焼結部品のサイジング方法
【課題】非円形軸穴の局部的な形状の変化によって端面の面積が部分的に変化している焼結歯車などの焼結部品のサイジングに起因した真円度の低下を抑制して同部品の真円度を向上させることを課題としている。
【解決手段】非円形の軸穴3を中心に有する焼結部品を、ダイ、上パンチ、下パンチ及びコアロッドを有する金型を用いてサイジングするときに、上下のパンチ7,8が焼結部品を加圧し始める位置で、焼結部品の端面の周方向各域のうち面積が他の領域よりも大きい側において、焼結部品の端面4と上パンチ7の端面10との間に部品の圧縮代よりも小さい隙間gを生じさせ、この状態で上パンチ7と下パンチ8による加圧を行う。
【解決手段】非円形の軸穴3を中心に有する焼結部品を、ダイ、上パンチ、下パンチ及びコアロッドを有する金型を用いてサイジングするときに、上下のパンチ7,8が焼結部品を加圧し始める位置で、焼結部品の端面の周方向各域のうち面積が他の領域よりも大きい側において、焼結部品の端面4と上パンチ7の端面10との間に部品の圧縮代よりも小さい隙間gを生じさせ、この状態で上パンチ7と下パンチ8による加圧を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非円形の軸穴を中心に有し、その軸穴の影響によって端面の周方向各域の面積分布に差が生じた焼結部品の寸法矯正を、製品の真円度の低下を抑制して行うサイジング方法に関する。
【0002】
この発明で言う端面の周方向各域とは、端面を、内径側を除く箇所の分割条件が等しくなるように複数に分割した領域を指す。
【背景技術】
【0003】
周知の焼結部品の中に、回転軸に装着して使用されるものがある。そのような焼結部品は多々存在する。その部品の代表例とも言える焼結歯車を図12に示す。図示の焼結歯車は、内接歯車式ポンプのインナーロータである。このインナーロータ1は、アウターロータ(図示せず)との間にポンプ室を作りだす歯2を外周に有しており、さらに、回転軸が通される軸穴3を中心に有している。
【0004】
その軸穴3は、ロータの端面視形状が円弧部3aと直線部3bとからなっており、直線部3bの箇所で内径が小さくなっている。その軸穴の直線部3bの面は、所謂2面幅の面として中心対称に設けられている。
【0005】
ところで、焼結部品については、多くの場合、焼結後に寸法矯正のためのサイジングが実施される。例示のインナーロータもそのサイジングを行っている。
【0006】
そのサイジングは、下記特許文献1に開示されるような方法、即ち、サイジング金型のダイ(そのダイに設けられた成形穴)に焼結後の部品を押し込み、ダイの内部において上下のパンチで加圧する方法でなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−292840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
円と直線が組み合わされた形状の端面視非円形の軸穴、例えば、2面幅の面が含まれた軸穴や内径を部分的に変化させるキーやキー溝の形成された軸穴を中心部に備える焼結歯車などの焼結部品は、サイジングによって真円度がばらつく傾向がある。例示のインナーロータ1について、サイジング後に量産品のランダムサンプリングを実施して長短径を測定したところ、規格幅内(規格の許容上限値と許容下限値内)でのばらつきが大きかった。
【0009】
測定は、図13に示すように、ロータの歯底2bに計測器の基準ピン11に当て、さらに、基準ピン11が接した歯底2bから180°回転した位置にあるロータの歯先2aに接触式変位計12のプローブを当て、歯先2aから歯底2bまでの距離(長短径)を求める方法で行った。
【0010】
また、その測定は、1歯ずつ9箇所(図13の測定位置M1〜M9)について行った。サンプル数30個での測定結果を図14、図15に示す。図14は、長短径の各測定位置での変動傾向を表している。また、図15は長短径のサンプル毎の最大値、最小値、平均値を表している。
【0011】
図15からわかるように、サンプルNo.22、24などは、固体内だけで0.02〜0.03mmの寸法ばらつきが生じている。このばらつきは、歯数が奇数の歯車で特に顕著である。
【0012】
非円形の軸穴を備えるインナーロータは、端面の周方向各域の面積分布に差が生じる。即ち、今仮に、回転中心と各歯の歯先を結ぶ線に沿って端面を周方向にn(nは歯数)等分したとすると、軸穴の例えば2面幅の面が含まれる分割域の面積と2面幅の面が含まれない分割域の面積が異なるものになる。
