説明

焼成及びガラス化による硝酸水溶液の液体排出物の処理方法

本発明は、金属または半金属の硝酸塩を含む、硝酸水溶液の液体排出物の処理方法に関し、金属または半金属の硝酸塩を金属または半金属の酸化物に変換するための排出物の焼成ステップを含み、金属または半金属の硝酸塩から選択される少なくとも一つの化合物と、焼成の際に粘着性の酸化物をもたらす排出物の他の化合物と、少なくとも一つの金属または半金属の硝酸塩を含み、焼成の際に非粘着性の酸化物をもたらす希釈補助剤とが、排出物と希釈補助剤との混合物をもたらすために、焼成ステップの前に排出物に添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属または半金属の硝酸塩を含む、硝酸水溶液の液体排出物の処理方法に関し、この処理方法は、焼成ステップと、その後に続く、前記焼成ステップ中に得られる焼成体のガラス化ステップとを含む。
【0002】
硝酸水溶液の液体排出物は、硝酸ナトリウムを主に含んでもよい。
【背景技術】
【0003】
本発明の技術分野は、液体排出物の焼成の分野として通常定義可能であり、より具体的には、本発明の技術分野は、ガラス化を前提とした放射性液体排出物の焼成の分野として定義可能である。
【0004】
フランスの放射性液体排出物のガラス化方法は、2つのステップを含む。第一のステップは、排出物の焼成ステップであり、その間に乾燥及び一部の硝酸塩の脱硝が生じる。第二のステップは、焼成ステップ中に産出された焼成体の閉じ込めガラスにおける、溶解によるガラス化ステップである。
【0005】
焼成ステップは、通常、電気オーブンにより加熱される回転チューブ内で実施される。固体焼成体は、回転チューブ内に配置されたルーズバーにより、粉砕される。
【0006】
ある溶液、特に硝酸ナトリウムに富む溶液、言い換えれば、硝酸溶剤においてナトリウム含有量の高い溶液の焼成中、回転チューブの壁への焼成体の付着が観察され、これが、焼成器のチューブの全体的な目詰まりをもたらす可能性がある。
【0007】
これに対する解決策は、焼成器の目詰まりを回避しながら、焼成を可能とするために、排出物に、非粘着性と指定された硝酸アルミニウム等の化合物を、希釈補助剤として加えることから成るものであった。
【0008】
しかし、例えば、添加する硝酸アルミニウム等の焼成補助剤の量は、最適化が難しい。従って、新しい排出物それぞれに対して、チューブの目詰まりを回避する可能性をもたらす、加熱される回転チューブでの焼成実施要件を決定するために、複数の試験が必要である。特に、焼成オーブンの加熱、及び、希釈補助剤とは異なり、通常糖類である、焼成補助剤の量の調整が必要である。
【0009】
さらに、硝酸アルミニウムの場合、排出物への添加は、産出されるガラスの量を増加する。実際に、ガラス内のアルミニウムの存在は、合成温度を引き上げ、ガラスの閉じ込め特性を低下させないように、ガラス内の廃棄物、排出物の添加率の制限をもたらす。
【0010】
従って、ガラス内のアルミニウムの含有量は、高過ぎず、Al2O3として表される約15質量%に通常制限される。
【0011】
従って、前述した内容を考慮すると、金属または半金属の硝酸塩等の化合物、及び、焼成中に粘着性の酸化物の形成が可能な他の化合物を含む、硝酸水溶液の排出物の、焼成による処理方法の必要性が存在し、焼成チューブの壁への焼成体の付着が回避可能である実施要件が、有限回の焼成試験により容易に決定可能である。
【0012】
より具体的には、焼成前に、排出物に添加されるべき希釈補助剤の量が、少ない試験数により容易で信頼性高い方法で決定可能であり、これにより排出物に添加されるべき希釈補助剤の量の最適化及び最小値までの低減を可能とするような方法が必要である。
【0013】
焼成により硝酸水溶液の排出物を処理するこの方法は、もちろん、処理される排出物及び適用される希釈補助剤に関わらず、信頼性高く、再現性高い方法で、適用可能である。
【0014】
また、本方法が、さらに、焼成体のガラス化中に産出される閉じ込めガラスの量の増加を制限することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、金属または半金属の硝酸塩を含む、硝酸水溶液の液体排出物の処理方法を提供することであり、この方法は、金属または半金属の硝酸塩を上述した要件を満たすそれらの酸化物に変換するために、排出物の焼成ステップを含む。
【0016】
さらに、本発明の目的は、従来技術による方法の欠点、制約、欠陥、及び不利点を持たず、特に、方法の実施パラメータの決定、及び、排出物に添加される希釈補助剤の量の最適化に関して、従来技術の方法の課題を解決するような方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的と、さらにもう一つの目的は、本発明による方法で達成される。すなわち、金属または半金属の硝酸塩を含む硝酸水溶液の液体排出物の処理方法であって、金属または半金属の硝酸塩を前記金属または半金属の酸化物に変換するための排出物の焼成ステップを含み、金属または半金属の硝酸塩から選択される少なくとも一つの化合物、及び焼成の際に粘着性の酸化物をもたらす排出物の他の化合物、及び焼成の際に非粘着性の酸化物をもたらす、少なくとも一つの金属または半金属の硝酸塩を含む希釈補助剤が、排出物と希釈補助剤との混合物をもたらすために、焼成ステップの前に排出物に添加され、混合物が、以下の2つの不等式(1)(2)を満たす方法により、達成される。
【0018】

