置または焦点位置を含む有効域の決定方法については後で詳述する。
【0047】
環境音速取得部24は、被検体内の任意の着目点に対して、近傍の焦点位置または着目点が存在する有効域を取得し、その焦点位置または有効域に対応する送信フォーカス位置への超音波の送波に応じた受信信号に基づいて着目点の環境音速を取得するものである。環境音速の取得方法については後で詳述する。
【0048】
表示画像生成部26は、画像生成部20から出力された超音波画像信号に基づいて表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ28に出力するものである。
【0049】
モニタ28は、入力された表示制御信号に基づいて被検体の超音波画像を表示したり、環境音速取得部24において取得された任意の着目点の環境音速を数値として表示したりするものである。
【0050】
入力部30は、種々の撮影条件や操作者による指示などの入力を受け付けるものであり、たとえば、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスによって構成されるものである。
【0051】
次に、本実施形態の超音波診断装置の作用について説明する。本実施形態の超音波診断装置においては、被検体内の超音波画像の表示中に、操作者が任意の着目点を指定するとその着目点についての環境音速を取得して表示するものであるが、まずは、被検体内の超音波画像の表示の作用について説明する。
【0052】
まず、走査制御部16から出力された送信遅延時間に応じた制御信号に基づいて、送信制御部14から超音波プローブ10の各超音波トランスデューサに対して、それぞれ駆動パルス電圧信号が出力される。このとき各超音波トランスデューサから送波される超音波が予め設定された焦点に収束するように、各駆動パルス電圧信号に対してそれぞれ異なる送信遅延時間が設定されている。なお、このとき用いられる送信遅延時間は、予め被検体内の環境音速を仮定して設定された仮定設定音速に基づいて算出された値である。
【0053】
そして、超音波プローブ10の各超音波トランスデューサの振動子は、上述した駆動パルス電圧信号を受けて機械的に振動し、これにより超音波が発生され、被検体に送波される。
【0054】
そして、各超音波トランスデューサから送波された超音波は被検体内を伝播し、その途中にある音響インピーダンスの不連続面で次々と反射し、この反射によるエコーが各超音波トランスデューサによって検出されて振動子が振動する。この振動によって各超音波トランスデューサの振動子から微弱な電気信号が発生し、この電気信号が受信信号として受信信号処理部12に出力される。
【0055】
そして、受信信号処理部12において、各超音波トランスデューサから出力された受信信号が増幅器によって増幅され、その増幅されたアナログ信号はA/D変換器によってデジタル信号の受信信号に変換されて受信制御部18に出力される。
【0056】
受信制御部18においては、複数の超音波トランスデューサから出力された複数の受信信号に対して走査制御部16から出力された所定の受信遅延時間に基づいて受信フォーカス処理が施されて整相加算信号が生成される。このとき走査制御部16から出力される受信遅延時間は、予め被検体内の環境音速を仮定して設定された仮定設定音速に基づいて算出された値であって、整相加算信号が被検体内の所定の焦点にあった信号となるように設定されたものである。
【0057】
そして、走査制御部16から出力される受信遅延時間が制御されることによって、被検体内の撮像範囲の各焦点の整相加算信号が受信制御部18により取得され、その整相加算信号は画像生成部20に順次出力される。
【0058】
画像生成部20は、入力された整相加算信号を順次保存し、被検体の断層画像情報を表す超音波画像信号を生成し、その超音波画像信号は表示画像生成部26に出力される。
【0059】
そして、表示画像生成部26においては、入力された超音波画像信号に基づいて表示制御信号が生成され、その表示制御信号はモニタ28に出力される。モニタ28は、入力された表示制御信号に基づいて被検体の超音波画像を表示する。
【0060】
そして、超音波プローブ10の各超音波トランスデューサからの送波が所定のフレームレートに応じて行われ、上述した作用が繰り返されることによって超音波画像が所定のフレームレートで連続して表示される。
【0061】
以上が、本実施形態の超音波診断装置において超音波画像を表示する作用の説明である。
【0062】
次に、上述したような被検体内の超音波画像の表示中に、操作者により指定された着目点の環境音速を取得して表示する作用について説明する。
【0063】
まず、操作者によりモニタ28において表示された超音波画像内における所定の着目点が操作者により入力部30を用いて指定される。そして、操作者によってその着目点の環境速度を表示したい旨の指示信号が入力部30によって受け付けられると、図2に示すフローチャートの処理が行われる。
【0064】
具体的には、まず、超音波プローブ10から送波される超音波の送信フォーカスが、予め設定されたNo.1の位置に設定され、そのNo.1の位置に応じた送信遅延時間に基づく駆動パルス電圧信号が送信制御部14から出力され、超音波プローブ10の各超音波トランスデューサから超音波が送波される(S10)。なお、ここでの送信遅延時間は、予め被検体内の環境音速を仮定して設定された仮定設定音速に基づいて算出された値である。
【0065】
また、本実施形態においては、送信フォーカスNoiとして、No.1〜No.8が予め走査制御部16に設定されており、具体的には、No.1=12mm、No.2=16mm、No.3=20mm、No.4=24mm、No.5=28mm、No.6=32mm、No.7=36mm、およびNo.8=40mmの深さに設定されている。
【0066】
そして、各超音波トランスデューサから送波された超音波の反射によるエコーが各超音波トランスデューサによって検出され、その受信信号が受信信号処理部12に出力され、増幅、A/D変換された後、受信制御部18により取得される(S12)。
【0067】
そして、受信制御部18は、予め設定された設定音速No.1に基づいて算出された受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を受信信号に施し、ラインNo.1の整相加算信号を算出し、画像生成部20に出力する(S14)。
【0068】
なお、本実施形態においては、受信遅延時間を算出するための設定音速Nokとして、No.1〜No.251が予め走査制御部16に設定されており、具体的には、設定音速No.1〜No.251は1400m/s〜1650m/sであり、各設定音速は1m/s間隔で設定されている。そして、走査制御部16は、この設定音速に基づく受信遅延時間を算出し受信制御部18に出力する。
【0069】
また、ラインNojは、図3に示すように、超音波プローブ10の所定の開口中心Cの超音波トランスデューサ10aを中心とした±8ライン幅のラインに対し、それぞれラインNo.1〜No.17が割り当てられている。
【0070】
次に、受信制御部18は、受信遅延時間を設定音速No.2に基づいて算出された受信遅延時間に変更する(S16,S18)。そして、その変更した受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を受信信号に施し、再びラインNo.1の整相加算信号を算出し、画像生成部20に出力する(S14)。
【0071】
そして、受信制御部18は、S14〜S18を繰り返して行うことによって、ラインNo.1について、設定音速1400m/s〜1650m/sに基づく受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理が施された整相加算信号をそれぞれ取得し、さらに包絡線検波を施して画像生成部20に出力する。
【0072】
すなわち、画像生成部20は、ラインNo.1に対応する1400m/s〜1650m/sの設定音速毎のライン画像信号を取得することになる。
【0073】
次に、受信制御部18は、受信フォーカス処理対象のラインをラインNo.2に変更する(S20)。そして、その変更したラインNo.2について、S14〜S18の処理を繰り返して行うことによって、画像生成部20は、ラインNo.2に対応する1400m/s〜1650m/sの設定音速毎のライン画像信号を取得する。
【0074】
そして、ラインNo.3〜ラインNo.17についても、S14〜S18の処理が繰り返して行われ(S22)、画像生成部20は、ラインNo.3〜ラインNo.17に対応する1400m/s〜1650m/sの設定音速毎のライン画像信号を取得する。
【0075】
このようにして、図4に示すように、ラインNo.1〜ラインNo17のライン画像信号からなる超音波画像信号が、1400m/s〜1650m/sの設定音速毎について生成され、画像生成部20によって取得される。
【0076】
そして、画像生成部20は、1400m/s〜1650m/sの設定音速毎の超音波画像信号を焦点情報決定部22に出力する。そして、焦点情報決定部22においては、入力された設定音速毎の超音波画像信号に基づいて、単位深さ毎の被検体の仮環境音速が算出される(S24)。
【0077】
具体的には、設定音速毎の超音波画像信号について、図4の左側に示すような、所定の単位深さ(点線四角で示す)のライン毎の画像強度の分布が取得され、そのライン毎の画像強度の加算値Σa(k)が算出される。なお、上記単位深さとしては、例えば20μm〜50μmである。この単位深さは、後述する環境音速を求める際に用いる深さよりも狭い範囲である。このように局所的な狭い範囲の画像強度に基づく仮環境音速を用いることによって、他の深さの画像強度の影響を受けない環境音速として、深さに対するその変化を高精度に捉えることができる。また、仮環境音速は短時間で求めることができる。
【0078】
そして、図5に示すように、1400m/s〜1650m/sの設定音速毎の加算値Σa(k)の分布が取得され、その加算値Σa(k)のうちの最大値が求められ、その最大値に対応する設定音速が被検体の仮環境音速として取得される。
【0079】
そして、深さが順次変更され、上記と同様の処理を行うことによって、単位深さ毎の仮環境音速が取得され、図6の一番上に示すような、送信フォーカスNo.1に対応する仮環境音速の深さに対する分布が取得される。
【0080】
次に、図6に示すような深さに対する仮環境音速の分布において、単位深さ毎の仮環境音速を取得して深さに対する仮環境音速のバラつきを測定する。具体的には、図6に示す仮環境音速の分布において、たとえば、所定の演算窓を深さ方向に順次走査してその演算窓内の仮環境音速の標準偏差を順次取得する。このようにして深さ方向に対する標準偏差を順次取得することによって、図7に示すような深さ方向に対する標準偏差の分布を取得することができる。なお、図7における一番左のグラフが、送信フォーカスをNo.1=12mmに設定したときの深さ方向に対する仮環境音速の標準偏差の分布である。
