説明

焼き栗の作り方

【課題】火の通りをよくする。
【解決手段】焼き栗14の作り方は、切れ目入れ工程(ステップS100)と、蒸し工程(ステップS101)と、焼き工程(ステップS102)と、を備えている。切れ目入れ工程(ステップS100)において、栗の実10の鬼皮11および渋皮に切れ目12を入れる。蒸し工程(ステップS101)において、切れ目入れ工程(ステップS100)後の栗の実10を蒸し器で蒸す。焼き工程(ステップS102)において、蒸し工程(ステップS101)後の栗の実10をオーブンで焼く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き栗の作り方に関する。
【背景技術】
【0002】
ブナ科クリ属の落葉樹である栗は、アジア、ヨーロッパ、北アメリカ等、温暖で湿潤な地域に分布し、ニホングリ、シナグリ、ヨーロッパグリ、アメリカグリ等の種がある。日本に分布するニホングリは、下位に分類した場合、200以上の品種に分けられる。
【0003】
ニホングリの実は、他の種と比較して灰汁が少なく水分が多いので、上品な味わいを呈する。しかし、ニホングリの実は、大粒で火の通りが悪く、オーブンや電子レンジで焼いた場合、外側が焦げて内側が生のままとなるので、焼き栗にして食すことに適さない。このため、ニホングリの実は、甘露煮(グラッセ)や茹で栗にして食されることが多い。
【0004】
また、ニホングリの実は、渋皮にタンニンを多く含有し、渋皮の剥皮性に劣るので、調理に手間が掛かる。このため、ニホングリの実の需要は低下し、ひいてはその生産量が減少している。平成22年の埼玉県を例にしても、結実可能な結果樹面積が、過去10年間で34%減少している。
【0005】
このような中、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所(茨城県つくば市)は、ニホングリの新品種として、「ぽろたん(系統番号:クリ筑波36号)」を生みだした(例えば、非特許文献1参照)。ぽろたんの実は、渋皮の剥皮性に優れており、オーブンで焼くことで、渋皮を容易に剥がすことが可能になる。このため、埼玉県内各地での検討会では、ぽろたんの評価は高く、植栽の希望者が増加している状況にあり、ぽろたんの急速な普及が期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所、[online]、果樹研究所>研究成果情報>平成17年度果樹研究成果情報一覧>渋皮剥皮性が優れ食味が優良な早生のクリ新品種「ぽろたん」(系統番号:クリ筑波36号)、[平成23年4月4日検索]、インターネット(URL:http://www.fruit.affrc.go.jp/seika/2005/fruit05001.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ぽろたんの実は、他のニホングリの実と同様、大粒で火の通りが悪いので、焼き栗にして食すことに適さない等の問題点がある。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、火の通りをよくした焼き栗の作り方を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、栗の実の鬼皮および渋皮に切れ目を入れる切れ目入れ工程と、前記切れ目入れ工程後の前記栗の実を蒸す蒸し工程と、前記蒸し工程後の前記栗の実をオーブンで焼く焼き工程と、を備えることを特徴とする、焼き栗の作り方である。
【0010】
本発明によれば、蒸し工程および焼き工程を組み合わせるので、実の外側を焦がすことなく内側まで十分に火を通せる。そして、蒸し工程の後に焼き工程を行うので、焼き温度および焼き時間を調節することで水分量をコントロールでき、蒸し栗としての味わい、食感、外観、香りとなることを防止できると共に、乾燥し過ぎず、表面はカリッとしながら内側はふっくらとした仕上がりにできる。ひいては、焼き栗としての味わい、食感、外観、香りにできる。また、蒸し工程において、実の中身と渋皮との間に隙間が生じるので、手で簡単に鬼皮を渋皮ごと剥がせる。
【0011】
(2)本発明はまた、前記栗の種は、ニホングリであることを特徴とする、上記(1)に記載の焼き栗の作り方である。
【0012】
(3)本発明はまた、前記ニホングリの品種は、ぽろたんであることを特徴とする、上記(2)に記載の焼き栗の作り方である。
【0013】
(4)本発明はまた、前記蒸し工程は、蒸し時間を5分以上20分以下にすることを特徴とする、上記(3)に記載の焼き栗の作り方である。
【0014】
(5)本発明はまた、前記焼き工程は、オーブンで行い、かつ、焼き温度を120℃以上300℃以下にすることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の焼き栗の作り方である。
