説明

焼付防止剤、及びこれを塗布した外周ねじ部を有する内燃機関用取付部品

【課題】800℃という高温環境下においても焼き付き防止効果を有する焼付防止剤、及びこれを塗布した外周ねじ部を有する内燃機関用取付部品を提供すること。
【解決手段】本発明の焼付防止剤は、少なくとも酸化アンチモンと黒鉛とビスマスと酸化カルシウムとを含有してなる固体潤滑剤と、ペースト状の非固体潤滑剤とを含有してなる。そして、焼付防止剤全体に占める酸化アンチモンの含有量をA、焼付防止剤全体に占める黒鉛の含有量をB、焼付防止剤全体に占めるビスマスの含有量をC、焼付防止剤全体に占める酸化カルシウムの含有量をDとしたとき、17質量%≦A≦29質量%、1質量%≦B≦10質量%、9質量%≦C≦15質量%、7質量%≦D≦30質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温環境下にさらされる取付部品に塗布される焼付防止剤、及びこれを塗布した外周ねじ部を有する内燃機関用取付部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するために内燃機関の排気管等に取りつけられるガスセンサのハウジングの外周に設けられる外周ねじ部などには、しばしば焼付防止を目的として、焼付防止剤が塗布される。かかる焼付防止剤を外周ねじ部に塗布することで、仮にガスセンサに故障が生じても排気管からガスセンサを容易に取り外して、新しいものに交換することができる。
従来、700℃もの高温にさらされる可能性のある上記外周ねじ部などに塗布される焼付防止剤には、ビスマス若しくはその化合物、アンチモン若しくはその化合物など、又はこれらの組合せを主成分としたものがあった(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−169596号公報
【特許文献2】特開2007−169597号公報
【特許文献3】特開2007−169598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の焼付防止剤においては、以下のような問題点があった。すなわち、上記のような成分によっては、700℃くらいの温度までは焼き付きを防止し得るが、使用環境の高温化によってそれ以上の温度、例えば800℃ともなると、十分な焼き付き防止効果を得ることができないという問題があった。
かかる問題は、使用環境の変化によって700℃以上を超える高温環境下にさらされることが多いガスセンサや温度センサにおいて特に顕著である。そして、このようなガスセンサや温度センサにおいては、上記外周ねじ部と上記排気管等との螺合部分が焼き付いてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、特に800℃という高温環境下においても焼き付き防止効果を有する焼付防止剤、及びこれを塗布した外周ねじ部を有する内燃機関用取付部品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、少なくとも酸化アンチモンと黒鉛とビスマスと酸化カルシウムとを含有してなる固体潤滑剤と、ペースト状の非固体潤滑剤とを含有してなることを特徴とする焼付防止剤にある(請求項1)。
【0007】
本発明の作用効果について説明する。
本発明の焼付防止剤は、少なくとも酸化アンチモンと黒鉛とビスマスと酸化カルシウムとを含有してなる固体潤滑剤と、ペースト状の非固体潤滑剤とを含有してなる。これにより、700℃以上、例えば800℃という高温環境下においても十分な焼き付き防止効果を有する焼付防止剤を得ることができる。
【0008】
このメカニズムは必ずしも明らかではないが、酸化抑制効果のある酸化アンチモンと、潤滑性に優れた黒鉛と、融点が比較的低いため十分に溶融して被塗布部の隙間に十分に行き渡りやすいビスマスと、化学的安定性に優れた酸化カルシウムとが、焼き付きを防止するために互いに相乗的に作用するためであると考えられる。特に上記のとおり固体潤滑剤として酸化カルシウムが含有されていることにより、高温での焼き付き防止効果を十分に発揮することができると考えられる。
【0009】
このように、本発明によれば、高温環境下においても十分な焼き付き防止効果を有する焼付防止剤を得ることができる。したがって、かかる本発明の焼付防止剤を、特に800℃という高温環境下にさらされる例えば内燃機関等の取付部品の一部に塗布することにより、当該部分における焼き付きを十分に防止することができる。
【0010】
第二の発明は、内燃機関又はその排気管に取りつけられる内燃機関用取付部品であって、
外周に外周ねじ部を有するハウジングを有し、
