説明

焦点調節装置及びその制御方法

【課題】 被写体が大きく移動する場合や、手ぶれなどで被写体が焦点検出領域から外れる場合でも、追尾被写体の位置に基づいて最適な焦点検出位置を選択可能にすることで追尾性能を向上させた焦点調節装置を提供する。
【解決手段】 複数の焦点検出領域を備えた焦点調節装置は、指定した追尾被写体に対応する測光領域を抽出領域に設定し、該抽出領域の測光情報を保持する設定手段と、引き続き出力される測光情報から、前記設定手段が保持する前記抽出領域の測光情報に類似した測光情報を有する測光領域を追尾被写体位置として順次検出する被写体追尾手段とを有する。検出された追尾被写体位置が焦点検出領域内である場合、該追尾被写体位置に対応する焦点検出領域を用いて焦点検出を行い、検出された追尾被写体位置が焦点検出領域外である場合、該追尾被写体位置の近傍の焦点検出領域を用いて焦点検出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調節装置に関し、特に被写体追尾機能を有するカメラ等に好適な焦点調節装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、位相差検出方式による焦点調節装置において、複数の焦点検出位置を備えるものが知られている。この種の焦点調節装置には、測光センサーから出力される画像から追尾対象とする被写体の領域をテンプレート画像とし、連続して撮像される画像毎にテンプレート画像と類似する像の位置を検出し、これに対応する焦点検出位置を選択する(所謂、被写体追尾機能)ものがある。
【0003】
このような被写体追尾機能を有する焦点調節において、追尾被写体を誤認識する場合や、追尾被写体の位置に対応する焦点検出位置で焦点検出不能になる場合、追尾被写体の位置で焦点状態を検出することができないおそれがある。これに対し、例えば、特許文献1では、複数の焦点検出位置で焦点状態を検出した結果、すべて焦点検出不能であれば、さらに多くの焦点検出位置で焦点状態を検出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−265239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1は、焦点状態を検出可能な焦点検出領域内において、段階的に焦点検出位置を拡げていくというもので、焦点検出領域外において追尾被写体の位置が検出されたときに最適な焦点検出位置を選択するものではない。
【0006】
本発明の目的は、被写体が大きく移動する場合や、手ぶれなどで被写体が焦点検出領域から外れる場合でも、追尾被写体の位置に基づいて最適な焦点検出位置を選択可能にすることで追尾性能を向上させた焦点調節装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願第1の発明は、複数の焦点検出領域を備え、撮像光学系を通過した被写体からの光束の分割方向における相対的位置ずれ量に基づいて焦点状態を検出する焦点検出手段と、前記撮像光学系によって形成される被写体像を複数の測光領域に分割して測光し、前記測光領域毎に測光情報を出力する測光手段と、指定した追尾被写体に対応する測光領域を抽出領域に設定し、該抽出領域の測光情報を保持する設定手段と、前記測光手段で引き続き出力される測光情報から、前記設定手段が保持する前記抽出領域の測光情報に類似した測光情報を有する測光領域を追尾被写体位置として順次検出する被写体追尾手段とを有し、前記焦点検出手段は、前記被写体追尾手段で検出された追尾被写体位置が前記焦点検出領域内である場合、前記追尾被写体位置に対応する前記焦点検出領域を用いて焦点検出を行い、前記被写体追尾手段で検出された追尾被写体位置が前記焦点検出領域外である場合、前記追尾被写体位置の近傍の前記焦点検出領域を用いて焦点検出を行うことを特徴とする焦点調節装置である。
【0008】
本願第2の発明は、複数の焦点検出領域を備え、撮像光学系を通過した被写体からの光束の分割方向における相対的位置ずれ量に基づいて焦点状態を検出する焦点検出ステップと、前記撮像光学系によって形成される被写体像を複数の測光領域に分割して測光し、前記測光領域毎に測光情報を出力する測光ステップと、指定した追尾被写体に対応する測光領域を抽出領域に設定し、該抽出領域の測光情報を保持する設定ステップと、前記測光ステップにより引き続き出力される測光情報から、前記設定ステップで保持する前記抽出領域の測光情報に類似した測光情報を有する測光領域を追尾被写体位置として順次検出する被写体追尾ステップとを有し、前記焦点検出ステップにおいて、前記被写体追尾ステップで検出された追尾被写体位置が前記焦点検出領域内である場合、前記追尾被写体位置に対応する前記焦点検出領域を用いて焦点検出を行い、前記被写体追尾ステップで検出された追尾被写体位置が前記焦点検出領域外である場合、前記追尾被写体位置の近傍の前記焦点検出領域を用いて焦点検出を行うことを特徴とする焦点調節装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被写体が大きく移動する場合や、手ぶれなどで被写体が焦点検出領域から外れる場合でも、追尾被写体の位置に基づいて最適な焦点検出位置を選択可能にすることで追尾性能を向上させた焦点調節装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に関わる焦点検出装置のブロック図である。