【0019】
不等式(1)及び(2)の一方または双方において、分母における、酸化物として表される混合物の全化合物の質量、は、任意で、酸化物として表される、硝酸塩を含む混合物の全塩の質量、に簡易化して置き換えてもよい。さらに、不等式(1)及び(2)の双方で、分母は、場合により、酸化物として表される混合物の硝酸塩の質量、に簡易化して置き換えてもよい。
【0020】
さらに、粘着性の化合物は、通常、粘着性の硝酸塩および他の粘着性の化合物、または他の粘着性の化合物のみを含むことから、不等式(2)において、分子における、酸化物として表される、焼成の際に粘着性の酸化物をもたらす混合物の全化合物の質量、は、場合によっては、酸化物として表される、硝酸塩と焼成の際に粘着性の酸化物をもたらす混合物の他の化合物の質量、に簡易化して置き換えてもよい。
【0021】
不等式(2)では、さらに、分子は、場合により、酸化物として表される、焼成の際に粘着性の酸化物をもたらす混合物の硝酸塩の質量、に簡易化して置き換えてもよい。
【0022】
従って、不等式(1)及び(2)双方の最も簡単な形態は、以下の通りである。
【0023】

【0024】
これら双方の不等式(1)(2)または(1´)(2´)は、とりわけ希釈補助剤に関わらず、一般的に適用できる。
【0025】
本発明による方法は、焼成の際にいわゆる非粘着性の酸化物をもたらす金属または半金属の硝酸塩から選択される希釈補助剤の添加が、上述した不等式(1)(2)双方により左右される、という事実によって基本的に定義される。本発明により、希釈補助剤の添加が、両不等式を実証する状態である場合、排出物の焼成は、焼成装置の壁に生じる付着、または焼成装置の目詰まりなしで可能であることが、意外にも分かっている。
【0026】
上記不等式に基づく、希釈補助剤の添加に対するこの非常に単純な基準の単純な適用は、焼成器の目詰まり現象を確実に回避する可能性を確実にもたらす。
【0027】
焼成試験1回で、排出物にかかわらず、加熱及び通常糖類である焼成補助剤の含有量に単純に従うことにより、焼成体の特性、特に、粒径の大きさの最適化が可能である。
【0028】
従って、本発明によれば、希釈補助剤の添加を決定するために、非常に単純な質量基準を規定することができ、これは、目詰まりを回避可能とするために、焼成前に排出物に添加される補助剤の量の最小化を事前に可能とする。
【0029】
この単純で確実な規定は、通常硝酸ナトリウムを主に含む処理排出物と、その中に含まれる他の粘着性及び非粘着性化合物の性質とに関わらず、一般的に適用される。また、この規定は、希釈補助剤として排出物に添加される、合成物、硝酸塩の性質及び数に関わらず、適用される。
【0030】
希釈補助剤は、硝酸アルミニウム、及び、任意で、少なくとも一つの金属または半金属の硝酸塩を含み、これらの硝酸塩は、焼成の際に、少なくとも一つの非粘着性酸化物をもたらす。
【0031】
この少なくとも一つの金属または半金属の硝酸塩は、通常、硝酸鉄及び硝酸レアアースから選択される。
【0032】
硝酸水溶液の排出物の焼成前に排出物に添加される希釈補助剤における、硝酸鉄及び硝酸レアアースの利用は、これまで言及も指摘もされていない。
【0033】
上述した希釈補助剤の硝酸塩中で、硝酸鉄及び硝酸レアアースは、硝酸アルミニウムの特性と同様に、焼成体の付着を制限する特性を有し、これらの固有の硝酸塩から生じる、いわゆる≪非粘着性≫酸化物も、続いて行われるガラス化ステップ中に産出される最終的なガラスに溶解可能であることが、意外にも発見されている。
【0034】
硝酸アルミニウムの一部の代替として硝酸鉄及び硝酸レアアースから選択される硝酸塩を含む、希釈補助剤の利用は、ナトリウム含有量の高い溶液等の高い粘着性の酸化物を生じる排出物の焼成の際の焼成装置のチューブの目詰まりを回避する可能性をもたらす一方、通常焼成に続くガラス化ステップ中に産出される閉じ込めガラスの量の増加を最小化する。
【0035】
意外にも、硝酸鉄及び硝酸レアアースは、全て、焼成体の付着を制限し、従って焼成チューブの目詰まりを回避する能力に関して、硝酸アルミニウムの優れた特性を有するとともに、廃棄物の添加率を増加させ、従って、産出されるガラスの量を制限することを可能にすると言える。
