説明

焦点調整装置および焦点調整方法

【課題】使用中に、高開口数対物レンズ(20)によって生じる球面収差を減少させる。
【解決手段】高開口数対物レンズ(20)を有する光学システムのための焦点調整装置であって、中間像区域に像を形成し、選択された焦点面からの光を中間像区域内に受けて再び焦点を合わせるための像形成捕捉手段(26)と、中間像区域内の選択された焦点面の位置を調整するための焦点調整手段(28)と、を含む焦点調整装置が提供される。像形成捕捉手段(26)は少なくとも一つの高開口数レンズを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調整装置および焦点調整方法に関し、特に(しかしこれに限定されない)、微視的な用途で用いられる焦点調整装置および焦点調整方法に関する。本発明は、様々な微視的な用途においても使用することが可能である。
【背景技術】
【0002】
本明細書中で使用する「微視的、顕微鏡的(microscopic)」なる用語は、約10−4〜10−7の範囲の解像度を有する光学的用途・応用を意味する。係る用途は、一般的には空気中の開口数(NA)が0.5〜0.95の範囲または液浸油中の開口数が0.7〜1.4の範囲である高開口数対物レンズを使用することが一般的な特長である。
【0003】
本発明は、対象物の像を形成するため、もしくは対象物の特定の特性を検出するためにこの対象物から光を集める用途(例えば広視野顕微鏡、走査顕微鏡、蛍光顕微鏡等)にも、あるいは、対象物に対して光の焦点を合わせてこの対象物を照射もしくはこの対象物に作用する用途(例えば微細加工もしくはレーザー手術)においても用いることができる。本明細書における焦点調整(focusing)および結像(image formation)は、上記両方の種類に同じように適用されることを理解すべきである。本発明は、光を対象物上に焦点を合わせてこの対象物の像を検出する用途にも使用することができる。
【0004】
従来の顕微鏡の使用においては、試料・標本からの光が対物レンズによって集められて、次に、目視用の接眼レンズによって焦点を合わせられるかあるいは結像レンズによって検出器(例えば電荷結合素子(CCD))上に焦点が合わせられる。典型的な配置を図1に示す。これには対物レンズ2、結像レンズ4およびCCD検出器6が含まれる。試料8からの光は、対物レンズ2によって集められて、次に結像レンズ4によってCCD検出器6上に焦点を合わされる。CCD検出器によって記録される像は、試料の薄片10を表す。試料の他の全ての部分からの光はぼやけてしまうのである。
【0005】
従来の構成において、像は、対物レンズ2の光軸12(Z軸)に対して直交する二次元の平面(X−Y平面)を表す。しかしながら、時には、3次元画像、あるいは対物レンズ2の光軸12に直交しない平面からの画像を得ることが望ましいことがある。これらの場合のどちらにおいても、対物レンズの焦点面を調整して試料の異なる領域からの光を集めることが必要である。次に、異なる焦点面から得られる多くの像を、3次元画像または非直交平面(例えばX−Z平面)の2次元画像のいずれかを得るために結合することができる。
【0006】
試料の異なる平面からの像を得るために顕微鏡を調整するには2つの方法がある。第1の方法は、単に、対物レンズまたは試料を光軸の方向に移動することによって対物レンズと試料との間の距離を調整することを含む。しかしながら、この方法には次の2つの重大な欠点がある。
(i) 機械的調整を行うことができる速度は、移動される対象物(対物レンズまたは試料)の質量によって制限され、一般的にはこの質量によって反応時間が遅くなる。
(ii) 機械的動作は時には試料を乱すこともあり、これによりユーザの興味のある特性を変えてしまう。
【0007】
第2の方法は、試料の異なる平面から像を得るために対物レンズに対して相対的に検出器を移動することである。しかしながら、この方法は次の欠点があり、商業的には用いられない。
(i) 係るシステムのほとんどは高倍率のため、試料の結像面の変位が小さくても検出器を大きく平行移動することが必要である。
(ii) この検出器が対物レンズに対して最適に設計された位置に置かれていない場合、対物レンズの高開口数(NA)と、像を検出器上に焦点を合わせる結像光学系(結像光学システム)の低開口数(NA)との間の相違が多大な球面収差を生じさせる。その結果、変位された焦点面の像質が深刻に劣化してしまい、この質の劣化は検出器の移動が大きくなるにつれて次第にひどくなる。従って、検出器をその最適位置から移動するときに信号対雑音比(SN比)が大幅に減少する。このことは、ほとんどの用途、特に非線形の顕微鏡使用法において実際に大きな問題を引き起こす。
(iii) 全ての断面生成技術(セクショニング技術)、例えば共焦点顕微鏡法、ニプコー円板顕微鏡法、構成照射顕微鏡法(structured illumination microscopy)において、球面収差の存在は像のセクショニングの明らかな損失を導く。このことは、実用値になるように一貫したセクショニングに多大に依存する結像モードにとって非常に好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
異なる焦点面を得るために顕微鏡を再び焦点調整する機能は非常に重要である。同様に、照明系(照明システム)を迅速かつ正確に再び焦点調整する機能は、特定の製造システムおよび他のシステムにおいて必要とされている。最近の技術では、単一の焦点面におけるライン走査を迅速に、例えば約5kHzの周波数で得ることができる。しかしながら、機械的な制限によって、軸方向の走査は非常に低い周波数、一般に約15Hzに制限される。従って、試料を移動することなく、また球面収差の問題に直面することなく、従来よりも非常に高い周波数で軸方向走査を可能にするシステムが必要とされている。