【0081】
そして、図7に示す深さ方向に対する仮環境音速の標準偏差が最小値のときの深さF1を、送信フォーカスNo.1に対応する実際の超音波の焦点位置として取得する(S26)。
【0082】
次に、超音波プローブ10から送波される超音波の送信フォーカスをNo.1からのNo.2の位置に変更する(S28,S30)。そして、S12〜S26までの処理を上記と同様にして行って送信フォーカスNo.2に対応する実際の超音波の焦点位置F2を取得する(S26)。
【0083】
そして、送信フォーカスNo.3〜No.8についてもS12〜S26までの処理が上記と同様にして行われ、送信フォーカスNo.3〜No.8に対応する実際の超音波の焦点位置F3〜F8が取得される。
【0084】
そして、焦点情報決定部22は、上述したようにして取得された実際の超音波の焦点位置F1〜F8に基づいて、各送信フォーカスに対応する有効域を決定する。具体的には、図8に示すように、焦点位置F1〜F8の中点C1〜C7を取得し、各中点間を有効域として決定する。すなわち、中点間C1−C2を送信フォーカスNo.2に対応する有効域R1とし、中点間C2−C3を送信フォーカスNo.3に対応する有効域R2とし、中点間C3−C4を送信フォーカスNo.4に対応する有効域R3とし、中点間C4−C5を送信フォーカスNo.5に対応する有効域R4とし、中点間C5−C6を送信フォーカスNo.6に対応する有効域R5とし、中点間C6−C7を送信フォーカスNo.7に対応する有効域R6として決定する。また、図8に示す有効域R0については、焦点位置F1と中点C1との間の深さを2倍した範囲とし、有効域R7については、焦点位置F8と中点C7との間の深さを2倍した範囲として決定する。
【0085】
なお、図8においては、全ての有効域の深さが同じに表現されているが、これは説明のために模式的に表現したものであり、実際にはこれらの深さは互いに異なるものとなり得るものである。
【0086】
そして、焦点情報決定部22は、上述したようにして決定した焦点位置または有効域の情報を環境音速取得部24に出力する。環境音速取得部24は、入力された焦点位置または有効域の情報に基づいて、操作者によって指定された着目点における被検体の環境音速を取得する。具体的には、たとえば、操作者によって指定された着目点が有効域R2の深さに存在する点である場合には、送信フォーカスNo.3のときに取得した各設定音速の超音波画像信号を取得し、各設定音速に関して上記着目点を中心に所定ライン幅、深さ幅の画像強度分布を取得し、その加算値が最大となる設定音速を着目点の環境音速として取得する。なお、上記所定の深さ幅としては、たとえば、3mm〜4mmである。
【0087】
また、着目点を中心とした所定深さ幅が、複数の送信フォーカス有効域を跨る場合は、各設定音速に関して各有効域に対応する送信フォーカスNoのときに取得した各有効域の超音波画像信号から、所定深さ幅に入る画像強度分布を加算し、加算値が最大となる設定音速を着目点の環境音速として取得する。
【0088】
そして、環境音速取得部24において取得された環境音速の情報は表示画像生成部26に出力され、表示画像生成部26は、入力された環境音速の数値を表す表示制御信号を生成してモニタ28に出力する。モニタ28は、入力された表示制御信号に基づいて、上記着目点の環境音速の数値を表示する。
【0089】
なお、操作者によって指定された着目点が、ラインNo.1〜ラインNo.17の範囲内にある場合には、上述したようにして既に取得されている各設定音速の超音波画像信号を取得し、上記と同様にして、その超音波画像信号に基づいて着目点の環境音速として取得することができるが、着目点がラインNo.1〜ラインNo.17の範囲内にない場合には、以下のようにして着目点の環境音速を取得する。
【0090】
まず、たとえば、操作者によって指定された着目点を中心とした着目範囲が有効域R2に属している場合には、環境音速取得部24は、送信フォーカスNo.3のときに受信制御部18によって取得された各超音波トランスデューサに対応する受信信号を読み出す。
【0091】
そして、環境音速取得部24は、その読み出した受信信号に対して、着目点を中心として17ライン×深さ3mm〜4mmの着目範囲内の点を焦点とする受信フォーカス処理を施し、上記着目範囲内の超音波画像信号を生成する。そして、環境音速取得部24は、1400m/s〜1650m/sの各設定音速に基づく受信遅延時間を用いて上記受信フォーカス処理をそれぞれ行い、設定音速毎の着目範囲の超音波画像信号を生成する。
【0092】
そして、環境音速取得部24は、設定音速毎の着目範囲の超音波画像信号の加算値を取得し、その設定音速毎の加算値のうち最大となる設定音速を着目点の環境音速として取得する。
【0093】
なお、着目点を中心とした着目範囲が、複数の有効域を跨る場合は、各有効域に対応する送信フォーカスのときに取得された各受信信号を読み出し、それらに対して各有効域の着目範囲内の点を焦点として各設定音速の受信フォーカス処理を施し、各有効域の着目範囲内の超音波画像信号を生成する。そして各有効域の着目範囲内の超音波画像信号を加算し、その設定音速毎の加算値のうち最大となる設定音速を着目点の環境音速として取得する。
【0094】
また、ここでは、設定音速毎の着目範囲の超音波画像信号の加算値を用いて環境音速を取得するようにしたが、環境音速を取得するための指標値は加算値に限らず、たとえば、設定音速毎の着目範囲の超音波画像信号の空間周波数スペクトルを取得し、その半値幅に基づいて環境音速を取得するようにしてもよい。環境音速を求めるために、画像強度や空間周波数スペクトルに基づく公知の指標値を用いることができる。
【0095】
また、上記実施形態の説明においては、送信フォーカス位置を設定する度にその送信フォーカス位置に対する実際の焦点位置を取得するようにしたが、これに限らず、予め各送信フォーカス位置の受信信号を全て取得しておき、その後、各送信フォーカス位置に対する実際の焦点位置を取得するようにしてもよい。このように、各送信フォーカス位置の受信信号を連続的に短時間で取得することで、被検体の動きによる誤差を低減する事ができる。
【0096】
また、上記実施形態においては、被検体内の超音波画像の表示中において操作者による着目点の指定を受け付け、その着目点を受け付けた時点から、焦点位置または有効域を決定し、その決定した焦点位置または有効域に基づいて環境音速を取得するようにしたが、これに限らず、たとえば、超音波画像診断の前から、予め焦点位置または有効域を決定しておくとともに、その焦点位置または有効域に対応する受信信号を予め記憶しておき、これらの予め設定された内容に基づいて環境音速を取得するようにしてもよい。なお、焦点位置または有効域の決定方法および環境音速の取得方法については、上記と同様である。
【0097】
また、上記実施形態の説明では、焦点情報決定部22によって決定された焦点位置または有効域に基づいて、着目点の環境音速を取得し、その環境音速を数値情報として表示するようにしたが、これに限らず、超音波画像の各座標に対応して多数設定した各着目点に対して、焦点情報決定部22によって決定された焦点位置または有効域に基づいて環境音速を取得し、その環境音速に基いて各着目点に対応する各座標を焦点とする受信フォーカス処理を施して超音波画像を生成するようにしてもよい。
【0098】
また、この場合、受信フォーカスを施す受信信号は、その焦点が属する有効域に対応する送信フォーカスのときに取得されたものであることが望ましいが、有効域の境界においては、使用する受信信号を切り替えることによる不連続を生ずる。たとえば、その焦点が、図11に示すような送信焦点近傍であっても干渉によって環境音速が変化してしまう場合には、上述した境界における不連続が顕著である。
【0099】
そこで、例えば、各座標に関して、それを挟む送信焦点を形成する2つの送信フォーカスNoのときに取得された2つの受信信号に対して、その座標を焦点とする受信フォーカス処理を施してそれぞれの超音波画像を生成し、それらをその受信焦点とそれを挟む2つの送信焦点との距離または受信焦点と有効域との距離に応じて、たとえば重みづけなどして合成しても良い。
【0100】
なお、受信焦点と有効域との距離としては、たとえば、受信焦点fが図9に示す位置にあるときには、受信焦点fが属する有効域R2と隣接する有効域R1との境界と受信焦点fとの距離r1と、受信焦点fが属する有効域R2と隣接する有効域R3との境界と受信焦点fとの距離r2を用いることができる。ただし、受信焦点と有効域との距離の設定方法については、上記に限らず、たとえば、境界の代わりに、境界より内側に遷移境界(たとえば、有効域の0.8倍などの位置)を設け、その遷移境界と受信焦点との距離を受信焦点と有効域との距離にしてもよい。
【0101】
環境音速の取得方法については、上述した実施形態の方法に限らず、たとえば各送信フォーカスの実際の焦点位置に基づいて、以下のようにして高精度な環境音速を取得することができる。
【0102】
たとえば、着目点に対して、それを挟む送信焦点を形成する2つの送信フォーカスNo.n,No.n+1のときに取得された2つの受信信号に対して、図10に示すように、それぞれ各設定音速に基づく受信フォーカス処理を施して着目点を中心とした着目範囲の超音波画像信号を生成し、それぞれ各深さの単位深さ毎に指標値V1(n),V2(n),V3(n)・・・と、V1(n+1),V2(n+1),V3(n+1)・・・とを算出する。そして、設定音速毎に、各深さの指標値として、2つの超音波画像からそれぞれ求めた各深さの指標値を、その深さと2つの送信焦点との距離、または深さとその有効域との距離に応じて加算した値V1,V2,V3・・・を算出する。そして各深さの指標値を着目範囲で加算した指標値を設定音速毎に算出し比較して環境音速を取得しても良い。なお、深さとその有効域との距離とは、図9に示した受信焦点とその有効域との距離の考え方と同様である。
【0103】
また、深さとその有効域との距離をr1,r2とすると、指標値V1,V2,V3・・・については、たとえば、以下の式に基づいて算出することができる。
【0104】
V={V(n)+f(r1)×V(n−1)+f(r2)×V(n+1)}/(1+f(r1)+f(r2))
ただし、f(r1),f(r2)は、r1,r2が大きくなると0に近づく1以下の値をとる関数である。
【0105】
