焦電型光検出器、焦電型光検出装置および電子機器
【課題】 複数の光吸収領域で発生した熱を、複数の焦電キャパシターの焦電体に効率的に伝達して、焦電型光検出器の検出出力を高めること。
【解決手段】 焦電型光検出器は、基体20と、支持部材30と、焦電体を含む複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4とを有する。支持部材30は、第1面30Aと、第1面に対向する第2面30Bとを含み、第2面と基体20との間に空洞部100が形成される。複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4は支持部材30上に支持される。複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々は、対応する各一つの光吸収領域AR1〜AR4を有する。各一つの光吸収領域AR1〜AR4の重心G1a〜G1dを平面視で二次元面に投影した投影点の位置は、各一つの光吸収領域AR1〜AR4と対応する各一つの焦電キャパシターCapa1〜Capa4の焦電体12の輪郭線を二次元面に投影した領域J1〜J4の内部に存在する。
【解決手段】 焦電型光検出器は、基体20と、支持部材30と、焦電体を含む複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4とを有する。支持部材30は、第1面30Aと、第1面に対向する第2面30Bとを含み、第2面と基体20との間に空洞部100が形成される。複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4は支持部材30上に支持される。複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々は、対応する各一つの光吸収領域AR1〜AR4を有する。各一つの光吸収領域AR1〜AR4の重心G1a〜G1dを平面視で二次元面に投影した投影点の位置は、各一つの光吸収領域AR1〜AR4と対応する各一つの焦電キャパシターCapa1〜Capa4の焦電体12の輪郭線を二次元面に投影した領域J1〜J4の内部に存在する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電型光検出器、焦電型光検出装置、電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
光センサーとして、熱型光検出器が知られている。熱型光検出器は、物体から放射された光を光吸収層によって吸収し、光を熱に変換し、温度の変化を熱検出素子によって測定する。熱型光検出器としては、例えば、光吸収にともなう温度上昇を熱起電力として直接検出するサーモパイル、電気分極の変化として検出する焦電型素子、温度上昇を抵抗変化として検出するボロメータ等がある。熱型光検出器は、測定できる波長帯域が広い特徴がある。
【0003】
熱型光検出器の一例である焦電型光検出器では、物体から放射された光の一例である赤外線を、例えば赤外線吸収層によって吸収し熱に変換する。その熱を焦電体に与えることによって、焦電体の自発分極量の変化が生じる。その変化量に基づく焦電流によって赤外線量を検出する。
【0004】
近年、半導体製造技術(MEMS技術等)を利用して、より小型の熱型光検出器を製造する試みがなされている。特許文献1には、焦電層を備えたモノリシック感熱センサーが記載されている。この焦電型光検出器では、集積回路基板上に半導体製造技術を用いて焦電型光検出素子が形成される。特許文献1の図6には、誘電体からなる焦電材料薄膜を電極で挟んで構成される二つの焦電型素子が共通板により接続される構成が開示される。
【0005】
また、特許文献2の図2には、焦電膜を備えた赤外線センサーが記載されている。この焦電膜を備えたセンサーでは、基板に支持された絶縁膜上に下部電極、焦電膜、上部電極がこの順に形成され、上部電極および焦電膜の上には光吸収膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−271344号公報
【特許文献2】特開平5−187917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、焦電型光検出器の検出出力を高めることが求められている。入射光に起因した熱によって生成される焦電キャパシターでの自発分極量に基づく出力電圧は、受光領域の面積、焦電キャパシターの面積、焦電キャパシターの抵抗などに依存する。
【0008】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、複数の光吸収領域で発生した熱を、複数の焦電キャパシターの焦電体に効率的に伝達して、焦電型光検出器の検出出力を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様に係る焦電型光検出器は、
基体と、
第1面と、前記第1面に対向する第2面とを含み、前記第2面と前記基体との間に空洞部を介して配置される支持部材と、
前記支持部材に支持された、それぞれ焦電体を含む複数の焦電キャパシターと、
前記複数の焦電キャパシターのそれぞれに接して設けられる光吸収層と、
を有し、
前記複数の焦電キャパシターは電気的に接続され、
前記光吸収層は前記複数の焦電キャパシターの各々に対応する複数の光吸収領域からなり、
基体の厚み方向からの平面視で、前記複数の光吸収領域の各々の重心は、前記複数の光吸収領域の各々が対応する各一つの焦電キャパシターの前記焦電体と重なる位置に存在する焦電型光検出器に関する。
【0010】
本発明の一態様では、各一つの光吸収領域で吸収された光が、熱として各一つの焦電キャパシターの焦電体に伝達される。焦電体は、光に基づく熱による焦電効果(パイロ電子効果)によって自発分極量が変化し、その変化量を求めることで光量(熱量)の大きさを検出するものである。この際、一つの支持部材に搭載された複数の焦電キャパシターは、共通画素(一画素)を構成するもので、同時に各一つの光吸収領域に入射された光は、各一つの焦電キャパシターにて同時に検出されなければならない。本発明の一態様では、各一つの光吸収領域で吸収された熱が各一つの焦電キャパシターの焦電体に伝達され熱伝達特性を揃えることができる。よって、例えば、時間軸上における生成された電荷のピーク(山)が揃い、複数の焦電キャパシターにて同時検出が可能となって、焦電型光検出器の検出出力を高めることができる。つまり、焦電型光検出器の熱時定数が小さくなり、例えば複数の焦電型光検出器の出力に基づいて二次元画像熱分布を出力する際には、その画像を高フレームレートで表示することができる。
【0011】
ここで、複数の焦電キャパシターを覆う領域に一つの光吸収部材を配置した場合、この一つの光吸収部材が分割されて、複数の焦電キャパシターの各々に対応する一つの光吸収領域となる。このほか、複数の焦電キャパシターをそれぞれ覆う領域に複数の光吸収部材を設けても良く、この場合一つの光吸収部材が一つの光吸収領域となる。
【0012】
なお、複数(n個、nは2以上の整数)の焦電キャパシターを支持部材上で分極方向が揃う方向に直列に接続することができる。例えば、単体で配置される焦電キャパシターとそれぞれ同一電極面積のn個の焦電キャパシターを直列接続すると、n個の焦電キャパシターの合成抵抗がn倍になる。この効果によって、出力電圧は、理論上、1個の焦電素子で構成される焦電型熱検出素子の出力電圧のn倍とすることができる。ただし、本発明の一態様は複数の焦電キャパシターを必ずしも支持部材上で直列接続するものに限らず、複数の焦電キャパシターからの信号を個々に取り出しても良い。
【0013】
(2)本発明の一態様に係る焦電型光検出器では、前記平面視で、前記複数の光吸収領域の各々の重心は、前記複数の光吸収領域の各々が対応する各一つの焦電キャパシターの前記焦電体の重心とは重なりを有することができる。
【0014】
このようにすれば、一つの光吸収領域内の各所で発生した熱が、一つの光吸収領域の重心付近に均等に集まってくる。その熱は、一つの光吸収領域の重心と平面視にて重なりを有する焦電体の重心に効率的に伝達される。よって、各焦電キャパシターでは熱/電気変換によって、ほぼ同様に、バラツキ少なく電荷を生成することができる。
【0015】
(3)本発明の一態様に係る焦電型光検出器では、前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体は、輪郭がn(nは3以上の整数)角形であって、第1輪郭線ないし第n輪郭線を含み、前記複数の焦電キャパシターの各々に対応する複数の光吸収領域の各々の輪郭は、前記焦電体の第m輪郭線(1≦m≦n)に対向する第m対向輪郭線を有し、前記第m輪郭線と前記第m対向輪郭線との間の距離dmは、mの値に拘わらず一定とすることができる。
【0016】
本態様では、一つの光吸収領域と一つの焦電体とは、相似形のn角形となる。よって、一つの光吸収領域では第1重心から第m対向輪郭線までの距離がmの値に拘わらず等しく、一つの焦電体でも第2重心から第m輪郭線までの距離がmの値にかかわらず等しくなる。これによって、一つの光吸収領域内で発生した熱を、一つの焦電キャパシターの焦電体に均等に集めることができる。
【0017】
(4)本発明の一態様に係る焦電型光検出器では、前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体の輪郭は、円または楕円とすることができる。
【0018】
支持部材における応力緩和の観点からは、焦電キャパシターの焦電体の輪郭は、円または楕円の方がすぐれている。なお、光吸収領域の輪郭は、円や楕円、あるいは矩形のどちらでもよいが、応力緩和という観点からは円または楕円の方が優れている。
【0019】
(5)本発明の一態様に係る焦電型光検出器では、前記複数の焦電キャパシターの各々は、前記焦電体を挟む第1電極及び第2電極を含み、前記第1電極は前記支持部材に支持され、かつ前記平面視における前記第1電極の面積が前記第2電極の面積よりも大きいプレーナー型キャパシターとすることができる。
【0020】
いわゆるプレーナー構造とすることで、支持部材上に搭載される第1電極への配線を支持部材上に形成することができる。また、拡大された第1電極上に光吸収領域を形成することができ、光吸収面積が拡大されると共に、第1電極が集熱パスの効果を発揮して、光吸収領域の周縁で発生した熱を焦電体が存在する中心側に集熱させることができる。
【0021】
(6)本発明の一態様では、前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体は、側面を電気的絶縁性の金属化合物層により覆うことができる。焦電体は酸化物であり、還元されると酸素欠損が生ずる。金属化合物層は還元ガスバリア性を有し、焦電体が還元されることを抑制できる。こうして、焦電体の酸素欠損を抑制できるので、焦電キャパシターを小型化して一つの支持部材上にて複数の焦電キャパシターを搭載させることが可能となる。
【0022】
(7)本発明の一態様では、前記光吸収層は、前記複数の焦電キャパシターの各々に対応して分割形成された複数の光吸収層にて形成することができる。
【0023】
光吸収層が個別化されていることから、1個1個の吸収層の熱が周囲から逃げ、よって、個々の焦電キャパシターのリセット時間を早めることができる。なお、一つの光吸収層を領域毎に分割して個々の光吸収領域とする場合には、光吸収層を個別化する場合に比べて、光吸収層面積を増大させることができ、分割のための製造プロセスを省略できる利点がある。
【0024】
(8)本発明の一態様では、前記支持部材は、前記複数の焦電キャパシターのうち隣り合う2つの焦電キャパシターの間の領域に、貫通孔を有することができる。
【0025】
ここで、支持部材、複数の焦電キャパシター等を基体上に形成する際には、空洞部に犠牲層が埋め込まれている。この犠牲層は、基体上にて支持部材、複数の焦電キャパシター等を形成した後に、エッチチャントを用いて等方性エッチングされて除去される。そのエッチング時に、貫通孔がエッチャントの供給口として使用される。それにより、支持部材の下方の犠牲層までエッチャントが回り込みやすくなって、等方性エッチングにより犠牲層を除去し易くなる。
【0026】
(9)本発明の他の態様は、上述した焦電型光検出器を交差する二つの直線方向に沿って二次元配置した焦電型光検出装置を定義している。
【0027】
これによって、複数の焦電型光検出器(焦電型光検出素子)が二次元に配置された(例えば、直交2軸の各々に沿ってアレイ状に配置された)、焦電型光検出装置(焦電型光アレイセンサー)が実現される。
【0028】
(10)本発明のさらに他の態様は、上述した焦電型光検出器または焦電型光検出装置を有する電子機器を定義している。
【0029】
上記いずれかの焦電型光検出器は、光の検出感度が高い。よって、この焦電型光検出器を搭載する電子機器の性能が高まる。電子機器としては、例えば、赤外線センサー装置、サーモグラフィー装置、車載用夜間カメラや監視カメラ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1(A)(B)は、本発明の第1実施形態に係る4個のキャパシターを有する焦電型光検出器の概略平面図及び二次元投影面を示す図である。
【図2】図2(A)は第1実施形態の光吸収領域の面積と素子面積を示し、図2(B)は第1比較例の光吸収領域の面積と素子面積を示し、図2(C)は比較例2の光吸収領域の面積と素子面積を示す図である。
【図3】第1実施形態の直列接続されたキャパシターのバイアス印加状態を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る直列4個のキャパシターを有する焦電型光検出器の概略平面図である。
【図5】第1実施形態に係る直列3個のキャパシターを有する焦電型光検出器の概略断面図である。
【図6】図6(A)(B)は、2つの焦電キャパシターの接続配線例を示す図である。
【図7】スタック型の焦電キャパシターを有する焦電型光検出器に本発明を適用した実施形態を示す断面図である。
【図8】複数の光吸収領域の輪郭線と複数の焦電キャパシターの各々の焦電体の輪郭との関係を説明するための図である。
【図9】図9(A)不均一な熱伝達となる光吸収領域と焦電キャパシターの焦電体とのレイアウトを示す図であり、図9(B)は不均一な熱伝達特性を示す図である。
【図10】複数の焦電キャパシター間に貫通孔が形成された支持部材の平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る焦電型光検出装置(焦電型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図である。
【図12】焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む本発明の第3実施形態に係る赤外線カメラ(電子機器)のブロック図である。
【図13】赤外線カメラを含む本発明の第3実施形態に係る運転支援装置(電子機器)を示す図である。
【図14】示す赤外線カメラを前部に搭載した本発明の第3実施形態に係る車両を示す図である。
【図15】赤外線カメラを含む本発明の第3実施形態に係るセキュリティー機器(電子機器)を示す図である。
【図16】セキュリティー機器の赤外線カメラ及び人感センサーの検知エリアを示す図である。
【図17】センサーデバイスを含む、本発明の第3実施形態に係るゲーム機器に用いられるコントローラーを示す図である。
【図18】コントローラーを含むゲーム機器を示す図である。
【図19】赤外線カメラを含む本発明の第3実施形態に係る体温測定装置(電子機器)を示す図である。
【図20】センサーデバイスをテラヘルツセンサーデバイスとして用い、テラヘルツ照射ユニットと組み合わせて特定物質探知装置(電子機器)を構成した例を示す図である。
【図21】図21(A)(B)は、焦電型光検出器を二次元配置した焦電型光検出装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0032】