【0009】
本発明の目的は、上記の問題を少なくともいくらか緩和する焦点調整装置および焦点調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様では、高開口数対物レンズを有する光学系用の焦点調整装置であって、中間像区域に像を形成し、選択された焦点面からの光を中間像区域内に受けて再び焦点を合わせるための像を形成し取り込む手段(像形成捕捉手段)と、中間像区域内の選択された焦点面の位置を調整するための焦点調整手段と、を含んでおり、像形成捕捉手段は少なくとも一つの高開口数レンズを含んでおり、これにより、使用中に高開口数対物レンズによって生じる球面収差が減少される焦点調整装置が提供される。
【0011】
本発明は、球面収差を生じることなく対物レンズから異なる距離で迅速に光学系の焦点を再び合わせることを可能にする。従って、顕微鏡結像系システムの場合、試料内の複数の異なる平面から像を得ることができ、この試料および対物レンズのいずれも移動することなしに軸方向の走査を可能にする。照射系システムの場合、やはり球面収差を生じることなく対物レンズからの複数の異なる距離で対象物上に像(すなわち光のパターン)の焦点を合わせることができる。
【0012】
好適な一実施形態において、像形成捕捉手段は、中間像区域内に像を形成するための第1の高開口数レンズと、中間像区域から光を受けて焦点を合わせるための第2の高開口数レンズと、を含んでおり、焦点調整手段は第1の高開口数レンズに対して相対的に第2の高開口数レンズの軸方向位置を調整するための手段を含んでいる。この実施形態において、このシステムの構成要素は同軸の構成に配置することができ、これによりコンパクトな実装となる。更に、光がこの装置を通過するとき、通常の透過損失は別として著しく損失することがない。
【0013】
好都合には、第1および第2の高開口数レンズは、対向する一対の対物レンズである。好適には、第1および第2の高開口数レンズは同一のものである。
【0014】
別の好適な実施形態において、像形成捕捉手段は、高開口数レンズと、選択される焦点面からの像を中間像区域内で取り込むように高開口数レンズによって形成される像を同じ高開口数レンズ内へ反射するための反射要素と、を含み、焦点調整手段は、反射要素の軸方向位置を調整するための手段を含む。このシステムの形態は非常に迅速な焦点再調整を可能にする。なぜなら反射要素のみを移動すればよいからである。反射要素は非常に小さく軽量な鏡であってもよいため、例えば圧電変換器(ピエゾトランスデューサ)を用いて、迅速な調整が可能である。
【0015】
このシステムの第2の形態において、焦点調整装置は、この焦点調整装置に入射する光からの反射された光を分割するためのビームスプリッタ(分配器)を含むことが好ましい。好都合には、この焦点調整装置は、偏光ビームスプリッタと、この偏光ビームスプリッタとこの反射光の偏光を調整するための中間像区域との間に配置された偏光調整器と、を含む。偏光調整器は、ビームスプリッタと鏡との間に位置する四分の一波長板であってもよい。
【0016】
好都合には、偏光ビームスプリッタが、第1の軸の方向に第1の偏光を有する入射光を送り、第2の軸の方向に第2の偏光を有する光を反射するように構成および配置されており、焦点調整装置が、第1の像形成捕捉手段であって第2の像形成捕捉手段と第1の高開口数レンズと第1の軸上の第1の中間像区域内の像を形成および取り込むための第1の反射要素とを含む第1の像形成捕捉手段と、第2の像形成捕捉手段であって第2の高開口数レンズと第2の軸上に第2の中間像区域内に像を形成し取り込むための第2の像形成捕捉手段と、第1の取り込まれた像と第2の取り込まれた像とを再結合するための手段と、を含む。この構成はビームスプリッタを通過する全ての光が捕捉されて結果としてより明るい像になるという利点を提供する。
【0017】
あるいは、この焦点調整装置は、焦点調整装置に入射する光からの反射光を分割するための弁別器を含んでいてもよい。弁別器は、例えばグラントムソンプリズムであってもよく、入力光線の軸から離れた角度でこのプリズムを移動することによって、焦点調整装置に入射する光から反射光を分割するものである。
【0018】
好都合には、像形成捕捉手段の少なくとも一つの高開口数レンズが、その空気中の開口数が少なくとも0.5であって、好適には0.7であって、より好適には少なくとも0.9である。例えば、高開口数レンズは、約0.95の空気中の開口数をしていてもよい。
【0019】
本発明の別の態様では、高開口数対物レンズと、この高開口数対物レンズの焦点を調整するための前述した発明の記載のいずれかの焦点調整装置と、を含む光学系が提供される。
【0020】
好都合には、焦点調整装置の少なくとも一つの高開口数レンズ(「集束レンズ」)は、高開口数対物レンズと光学的に整合されている。「光学的に整合される」という記載は、対物レンズの光軸に対する角度γで物体空間の中から対物レンズに入射するかあるいは出射する光線は、集束レンズの光軸に対する同一角γで中間像空間内の集束レンズに入射するかあるいは出射する光線としてこのシステムによってマッピングされる(写像される、対応関係を定義されて割り当てされる)ということを意味する。この構成は、対物レンズによって生じる球面収差が集束レンズによって消されることを確実にする。最も単純な場合において、対物レンズおよび集束レンズは同一のものである。しかしながら、このことは不可欠というわけではなく、光学的に整合されることを条件とし、異なるレンズが用いられてもよい。よって、油浸対物レンズが例えば乾燥系高開口数集束レンズに光学的に整合されてもよい。