このように、各送信フォーカスの実際の焦点位置が分かれば、着目点に対して、それを挟む送信焦点を形成する送信フォーカスの時に取得された受信信号から生成された超音波画像から算出された指標値を合成することにより、高精度な環境音速を取得することができる。ここで合成する量としては指標値に限らず、受信信号そのものでも良いし、もしくは上記実施形態の説明において算出した図6に示す単位深さ毎の仮環境音速でも良い。または、単位深さ毎の仮環境音速ではなく、着目点を中心とした所定ライン幅および深さ幅の超音波画像信号に基づいて求めた仮環境音速を用いるようにしてもよい。たとえば、着目点が、送信フォーカスNo.nと送信フォーカスNo.n+1に挟まれている場合、送信フォーカスNo.nのときの受信信号と送信フォーカスNo.n+1のときの受信信号とを用いて、それぞれ着目点を中心とした所定ライン幅および深さ幅の超音波画像を設定音速毎に生成する。そして、たとえばその設定音速毎の超音波画像のうち画素値の加算値が最大値となる超音波画像の設定音速を仮環境音速とすることによって、送信フォーカスNo.nに対応する仮環境音速と送信フォーカスNo.n+1に対応する仮環境音速とを求め、着目点と送信フォーカスNo.nとの距離および着目点と送信フォーカスNo.n+1との距離に応じて、各仮環境音速に重み付けなどして加算することによって実際の環境音速を取得するようにしてもよい。
【0106】
また、以下の方法で環境音速を取得しても良い。
【0107】
各送信フォーカスは、予め設定した仮定音速の下では、被検体の予め設定した位置に焦点を形成するように実施されている。従って、予め設定した位置と実際の焦点位置とのずれから、被検体の実際の環境音速を取得する事ができる。
【0108】
たとえば、予め仮定音速および焦点位置を1540m/sおよび20mmとして送信遅延時間を設定したとする。被検体の実際の環境音速が1540m/sより速い場合、その送信遅延時間によって形成される実焦点位置は20mmより浅くなる。また、実焦点位置からの反射波の受信時刻は実焦点位置までの往復の距離を実環境音速で割った時刻であるため、本受信時刻から環境音速1540m/sを仮定して換算される位置は実焦点位置より更に浅くなる。このように、被検体の実際の環境音速が1540m/sより速いと、実焦点位置が20mmより浅くなり、その受信信号から生成される超音波画像上の位置が更に浅くなる。
【0109】
逆に被検体の実際の環境音速が1540m/sより遅いと、実焦点位置が20mmより深くなり、その受信信号から生成される超音波画像上の位置が更に深くなる。このことを利用して、予め設定した焦点位置と実際の焦点位置とのずれから実際の環境音速を取得する事ができる。たとえば環境音速および焦点位置を1540m/s及び30mmとして設定した送信遅延時間の各素子駆動によって形成された焦点からの反射波の受信信号から生成された超音波画像上の実焦点位置が27mmであった場合には、以下のようにして実際の環境音速を取得することができる。
【0110】
まず、焦点の深さを超音波伝播時間に換算する。具体的には、焦点位置は仮定音速1540m/sで生成した超音波画像上の27mmであることから27[mm] / 1540000[mm/s]で伝播時間[s]に換算する。
【0111】
次に、各素子の送信遅延を求める。1540m/sで30mmの位置に送信焦点を形成するための送信遅延は一意に決まる。
【0112】
そして、次に、焦点から各素子への超音波伝播時間を求める。具体的には、上記で求めた超音波伝播時間と各素子の送信遅延とに基づいて、焦点から各素子への超音波伝播時間を取得する。
【0113】
そして、仮定の環境音速を設定し、その仮定の環境音速に基づいて焦点から各素子への仮超音波伝播時間を取得し、その仮超音波伝播時間と上記で求めた焦点から各素子への超音波伝播時間との誤差が最小となる仮定環境音速を真の環境音速として取得する。
【0114】
上述した手順により、実際の環境音速として約1620m/sを取得することができる。本方法では、実際の焦点位置における実際の環境音速のみを取得できるが、任意の着目点に対しては近傍の実焦点位置の実環境音速を割当てる、または補間するなどして取得する事ができる。
【符号の説明】
【0115】
1 超音波診断装置
10 超音波プローブ
10a 超音波トランスデューサ
12 受信信号処理部
14 送信制御部
16 走査制御部
18 受信制御部
20 画像生成部
22 焦点情報決定部
24 環境音速取得部
26 表示画像生成部
28 モニタ
30 入力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関するものであり、特に、超音波プローブから送波された超音波の実際の焦点位置、またはその焦点位置が存在する有効域を決定する焦点情報決定方法および装置並びに環境音速取得方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を用いて被検者の断層画像を取得して医療診断に供する超音波診断装置が提案されている。このような超音波診断装置においては、超音波画像の方位分解能を向上させるために、超音波プローブから超音波を送波する際には、超音波プローブの各素子から送波される各超音波に対して送信遅延時間を設定するいわゆる送信フォーカスが行われ、受信信号を取得する際には、各素子によって受信された各受信信号に対して受信遅延時間を設定するいわゆる受信フォーカスが行われている。
【0003】
そして、このような送信フォーカスおよび受信フォーカスを行う際には、対象となる診断部位の代表的な音速を仮定し、その仮定音速に基づいて上述した送信遅延時間および受信遅延時間が設定される。
【0004】
しかしながら、被検者の環境音速は一様ではなく組織によって異なり、仮定音速と環境音速が異なると画質が劣化するという問題が生じる。
【0005】
ここで、画質劣化の原因は、対象に送信焦点を適切に形成する送信遅延または対象から反射された超音波の各素子受信時刻に対して、送信フォーカスの送信遅延時間または受信フォーカスの受信遅延時間が異なるからである。
【0006】
なお、本願で言う環境音速とは、所定の対象に対して超音波を送信したときに、その対象から各素子までの距離と各素子の受信時刻とに基づいて決定される音速のことである。
【0007】
そして、従来、この環境音速と仮定音速とを一致させ、画質劣化を防ぐ試みがなされてきた。
【0008】
たとえば、特許文献1においては以下のような方法が提案されている。まず、所定の開口中心を中心とした所定幅の開口から標準的な設定音速で焦点Tに収束するように遅延させた超音波を送波する。
【0009】
そして、被検体からの反射波を超音波プローブの全素子で受信し、その信号に対して異なる設定音速で焦点P1と焦点P2とについてそれぞれ受信フォーカスを実施し、その各焦点に対応する設定音速毎のビームプロファイルを生成する。
【0010】
そして、各焦点のビームプロファイルにおいて、最も半値幅が狭いビームプロファイルが選択され、そのビームプロファイルに対応する設定音速が被検体のその部位の環境音速と推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−7045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の方法において、受信焦点P1、P2を環境音速を求める着目点と見ると、各着目点と送信焦点Tとの深さは異なっている。着目点がT近傍であれば良好な精度で環境音速は求まることもあるが、その距離が離れると環境音速の精度が劣化してしまう。特に、スペックルの場合には着目店の周囲からの干渉によって著しく精度が劣化し、環境音速を求めることができない場合もある。
【0013】
また、特許文献1に記載の方法において、送信焦点Tは標準的な設定音速で集束する深さであることから、環境音速と設定音速が異なる場合には送信焦点の深さがTと異なり、その場合、着目点と送信焦点との距離が離れ、環境音速精度が劣化し、求められない事もある。
【0014】
また、着目点が送信焦点Tの近傍であったとしても、干渉によって正確な環境音速を求められない場合がある。すなわち、送信波面は、焦点近傍において図11のようになるが、各深さにおいて無数の散乱点による反射により疑似的に送信波面と同一の反射波面が形成され、その結果、求められる環境音速に誤差を生じてしまう。具体的には、図11に示すように、送信焦点より浅い領域においては環境音速が速くなり、深い領域においては遅くなってしまう。図12は、上述したような環境音速の誤差が生じる場合における深さに対する環境音速をグラフに示したものである。
【0015】
このような問題を解決するために、着目点に対して受信フォーカスだけでなく、送信フォーカスの設定音速も変化させる方法が考えられるが、送信フォーカスの設定音速を変化させてその都度、超音波を送波するようにしたのでは膨大な送信回数が必要となり、環境音速を取得するまでに時間がかかり過ぎて処理効率の低下や診断効率の低下を招くことになる。
【0016】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、処理効率や診断効率の低下を招くことなく、良好に環境音速を取得することができる送信フォーカスの焦点情報決定方法および装置並びに環境音速取得方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の焦点情報決定方法は、被検体内に超音波を送波するとともに、該送波によって被検体から反射された反射波を受信して受信信号を出力する複数の素子が配列された超音波プローブを用い、超音波プローブの各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定の送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を行い、送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて各素子によって受信された受信信号に基づいて、送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域を決定することを特徴とする。
【0018】
また、上記本発明の焦点情報決定方法においては、送信フォーカス位置に対応する受信信号に対して、複数の設定音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を施すことによって設定音速毎の被検体の深さ方向に延びるライン画像信号を取得し、設定音速毎のライン画像信号に基づいて被検体の深さ方向についての仮環境音速の分布を取得し、その取得した仮環境音速の分布に基づいて、焦点位置または焦点有効域を決定することができる。
【0019】
また、環境音速の分布のバラつきに基づいて、焦点位置または焦点有効域を決定することができる。