上記外周ねじ部には、請求項1又は2に記載の焼付防止剤が塗布されていることを特徴とする内燃機関用取付部品にある(請求項3)。
【0011】
本発明の内燃機関用取付部品は、ハウジングに設けられる外周ねじ部に上記焼付防止剤が塗布されている。したがって、かかる内燃機関用取付部品が800℃という高温環境下にさらされたとしても、外周ねじ部と内燃機関又はその排気管との螺合部分における焼き付きを十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1における、ガスセンサの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、焼き付きとは、内燃機関等に取りつけられる取付部品のハウジングに設けられた外周ねじ部と、その外周ねじ部が螺合される被螺合部とが、ある締め付け力により締結された状態から、取付部品を取り外そうとする際に、ねじの摺動が困難となり、取付部品が取り外し不能となる現象をいう。
第一の発明において、上記非固体潤滑剤としては、例えば、グリース、コンパウンド等の半固体潤滑剤や潤滑油などの液体潤滑剤などがある。
【0014】
また、上記焼付防止剤全体に占める酸化アンチモンの含有量をA、上記焼付防止剤全体に占める黒鉛の含有量をB、上記焼付防止剤全体に占めるビスマスの含有量をC、上記焼付防止剤全体に占める酸化カルシウムの含有量をDとしたとき、17質量%≦A≦29質量%、1質量%≦B≦10質量%、9質量%≦C≦15質量%、7質量%≦D≦30質量%であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、潤滑性を有しつつ、800℃という高温環境下においても焼き付き防止効果をより一層発揮し得る焼付防止剤を得ることができる。
【0015】
一方、Aが17質量%未満、Bが1質量%未満、Cが9質量%未満、Dが7質量%未満となる場合には、酸化抑制効果や化学的安定性など、本発明の焼付防止剤が有する優れた機能を十分に発揮させることが困難となるおそれがある。
また、Aが29質量%を超え、Bが10質量%を超え、Cが15質量%を超え、Dが30質量%を超える場合には、非固体潤滑剤の含有量が低減してしまい、焼付防止剤の潤滑性が損なわれてしまうおそれがある。
【0016】
第二の発明において、上記内燃機関用取付部品は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサとすることができる(請求項4)。
この場合には、本発明の作用効果を顕著に発揮することができる。すなわち、近年の使用環境の高温化により、上記ガスセンサ素子を有する内燃機関用取付部品(ガスセンサ)は、1000℃程度まで到達する排気ガス環境下にさらされることがある。したがって、かかるガスセンサを内燃機関の排気管に取りつけたときには、外周ねじ部は例えば800℃という高温にさらされることとなる。このため、かかる高温使用環境下にさらされる外周ねじ部に本発明に係る焼付防止剤が塗布されていれば、焼き付き防止効果を顕著に発揮することができる。
【0017】
また、上記内燃機関用取付部品は、温度によって電気特性が変化する温度センサとすることもできる(請求項5)。
この場合にも、上記と同様、本発明の作用効果を顕著に発揮することができる。
【実施例】
【0018】
(実施例1)
本発明に係る焼付防止剤、及びこれを塗布した外周ねじ部を有する内燃機関用取付部品について、図1とともに説明する。
本例の焼付防止剤3は、少なくとも酸化アンチモンと黒鉛とビスマスと酸化カルシウムとを含有してなる固体潤滑剤と、ペースト状の非固体潤滑剤とを含有してなる。
【0019】
以下、詳細に説明する。
まず、上記焼付防止剤3を塗布した外周ねじ部120を有する内燃機関用取付部品1について詳細に説明する。
本例の内燃機関用取付部品1は、自動車などの内燃機関の排気管2に取りつけられて、その内部に被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサ素子10を有するガスセンサ(以下、内燃機関用取付部品1をガスセンサ1という。)である。
【0020】
なお、かかるガスセンサ1としては、自動車エンジン等の各種車両用内燃機関の排気管2に設置して、排気ガスフィードバックシステムに使用する空燃比センサに内蔵するA/Fセンサ、排気ガス中の酸素濃度を測定するO2センサ、排気管2に設置する三元触媒の劣化検知等に利用するNOx等の大気汚染物質濃度を調べるNOxセンサなど種々のものがある。
【0021】
また、本例においては示さないが、上記内燃機関用取付部品1は、温度によって電気特性が変化する温度センサ素子を有する温度センサや、内燃機関に設置されて火花放電を生じさせるためのスパークプラグなどであってもよい。