【0013】
そのために、面積の大きい箇所では面積の小さい箇所に比べてサイジング時に受ける荷重が大きくなり、それが原因で、サイジング時のロータ各部の変形量や除圧時のスプリングバック量が大きくばらついて長短径がばらつくのではないかと考えられる。
【0014】
図13では、分割域の中の面積大の領域、即ち、軸穴の直線部3bを横切るM3やM8の測定位置での長短径が他の位置での長短径よりも大きい。3個のサンプルは全て同じような傾向を示しており、いずれも、固体内での長短径のばらつきが大きい。
【0015】
歯数が奇数のインナーロータは、歯先から180°回転した位置に歯底があるため歯先と回転中心と歯底の3点を結ぶ直線に対して回転中心で直交する線を基準にしたときの形状が非対称になって端面に加わる荷重の分布が偏るため、上記のばらつきがより顕著に現われると思われる。
【0016】
なお、従来は、ランダムサンプリングによる測定に、1ヶ月平均で20〜60時間を費やしており、その作業に要する人件費も無視できないものになっていた。
【0017】
内接歯車式ポンプのインナーロータは、真円度が低いとアウターロータとの噛み合いが悪くなってポンプの回転トルクの上昇やポンプ効率の低下などの問題が生じる。
【0018】
そこで、この発明は、非円形軸穴の局部的な形状の変化によって端面の面積が部分的に変化している焼結歯車などの焼結部品のサイジングに起因した真円度の低下を抑制して同部品の真円度を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するため、この発明においては、非円形の軸穴を中心に有する焼結部品を、ダイ、上パンチ、下パンチ及びコアロッドを有する金型を用いてサイジングするときに、
上下のパンチが焼結部品を加圧し始める位置で、焼結部品の端面の周方向各域のうち面積が他の領域よりも大きい側において、焼結部品の端面とパンチの端面との間に部品の圧縮代よりも小さい隙間を生じさせ、この状態で上パンチと下パンチによる加圧を行う。ここで言う圧縮代とは、部品の厚みの圧縮前後の寸法差である。
【0020】
この方法では、前記軸穴が部品の端面視で円弧部と直線部を組み合わせた形状を呈し、前記直線部に対応させた帯状領域が焼結部品の端面の前記周方向各域のうち面積が他の域よりも大きくなっている場合には、前記帯状領域とパンチ端面の前記帯状領域に対面する領域との間に前記隙間を生じさせる。ここで言う「直線部に対応させた帯状領域」とは、前記直線部を包含してその直線部を横切る方向に延びだす一定の幅をもった領域を指す。
【0021】
上下のパンチが焼結部品を加圧し始める位置で焼結部品とパンチとの間に前記隙間を生じさせることは、焼結部品の端面もしくはパンチの端面に凹部を設ける方法で行える。焼結部品の端面に凹部を設けるときには、凹部に対面するパンチの端面を平坦にしておく。また、パンチの端面に凹部を設けるときには、パンチに対面する焼結部品の端面を平坦にしておく。
【0022】
上記隙間の軸方向寸法は、例えば、径方向サイジング代が0.05mm程度、軸方向の圧縮代が0.1〜0.3mm程度に設定される一般的なサイジング条件下では、0.05mm〜0.1mm程度が好ましかった。この隙間の軸方向寸法と隙間を生じさせる領域の位置と広さを、部品の端面の各域に加わる荷重が平均化されるように設定する。
【0023】
サイジング対象の焼結部品は、軸穴が部品の端面視で中心対称形状をなすものと、そうでないもの(中心非対称形状)の2種類が考えられる。前者の中心対称形状の軸穴を有する焼結部品は、前記隙間を中心対称位置に生じさせてサイジングを行うと好結果が得られる。
【0024】
また、軸穴と外周の輪郭が中心線基準で左右対称になっている内接歯車式ポンプのインナーロータは、サイジング対象の焼結部品の中でも特に優れた真円度が要求される。従って、この発明はそのインナーロータをサイジングするのに特に適する。サイジング対象が、歯数が奇数のインナーロータである場合、前記中心線に対してロータ中心で垂直に交わる直線を境にして歯数が多い側の端面の面積が大きくなるので、前記隙間を歯数が多い側に偏らせるとよい。
【0025】
前記隙間を、端面に凹部を形成して生じさせてサイジングを行った内接歯車式ポンプのインナーロータは、端面に焼結肌が残された状態では、片方の端面に前記凹部が残存したものになる。
【0026】