【0020】
また、環境音速の分布のバラつきが最小となる深さを実際の焦点位置として取得することができる。
【0021】
また、複数の送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を行い、各送信フォーカス位置への超音波の送波による受信信号に基づいて、各送信フォーカス位置の実際の焦点位置を決定するようにしてもよい。
【0022】
また、本発明の環境音速取得方法は、上記焦点情報決定方法により決定された焦点位置または焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、被検体内の任意の着目点の環境音速を取得することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の環境音速取得方法は、上記焦点情報決定方法により決定された複数の実際の焦点位置のそれぞれに対応する送信フォーカス位置への超音波の送波により取得された受信信号に基づいて、被検体内の任意の着目点の環境音速を取得することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の環境音速取得方法は、上記焦点情報決定方法により決定された焦点位置または焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境音速取得方法であって、仮環境音速を取得する際に用いるライン画像信号の深さ方向の範囲の方が環境音速を取得する際に用いる深さ方向の範囲よりも狭いことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の焦点情報決定装置は、被検体内に超音波を送波するとともに、その送波によって被検体から反射された反射波を受信して受信信号を出力する複数の素子が配列された超音波プローブと、超音波プローブの各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を行う送信制御部と、送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて各素子によって受信された受信信号に基づいて、送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域を決定する焦点情報決定部とを備えたことを特徴とする。
【0026】
また、上記本発明の焦点情報決定装置においては、送信フォーカス位置に対応する受信信号に対して、複数の設定音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を施すことによって設定音速毎の被検体の深さ方向に延びるライン画像信号を取得する受信制御部を設け、焦点情報決定部を、設定音速毎のライン画像信号に基づいて被検体の深さ方向についての仮環境音速の分布を取得し、その取得した仮環境音速の分布に基づいて、焦点位置または焦点有効域を決定するものとすることができる。
【0027】
また、焦点情報決定部を、仮環境音速の分布のバラつきに基づいて、焦点位置または焦点有効域を決定するものとすることができる。
【0028】
また、焦点情報決定部を、仮環境音速の分布のバラつきが最小となる深さを実際の焦点位置として取得するものとすることができる。
【0029】
また、送信制御部を、複数の送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を行うものとし、焦点情報決定部を、各送信フォーカス位置への超音波の送波による受信信号に基づいて、各送信フォーカス位置の実際の焦点位置を決定するものとできる。
【0030】
本発明の環境音速取得装置は、上記焦点情報決定装置と、焦点情報決定装置において決定された実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域に基づいて被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境速度取得部とを備えたことを特徴とする。
【0031】
本発明の環境音速取得装置は、上記焦点情報決定装置と、焦点情報決定装置において決定された複数の実際の焦点位置のそれぞれに対応する送信フォーカス位置への超音波の送波により取得された受信信号に基づいて、被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境速度取得部を備えたことを特徴とする。
【0032】
本発明の環境音速取得装置は、上記焦点情報決定装置と、焦点情報決定装置において決定された実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域に基づいて被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境音速取得部とを備え、焦点情報決定部において仮環境音速を取得する際に用いられるライン画像信号の深さ方向の範囲の方が、環境音速取得部において環境音速を取得する際に用いられる深さ方向の範囲よりも狭いことを特徴とする。
【0033】
また、上記本発明の環境音速取得装置においては、任意の着目点の指定の入力を受け付ける着目点入力部をさらに設けることができる。
【0034】
また、環境速度取得部によって取得された環境音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて超音波画像信号を生成する受信制御部を設けることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の焦点情報決定方法および装置並びに環境音速取得方法および装置によれば、超音波プローブの各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して複数の送信フォーカス位置に焦点が合わせられた超音波の送波を送信フォーカス位置毎について行い、各送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて各素子によって受信された受信信号に基づいて、各送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置、または実際の焦点位置を含む有効域を送信フォーカス位置毎について決定するようにしたので、被検体内の任意の着目点を含む範囲に対応する送信フォーカス位置への超音波の送波に応じた受信信号に基づいて着目点の環境音速を高精度に取得することができる。
【0036】
また、上述したように送信フォーカスの設定音速を変化させてその都度、超音波を送波するような処理を行う必要がないので迅速に環境音速を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の超音波診断装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の超音波診断装置の一実施形態における有効域決定方法を説明するためのフローチャート
【図3】有効域を決定する際に用いられるラインを説明するための図
【図4】有効域決定方法を説明するための説明図
【図5】有効域決定方法を説明するための説明図
【図6】送信フォーカス位置毎の深さ方向についての環境音速の分布を示す図
【図7】送信フォーカス位置毎の環境音速の分布の標準偏差を示す図
【図8】本発明の超音波診断装置の一実施形態によって決定された有効域を模式的に示す図
【図9】受信焦点fとその有効域との距離r1,r2を説明するための図
【図10】環境音速の取得方法の一例を説明するための図
【図11】送信焦点と環境音速との関係を示す図
【図12】深さに対する環境音速の誤差の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の超音波診断装置の一実施形態について詳細に説明する。図1は、本実施形態の超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【0039】
本実施形態の超音波診断装置1は、図1に示すように、超音波プローブ10、受信信号処理部12、送信制御部14、走査制御部16、受信制御部18、画像生成部20、焦点情報決定部22、環境音速取得部24、表示画像生成部26、モニタ28および入力部30を備えている。
【0040】
超音波プローブ10は、被検者の体内の診断部位に向けて超音波を送信するとともに体内で反射してきた超音波を受信するものである。本実施形態の超音波プローブ10は、1次元の超音波トランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサを備えており、各超音波トランスデューサは、例えばPZT等の圧電素子の両端に電極を形成した振動子によって構成されている。この電極は信号線によって受信信号処理部12および送信制御部14と接続されている。そして、この電極には、送信制御部14から出力された駆動パルス電圧信号に応じた電圧が印加され、振動子はこの電圧印加に応じて超音波を発生するものである。また、振動子は反射してきた超音波を受信すると電気信号を発生し、この電気信号を受信信号として受信信号処理部12に出力するものである。
【0041】
送信制御部14は、走査制御部16から出力された送信遅延時間に基づいて、超音波プローブ10の各超音波トランスデューサに対して駆動パルス電圧信号を出力し、上記送信遅延時間に応じた超音波を各超音波トランスデューサの振動子から送波させることによって、所定の焦点に収束するような超音波を超音波プローブ10から送波させるものである。
【0042】
受信信号処理部12は、超音波プローブ10の各超音波トランスデューサに対応して設けられた複数の増幅器および複数のA/D変換器を備えている。各超音波トランスデューサから出力された受信信号は、増幅器において増幅され、増幅器から出力されたアナログの受信信号は、A/D変換器によってデジタル信号の受信信号に変換され、そのデジタルの受信信号は受信制御部18に出力される。
【0043】
受信制御部18は、超音波プローブ10の複数の超音波トランスデューサから出力された複数の受信信号に対し、所定の受信遅延時間に基づいて受信フォーカス処理を施すことによって、超音波エコーの焦点が絞りこまれた整相加算信号を出力するものである。上記受信遅延時間は、被検体内の音速に基づいて設定されるものであるが、その設定方法については、後で詳述する。
【0044】
走査制御部16は、送信制御部14および受信制御部18に対し、送信遅延時間や受信遅延時間を出力し、送信フォーカス処理および受信フォーカス処理を制御するものである。
【0045】