1.第1の実施形態
1.1.複数の光吸収領域と複数のキャパシターの配置
図1(A)(B)は、本発明の第1実施形態に係る焦電型光検出器の概念図である。図1(A)に示すように、複数例えば4つの焦電キャパシター(キャパシターもいう)Capa1〜Capa4が支持部材(メンブレン)30に搭載されている。支持部材30上のキャパシターCapa1〜Capa4の各々は、2つの電極間に焦電体を有する。また、支持部材30上のキャパシターCapa1〜Capa4の各々は、例えば実質的に等しい面積の複数の光吸収領域AR1〜AR4を有する光吸収層50内部に配置されている。光吸収層50は、複数の光吸収領域AR1〜AR4に分割形成されていても良いし、一体形成されているものでも良い。
【0033】
図1(B)には、光吸収領域AR1〜AR4の各々の重心を平面視で二次元面に投影した第1重心G1a〜G1dと、焦電キャパシターCapa1〜Capa4の焦電体の輪郭線を二次元面に投影した領域J1〜J4と、焦電キャパシターCapa1〜Capa4の焦電体の重心を二次元面に投影した第2重心G2a〜G2dとを示している。
【0034】
図1(B)から明らかなように、第1重心G1a〜G1dの各一つは、焦電体の輪郭線を二次元面に投影した領域J1〜J4の各一つの内部に存在する。
【0035】
ここで、光吸収領域AR1〜AR4の各々で吸収された光が、熱として焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体に伝達される。焦電体は、光に基づく熱による焦電効果(パイロ電子効果)によって自発分極量が変化し、その変化量を求めることで光量(熱量)の大きさを検出するものである。この際、一つの支持部材30に搭載された複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4は、共通画素(一画素)を構成するもので、同時に光吸収領域AR1〜AR4の各々に入射された光は、焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々にて同時に検出されなければならない。本実施形態では、光吸収領域AR1〜AR4の各々で吸収された熱が焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体に伝達され熱伝達特性を揃えることができる。よって、例えば、時間軸上における生成された電荷のピーク(山)が揃い、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々にて同時検出が可能となる。
【0036】
図1(B)では特に、第1重心G1a〜G1dの各々と第2重心G2a〜G2dの各々とは重なりを有する。このようにすれば、光吸収領域AR1〜AR4内の各所で発生した熱が、第1重心G1a〜G1dの各一つの近辺に均等に集まってくる。その熱は、第1重心G1a〜G1dの各々と二次元投影面上にて重なりを有する第2重心第2重心G2a〜G2dの各々を有する焦電体に効率的に伝達される。よって、焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々では、熱/電気変換によって、ほぼ同様に、バラツキ少なく電荷を生成することができる。ただし、第1重心G1a〜G1dの各々と第2重心G2a〜G2dの各々とは重なりを有するものに限らない。少なくとも、第1重心G1a〜G1dの各一つは、焦電体の輪郭線を二次元面に投影した領域J1〜J4の各一つの内部に存在していれば良い。
【0037】
なお、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4を覆う領域に一つの光吸収部材を配置した場合、この一つの光吸収部材が分割されて、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々に対応する一つの光吸収領域AR1〜AR4となる。このほか、複数の焦電キャパシターをそれぞれ覆う領域に複数の光吸収部材を設けても良く、この場合一つの光吸収部材が一つの光吸収領域となる。
【0038】
1.2.複数のキャパシターの直列接続
図1の例では、第1キャパシターCapa1〜第4キャパシターCapa4が支持部材30上にて直列に接続されている。ただし、第1キャパシターCapa1〜第4キャパシターCapa4は、支持部材30上で直列接続されることは要件ではなく、例えば支持部材30の外部にて直列接続されても良い。
【0039】
図1(A)中のプラスとマイナスは各キャパシターCapa1〜Capa4の分極極性を示す。本例では、各キャパシターCapa1〜Capa4の容量値は同じものとするがこれに限定されるものではない。第1キャパシターCapa1の正極は第1外部端子TA1に接続されており、この第1外部端子TA1は正極性である。また、第4キャパシターCapa4の負極は第2外部端子TA2に接続されており、この第2外部端子TA2は負極性である。
【0040】
ここで、図2(A)に本実施形態の概略平面図を、図2(B)に比較例1の概略平面図を、図2(C)に比較例2の概略平面図をそれぞれ示す。図2(A)〜図2(C)に示す受光部面積(光吸収領域の面積)Aaはそれぞれ等しいものとする。
【0041】
先ず、図2(A)に示す本実施形態と図2(B)に示す比較例1とを対比する。図2(A)に示すキャパシターCapa1〜Capa4の各々と、図2(B)に示す単体のCapaとは、それぞれ素子面積Acと容量Cが等しいものとする。
【0042】
図2(A)でも図2(B)でも、照射光の熱を電荷Qに変換することで得られるキャパシターからの出力電圧は、キャパシターの素子抵抗をRp(図2(A)の場合は合成抵抗)とすると、
Vs=Q×Rp…(1)
となる。つまり、焦電型光検出器の出力電圧Vsは、キャパシターの分極電荷Qとキャパシターの抵抗値Rpとの積に応じて変動する。また、電荷Qは受光部面積Aaと素子面積Acに比例することから、
Vs∝Aa・Ac・Rp…(2)
が成立する。
【0043】
ところで、図2(A)では、キャパシターCapa1〜Capa4が直列接続されていることから、キャパシターCapa1〜Capa4の素子面積Acは図2(B)のように電気的に一個の容量Capaの素子面積Acと等しい関係となる。また、図2(A)の受光部面積(光吸収領域の面積)Aaと、図2(B)の受光部面積(光吸収領域の面積)Aaとは等しいことは上述した通りである。
【0044】
そこで、次にキャパシターの素子抵抗をRpについて考察する。図2(B)では、素子抵抗Rpと容量との関係から、
Rp=1/C…(3)
が成立する。
【0045】
一方、図2(A)では、キャパシターCapa1〜Capa4の各々の容量値をCとすると、直列接続された合成容量Capaの合成容量値はC/4となる。合成素子抵抗をRpxとすると、
Rpx=4/C=4×Rp…(4)
が成立する。
【0046】
よって、式(1)を参照すると、図2(A)に示す本実施形態にて得られる出力電圧Vsは、図2(B)に示す比較例1にて得られる出力電圧の4倍となることが分かる。つまり、キャパシターをn個直列接続することで、比較例1の単体キャパシターの場合と比較して、電気的な電極面によって決まる合成容量(電気的キャパシターの容量)は1/nになり、それにより合成抵抗がn倍になり、結果として出力電圧Vsがn倍となることが分かる。
【0047】
次に、図2(A)に示す本実施形態と図2(C)に示す比較例2とを対比する。図2(A)に示すキャパシターCapa1〜Capa4のトータル素子面積(4×Ac)と、図2(C)に示す単体のCapaの素子面積(4×Ac)とが等しいものとする。
【0048】
図2(A)に示す4個直列接続の電気的な素子面積Acと比較して、比較例2の素子面積は4×Acとなる。一方、図2(A)では、キャパシターCapa1〜Capa4の各々の容量値をCとすると、直列接続された合成容量Capaの合成容量値はC/4となり、抵抗値は式(4)の通り4×Rpである。これに対して、図2(C)の単体キャパシターCapaの容量値は4×Cであり、図2(C)の単体キャパシターCapaの抵抗値はRp/4となる。このため、図2(C)では素子面積(4×Ac)が4倍であるが抵抗値(Rp/4)が1/4倍となり、素子面積と抵抗値とで相殺される。よって、図2(C)の出力電圧Vsは図2(B)と同等となり、図2(A)の出力電圧Vsの1/4となる。従って、図2(A)に示す本実施形態にて得られる出力電圧Vsは、図2(B)(C)の比較例1,2よりも大きく確保することができる。
【0049】
1.3.複数の焦電キャパシターを自発分極させるバイアス電圧
図3は、図1に示すキャパシターCapa1〜Capa4にバイアスを印加した時の自発分極を示している。キャパシターCapa1〜Capa4の各々は、第1電極10と、第2電極14との間にPZT等の焦電体12を有する。電源EAのブラス端子を外部端子TA1に、マイナス端子を外部端子TA2に接続して、キャパシターCapa1〜Capa4に図3に示す電界Eを作用させると、分極方向が揃えられる。
【0050】
つまり、Capa1〜Capa4の各々では、第1電極10、焦電体12及び第2電極14に電界Eが作用する。このため、Capa1〜Capa4の各々では、図3の例では、第1電極10側がプラスに、第2電極14側がマイナスになるように分極方向が揃えられて分極する。その後、電界Eを解除しても、Capa1〜Capa4の各々の焦電体12では、自発分極が維持される。
【0051】
ここで、図3に示すように、Capa1〜Capa4の各々にて、第1電極10と第2電極14の露出面には浮遊電荷が存在する。図3の例では、第1電極10の浮遊電荷はマイナス、第2電極14の浮遊電荷はプラスと、それぞれ揃っているが、これに限定されるものではない。例えば第1キャパシターCapa1の第1電極10と第2キャパシターCapa2の第1電極10とを接続する等、Capa1〜Capa4うちの隣り合うキャパシター同士の電極接続は、第1,第2電極10,14同士、第1電極10同士または第2電極14同士等、種々の組み合わせを選択できる。また、外部端子TA1は第1キャパシターCapa1の第1,第2電極10,14のいずれか一方に接続することができ、同様に外部端子TA2も第4キャパシターCapa4の第1,第2電極10,14のいずれか一方に接続すれば良い。
【0052】
焦電キャパシターを用いた光検出原理は、光に基づく熱による焦電効果(パイロ電子効果)によって、電界Eを解除した後の焦電キャパシターの自発分極量が変化し、その変化量を求めることで光量(熱量)の大きさを検出するものである。よって、少なくとも光検出前の製造時または使用時などにて少なくとも1回だけ、Capa1〜Capa4に電界Eを作用させて分極状態を生成しておけば良い。
【0053】
1.4.焦電型光検出器の構造
図4及び図5は、焦電型光検出器例えば焦電型赤外線検出器200の平面図及び断面図である。なお、図4では図1と同じく4個の焦電キャパシターを直列接続しているが、図3では紙面の関係上で3個の焦電キャパシターを直列接続した状態を示している。この焦電型赤外線検出器200は、基体20と、基体20に設けられた支持部材(メンブレン)30と、支持部材(メンブレン)30上にて直列接続された複数(図4では4個、図5では3個)の焦電キャパシターCapa1〜Capa4(Capa1〜Capa3)とを有する。なお、複数の焦電キャパシターを総称してCapaと称する。
【0054】
支持部材(メンブレン)30は、図4に示すように、2つのアーム30−1,30−2を備え、2つのアーム30−1,30−2が基体20に支持されている。支持部材(メンブレン)30は、図5に示すように第1面30Aと、第1面30Aに対向する第2面30Bとを含み、第2面30Bと基体20との間に空洞部100が形成されている。この空洞部100により、支持部材(メンブレン)30と基体20とが熱分離されている。
【0055】
図5に示す基体20は、例えばシリコン基板21と、シリコン基板21上に形成された絶縁膜(SiO2層)22とを有し、絶縁膜22の一部が除去されることで空洞部100が形成されている。シリコン基板21の素子領域21Aにはトランジスター等の素子40,41を形成することができる。
【0056】
図5に示す絶縁層22のうち空洞部100以外の領域は、支持部材30の少なくとも2箇所を保持する保持部(ポスト)22A,22Bとなる。この保持部22A,22Bには、ビア31,32を設けることができる。ビア31は、絶縁層22中に設けられた配線層33と接続される。ビア32は、絶縁層22中に設けられた他の配線層34と接続される。配線層33はさらに、絶縁層22中に設けられたコンタクト35,36を介して素子40,41に接続することができる。
【0057】
複数の焦電キャパシターCapaの各々は、支持部材(メンブレン)30側の第1電極(下部電極)10と、支持部材(メンブレン)30側とは反対の側に設けられる、平面視における面積が、第1電極10より小さい第2電極(上部電極)14と、第1電極10と第2電極14との間に設けられる焦電体(例えば、PZT層:チタン酸ジルコン酸鉛層)12を有する。
【0058】
複数の焦電キャパシターCapaの各々は、図5に示すように、酸化アルミニウム等の絶縁性を有する金属化合物層16により覆われている。この金属化合物層16は還元ガスバリア膜として機能する。それにより、複数の焦電キャパシターCapaの各々は、キャパシター形成後の工程で還元ガス(水素、水蒸気、OH基、メチル基など)がキャパシターに侵入することが抑制される。焦電体12は酸化物であり、酸化物が還元されると酸素欠損を生じて、焦電効果が損なわれるからである。このように、金属化合物層16により焦電体12の酸素欠損が防止されるようになったことから、一つの支持部材30上の複数の光吸収領域の各々に、各々が比較的サイズの小さな複数の焦電キャパシターCapaを形成することが可能になる。
【0059】
金属化合物層16は、図5に拡大して示すように、第1バリア層(第1層膜)16Aと第2バリア層(第2層膜)16Bとを含むことができる。第1バリア層16Aは、金属酸化物例えば酸化アルミニウムAl2O3をスパッタ法により成膜して形成することができる。スパッタ法では還元ガスが用いられないので、キャパシター230が還元されることはない。第2バリア層16Bは、例えば酸化アルミニウムAl2O3を例えば原子層化学気相成長(ALCVD:Atomic Layer Chemical Vapor Deposition)法により成膜して
形成すことができる。通常のCVD(Chemical Vapor Deposition)法は還元ガスを用い
るが、第1層バリア層16AによりキャパシターCapaは還元ガスから隔離される。
【0060】
ここで、金属化合物層16のトータル膜厚は50〜70nm、例えば60nmとする。このとき、CVD法で形成される第1バリア層16Aの膜厚は原子層化学気相成長(ALCVD)法により形成される第2バリア層16Bよりも厚く、35〜65nm例えば40nmとなる。これに対して、原子層化学気相成長(ALCVD)法により形成される第2バリア層16Bの膜厚は薄くでき、例えば酸化アルミニウムAl2O3を5〜30nm例えば20nmで成膜して形成される。原子層化学気相成長(ALCVD)法は、スパッタ法等と比較して、優れた埋め込み特性を有するため、微細化に対応することが可能となり、第1,第2バリア層16A,16Bにて還元ガスバリア性を高めることができる。また、スパッタ法で成膜される第1バリア層16Aは第2バリア層16Bに比べて緻密ではないが、それが効を奏して伝熱率を下げる要因となるので、熱伝導率の低い第1バリア層16Aが焦電キャパシターCapaと第2バリア層16B間に介在することで、焦電キャパシターCapaからの熱の散逸を防止できる。
【0061】
図5に示すように、金属化合物層16上には層間絶縁膜17が形成されている。一般に、層間絶縁膜17の原料ガス(TEOS)が化学反応する際には、水素ガスや水蒸気等の還元ガスが発生する。キャパシターCapaの周囲に設けた第1還元ガスバリア膜16は、この層間絶縁膜17の形成中に発生する還元ガスからキャパシターCapaを保護するものである。