また、以下では、ガスセンサ1を排気管2に挿入する側を先端側、その反対側を基端側として説明する。
【0022】
また、ガスセンサ1は、図1に示すように、上記ガスセンサ素子10のほか、以下の被測定ガス側碍子111と、大気ガス側碍子112と、ハウジング12と、素子カバー13と、大気側カバー14と、ブッシュ15と、リード線16とを有する。
すなわち、被測定ガス側碍子111は、ガスセンサ素子10を内側に挿通保持しており、例えば、アルミナ等のセラミックスからなる。
ハウジング12は、被測定ガス側碍子111を内側に挿通保持しており、例えば、SUS430を代表とするフェライト系ステンレス、SUS410を代表とするマルテンサイト系ステンレス又はその他の耐熱材料からなる。
【0023】
そして、ハウジング12の外周には、雄ねじからなる外周ねじ部120が形成されている。かかる外周ねじ部120には、本例の焼付防止剤3が塗布されている。
この外周ねじ部120においては、0.5〜3.4g/cm2の塗布量にて焼付防止剤3を塗布することが好ましい。この場合には、ねじ締結時の潤滑性が向上し、ねじ締結部の発生軸力の安定性を確保しつつ十分に焼き付き防止を図ることができる。一方、上記塗布量が0.5g/cm2未満の場合には、ねじ締結時の潤滑性が悪化し、安定した軸力の確保が困難となり、また、摩擦熱によってねじ母材同士が融着するおそれがある。また、上記塗布量が3.4g/cm2を超える場合には、被塗布部の隙間から焼付防止剤3があふれてしまい、ひいては、ガスセンサ素子10のガス検知機能に悪影響を与えるおそれがある。
【0024】
素子カバー13は、ハウジング12の先端側に配設され、ガスセンサ素子10の先端部を覆っている。かかる素子カバー13は、二重カバー構造となっており、ガスセンサ素子10を覆う内側カバー132と、その内側カバー132を覆う外側カバー131とからなる。
【0025】
大気側カバー14は、ハウジング12の基端側に配設され、ガスセンサ素子10の基端部を覆う大気ガス側碍子112のさらに外側を覆っている。
ブッシュ15は、大気側カバー14の基端部を閉塞している。そして、このブッシュ15を貫通するようにリード線16が配設されている。かかるリード線16の先端側には、ガスセンサ素子10と電気的に接続される接続端子160が取りつけられている。
【0026】
ガスセンサ1は、前述したとおり自動車エンジンなどの内燃機関の排気管2などに設置される。具体的には、排気管2などの側壁21における溶接部22に固定されるボス20には雌ねじ200が形成されており、その雌ねじ200に、上記のとおり雄ねじが形成されている外周ねじ部120を螺合する。そして、両者を螺合する際には、例えば、最大で60N・m程度の大きさの締め付け力がハウジング12に加えられる。
かかるガスセンサ1は、排気管2内を通過する被測定ガスにさらされて、例えば700〜800℃といった高温環境下におかれることとなる。
【0027】
次に、本例の焼付防止剤3について説明する。
前述したとおり、本例の焼付防止剤3は、少なくとも酸化アンチモンと黒鉛とビスマスと酸化カルシウムとを含有してなる固体潤滑剤と、ペースト状の非固体潤滑剤とを含有してなる。これらの成分の含有量について詳細にみると、以下のようになる。
【0028】
すなわち、上記焼付防止剤3全体に占める酸化アンチモンの含有量をA、上記焼付防止剤3全体に占める黒鉛の含有量をB、上記焼付防止剤3全体に占めるビスマスの含有量をC、上記焼付防止剤3全体に占める酸化カルシウムの含有量をDとしたとき、本例の焼付防止剤3は、17質量%≦A≦29質量%、1質量%≦B≦10質量%、9質量%≦C≦15質量%、7質量%≦D≦30質量%となるように構成されている。さらに具体的に言えば、本例の焼付防止剤3においては、Aは25.5質量%、Bは2.2質量%、Cは12.2質量%、Dは12.1質量%である。
【0029】
また、本例の焼付防止剤3には、上記のほか、非固体潤滑剤として、例えばグリースや、コンパウンド、塗料などを含有させることができ、さらには、固体潤滑剤として不可避的不純物が含有されていてもよい。そして、本例では、焼付防止剤3には上記酸化アンチモンと黒鉛とビスマスと酸化カルシウムとからなる固体潤滑剤のほか、非固体潤滑剤としてのグリースが48質量%含有されている。
【0030】
次に、本例の焼付防止剤3の製造方法について説明する。
本例では、酸化アンチモンは2μmの平均粒径、黒鉛は20μmの平均粒径、ビスマスは18μmの平均粒径、酸化カルシウムは3μmの平均粒径を有するものを用いる。そして、かかる粉状物が、できあがった焼付防止剤3の中で所定量含有されるよう計量しておく。