画像生成部20は、受信制御部18から出力された整相加算信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報を表す超音波画像信号を生成するものである。
【0046】
焦点情報決定部22は、所定の送信フォーカスの位置に焦点をあわして超音波プローブ10から送波された超音波に応じて取得された受信信号に基づいて、実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む有効域を決定するものである。焦点位置または焦点位置を含む有効域の決定方法については後で詳述する。
【0047】
環境音速取得部24は、被検体内の任意の着目点に対して、近傍の焦点位置または着目点が存在する有効域を取得し、その焦点位置または有効域に対応する送信フォーカス位置への超音波の送波に応じた受信信号に基づいて着目点の環境音速を取得するものである。環境音速の取得方法については後で詳述する。
【0048】
表示画像生成部26は、画像生成部20から出力された超音波画像信号に基づいて表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ28に出力するものである。
【0049】
モニタ28は、入力された表示制御信号に基づいて被検体の超音波画像を表示したり、環境音速取得部24において取得された任意の着目点の環境音速を数値として表示したりするものである。
【0050】
入力部30は、種々の撮影条件や操作者による指示などの入力を受け付けるものであり、たとえば、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスによって構成されるものである。
【0051】
次に、本実施形態の超音波診断装置の作用について説明する。本実施形態の超音波診断装置においては、被検体内の超音波画像の表示中に、操作者が任意の着目点を指定するとその着目点についての環境音速を取得して表示するものであるが、まずは、被検体内の超音波画像の表示の作用について説明する。
【0052】
まず、走査制御部16から出力された送信遅延時間に応じた制御信号に基づいて、送信制御部14から超音波プローブ10の各超音波トランスデューサに対して、それぞれ駆動パルス電圧信号が出力される。このとき各超音波トランスデューサから送波される超音波が予め設定された焦点に収束するように、各駆動パルス電圧信号に対してそれぞれ異なる送信遅延時間が設定されている。なお、このとき用いられる送信遅延時間は、予め被検体内の環境音速を仮定して設定された仮定設定音速に基づいて算出された値である。
【0053】
そして、超音波プローブ10の各超音波トランスデューサの振動子は、上述した駆動パルス電圧信号を受けて機械的に振動し、これにより超音波が発生され、被検体に送波される。
【0054】
そして、各超音波トランスデューサから送波された超音波は被検体内を伝播し、その途中にある音響インピーダンスの不連続面で次々と反射し、この反射によるエコーが各超音波トランスデューサによって検出されて振動子が振動する。この振動によって各超音波トランスデューサの振動子から微弱な電気信号が発生し、この電気信号が受信信号として受信信号処理部12に出力される。
【0055】
そして、受信信号処理部12において、各超音波トランスデューサから出力された受信信号が増幅器によって増幅され、その増幅されたアナログ信号はA/D変換器によってデジタル信号の受信信号に変換されて受信制御部18に出力される。
【0056】
受信制御部18においては、複数の超音波トランスデューサから出力された複数の受信信号に対して走査制御部16から出力された所定の受信遅延時間に基づいて受信フォーカス処理が施されて整相加算信号が生成される。このとき走査制御部16から出力される受信遅延時間は、予め被検体内の環境音速を仮定して設定された仮定設定音速に基づいて算出された値であって、整相加算信号が被検体内の所定の焦点にあった信号となるように設定されたものである。
【0057】
そして、走査制御部16から出力される受信遅延時間が制御されることによって、被検体内の撮像範囲の各焦点の整相加算信号が受信制御部18により取得され、その整相加算信号は画像生成部20に順次出力される。
【0058】
画像生成部20は、入力された整相加算信号を順次保存し、被検体の断層画像情報を表す超音波画像信号を生成し、その超音波画像信号は表示画像生成部26に出力される。
【0059】
そして、表示画像生成部26においては、入力された超音波画像信号に基づいて表示制御信号が生成され、その表示制御信号はモニタ28に出力される。モニタ28は、入力された表示制御信号に基づいて被検体の超音波画像を表示する。
【0060】
そして、超音波プローブ10の各超音波トランスデューサからの送波が所定のフレームレートに応じて行われ、上述した作用が繰り返されることによって超音波画像が所定のフレームレートで連続して表示される。
【0061】
以上が、本実施形態の超音波診断装置において超音波画像を表示する作用の説明である。
【0062】
次に、上述したような被検体内の超音波画像の表示中に、操作者により指定された着目点の環境音速を取得して表示する作用について説明する。
【0063】
まず、操作者によりモニタ28において表示された超音波画像内における所定の着目点が操作者により入力部30を用いて指定される。そして、操作者によってその着目点の環境速度を表示したい旨の指示信号が入力部30によって受け付けられると、図2に示すフローチャートの処理が行われる。
【0064】
具体的には、まず、超音波プローブ10から送波される超音波の送信フォーカスが、予め設定されたNo.1の位置に設定され、そのNo.1の位置に応じた送信遅延時間に基づく駆動パルス電圧信号が送信制御部14から出力され、超音波プローブ10の各超音波トランスデューサから超音波が送波される(S10)。なお、ここでの送信遅延時間は、予め被検体内の環境音速を仮定して設定された仮定設定音速に基づいて算出された値である。
【0065】
また、本実施形態においては、送信フォーカスNoiとして、No.1〜No.8が予め走査制御部16に設定されており、具体的には、No.1=12mm、No.2=16mm、No.3=20mm、No.4=24mm、No.5=28mm、No.6=32mm、No.7=36mm、およびNo.8=40mmの深さに設定されている。
【0066】
そして、各超音波トランスデューサから送波された超音波の反射によるエコーが各超音波トランスデューサによって検出され、その受信信号が受信信号処理部12に出力され、増幅、A/D変換された後、受信制御部18により取得される(S12)。
【0067】
そして、受信制御部18は、予め設定された設定音速No.1に基づいて算出された受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を受信信号に施し、ラインNo.1の整相加算信号を算出し、画像生成部20に出力する(S14)。
【0068】
なお、本実施形態においては、受信遅延時間を算出するための設定音速Nokとして、No.1〜No.251が予め走査制御部16に設定されており、具体的には、設定音速No.1〜No.251は1400m/s〜1650m/sであり、各設定音速は1m/s間隔で設定されている。そして、走査制御部16は、この設定音速に基づく受信遅延時間を算出し受信制御部18に出力する。
【0069】
また、ラインNojは、図3に示すように、超音波プローブ10の所定の開口中心Cの超音波トランスデューサ10aを中心とした±8ライン幅のラインに対し、それぞれラインNo.1〜No.17が割り当てられている。
【0070】
次に、受信制御部18は、受信遅延時間を設定音速No.2に基づいて算出された受信遅延時間に変更する(S16,S18)。そして、その変更した受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を受信信号に施し、再びラインNo.1の整相加算信号を算出し、画像生成部20に出力する(S14)。
【0071】
そして、受信制御部18は、S14〜S18を繰り返して行うことによって、ラインNo.1について、設定音速1400m/s〜1650m/sに基づく受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理が施された整相加算信号をそれぞれ取得し、さらに包絡線検波を施して画像生成部20に出力する。
【0072】
すなわち、画像生成部20は、ラインNo.1に対応する1400m/s〜1650m/sの設定音速毎のライン画像信号を取得することになる。
【0073】
次に、受信制御部18は、受信フォーカス処理対象のラインをラインNo.2に変更する(S20)。そして、その変更したラインNo.2について、S14〜S18の処理を繰り返して行うことによって、画像生成部20は、ラインNo.2に対応する1400m/s〜1650m/sの設定音速毎のライン画像信号を取得する。
【0074】
そして、ラインNo.3〜ラインNo.17についても、S14〜S18の処理が繰り返して行われ(S22)、画像生成部20は、ラインNo.3〜ラインNo.17に対応する1400m/s〜1650m/sの設定音速毎のライン画像信号を取得する。
【0075】
このようにして、図4に示すように、ラインNo.1〜ラインNo17のライン画像信号からなる超音波画像信号が、1400m/s〜1650m/sの設定音速毎について生成され、画像生成部20によって取得される。
【0076】
そして、画像生成部20は、1400m/s〜1650m/sの設定音速毎の超音波画像信号を焦点情報決定部22に出力する。そして、焦点情報決定部22においては、入力された設定音速毎の超音波画像信号に基づいて、単位深さ毎の被検体の仮環境音速が算出される(S24)。
【0077】
具体的には、設定音速毎の超音波画像信号について、図4の左側に示すような、所定の単位深さ(点線四角で示す)のライン毎の画像強度の分布が取得され、そのライン毎の画像強度の加算値Σa(k)が算出される。なお、上記単位深さとしては、例えば20μm〜50μmである。この単位深さは、後述する環境音速を求める際に用いる深さよりも狭い範囲である。このように局所的な狭い範囲の画像強度に基づく仮環境音速を用いることによって、他の深さの画像強度の影響を受けない環境音速として、深さに対するその変化を高精度に捉えることができる。また、仮環境音速は短時間で求めることができる。
【0078】
そして、図5に示すように、1400m/s〜1650m/sの設定音速毎の加算値Σa(k)の分布が取得され、その加算値Σa(k)のうちの最大値が求められ、その最大値に対応する設定音速が被検体の仮環境音速として取得される。
【0079】