【0062】
図5に示すように、層間絶縁膜17上に配線層18が配置される。層間絶縁膜17には、電極配線形成前に予め、第1コンタクトホール17Aと第2コンタクトホール17Bが形成される。その際、金属化合物層16にも同様にコンタクトホールが形成される。第1コンタクトホール17Aに埋め込まれた第1プラグ19Aにより、第1電極(下部電極)10と配線層18とが導通される。同様に第2コンタクトホール17Bに埋め込まれた第2プラグ19Bにより、第2電極(上部電極)14と配線層18とが導通される。
【0063】
本実施形態では、図5に示すように、ビア32とCapa1の下部電極10とが配線層18Aにより接続され、Capa1の上部電極14とCapa2の下部電極10が配線層18Bにより接続され、Capa2の上部電極14とCapa3の下部電極10が配線層18Cにより接続され、Capa3の上部電極14とビア31が配線層18Dにより接続されている。図4では、同様にして配線18A〜18Eを用いて4つの焦電キャパシターCapa1〜Capa4が直列接続される。
【0064】
なお、直列接続された複数の焦電キャパシターの両端と外部端子TA1,TA2とに接続される第1配線部(図4では配線18A及び18E、図5では18A及び18D)の幅は、複数の焦電キャパシター間を接続する第2配線部(図4では配線18B〜18D、図5では18B〜18C)の幅よりも狭くすることができる。
【0065】
こうすると、熱の出口となる第1配線部(図4では配線18A及び18E、図5では18A及び18D)の幅を細くして放熱を抑制する一方で、焦電キャパシター間の第2配線部(図4では配線18B〜18D、図5では18B〜18C)は幅広として電圧降下を抑制できる。
【0066】
ここで、層間絶縁膜17が存在しないと、配線層18をパターンエッチングする際に、その下層の金属化合物層16(第2バリア層16B)がエッチングされて、バリア性が低下してしまう。層間絶縁膜17は、金属化合物層16のバリア性を確保する上でも、金属化合物層16上に形成することが好ましい。
【0067】
また、層間絶縁膜17は含有水分が少なく、あるいは水素含有率が低いことが好ましい。そこで、層間絶縁膜17はアニーリングにより脱ガス処理される。こうして、層間絶縁膜17の水素含有率または含水率は、配線層18を覆う光吸収層50や、絶縁膜であるポスト(保持部)22A,22Bよりも低くされる。こうすると、層間絶縁膜17が形成された後にキャパシターCapaが高温に晒されても、層間絶縁膜17からの還元ガスの発生を抑制できる。
【0068】
図6(A)(B)に、直列接続される2つのCapanとCapan+1との配線例を示す。図6(A)に示すように、Capanの上部電極14とCapan+1の下部電極10とを配線層18で接続するものに限らず、CpapnとCapan+1の下部電極10同士を配線層18で接続することができる。このように、2つのCapanとCapan+1間を接続するとき、下部電極10同士を接続する配線18が山状のキャパシターに沿って形成する必要がないため、配線18は最短経路となる。このため、電圧降下が小さくなり、出力電圧Vsの低下が抑制される。
【0069】
あるいは、図6(B)に示すように、CpapnとCapan+1の下部電極10を共通電極として配線層18を省略することができる。こうすると、配線18を省略できる上に、共通電極は配線18よりも幅広にかつ厚肉で形成できるので、配線抵抗を格段に小さくすることができる。これにより、電圧降下が小さくなって出力電圧Vsの低下をさらに抑制できる。
【0070】
なお、図6(A)(B)のいずれの場合も、図3に示すようにしてバイアス電界Eを作用させれば、CpapnとCapan+1の分極方向は一義的に定まる。
【0071】
配線接続された焦電キャパシターCapaの上には、図5に示すように光吸収層50が形成される。図5に示す複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa3を覆って一つの光吸収層50を配置した場合、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa3に対応するほぼ等面積の領域が個々の光吸収領域となる。図5に示す複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa3を覆って、分割された複数の光吸収層50a〜50cを形成してもよい。こうすると、一つの共通の光吸収層50を有する場合と比較して、個々の焦電キャパシターCapa1〜Capa3での放熱速度が速くなり、熱リセットを短時間で行える利点がある。
【0072】
上述した実施形態は、下部電極10が上部電極14よりも広いプレーナー構造であったが、図7に示すようにスタック構造の焦電キャパシターCapaにも本発明を適用することができる。スタック構造の焦電キャパシターCapaは、図7に示すように、第1電極10、焦電体12及び第2電極14の横断面積が実質的に等しい。よって、プレーナー構造の焦電キャパシターとは異なり、第1電極10への配線を層間絶縁層17の上方に設けることができない。
【0073】
このため、支持部材(メンブレン)30を多層構造とし、その一層を配線18Bとする。この配線18Bは、隣り合う2つの焦電キャパシターCapaの第1電極(下部電極)10同士を接続する。支持部材30中の配線18Bは、支持部材30に形成されたコンタクトホール30C,30Dに充填されたプラグ19C,19Dにより、2つの焦電キャパシターCapaの第1電極(下部電極)10に接続される。
【0074】
1.5.光吸収領域と焦電体の輪郭線の関係
次に、光吸収領域AR1〜AR4と焦電体12の輪郭線の関係について検討する。図8は、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体12は、輪郭がn(nは3以上の整数)角形、例えば四角形である例を示す。第1焦電キャパシターCapa1の焦電体12は、第1〜第n輪郭線K1a〜K4aを含む。第1焦電キャパシターCapa1に対応する光吸収領域AR1は、第1焦電キャパシターCapa1の焦電体12の第m輪郭線(1≦m≦n)に対向する第m対向輪郭線を有し、第m輪郭線と第m対向輪郭線との間の距離dm(d1a,d2a,d3a,d4a)は、mの値に拘わらず一定とすることができる(d1a=d2a=d3a=d4a)。他のキャパシターCapa2〜Capa4の各々の焦電体12も輪郭がn(nは3以上の整数)角形例えば四角形であり、第1〜第n輪郭線K1b〜K4b,K1c〜K1c及びK1d〜K4daを含む。そして、同様に第m輪郭線と第m対向輪郭線との間の距離dmは、mの値に拘わらず一定とすることができる(d1b=d2b=d3b=d4b,d1c=d2c=d3c=d4c,d1d=d2d=d3d=d4d)。
【0075】
このように、光吸収領域AR1〜AR4の各一つと複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体12とは、相似形のn角形となる。よって、一つの光吸収領域では第1重心(G1a〜G1d)から第m対向輪郭線までの距離がmの値に拘わらず等しく、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体12でも第2重心(G2a〜G2d)から第m輪郭線までの距離がmの値にかかわらず等しくなる。これによって、光吸収領域AR1〜AR4の各々で発生した熱を、一つの焦電キャパシターCapaの焦電体12に均等に集めることができる。
【0076】
なお、図2は複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体12は輪郭が円であり、焦電体12の輪郭を円や楕円とすると、図2では焦電体12の輪郭から光吸収領域AR1〜AR4の輪郭までの距離は位置によって異なる。よって、熱伝達の均一性は図8の方が優れているが、焦電体12の輪郭を円や楕円としても上述した距離の相違は比較的小さいので、図2にて説明した効果を奏することができる。
【0077】
1.6.支持部材に形成される貫通孔
図9(A)(B)は、不均一な熱伝達構造と熱伝達特性とを示している。図9(A)は、図2や図8で説明した条件を満たしていないレイアウト例を示している。この場合、光吸収領域AR1〜AR4の各々で、光吸収領域AR1〜AR4の周縁から焦電体12に至る熱伝達パスの長さが区々となっている。
【0078】
図9(B)は、不均一な熱伝達特性の一例を示している。図9(B)の例では、4つの焦電体12の3つで熱流量TP1〜TP3のピーク位置は揃っているが、熱流量TP1〜TP3のピークレベルが異なっている。さらに悪いことに、4つの焦電体12の残りの1つで熱流量TP4のピーク位置が他の3つの熱流量TP1〜TP3のピーク位置からずれている。よって、熱流量TP1〜TP4をある時刻でサンプリングした時、4つの熱流量TP1〜TP4のピーク位置とピークレベルが揃ったものと比較すると、出力電圧Vsは低下してしまうことが分かる。本実施形態では、4つの熱流量TP1〜TP4のピーク位置とピークレベルをほぼ同一に揃えることができる。
【0079】
本実施形態では、一つの支持部材30上に複数の焦電キャパシターCapaを搭載することから、複数の焦電キャパシターCapaのうち隣り合う2つの焦電キャパシターCapaの間にスペースが確保される。そこで、図10に示すように、支持部材8メンブレン)30は、複数の焦電キャパシターCapaのうち隣り合う2つの焦電キャパシターCapaの間の領域に、少なくとも一つの貫通孔CN1〜CN6を有することができる。
【0080】
ここで、図5に示す空洞部102には、支持部材30、焦電キャパシターCapa等を基体20上に形成する際には、犠牲層が埋め込まれている。そして、基体20上の全面に支持部材30となる材料層を形成し、その材料層上に焦電キャパシターCapa等を形成した後に、支持部材30となる材料層は例えば図4に示すように2本のアーム30−1,30−2を有する支持部材20の形状にエッチングされる。そのエッチング時に、図5に示す貫通孔CN1〜CN6も同時に形成される。
【0081】
犠牲層はエッチチャントを用いて等方性エッチングされるが、貫通孔CN1〜CN6がエッチャントの供給口として使用される。それにより、支持部材30の下方の犠牲層までエッチャントが回り込みやすくなって、等方性エッチングにより犠牲層を除去し易くなる。
【0082】
2.第2の実施形態
図11は、焦電型光検出装置(焦電型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図である。図11の例では、複数の光検出セル(すなわち、焦電型光検出器200a〜200d等)が、二次元的に配置されている。なお、図11に示す焦電キャパシターCapaは、上述した通り複数個直列接続されたものである。複数の光検出セル(焦電型光検出器200a〜200d等)の中から一つの光検出セルを選択するために、走査線(W1a,W1b等)と、データ線(D1a,D1b等)が設けられている。
【0083】
第1の光検出セルとしての焦電型光検出器200aは、複数個直列接続された焦電キャパシターCapaと、素子選択トランジスターM1aと、を有する。焦電キャパシターCapaの両極の電位関係は、ドライバPDr1に印加する電位によって、図3に示す通り、電界Eの方向によって一義的に決定される。光検出時には、ドライバPDr1の出力は接地されている。なお、他の光検出セルも同様の構成である。1つの光検出セルが占める領域のサイズは、例えば20μm×20μmである。
【0084】
データ線D1aの電位は、リセットトランジスターM2をオンすることによって初期化することができる。検出信号の読み出し時には、読み出しトランジスターM3がオンする。焦電効果によって生じる電流は、I/V変換回路510によって電圧に変換され、アンプ600によって増幅され、A/D変換器700によってデジタルデータに変換される。
【0085】
本実施形態では、複数の焦電型光検出器が二次元的に配置された(例えば、直交2軸(X軸およびY軸)の各々に沿ってアレイ状に配置された)、焦電型光検出装置(焦電型光アレイセンサー)が実現される。
【0086】
3.第3実施形態
本実施形態では、電子機器について説明する。
【0087】
3.1.赤外線カメラ
図12に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として赤外線カメラ400Aの構成例を示す。この赤外線カメラ400Aは、光学系400、センサーデバイス(焦電型光検出装置)410、画像処理部420、処理部430、記憶部440、操作部450、表示部460を含む。
【0088】
光学系400は、例えば1又は複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス410への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
【0089】
センサーデバイス410は、上述した本実施形態の焦電型光検出器200を二次元配列させて構成され、複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。センサーデバイス410は、二次元配列された検出器に加えて、行選択回路(行ドライバー)と、列線を介して検出器からのデータを読み出す読み出し回路と、A/D変換部等を含むことができる。二次元配列された各検出器からのデータを順次読み出すことで、物体像の撮像処理を行うことができる。
【0090】
画像処理部420は、センサーデバイス410からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。
【0091】
処理部430は、赤外線カメラ400Aの全体の制御を行い、赤外線カメラ400A内の各ブロックの制御を行う。この処理部430は、例えばCPU等により実現される。記憶部440は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部430や画像処理部420のワーク領域として機能する。操作部450は、ユーザーが赤外線カメラ400Aを操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。表示部460は、例えばセンサーデバイス410により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイにより実現される。
【0092】
このように、1セル分の焦電型光検出器を赤外線センサー等のセンサーとして用いる他、1セル分の焦電型光検出器を二軸方向例えば直交二軸方向に二次元配置することでセンサーデバイス410を構成することができ、こうすると熱(光)分布画像を提供することができる。このセンサーデバイス410を用いて、サーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラなどの電子機器を構成することができる。
【0093】
もちろん、1セル分または複数セルの焦電型光検出器をセンサーとして用いることで物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などの各種の電子機器を構成することもできる。
【0094】
3.2.運転支援装置
図13に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、運転支援装置600の構成例を示す。この運転支援装置600は、運転支援装置600を制御するCPUを備えた処理ユニット610と、車両外部の所定撮像領域に対して赤外線を検出可能な赤外線カメラ620と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサー630と、車両の走行速度を検出する車速センサー640と、運転者のブレーキ操作の有無を検出するブレーキセンサー650と、スピーカー660と、表示装置670とを備えて構成されている。