【0031】
なお、上記各成分の粒度分布については、酸化アンチモンの最大粒径が45μm、黒鉛の最大粒径が45μm、ビスマスの最大粒径が45μm、酸化カルシウムの最大粒径が45μmであることが好ましい。一方、上記成分の最大粒径が45μmを超える場合には、外周ねじ部120の隙間に焼付防止剤3が入り込みにくくなってしまうおそれがある。
【0032】
次いで、焼付防止剤3全体に占めるグリースの含有量のうち、半分の量のグリースの中に、上記のとおり計量した酸化アンチモン、黒鉛、ビスマス、酸化カルシウムの粉状物を入れ、これを混合して(第一次混合)混合物を形成する。
次いで、残り半分の量のグリースを上記混合物の中に入れて、これを混合する(第二次混合)。
以上の手順により、本例の焼付防止剤3を作製することができる。
【0033】
なお、本例の焼付防止剤3は、例えば、高温多湿を避けた一般的な常温(15〜25℃)、常湿(相対湿度45〜85%)という条件下にてガスセンサ1の外周ねじ部120に塗布することが好ましい。かかる条件は、一般にグリースが安定した粘性を持つことができる条件であるが、本例においても上記条件にて焼付防止剤3を塗布することにより特に顕著な作用効果を発揮し得る。
また、本例の焼付防止剤3は、外周ねじ部120に対して塗布するほか、例えば外周ねじ部120を焼付防止剤3の中に浸漬させて塗布することもできる。
【0034】
以下に、本例の作用効果について説明する。
本例の焼付防止剤3は、少なくとも酸化アンチモンと黒鉛とビスマスと酸化カルシウムとを含有してなる固体潤滑剤と、ペースト状の非固体潤滑剤とを含有してなる。これにより、700℃以上、例えば800℃という高温環境下においても十分な焼き付き防止効果を有する焼付防止剤3を得ることができる。
【0035】
このメカニズムは必ずしも明らかではないが、酸化抑制効果のある酸化アンチモンと、潤滑性に優れた黒鉛と、融点が比較的低いため十分に溶融して被塗布部の隙間に十分に行き渡りやすいビスマスと、化学的安定性に優れた酸化カルシウムとが、焼き付きを防止するために互いに相乗的に作用するためであると考えられる。特に上記のとおり固体潤滑剤として酸化カルシウムが含有されていることにより、高温での焼き付き防止効果を十分に発揮することができると考えられる。
【0036】
このように、本例によれば、高温環境下においても十分な焼き付き防止効果を有する焼付防止剤3を得ることができる。そして、かかる本例の焼付防止剤3を、特に800℃という高温環境下にさらされるガスセンサ1の外周ねじ部120に塗布しているため、当該部分における焼き付きを十分に防止することができる。
【0037】
また、17質量%≦A≦29質量%、1質量%≦B≦10質量%、9質量%≦C≦15質量%、7質量%≦D≦30質量%であるため、潤滑性を有しつつ、800℃という高温環境下においても焼き付き防止効果をより一層発揮し得る焼付防止剤3を得ることができる。
【0038】
また、本例の内燃機関用取付部品1は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサ1であるため、本発明の作用効果を顕著に発揮することができる。すなわち、近年の使用環境の高温化により、上記ガスセンサ1は、800℃という高温環境下に置かれることがある。したがって、かかるガスセンサ1を内燃機関の排気管2に取りつけたときには、外周ねじ部120は800℃という高温にさらされることとなる。このため、かかる高温使用環境下にさらされる外周ねじ部120に本発明に係る焼付防止剤3が塗布されていれば、焼き付き防止効果を顕著に発揮することができる。
【0039】
以上のとおり、本例によれば、特に800℃という高温環境下においても焼き付き防止効果を有する焼付防止剤、及びこれを塗布した外周ねじ部を有する内燃機関用取付部品を提供することができる。
【0040】
(実施例2)
本例は、下記の表1に示すように、含有成分を種々変更して作製した焼付防止剤をハウジングの外周ねじ部に塗布し、その外周ねじ部の焼き付き状況を調べた例である。
【0041】
本例では、以下のような試験を行った。
すなわち、まず、酸化アンチモン、黒鉛、ビスマス、及び酸化カルシウムの含有量を種々変更して作製した焼付防止剤を、SUS430からなるハウジングの外周ねじ部に塗布して22種類の試料を作製した。そして、各種類の試料についてそれぞれ10個のサンプルを作製した。
【0042】
次いで、種類の異なる試料ごとに、雌ねじを設けたSUS430からなるボスに各試料の外周ねじ部を60N・mのトルクで締め付けて被試験体を作製した。
次いで、これらの被試験体を大気雰囲気であって800℃に保たれた電気炉内に100時間放置した後、常温(20℃)に戻した。