【図2】本実施形態に関わる焦点検出装置の構成の模式図である。
【図3】本実施形態に関わる焦点検出装置の焦点検出センサーと測光センサーの模式図である。
【図4】本実施形態に関わる焦点検出装置の動作フローを説明する図である。
【図5】本実施形態に関わる焦点検出装置の被写体追尾処理のフローを説明する図である。
【図6】本実施形態に関わる焦点検出装置の被写体追尾処理を説明する図である。
【図7】本実施形態に関わる焦点検出装置の被写体追尾処理を説明する図である。
【図8】本実施形態に関わる焦点検出装置の焦点検出位置の設定のフローを説明する図である。
【図9】本実施形態に関わる抽出領域の設定のフローを説明する図である。
【図10】本実施形態に関わる焦点検出装置の焦点検出位置の設定と抽出領域の設定を説明する図である。
【図11】本実施形態に関わる焦点検出装置の焦点検出位置の設定と抽出領域の設定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に関わるカメラ100(焦点検出装置)のブロック図を示したものである。
【0012】
図1において、撮像素子107は、撮像光学系101を通過した被写体光学像を形成するCCDやCMOSセンサー等である。撮像素子107は、複数の画素から成り、撮像光学系101によって形成される被写体像を光電変換して撮像信号を出力する。絞りシャッター110は、カメラ100本体内に入射する光の量を調節する。シャッター111は、撮像素子107の露光時間を調節する。
【0013】
図1では、主ミラー102が撮影光束内に挿入された状態(ミラーダウン)を示している。半透過部を有する主ミラー102は、撮影時には撮影光束外へ退避し、焦点検出時には撮影光束内(光路中)に斜設される。また、主ミラー102は、撮影光束内に斜設された状態で、撮像光学系101を通過した光束の一部をピント板103、ペンタプリズム104、及び、接眼レンズ105から構成されるファインダ光学系に導く。該光束が測光光学系109に入射し、撮像光学系101を通過した被写体光学像の輝度信号と色差信号が検出される。
【0014】
サブミラー106は、主ミラー102の動作に同期して主ミラー102に対して折り畳み、展開可能に構成されている。主ミラー102の半透過部を通過した光束の一部は、サブミラー106によって下方へ反射され、位相差方式の測距光学系108に入射し、撮像光学系101の焦点状態が検出される。
【0015】
次に、本発明の実施形態に関わるカメラ100の機能について、図2と図3の模式図を用いて説明する。なお、図2において、図1と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。また、図3において、図2と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。
【0016】
システム制御部201は、カメラ100全体の制御を行うCPU、記憶装置であるRAMなどから構成され、AF制御部202など後述する各部の動作を適宜制御する。AF制御部202は、システム制御部201に接続され、測距光学系108に備え付けられた焦点検出センサー203を駆動する。焦点検出センサー203は、図3(a)に示す61点の焦点検出位置301の配置に対応する一対のラインセンサー302で構成されている。AF制御部202は、サブミラー106を介して入射される被写体からの光束を電気信号に変換し、該光束の分割方向における一対の像信号のずれ量に基づいて各ラインセンサーに対応する焦点検出位置のデフォーカス量を計算する。
【0017】
AE制御部204は、システム制御部201に接続され、測光光学系109に備え付けられた測光センサー205を駆動する。測光センサー205は、図3(b)に示す複数の測光領域に分割され、各測光領域303においてRGB成分を検出する複数画素から構成されている。AE制御部204は、撮像光学系101を通過した被写体光学像の光束を電気信号に変換し、測光画像データを読み出し、このデータに基づいて自動露出演算を行い、結果をシステム制御部201に出力する。システム制御部201は、AE制御部204から出力された自動露出演算の結果に基づいて、絞りシャッター110の絞りを制御し、カメラ本体内に入射する光の量を調節する。さらに、AE制御部204は、レリーズ時にシャッター111を制御し、撮像素子107の露光時間を調節する。