【0095】
この運転支援装置600の処理ユニット610は、例えば赤外線カメラ620の撮像により得られる自車両周辺の赤外線画像と、各センサー630〜650により検出される自車両の走行状態に係る検出信号とから、自車両の進行方向前方に存在する物体及び歩行者などの対象物を検出し、検出した対象物と自車両との接触が発生する可能性があると判断したときに、スピーカー660または表示装置670により警報を出力する。
【0096】
また、たとえば図14に示すように、赤外線カメラ620は、車両の前部において車幅方向の中心付近に配置されている。表示装置670は、フロントウィンドーにおいて運転者の前方視界を妨げない位置に各種情報を表示するHUD(Head Up Display)671などを備えて構成されている。
【0097】
3.3.セキュリティー機器
図15に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、セキュリティー機器700の構成例を示す。
【0098】
セキュリティー機器700は、少なくとも監視エリアを撮影する赤外線カメラ710と、監視エリアへの侵入者を検知する人感センサー720と、赤外線カメラ710から出力された画像データを処理して監視エリアに侵入した移動体を検知する動き検知処理部730と、人感センサー720の検知処理を行う人感センサー検知処理部740と、赤外線カメラ710から出力された画像データを所定の方式で圧縮する画像圧縮部750と、圧縮された画像データや侵入者検知情報の送信や外部装置からセキュリティー機器700への各種設定情報などを受信する通信処理部760と、セキュリティー機器700の各処理部に対して条件設定、処理コマンド送信、レスポンス処理をCPUで行う制御部770とを備えて構成されている。
【0099】
動き検知処理部730は、図示しないバッファメモリーと、バッファメモリーの出力が入力されるブロックデータ平滑部と、ブロックデータ平滑部の出力が入力される状態変化検出部とを備える。そして動き検出処理部730の状態変化検出部は、監視エリアが静止状態であれば動画で撮影した異なるフレームでも同一画像データとなるが、状態変化(移動体の侵入)があるとフレーム間の画像データで差が生じることを利用して状態変化を検知している。
【0100】
また、たとえば軒下に設置されているセキュリティー機器700と、セキュリティー機器700に組み込まれている赤外線カメラ710の撮像エリアA1と、人感センサー720の検知エリアA2を側面から示したものを図16に示す。
【0101】
3.4.ゲーム機器
図17および図18は、本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、前述のセンサーデバイス410を用いたコントローラー820を含むゲーム機器800の構成例を示す。
【0102】
図17に示すように、図18のゲーム機器800に用いられるコントローラー820は、撮像情報演算ユニット830と、操作スイッチ840と、加速度センサー850と、コネクター860と、プロセッサー870と、無線モジュール880と、を備えて構成される。
【0103】
撮像情報演算ユニット830は、撮像ユニット831と、この撮像ユニット831で撮像した画像データを処理するための画像処理回路835を有する。撮像ユニット831は、センサーデバイス832(図12のセンサーデバイス410)を含み、その前方には、赤外線フィルター(赤外線だけを通すフィルター)833及び光学系(レンズ)834を配置している。そして、画像処理回路835は、撮像ユニット831から得られた赤外線画像データを処理して、高輝度部分を検知し、それの重心位置や面積を検出してこれらのデータを出力する。
【0104】
プロセッサー870は、操作スイッチ840からの操作データと、加速度センサー850からの加速度データおよび高輝度部分データを一連のコントロールデータとして出力する。無線モジュール880は所定周波数の搬送波をこのコントロールデータで変調し、アンテナ890から電波信号として出力する。
【0105】
なおコントローラー820に設けられているコネクター860を通して入力されたデータもプロセッサー870によって上述のデータと同様に処理されてコントロールデータとして無線モジュール880とアンテナ890を介して出力される。
【0106】
図18に示すように、ゲーム機器800は、コントローラー820と、ゲーム機本体810と、ディスプレイ811と、LEDモジュール812Aおよび812Bとを備え、プレイヤー801が一方の手でコントローラー820を把持してゲームをプレイすることができる。そして、コントローラー820の撮像ユニット831をディスプレイ811の画面813を向くようにすると、ディスプレイ811の近傍に設置された二つのLEDモジュール812Aおよび812Bから出力される赤外線を撮像ユニット831が検知して、コントローラー820は、二つのLEDモジュール812A,812Bの位置や面積情報を高輝度点の情報として取得する。輝点の位置や大きさのデータがコントローラー820から無線でゲーム機本体810に送信され、ゲーム機本体810で受信される。プレイヤー801がコントローラー820を動かすと、輝点の位置や大きさのデータが変化するため、それを利用して、ゲーム機本体810はコントローラー820の動きに対応した操作信号を取得できるので、それにしたがってゲームを進行させることができる。
【0107】
3.5.体温測定装置
図19に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、体温測定装置900の構成例を示す。
【0108】
図19に示すように、体温測定装置900は、赤外線カメラ910と、体温分析装置920と、情報通信装置930と、ケーブル940とを備えて構成されている。赤外線カメラ910は、図示しないレンズなどの光学系と前述のセンサーデバイス410を含んで構成されている。
【0109】
赤外線カメラ910は所定の対象領域を撮影し、撮影された対象者901の画像情報を、ケーブル940を経由して体温分析装置920に送信する。体温分析装置920は、図示しないが、赤外線カメラ910からの熱分布画像を読み取る画像読取処理ユニットと、画像読取処理ユニットからのデータと画像分析設定テーブルに基づいて体温分析テーブルを作成する体温分析処理ユニットとを含み、体温分析テーブルに基づいて体温情報送信用データを情報通信装置930へ送信する。この体温情報送信用データは体温異常であることに対応する所定のデータを含んでもよい。また、撮影領域内に複数の対象者901を含んでいると判断した場合には、対象者901の人数と体温異常者の人数の情報を体温情報送信用データに含んでもよい。
【0110】
3.6.特定物質探知装置
図20に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、前述のセンサーデバイス410の焦電型光検出器の光吸収材の吸収波長をテラヘルツ域としたセンサーデバイスをテラヘルツ光センサーデバイスとして用い、テラヘルツ光照射ユニットと組み合わせて特定物質探知装置1000を構成した例を示す。
【0111】
特定物質探知装置1000は、制御ユニット1010と、照射光ユニット1020と、光学フィルター1030と、撮像ユニット1040と、表示部1050とを備えて構成されている。撮像ユニット1040は、図示しないレンズなどの光学系と前述の焦電型光検出器の光吸収材の吸収波長をテラヘルツ域としたセンサーデバイスを含んで構成されている。
【0112】
制御ユニット1010は、本装置全体を制御するシステムコントローラーを含み、該システムコントローラーは制御ユニットに含まれる光源駆動部および画像処理ユニットを制御する。照射光ユニット1020は、テラヘルツ光(波長が100μm〜1000μmの範囲にある電磁波を指す。)出射するレーザー装置と光学系を含み、テラヘルツ光を検査対象の人物1060に照射する。人物1060からの反射テラヘルツ光は、探知対象である特定物質1070の分光スペクトルのみを通過させる光学フィルター1030を介して撮像ユニット1040に受光される。撮像ユニット1040で生成された画像信号は、制御ユニット1010の画像処理ユニットで所定の画像処理が施され、その画像信号が表示部1050へ出力される。そして人物1060の衣服内等に特定物質1070が存在するか否かにより受光信号の強度が異なるので特定物質1070の存在が判別できる。
【0113】
以上、いくつかの電子機器の実施形態について説明したが、上記実施形態の電子機器は説明した構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略し、あるいは他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0114】
3.7.センサーデバイス
図21(A)に図19のセンサーデバイス410の構成例を示す。このセンサーデバイスは、センサーアレイ500と、行選択回路(行ドライバー)510と、読み出し回路520を含む。またA/D変換部530、制御回路550を含むことができる。行選択回路(行ドライバー)510と読み出し回路520を駆動回路と称する。このセンサーデバイスを用いることで、図12に示す、たとえばナイトビジョン機器などに用いられる赤外線カメラ400Aなどを実現できる。
【0115】
センサーアレイ500には、例えば図11に示すように二軸方向に複数のセンサーセルが配列(配置)される。また複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。なお行線及び列線の一方の本数が1本であってもよい。例えば行線が1本である場合には、図21(A)において行線に沿った方向(横方向)に複数のセンサーセルが配列される。一方、列線が1本である場合には、列線に沿った方向(縦方向)に複数のセンサーセルが配列される。
【0116】
図21(B)に示すように、センサーアレイ500の各センサーセルは、各行線と各列線の交差位置に対応する場所に配置(形成)される。例えば図21(B)のセンサーセルは、行線WL1と列線DL1の交差位置に対応する場所に配置されている。他のセンサーセルも同様である。
【0117】
行選択回路510は、1又は複数の行線に接続される。そして各行線の選択動作を行う。例えば図21(B)のようなQVGA(320×240画素)のセンサーアレイ500(焦点面アレイ)を例にとれば、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239を順次選択(走査)する動作を行う。即ちこれらの行線を選択する信号(ワード選択信号)をセンサーアレイ500に出力する。
【0118】
読み出し回路520は、1又は複数の列線に接続される。そして各列線の読み出し動作を行う。QVGAのセンサーアレイ500を例にとれば、列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319からの検出信号(検出電流、検出電荷)を読み出す動作を行う。
【0119】
A/D変換部530は、読み出し回路520において取得された検出電圧(測定電圧、到達電圧)をデジタルデータにA/D変換する処理を行う。そしてA/D変換後のデジタルデータDOUTを出力する。具体的には、A/D変換部530には、複数の列線の各列線に対応して各A/D変換器が設けられる。そして、各A/D変換器は、対応する列線において読み出し回路520により取得された検出電圧のA/D変換処理を行う。なお、複数の列線に対応して1つのA/D変換器を設け、この1つのA/D変換器を用いて、複数の列線の検出電圧を時分割にA/D変換してもよい。
【0120】
制御回路550(タイミング生成回路)は、各種の制御信号を生成して、行選択回路510、読み出し回路520、A/D変換部530に出力する。例えば充電や放電(リセット)の制御信号を生成して出力する。或いは、各回路のタイミングを制御する信号を生成して出力する。
【0121】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。例えば、基体は、基板、ベースあるいは基盤、支持基盤などあらゆる支持構造を指すものとする。
【0122】
本発明は、種々の焦電型光検出器に広く適用することができる。検出する光の波長は問わない。また、焦電型光検出器または焦電型光検出装置、あるいはそれらを有する電子機器は、例えば、供給する熱量と流体が奪う熱量とが均衡する条件下にて流体の流量を検出するフローセンサーなどにも適用できる。このフローセンサーに設けられる熱伝対などに代えて本発明の焦電型検出器または焦電型検出装置を設けることができ、光以外を検出対象とすることができる。
【0123】
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、焦電型光検出器の検出感度を、格段に向上させることができる。
【符号の説明】
【0124】
10 第1電極(下部電極)、12 焦電体、14 第2電極(上部電極)、
16 金属化合物層、18 配線、20 基体、30 支持部材、50 光吸収層、
100 空洞部、200 検出器、 AR1〜AR4 光吸収領域、
Capa キャパシター、CN1〜CN6 貫通孔、G1a〜G1d 第1重心、
G2a〜G2d 第2重心、
J1〜J4 焦電体の輪郭線を二次元面に投影した領域、
K1a〜K4d 輪郭線、d1a〜d4d 距離、
TA1,TA2 外部端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電型光検出器、焦電型光検出装置、電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
光センサーとして、熱型光検出器が知られている。熱型光検出器は、物体から放射された光を光吸収層によって吸収し、光を熱に変換し、温度の変化を熱検出素子によって測定する。熱型光検出器としては、例えば、光吸収にともなう温度上昇を熱起電力として直接検出するサーモパイル、電気分極の変化として検出する焦電型素子、温度上昇を抵抗変化として検出するボロメータ等がある。熱型光検出器は、測定できる波長帯域が広い特徴がある。
【0003】
熱型光検出器の一例である焦電型光検出器では、物体から放射された光の一例である赤外線を、例えば赤外線吸収層によって吸収し熱に変換する。その熱を焦電体に与えることによって、焦電体の自発分極量の変化が生じる。その変化量に基づく焦電流によって赤外線量を検出する。
【0004】
近年、半導体製造技術(MEMS技術等)を利用して、より小型の熱型光検出器を製造する試みがなされている。特許文献1には、焦電層を備えたモノリシック感熱センサーが記載されている。この焦電型光検出器では、集積回路基板上に半導体製造技術を用いて焦電型光検出素子が形成される。特許文献1の図6には、誘電体からなる焦電材料薄膜を電極で挟んで構成される二つの焦電型素子が共通板により接続される構成が開示される。
【0005】
また、特許文献2の図2には、焦電膜を備えた赤外線センサーが記載されている。この焦電膜を備えたセンサーでは、基板に支持された絶縁膜上に下部電極、焦電膜、上部電極がこの順に形成され、上部電極および焦電膜の上には光吸収膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−271344号公報
【特許文献2】特開平5−187917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、焦電型光検出器の検出出力を高めることが求められている。入射光に起因した熱によって生成される焦電キャパシターでの自発分極量に基づく出力電圧は、受光領域の面積、焦電キャパシターの面積、焦電キャパシターの抵抗などに依存する。
