説明

焼結軟磁性粉末成形体

【課題】比抵抗が高く、交流磁気特性(鉄損)の低い焼結軟磁性粉末成形体を提供する。
【解決手段】Feと2〜6質量%のSiと不可避の不純物とを含有する組成(但し、Niを不可避の不純物として以外は含まない)からなり、粒子間にSiが偏在して、粒子間におけるSi濃度が粒子間以外におけるSi濃度よりも高い状態になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質磁性粉末を用いた焼結軟磁性粉末成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、焼結により得られる焼結電磁ステンレス材として、ステンレスの溶製材が広く知られている。電磁ステンレス材は、例えば、電磁弁や燃料噴射用インジェクタ、各種アクチュエータ等の磁気部品として使用されている。
【0003】
近年、このような磁気部品の使用周波数や高調波成分は高まっており、これに伴って、例えばコイルが巻かれた鉄心に交流を流したときに発生する渦電流による電力損失や発熱が大きくなる傾向にある。また、鉄損に含まれるヒステリシス損、すなわち鉄心の磁区が交番磁界によって磁界の向きを変えるときに示すヒステリシス分の発熱も無視できない。
【0004】
上記に関連する技術として、Fe−Crと共にSiを含有する焼結電磁ステンレス材が提案されている。例えば、Fe−13Cr−2Siを主成分とした溶製材や1〜3質量%のSiを含有するFe−6.5Cr−(1.0〜3.0)Si組成の焼結電磁ステンレス材が開示されており(例えば、特許文献1〜2、非特許文献1〜2参照)、多くはクロム(Cr)を主成分として構成されている。また、Si粉末をFe粉末等と共に混合した混合粉末を加圧して所定の形状にし、その後焼結を行なう技術が開示されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0005】
一方、溶製材の場合、所望の形状を得るためには切削等の加工を施す必要があり、機械加工が不可欠であり、工程上不利である。そのため、機械加工を減らして所望の形状を簡易に短時間で得るために、金属粉末を用いて所望形状に近い成形物を直接得る方法(粉末冶金法で成形するニアネットシェイプ)が広く行なわれている。
【特許文献1】特開平7−76758号公報
【特許文献2】特開平7−238352号公報
【非特許文献1】日立粉末冶金テクニカルレポートNo.5(2006),p.27〜30
【非特許文献2】東北特殊鋼株式会社、製品情報等(電磁ステンレス鋼)、[online]、平成19年3月13日検索、インターネット「<URL:http://www.tohokusteel.com/pages/tokushu_zail.htm>
【非特許文献3】日立粉末冶金テクニカルレポートNo.3(2004),p.28〜32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した技術や焼結電磁ステンレス材では、得られた電磁ステンレス材の電気比抵抗は100μΩ・cm程度であり、近年の磁気部品の使用周波数や高調波成分が高まる状況では、発生する渦電流による発熱を抑えることができず、より高い比抵抗が望まれている。
また、交流磁化したときに失われる電力損失、主として交流磁気特性(鉄損)も不十分であり、更なる向上が求められている。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、比抵抗が高く、交流磁気特性の優れた、すなわち鉄損の低い焼結軟磁性粉末成形体を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、FeやNiを主成分とする金属組成全体の2〜6質量%に相当するSiが、金属粒子内より粒子間において濃度が高くなるように、金属粒子の粒子間に配置された構成が、成形性を保ちつつ、比抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効であるとの知見を得、かかる知見に基づいて達成されたものである。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
【0009】
<1> Fe、2〜6質量%のSi、及び不可避の不純物を含有する組成(但し、Niを不可避の不純物として以外は含まない)からなり、粒子間にSiが偏在して、粒子間におけるSi濃度が粒子間以外におけるSi濃度よりも高い焼結軟磁性粉末成形体である。
【0010】
<2> 少なくともFeを含む金属粉末と、平均粒子径が前記金属粉末の平均粒子径の1/10〜1/100であるSi粉末とを混合して混合粉末とし、得られた混合粉末を用いて成形、焼結して作製されたことを特徴とする前記<1>に記載の焼結軟磁性粉末成形体である。
【0011】