また、前記隙間を、パンチの端面に凹部を形成して生じさせてサイジングを行った内接歯車式ポンプのインナーロータは、端面に焼結肌が残された状態では、片方の端面にパンチ端面の凹部に成形された凸部が存在したものになる。この発明は、これ等のインナーロータも併せて提供する。
【発明の効果】
【0027】
この発明の方法によれば、上下のパンチが焼結部品を加圧し始める位置で焼結部品とパンチとの間に隙間を作り出した領域で軸方向圧縮代がその他の領域よりも小さくなる。
【0028】
他の領域に比べて端面の面積の大きい領域の圧縮代を他の領域の圧縮代よりも小さくすることで面積大の領域に加わる荷重が軽減されるため、端面の各域に加わる荷重が平均化され、サイジングによる径方向変形量と除圧時のスプリングバック量が安定し、面積大の領域での長短径のばらつきが小さくなってサイジング対象部品の真円度が高まる。
【0029】
この発明は、サイジング対象が、ポンプの性能面から真円度が重視される内接歯車式ポンプのインナーロータ、中でも、真円度のばらつきが大きくなりがちな歯数が奇数のインナーロータであるとその有効性が特に顕著に現われる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の方法でサイジングを行う焼結部品(焼結歯車)の一例の端面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】サイジング金型の一例を示す断面図
【図4】図3のサイジング金型を用いたサイジング方法の工程図
【図5】図4の一部を拡大して示す断面図
【図6】この発明の方法でサイジングしたインナーロータの長短径の各測定位置での変動傾向を示す図
【図7】この発明の方法でサイジングしたインナーロータの長短径のサンプル毎の最大値と最小値と平均値を示す図
【図8】必要箇所に凹部を設けた上パンチの一例を示す端面図
【図9】サイジング対象に設けられる軸穴の形状の他の例を示す図
【図10】サイジング対象に設けられる軸穴の形状のさらに他の例を示す図
【図11】サイジング対象に設けられる軸穴の形状のさらに他の例を示す図
【図12】焼結部品の一例を示す端面図
【図13】歯数が奇数のインナーロータの長短径の測定方法を示す図
【図14】従来法でサイジングしたインナーロータの長短径の各測定位置での変動傾向を示す図
【図15】従来法でサイジングしたインナーロータの長短径のサンプル毎の最大値と最小値と平均値を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に基づいて、この発明のサイジング方法の実施の形態について述べる。図1及び図2に示す形状の内接歯車式ポンプのインナーロータ1を試作した。このインナーロータ1は、鉄系合金粉末を圧粉成形後に焼結して作られており、中心に軸穴3を有する。
【0032】
その軸穴3は、円を基本形にした穴に2面幅の平面を形成したものであり、端面視形状が中心対称な円弧部3a、3aと、その2つの円弧部3a、3aの両端をつなぐ直線部3b、3bが組み合わされた形状を呈する。
【0033】
直線部3b、3bは、ロータ中心Oを通って歯先2aと歯底2bを結ぶ中心線CLに対して平行で、中心線CLを境にして対称形状をなす。
【0034】
このインナーロータ1の寸法諸元は、歯先円径D1=φ72.6mm、歯底円径D2=φ58.9mm、内径D3=φ41.5mm、歯数n=9、厚みt=14mm、軸穴3の2面幅間寸法W=38.5mmである。
【0035】
このインナーロータ1の片方の端面4には、凹部5として形成されて端面の他の領域4bとの間に段差を生じる帯状領域4aが、軸穴3の直線部3bに対応させて中心対称に設けられている。その帯状領域4aは、直線部3bに対して垂直な仮想線BL1,BL2によって他の領域4bから画されており、各直線部3b、3bを包含する。
【0036】
この帯状領域4aは、歯数が奇数の図示のインナーロータ1の場合、ロータ中心Oにおいて中心線CLに垂直に交わる直線SL(この直線SLは各直線部3b、3bの長手方向中間点を通る)を境にして歯数が多い側に偏らせて配置すると好ましく、試作品は、直線SLから仮想線BL1までの距離L1を約15mm、直線SLから仮想線BL2までの距離L2を約10mmにしてその要求に応えた。
【0037】
また、この帯状領域4aの他の領域4bからの凹み量は、ここでは0.07mmに設定した。
【0038】
次に、試作したインナーロータ1のサイジングを実施した。サイジング金型は、図3、図4に示すようなものであって、ダイ6、上パンチ7、下パンチ8、コアロッド9からなる。上パンチ7と下パンチ8は、端面が平坦である。