【0021】
焦点調整装置の少なくとも一つの高開口数レンズ(「集束レンズ」)の開口角が、高開口数対物レンズの前記開口角と少なくとも同じ大きさであることが好ましい。これは、システムの解像度が集束レンズによって悪影響を受けないことを確実にする。例えば、開口数が1.4であって開口角が67°である油浸対物レンズを、開口数が0.95であって開口角が71.8°である乾燥系高開口数集束レンズと組み合わせて使用することができる。
【0022】
この光学系は、検出器とこの検出器上に取り込まれた像の焦点を合わせるための手段とを含む光検出系を備えていてもよい。あるいは、この光学系は、高開口数対物レンズを通して対象物を照射するための光源を含む照射系を備えていてもよい。別の変形例において、光学系は、例えば走査型顕微鏡において、照射系および光検出系の両方を含む。
【0023】
別の変形例において、この光学系は、高開口数顕微鏡対物レンズを有する顕微鏡系(システム)を備える。
【0024】
本発明の別の態様では、高開口数対物レンズと、中間像区域内に像を形成するための第1の高開口数レンズおよび中間像区域から光を受けて再び焦点を合わせるための第2の高開口数レンズならびに第1の高開口数レンズに対して相対的に第2の高開口数レンズの軸方向位置を調整するための焦点調整手段を備える焦点調整装置と、を含む顕微鏡対物レンズ組立体が提供される。この対物レンズ組立体は、既存の顕微鏡に嵌合することができ、試料および顕微鏡対物レンズのいずれの位置も調整することなく顕微鏡を再び焦点調整することができる。好都合には、高開口数対物レンズ、第1の高開口数レンズおよび第2の高開口数レンズが、筐体内に同軸上に搭載される。
【0025】
本発明の別の態様では、高開口数対物レンズを有する光学系の焦点調整方法であって、少なくとも一つの高開口数レンズを用いて中間像区域内に像を形成することと、前記中間像区域内に選択された焦点面から光を受けて再び焦点調整することによって像を取り込むことと、前記中間像区域内で前記選択された焦点面の位置を調整することと、を含んでおり、これにより高開口数対物レンズによって生じる球面収差が減少されることを特徴とする焦点調整方法が提供される。
【0026】
本発明の別の態様において、高開口数対物レンズを有する光学系を用いて対象物から光を集めることと、前述の発明の方法によって光の焦点を調整することと、光を検出器上に焦点を合わせて像を得ることを含む結像方法が提供される。
【0027】
本発明の更に別の態様において、光源からの光を集めることと、本発明の前述の方法によって光の焦点を調整することと、高開口数対物レンズを有する光学系を用いて対象物上に光を向けること、を含む照射方法が提供される。
【0028】
以下に添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示の目的で記載する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、従来技術の顕微鏡システムの線図である。
【図2】図2は本発明の第1の実施形態による顕微鏡システムの線図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態による顕微鏡システムの線図である。
【図4】図4は、本発明の第3の実施形態による顕微鏡システムの線図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施形態を構成する顕微鏡対物レンズの線図である。
【図6】図6は、本発明の第5の実施形態による、顕微鏡のカメラポートのためのプラグイン組立体の線図である。
【図7】図7は、本発明の第6の実施形態による、顕微鏡のカメラポートのための別のプラグイン組立体の線図である。
【図8】図8は、本発明の第7の実施形態によるスリット走査共焦点顕微鏡の線図である。
【図9】図9は、図3に示されるものに類似する顕微鏡システムの線図である。
【図10】図10は、本発明の第8の実施形態による顕微鏡システムの線図である。
【図11】図11は、本発明の第9の実施形態による顕微鏡システムの線図である。
【図12】図12は、図11に示される顕微鏡システムの一部を形成する弁別器(ディスクリミネーター)の線図である。
【図13】図13は、図11に示される顕微鏡システムの一部を形成する弁別器(ディスクリミネーター)の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図2に示される本発明の第1の実施形態において、顕微鏡システムは、対物レンズ20と、マッピングレンズシステム22と、ビームスプリッタ24と、参照レンズ26と、参照鏡(参照ミラー)28とを含んでおり、これら全ては第1の光軸30に沿って間隔を置いて配置されている。対物レンズ20および参照レンズ26は、同一の高開口数レンズである。結像レンズ32(または「チューブ」レンズ)およびCCD検出器34は、第1の光軸30に直交する第2の光軸36に沿って間隔を置かれて配置されており、この第2の光軸36はビームスプリッタ24を通過している。
【0031】
マッピングレンズシステム22は、2つのレンズ22a,22bを備える4fシステムであって、このレンズ22a,22bのそれぞれが焦点距離fを有しており、互いに距離2f離れており、対物レンズ20および参照レンズ26の一つに近接する瞳平面から距離f離れている。マッピングレンズシステム22は、対物レンズ20の瞳平面に現れる波面を参照レンズ26の瞳平面上へマッピングする。
【0032】
参照鏡28は圧電変換器(図示せず)に搭載されており、この圧電変換器によって、矢印38によって示されるように参照レンズ26に対してその位置を第1の光軸30の方向に迅速に調整することができる。