<3> 前記金属粉末が、Feのみの金属粉末、Fe及びSiの合金粉末、Fe及びPの合金粉末、又はFeとSiとPとの合金粉末である(但し、それぞれの合金粉末は不可避の不純物を含む。)ことを特徴とする前記<2>に記載の焼結軟磁性粉末成形体である。
【0012】
<4> 前記金属粉末の平均粒子径(D50)が、10〜200μmであることを特徴とする前記<2>又は前記<3>に記載の焼結軟磁性粉末成形体である。
【0013】
<5> 前記金属粉末が、94〜100質量%のFe、6質量%未満のSi、及び不可避の不純物を含有する金属粉末であることを特徴とする前記<2>又は前記<4>に記載の焼結軟磁性粉末成形体である。
【0014】
<6> 0.02〜0.1質量%のPを更に含有することを特徴とする前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の焼結軟磁性粉末成形体である。
【0015】
<7> 前記金属粉末が、アトマイズ粉末であることを特徴とする前記<2>〜前記<6>のいずれか1つに記載の焼結軟磁性粉末成形体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、比抵抗が高く、交流磁気特性の優れた、すなわち鉄損の低い焼結軟磁性粉末成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、焼結軟磁性粉末成形体について詳細に説明する。
第1の態様の焼結軟磁性粉末成形体は、鉄(Fe)、44〜50質量%のニッケル(Ni)、及び2〜6質量%のケイ素(Si)を含有し、粒子間にSiを偏在させて構成したものである。この組成には、上記以外に不可避の不純物が含まれてもよい。
【0018】
第1の態様の焼結軟磁性粉末成形体においては、Crを主に含まず、Fe及びNiを主成分とした粒子間にSiを偏在させる構成とするので、より高い比抵抗が得られ、交流磁気特性(鉄損)を飛躍的に向上することができる。
【0019】
ここで、粒子間にSiが偏在するということは、簡略的には粒子間でSiリッチであるともいい、各金属粒子間もしくは合金粒子間、すなわち粒子間に存在するSiの濃度が、該金属粒子内もしくは該合金粒子内に存在するSiの濃度よりも高い(すなわち粒子間でSiリッチな)場合をいう。
【0020】
第1の態様の焼結軟磁性粉末成形体を構成するNiの割合は、44〜50質量%である。Niの割合は、50質量%を超えると飽和磁束密度Bs[T(テスラ)、以下同様]が小さくなり、44質量%未満であると最大比透磁率μmが小さくなり、やはり飽和磁束密度が小さくなる。中でも、Niの好ましい範囲は、48〜50質量%である。
【0021】
第1の態様の焼結軟磁性粉末成形体を構成するSiの割合は、2〜6質量%である。Siの割合は、6質量%を超えると飽和磁束密度Bs[T]が小さくなると共に、成形しにくく(成形性が悪く)なり、2質量%未満であると比抵抗ρ[μΩ・cm]が小さくなる。中でも、Siの好ましい範囲は、2.5〜5質量%であり、より好ましくは3〜4質量%である。
【0022】
また、第1の態様の焼結軟磁性粉末成形体は、焼結軟磁性粉末成形体の全質量のうち、上記のNi及びSiを除いた残量の全て若しくは一部をFeで構成することができる。
【0023】
なお、第1の態様においては、Fe、Ni、及びSiの各組成範囲を満たす限り、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の金属成分が更に含まれてもよく、他の金属成分については任意に選択することができる。
【0024】
第1の態様の焼結軟磁性粉末成形体は、少なくともFe及びNiを含む金属粉末と、平均粒子径が金属粉末の1/10〜1/100であるSi粉末とを混合し、得られた混合物を用いて成形、焼結して作製することができ、これにより作製された焼結軟磁性粉末成形体は比抵抗、鉄損の点で好ましい。この場合、少なくともFe及びNiを含む金属粉末中にさらにSi粉末を加えて混合粉末とし、この混合粉末を用いてニアネットシェイプによる成形を行なうので、粒子間でSiをリッチにさせることができる。これにより、焼結軟磁性粉末成形体の比抵抗がより高くなり、鉄損も低減することができる。
【0025】
このとき、「少なくともFe及びNiを含む金属粉末」として、Fe及びNiの合金粉末、FeとNiとSiとの合金粉末等を用いることができる。具体的には、44〜53.2質量%のNiと6質量%未満のSiと残部Fe及び不可避の不純物とからなる合金粉末を用いることができ、好ましくは48〜50質量%のNiと6質量%未満のSiと残部Fe及び不可避の不純物とからなる合金粉末を用いることができる。例えば、Fe−Ni軟質磁性合金であるPBパーマロイや、Fe48質量%、Ni50質量%、及びSi2質量%の合金粉末などを好適に用いることができる。
【0026】