【0039】
このサイジング金型をプレス機にセットした。サイジングは、インナーロータ1の径方向サイジング代を0.05mmに設定し、上下のパンチ7、8により所定のプレス荷重(120〜130ton程度)を加えることにより、インナーロータ1がサイジングの前後で厚み方向に0.2mm縮むように行った。
【0040】
インナーロータ1の端面の帯状領域4aの凹部5は、端面の他の領域4bよりも加圧方向後方に後退しているので、上下のパンチ7、8による加圧が開始される位置で、図5に示すように、インナーロータ1の端面の凹部5と上パンチ7の端面との間に隙間gができ、この状態からインナーロータ1が軸方向に所定量圧縮される。
【0041】
なお、軸方向の圧縮代0.2mmは、インナーロータ1の端面に設けた凹部5の凹み量0.07mmよりも大きい。従って、加圧終点では、凹部5の底面部分も上パンチによって加圧されていることになるが、凹部5は除圧後も0.02〜0.03mm程度の深さを有して残存していた。これは、スプリングバックの影響によるものと考えられる。
【0042】
次に、サイジングした500個の試料の中からランダムサンプリングで30個を抽出し、各サンプルの長短径を、既述の図13の方法で測定した。
【0043】
その結果を図6、図7に示す。図6は各測定位置での長短径の変動傾向を表している。また、図7は、各サンプルの、長短径の最大値と最小値と平均値を示している。
【0044】
図6からわかるように、従来法によるサイジングで長短径が特に大きくなっていたM3やM8の測定位置(軸穴の直線部3bを横切る位置)でも長短径はあまり大きくない。3個のサンプルは全て同じような傾向を示しており、全測定位置での長短径が平均化された状態になっている。
【0045】
また、図7からわかるように、固体内での長短径のばらつきも、最大で0.015mm程度になっている。
【0046】
図7の結果を工程能力指数Cpに換算した。その指数Cpは、図15の結果では0.9〜1.1である。これに対し、図7の結果では1.99にまで改善されている。なお、工程能力指数Cpは、下式で求めた。
Cp=(USL−LSL)/6σ
ここにUSL:規格上限値
LSL:規格下限値
【0047】
この発明の方法は、図8に示すように、上パンチ7の端面10の必要箇所に前記凹部5に代わる凹部10aを帯状に設け、焼結部品の端面を平坦にしてサイジングを行っても上記同様の発明の効果を期待できる。上パンチ7の端面に凹部を設けた金型を使用してサイジングを行うと、焼結部品の端面にパンチの端面によって成形された凸部(図示せず)が形成される。
【0048】
サイジング対象の焼結部品が例示のインナーロータの場合、焼結肌の端面に残存した凹部や焼結肌の端面に形成された凸部は焼結肌を研磨して除去する。
【0049】
サイジング対象の焼結部品に設けられる軸穴は、図9に示すように、周方向途中に部品と一体のキー3cを内側に突出させて設けた穴、図10に示すように、周方向途中にキー溝3dを設けた穴、図11に示すように周方向途中の1箇所を直線的に切り欠いた穴、図9のキー3cや図10のキー溝3dを周方向途中に1つだけ設けた穴なども考えられる。このような軸穴を有する焼結歯車なども、軸穴の局部的な形状の変化によって端面の周方向各域の面積分布に差が生じる。
【0050】
従って、上下のパンチが焼結部品を加圧し始める位置で、焼結部品とパンチとの間に、端面の各域に加わる荷重を平均化させる隙間を設けることで、サイジングによる真円度の悪化を抑制して製品の寸法精度を高めることが可能である。
【0051】
図9の軸穴や図11の軸穴を有する焼結部品は、キー3cや軸穴の切り欠き部に対応した位置で部品の端面やパンチ端面に凹部5(10a)を設けてサイジングを行う。一方、図10の軸穴3を有する焼結部品は、キー溝3dを設置した領域の端面の面積が他の領域の面積よりも小さくなっているので、対称位置のキー溝3d、3dの中間付近において部品の端面やパンチの端面に凹部5(10a)を設けてサイジングを行うとよい。
【0052】
なお、この発明は、例示の内接歯車式ポンプのインナーロータのほかに、焼結歯車、焼結スプロケットのサイジングに適用しても効果がある。
【符号の説明】
【0053】
1 インナーロータ
2 歯
2a 歯先
2b 歯底
3 軸穴
3a 円弧部
3b 直線部
3c キー
3d キー溝
4 端面
4a 帯状領域
4b 端面の他の領域
5 凹部
6 ダイ
7 上パンチ