【0033】
物体空間40の試料42からの光は対物レンズ20によって集められて、マッピングレンズシステム22によって参照レンズ26の瞳平面上にマッピングされ、この参照レンズ26が光の焦点を合わせて参照レンズ26の前であってかつ参照鏡28に近接する中間像空間44に試料42の像を形成する。対物レンズ20と参照レンズ26が整合されて、同じ数学的条件(「正弦条件」として知られる)に設計されるため、試料42の像は、いかなる球面収差も生じることなく中間像空間44に再生される。参照鏡28は、この再生像を参照レンズ26に反射する。参照鏡が参照レンズ26の通常の焦点面に位置する場合、参照レンズ26の瞳平面で再生される波面は、マッピングレンズシステム22からこの参照レンズに入るものと同一である。しかしながら、参照鏡28が軸方向に変位される場合、それは中間像区域内の異なる平面から光を反射するのであって、次に、再生された波面は物体空間内の異なる平面を表す情報を含むのである。CCD検出器34は、参照レンズ26の焦点面の情報のみを観察する。これにより、この参照レンズによって再び焦点を合わされた再生像の平面を選択することが可能になる。
【0034】

参照レンズ26から出てくる反射光は、ビームスプリッタ24によって第2の光軸36に沿って反射されて、結像レンズ32によってCCD検出器34上に焦点を合わされる。このCCD検出器は、参照レンズ26の焦点面内の情報のみを観察する。よって、参照鏡28を移動することによって、像の異なる平面をその観察のために選択することが可能である。参照レンズ26が高開口数対物レンズ20に整合されているため、これらの異なる平面は球面収差を生じることなく結像される。
【0035】
鏡28を非常に小さくかつ軽量にすることができるため、この鏡と参照レンズとの間の接触がなく、その位置を圧電変換器を用いて非常に迅速に調整することができ、高周波(例えば100〜1000Hz)での軸方向の走査を可能にし、これは既存のシステムにて利用可能な約15Hzの周波数よりも何倍も早い。
【0036】
図2に示される例において、対物レンズ20および参照レンズ26は同一のものである。マッピングレンズシステム22が正しい拡大倍率を提供するように変更されることを条件として、2つの異なる高開口数レンズを使用することも可能である。例えば、参照レンズとして開口数0.95のドライレンズ(乾燥系レンズ)を対物レンズとして他の任意のレンズと共に、対物レンズによって設定される解像度に影響を及ぼすことなく使用することが可能である。なぜなら、開口数の0.95ドライレンズは市販の全てのレンズで最も大きい開口角を有するからである。従って、参照レンズのためにドライレンズを使用し、対物レンズのために液浸レンズを使用することが可能である。この場合、参照鏡は、液浸媒体を介して参照レンズと接触させる必要はない。これは、ユーザが参照鏡および参照レンズに触れる必要がないため、これら参照鏡および参照レンズを密封室に配置することができるという利点を提供する。
【0037】
このシステムの一変形態様が、図3に示されている。このシステムにおいて、ビームスプリッタ24に代わって偏光ビームスプリッタ24’が用いられており、四分の一波長板45がビームスプリッタ24’と参照レンズ28との間に配置されている。このシステムの他の構成要素は、上記第1のシステムのものと同じである。偏光を用いて使用される場合、このシステムは、CCD検出器34に届く光の減衰がないという効果を発揮する。
【0038】
本発明の第3の実施形態が図4に示されている。この実施形態において、顕微鏡システムは対物レンズ120と、マッピングレンズシステム122a,bと、第1の参照レンズ124と、第2の参照レンズ126と、結像レンズ132と、CCD検出器134とを含んでおり、これら全てが光軸136に沿って間隔を置かれて配置されている。マッピングレンズシステム22は、対物レンズ120の瞳平面に現れている波面を参照レンズ124の瞳平面上へマッピングする。対物レンズ120ならびに第1の参照レンズ124および第2の参照レンズ126は、同一であるかまたは整合された高開口数レンズである。
【0039】
第2の参照レンズ126は、光軸136に沿って第1の参照レンズ124に対して相対的に移動可能となるように搭載されており、かつ、第1の参照レンズ124に対してその位置を矢印137で示されるように迅速に調整することを可能にする圧電変換器(図示せず)に取り付けられている。
【0040】
試料からの光は、対物レンズ120によって集められて、マッピングレンズシステム122によって参照レンズ124の瞳平面上にマッピングされる。この参照レンズ124はこの光の焦点を合わせて参照レンズ124と第2の参照レンズ126との間の中間像空間138中に像を形成する。対物レンズ120および第1の参照レンズ124が整合されて同じ数学的条件に設計されているため、いかなる球面収差も生じることなく試料の像は中間像空間138に再生される。第2の参照レンズ126はこの像空間から出てくる光を集めて焦点を合わせる。第2の参照レンズ126から出てくる波面は、結像レンズ132によってCCD検出器134上に焦点を合わされる。
【0041】
第2の参照レンズ126の焦点面が第1の参照レンズ124の焦点面に位置する場合、第2の参照レンズ126の瞳平面で再生される波面は、マッピングレンズシステム122から参照レンズ124に入るものと同一である。しかしながら、第2の参照レンズ126を軸方向に変位する場合、これは中間像区域内の異なる平面から光を集めるのであって、次に、再生された波面は物体空間内の異なる平面を表す情報を含むのである。CCD検出器134は、第2の参照レンズ126の焦点面内の情報のみを観察する。よって、第2の参照レンズ126を移動することによって、球面収差を生じることなく像の異なる平面をその観察のために選択することが可能である。先のシステムと同様に、例えば適切な変換器を用いて、第2の参照レンズ126の位置を非常に迅速に調整することができ、高周波での軸方向の走査を可能にする。