【0036】
硝酸鉄及び硝酸レアアースから選択される固有の硝酸塩を含む、本発明による好ましい希釈補助剤により、ガラス製造処方に課される要件は、アルミニウムの添加が低いために、硝酸アルミニウムからのみ成る希釈補助剤に対して、かなり低減される。
【0037】
従って、硝酸鉄及び硝酸レアアースは、本発明の方法に従う上述の基準(1)(2)の利用による意外な効果と利点に加え、ガラス化においてさらなる利点を提供する。
【0038】
硝酸レアアースは、硝酸ランタン、硝酸セリウム、硝酸プラセオジム、硝酸ネオジムである。
【0039】
従って、希釈補助剤は、硝酸アルミニウム、及び、任意で、硝酸鉄、硝酸ランタン、硝酸セリウム、硝酸プラセオジム、及び硝酸ネオジムから選択される少なくとも一つの他の硝酸塩を含んでもよい。
【0040】
各硝酸塩のそれぞれの量は、チューブにおける焼成体の付着を防ぐという性能の観点から、制限されず、従って、続いて行われるガラス化ステップで調合される閉じ込めガラスの特性に対する影響に従って調整されてもよい。
【0041】
液体排出物に添加される希釈補助剤の量は、不等式(1)及び(2)双方を用いることにより、決定される。
【0042】
排出物は、通常、硝酸ナトリウム及び硝酸塩(希釈補助剤に含まれる硝酸塩を含む)等の他の成分を多く含む、硝酸水溶液である。
【0043】
また、排出物は、硝酸塩ではなく、通常、いわゆる≪粘着性≫の化合物であるリンモリブデン酸等の塩として表される、≪粘着性≫のまたは≪非粘着性≫の化合物を含んでもよい。
【0044】
本発明による方法は、排出物の特性、及び含有される硝酸塩および粘着性の硝酸塩の特性に関わらず、全種類の排出物の目詰まりがない焼成を可能とする。
【0045】
本発明による方法で処理される液体排出物は、焼成の際にいわゆる≪粘着性≫の酸化物をもたらす、金属または半金属の硝酸塩等の少なくとも一つの化合物、及び/または、焼成の際にいわゆる≪粘着性≫の酸化物をもたらす硝酸塩ではない少なくとも一つの他の化合物を含む。
【0046】
本説明では、≪粘着性の化合物≫、≪粘着性の酸化物≫、または≪粘着性の硝酸塩≫という表現が用いられる。
【0047】
≪粘着性の化合物≫、≪粘着性の酸化物≫、または≪粘着性の硝酸塩≫は、焼成装置≪焼成器≫の壁への付着、および、これらの焼成器を目詰まりさせる現象の誘発で知られる、化合物、酸化物、硝酸塩を意味する。
【0048】
≪粘着性の化合物≫、≪粘着性の酸化物≫、≪粘着性の硝酸塩≫という表現は、本技術分野で一般的に用いられる表現であり、これらはよく認知された意味を持ち、当業者に知られており、当業者に対して曖昧さはない。
【0049】
このように、硝酸塩、及び/または、焼成の際に粘着性の酸化物をもたらす他の化合物等の化合物が、硝酸ナトリウム、リンモリブデン酸、または硝酸ホウ素、またはこれらの混合物であってもよい。
【0050】
これらの、酸化物として表される、≪粘着性≫の硝酸塩及び/または他の≪粘着性≫の化合物等の化合物の、排出物における含有量は、排出物に含まれ、酸化物として表される硝酸塩の全質量に基づき、酸化物として表される硝酸ナトリウムの通常35質量%より大きく、または、30質量%より大きい。
【0051】
排出物に含まれ、酸化物として表される、硝酸塩の全質量に代わり、より具体的には、排出物に含まれ、酸化物として表される、(硝酸塩を含む)塩の全質量を任意で用いることもできる。
【0052】
本発明による方法は、硝酸塩及び他のいわゆる≪粘着性≫の化合物の含有量が高い、すなわち、≪粘着性≫の硝酸塩全体の35質量%より大きく、または硝酸ナトリウムの30質量%より大きい排出物の焼成を特に可能とする。
【0053】
本発明による方法は、特に、ナトリウム含有量が高く、粘着性の高い溶液の焼成を可能とする利点がある。
【0054】
ナトリウム、より具体的には硝酸ナトリウムの≪高い含有量≫とは、排出物が、排出物に含まれ酸化物として表される硝酸塩の全質量に基づいて(または、任意で、より具体的には、塩の全質量に基づいて)、30質量%より多く、好ましくは50質量%より多い、酸化ナトリウムとして表される硝酸ナトリウム含有量を有すること、を通常意味する。