8 下パンチ
9 コアロッド
10 上パンチの端面
10a 凹部
11 基準ピン
12 接触式変位計
g 隙間
M1〜M9 測定位置
O ロータ中心
CL 中心線
BL1,BL2 仮想線
SL ロータ中心で中心線と垂直に交わる直線
L1 線SLから仮想線BL1までの距離
L2 線SLから仮想線BL2までの距離
D1 歯先円径
D2 歯底円径
D3 内径
t 厚み
【技術分野】
【0001】
この発明は、非円形の軸穴を中心に有し、その軸穴の影響によって端面の周方向各域の面積分布に差が生じた焼結部品の寸法矯正を、製品の真円度の低下を抑制して行うサイジング方法に関する。
【0002】
この発明で言う端面の周方向各域とは、端面を、内径側を除く箇所の分割条件が等しくなるように複数に分割した領域を指す。
【背景技術】
【0003】
周知の焼結部品の中に、回転軸に装着して使用されるものがある。そのような焼結部品は多々存在する。その部品の代表例とも言える焼結歯車を図12に示す。図示の焼結歯車は、内接歯車式ポンプのインナーロータである。このインナーロータ1は、アウターロータ(図示せず)との間にポンプ室を作りだす歯2を外周に有しており、さらに、回転軸が通される軸穴3を中心に有している。
【0004】
その軸穴3は、ロータの端面視形状が円弧部3aと直線部3bとからなっており、直線部3bの箇所で内径が小さくなっている。その軸穴の直線部3bの面は、所謂2面幅の面として中心対称に設けられている。
【0005】
ところで、焼結部品については、多くの場合、焼結後に寸法矯正のためのサイジングが実施される。例示のインナーロータもそのサイジングを行っている。
【0006】
そのサイジングは、下記特許文献1に開示されるような方法、即ち、サイジング金型のダイ(そのダイに設けられた成形穴)に焼結後の部品を押し込み、ダイの内部において上下のパンチで加圧する方法でなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−292840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
円と直線が組み合わされた形状の端面視非円形の軸穴、例えば、2面幅の面が含まれた軸穴や内径を部分的に変化させるキーやキー溝の形成された軸穴を中心部に備える焼結歯車などの焼結部品は、サイジングによって真円度がばらつく傾向がある。例示のインナーロータ1について、サイジング後に量産品のランダムサンプリングを実施して長短径を測定したところ、規格幅内(規格の許容上限値と許容下限値内)でのばらつきが大きかった。
【0009】
測定は、図13に示すように、ロータの歯底2bに計測器の基準ピン11に当て、さらに、基準ピン11が接した歯底2bから180°回転した位置にあるロータの歯先2aに接触式変位計12のプローブを当て、歯先2aから歯底2bまでの距離(長短径)を求める方法で行った。
【0010】
また、その測定は、1歯ずつ9箇所(図13の測定位置M1〜M9)について行った。サンプル数30個での測定結果を図14、図15に示す。図14は、長短径の各測定位置での変動傾向を表している。また、図15は長短径のサンプル毎の最大値、最小値、平均値を表している。
【0011】
図15からわかるように、サンプルNo.22、24などは、固体内だけで0.02〜0.03mmの寸法ばらつきが生じている。このばらつきは、歯数が奇数の歯車で特に顕著である。
【0012】
非円形の軸穴を備えるインナーロータは、端面の周方向各域の面積分布に差が生じる。即ち、今仮に、回転中心と各歯の歯先を結ぶ線に沿って端面を周方向にn(nは歯数)等分したとすると、軸穴の例えば2面幅の面が含まれる分割域の面積と2面幅の面が含まれない分割域の面積が異なるものになる。
【0013】
そのために、面積の大きい箇所では面積の小さい箇所に比べてサイジング時に受ける荷重が大きくなり、それが原因で、サイジング時のロータ各部の変形量や除圧時のスプリングバック量が大きくばらついて長短径がばらつくのではないかと考えられる。
【0014】
図13では、分割域の中の面積大の領域、即ち、軸穴の直線部3bを横切るM3やM8の測定位置での長短径が他の位置での長短径よりも大きい。3個のサンプルは全て同じような傾向を示しており、いずれも、固体内での長短径のばらつきが大きい。
【0015】
歯数が奇数のインナーロータは、歯先から180°回転した位置に歯底があるため歯先と回転中心と歯底の3点を結ぶ直線に対して回転中心で直交する線を基準にしたときの形状が非対称になって端面に加わる荷重の分布が偏るため、上記のばらつきがより顕著に現われると思われる。