前記Si粉末の平均粒子径としては、使用する金属粉末の1/10〜1/100とするのが好ましい。この範囲内にすることにより、確実に金属粉末の粒子間にSi粉末を配置できる。
【0027】
また、金属粉末の平均粒子径(D50)としては、1〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。平均粒子径は、300μm以下であると渦電流損を抑えることができ、1μm以上であるとヒステリシス損を小さくできる。
平均粒子径D50は、粉末粒子の体積について、小径側から累積分布を描き、累積が50%であるときの体積平均粒子径である。
【0028】
次に、本発明の第2の態様の焼結軟磁性粉末成形体について詳細に説明する。
本発明の第2の態様の焼結軟磁性粉末成形体は、鉄(Fe)、2〜6質量%のケイ素(Si)、及び不可避の不純物を含有し(但し、Niを不可避の不純物として以外は含まない)、粒子間にSiを偏在させて粒子間におけるSi濃度が粒子間以外におけるSi濃度よりも高くなるように構成したものである。この組成には、上記以外に、0.001〜0.1質量%のPを含有して構成することができる。
【0029】
第2の態様の焼結軟磁性粉末成形体においては、Crを主に含まず、Feを主成分とした粒子間にSiを偏在(すなわちSiリッチに)させる構成とするので、より高い比抵抗が得られ、交流磁気特性(鉄損)を飛躍的に向上することができる。
本態様において、粒子間にSiが偏在するとは、前記第1の態様と同様、各金属粒子間もしくは合金粒子間、すなわち粒子間に存在するSiの濃度が、該金属粒子内もしくは該合金粒子内に存在するSiの濃度よりも高い(すなわち粒子間でSiリッチな)場合をいう。
【0030】
本発明の第2の態様の焼結軟磁性粉末成形体を構成するSiの割合は、2〜6質量%である。Siの割合は、6質量%を超えると飽和磁束密度Bs[T]が小さくなると共に、成形しにくくなり、2質量%未満であると比抵抗ρ[μΩ・cm]が小さくなる。中でも、Siの好ましい割合は、2.5〜5質量%であり、より好ましくは3〜4質量%である。
【0031】
第2の態様の焼結軟磁性粉末成形体を構成するPの割合は、0.001〜0.1質量%であることが好ましい。Pの割合が前記範囲内であると、鉄損がより良好になる。中でも、Pの好ましい割合は、鉄損をより良好にする点で、0.02〜0.1質量%であり、より好ましくは0.02〜0.08質量%である。
【0032】
第2の態様の焼結軟磁性粉末成形体は、焼結軟磁性粉末成形体の全質量のうち、上記のSi及びPを除いた残量の全て若しくは一部をFeで構成することができる。
【0033】
なお、第2の態様においては、Fe、Si、及びPの各組成範囲を満たす限り、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の金属成分が更に含まれてもよく、他の金属成分については任意に選択することができる。
【0034】
第2の態様の焼結軟磁性粉末成形体は、少なくともFeを含む金属粉末と、平均粒子径が金属粉末の1/10〜1/100であるSi粉末とを混合し、得られた混合物を用いて成形、焼結して作製することができ、これにより作製された焼結軟磁性粉末成形体は比抵抗、鉄損の点で好ましい。この場合、少なくともFeを含む金属粉末中にさらにSi粉末を加えて混合粉末とし、この混合粉末を用いてニアネットシェイプによる成形を行なうので、粒子間でSiをリッチに存在させることができる。これにより焼結軟磁性粉末成形体の比抵抗がより高くなり、鉄損も低減することができる。
【0035】
このとき、「少なくともFeを含む金属粉末」として、Feのみの金属粉末、FeとSiの合金粉末、FeとPの合金粉末、FeとSiとPとの合金粉末などを用いることができる。具体的には、6質量%以下のSi及び残部Fe及び不可避の不純物からなる合金粉末を用いることが好ましく、例えば、Fe98質量%及びSi2質量%の合金粉末などを用いることができる。
【0036】
第2の態様においても、Si粉末の平均粒子径は、第1の態様と同等の理由から、使用する金属粉末の1/10〜1/100とするのが好ましい。
また、第2の態様における金属粉末の平均粒子径(D50)としては、1〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。平均粒子径は、300μm以下であると渦電流損を抑えることができ、1μm以上であるとヒステリシス損を小さくできる。
平均粒子径については、既述の通りである。
【0037】
第1及び第2の態様の焼結軟磁性粉末成形体は、金属粉末としてアトマイズによる生成粉(アトマイズ粉末)を用いて作製されることが好ましい。アトマイズ粉末は、比較的形状が丸く偏析が少ないため、より高密度の成形が可能である。
【0038】