【0008】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、複数の光吸収領域で発生した熱を、複数の焦電キャパシターの焦電体に効率的に伝達して、焦電型光検出器の検出出力を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様に係る焦電型光検出器は、
基体と、
第1面と、前記第1面に対向する第2面とを含み、前記第2面と前記基体との間に空洞部を介して配置される支持部材と、
前記支持部材に支持された、それぞれ焦電体を含む複数の焦電キャパシターと、
前記複数の焦電キャパシターのそれぞれに接して設けられる光吸収層と、
を有し、
前記複数の焦電キャパシターは電気的に接続され、
前記光吸収層は前記複数の焦電キャパシターの各々に対応する複数の光吸収領域からなり、
基体の厚み方向からの平面視で、前記複数の光吸収領域の各々の重心は、前記複数の光吸収領域の各々が対応する各一つの焦電キャパシターの前記焦電体と重なる位置に存在する焦電型光検出器に関する。
【0010】
本発明の一態様では、各一つの光吸収領域で吸収された光が、熱として各一つの焦電キャパシターの焦電体に伝達される。焦電体は、光に基づく熱による焦電効果(パイロ電子効果)によって自発分極量が変化し、その変化量を求めることで光量(熱量)の大きさを検出するものである。この際、一つの支持部材に搭載された複数の焦電キャパシターは、共通画素(一画素)を構成するもので、同時に各一つの光吸収領域に入射された光は、各一つの焦電キャパシターにて同時に検出されなければならない。本発明の一態様では、各一つの光吸収領域で吸収された熱が各一つの焦電キャパシターの焦電体に伝達され熱伝達特性を揃えることができる。よって、例えば、時間軸上における生成された電荷のピーク(山)が揃い、複数の焦電キャパシターにて同時検出が可能となって、焦電型光検出器の検出出力を高めることができる。つまり、焦電型光検出器の熱時定数が小さくなり、例えば複数の焦電型光検出器の出力に基づいて二次元画像熱分布を出力する際には、その画像を高フレームレートで表示することができる。
【0011】
ここで、複数の焦電キャパシターを覆う領域に一つの光吸収部材を配置した場合、この一つの光吸収部材が分割されて、複数の焦電キャパシターの各々に対応する一つの光吸収領域となる。このほか、複数の焦電キャパシターをそれぞれ覆う領域に複数の光吸収部材を設けても良く、この場合一つの光吸収部材が一つの光吸収領域となる。
【0012】
なお、複数(n個、nは2以上の整数)の焦電キャパシターを支持部材上で分極方向が揃う方向に直列に接続することができる。例えば、単体で配置される焦電キャパシターとそれぞれ同一電極面積のn個の焦電キャパシターを直列接続すると、n個の焦電キャパシターの合成抵抗がn倍になる。この効果によって、出力電圧は、理論上、1個の焦電素子で構成される焦電型熱検出素子の出力電圧のn倍とすることができる。ただし、本発明の一態様は複数の焦電キャパシターを必ずしも支持部材上で直列接続するものに限らず、複数の焦電キャパシターからの信号を個々に取り出しても良い。
【0013】
(2)本発明の一態様に係る焦電型光検出器では、前記平面視で、前記複数の光吸収領域の各々の重心は、前記複数の光吸収領域の各々が対応する各一つの焦電キャパシターの前記焦電体の重心とは重なりを有することができる。
【0014】
このようにすれば、一つの光吸収領域内の各所で発生した熱が、一つの光吸収領域の重心付近に均等に集まってくる。その熱は、一つの光吸収領域の重心と平面視にて重なりを有する焦電体の重心に効率的に伝達される。よって、各焦電キャパシターでは熱/電気変換によって、ほぼ同様に、バラツキ少なく電荷を生成することができる。
【0015】
(3)本発明の一態様に係る焦電型光検出器では、前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体は、輪郭がn(nは3以上の整数)角形であって、第1輪郭線ないし第n輪郭線を含み、前記複数の焦電キャパシターの各々に対応する複数の光吸収領域の各々の輪郭は、前記焦電体の第m輪郭線(1≦m≦n)に対向する第m対向輪郭線を有し、前記第m輪郭線と前記第m対向輪郭線との間の距離dmは、mの値に拘わらず一定とすることができる。
【0016】
本態様では、一つの光吸収領域と一つの焦電体とは、相似形のn角形となる。よって、一つの光吸収領域では第1重心から第m対向輪郭線までの距離がmの値に拘わらず等しく、一つの焦電体でも第2重心から第m輪郭線までの距離がmの値にかかわらず等しくなる。これによって、一つの光吸収領域内で発生した熱を、一つの焦電キャパシターの焦電体に均等に集めることができる。
【0017】
(4)本発明の一態様に係る焦電型光検出器では、前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体の輪郭は、円または楕円とすることができる。
【0018】
支持部材における応力緩和の観点からは、焦電キャパシターの焦電体の輪郭は、円または楕円の方がすぐれている。なお、光吸収領域の輪郭は、円や楕円、あるいは矩形のどちらでもよいが、応力緩和という観点からは円または楕円の方が優れている。
【0019】
(5)本発明の一態様に係る焦電型光検出器では、前記複数の焦電キャパシターの各々は、前記焦電体を挟む第1電極及び第2電極を含み、前記第1電極は前記支持部材に支持され、かつ前記平面視における前記第1電極の面積が前記第2電極の面積よりも大きいプレーナー型キャパシターとすることができる。
【0020】
いわゆるプレーナー構造とすることで、支持部材上に搭載される第1電極への配線を支持部材上に形成することができる。また、拡大された第1電極上に光吸収領域を形成することができ、光吸収面積が拡大されると共に、第1電極が集熱パスの効果を発揮して、光吸収領域の周縁で発生した熱を焦電体が存在する中心側に集熱させることができる。
【0021】
(6)本発明の一態様では、前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体は、側面を電気的絶縁性の金属化合物層により覆うことができる。焦電体は酸化物であり、還元されると酸素欠損が生ずる。金属化合物層は還元ガスバリア性を有し、焦電体が還元されることを抑制できる。こうして、焦電体の酸素欠損を抑制できるので、焦電キャパシターを小型化して一つの支持部材上にて複数の焦電キャパシターを搭載させることが可能となる。
【0022】
(7)本発明の一態様では、前記光吸収層は、前記複数の焦電キャパシターの各々に対応して分割形成された複数の光吸収層にて形成することができる。
【0023】
光吸収層が個別化されていることから、1個1個の吸収層の熱が周囲から逃げ、よって、個々の焦電キャパシターのリセット時間を早めることができる。なお、一つの光吸収層を領域毎に分割して個々の光吸収領域とする場合には、光吸収層を個別化する場合に比べて、光吸収層面積を増大させることができ、分割のための製造プロセスを省略できる利点がある。
【0024】
(8)本発明の一態様では、前記支持部材は、前記複数の焦電キャパシターのうち隣り合う2つの焦電キャパシターの間の領域に、貫通孔を有することができる。
【0025】
ここで、支持部材、複数の焦電キャパシター等を基体上に形成する際には、空洞部に犠牲層が埋め込まれている。この犠牲層は、基体上にて支持部材、複数の焦電キャパシター等を形成した後に、エッチチャントを用いて等方性エッチングされて除去される。そのエッチング時に、貫通孔がエッチャントの供給口として使用される。それにより、支持部材の下方の犠牲層までエッチャントが回り込みやすくなって、等方性エッチングにより犠牲層を除去し易くなる。
【0026】
(9)本発明の他の態様は、上述した焦電型光検出器を交差する二つの直線方向に沿って二次元配置した焦電型光検出装置を定義している。
【0027】
これによって、複数の焦電型光検出器(焦電型光検出素子)が二次元に配置された(例えば、直交2軸の各々に沿ってアレイ状に配置された)、焦電型光検出装置(焦電型光アレイセンサー)が実現される。
【0028】
(10)本発明のさらに他の態様は、上述した焦電型光検出器または焦電型光検出装置を有する電子機器を定義している。
【0029】
上記いずれかの焦電型光検出器は、光の検出感度が高い。よって、この焦電型光検出器を搭載する電子機器の性能が高まる。電子機器としては、例えば、赤外線センサー装置、サーモグラフィー装置、車載用夜間カメラや監視カメラ等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1(A)(B)は、本発明の第1実施形態に係る4個のキャパシターを有する焦電型光検出器の概略平面図及び二次元投影面を示す図である。
【図2】図2(A)は第1実施形態の光吸収領域の面積と素子面積を示し、図2(B)は第1比較例の光吸収領域の面積と素子面積を示し、図2(C)は比較例2の光吸収領域の面積と素子面積を示す図である。
【図3】第1実施形態の直列接続されたキャパシターのバイアス印加状態を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る直列4個のキャパシターを有する焦電型光検出器の概略平面図である。
【図5】第1実施形態に係る直列3個のキャパシターを有する焦電型光検出器の概略断面図である。
【図6】図6(A)(B)は、2つの焦電キャパシターの接続配線例を示す図である。
【図7】スタック型の焦電キャパシターを有する焦電型光検出器に本発明を適用した実施形態を示す断面図である。
【図8】複数の光吸収領域の輪郭線と複数の焦電キャパシターの各々の焦電体の輪郭との関係を説明するための図である。
【図9】図9(A)不均一な熱伝達となる光吸収領域と焦電キャパシターの焦電体とのレイアウトを示す図であり、図9(B)は不均一な熱伝達特性を示す図である。
【図10】複数の焦電キャパシター間に貫通孔が形成された支持部材の平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る焦電型光検出装置(焦電型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図である。
【図12】焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む本発明の第3実施形態に係る赤外線カメラ(電子機器)のブロック図である。
【図13】赤外線カメラを含む本発明の第3実施形態に係る運転支援装置(電子機器)を示す図である。
【図14】示す赤外線カメラを前部に搭載した本発明の第3実施形態に係る車両を示す図である。
【図15】赤外線カメラを含む本発明の第3実施形態に係るセキュリティー機器(電子機器)を示す図である。
【図16】セキュリティー機器の赤外線カメラ及び人感センサーの検知エリアを示す図である。
【図17】センサーデバイスを含む、本発明の第3実施形態に係るゲーム機器に用いられるコントローラーを示す図である。
【図18】コントローラーを含むゲーム機器を示す図である。
【図19】赤外線カメラを含む本発明の第3実施形態に係る体温測定装置(電子機器)を示す図である。
【図20】センサーデバイスをテラヘルツセンサーデバイスとして用い、テラヘルツ照射ユニットと組み合わせて特定物質探知装置(電子機器)を構成した例を示す図である。
【図21】図21(A)(B)は、焦電型光検出器を二次元配置した焦電型光検出装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0032】
1.第1の実施形態
1.1.複数の光吸収領域と複数のキャパシターの配置
図1(A)(B)は、本発明の第1実施形態に係る焦電型光検出器の概念図である。図1(A)に示すように、複数例えば4つの焦電キャパシター(キャパシターもいう)Capa1〜Capa4が支持部材(メンブレン)30に搭載されている。支持部材30上のキャパシターCapa1〜Capa4の各々は、2つの電極間に焦電体を有する。また、支持部材30上のキャパシターCapa1〜Capa4の各々は、例えば実質的に等しい面積の複数の光吸収領域AR1〜AR4を有する光吸収層50内部に配置されている。光吸収層50は、複数の光吸収領域AR1〜AR4に分割形成されていても良いし、一体形成されているものでも良い。
【0033】
図1(B)には、光吸収領域AR1〜AR4の各々の重心を平面視で二次元面に投影した第1重心G1a〜G1dと、焦電キャパシターCapa1〜Capa4の焦電体の輪郭線を二次元面に投影した領域J1〜J4と、焦電キャパシターCapa1〜Capa4の焦電体の重心を二次元面に投影した第2重心G2a〜G2dとを示している。
【0034】
図1(B)から明らかなように、第1重心G1a〜G1dの各一つは、焦電体の輪郭線を二次元面に投影した領域J1〜J4の各一つの内部に存在する。
【0035】
ここで、光吸収領域AR1〜AR4の各々で吸収された光が、熱として焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体に伝達される。焦電体は、光に基づく熱による焦電効果(パイロ電子効果)によって自発分極量が変化し、その変化量を求めることで光量(熱量)の大きさを検出するものである。この際、一つの支持部材30に搭載された複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4は、共通画素(一画素)を構成するもので、同時に光吸収領域AR1〜AR4の各々に入射された光は、焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々にて同時に検出されなければならない。本実施形態では、光吸収領域AR1〜AR4の各々で吸収された熱が焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体に伝達され熱伝達特性を揃えることができる。よって、例えば、時間軸上における生成された電荷のピーク(山)が揃い、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々にて同時検出が可能となる。
【0036】
図1(B)では特に、第1重心G1a〜G1dの各々と第2重心G2a〜G2dの各々とは重なりを有する。このようにすれば、光吸収領域AR1〜AR4内の各所で発生した熱が、第1重心G1a〜G1dの各一つの近辺に均等に集まってくる。その熱は、第1重心G1a〜G1dの各々と二次元投影面上にて重なりを有する第2重心第2重心G2a〜G2dの各々を有する焦電体に効率的に伝達される。よって、焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々では、熱/電気変換によって、ほぼ同様に、バラツキ少なく電荷を生成することができる。ただし、第1重心G1a〜G1dの各々と第2重心G2a〜G2dの各々とは重なりを有するものに限らない。少なくとも、第1重心G1a〜G1dの各一つは、焦電体の輪郭線を二次元面に投影した領域J1〜J4の各一つの内部に存在していれば良い。
【0037】
なお、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4を覆う領域に一つの光吸収部材を配置した場合、この一つの光吸収部材が分割されて、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々に対応する一つの光吸収領域AR1〜AR4となる。このほか、複数の焦電キャパシターをそれぞれ覆う領域に複数の光吸収部材を設けても良く、この場合一つの光吸収部材が一つの光吸収領域となる。
【0038】
1.2.複数のキャパシターの直列接続
図1の例では、第1キャパシターCapa1〜第4キャパシターCapa4が支持部材30上にて直列に接続されている。ただし、第1キャパシターCapa1〜第4キャパシターCapa4は、支持部材30上で直列接続されることは要件ではなく、例えば支持部材30の外部にて直列接続されても良い。
【0039】