【0016】
なお、従来は、ランダムサンプリングによる測定に、1ヶ月平均で20〜60時間を費やしており、その作業に要する人件費も無視できないものになっていた。
【0017】
内接歯車式ポンプのインナーロータは、真円度が低いとアウターロータとの噛み合いが悪くなってポンプの回転トルクの上昇やポンプ効率の低下などの問題が生じる。
【0018】
そこで、この発明は、非円形軸穴の局部的な形状の変化によって端面の面積が部分的に変化している焼結歯車などの焼結部品のサイジングに起因した真円度の低下を抑制して同部品の真円度を向上させることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するため、この発明においては、非円形の軸穴を中心に有する焼結部品を、ダイ、上パンチ、下パンチ及びコアロッドを有する金型を用いてサイジングするときに、
上下のパンチが焼結部品を加圧し始める位置で、焼結部品の端面の周方向各域のうち面積が他の領域よりも大きい側において、焼結部品の端面とパンチの端面との間に部品の圧縮代よりも小さい隙間を生じさせ、この状態で上パンチと下パンチによる加圧を行う。ここで言う圧縮代とは、部品の厚みの圧縮前後の寸法差である。
【0020】
この方法では、前記軸穴が部品の端面視で円弧部と直線部を組み合わせた形状を呈し、前記直線部に対応させた帯状領域が焼結部品の端面の前記周方向各域のうち面積が他の域よりも大きくなっている場合には、前記帯状領域とパンチ端面の前記帯状領域に対面する領域との間に前記隙間を生じさせる。ここで言う「直線部に対応させた帯状領域」とは、前記直線部を包含してその直線部を横切る方向に延びだす一定の幅をもった領域を指す。
【0021】
上下のパンチが焼結部品を加圧し始める位置で焼結部品とパンチとの間に前記隙間を生じさせることは、焼結部品の端面もしくはパンチの端面に凹部を設ける方法で行える。焼結部品の端面に凹部を設けるときには、凹部に対面するパンチの端面を平坦にしておく。また、パンチの端面に凹部を設けるときには、パンチに対面する焼結部品の端面を平坦にしておく。
【0022】
上記隙間の軸方向寸法は、例えば、径方向サイジング代が0.05mm程度、軸方向の圧縮代が0.1〜0.3mm程度に設定される一般的なサイジング条件下では、0.05mm〜0.1mm程度が好ましかった。この隙間の軸方向寸法と隙間を生じさせる領域の位置と広さを、部品の端面の各域に加わる荷重が平均化されるように設定する。
【0023】
サイジング対象の焼結部品は、軸穴が部品の端面視で中心対称形状をなすものと、そうでないもの(中心非対称形状)の2種類が考えられる。前者の中心対称形状の軸穴を有する焼結部品は、前記隙間を中心対称位置に生じさせてサイジングを行うと好結果が得られる。
【0024】
また、軸穴と外周の輪郭が中心線基準で左右対称になっている内接歯車式ポンプのインナーロータは、サイジング対象の焼結部品の中でも特に優れた真円度が要求される。従って、この発明はそのインナーロータをサイジングするのに特に適する。サイジング対象が、歯数が奇数のインナーロータである場合、前記中心線に対してロータ中心で垂直に交わる直線を境にして歯数が多い側の端面の面積が大きくなるので、前記隙間を歯数が多い側に偏らせるとよい。
【0025】
前記隙間を、端面に凹部を形成して生じさせてサイジングを行った内接歯車式ポンプのインナーロータは、端面に焼結肌が残された状態では、片方の端面に前記凹部が残存したものになる。
【0026】
また、前記隙間を、パンチの端面に凹部を形成して生じさせてサイジングを行った内接歯車式ポンプのインナーロータは、端面に焼結肌が残された状態では、片方の端面にパンチ端面の凹部に成形された凸部が存在したものになる。この発明は、これ等のインナーロータも併せて提供する。
【発明の効果】
【0027】
この発明の方法によれば、上下のパンチが焼結部品を加圧し始める位置で焼結部品とパンチとの間に隙間を作り出した領域で軸方向圧縮代がその他の領域よりも小さくなる。
【0028】
他の領域に比べて端面の面積の大きい領域の圧縮代を他の領域の圧縮代よりも小さくすることで面積大の領域に加わる荷重が軽減されるため、端面の各域に加わる荷重が平均化され、サイジングによる径方向変形量と除圧時のスプリングバック量が安定し、面積大の領域での長短径のばらつきが小さくなってサイジング対象部品の真円度が高まる。