アトマイズ粉末は、固体を粉砕せずに、溶解した金属や合金(溶湯)を噴霧し急冷する方法により、溶湯から直接生成された金属粉であり、溶湯を高圧水により噴霧した水アトマイズ粉、溶湯を高圧ガスにより噴霧したガスアトマイズ粉、溶湯を高回転ディスクで飛散させたディスクアトマイズ粉が含まれる。
中でも、製造コストの点で、水アトマイズ粉が好ましい。
【0039】
本発明の焼結軟磁性粉末成形体は、上記以外に、必要に応じて、潤滑材、分散材などを更に添加してもよい。
【0040】
本発明の焼結軟磁性粉末成形体は、焼結軟磁性粉末成形体を構成する金属成分である金属粉末にさらにSi粉末を混合して混合粉とし、これを用いたニアネットシェイプにより成形する。これにより、所望形状の成形体を、これを構成する金属粉末の粒子間に該粒子間以外の部分より多くのSiを偏在させて作製できるので、得られた焼結軟磁性粉末成形体の比抵抗が向上し、鉄損を低減することができる。
【0041】
金属粉末とSi粒子の混合は、従来公知の方法を任意に選択して行なうことができ、例えば、Vブレンダー、シェイカーなどを用いて好適に行なえる。
【0042】
成形は、金属粉末とSi粉末の混合物を、例えば、冷間あるいは温間の金型に投入し、所望の圧力をかけることにより行なうことができる。圧力は、混合物の組成等により適宜選択できるが、成形体のハンドリングの点で、4〜20t/cmの範囲が好ましい。
【0043】
成形後、成形物を焼結することにより、所望の成形体が得られる。焼結は、例えば、真空熱処理炉、雰囲気熱処理炉あるいは不活性ガス熱処理炉などにより行なうことができる。
焼結条件としては、焼結温度は、1000〜1400℃が好ましく、焼結時間は、30〜180分が好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
〔参考例1〕
平均粒子径D50が150μmのパーマロイPB系の原料粉末(Fe−50Ni−2Si)に、3質量%SiとなるようにSi微粉末Aを加えて混合した。この混合粉末に室温下で潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.5質量%を更に加えて混合した。得られた混合粉末を室温において金型に入れ、15t/cm2の面圧でプレスし、リング形状のプレス品を得た。このプレス品を1300℃で60分間焼結し、成形体である焼結品を得た。
【0046】
得られた焼結品について、以下のようにして直流磁気特性、鉄損、及び比抵抗の測定を行なった。測定結果を下記表1に示す。
【0047】
−1)直流磁気特性−
メトロン技研(株)製の直流磁化特性試験装置SK−130型を用いて、磁化力2000A/m時の磁束密度B2000、及び最大比透磁率μmを計測し、直流磁気特性を評価する指標とした。
【0048】
−2)鉄損−
岩通計測(株)製のB−HアナライザーSY8258型を用いて、磁束密度1T(テスラ、以下同様)、50Hz時の損失、0.05T、5kHz時の損失、及び0.05T、10kHz時の損失を計測し、鉄損W[W/kg]を評価する指標とした。
【0049】
−3)比抵抗−
三菱化学(株)製の四端子四探針法高精度低抵抗率計MCP−T600型を用いて、比抵抗ρ[μΩ・cm]を計測した。
【0050】
〔参考例2〕
参考例1において、Si微粉末AをSi微粉末Bに代えたこと以外は、参考例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0051】
〔参考例3〕
参考例1において、Si微粉末AをSi微粉末Cに代えたこと以外は、参考例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0052】
〔参考例4〕
参考例1において、Si微粉末AをSi微粉末Dに代えたこと以外は、参考例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0053】
〔実施例1〕
平均粒子径D50が150μmの鉄−シリコン系の原料粉末(Fe−2Si)に、3質量%SiとなるようにSi微粉末Aを加えて混合した。この混合粉末に室温下で潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.5質量%を更に加えて混合した。得られた混合粉末を室温において金型に入れ、15t/cm2の面圧でプレスし、リング形状のプレス品を得た。このプレス品を1300℃で60分間焼結し、成形体である焼結品を得た。
得られた焼結品について、参考例1と同様の評価を行なった。測定、評価の結果は下記表1に示す。
【0054】
〔実施例2〕
実施例1において、Si微粉末AをSi微粉末Bに代えたこと以外は、実施例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0055】
〔実施例3〕