【0042】
このシステムは、角度γで物体空間140の試料から出る光線を、同じ角度γで中間像空間138に入る共役光線までマッピングするように設計されている。この場合、物体空間内のこの配光は、中間像空間138内に収差なく再結像される。検出器組立体132,134は、中間像空間の単一平面を結像する。軸に沿って第2の参照レンズ126を移動することで結像のための異なる複数の平面を選択し、検出器134上に形成される結果として生じる複数の像には全て収差が存在しない。この実施形態において、パッケージングの理由から、対物レンズ120と第1の参照レンズ124が同一のものであることが好適であり得る。しかしながら、このことは、対物レンズ120と第1の参照レンズ124が光学的に整合されることを条件とし、必ずというものではない。
【0043】
図4に示される構成は、ビームスプリッタを用いないため、偏光、無偏光に関わらず著しい光の損失がないという利点がある。欠点は、第2の参照レンズ126の質量がより大きいため、鏡を備える場合よりも焦点の再調整が遅いことである。しかしながら、それでも従来のシステムよりもかなり速いはずである。
【0044】
図2〜図4に示される上記のシステムは全て、試料の像が検出器上に焦点を合わされる顕微鏡結像系における使用の目的を意図している。係る用途には、反射、透過、蛍光、位相差および偏光撮像を使用する、幅広い分野の顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、非線形顕微鏡法、ステレオ顕微鏡法、走査顕微鏡およびスリット走査顕微鏡が含まれる。
【0045】
本発明は、光源の光を試料に焦点を合わせる照射系に適用することも可能である。係る用途には、微細加工(例えば光学削摩および光重合を介するミクロ機械加工)、レーザ手術、細胞のフォトポレーション(photoporation)(トランスフェクションのために細胞壁に穴を選択的に形成すること)、光トラッピング、原子トラッピング、データ記憶(例えば三次元多層光学記憶媒体におけるデータ書き込み)、ならびに非線形顕微鏡法(例えば多光子顕微鏡法、第二高調波発生顕微鏡法および第3高調波発生顕微鏡法)が含まれる。
【0046】
照射系のレイアウトは図2〜4に示される結像系のいずれかと実質的に同一でよい。但し各場合において、CCD検出器が、適切な光源によって、更に必要であれば試料上に焦点を合わされる照射パターンを作るための適切な大きさのマスクもしくはこれに類似するものによって置き換えられる。試料中の照射パターンの軸の位置は、参照鏡または第2の参照レンズを適切に移動することによって調整することができ、これにより、このシステムを再び焦点調整する。再び、対物レンズまたは試料のいずれも移動する必要がなく、球面収差は避けられる。
【0047】
本発明は、試料を照射することおよびこの試料から出てくる光を集めることの両方の用途に適用することも可能であって、例えば走査共焦点顕微鏡法(反射または蛍光による)、検出ピンホールおよびデータ記憶を伴う非線形顕微鏡法(例えば3次元多層記憶媒体の共焦点の読み出しを伴う)。本発明は、照射光と試料から集められる光の両方において球面収差を除去するための用いることができ、よって軸方向に間隔を置いた複数の平面において高品質な像を取り込むことが可能になる。
【0048】
顕微鏡対物レンズ組立体200の形態である本発明の実用的な実施形態が図5に示されている。対物レンズ組立体200は既存の対物レンズ組立体の代用として従来の顕微鏡での使用のために設計されている。
【0049】
この対物レンズ組立体200は、図4に示される構成に基づいており、対物レンズ220と、第1の参照レンズ224と、第2の参照レンズ226とを含んでおり、これら全てが共通の光軸230に沿って間隔を置いて筐体228内に配置されている。この顕微鏡は、結像レンズ(またはチューブレンズ)232およびCCD検出器234を更に含んでいる。対物レンズ220および第1の参照レンズ224は、それらの瞳平面が一致するように背中合わせで搭載されている。よって、対物レンズ220の瞳平面に現れる波面は、第1の参照レンズ224の瞳平面上へマッピングされる。対物レンズ220ならびに第1の参照レンズ224および第2の参照レンズ226は、同一の高開口数レンズである。
【0050】
第2の参照レンズ226は、光軸230に沿って第1の参照レンズ224に対して相対的に移動可能となるように搭載されており、かつ、第1の参照レンズ224に対するその位置を矢印238で示されるように迅速に調整することを可能にする圧電変換器(図示せず)に取り付けられている。第2の参照レンズ226の瞳平面から出てくる光は、結像レンズ232によってCCD検出器234上に焦点を合わせられる。
【0051】
使用中、物体空間240の試料からの光は、対物レンズ220によって集められて、第1の参照レンズ224と第2の参照レンズ226との間の中間像空間242内で第1の参照レンズ224によって焦点を合わせられる。対物レンズ220および第1の参照レンズ224が同一なため、試料の像はいかなる球面収差も生じることなく中間像空間242に再構成される。第2の参照レンズ226は、この像空間242から出射する光を集めて集束する。第2の参照レンズ226から出射する波面は、結像レンズ232によってCCD検出器234上に焦点を合わせられる。
【0052】