【0015】
(6)本発明はまた、前記焼き工程は、オーブンで行い、かつ、焼き時間を5分以上40分以下にすることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の焼き栗の作り方である。
【0016】
(7)本発明はまた、前記蒸し工程は、蒸し時間を10分以上15分以下にし、前記焼き工程は、オーブンで行い、焼き温度を200℃以上300℃以下にし、かつ、焼き時間を5分以上10分以下にすることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の焼き栗の作り方である。
【0017】
(8)本発明はまた、前記蒸し工程は、蒸し時間を5分以上15分以下にし、前記焼き工程は、オーブンで行い、焼き温度を120℃以上150℃以下にし、かつ、焼き時間を20分以上40分以下にすることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の焼き栗の作り方である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記(1)〜(8)に記載の焼き栗の作り方によれば、火の通りがよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る焼き栗の作り方を示す工程図である。
【図2】切れ目入れ工程後の栗の実を示す正面図である。
【図3】蒸し工程後の栗の実を示す正面図である。
【図4】本発明により作られた焼き栗を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る焼き栗の作り方について詳細に説明する。
【0021】
まず、図1〜図4を用いて焼き栗の作り方について説明する。図1は、焼き栗14の作り方を示す工程図である。図2は、切れ目入れ工程(ステップS100)後の栗の実10を示す外観斜視図である。図3は、蒸し工程(ステップS101)後の栗の実10を示す外観斜視図である。図4は、焼き栗14を示す正面図である。
【0022】
図1に示すように、焼き栗14の作り方は、切れ目入れ工程(ステップS100)と、蒸し工程(ステップS101)と、焼き工程(ステップS102)と、を備えている。
【0023】
まず、切れ目入れ工程(ステップS100)において、図2に示すように、栗の実10の鬼皮11および渋皮(図示省略)にナイフ等の刃物で切れ目12(破線で図示)を入れる。切れ目12は、座13を中心に両側の側方に向けて左右対称に入れる。切れ目12を入れる範囲は、周方向に、180度以上300度以下であることが好ましく、260度以上280度以下であることがより好ましく、270度であることが最も好ましい。
【0024】
そして、蒸し工程(ステップS101)において、切れ目入れ工程(ステップS100)後の栗の実10を蒸し器(図示省略)で蒸す。図3に示すように、栗の実10は、2〜3分間蒸すことで切れ目12が開くと共に、渋皮がふやけて、実の中身と渋皮との間に隙間が生じ、手で簡単に鬼皮11を渋皮ごと剥がすことが可能になる。蒸し時間は、5分以上20分以下であることが好ましく、10分以上15分以下、または5分以上15分以下であることがより好ましい。
【0025】
また、焼き工程(ステップS102)において、蒸し工程(ステップS101)後の栗の実10をオーブンで焼くことで、図4に示す焼き栗14ができあがる。この焼き栗14は、蒸し工程(ステップS101)後の栗の実10の状態と同様、手で簡単に鬼皮11を渋皮ごと剥がすことが可能である。
【0026】
焼き温度は、120℃以上300℃以下であることが好ましく、蒸し工程(ステップS101)の蒸し時間が10分以上15分以下の場合、200℃以上300℃以下であることがより好ましく、蒸し工程(ステップS101)の蒸し時間が5分以上15分以下の場合、120℃以上150℃以下であることがより好ましい。
【0027】
焼き時間は、5分以上40分以下であることが好ましく、焼き温度が200℃以上300℃以下で、蒸し工程(ステップS101)の蒸し時間が10分以上15分以下の場合、5分以上10分以下であることがより好ましく、焼き温度が120℃以上150℃以下で、蒸し工程(ステップS101)の蒸し時間が5分以上15分以下の場合、20分以上40分以下であることがより好ましい。
【0028】
次に、焼き栗14の状態を調べた実験1を、以下の表1に示す。実験1では、栗の実10として、ぽろたん(系統番号:クリ筑波36号)の実を用いた。また、蒸し工程(ステップS101)における蒸し時間を5分〜20分の5分刻みの各々で設定した。さらに、焼き工程(ステップS102)における焼き温度を120℃、150℃、200℃、250℃、300℃の各々で設定すると共に、焼き時間を5分、10分、20分、40分の各々で設定した。