【0018】
また、AE制御部204は、測光センサー205から読み出した測光画像データを用いて被写体追尾を行い、被写体の位置データをシステム制御部201に出力する。システム制御部201は、AE制御部204から出力された追尾被写体の位置データをAF制御部202に出力する。AF制御部202は、システム制御部201から出力された追尾対象位置とその近傍にある焦点検出位置のデフォーカス量を計算し、最適な1つの焦点検出位置を選択する。
【0019】
レンズ制御部206は、システム制御部201に接続され、撮像光学系101を駆動する。ミラー制御部207は、システム制御部201に接続され、主ミラー102を撮影光束外へ駆動する。撮像素子制御部208は、システム制御部201に接続され、撮像素子107を駆動し、撮像光学系101によって形成される被写体像を光電変換してシステム制御部201に撮像信号を出力する。デジタル信号処理部209は、システム制御部201に接続され、撮像素子制御部208を介して撮像素子107から読み出される撮像信号について、シェーディング補正やガンマ補正などの画像処理を施す。
【0020】
操作部210は、システム制御部201に接続され、カメラ100(撮像素子)の電源をオン・オフするための電源スイッチ、レリーズボタンなど、カメラ100(撮像素子)を操作するための操作部材が設けられている。これらのスイッチやボタンを操作すると、その操作に応じた信号がシステム制御部201に入力される。なお、レリーズボタンには、撮影者により操作されるレリーズボタンの第1ストローク操作(半押し操作)によりONするレリーズスイッチSW1と、レリーズボタンの第2ストローク操作(全押し操作)によりONするレリーズスイッチSW2とが接続されている。
【0021】
ここで、図3(a)と(b)を用いて本実施形態の焦点検出センサー203の焦点検出領域と測光センサー205の測光領域について説明する。なお、図3において図2と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。焦点検出センサー203の焦点検出領域は、図3(a)に示す61点の焦点検出位置と、それに対応して配置されたラインセンサー302からなる。図3(b)において、測光センサー205は、複数の測光領域303に分割されている。
【0022】
続いて、図4を用いて本実施形態に関わるカメラ100の動作フローを説明する。なお、図4において、図1および図2と同じ構成要素には同じ参照番号を付している。
【0023】
図4では、システム制御部201、AF制御部202、AE制御部204の3つの制御部が並列的に動作していることを示している。システム制御部201は、ステップ401で操作部210のレリーズボタンからレリーズスイッチSW1またはSW2の入力を受け付け、ステップ402のAE/AFにおいてAF制御部202およびAE制御部204の処理を開始させる。その後、システム制御部201は、ステップ403のミラーアップ動作においてミラー制御部207を介して主ミラー102を撮影光束外へ駆動させる。また、システム制御部201は、ステップ404の撮像において撮像素子制御部208を介して撮像素子107を駆動させる。さらに、システム制御部201は、ステップ405のミラーダウン動作において、ミラー制御部207を介して主ミラー102を撮影光束内に駆動する。
【0024】
AF制御部202は、レリーズスイッチSW1またはSW2の入力を受け付けたシステム制御部201からのAF開始データD01を受けて動作を開始する。
【0025】
ステップ406では、AF制御部202は、焦点検出センサー203に蓄積を行う。ステップ407では、AF制御部202は、焦点検出センサー203から像信号を読み出す。ステップ408では、AF制御部202は、読み出した像信号に基づいて焦点検出演算を行い、各焦点検出位置のデフォーカス量を計算し、最適な1つの焦点検出位置を選択する。ここで、システム制御部201から後述するデータD04が通知されるのを待つ。
【0026】
AE制御部204は、レリーズスイッチSW1またはSW2の入力を受け付けたシステム制御部201からのAE開始データD02を受けて動作を開始する。
【0027】