【0029】
この発明は、サイジング対象が、ポンプの性能面から真円度が重視される内接歯車式ポンプのインナーロータ、中でも、真円度のばらつきが大きくなりがちな歯数が奇数のインナーロータであるとその有効性が特に顕著に現われる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の方法でサイジングを行う焼結部品(焼結歯車)の一例の端面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】サイジング金型の一例を示す断面図
【図4】図3のサイジング金型を用いたサイジング方法の工程図
【図5】図4の一部を拡大して示す断面図
【図6】この発明の方法でサイジングしたインナーロータの長短径の各測定位置での変動傾向を示す図
【図7】この発明の方法でサイジングしたインナーロータの長短径のサンプル毎の最大値と最小値と平均値を示す図
【図8】必要箇所に凹部を設けた上パンチの一例を示す端面図
【図9】サイジング対象に設けられる軸穴の形状の他の例を示す図
【図10】サイジング対象に設けられる軸穴の形状のさらに他の例を示す図
【図11】サイジング対象に設けられる軸穴の形状のさらに他の例を示す図
【図12】焼結部品の一例を示す端面図
【図13】歯数が奇数のインナーロータの長短径の測定方法を示す図
【図14】従来法でサイジングしたインナーロータの長短径の各測定位置での変動傾向を示す図
【図15】従来法でサイジングしたインナーロータの長短径のサンプル毎の最大値と最小値と平均値を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に基づいて、この発明のサイジング方法の実施の形態について述べる。図1及び図2に示す形状の内接歯車式ポンプのインナーロータ1を試作した。このインナーロータ1は、鉄系合金粉末を圧粉成形後に焼結して作られており、中心に軸穴3を有する。
【0032】
その軸穴3は、円を基本形にした穴に2面幅の平面を形成したものであり、端面視形状が中心対称な円弧部3a、3aと、その2つの円弧部3a、3aの両端をつなぐ直線部3b、3bが組み合わされた形状を呈する。
【0033】
直線部3b、3bは、ロータ中心Oを通って歯先2aと歯底2bを結ぶ中心線CLに対して平行で、中心線CLを境にして対称形状をなす。
【0034】
このインナーロータ1の寸法諸元は、歯先円径D1=φ72.6mm、歯底円径D2=φ58.9mm、内径D3=φ41.5mm、歯数n=9、厚みt=14mm、軸穴3の2面幅間寸法W=38.5mmである。
【0035】
このインナーロータ1の片方の端面4には、凹部5として形成されて端面の他の領域4bとの間に段差を生じる帯状領域4aが、軸穴3の直線部3bに対応させて中心対称に設けられている。その帯状領域4aは、直線部3bに対して垂直な仮想線BL1,BL2によって他の領域4bから画されており、各直線部3b、3bを包含する。
【0036】
この帯状領域4aは、歯数が奇数の図示のインナーロータ1の場合、ロータ中心Oにおいて中心線CLに垂直に交わる直線SL(この直線SLは各直線部3b、3bの長手方向中間点を通る)を境にして歯数が多い側に偏らせて配置すると好ましく、試作品は、直線SLから仮想線BL1までの距離L1を約15mm、直線SLから仮想線BL2までの距離L2を約10mmにしてその要求に応えた。
【0037】
また、この帯状領域4aの他の領域4bからの凹み量は、ここでは0.07mmに設定した。
【0038】
次に、試作したインナーロータ1のサイジングを実施した。サイジング金型は、図3、図4に示すようなものであって、ダイ6、上パンチ7、下パンチ8、コアロッド9からなる。上パンチ7と下パンチ8は、端面が平坦である。
【0039】
このサイジング金型をプレス機にセットした。サイジングは、インナーロータ1の径方向サイジング代を0.05mmに設定し、上下のパンチ7、8により所定のプレス荷重(120〜130ton程度)を加えることにより、インナーロータ1がサイジングの前後で厚み方向に0.2mm縮むように行った。
【0040】
インナーロータ1の端面の帯状領域4aの凹部5は、端面の他の領域4bよりも加圧方向後方に後退しているので、上下のパンチ7、8による加圧が開始される位置で、図5に示すように、インナーロータ1の端面の凹部5と上パンチ7の端面との間に隙間gができ、この状態からインナーロータ1が軸方向に所定量圧縮される。
【0041】