図1(A)中のプラスとマイナスは各キャパシターCapa1〜Capa4の分極極性を示す。本例では、各キャパシターCapa1〜Capa4の容量値は同じものとするがこれに限定されるものではない。第1キャパシターCapa1の正極は第1外部端子TA1に接続されており、この第1外部端子TA1は正極性である。また、第4キャパシターCapa4の負極は第2外部端子TA2に接続されており、この第2外部端子TA2は負極性である。
【0040】
ここで、図2(A)に本実施形態の概略平面図を、図2(B)に比較例1の概略平面図を、図2(C)に比較例2の概略平面図をそれぞれ示す。図2(A)〜図2(C)に示す受光部面積(光吸収領域の面積)Aaはそれぞれ等しいものとする。
【0041】
先ず、図2(A)に示す本実施形態と図2(B)に示す比較例1とを対比する。図2(A)に示すキャパシターCapa1〜Capa4の各々と、図2(B)に示す単体のCapaとは、それぞれ素子面積Acと容量Cが等しいものとする。
【0042】
図2(A)でも図2(B)でも、照射光の熱を電荷Qに変換することで得られるキャパシターからの出力電圧は、キャパシターの素子抵抗をRp(図2(A)の場合は合成抵抗)とすると、
Vs=Q×Rp…(1)
となる。つまり、焦電型光検出器の出力電圧Vsは、キャパシターの分極電荷Qとキャパシターの抵抗値Rpとの積に応じて変動する。また、電荷Qは受光部面積Aaと素子面積Acに比例することから、
Vs∝Aa・Ac・Rp…(2)
が成立する。
【0043】
ところで、図2(A)では、キャパシターCapa1〜Capa4が直列接続されていることから、キャパシターCapa1〜Capa4の素子面積Acは図2(B)のように電気的に一個の容量Capaの素子面積Acと等しい関係となる。また、図2(A)の受光部面積(光吸収領域の面積)Aaと、図2(B)の受光部面積(光吸収領域の面積)Aaとは等しいことは上述した通りである。
【0044】
そこで、次にキャパシターの素子抵抗をRpについて考察する。図2(B)では、素子抵抗Rpと容量との関係から、
Rp=1/C…(3)
が成立する。
【0045】
一方、図2(A)では、キャパシターCapa1〜Capa4の各々の容量値をCとすると、直列接続された合成容量Capaの合成容量値はC/4となる。合成素子抵抗をRpxとすると、
Rpx=4/C=4×Rp…(4)
が成立する。
【0046】
よって、式(1)を参照すると、図2(A)に示す本実施形態にて得られる出力電圧Vsは、図2(B)に示す比較例1にて得られる出力電圧の4倍となることが分かる。つまり、キャパシターをn個直列接続することで、比較例1の単体キャパシターの場合と比較して、電気的な電極面によって決まる合成容量(電気的キャパシターの容量)は1/nになり、それにより合成抵抗がn倍になり、結果として出力電圧Vsがn倍となることが分かる。
【0047】
次に、図2(A)に示す本実施形態と図2(C)に示す比較例2とを対比する。図2(A)に示すキャパシターCapa1〜Capa4のトータル素子面積(4×Ac)と、図2(C)に示す単体のCapaの素子面積(4×Ac)とが等しいものとする。
【0048】
図2(A)に示す4個直列接続の電気的な素子面積Acと比較して、比較例2の素子面積は4×Acとなる。一方、図2(A)では、キャパシターCapa1〜Capa4の各々の容量値をCとすると、直列接続された合成容量Capaの合成容量値はC/4となり、抵抗値は式(4)の通り4×Rpである。これに対して、図2(C)の単体キャパシターCapaの容量値は4×Cであり、図2(C)の単体キャパシターCapaの抵抗値はRp/4となる。このため、図2(C)では素子面積(4×Ac)が4倍であるが抵抗値(Rp/4)が1/4倍となり、素子面積と抵抗値とで相殺される。よって、図2(C)の出力電圧Vsは図2(B)と同等となり、図2(A)の出力電圧Vsの1/4となる。従って、図2(A)に示す本実施形態にて得られる出力電圧Vsは、図2(B)(C)の比較例1,2よりも大きく確保することができる。
【0049】
1.3.複数の焦電キャパシターを自発分極させるバイアス電圧
図3は、図1に示すキャパシターCapa1〜Capa4にバイアスを印加した時の自発分極を示している。キャパシターCapa1〜Capa4の各々は、第1電極10と、第2電極14との間にPZT等の焦電体12を有する。電源EAのブラス端子を外部端子TA1に、マイナス端子を外部端子TA2に接続して、キャパシターCapa1〜Capa4に図3に示す電界Eを作用させると、分極方向が揃えられる。
【0050】
つまり、Capa1〜Capa4の各々では、第1電極10、焦電体12及び第2電極14に電界Eが作用する。このため、Capa1〜Capa4の各々では、図3の例では、第1電極10側がプラスに、第2電極14側がマイナスになるように分極方向が揃えられて分極する。その後、電界Eを解除しても、Capa1〜Capa4の各々の焦電体12では、自発分極が維持される。
【0051】
ここで、図3に示すように、Capa1〜Capa4の各々にて、第1電極10と第2電極14の露出面には浮遊電荷が存在する。図3の例では、第1電極10の浮遊電荷はマイナス、第2電極14の浮遊電荷はプラスと、それぞれ揃っているが、これに限定されるものではない。例えば第1キャパシターCapa1の第1電極10と第2キャパシターCapa2の第1電極10とを接続する等、Capa1〜Capa4うちの隣り合うキャパシター同士の電極接続は、第1,第2電極10,14同士、第1電極10同士または第2電極14同士等、種々の組み合わせを選択できる。また、外部端子TA1は第1キャパシターCapa1の第1,第2電極10,14のいずれか一方に接続することができ、同様に外部端子TA2も第4キャパシターCapa4の第1,第2電極10,14のいずれか一方に接続すれば良い。
【0052】
焦電キャパシターを用いた光検出原理は、光に基づく熱による焦電効果(パイロ電子効果)によって、電界Eを解除した後の焦電キャパシターの自発分極量が変化し、その変化量を求めることで光量(熱量)の大きさを検出するものである。よって、少なくとも光検出前の製造時または使用時などにて少なくとも1回だけ、Capa1〜Capa4に電界Eを作用させて分極状態を生成しておけば良い。
【0053】
1.4.焦電型光検出器の構造
図4及び図5は、焦電型光検出器例えば焦電型赤外線検出器200の平面図及び断面図である。なお、図4では図1と同じく4個の焦電キャパシターを直列接続しているが、図3では紙面の関係上で3個の焦電キャパシターを直列接続した状態を示している。この焦電型赤外線検出器200は、基体20と、基体20に設けられた支持部材(メンブレン)30と、支持部材(メンブレン)30上にて直列接続された複数(図4では4個、図5では3個)の焦電キャパシターCapa1〜Capa4(Capa1〜Capa3)とを有する。なお、複数の焦電キャパシターを総称してCapaと称する。
【0054】
支持部材(メンブレン)30は、図4に示すように、2つのアーム30−1,30−2を備え、2つのアーム30−1,30−2が基体20に支持されている。支持部材(メンブレン)30は、図5に示すように第1面30Aと、第1面30Aに対向する第2面30Bとを含み、第2面30Bと基体20との間に空洞部100が形成されている。この空洞部100により、支持部材(メンブレン)30と基体20とが熱分離されている。
【0055】
図5に示す基体20は、例えばシリコン基板21と、シリコン基板21上に形成された絶縁膜(SiO2層)22とを有し、絶縁膜22の一部が除去されることで空洞部100が形成されている。シリコン基板21の素子領域21Aにはトランジスター等の素子40,41を形成することができる。
【0056】
図5に示す絶縁層22のうち空洞部100以外の領域は、支持部材30の少なくとも2箇所を保持する保持部(ポスト)22A,22Bとなる。この保持部22A,22Bには、ビア31,32を設けることができる。ビア31は、絶縁層22中に設けられた配線層33と接続される。ビア32は、絶縁層22中に設けられた他の配線層34と接続される。配線層33はさらに、絶縁層22中に設けられたコンタクト35,36を介して素子40,41に接続することができる。
【0057】
複数の焦電キャパシターCapaの各々は、支持部材(メンブレン)30側の第1電極(下部電極)10と、支持部材(メンブレン)30側とは反対の側に設けられる、平面視における面積が、第1電極10より小さい第2電極(上部電極)14と、第1電極10と第2電極14との間に設けられる焦電体(例えば、PZT層:チタン酸ジルコン酸鉛層)12を有する。
【0058】
複数の焦電キャパシターCapaの各々は、図5に示すように、酸化アルミニウム等の絶縁性を有する金属化合物層16により覆われている。この金属化合物層16は還元ガスバリア膜として機能する。それにより、複数の焦電キャパシターCapaの各々は、キャパシター形成後の工程で還元ガス(水素、水蒸気、OH基、メチル基など)がキャパシターに侵入することが抑制される。焦電体12は酸化物であり、酸化物が還元されると酸素欠損を生じて、焦電効果が損なわれるからである。このように、金属化合物層16により焦電体12の酸素欠損が防止されるようになったことから、一つの支持部材30上の複数の光吸収領域の各々に、各々が比較的サイズの小さな複数の焦電キャパシターCapaを形成することが可能になる。
【0059】
金属化合物層16は、図5に拡大して示すように、第1バリア層(第1層膜)16Aと第2バリア層(第2層膜)16Bとを含むことができる。第1バリア層16Aは、金属酸化物例えば酸化アルミニウムAl2O3をスパッタ法により成膜して形成することができる。スパッタ法では還元ガスが用いられないので、キャパシター230が還元されることはない。第2バリア層16Bは、例えば酸化アルミニウムAl2O3を例えば原子層化学気相成長(ALCVD:Atomic Layer Chemical Vapor Deposition)法により成膜して
形成すことができる。通常のCVD(Chemical Vapor Deposition)法は還元ガスを用い
るが、第1層バリア層16AによりキャパシターCapaは還元ガスから隔離される。
【0060】
ここで、金属化合物層16のトータル膜厚は50〜70nm、例えば60nmとする。このとき、CVD法で形成される第1バリア層16Aの膜厚は原子層化学気相成長(ALCVD)法により形成される第2バリア層16Bよりも厚く、35〜65nm例えば40nmとなる。これに対して、原子層化学気相成長(ALCVD)法により形成される第2バリア層16Bの膜厚は薄くでき、例えば酸化アルミニウムAl2O3を5〜30nm例えば20nmで成膜して形成される。原子層化学気相成長(ALCVD)法は、スパッタ法等と比較して、優れた埋め込み特性を有するため、微細化に対応することが可能となり、第1,第2バリア層16A,16Bにて還元ガスバリア性を高めることができる。また、スパッタ法で成膜される第1バリア層16Aは第2バリア層16Bに比べて緻密ではないが、それが効を奏して伝熱率を下げる要因となるので、熱伝導率の低い第1バリア層16Aが焦電キャパシターCapaと第2バリア層16B間に介在することで、焦電キャパシターCapaからの熱の散逸を防止できる。
【0061】
図5に示すように、金属化合物層16上には層間絶縁膜17が形成されている。一般に、層間絶縁膜17の原料ガス(TEOS)が化学反応する際には、水素ガスや水蒸気等の還元ガスが発生する。キャパシターCapaの周囲に設けた第1還元ガスバリア膜16は、この層間絶縁膜17の形成中に発生する還元ガスからキャパシターCapaを保護するものである。
【0062】
図5に示すように、層間絶縁膜17上に配線層18が配置される。層間絶縁膜17には、電極配線形成前に予め、第1コンタクトホール17Aと第2コンタクトホール17Bが形成される。その際、金属化合物層16にも同様にコンタクトホールが形成される。第1コンタクトホール17Aに埋め込まれた第1プラグ19Aにより、第1電極(下部電極)10と配線層18とが導通される。同様に第2コンタクトホール17Bに埋め込まれた第2プラグ19Bにより、第2電極(上部電極)14と配線層18とが導通される。
【0063】
本実施形態では、図5に示すように、ビア32とCapa1の下部電極10とが配線層18Aにより接続され、Capa1の上部電極14とCapa2の下部電極10が配線層18Bにより接続され、Capa2の上部電極14とCapa3の下部電極10が配線層18Cにより接続され、Capa3の上部電極14とビア31が配線層18Dにより接続されている。図4では、同様にして配線18A〜18Eを用いて4つの焦電キャパシターCapa1〜Capa4が直列接続される。
【0064】
なお、直列接続された複数の焦電キャパシターの両端と外部端子TA1,TA2とに接続される第1配線部(図4では配線18A及び18E、図5では18A及び18D)の幅は、複数の焦電キャパシター間を接続する第2配線部(図4では配線18B〜18D、図5では18B〜18C)の幅よりも狭くすることができる。
【0065】
こうすると、熱の出口となる第1配線部(図4では配線18A及び18E、図5では18A及び18D)の幅を細くして放熱を抑制する一方で、焦電キャパシター間の第2配線部(図4では配線18B〜18D、図5では18B〜18C)は幅広として電圧降下を抑制できる。
【0066】
ここで、層間絶縁膜17が存在しないと、配線層18をパターンエッチングする際に、その下層の金属化合物層16(第2バリア層16B)がエッチングされて、バリア性が低下してしまう。層間絶縁膜17は、金属化合物層16のバリア性を確保する上でも、金属化合物層16上に形成することが好ましい。
【0067】
また、層間絶縁膜17は含有水分が少なく、あるいは水素含有率が低いことが好ましい。そこで、層間絶縁膜17はアニーリングにより脱ガス処理される。こうして、層間絶縁膜17の水素含有率または含水率は、配線層18を覆う光吸収層50や、絶縁膜であるポスト(保持部)22A,22Bよりも低くされる。こうすると、層間絶縁膜17が形成された後にキャパシターCapaが高温に晒されても、層間絶縁膜17からの還元ガスの発生を抑制できる。
【0068】
図6(A)(B)に、直列接続される2つのCapanとCapan+1との配線例を示す。図6(A)に示すように、Capanの上部電極14とCapan+1の下部電極10とを配線層18で接続するものに限らず、CpapnとCapan+1の下部電極10同士を配線層18で接続することができる。このように、2つのCapanとCapan+1間を接続するとき、下部電極10同士を接続する配線18が山状のキャパシターに沿って形成する必要がないため、配線18は最短経路となる。このため、電圧降下が小さくなり、出力電圧Vsの低下が抑制される。
【0069】
あるいは、図6(B)に示すように、CpapnとCapan+1の下部電極10を共通電極として配線層18を省略することができる。こうすると、配線18を省略できる上に、共通電極は配線18よりも幅広にかつ厚肉で形成できるので、配線抵抗を格段に小さくすることができる。これにより、電圧降下が小さくなって出力電圧Vsの低下をさらに抑制できる。
【0070】
なお、図6(A)(B)のいずれの場合も、図3に示すようにしてバイアス電界Eを作用させれば、CpapnとCapan+1の分極方向は一義的に定まる。
【0071】
配線接続された焦電キャパシターCapaの上には、図5に示すように光吸収層50が形成される。図5に示す複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa3を覆って一つの光吸収層50を配置した場合、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa3に対応するほぼ等面積の領域が個々の光吸収領域となる。図5に示す複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa3を覆って、分割された複数の光吸収層50a〜50cを形成してもよい。こうすると、一つの共通の光吸収層50を有する場合と比較して、個々の焦電キャパシターCapa1〜Capa3での放熱速度が速くなり、熱リセットを短時間で行える利点がある。