【0055】
上述の不等式が、焼成される排出物への希釈補助剤の添加後に形成される混合物において観察され、続いて、目詰まり問題が回避されて、1回の焼成試験が、焼成器の異なる領域の加熱と、(通常)焼成補助剤含有量と、焼成チューブの回転速度とにより、焼成体の特性の最適化を可能とする。
【0056】
この焼成の要件は、どのような目詰まりも回避されるという顕著な事実を除き、希釈補助剤の添加は、不等式(1)及び(2)により追加された基準に適合する必要があるという事実によっては、基本的に変更されない。
【0057】
焼成の要件は、通常、以下の通りである。焼成により達する温度は約400℃である。
【0058】
この焼成ステップは、例えば、複数の独立した加熱領域を備える電気オーブンにより上述した目標温度まで好ましくは過熱される回転チューブで、通常実施される。
【0059】
ある加熱領域は、より具体的には、蒸発に貢献し、他の領域は焼成に貢献する。焼成領域は、約400℃の温度に加熱される焼成を可能とする。
【0060】
言い換えれば、焼成ステップは、オーブンの排気口で約400℃の焼成温度で実施される。
【0061】
焼成体が、ガラス化ユニットにおいて、良好な条件下で反応可能であるように、チューブの回転速度、焼成補助剤の添加、及びルーズバーの存在は、固体焼成体の分割を可能とする。
【0062】
本発明の処理方法は、焼成ステップの後、この焼成ステップ中に得られる焼成体のガラス化ステップを通常含む。このガラス化ステップは、閉じ込めガラスを得るための、焼成体とガラス原料(予め形成されたガラス)との間の反応を基本とする。
【0063】
言い換えれば、焼成ステップの後、焼成ステップに起因する焼成体とガラス原料との溶解からの閉じ込めガラスの合成から成る、ガラス化ステップが実施される。
【0064】
既に上述したように、好ましくは希釈補助剤における固有の硝酸鉄及び硝酸レアアースの利用は、ガラスの処方に関して、制約をより有利に緩和することができる。特に、硝酸アルミニウムからのみ成る希釈補助剤に代わって本発明による希釈補助剤を用いることにより焼成体が得られた場合、より多くの排出物が、ガラスに添加可能となる。
【0065】
言い換えれば、硝酸アルミニウムに因る、排出物のガラスへの添加率の最終的な制限が抑えられて、添加率は顕著に増加し、ガラスの全質量に基づき、例えば13質量%酸化物から18質量%酸化物までに亘る。
【0066】
さらに、硝酸アルミニウムからのみ成る希釈補助剤の場合における、アルミニウムの重要な添加は、焼成体を硬化する傾向があり、ガラス化オーブンでの焼成体とガラス原料との間の反応性の低下を生じる結果をもたらす。
【0067】
一方、鉄の添加は、焼成体をより砕け易くし、従ってガラス化をより容易にする。
【0068】
ガラス化は、閉じ込めガラスを形成するための、焼成体とガラス原料との間の溶解反応を基本とする。これは、2つのタイプのオーブン、4つの誘導子でのガラス原料/焼成体の混合物が入れられる金属ポットの過熱から成る間接誘導オーブン、及び、電磁界の一部を通過させ、ガラス原料/焼成体の混合物が連続的に供給される冷却構造(冷却るつぼ)を介する、誘導子でのガラスの過熱から成る直接誘導オーブンで実施される。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明は、図示されるとともに限定されない以下の実施例を参照して、説明される。
【実施例1】
【0070】
本実施例では、高い硝酸ナトリウム含有率を含む排出物の焼成が説明される。
【0071】
この排出物(廃棄物)の組成が表1に示され、この組成は、排出物に含まれる、硝酸塩である塩に対応する酸化物の質量%として表されている。
【0072】
酸化物の割合は、排出物に含まれる塩に対する酸化物の全質量に基づいて表されている。
【0073】
以下の表1に記載される排出物は、特にナトリウムが多く添加され、従って、非常に粘着性が高い。
【0074】
本発明によれば、排出物(廃棄物)と希釈補助剤(どのようなものであっても)との混合物の溶液において、以下の2つの不等式が検証されるべきである。
【0075】