次いで、各試料をボスから取り外し、それぞれの外周ねじ部に損傷なく各試料が取り外し可能かどうかを調べた。なお、外周ねじ部に損傷があるかどうかは、目視及びねじゲージにて確認した。
【0043】
次いで、各試料のうち外周ねじ部が損傷を受けることなくボスから取り外せたもののサンプル数を調べ、その割合を算出した。
なお、すべて(すなわち、10個)のサンプルが外周ねじ部に損傷を受けることなく取り外せた試料には◎、60%以上100%未満の割合(すなわち、6〜9個)のサンプルのうち外周ねじ部が損傷を受けることなく取り外せた試料には○、60%以上100%未満の割合のサンプルのうち外周ねじ部が著しい損傷を受けている試料を△、外周ねじ部の損傷の有無にかかわらず60%未満の割合(すなわち、5個以下)のサンプルしか取り外しができなかった試料には×を付した。
試験結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1からわかるように、酸化アンチモン、黒鉛、ビスマス、及び酸化カルシウムのすべてが含有されている焼付防止剤を塗布した試料(表1における試料10、16、19)においては、すべてのサンプルにおいて外周ねじ部が損傷を受けず、試験結果は◎となっている。
上記の試料10、16、19について見ると、酸化アンチモンが17〜29質量%、黒鉛が1〜10質量%、ビスマスが9〜15質量%、酸化カルシウムが10〜30質量%含有されていれば、試験結果は良好であることがわかる。
【0046】
もう少し検討するに、試料8と試料16とを比較すると、試料8においては黒鉛が含有されていないため結果は○となっており、試料16においては黒鉛が1質量%と少量であるが含有されているため結果は◎となっている。かかる結果は、酸化アンチモン、黒鉛、ビスマス、及び酸化カルシウムのすべてが含有されていれば、本発明の作用効果が得られるという十分な根拠となり得ると思われる。
【0047】
また、酸化アンチモン、黒鉛、ビスマス、酸化カルシウムのいずれかが含有されていない場合には、800℃の高温環境下においては焼き付きが生じているサンプルがあったため、○、△又は×となっている。特に、試料20〜試料22については、従来存在していた焼付防止剤の成分を用いて形成したものであるが、これらについては、結果がすべて×となっており、本発明の優位性が容易に見てとれる。
【0048】
このように、焼付防止剤の含有成分として、酸化アンチモン、黒鉛、ビスマス、及び酸化カルシウムのすべてが含有されていれば、外周ねじ部の焼き付きを十分に防止することができることがわかる。
さらに、酸化アンチモン、黒鉛、ビスマス、酸化カルシウムを上記の範囲で含有することで、外周ねじ部の焼き付きを確実に防止することができることがわかる。
【符号の説明】
【0049】
1 内燃機関用取付部品
12 ハウジング
120 外周ねじ部
3 焼付防止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸化アンチモンと黒鉛とビスマスと酸化カルシウムとを含有してなる固体潤滑剤と、ペースト状の非固体潤滑剤とを含有してなることを特徴とする焼付防止剤。
【請求項2】
請求項1において、上記焼付防止剤全体に占める酸化アンチモンの含有量をA、上記焼付防止剤全体に占める黒鉛の含有量をB、上記焼付防止剤全体に占めるビスマスの含有量をC、上記焼付防止剤全体に占める酸化カルシウムの含有量をDとしたとき、17質量%≦A≦29質量%、1質量%≦B≦10質量%、9質量%≦C≦15質量%、7質量%≦D≦30質量%であることを特徴とする焼付防止剤。
【請求項3】
内燃機関又はその排気管に取りつけられる内燃機関用取付部品であって、
外周に外周ねじ部を有するハウジングを有し、
上記外周ねじ部には、請求項1又は2に記載の焼付防止剤が塗布されていることを特徴とする内燃機関用取付部品。
【請求項4】
請求項3において、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサであることを特徴とする内燃機関用取付部品。
【請求項5】
請求項3において、温度によって電気特性が変化する温度センサであることを特徴とする内燃機関用取付部品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−180360(P2010−180360A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26385(P2009−26385)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】