ステップ411では、AE制御部204は、測光センサー205に電荷蓄積を行う。ステップ412では、AE制御部204は、測光センサー205から輝度信号および色差信号を持つ画像データを読み出す。ステップ413では、AE制御部204は、被写体追尾を行う。被写体追尾では、後述する追尾テンプレート生成ステップ417で生成されたテンプレート画像を追尾対象とし、ステップ412で読み出した画像データとテンプレートマッチングを行う。これにより追尾被写体の位置を検出し、テンプレートマッチングの結果に基づいて追尾の信頼性を求める。詳細な処理の説明は後述する。
【0028】
AE制御部204は、ステップ413で検出した追尾被写体の位置と追尾の信頼性のデータをD03としてシステム制御部201に通知する。システム制御部201は、AE制御部204から追尾被写体の位置と追尾の信頼性のデータD03が通知されると、AF制御部202に追尾被写体の位置と追尾の信頼性のデータD03をD04として通知する。
【0029】
AF制御部202は、追尾被写体の位置と追尾の信頼性のデータD04が通知されると、ステップ409において追尾被写体の位置に対応する焦点検出位置を設定する。さらにステップ410において、AF制御部202は、その焦点検出位置のデフォーカス量を計算し、ステップ408で予め選択した1つの焦点検出位置と比較し、最適な1つの焦点検出位置を選択する。AF制御部202は、この選択した焦点検出位置の情報をデータD05としてシステム制御部201に通知する。ステップ409の焦点検出位置の設定の詳細な説明は後述する。ステップ414では、AE制御部204は、ステップ412で読み出した画像データに基づいて露出演算を行い、結果をデータD06としてシステム制御部201に通知する。
【0030】
ステップ415では、ステップ412で読み出した画像データに基づいて顔検出する。顔検出についてはすでに多くの手法が提案されており、詳細な説明は省略する。例えば、特開平8−63597号公報では、人の顔の形状に相当する顔候補領域を決定し、この顔候補領域の特徴量から顔領域を決定するような手法が提案されている。また、画像から人の顔の輪郭を抽出することにより顔候補領域を検出する手法や、顔の様々な形状をした複数のテンプレートとの相関値を計算し、この相関値に基づいて顔候補領域とする手法が提案されている。
【0031】
ステップ416で、AE制御部204は、ステップ415で検出された顔の領域、AF選択焦点検出位置情報、テンプレート生成要求フラグで構成されるデータD07に基づいて、ステップ412で読み出した画像データからテンプレートとして抽出する領域を決定する。領域の決定においては、ステップ415で顔検出が成立したかどうかで分岐処理を行う。まず、ステップ415で顔検出が成立した場合には、AE制御部204は、検出した顔の領域を中心とする一定領域をテンプレート抽出領域に設定する。一方、ステップ415で顔検出が成立しなかった場合には、AE制御部204は、直前の被写体追尾処理ステップ413で検出した追尾対象位置を中心とする一定領域をテンプレート抽出領域に設定する。
【0032】
上記は顔の領域を優先して追尾させるための処理であるが、被写体追尾処理の結果に応じて、顔検出が成立しても直前の被写体追尾処理ステップ413で検出した追尾対象位置を中心とする一定領域をテンプレート抽出領域に設定しても良い。
【0033】
ステップ417では、AE制御部204は、ステップ416で設定したテンプレートの抽出領域内の色分布を計算し、追尾対象の特徴色を検出する。特徴色の検出は次のようにして行う。まず、テンプレート抽出領域内の各画素の色信号をRGB色データに変換し、R信号、G信号、B信号のそれぞれの強さに基づいてRGBヒストグラムを作成する。これをテンプレート抽出領域内の全ての画素について行い、最も度数の多い色を追尾対象の特徴色とする。
【0034】
続いて、ステップ413の被写体追尾処理について図5と図6を用いて説明する。図5は、被写体追尾処理のフローチャートを示した図であり、すべてAE制御部204が処理を行う。図6(a)では、図3(a)と同様に61点の焦点検出位置が示されている。撮影者が選択した焦点検出位置601に基づいて、ステップ416において図6(b)の入力画像602からテンプレート抽出領域603aが設定され、図6(c)のテンプレート画像603bが生成される。
【0035】
ステップ501では、AE制御部204は、測光センサー205から読み出したカラー画像データに対して色変換処理を行い、図6(d)の色変換画像606を生成する。具体的には、前の駒の追尾テンプレート生成ステップ417で抽出された特徴色(図6(c)の斜線部分の色)を高輝度に、それ以外の色を低輝度に変換する。これは、追尾対象の特徴色を強調した状態で輝度画像を生成することでテンプレートマッチングの演算負荷を小さくするためである。
【0036】