あるいは、より簡潔に、
【0076】

【0077】
表1に記載される特有の排出物に対する焼成基準の適用は、以下により表される。
【0078】

【0079】
実際に、当業者は、この排出物の粘着性の酸化物(または、より具体的には、硝酸塩または排出物中で見つかる他の化合物の焼成により生じる粘着性の酸化物)を容易に特定でき、それらは、Na2O、MoO3、及びB2O3である。
【0080】
この排出物に対しては、第二の不等式が最も制限的である。
【0081】
不等式(2)で定義される範囲の限界が調べられる場合、液体排出物の混合物における酸化物として表される液体排出物(溶液)の比率は、せいぜい51.27質量%であり、これは用いられる希釈剤を問わない。実際に、この排出物に対して、不等式(2)が提供される。
【0082】

【0083】
xは、酸化物として表される、添加される希釈補助剤の質量を表す。すなわち、
【0084】

【0085】
従って、混合物における液体排出物(溶液)の最大比率は、
【0086】


である。
【0087】
従って、上の計算を考慮しつつ、排出物に含まれる塩に対応する質量%の酸化物として表される100質量%の排出物に対する、酸化物として表される95.05質量%の補助剤の量における、酸化物Al2O3として表される100質量%の硝酸アルミニウムから成る補助剤(補助剤1)が、表1の排出物に添加される。補助剤の量は、本発明の基準を適用することにより、最小化されたことに注目すべきである。
【0088】
焼成の要件は、以下の通りである。
【0089】
4つの独立した加熱領域を備える焼成器で、焼成体により達する温度は約400℃、ルーズバーを含む回転チューブの回転速度は20rpm、焼成補助剤の量は、排出物と希釈補助剤との混合物の40g/Lである。
【0090】
壁への付着及び焼成器の目詰まりは、観察されない。
【実施例2】
【0091】
本実施例では、実施例1のものと同じで表1に記載される排出物の焼成が実施される。
【0092】
この排出物に対して、酸化物Al2O3として表される75質量%の硝酸アルミニウム、及び、酸化物Fe2O3として表される25質量%の硝酸鉄から成る、本発明による好ましい補助剤(補助剤2)が添加される。この補助剤は、本発明による基準に基づく同じ計算により決定された、補助剤1と同じ量で添加される。
【0093】
従って、排出物に含まれる塩に対応する質量%の酸化物として表される100質量%の排出物(廃棄物)に対する、酸化物として表される95.05質量%の補助剤が、添加される。
【0094】
焼成の要件は、実施例1のものと同じである。
【0095】
壁への付着及び焼成器の目詰まりは、観察されない。
【表1】