そして、深さが順次変更され、上記と同様の処理を行うことによって、単位深さ毎の仮環境音速が取得され、図6の一番上に示すような、送信フォーカスNo.1に対応する仮環境音速の深さに対する分布が取得される。
【0080】
次に、図6に示すような深さに対する仮環境音速の分布において、単位深さ毎の仮環境音速を取得して深さに対する仮環境音速のバラつきを測定する。具体的には、図6に示す仮環境音速の分布において、たとえば、所定の演算窓を深さ方向に順次走査してその演算窓内の仮環境音速の標準偏差を順次取得する。このようにして深さ方向に対する標準偏差を順次取得することによって、図7に示すような深さ方向に対する標準偏差の分布を取得することができる。なお、図7における一番左のグラフが、送信フォーカスをNo.1=12mmに設定したときの深さ方向に対する仮環境音速の標準偏差の分布である。
【0081】
そして、図7に示す深さ方向に対する仮環境音速の標準偏差が最小値のときの深さF1を、送信フォーカスNo.1に対応する実際の超音波の焦点位置として取得する(S26)。
【0082】
次に、超音波プローブ10から送波される超音波の送信フォーカスをNo.1からのNo.2の位置に変更する(S28,S30)。そして、S12〜S26までの処理を上記と同様にして行って送信フォーカスNo.2に対応する実際の超音波の焦点位置F2を取得する(S26)。
【0083】
そして、送信フォーカスNo.3〜No.8についてもS12〜S26までの処理が上記と同様にして行われ、送信フォーカスNo.3〜No.8に対応する実際の超音波の焦点位置F3〜F8が取得される。
【0084】
そして、焦点情報決定部22は、上述したようにして取得された実際の超音波の焦点位置F1〜F8に基づいて、各送信フォーカスに対応する有効域を決定する。具体的には、図8に示すように、焦点位置F1〜F8の中点C1〜C7を取得し、各中点間を有効域として決定する。すなわち、中点間C1−C2を送信フォーカスNo.2に対応する有効域R1とし、中点間C2−C3を送信フォーカスNo.3に対応する有効域R2とし、中点間C3−C4を送信フォーカスNo.4に対応する有効域R3とし、中点間C4−C5を送信フォーカスNo.5に対応する有効域R4とし、中点間C5−C6を送信フォーカスNo.6に対応する有効域R5とし、中点間C6−C7を送信フォーカスNo.7に対応する有効域R6として決定する。また、図8に示す有効域R0については、焦点位置F1と中点C1との間の深さを2倍した範囲とし、有効域R7については、焦点位置F8と中点C7との間の深さを2倍した範囲として決定する。
【0085】
なお、図8においては、全ての有効域の深さが同じに表現されているが、これは説明のために模式的に表現したものであり、実際にはこれらの深さは互いに異なるものとなり得るものである。
【0086】
そして、焦点情報決定部22は、上述したようにして決定した焦点位置または有効域の情報を環境音速取得部24に出力する。環境音速取得部24は、入力された焦点位置または有効域の情報に基づいて、操作者によって指定された着目点における被検体の環境音速を取得する。具体的には、たとえば、操作者によって指定された着目点が有効域R2の深さに存在する点である場合には、送信フォーカスNo.3のときに取得した各設定音速の超音波画像信号を取得し、各設定音速に関して上記着目点を中心に所定ライン幅、深さ幅の画像強度分布を取得し、その加算値が最大となる設定音速を着目点の環境音速として取得する。なお、上記所定の深さ幅としては、たとえば、3mm〜4mmである。
【0087】
また、着目点を中心とした所定深さ幅が、複数の送信フォーカス有効域を跨る場合は、各設定音速に関して各有効域に対応する送信フォーカスNoのときに取得した各有効域の超音波画像信号から、所定深さ幅に入る画像強度分布を加算し、加算値が最大となる設定音速を着目点の環境音速として取得する。
【0088】
そして、環境音速取得部24において取得された環境音速の情報は表示画像生成部26に出力され、表示画像生成部26は、入力された環境音速の数値を表す表示制御信号を生成してモニタ28に出力する。モニタ28は、入力された表示制御信号に基づいて、上記着目点の環境音速の数値を表示する。
【0089】
なお、操作者によって指定された着目点が、ラインNo.1〜ラインNo.17の範囲内にある場合には、上述したようにして既に取得されている各設定音速の超音波画像信号を取得し、上記と同様にして、その超音波画像信号に基づいて着目点の環境音速として取得することができるが、着目点がラインNo.1〜ラインNo.17の範囲内にない場合には、以下のようにして着目点の環境音速を取得する。
【0090】
まず、たとえば、操作者によって指定された着目点を中心とした着目範囲が有効域R2に属している場合には、環境音速取得部24は、送信フォーカスNo.3のときに受信制御部18によって取得された各超音波トランスデューサに対応する受信信号を読み出す。
【0091】
そして、環境音速取得部24は、その読み出した受信信号に対して、着目点を中心として17ライン×深さ3mm〜4mmの着目範囲内の点を焦点とする受信フォーカス処理を施し、上記着目範囲内の超音波画像信号を生成する。そして、環境音速取得部24は、1400m/s〜1650m/sの各設定音速に基づく受信遅延時間を用いて上記受信フォーカス処理をそれぞれ行い、設定音速毎の着目範囲の超音波画像信号を生成する。
【0092】
そして、環境音速取得部24は、設定音速毎の着目範囲の超音波画像信号の加算値を取得し、その設定音速毎の加算値のうち最大となる設定音速を着目点の環境音速として取得する。
【0093】
なお、着目点を中心とした着目範囲が、複数の有効域を跨る場合は、各有効域に対応する送信フォーカスのときに取得された各受信信号を読み出し、それらに対して各有効域の着目範囲内の点を焦点として各設定音速の受信フォーカス処理を施し、各有効域の着目範囲内の超音波画像信号を生成する。そして各有効域の着目範囲内の超音波画像信号を加算し、その設定音速毎の加算値のうち最大となる設定音速を着目点の環境音速として取得する。
【0094】
また、ここでは、設定音速毎の着目範囲の超音波画像信号の加算値を用いて環境音速を取得するようにしたが、環境音速を取得するための指標値は加算値に限らず、たとえば、設定音速毎の着目範囲の超音波画像信号の空間周波数スペクトルを取得し、その半値幅に基づいて環境音速を取得するようにしてもよい。環境音速を求めるために、画像強度や空間周波数スペクトルに基づく公知の指標値を用いることができる。
【0095】
また、上記実施形態の説明においては、送信フォーカス位置を設定する度にその送信フォーカス位置に対する実際の焦点位置を取得するようにしたが、これに限らず、予め各送信フォーカス位置の受信信号を全て取得しておき、その後、各送信フォーカス位置に対する実際の焦点位置を取得するようにしてもよい。このように、各送信フォーカス位置の受信信号を連続的に短時間で取得することで、被検体の動きによる誤差を低減する事ができる。
【0096】
また、上記実施形態においては、被検体内の超音波画像の表示中において操作者による着目点の指定を受け付け、その着目点を受け付けた時点から、焦点位置または有効域を決定し、その決定した焦点位置または有効域に基づいて環境音速を取得するようにしたが、これに限らず、たとえば、超音波画像診断の前から、予め焦点位置または有効域を決定しておくとともに、その焦点位置または有効域に対応する受信信号を予め記憶しておき、これらの予め設定された内容に基づいて環境音速を取得するようにしてもよい。なお、焦点位置または有効域の決定方法および環境音速の取得方法については、上記と同様である。
【0097】
また、上記実施形態の説明では、焦点情報決定部22によって決定された焦点位置または有効域に基づいて、着目点の環境音速を取得し、その環境音速を数値情報として表示するようにしたが、これに限らず、超音波画像の各座標に対応して多数設定した各着目点に対して、焦点情報決定部22によって決定された焦点位置または有効域に基づいて環境音速を取得し、その環境音速に基いて各着目点に対応する各座標を焦点とする受信フォーカス処理を施して超音波画像を生成するようにしてもよい。
【0098】
また、この場合、受信フォーカスを施す受信信号は、その焦点が属する有効域に対応する送信フォーカスのときに取得されたものであることが望ましいが、有効域の境界においては、使用する受信信号を切り替えることによる不連続を生ずる。たとえば、その焦点が、図11に示すような送信焦点近傍であっても干渉によって環境音速が変化してしまう場合には、上述した境界における不連続が顕著である。
【0099】
そこで、例えば、各座標に関して、それを挟む送信焦点を形成する2つの送信フォーカスNoのときに取得された2つの受信信号に対して、その座標を焦点とする受信フォーカス処理を施してそれぞれの超音波画像を生成し、それらをその受信焦点とそれを挟む2つの送信焦点との距離または受信焦点と有効域との距離に応じて、たとえば重みづけなどして合成しても良い。
【0100】
なお、受信焦点と有効域との距離としては、たとえば、受信焦点fが図9に示す位置にあるときには、受信焦点fが属する有効域R2と隣接する有効域R1との境界と受信焦点fとの距離r1と、受信焦点fが属する有効域R2と隣接する有効域R3との境界と受信焦点fとの距離r2を用いることができる。ただし、受信焦点と有効域との距離の設定方法については、上記に限らず、たとえば、境界の代わりに、境界より内側に遷移境界(たとえば、有効域の0.8倍などの位置)を設け、その遷移境界と受信焦点との距離を受信焦点と有効域との距離にしてもよい。
【0101】
環境音速の取得方法については、上述した実施形態の方法に限らず、たとえば各送信フォーカスの実際の焦点位置に基づいて、以下のようにして高精度な環境音速を取得することができる。
【0102】
たとえば、着目点に対して、それを挟む送信焦点を形成する2つの送信フォーカスNo.n,No.n+1のときに取得された2つの受信信号に対して、図10に示すように、それぞれ各設定音速に基づく受信フォーカス処理を施して着目点を中心とした着目範囲の超音波画像信号を生成し、それぞれ各深さの単位深さ毎に指標値V1(n),V2(n),V3(n)・・・と、V1(n+1),V2(n+1),V3(n+1)・・・とを算出する。そして、設定音速毎に、各深さの指標値として、2つの超音波画像からそれぞれ求めた各深さの指標値を、その深さと2つの送信焦点との距離、または深さとその有効域との距離に応じて加算した値V1,V2,V3・・・を算出する。そして各深さの指標値を着目範囲で加算した指標値を設定音速毎に算出し比較して環境音速を取得しても良い。なお、深さとその有効域との距離とは、図9に示した受信焦点とその有効域との距離の考え方と同様である。
【0103】