【0029】
焼き栗14の状態判定は、埼玉県農林総合研究センター園芸研究所(埼玉県久喜市)の研究員による官能試験により行った。物理的測定や化学的測定等の理化学的測定によって行うことも考えられるが、理化学的測定では測定できない成分が味覚に影響する可能性があるからである。なお、菓子等の嗜好品の状態判定は、理化学的測定および官能試験のいずれかによって行われる場合、一般的に、官能試験によって行われている。
【0030】
焼き栗14の状態判定は、味わい、食感、外観、香り等の状態を総合的に勘案して行った。評価は、特に良好なものを「☆」とし、良好なものを「◎」とし、やや良好なものを「○」とし、可なものを「△」とし、不良なものを「×」とした。なお、評価を行っていないものを「−」とした。
【0031】
【表1】

【0032】
このように、焼き栗の作り方によれば、蒸し工程(ステップS101)および焼き工程(ステップS102)を組み合わせたので、実の外側を焦がすことなく内側まで十分に火を通せる。また、蒸し工程(ステップS101)の後に焼き工程を行うので、焼き温度および焼き時間を調節することで水分量をコントロールでき、蒸し栗としての味わい、食感、外観、香りとなることを防止できると共に、乾燥し過ぎず、表面はカリッとしながら内側はふっくらとした仕上がりにできる。ひいては、焼き栗14としての味わい、食感(やわらかさ)、外観(香ばしい焼き色)、香りにできる。
【0033】
また、本発明により作られた焼き栗14は、長期冷凍保存に適している。すなわち、甘い焼き栗14を一度に大量に作って冷凍することにより、品質を損ねないまま長期間貯蔵、販売可能な商品とすることが可能である。
【0034】
本発明は、上記実施形態および上記実験に限られるものではなく、その趣旨および技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0035】
すなわち、上記実施形態において、栗の種は、ニホングリであることが最も好ましいが、この種に限定されず、シナグリ、ヨーロッパグリ、アメリカグリ等、他の種であってもよい。また、ニホングリの品種は、ぽろたんであることが最も好ましいが、この種に限定されず、丹沢、国見、筑波、銀寄、利平栗、石鎚、岸根等、他の品種であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 栗の実
11 鬼皮
12 切れ目
13 座
14 焼き栗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栗の実の鬼皮および渋皮に切れ目を入れる切れ目入れ工程と、
前記切れ目入れ工程後の前記栗の実を蒸す蒸し工程と、
前記蒸し工程後の前記栗の実をオーブンで焼く焼き工程と、を備えることを特徴とする、
焼き栗の作り方。
【請求項2】
前記栗の種は、ニホングリであることを特徴とする、
請求項1に記載の焼き栗の作り方。
【請求項3】
前記ニホングリの品種は、ぽろたんであることを特徴とする、
請求項2に記載の焼き栗の作り方。
【請求項4】
前記蒸し工程は、蒸し時間を5分以上20分以下にすることを特徴とする、
請求項3に記載の焼き栗の作り方。
【請求項5】
前記焼き工程は、オーブンで行い、かつ、焼き温度を120℃以上300℃以下にすることを特徴とする、
請求項1〜4のいずれかに記載の焼き栗の作り方。
【請求項6】
前記焼き工程は、オーブンで行い、かつ、焼き時間を5分以上40分以下にすることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれかに記載の焼き栗の作り方。
【請求項7】
前記蒸し工程は、蒸し時間を10分以上15分以下にし、
前記焼き工程は、オーブンで行い、焼き温度を200℃以上300℃以下にし、かつ、焼き時間を5分以上10分以下にすることを特徴とする、
請求項1〜6のいずれかに記載の焼き栗の作り方。
【請求項8】
前記蒸し工程は、蒸し時間を5分以上15分以下にし、
前記焼き工程は、オーブンで行い、焼き温度を120℃以上150℃以下にし、かつ、焼き温度を20分以上40分以下にすることを特徴とする、
請求項1〜6のいずれかに記載の焼き栗の作り方。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−223103(P2012−223103A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91399(P2011−91399)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(591267855)埼玉県 (71)
【Fターム(参考)】