【実施例3】
【0096】
本実施例では、実施例1で得られる焼成体のガラス化が処理される。この焼成は、硝酸アルミニウムからのみ成る補助剤(≪補助剤1≫)を用いて処理されたことを思い出されたい。
【0097】
合成可能なガラス組成範囲は、ガラスにおいて最大13質量%のアルミニウム含有量を設定する。
【0098】
ガラスは、焼成体と1質量%のアルミニウムを含むガラス原料とから合成される。ガラス化は、冷却坩堝において、1,230℃で実施された。
【実施例4】
【0099】
本実施例では、実施例2で得られる焼成体のガラス化の処理が行われる。この焼成体は、75質量%のアルミニウム塩及び25質量%の鉄塩から成る好ましい補助剤(≪補助剤2≫)を用いて処理されたことを思い出されたい。
【0100】
初期廃棄物の最大添加レベル(従って混合前)は、実施例3において、12.9質量%のガラスに制限される一方、実施例4では、最大添加レベルは17.3%であることが見出された。
【0101】
さらに、補助剤1によるアルミニウムの重要な添加は、焼成体を硬化する傾向があり、ガラス化オーブンにおける焼成体とガラス原料との間の反応性のわずかな低下を生じる結果となる。
【0102】
一方、本発明による補助剤2を含む鉄の供給は、焼成体をより砕け易くし、したがってガラス化をより容易にする。
【実施例5】
【0103】
本実施例では、表2に記載されるような、100%硝酸ナトリウムから成る排出物の焼成が説明される。
【0104】
第一の実験によれば、酸化物Al2O3として表される100質量%の硝酸アルミニウムから成る、先行技術の補助剤(補助剤1)が、この排出物に添加される。
【0105】
第二の実験によれば、硝酸ナトリウムの一部が、硝酸ランタン、硝酸セリウム、硝酸ネオジム、及び硝酸プラセオジムで置き替えられる、本発明による補助剤(補助剤3)で、硝酸ナトリウムの焼成が実施される。
【0106】
両ケースとも、希釈補助剤含有量は、以下をもたらす不等式(1)により与えられる。
【0107】

【0108】
Xは、酸化物として表される、添加される希釈補助剤の質量を表す。すなわち、
【0109】

【0110】
この排出物に添加され、硝酸ナトリウムからのみ成る、全酸化物の質量として表される最小希釈補助剤含有量は、排出物と希釈補助剤との混合物において、70%を示す。
【0111】
焼成要件は、以下の通りである。
【0112】
2つの独立した加熱領域を備える焼成器で、焼成体により達する温度は約400℃、ルーズバーを含む回転チューブの回転速度は35rpm、焼成補助剤の含有量は、排出物と希釈補助剤との混合物の20g/Lである。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または半金属の硝酸塩を含む硝酸水溶液の液体排出物の処理方法であって、前記金属または半金属の硝酸塩を前記金属または半金属の酸化物に変換するための前記排出物の焼成ステップを含み、前記金属または半金属の硝酸塩から選択される少なくとも一つの化合物、及び焼成の際に粘着性の酸化物をもたらす前記排出物の他の化合物、及び焼成の際に非粘着性の酸化物をもたらす、少なくとも一つの金属または半金属の硝酸塩を含む希釈補助剤が、排出物と希釈補助剤との混合物をもたらすために、前記焼成ステップの前に前記排出物に添加され、前記混合物が、以下の2つの不等式(1)(2)を満たす方法。

【請求項2】
前記希釈補助剤が、硝酸アルミニウム、及び、任意で、硝酸鉄及び硝酸レアアースから選択される少なくとも一つの他の硝酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希釈補助剤が、硝酸アルミニウム、及び、任意で、硝酸鉄、硝酸ランタン、硝酸セリウム、硝酸プラセオジム、及び硝酸ネオジムから選択される少なくとも一つの他の硝酸塩を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
焼成の際に一つ以上の粘着性の酸化物をもたらす少なくとも一つの前記化合物が、硝酸ナトリウム、リンモリブデン酸、硝酸ホウ素、及びそれらの混合物から選択される、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
硝酸塩、及び、焼成の際に粘着性の酸化物をもたらす、酸化物として表される他の化合物の含有量が、前記排出物に含まれ酸化物として表される塩の全質量に基づいて、35質量%より多い、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記排出物が、前記排出物に含まれ酸化物として表される塩の全質量に基づいて、30質量%より多い、酸化ナトリウムNa2Oとして表される硝酸ナトリウム含有量を有する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記焼成ステップが、オーブンの排気口で約400℃の焼成温度に至る温度で実施される、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記焼成が、加熱される回転チューブ内で実施される、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記焼成ステップの後、前記焼成ステップからの前記焼成体とガラス原料との溶解からの閉じ込めガラスの合成から成る、ガラス化ステップが実施される、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。


【公表番号】特表2012−514206(P2012−514206A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544033(P2011−544033)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067900
【国際公開番号】WO2010/076287
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508313895)アレヴァ・エヌセー (32)
【氏名又は名称原語表記】AREVA NC
【住所又は居所原語表記】33, rue La Fayette, 75009 Paris, France
【Fターム(参考)】