また、深さとその有効域との距離をr1,r2とすると、指標値V1,V2,V3・・・については、たとえば、以下の式に基づいて算出することができる。
【0104】
V={V(n)+f(r1)×V(n−1)+f(r2)×V(n+1)}/(1+f(r1)+f(r2))
ただし、f(r1),f(r2)は、r1,r2が大きくなると0に近づく1以下の値をとる関数である。
【0105】
このように、各送信フォーカスの実際の焦点位置が分かれば、着目点に対して、それを挟む送信焦点を形成する送信フォーカスの時に取得された受信信号から生成された超音波画像から算出された指標値を合成することにより、高精度な環境音速を取得することができる。ここで合成する量としては指標値に限らず、受信信号そのものでも良いし、もしくは上記実施形態の説明において算出した図6に示す単位深さ毎の仮環境音速でも良い。または、単位深さ毎の仮環境音速ではなく、着目点を中心とした所定ライン幅および深さ幅の超音波画像信号に基づいて求めた仮環境音速を用いるようにしてもよい。たとえば、着目点が、送信フォーカスNo.nと送信フォーカスNo.n+1に挟まれている場合、送信フォーカスNo.nのときの受信信号と送信フォーカスNo.n+1のときの受信信号とを用いて、それぞれ着目点を中心とした所定ライン幅および深さ幅の超音波画像を設定音速毎に生成する。そして、たとえばその設定音速毎の超音波画像のうち画素値の加算値が最大値となる超音波画像の設定音速を仮環境音速とすることによって、送信フォーカスNo.nに対応する仮環境音速と送信フォーカスNo.n+1に対応する仮環境音速とを求め、着目点と送信フォーカスNo.nとの距離および着目点と送信フォーカスNo.n+1との距離に応じて、各仮環境音速に重み付けなどして加算することによって実際の環境音速を取得するようにしてもよい。
【0106】
また、以下の方法で環境音速を取得しても良い。
【0107】
各送信フォーカスは、予め設定した仮定音速の下では、被検体の予め設定した位置に焦点を形成するように実施されている。従って、予め設定した位置と実際の焦点位置とのずれから、被検体の実際の環境音速を取得する事ができる。
【0108】
たとえば、予め仮定音速および焦点位置を1540m/sおよび20mmとして送信遅延時間を設定したとする。被検体の実際の環境音速が1540m/sより速い場合、その送信遅延時間によって形成される実焦点位置は20mmより浅くなる。また、実焦点位置からの反射波の受信時刻は実焦点位置までの往復の距離を実環境音速で割った時刻であるため、本受信時刻から環境音速1540m/sを仮定して換算される位置は実焦点位置より更に浅くなる。このように、被検体の実際の環境音速が1540m/sより速いと、実焦点位置が20mmより浅くなり、その受信信号から生成される超音波画像上の位置が更に浅くなる。
【0109】
逆に被検体の実際の環境音速が1540m/sより遅いと、実焦点位置が20mmより深くなり、その受信信号から生成される超音波画像上の位置が更に深くなる。このことを利用して、予め設定した焦点位置と実際の焦点位置とのずれから実際の環境音速を取得する事ができる。たとえば環境音速および焦点位置を1540m/s及び30mmとして設定した送信遅延時間の各素子駆動によって形成された焦点からの反射波の受信信号から生成された超音波画像上の実焦点位置が27mmであった場合には、以下のようにして実際の環境音速を取得することができる。
【0110】
まず、焦点の深さを超音波伝播時間に換算する。具体的には、焦点位置は仮定音速1540m/sで生成した超音波画像上の27mmであることから27[mm] / 1540000[mm/s]で伝播時間[s]に換算する。
【0111】
次に、各素子の送信遅延を求める。1540m/sで30mmの位置に送信焦点を形成するための送信遅延は一意に決まる。
【0112】
そして、次に、焦点から各素子への超音波伝播時間を求める。具体的には、上記で求めた超音波伝播時間と各素子の送信遅延とに基づいて、焦点から各素子への超音波伝播時間を取得する。
【0113】
そして、仮定の環境音速を設定し、その仮定の環境音速に基づいて焦点から各素子への仮超音波伝播時間を取得し、その仮超音波伝播時間と上記で求めた焦点から各素子への超音波伝播時間との誤差が最小となる仮定環境音速を真の環境音速として取得する。
【0114】
上述した手順により、実際の環境音速として約1620m/sを取得することができる。本方法では、実際の焦点位置における実際の環境音速のみを取得できるが、任意の着目点に対しては近傍の実焦点位置の実環境音速を割当てる、または補間するなどして取得する事ができる。
【符号の説明】
【0115】
1 超音波診断装置
10 超音波プローブ
10a 超音波トランスデューサ
12 受信信号処理部
14 送信制御部
16 走査制御部
18 受信制御部
20 画像生成部
22 焦点情報決定部
24 環境音速取得部
26 表示画像生成部
28 モニタ
30 入力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に超音波を送波するとともに、該送波によって被検体から反射された反射波を受信して受信信号を出力する複数の素子が配列された超音波プローブを用い、
該超音波プローブの前記各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定の送信フォーカス位置に焦点が合わせられた前記超音波の送波を行い、
前記送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて前記各素子によって受信された受信信号に基づいて、前記送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域を決定することを特徴とする焦点情報決定方法。
【請求項2】
前記送信フォーカス位置に対応する受信信号に対して、複数の設定音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を施すことによって前記設定音速毎の前記被検体の深さ方向に延びるライン画像信号を取得し、
前記設定音速毎のライン画像信号に基づいて前記被検体の深さ方向についての仮環境音速の分布を取得し、
該取得した仮環境音速の分布に基づいて、前記焦点位置または前記焦点有効域を決定することを特徴とする請求項1記載の焦点情報決定方法。
【請求項3】
前記環境音速の分布のバラつきに基づいて、前記焦点位置または前記焦点有効域を決定することを特徴とする請求項2記載の焦点情報決定方法。
【請求項4】
前記環境音速の分布のバラつきが最小となる深さを前記実際の焦点位置として取得することを特徴とする請求項3記載の焦点情報決定方法。
【請求項5】
複数の前記送信フォーカス位置に焦点が合わせられた前記超音波の送波を行い、
前記各送信フォーカス位置への超音波の送波による前記受信信号に基づいて、前記各送信フォーカス位置の実際の焦点位置を決定することを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の焦点情報決定方法。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載の焦点情報決定方法により決定された前記焦点位置または前記焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得することを特徴とする環境音速取得方法。
【請求項7】
請求項5記載の焦点情報決定方法により決定された複数の実際の焦点位置のそれぞれに対応する前記送信フォーカス位置への超音波の送波により取得された受信信号に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得することを特徴とする環境音速取得方法。
【請求項8】
請求項2記載の焦点情報決定方法により決定された前記焦点位置または前記焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境音速取得方法であって、
前記仮環境音速を取得する際に用いる前記ライン画像信号の前記深さ方向の範囲の方が前記環境音速を取得する際に用いる前記深さ方向の範囲よりも狭いことを特徴とする環境音速取得方法。
【請求項9】
被検体内に超音波を送波するとともに、該送波によって被検体から反射された反射波を受信して受信信号を出力する複数の素子が配列された超音波プローブと、
該超音波プローブの前記各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定送信フォーカス位置に焦点が合わせられた前記超音波の送波を行う送信制御部と、
前記送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて前記各素子によって受信された受信信号に基づいて、前記送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域を決定する焦点情報決定部とを備えたことを特徴とする焦点情報決定装置。
【請求項10】
前記送信フォーカス位置に対応する受信信号に対して、複数の設定音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を施すことによって前記設定音速毎の前記被検体の深さ方向に延びるライン画像信号を取得する受信制御部を備え、
前記焦点情報決定部が、前記設定音速毎のライン画像信号に基づいて前記被検体の深さ方向についての仮環境音速の分布を取得し、該取得した仮環境音速の分布に基づいて、前記焦点位置または前記焦点有効域を決定するものであることを特徴とする請求項9記載の焦点情報決定装置。
【請求項11】
前記焦点情報決定部が、前記仮環境音速の分布のバラつきに基づいて、前記焦点位置または前記焦点有効域を決定するものであることを特徴とする請求項10記載の焦点情報決定装置。
【請求項12】
前記焦点情報決定部が、前記仮環境音速の分布のバラつきが最小となる深さを前記実際の焦点位置として取得するものであることを特徴とする請求項11記載の焦点情報決定装置。
【請求項13】
前記送信制御部が、複数の前記送信フォーカス位置に焦点が合わせられた前記超音波の送波を行うものであり、
前記焦点情報決定部が、前記各送信フォーカス位置への超音波の送波による前記受信信号に基づいて、前記各送信フォーカス位置の実際の焦点位置を決定するものであることを特徴とする請求項9から12いずれか1項記載の焦点情報決定装置。
【請求項14】
請求項9から13いずれか1項記載の焦点情報決定装置と、
該焦点情報決定装置において決定された前記実際の焦点位置または前記実際の焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境速度取得部とを備えたことを特徴とする環境音速取得装置。