第2の参照レンズ226の焦点面が第1の参照レンズ224の焦点面に位置する場合、第2の参照レンズ226の瞳平面で再生される波面は、対物レンズ220から第1の参照レンズ224に入るものと同一である。しかしながら、第2の参照レンズ226が軸方向に変位されると、この第2の参照レンズは中間像区域内の異なる平面から光を集めるのであって、次に再生された波面は、物体空間内の異なる平面を表す情報を含むのである。CCD検出器234は、第2の参照レンズ226の焦点面内の情報のみを観察する。よって、第2の参照レンズ226を移動することによって、球面収差を生じることなく、画像の異なる平面を観察のために選択することが可能である。先のシステムと同様に、第2の参照レンズの位置を非常に迅速に調整することができ、高周波での軸方向の走査を可能にする。
【0053】
既存の顕微鏡のカメラポートのためのプラグイン組立体(差し込み式の組立体)300の形態である、本発明の別の実用的な実施形態が図6に示されている。この組立体300は、顕微鏡対物レンズ310と既存のカメラもしくはCCD検出器312との間にプラグイン式に差し込むように設計されている。あるいは、CCD検出器312はプラグイン組立体300の一部であってもよい。この顕微鏡は、対物レンズ310の瞳平面からの光を組立体300の入射窓316に焦点を合わせるチューブレンズ314を含んでいる。
【0054】
プラグイン組立体300は、図4に示される構成に再度基づいており、筐体318と、マッピングレンズ322と、第1の参照レンズ324と、第2の参照レンズ326と、結像レンズ328とを含んでおり、これら全てが共通の光軸330に沿って間隔を置かれて配置されている。チューブレンズ314およびマッピングレンズ322は共に、対物レンズ310の瞳平面に現れる波面を第1の参照レンズ324の瞳平面上へマッピングする。対物レンズ310および第1の参照レンズ324は、同一であるかまたは整合された高開口数レンズである。
【0055】
第2の参照レンズ326は、光軸330に沿って第1の参照レンズ324に対して相対的に移動可能となるように搭載されており、かつ、第1の参照レンズ324に対するその位置を矢印332で示されるように迅速に調整することを可能にする圧電変換器(図示せず)に取り付けられている。第2の参照レンズ326の瞳平面から出てくる光は、結像レンズ328によって出射窓334を通してCCD検出器312上に焦点を合わせられる。
【0056】
使用中、物体空間340中の試料からの光は、対物レンズ310によって集められて、チューブレンズ314およびマッピングレンズ322によって第1の参照レンズ324の瞳平面にマッピングされる。この光は、第1の参照レンズ324と第2の参照レンズ326との間の中間像空間342内で第1の参照レンズ324によって集束される。対物レンズ310および第1の参照レンズ324は同一のものかまたは整合されており、よって試料の像はいかなる球面収差も生じることなく中間像空間342に再生される。第2の参照レンズ326は、この像空間から出てくる光を集めて集束する。第2の参照レンズ326から出てくる波面は、結像レンズ328によって出射窓334を通してCCD検出器312上に焦点を合わせられる。
【0057】
第2の参照レンズ326の焦点面が第1の参照レンズ324の焦点面に位置する場合、第2の参照レンズ326の瞳平面で再生される波面は、対物レンズ310から第1の参照レンズ324に入るものと同一である。しかしながら、第2の参照鏡326が軸方向に変位されるとき、この第2の参照鏡326は中間像区域内の異なる平面から光を集めるのであって、次に再生される波面は、物体空間内の異なる平面を表す情報を含むのである。CCD検出器312は第2の参照レンズ326の焦点面内の情報のみを観察する。よって、第2の参照鏡326を移動することによって、球面収差を生じることなく、像の異なる平面を観察のために選択することが可能である。第2の参照レンズの位置を非常に迅速に調整することができ、高周波での軸方向の走査が可能となる。
【0058】
既存の顕微鏡のカメラポートのための別のプラグイン組立体400が図7に示されている。この組立体400は、顕微鏡対物レンズ410と既存のカメラもしくはCCD検出器412との間にプラグイン式に差し込まれるように設計されている。この顕微鏡は、対物レンズ410の瞳平面からの光を組立体400の入射窓416に焦点を合わせるチューブレンズ414を含んでいる。
【0059】
プラグイン組立体400は、再び図3に示される構成に基づいており、筐体418と、マッピングレンズ422と、ビームスプリッタ424と、四分の一波長板425と、参照レンズ426と、参照鏡428とを含んでおり、これら全てが共通の第1の光軸430に沿って間隔を置かれて配置されている。対物レンズ410および参照レンズ426は、同一の高開口数レンズである。結像レンズ432(もしくは「チューブ」レンズ)ならびにCCD検出器412は、第1の光軸430に直交しかつビームスプリッタ424を通る第2の光軸436に沿って間隔を置かれて配置されている。
【0060】
チューブレンズ414およびマッピングレンズ422は、対物レンズ410の瞳平面に現れる波面を参照レンズ426の瞳平面上へマッピングする。対物レンズ410および参照レンズ426は同一ものまたは整合された高開口数レンズである。
【0061】
鏡428は、参照レンズ426に対して相対的に光軸430に沿って移動可能であるように筐体418内に搭載されており、かつ、参照レンズ426に対するその位置を矢印438で示されるように迅速に調整することを可能にする圧電変換器(図示せず)に取り付けられている。参照レンズ426の瞳平面から出てくる光は、結像レンズ432によって出射窓434を通してCCD検出器412上に焦点を合わせられる。