ステップ502では、前の駒の追尾テンプレート生成ステップ417で作成したテンプレート画像603bを用いてテンプレートマッチングを行い、色変換画像606の中でテンプレート画像と最も相関の高い(類似した)領域を検出する。AE制御部204は、この最も相関の高い領域について、追尾被写体の位置607と相関量に基づいて求められる追尾の信頼性をデータD03としてシステム制御部201に通知する。システム制御部201は、追尾被写体の位置607と追尾の信頼性をデータD04としてAF制御部202に通知する。
【0037】
なお、テンプレートマッチングの方法としては、相互相関関数や、残差逐次検定法などを用いれば良い。また、追尾の信頼性を求めるには、相関量が設定した閾値よりも高ければ追尾の信頼性が高いと判断し、閾値よりも低ければ追尾の信頼性が低いと判断すれば良い。テンプレートマッチングおよび追尾の信頼性を求める方法は、これらの方法に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0038】
続いて、ステップ410の焦点検出位置再選択について図7を用いて説明する。
【0039】
ステップ410では、AF制御部202は、システム制御部201からデータD04として通知される追尾被写体の位置607に対応する図7の焦点検出位置604を設定する。AF制御部202は、設定された焦点検出位置604とその周囲の焦点検出位置605a〜dのデフォーカス量を計算し、最適な1つの焦点検出位置を選択する。
【0040】
ここで、周囲の焦点検出位置605a〜dのデフォーカス量を計算するのは、追尾被写体の位置607が焦点検出位置と焦点検出位置の間に存在する場合があるからである。追尾被写体の位置607と焦点検出位置604の位置が一致する場合は周囲の焦点検出位置605a〜dのデフォーカス量を計算しないようにしても良い。また、追尾の信頼性に応じて、信頼性が高いなら周囲の焦点検出位置605a〜dのデフォーカス量を計算しないようにしても良い。
【0041】
以下、図8を用いて、本発明の実施例によるステップ409の焦点検出位置の設定について説明する。
【0042】
ステップ701では、システム制御部201からAF制御部202にデータD04として通知される追尾の信頼性に応じて、AF制御部202は、追尾が成立したがどうかを判定する。追尾の信頼性が高ければ追尾が成立したと判定し、ステップ702へ進む。一方、追尾の信頼性が低ければ、焦点検出位置は設定せずに、ステップ408で予め選択した焦点検出位置の情報をD05としてシステム制御部201に通知する。
【0043】
ステップ702では、システム制御部201からAF制御部202にデータD04として通知される追尾被写体の位置が焦点検出センサー203の焦点検出領域内か外かの判定を行う。追尾被写体の位置が焦点検出領域内であればステップ703へ進み、焦点検出領域外であればステップ704へ進む。
【0044】
ステップ703では、AF制御部202は、追尾被写体の位置に対応する焦点検出位置を設定する。
【0045】
ステップ704では、AF制御部202は、追尾被写体の位置が初めて焦点検出領域外になったかどうかを判定する。初めてであればステップ705へ進み、初めてでなければステップ706へ進む。
【0046】
ステップ705では、AF制御部202は、現在の時刻を記憶する。これを領域外タイマーとする。
【0047】
ステップ706では、AF制御部202は、ステップ705で記憶した時刻からの経過時間を計り、設定された時間を経過したかどうかを判定する。設定された時間を経過していなければステップ707へ進み、経過していればステップ708へ進む。
【0048】
ステップ707では、AF制御部202は、追尾被写体の位置の近傍の焦点検出位置を選択して設定する。
【0049】
ステップ708では、システム制御部201からAF制御部202にデータD04として通知される追尾の信頼性に応じて、信頼性が高ければステップ707へ進み、信頼性が低ければステップ709へ進む。
【0050】
ステップ709では、AF制御部202は、AE制御部204に対して選択している焦点検出位置の位置でテンプレートを更新させるためにテンプレート生成要求フラグをセットする。テンプレート生成要求フラグは、ステップ707で選択した焦点検出位置とともにデータD05としてシステム制御部201に通知され、システム制御部201を介してデータD07としてAE制御部204に通知される。
【0051】
続いて、図9を用いて、本発明の実施例による、ステップ416の抽出領域の設定について説明する。
【0052】
ステップ711では、AE制御部204は、被写体追尾処理が1回目か2回目以降かを判定する。1回目ならステップ712へ進み、2回目以降ならステップ715へ進む。
【0053】