【請求項15】
請求項13記載の焦点情報決定装置と、
該焦点情報決定装置において決定された複数の実際の焦点位置のそれぞれに対応する前記送信フォーカス位置への超音波の送波により取得された受信信号に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境速度取得部を備えたことを特徴とする環境音速取得装置。
【請求項16】
請求項10記載の焦点情報決定装置と、
該焦点情報決定装置において決定された前記実際の焦点位置または前記実際の焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境音速取得部とを備え、
前記有効域決定部において前記仮環境音速を取得する際に用いられる前記ライン画像信号の前記深さ方向の範囲の方が、前記環境音速取得部において前記環境音速を取得する際に用いられる前記深さ方向の範囲よりも狭いことを特徴とする環境音速取得装置。
【請求項17】
前記任意の着目点の指定の入力を受け付ける着目点入力部をさらに備えたことを特徴とする請求項13から16いずれか1項記載の環境音速取得装置。
【請求項18】
前記環境速度取得部によって取得された環境音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて超音波画像信号を生成する受信制御部を備えたものであることを特徴とする請求項13から16いずれか1項記載の環境音速取得装置。
【請求項19】
被検体内に超音波を送波するとともに、該送波によって被検体から反射された反射波を受信して受信信号を出力する複数の素子が配列された超音波プローブと、
該超音波プローブの前記各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定送信フォーカス位置に焦点が合わせられた前記超音波の送波を行う送信制御部と、
前記送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて前記各素子によって受信された受信信号に基づいて決定された前記送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域が予め設定された焦点情報設定部とを備えたことを特徴とする焦点情報決定装置。
【請求項1】
被検体内に超音波を送波するとともに、該送波によって被検体から反射された反射波を受信して受信信号を出力する複数の素子が配列された超音波プローブを用い、
該超音波プローブの前記各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定の送信フォーカス位置に焦点が合わせられた前記超音波の送波を行い、
前記送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて前記各素子によって受信された受信信号に基づいて、前記送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域を決定することを特徴とする焦点情報決定方法。
【請求項2】
前記送信フォーカス位置に対応する受信信号に対して、複数の設定音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を施すことによって前記設定音速毎の前記被検体の深さ方向に延びるライン画像信号を取得し、
前記設定音速毎のライン画像信号に基づいて前記被検体の深さ方向についての仮環境音速の分布を取得し、
該取得した仮環境音速の分布に基づいて、前記焦点位置または前記焦点有効域を決定することを特徴とする請求項1記載の焦点情報決定方法。
【請求項3】
前記環境音速の分布のバラつきに基づいて、前記焦点位置または前記焦点有効域を決定することを特徴とする請求項2記載の焦点情報決定方法。
【請求項4】
前記環境音速の分布のバラつきが最小となる深さを前記実際の焦点位置として取得することを特徴とする請求項3記載の焦点情報決定方法。
【請求項5】
複数の前記送信フォーカス位置に焦点が合わせられた前記超音波の送波を行い、
前記各送信フォーカス位置への超音波の送波による前記受信信号に基づいて、前記各送信フォーカス位置の実際の焦点位置を決定することを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の焦点情報決定方法。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載の焦点情報決定方法により決定された前記焦点位置または前記焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得することを特徴とする環境音速取得方法。
【請求項7】
請求項5記載の焦点情報決定方法により決定された複数の実際の焦点位置のそれぞれに対応する前記送信フォーカス位置への超音波の送波により取得された受信信号に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得することを特徴とする環境音速取得方法。
【請求項8】
請求項2記載の焦点情報決定方法により決定された前記焦点位置または前記焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境音速取得方法であって、
前記仮環境音速を取得する際に用いる前記ライン画像信号の前記深さ方向の範囲の方が前記環境音速を取得する際に用いる前記深さ方向の範囲よりも狭いことを特徴とする環境音速取得方法。
【請求項9】
被検体内に超音波を送波するとともに、該送波によって被検体から反射された反射波を受信して受信信号を出力する複数の素子が配列された超音波プローブと、
該超音波プローブの前記各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定送信フォーカス位置に焦点が合わせられた前記超音波の送波を行う送信制御部と、
前記送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて前記各素子によって受信された受信信号に基づいて、前記送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域を決定する焦点情報決定部とを備えたことを特徴とする焦点情報決定装置。
【請求項10】
前記送信フォーカス位置に対応する受信信号に対して、複数の設定音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて受信フォーカス処理を施すことによって前記設定音速毎の前記被検体の深さ方向に延びるライン画像信号を取得する受信制御部を備え、
前記焦点情報決定部が、前記設定音速毎のライン画像信号に基づいて前記被検体の深さ方向についての仮環境音速の分布を取得し、該取得した仮環境音速の分布に基づいて、前記焦点位置または前記焦点有効域を決定するものであることを特徴とする請求項9記載の焦点情報決定装置。
【請求項11】
前記焦点情報決定部が、前記仮環境音速の分布のバラつきに基づいて、前記焦点位置または前記焦点有効域を決定するものであることを特徴とする請求項10記載の焦点情報決定装置。
【請求項12】
前記焦点情報決定部が、前記仮環境音速の分布のバラつきが最小となる深さを前記実際の焦点位置として取得するものであることを特徴とする請求項11記載の焦点情報決定装置。
【請求項13】
前記送信制御部が、複数の前記送信フォーカス位置に焦点が合わせられた前記超音波の送波を行うものであり、
前記焦点情報決定部が、前記各送信フォーカス位置への超音波の送波による前記受信信号に基づいて、前記各送信フォーカス位置の実際の焦点位置を決定するものであることを特徴とする請求項9から12いずれか1項記載の焦点情報決定装置。
【請求項14】
請求項9から13いずれか1項記載の焦点情報決定装置と、
該焦点情報決定装置において決定された前記実際の焦点位置または前記実際の焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境速度取得部とを備えたことを特徴とする環境音速取得装置。
【請求項15】
請求項13記載の焦点情報決定装置と、
該焦点情報決定装置において決定された複数の実際の焦点位置のそれぞれに対応する前記送信フォーカス位置への超音波の送波により取得された受信信号に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境速度取得部を備えたことを特徴とする環境音速取得装置。
【請求項16】
請求項10記載の焦点情報決定装置と、
該焦点情報決定装置において決定された前記実際の焦点位置または前記実際の焦点位置を含む焦点有効域に基づいて、前記被検体内の任意の着目点の環境音速を取得する環境音速取得部とを備え、
前記有効域決定部において前記仮環境音速を取得する際に用いられる前記ライン画像信号の前記深さ方向の範囲の方が、前記環境音速取得部において前記環境音速を取得する際に用いられる前記深さ方向の範囲よりも狭いことを特徴とする環境音速取得装置。
【請求項17】
前記任意の着目点の指定の入力を受け付ける着目点入力部をさらに備えたことを特徴とする請求項13から16いずれか1項記載の環境音速取得装置。
【請求項18】
前記環境速度取得部によって取得された環境音速に基づいて算出された受信遅延時間を用いて超音波画像信号を生成する受信制御部を備えたものであることを特徴とする請求項13から16いずれか1項記載の環境音速取得装置。
【請求項19】
被検体内に超音波を送波するとともに、該送波によって被検体から反射された反射波を受信して受信信号を出力する複数の素子が配列された超音波プローブと、
該超音波プローブの前記各素子を所定の送信遅延時間に基づいて駆動して所定送信フォーカス位置に焦点が合わせられた前記超音波の送波を行う送信制御部と、
前記送信フォーカス位置への超音波の送波により反射された反射波に応じて前記各素子によって受信された受信信号に基づいて決定された前記送信フォーカス位置への超音波の送波による実際の焦点位置または実際の焦点位置を含む焦点有効域が予め設定された焦点情報設定部とを備えたことを特徴とする焦点情報決定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図7】
【公開番号】特開2011−224359(P2011−224359A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78728(P2011−78728)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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