【0072】
上述した実施形態は、下部電極10が上部電極14よりも広いプレーナー構造であったが、図7に示すようにスタック構造の焦電キャパシターCapaにも本発明を適用することができる。スタック構造の焦電キャパシターCapaは、図7に示すように、第1電極10、焦電体12及び第2電極14の横断面積が実質的に等しい。よって、プレーナー構造の焦電キャパシターとは異なり、第1電極10への配線を層間絶縁層17の上方に設けることができない。
【0073】
このため、支持部材(メンブレン)30を多層構造とし、その一層を配線18Bとする。この配線18Bは、隣り合う2つの焦電キャパシターCapaの第1電極(下部電極)10同士を接続する。支持部材30中の配線18Bは、支持部材30に形成されたコンタクトホール30C,30Dに充填されたプラグ19C,19Dにより、2つの焦電キャパシターCapaの第1電極(下部電極)10に接続される。
【0074】
1.5.光吸収領域と焦電体の輪郭線の関係
次に、光吸収領域AR1〜AR4と焦電体12の輪郭線の関係について検討する。図8は、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体12は、輪郭がn(nは3以上の整数)角形、例えば四角形である例を示す。第1焦電キャパシターCapa1の焦電体12は、第1〜第n輪郭線K1a〜K4aを含む。第1焦電キャパシターCapa1に対応する光吸収領域AR1は、第1焦電キャパシターCapa1の焦電体12の第m輪郭線(1≦m≦n)に対向する第m対向輪郭線を有し、第m輪郭線と第m対向輪郭線との間の距離dm(d1a,d2a,d3a,d4a)は、mの値に拘わらず一定とすることができる(d1a=d2a=d3a=d4a)。他のキャパシターCapa2〜Capa4の各々の焦電体12も輪郭がn(nは3以上の整数)角形例えば四角形であり、第1〜第n輪郭線K1b〜K4b,K1c〜K1c及びK1d〜K4daを含む。そして、同様に第m輪郭線と第m対向輪郭線との間の距離dmは、mの値に拘わらず一定とすることができる(d1b=d2b=d3b=d4b,d1c=d2c=d3c=d4c,d1d=d2d=d3d=d4d)。
【0075】
このように、光吸収領域AR1〜AR4の各一つと複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体12とは、相似形のn角形となる。よって、一つの光吸収領域では第1重心(G1a〜G1d)から第m対向輪郭線までの距離がmの値に拘わらず等しく、複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体12でも第2重心(G2a〜G2d)から第m輪郭線までの距離がmの値にかかわらず等しくなる。これによって、光吸収領域AR1〜AR4の各々で発生した熱を、一つの焦電キャパシターCapaの焦電体12に均等に集めることができる。
【0076】
なお、図2は複数の焦電キャパシターCapa1〜Capa4の各々の焦電体12は輪郭が円であり、焦電体12の輪郭を円や楕円とすると、図2では焦電体12の輪郭から光吸収領域AR1〜AR4の輪郭までの距離は位置によって異なる。よって、熱伝達の均一性は図8の方が優れているが、焦電体12の輪郭を円や楕円としても上述した距離の相違は比較的小さいので、図2にて説明した効果を奏することができる。
【0077】
1.6.支持部材に形成される貫通孔
図9(A)(B)は、不均一な熱伝達構造と熱伝達特性とを示している。図9(A)は、図2や図8で説明した条件を満たしていないレイアウト例を示している。この場合、光吸収領域AR1〜AR4の各々で、光吸収領域AR1〜AR4の周縁から焦電体12に至る熱伝達パスの長さが区々となっている。
【0078】
図9(B)は、不均一な熱伝達特性の一例を示している。図9(B)の例では、4つの焦電体12の3つで熱流量TP1〜TP3のピーク位置は揃っているが、熱流量TP1〜TP3のピークレベルが異なっている。さらに悪いことに、4つの焦電体12の残りの1つで熱流量TP4のピーク位置が他の3つの熱流量TP1〜TP3のピーク位置からずれている。よって、熱流量TP1〜TP4をある時刻でサンプリングした時、4つの熱流量TP1〜TP4のピーク位置とピークレベルが揃ったものと比較すると、出力電圧Vsは低下してしまうことが分かる。本実施形態では、4つの熱流量TP1〜TP4のピーク位置とピークレベルをほぼ同一に揃えることができる。
【0079】
本実施形態では、一つの支持部材30上に複数の焦電キャパシターCapaを搭載することから、複数の焦電キャパシターCapaのうち隣り合う2つの焦電キャパシターCapaの間にスペースが確保される。そこで、図10に示すように、支持部材8メンブレン)30は、複数の焦電キャパシターCapaのうち隣り合う2つの焦電キャパシターCapaの間の領域に、少なくとも一つの貫通孔CN1〜CN6を有することができる。
【0080】
ここで、図5に示す空洞部102には、支持部材30、焦電キャパシターCapa等を基体20上に形成する際には、犠牲層が埋め込まれている。そして、基体20上の全面に支持部材30となる材料層を形成し、その材料層上に焦電キャパシターCapa等を形成した後に、支持部材30となる材料層は例えば図4に示すように2本のアーム30−1,30−2を有する支持部材20の形状にエッチングされる。そのエッチング時に、図5に示す貫通孔CN1〜CN6も同時に形成される。
【0081】
犠牲層はエッチチャントを用いて等方性エッチングされるが、貫通孔CN1〜CN6がエッチャントの供給口として使用される。それにより、支持部材30の下方の犠牲層までエッチャントが回り込みやすくなって、等方性エッチングにより犠牲層を除去し易くなる。
【0082】
2.第2の実施形態
図11は、焦電型光検出装置(焦電型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図である。図11の例では、複数の光検出セル(すなわち、焦電型光検出器200a〜200d等)が、二次元的に配置されている。なお、図11に示す焦電キャパシターCapaは、上述した通り複数個直列接続されたものである。複数の光検出セル(焦電型光検出器200a〜200d等)の中から一つの光検出セルを選択するために、走査線(W1a,W1b等)と、データ線(D1a,D1b等)が設けられている。
【0083】
第1の光検出セルとしての焦電型光検出器200aは、複数個直列接続された焦電キャパシターCapaと、素子選択トランジスターM1aと、を有する。焦電キャパシターCapaの両極の電位関係は、ドライバPDr1に印加する電位によって、図3に示す通り、電界Eの方向によって一義的に決定される。光検出時には、ドライバPDr1の出力は接地されている。なお、他の光検出セルも同様の構成である。1つの光検出セルが占める領域のサイズは、例えば20μm×20μmである。
【0084】
データ線D1aの電位は、リセットトランジスターM2をオンすることによって初期化することができる。検出信号の読み出し時には、読み出しトランジスターM3がオンする。焦電効果によって生じる電流は、I/V変換回路510によって電圧に変換され、アンプ600によって増幅され、A/D変換器700によってデジタルデータに変換される。
【0085】
本実施形態では、複数の焦電型光検出器が二次元的に配置された(例えば、直交2軸(X軸およびY軸)の各々に沿ってアレイ状に配置された)、焦電型光検出装置(焦電型光アレイセンサー)が実現される。
【0086】
3.第3実施形態
本実施形態では、電子機器について説明する。
【0087】
3.1.赤外線カメラ
図12に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として赤外線カメラ400Aの構成例を示す。この赤外線カメラ400Aは、光学系400、センサーデバイス(焦電型光検出装置)410、画像処理部420、処理部430、記憶部440、操作部450、表示部460を含む。
【0088】
光学系400は、例えば1又は複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス410への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
【0089】
センサーデバイス410は、上述した本実施形態の焦電型光検出器200を二次元配列させて構成され、複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。センサーデバイス410は、二次元配列された検出器に加えて、行選択回路(行ドライバー)と、列線を介して検出器からのデータを読み出す読み出し回路と、A/D変換部等を含むことができる。二次元配列された各検出器からのデータを順次読み出すことで、物体像の撮像処理を行うことができる。
【0090】
画像処理部420は、センサーデバイス410からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。
【0091】
処理部430は、赤外線カメラ400Aの全体の制御を行い、赤外線カメラ400A内の各ブロックの制御を行う。この処理部430は、例えばCPU等により実現される。記憶部440は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部430や画像処理部420のワーク領域として機能する。操作部450は、ユーザーが赤外線カメラ400Aを操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。表示部460は、例えばセンサーデバイス410により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイにより実現される。
【0092】
このように、1セル分の焦電型光検出器を赤外線センサー等のセンサーとして用いる他、1セル分の焦電型光検出器を二軸方向例えば直交二軸方向に二次元配置することでセンサーデバイス410を構成することができ、こうすると熱(光)分布画像を提供することができる。このセンサーデバイス410を用いて、サーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラなどの電子機器を構成することができる。
【0093】
もちろん、1セル分または複数セルの焦電型光検出器をセンサーとして用いることで物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などの各種の電子機器を構成することもできる。
【0094】
3.2.運転支援装置
図13に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、運転支援装置600の構成例を示す。この運転支援装置600は、運転支援装置600を制御するCPUを備えた処理ユニット610と、車両外部の所定撮像領域に対して赤外線を検出可能な赤外線カメラ620と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサー630と、車両の走行速度を検出する車速センサー640と、運転者のブレーキ操作の有無を検出するブレーキセンサー650と、スピーカー660と、表示装置670とを備えて構成されている。
【0095】
この運転支援装置600の処理ユニット610は、例えば赤外線カメラ620の撮像により得られる自車両周辺の赤外線画像と、各センサー630〜650により検出される自車両の走行状態に係る検出信号とから、自車両の進行方向前方に存在する物体及び歩行者などの対象物を検出し、検出した対象物と自車両との接触が発生する可能性があると判断したときに、スピーカー660または表示装置670により警報を出力する。
【0096】
また、たとえば図14に示すように、赤外線カメラ620は、車両の前部において車幅方向の中心付近に配置されている。表示装置670は、フロントウィンドーにおいて運転者の前方視界を妨げない位置に各種情報を表示するHUD(Head Up Display)671などを備えて構成されている。
【0097】
3.3.セキュリティー機器
図15に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、セキュリティー機器700の構成例を示す。
【0098】
セキュリティー機器700は、少なくとも監視エリアを撮影する赤外線カメラ710と、監視エリアへの侵入者を検知する人感センサー720と、赤外線カメラ710から出力された画像データを処理して監視エリアに侵入した移動体を検知する動き検知処理部730と、人感センサー720の検知処理を行う人感センサー検知処理部740と、赤外線カメラ710から出力された画像データを所定の方式で圧縮する画像圧縮部750と、圧縮された画像データや侵入者検知情報の送信や外部装置からセキュリティー機器700への各種設定情報などを受信する通信処理部760と、セキュリティー機器700の各処理部に対して条件設定、処理コマンド送信、レスポンス処理をCPUで行う制御部770とを備えて構成されている。
【0099】
動き検知処理部730は、図示しないバッファメモリーと、バッファメモリーの出力が入力されるブロックデータ平滑部と、ブロックデータ平滑部の出力が入力される状態変化検出部とを備える。そして動き検出処理部730の状態変化検出部は、監視エリアが静止状態であれば動画で撮影した異なるフレームでも同一画像データとなるが、状態変化(移動体の侵入)があるとフレーム間の画像データで差が生じることを利用して状態変化を検知している。
【0100】
また、たとえば軒下に設置されているセキュリティー機器700と、セキュリティー機器700に組み込まれている赤外線カメラ710の撮像エリアA1と、人感センサー720の検知エリアA2を側面から示したものを図16に示す。
【0101】
3.4.ゲーム機器
図17および図18は、本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、前述のセンサーデバイス410を用いたコントローラー820を含むゲーム機器800の構成例を示す。
【0102】
図17に示すように、図18のゲーム機器800に用いられるコントローラー820は、撮像情報演算ユニット830と、操作スイッチ840と、加速度センサー850と、コネクター860と、プロセッサー870と、無線モジュール880と、を備えて構成される。
【0103】
撮像情報演算ユニット830は、撮像ユニット831と、この撮像ユニット831で撮像した画像データを処理するための画像処理回路835を有する。撮像ユニット831は、センサーデバイス832(図12のセンサーデバイス410)を含み、その前方には、赤外線フィルター(赤外線だけを通すフィルター)833及び光学系(レンズ)834を配置している。そして、画像処理回路835は、撮像ユニット831から得られた赤外線画像データを処理して、高輝度部分を検知し、それの重心位置や面積を検出してこれらのデータを出力する。
【0104】
プロセッサー870は、操作スイッチ840からの操作データと、加速度センサー850からの加速度データおよび高輝度部分データを一連のコントロールデータとして出力する。無線モジュール880は所定周波数の搬送波をこのコントロールデータで変調し、アンテナ890から電波信号として出力する。
【0105】
なおコントローラー820に設けられているコネクター860を通して入力されたデータもプロセッサー870によって上述のデータと同様に処理されてコントロールデータとして無線モジュール880とアンテナ890を介して出力される。
【0106】