ステップ712では、AE制御部204は、ステップ415で顔検出が成立したかどうかを判定する。顔検出が成立していなければステップ713へ進み、成立していればステップ714へ進む。
【0054】
ステップ713では、AE制御部204は、ユーザー選択焦点検出位置に対応する測光センサー205の測光領域を設定する。
【0055】
ステップ714では、AE制御部204は、ユーザー選択焦点検出位置に最も近い顔の領域を設定する。
【0056】
ステップ715では、AE制御部204は、システム制御部201から通知されるデータD07のテンプレート生成要求フラグがセットされているかどうかの判定を行う。テンプレート生成要求フラグがセットされていればステップ716へ進み、セットされていなければ抽出領域の設定の処理を終了する。
【0057】
ステップ716では、AE制御部204は、システム制御部201から通知されるデータD07に含まれる選択された焦点検出位置に対応する測光領域を設定する。
【0058】
以上、説明した本発明の実施例によれば、被写体が大きく移動したか、または、手ぶれなどで追尾被写体を焦点検出領域から外してしまっても、追尾対象とした被写体を追わせ続けることができる。
【0059】
図10(a)において、撮影者が焦点検出位置801を選択し、被写体Aを狙っているとする。図10(b)において、AE制御部204は、図9のステップ711の追尾回数の判定において追尾回数が1回目であることからステップ415の顔検出を行い、顔の領域804と805を検出したことを示している。この場合、図9のステップ712の顔検出の成立/不成立の判定において顔検出は成立している、したがって、ステップ714において、ユーザーが選択した焦点検出位置801に最も近い顔の領域804をテンプレートとして抽出する領域に設定する。そして、ステップ417により設定されたテンプレート抽出領域804から追尾対象の特徴色を設定し、追尾を開始する。
【0060】
AF制御部202は、図4のステップ409の焦点検出位置の設定において、図8のステップ702により追尾被写体の位置804は焦点検出領域内であると判定し、ステップ703により追尾被写体の位置に対応する焦点検出位置802を設定する。そして、ステップ410の焦点検出位置再選択において、AF制御部202は、焦点検出位置802および周囲の焦点検出位置803a〜cの焦点検出位置のデフォーカス量を計算し、最適な1つの焦点検出位置を選択する。
【0061】
続いて、図11(a)では、追尾を開始してから被写体が大きく移動したか、または、手ぶれなどで追尾被写体Aを焦点検出領から外してしまった場合を示している。このとき、AE制御部204は、図9のステップ711の追尾回数の判定において、追尾回数が2回目以降であるので、ステップ715へ進む。ステップ715のテンプレート生成要求フラグがセットされているかどうかの判定において、テンプレート生成要求フラグがセットされていないので抽出領域の設定を終了する。つまり、以前に抽出した追尾対象の特徴色を追尾し続ける。
【0062】
AF制御部202は、図4のステップ409の焦点検出位置の設定において、図8のステップ701の追尾成立の判定で追尾は成立しているのでステップ702に進む。ステップ702において、追尾被写体の位置808は焦点検出領域外であると判定し、ステップ704に進む。ステップ704において、初めての焦点検出領域外なので、ステップ705に進んで時刻を記憶し、ステップ707で追尾被写体の位置804の近傍の焦点検出位置802を設定する。そして、ステップ410の焦点検出位置再選択において、焦点検出位置806および周囲の焦点検出位置807a〜cの焦点検出位置のデフォーカス量を計算し、最適な1つの焦点検出位置を選択する。
【0063】
AF制御部202は、ステップ706の領域外タイマー設定時間経過の判定において領域外タイマーが設定時間内の場合、ステップ707においてAE制御部204で追尾している被写体の位置の近傍の焦点検出位置を設定する。これにより、追尾被写体の領域の一部分で焦点状態を検出でき、追尾被写体が再び焦点検出領域内に戻ってきたときに大きく焦点検出位置を変更せずに追尾被写体の位置に対応する焦点検出位置で焦点状態を検出することができる。
【0064】