実施例1において、Si微粉末AをSi微粉末Cに代えたこと以外は、実施例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0056】
〔実施例4〕
実施例1において、Si微粉末AをSi微粉末Dに代えたこと以外は、実施例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0057】
〔参考例5〕
参考例1において、Siの量を3質量%から4質量%に変更したこと以外は、参考例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0058】
〔参考例6〕
参考例2において、Siの量を3質量%から4質量%に変更したこと以外は、参考例2と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0059】
〔実施例5〕
実施例1において、Siの量を3質量%から4質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0060】
〔実施例6〕
実施例2において、Siの量を3質量%から4質量%に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0061】
〔参考例7〕
参考例1において、Siの量を3質量%から6質量%に変更したこと以外は、参考例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0062】
〔参考例8〕
参考例2において、Siの量を3質量%から6質量%に変更したこと以外は、参考例2と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0063】
〔実施例7〕
実施例1において、Siの量を3質量%から6質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0064】
〔実施例8〕
実施例2において、Siの量を3質量%から6質量%に変更したこと以外は、実施例2と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0065】
〔参考例9〕
平均粒子径D50が180μmのパーマロイPB系の原料粉末(Fe−51Ni)に、2質量%SiとなるようにSi微粉末Aを加えて混合し、焼結温度を1300℃から1350℃に変更したこと以外は、参考例1と同様にして、プレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0066】
〔実施例9〕
平均粒子径D50が130μmの鉄−シリコン系の原料粉末(Fe−1Si)に、2質量%SiとなるようにSi微粉末Aを加えて混合したこと以外は、実施例1と同様にして、プレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0067】
〔実施例10〕
平均粒子径D50が150μmの鉄−シリコン−燐系の原料粉末(Fe−1Si−0.05P)に、3質量%SiとなるようにSi微粉末Dを加えて混合し、焼結温度を1300℃から1250℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、プレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0068】
〔実施例11〕
平均粒子径D50が150μmの鉄−シリコン−燐系の原料粉末(Fe−2Si−0.05P)に、4質量%SiとなるようにSi微粉末Dを加えて混合し、焼結温度を1300℃から1250℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、プレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0069】
〔比較例1〕
従来から使用されている溶製電磁ステンレス材(Fe−13Cr−2Al−2Si−0.3Pb)を準備した。結果を下記表1に示す。
【0070】
〔比較例2〕
従来から使用されている焼結電磁ステンレス材として、Fe、Cr及びSiをFe−9.5Cr−4Siの組成の金属粉末を用いて成形、焼成した焼結電磁ステンレス材を準備した。結果を下記表1に示す。
【0071】
〔比較例3〕
Fe粉末とFe−18Si粉末を混合してFe−1Siの混合粉末を作製し、参考例1と同様にしてプレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0072】
〔比較例4〕
平均粒子径D50が150μmのパーマロイPB系の原料粉末(Fe−40.8Ni)に、2質量%SiとなるようにSi微粉末Aを加えて混合したこと以外は、参考例1と同様にして、プレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0073】