【0062】
使用中、物体空間440の試料からの光は、対物レンズ410によって集められて、鏡428に近接する中間像空間442内で参照レンズ426によって焦点を合わされる。対物レンズ410および参照レンズ426が同一のものまたは整合されているため、試料の像は、いかなる球面収差も生じることなく中間像空間442に再生される。この光は鏡428によって参照レンズ426へ反射され、この参照レンズ426はこの反射された光を集めて集束する。次に、参照レンズ426から出てくる波面は、結像レンズ432によってCCD検出器412上に焦点を合わされる。
【0063】
鏡428が参照レンズ426の焦点面に位置する場合、参照レンズ426の瞳平面で再生される波面は、対物レンズ410からこの参照レンズに入るものと同一である。しかしながら、鏡428が軸方向に変位される場合、この鏡428は中間像区域内の異なる平面からの光を反射するのであって、次に再生される波面は、物体空間内の異なる平面を表す情報を含むのである。CCD検出器412は、参照レンズ426の焦点面内の情報のみを観察する。よって、鏡428を移動することによって、球面収差を生じることなく、像の異なる平面を観察のために選択することが可能である。鏡の位置を非常に迅速に調整することができ、高周波での軸方向の走査が可能となる。
【0064】
図8は、本発明の第7の実施形態によるスリット走査共焦点顕微鏡を示している。この顕微鏡は、レーザ光源510と、ビームエクスパンダ512と、円柱レンズ(シリンドリカルレンズ)514と、細隙(スリット)516とを含んでおり、これらは共に平面光線を形成し、この光線はレンズ518によって参照レンズ520内に集束される。この光は、上述の構成要素の光軸524に沿って移動するように搭載されている参照鏡522に近接する中間像空間521内に参照レンズ520によって焦点を合わせられる。この光は、鏡522によって参照レンズ520に反射されて、次にビームスプリッタ528によって第2の光軸526に沿って反射される。この光は、中間レンズ系530を通して対物レンズ532内に集束され、この対物レンズ532はこの平面光線を試料534上に焦点を合わせる。
【0065】
この光線が試料534内に焦点が合う軸の位置は、参照鏡522を移動することによって調整することができる。対物レンズ532および参照レンズ520は、照射光線からの球面収差を除去するために整合される。
【0066】
試料によって反射される光は、対物レンズ532によって集められ、次に中間レンズ系530、ビームスプリッタ528および参照レンズ520を通して、鏡522に近接する中間像空間521に焦点を合わされる。次にこの光は鏡522によって第1の光軸524に沿って参照レンズ520内に反射される。この光は、第2のビームスプリッタ536、一対のレンズ538、540および回転鏡542によってCCD検出器544上に反射される。鏡542を回転させることによって、線像を検出器544全体で走査することが可能となる。

【0067】
第1の光軸524の方向に参照鏡522を移動することで試料534内に集束された照射光線の位置と検出器544上に集束された結像平面との両方を同時に調整する。よって、試料全体に渡って結像平面を対物レンズ532の光軸526(Z軸)の方向に走査することができる。参照鏡522の軸方向の位置と回転鏡542の角度位置を同時に調整することによって、試料のXZ平面を表す像は、他の手続きを必要とすることなくリアルタイムで得られる。
【0068】
図9は、図3に示されるものに類似する顕微鏡システムを示しており、偏光ビームスプリッタ24’と、このビームスプリッタ24’と参照レンズ28との間に配置された四分の一波長板45とを含む。このシステムの他の構成要素は、上記のシステムのものと同様である。
【0069】
このシステムは、偏光を用いて使用される場合、結像平面34に届く光の減衰がない。しかしながら、このシステムが無偏光と共に用いられる場合、偏光ビームスプリッタ24’に入射する光30は2つの部分に分割され、第1の部分30aはビームスプリッタを通過し、一方、第2の部分30bはそこから反射される。この第2の部分が捕捉(取込)されないため、結像平面34に届く光は50%減らされる。
【0070】
図10は、図9に示される顕微鏡システムの変形態様を示しており、ここでこの問題が対処される。この顕微鏡システムは、対物レンズ620と、マッピングレンズシステム622と、偏光ビームスプリッタ624と、第1の像形成捕捉システム625を含んでおり、これら全ては第1の光軸630上に配置されている。第1の像形成捕捉システム625は、図9に示されるものに類似しており、参照レンズ626と、参照鏡628と、四分の一波長板645とを備える。第2の像形成捕捉システム625’は、ビームスプリッタ624を通過する第1の光軸630に直交する第2の光軸636上に配置されている。第2の像形成捕捉システム625’は、参照レンズ626’と、参照鏡628’と、四分の一波長板645’とを備える。更に、結像レンズ632および検出器634は、ビームスプリッタ624の反対側の第2の光軸636上に配置されている。
【0071】
試料642からの光は、対物レンズ620によって集められて、ビームスプリッタ624によって2つの部分に分割されて、参照レンズ626,626’の瞳平面上にマッピングされる。各参照レンズ626,626’は、それぞれの参照鏡28,28’に近接する中間像空間内に試料の像を形成するために光を集束し、これらの参照鏡28,28’は参照レンズ26,26’に再生像を反射する。この反射光は、ビームスプリッタ624によって再結合されて、結像レンズ632によって検出器634上に焦点を合わせられる。この2つの鏡は、この反射像が同一となることを確実にするように同時に調整される。ビームスプリッタ624から出てくる光の両方の部分が使用され、これにより望ましくない減衰を回避する。