一方、AF制御部202は、ステップ706の領域外タイマー設定時間経過の判定において領域外タイマーが設定時間を経過した場合、ステップ708において追尾の信頼性が高いかどうかを判定する。ステップ708において追尾の信頼性が高いと判定すれば、追尾被写体が再び焦点検出領域内に戻ってくる可能性があるとし、継続して被写体の位置の近傍の焦点検出位置を設定する。一方、追尾の信頼性が低いと判定すれば、追尾被写体が再び焦点検出領域内に戻ってくる可能性が低いとし、現在選択している焦点検出位置が追尾被写体の領域の一部分である可能性が高いことからステップ709においてテンプレート生成要求フラグをセットする。このテンプレート生成要求フラグがセットされると、AE制御部204は、図4のステップ416の抽出領域の設定において、図9のステップ715のテンプレート生成要求フラグがセットされているかどうかの判定で、ステップ716に進む。ステップ716では、AE制御部204は、追尾被写体の領域の一部分である可能性が高い現在選択している焦点検出位置に対応する測光領域をテンプレートの抽出領域に設定する。そして、図4のステップ417において、AE制御部204は、追尾対象とする特徴色を更新する。このように、本実施形態によれば、継続して追尾被写体の領域の一部分の焦点検出位置で焦点状態を検出できる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 カメラ
101 撮像光学系
108 測距光学系
109 測光光学系
201 システム制御部
202 AF制御部
203 焦点検出センサー
204 AE制御部
205 測光センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の焦点検出領域を備え、撮像光学系を通過した被写体からの光束の分割方向における相対的位置ずれ量に基づいて焦点状態を検出する焦点検出手段と、
前記撮像光学系によって形成される被写体像を複数の測光領域に分割して測光し、前記測光領域毎に測光情報を出力する測光手段と、
指定した追尾被写体に対応する測光領域を抽出領域に設定し、該抽出領域の測光情報を保持する設定手段と、
前記測光手段で引き続き出力される測光情報から、前記設定手段が保持する前記抽出領域の測光情報に類似した測光情報を有する測光領域を追尾被写体位置として順次検出する被写体追尾手段とを有し、
前記焦点検出手段は、前記被写体追尾手段で検出された追尾被写体位置が前記焦点検出領域内である場合、前記追尾被写体位置に対応する前記焦点検出領域を用いて焦点検出を行い、前記被写体追尾手段で検出された追尾被写体位置が前記焦点検出領域外である場合、前記追尾被写体位置の近傍の前記焦点検出領域を用いて焦点検出を行うことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項2】
前記被写体追尾手段で検出された追尾被写体位置が前記焦点検出領域外である場合、前記焦点検出手段は、前記追尾被写体位置の近傍の前記焦点検出領域を用いて焦点検出を行い、
所定時間経過後、前記被写体追尾手段による追尾の信頼性が閾値より低ければ、前記設定手段は、前記抽出領域を再設定することを特徴とする請求項1に記載の焦点調節装置。
【請求項3】
ユーザが焦点検出位置を指定するための指定手段と、
特定の被写体を検出する被写体検出手段をさらに有し、
前記設定手段は、前記被写体検出手段により特定の被写体が検出された場合、前記指定手段により指定された位置の最も近傍に存在する前記特定の被写体の領域を前記抽出領域に設定し、前記被写体検出手段により特定の被写体が検出されなかった場合、前記指定手段により指定された位置に対応する領域を前記抽出領域に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の焦点調節装置。
【請求項4】
複数の焦点検出領域を備え、撮像光学系を通過した被写体からの光束の分割方向における相対的位置ずれ量に基づいて焦点状態を検出する焦点検出ステップと、
前記撮像光学系によって形成される被写体像を複数の測光領域に分割して測光し、前記測光領域毎に測光情報を出力する測光ステップと、
指定した追尾被写体に対応する測光領域を抽出領域に設定し、該抽出領域の測光情報を保持する設定ステップと、
前記測光ステップにより引き続き出力される測光情報から、前記設定ステップで保持する前記抽出領域の測光情報に類似した測光情報を有する測光領域を追尾被写体位置として順次検出する被写体追尾ステップとを有し、
前記焦点検出ステップにおいて、前記被写体追尾ステップで検出された追尾被写体位置が前記焦点検出領域内である場合、前記追尾被写体位置に対応する前記焦点検出領域を用いて焦点検出を行い、前記被写体追尾ステップで検出された追尾被写体位置が前記焦点検出領域外である場合、前記追尾被写体位置の近傍の前記焦点検出領域を用いて焦点検出を行うことを特徴とする焦点調節装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−97312(P2013−97312A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242428(P2011−242428)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】