〔比較例5〕
平均粒子径D50が150μmのパーマロイPB系の原料粉末(Fe−52.5Ni−1Si)に、2質量%SiとなるようにSi微粉末Aを加えて混合したこと以外は、参考例1と同様にして、プレス、焼結し、焼結品を得た。また、参考例1と同様の測定、評価を行ない、結果を下記表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
前記表1中に示すSi微粉末A〜Dの詳細は下記の通りである。
A:Si粉,平均粒子径D50:12μm
B:Si粉,平均粒子径D50:1.6μm
C:Si粉,平均粒子径D50:8.2μm
D:Si粉,平均粒子径D50:6.8μm
【0076】
前記表1及び図1の結果から、次のことが明らかである。
(1)実施例1〜11では、従来材である比較例1,2に比べ、比抵抗がおよそ2倍以上となり、鉄損も大幅に低下した。
また、溶製材でSi(3〜6.5質量%)を均一に分散させた従来から使用されている電磁鋼板の比抵抗60〜80μΩ・cmに比較しても2倍以上となっており、粒子間でのSiリッチによる比抵抗増加の効果が示されている。
(2)参考例1〜4、実施例1〜4、参考例5〜6、実施例5〜6から明らかなように、平均粒子径が原料粉末の1/10〜1/100程度のSi微粉末を混合すると、Si微粉末の平均粒子径によらず、同程度の特性が得られた。
(3)Si量の範囲については次のことがいえる。
比較例3から、Siが1質量%では比抵抗が従来材(比較例1,2)と同程度の110μΩ・cmであり、効果が得られない。Siが6質量%である参考例7〜8、実施例7〜8では、他の実施例に比べ、成形性が悪化して密度や飽和磁束密度も低下する傾向があり、程度としては限界であった。したがって、Siは2〜6質量%が適当である。
(4)図1に示すように、実施例では、Si成分が金属粉の粒子間近傍に集中して存在していることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】参考例1の焼結品の内部構造を示す写真であり、(A)はSEM写真であり、(B)はSiの二次電子像を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe、2〜6質量%のSi、及び不可避の不純物を含有する組成(但し、Niを不可避の不純物として以外は含まない)からなり、粒子間にSiが偏在して、粒子間におけるSi濃度が粒子間以外におけるSi濃度よりも高い焼結軟磁性粉末成形体。
【請求項2】
少なくともFeを含む金属粉末と、平均粒子径が前記金属粉末の平均粒子径の1/10〜1/100であるSi粉末とを混合して混合粉末とし、得られた混合粉末を用いて成形、焼結して作製されたことを特徴とする請求項1に記載の焼結軟磁性粉末成形体。
【請求項3】
前記金属粉末が、Feのみの金属粉末、Fe及びSiの合金粉末、Fe及びPの合金粉末、又はFeとSiとPとの合金粉末である(但し、それぞれの合金粉末は不可避の不純物を含む。)ことを特徴とする請求項2に記載の焼結軟磁性粉末成形体。
【請求項4】
前記金属粉末の平均粒子径(D50)が、10〜200μmであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の焼結軟磁性粉末成形体。
【請求項5】
前記金属粉末が、94〜100質量%のFe、6質量%未満のSi、及び不可避の不純物を含有する金属粉末であることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載の焼結軟磁性粉末成形体。
【請求項6】
0.02〜0.1質量%のPを更に含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の焼結軟磁性粉末成形体。
【請求項7】
前記金属粉末が、アトマイズ粉末であることを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の焼結軟磁性粉末成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−84695(P2009−84695A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265556(P2008−265556)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【分割の表示】特願2007−134488(P2007−134488)の分割
【原出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000176833)三菱製鋼株式会社 (69)
【Fターム(参考)】