【0072】
別の構成が図11〜図13に示されている。この顕微鏡システムは、対物レンズ720と、マッピングレンズシステム722と、弁別器724と、像形成捕捉システム725を含んでおり、これら全ては第1の光軸730上に配置されている。この像形成捕捉システム725は、参照レンズ726と、参照鏡728と、四分の一波長板745とを備える。結像レンズ732および検出器734は、直交する第2の光軸736上に配置される。
【0073】
図12および図13により詳細に記載される弁別器724は、接合剤748の層で結合された2つの複屈折の方解石結晶746からなる偏光プリズム(ここではグラントムソンプリズム)を備える。図12に示すように、このプリズムは、このプリズムに入射する無偏光光束750をs極に偏光した異常光線752とp極に偏光した常光線754とに分割するのであって、異常光線752は著しく偏向することなくプリズムを通して透過され、常光線754は異常光線752に対して角度をつけて方角石と接着剤の界面から内方に反射される。両光線は、四分の一波長板745および参照レンズ726を通過し、次にレンズおよびプレートを通して鏡728によって反射される。これにより、両光線の偏光を90°回転させる。次にこれらの光線は図13に示される弁別器に再入射し、この分別器によってこれらの光線が結合されて単一の無偏光光線756を形成し、この無偏光光線756は元の光線750に対して小角度でプリズムを出る。
【0074】
次に再結合された光線756は、第2の光軸736に沿って傾斜鏡758によって反射され、これにより、結像レンズ732を通過して検出器734に入る。再結合された光線756が元の光線に対して小角度にずらされているため、鏡758を第1の光軸の一方に変位することができ、これによりこの鏡758が入力ビームを妨げることがない。
【0075】
この構成では、試料742からの全ての光が集められて、検出器734上に焦点を合わせられ、よって減衰を回避する。単一の再集束鏡728のみが要求され、試料の異なる平面を結像するために高速で調整することができる。
【符号の説明】
【0076】
20 対物レンズ
22 マッピングレンズシステム
24 ビームスプリッタ
26 参照レンズ
30 第1の光軸
32 結像レンズ
34 CCD検出器
36 第2の光軸
40 物体空間
42 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高開口数対物レンズを有する光学系用の焦点調整装置であって、
中間像区域内に像を形成するため、及び前記中間像区域内で選択された焦点面からの光を受けて再び焦点を合わせることによって像を捕捉するため、の像形成捕捉手段と、
前記中間像区域内で前記選択された焦点面の位置を調整するための焦点調整手段と、
を備えており、
前記像形成捕捉手段は少なくとも一つの高開口数レンズを含んでおり、使用中に前記高開口数対物レンズによって生じる球面収差が減少されることを特徴とする焦点調整装置。
【請求項2】
前記像形成捕捉手段が、高開口数レンズと、選択された焦点面からの像を前記中間像区域内で捕捉するように前記高開口数レンズによって形成された前記像を同じ高開口数レンズ内へ反射するための反射要素と、を含んでおり、前記焦点調整手段が、前記反射要素の軸方向位置を調整するための手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の焦点調整装置。
【請求項3】
前記焦点調整装置に入射する光からの反射された光を分割するためのビームスプリッタを含むことを特徴とする請求項2に記載の焦点調整装置。
【請求項4】
偏光ビームスプリッタと、前記反射された光の偏光を調整するための前記偏光ビームスプリッタと前記中間像区域との間に配置された偏光調整器と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の焦点調整装置。
【請求項5】
前記偏光ビームスプリッタが、第1の軸の方向に第1の偏光を有する入射光を送り、第2の軸の方向に第2の偏光を有する光を反射するように構成および配置されており、前記焦点調整装置が、前記第1の軸上の第1の中間像区域内で像を形成および捕捉するための第1の高開口数レンズおよび第1の反射要素を含む第1の像形成捕捉手段と、前記第2の軸上の第2の中間像区域内で像を形成および捕捉するための第2の高開口数レンズをおよび第2の反射要素を含む第2の像形成捕捉手段と、前記第1の捕捉された像と前記第2の捕捉された像とを再結合するための手段と、を含むことを特徴とする請求項4に記載の焦点調整装置。
【請求項6】
前記焦点調整装置に入射する光から反射された光を分割するための弁別器を含むことを特徴とする請求項5に記載の焦点調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−61688(P2013−61688A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−1600(P2013−1600)
【出願日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【分割の表示】特願2009−542219(P2009−542219)の分割
【原出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(502144729)アイシス イノベイシヨン リミテツド (18)
【Fターム(参考)】