図18に示すように、ゲーム機器800は、コントローラー820と、ゲーム機本体810と、ディスプレイ811と、LEDモジュール812Aおよび812Bとを備え、プレイヤー801が一方の手でコントローラー820を把持してゲームをプレイすることができる。そして、コントローラー820の撮像ユニット831をディスプレイ811の画面813を向くようにすると、ディスプレイ811の近傍に設置された二つのLEDモジュール812Aおよび812Bから出力される赤外線を撮像ユニット831が検知して、コントローラー820は、二つのLEDモジュール812A,812Bの位置や面積情報を高輝度点の情報として取得する。輝点の位置や大きさのデータがコントローラー820から無線でゲーム機本体810に送信され、ゲーム機本体810で受信される。プレイヤー801がコントローラー820を動かすと、輝点の位置や大きさのデータが変化するため、それを利用して、ゲーム機本体810はコントローラー820の動きに対応した操作信号を取得できるので、それにしたがってゲームを進行させることができる。
【0107】
3.5.体温測定装置
図19に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、体温測定装置900の構成例を示す。
【0108】
図19に示すように、体温測定装置900は、赤外線カメラ910と、体温分析装置920と、情報通信装置930と、ケーブル940とを備えて構成されている。赤外線カメラ910は、図示しないレンズなどの光学系と前述のセンサーデバイス410を含んで構成されている。
【0109】
赤外線カメラ910は所定の対象領域を撮影し、撮影された対象者901の画像情報を、ケーブル940を経由して体温分析装置920に送信する。体温分析装置920は、図示しないが、赤外線カメラ910からの熱分布画像を読み取る画像読取処理ユニットと、画像読取処理ユニットからのデータと画像分析設定テーブルに基づいて体温分析テーブルを作成する体温分析処理ユニットとを含み、体温分析テーブルに基づいて体温情報送信用データを情報通信装置930へ送信する。この体温情報送信用データは体温異常であることに対応する所定のデータを含んでもよい。また、撮影領域内に複数の対象者901を含んでいると判断した場合には、対象者901の人数と体温異常者の人数の情報を体温情報送信用データに含んでもよい。
【0110】
3.6.特定物質探知装置
図20に本実施形態の焦電型光検出器または焦電型光検出装置を含む電子機器の例として、前述のセンサーデバイス410の焦電型光検出器の光吸収材の吸収波長をテラヘルツ域としたセンサーデバイスをテラヘルツ光センサーデバイスとして用い、テラヘルツ光照射ユニットと組み合わせて特定物質探知装置1000を構成した例を示す。
【0111】
特定物質探知装置1000は、制御ユニット1010と、照射光ユニット1020と、光学フィルター1030と、撮像ユニット1040と、表示部1050とを備えて構成されている。撮像ユニット1040は、図示しないレンズなどの光学系と前述の焦電型光検出器の光吸収材の吸収波長をテラヘルツ域としたセンサーデバイスを含んで構成されている。
【0112】
制御ユニット1010は、本装置全体を制御するシステムコントローラーを含み、該システムコントローラーは制御ユニットに含まれる光源駆動部および画像処理ユニットを制御する。照射光ユニット1020は、テラヘルツ光(波長が100μm〜1000μmの範囲にある電磁波を指す。)出射するレーザー装置と光学系を含み、テラヘルツ光を検査対象の人物1060に照射する。人物1060からの反射テラヘルツ光は、探知対象である特定物質1070の分光スペクトルのみを通過させる光学フィルター1030を介して撮像ユニット1040に受光される。撮像ユニット1040で生成された画像信号は、制御ユニット1010の画像処理ユニットで所定の画像処理が施され、その画像信号が表示部1050へ出力される。そして人物1060の衣服内等に特定物質1070が存在するか否かにより受光信号の強度が異なるので特定物質1070の存在が判別できる。
【0113】
以上、いくつかの電子機器の実施形態について説明したが、上記実施形態の電子機器は説明した構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略し、あるいは他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0114】
3.7.センサーデバイス
図21(A)に図19のセンサーデバイス410の構成例を示す。このセンサーデバイスは、センサーアレイ500と、行選択回路(行ドライバー)510と、読み出し回路520を含む。またA/D変換部530、制御回路550を含むことができる。行選択回路(行ドライバー)510と読み出し回路520を駆動回路と称する。このセンサーデバイスを用いることで、図12に示す、たとえばナイトビジョン機器などに用いられる赤外線カメラ400Aなどを実現できる。
【0115】
センサーアレイ500には、例えば図11に示すように二軸方向に複数のセンサーセルが配列(配置)される。また複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。なお行線及び列線の一方の本数が1本であってもよい。例えば行線が1本である場合には、図21(A)において行線に沿った方向(横方向)に複数のセンサーセルが配列される。一方、列線が1本である場合には、列線に沿った方向(縦方向)に複数のセンサーセルが配列される。
【0116】
図21(B)に示すように、センサーアレイ500の各センサーセルは、各行線と各列線の交差位置に対応する場所に配置(形成)される。例えば図21(B)のセンサーセルは、行線WL1と列線DL1の交差位置に対応する場所に配置されている。他のセンサーセルも同様である。
【0117】
行選択回路510は、1又は複数の行線に接続される。そして各行線の選択動作を行う。例えば図21(B)のようなQVGA(320×240画素)のセンサーアレイ500(焦点面アレイ)を例にとれば、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239を順次選択(走査)する動作を行う。即ちこれらの行線を選択する信号(ワード選択信号)をセンサーアレイ500に出力する。
【0118】
読み出し回路520は、1又は複数の列線に接続される。そして各列線の読み出し動作を行う。QVGAのセンサーアレイ500を例にとれば、列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319からの検出信号(検出電流、検出電荷)を読み出す動作を行う。
【0119】
A/D変換部530は、読み出し回路520において取得された検出電圧(測定電圧、到達電圧)をデジタルデータにA/D変換する処理を行う。そしてA/D変換後のデジタルデータDOUTを出力する。具体的には、A/D変換部530には、複数の列線の各列線に対応して各A/D変換器が設けられる。そして、各A/D変換器は、対応する列線において読み出し回路520により取得された検出電圧のA/D変換処理を行う。なお、複数の列線に対応して1つのA/D変換器を設け、この1つのA/D変換器を用いて、複数の列線の検出電圧を時分割にA/D変換してもよい。
【0120】
制御回路550(タイミング生成回路)は、各種の制御信号を生成して、行選択回路510、読み出し回路520、A/D変換部530に出力する。例えば充電や放電(リセット)の制御信号を生成して出力する。或いは、各回路のタイミングを制御する信号を生成して出力する。
【0121】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。例えば、基体は、基板、ベースあるいは基盤、支持基盤などあらゆる支持構造を指すものとする。
【0122】
本発明は、種々の焦電型光検出器に広く適用することができる。検出する光の波長は問わない。また、焦電型光検出器または焦電型光検出装置、あるいはそれらを有する電子機器は、例えば、供給する熱量と流体が奪う熱量とが均衡する条件下にて流体の流量を検出するフローセンサーなどにも適用できる。このフローセンサーに設けられる熱伝対などに代えて本発明の焦電型検出器または焦電型検出装置を設けることができ、光以外を検出対象とすることができる。
【0123】
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、焦電型光検出器の検出感度を、格段に向上させることができる。
【符号の説明】
【0124】
10 第1電極(下部電極)、12 焦電体、14 第2電極(上部電極)、
16 金属化合物層、18 配線、20 基体、30 支持部材、50 光吸収層、
100 空洞部、200 検出器、 AR1〜AR4 光吸収領域、
Capa キャパシター、CN1〜CN6 貫通孔、G1a〜G1d 第1重心、
G2a〜G2d 第2重心、
J1〜J4 焦電体の輪郭線を二次元面に投影した領域、
K1a〜K4d 輪郭線、d1a〜d4d 距離、
TA1,TA2 外部端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
第1面と、前記第1面に対向する第2面とを含み、前記第2面と前記基体との間に空洞部を介して配置される支持部材と、
前記支持部材に支持された、それぞれ焦電体を含む複数の焦電キャパシターと、
前記複数の焦電キャパシターのそれぞれに接して設けられる光吸収層と、
を有し、
前記複数の焦電キャパシターは電気的に接続され、
前記光吸収層は前記複数の焦電キャパシターの各々に対応する複数の光吸収領域からなり、
基体の厚み方向からの平面視で、前記複数の光吸収領域の各々の重心は、前記複数の光吸収領域の各々が対応する各一つの焦電キャパシターの前記焦電体と重なる位置に存在することを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項2】
請求項1において、
前記平面視で、前記複数の光吸収領域の各々の重心は、前記複数の光吸収領域の各々が対応する各一つの焦電キャパシターの前記焦電体の重心と重なりを有することを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体は、輪郭がn(nは3以上の整数)角形であって、第1輪郭線ないし第n輪郭線を含み、
前記複数の焦電キャパシターの各々に対応する複数の光吸収領域の各々の輪郭は、前記焦電体の第m輪郭線(1≦m≦n)に対向する第m対向輪郭線を有し、
前記第m輪郭線と前記第m対向輪郭線との間の距離dmは、mの値に拘わらず一定であることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体の輪郭は、円または楕円であることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記複数の焦電キャパシターの各々は、前記焦電体を挟む第1電極及び第2電極を含み、前記第1電極は前記支持部材に支持され、かつ、前記平面視における前記第1電極の面積が前記第2電極の面積よりも大きいプレーナー型キャパシターであることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体は、側面が電気的絶縁性の金属化合物層により覆われていることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記光吸収層は、前記複数の焦電キャパシターの各々に対応して分割形成された複数の光吸収層からなることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項8】
請求項7において、
前記支持部材は、前記複数の焦電キャパシターのうち隣り合う2つの焦電キャパシターの間の領域に、貫通孔を有することを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の焦電型光検出器を交差する二つの直線方向に沿って二次元配置したことを特徴とする焦電型光検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の焦電型光検出器を有することを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項9に記載の焦電型光検出装置を有することを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基体と、
第1面と、前記第1面に対向する第2面とを含み、前記第2面と前記基体との間に空洞部を介して配置される支持部材と、
前記支持部材に支持された、それぞれ焦電体を含む複数の焦電キャパシターと、
前記複数の焦電キャパシターのそれぞれに接して設けられる光吸収層と、
を有し、
前記複数の焦電キャパシターは電気的に接続され、
前記光吸収層は前記複数の焦電キャパシターの各々に対応する複数の光吸収領域からなり、
基体の厚み方向からの平面視で、前記複数の光吸収領域の各々の重心は、前記複数の光吸収領域の各々が対応する各一つの焦電キャパシターの前記焦電体と重なる位置に存在することを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項2】
請求項1において、
前記平面視で、前記複数の光吸収領域の各々の重心は、前記複数の光吸収領域の各々が対応する各一つの焦電キャパシターの前記焦電体の重心と重なりを有することを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体は、輪郭がn(nは3以上の整数)角形であって、第1輪郭線ないし第n輪郭線を含み、
前記複数の焦電キャパシターの各々に対応する複数の光吸収領域の各々の輪郭は、前記焦電体の第m輪郭線(1≦m≦n)に対向する第m対向輪郭線を有し、
前記第m輪郭線と前記第m対向輪郭線との間の距離dmは、mの値に拘わらず一定であることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体の輪郭は、円または楕円であることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記複数の焦電キャパシターの各々は、前記焦電体を挟む第1電極及び第2電極を含み、前記第1電極は前記支持部材に支持され、かつ、前記平面視における前記第1電極の面積が前記第2電極の面積よりも大きいプレーナー型キャパシターであることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記複数の焦電キャパシターの各々の前記焦電体は、側面が電気的絶縁性の金属化合物層により覆われていることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記光吸収層は、前記複数の焦電キャパシターの各々に対応して分割形成された複数の光吸収層からなることを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項8】
請求項7において、
前記支持部材は、前記複数の焦電キャパシターのうち隣り合う2つの焦電キャパシターの間の領域に、貫通孔を有することを特徴とする焦電型光検出器。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の焦電型光検出器を交差する二つの直線方向に沿って二次元配置したことを特徴とする焦電型光検出装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の焦電型光検出器を有することを特徴とする電子機器。
【請求項11】
請求項9に記載の焦電型光検出装置を有することを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−96788(P2013−96788A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238553(P2011−238553)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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