なお、軸方向の圧縮代0.2mmは、インナーロータ1の端面に設けた凹部5の凹み量0.07mmよりも大きい。従って、加圧終点では、凹部5の底面部分も上パンチによって加圧されていることになるが、凹部5は除圧後も0.02〜0.03mm程度の深さを有して残存していた。これは、スプリングバックの影響によるものと考えられる。
【0042】
次に、サイジングした500個の試料の中からランダムサンプリングで30個を抽出し、各サンプルの長短径を、既述の図13の方法で測定した。
【0043】
その結果を図6、図7に示す。図6は各測定位置での長短径の変動傾向を表している。また、図7は、各サンプルの、長短径の最大値と最小値と平均値を示している。
【0044】
図6からわかるように、従来法によるサイジングで長短径が特に大きくなっていたM3やM8の測定位置(軸穴の直線部3bを横切る位置)でも長短径はあまり大きくない。3個のサンプルは全て同じような傾向を示しており、全測定位置での長短径が平均化された状態になっている。
【0045】
また、図7からわかるように、固体内での長短径のばらつきも、最大で0.015mm程度になっている。
【0046】
図7の結果を工程能力指数Cpに換算した。その指数Cpは、図15の結果では0.9〜1.1である。これに対し、図7の結果では1.99にまで改善されている。なお、工程能力指数Cpは、下式で求めた。
Cp=(USL−LSL)/6σ
ここにUSL:規格上限値
LSL:規格下限値
【0047】
この発明の方法は、図8に示すように、上パンチ7の端面10の必要箇所に前記凹部5に代わる凹部10aを帯状に設け、焼結部品の端面を平坦にしてサイジングを行っても上記同様の発明の効果を期待できる。上パンチ7の端面に凹部を設けた金型を使用してサイジングを行うと、焼結部品の端面にパンチの端面によって成形された凸部(図示せず)が形成される。
【0048】
サイジング対象の焼結部品が例示のインナーロータの場合、焼結肌の端面に残存した凹部や焼結肌の端面に形成された凸部は焼結肌を研磨して除去する。
【0049】
サイジング対象の焼結部品に設けられる軸穴は、図9に示すように、周方向途中に部品と一体のキー3cを内側に突出させて設けた穴、図10に示すように、周方向途中にキー溝3dを設けた穴、図11に示すように周方向途中の1箇所を直線的に切り欠いた穴、図9のキー3cや図10のキー溝3dを周方向途中に1つだけ設けた穴なども考えられる。このような軸穴を有する焼結歯車なども、軸穴の局部的な形状の変化によって端面の周方向各域の面積分布に差が生じる。
【0050】
従って、上下のパンチが焼結部品を加圧し始める位置で、焼結部品とパンチとの間に、端面の各域に加わる荷重を平均化させる隙間を設けることで、サイジングによる真円度の悪化を抑制して製品の寸法精度を高めることが可能である。
【0051】
図9の軸穴や図11の軸穴を有する焼結部品は、キー3cや軸穴の切り欠き部に対応した位置で部品の端面やパンチ端面に凹部5(10a)を設けてサイジングを行う。一方、図10の軸穴3を有する焼結部品は、キー溝3dを設置した領域の端面の面積が他の領域の面積よりも小さくなっているので、対称位置のキー溝3d、3dの中間付近において部品の端面やパンチの端面に凹部5(10a)を設けてサイジングを行うとよい。
【0052】
なお、この発明は、例示の内接歯車式ポンプのインナーロータのほかに、焼結歯車、焼結スプロケットのサイジングに適用しても効果がある。
【符号の説明】
【0053】
1 インナーロータ
2 歯
2a 歯先
2b 歯底
3 軸穴
3a 円弧部
3b 直線部
3c キー
3d キー溝
4 端面
4a 帯状領域
4b 端面の他の領域
5 凹部
6 ダイ
7 上パンチ
8 下パンチ
9 コアロッド
10 上パンチの端面
10a 凹部
11 基準ピン
12 接触式変位計
g 隙間
M1〜M9 測定位置
O ロータ中心
CL 中心線
BL1,BL2 仮想線
SL ロータ中心で中心線と垂直に交わる直線
L1 線SLから仮想線BL1までの距離
L2 線SLから仮想線BL2までの距離
D1 歯先円径
D2 歯底円径
D3 内径
t 厚み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非円形の軸穴(3)を中心に有する焼結部品を、ダイ(6)、上パンチ(7)、下パンチ(8)及びコアロッド(9)を有する金型を用いてサイジングするときに、
上下のパンチ(7,8)が焼結部品を加圧し始める位置で、焼結部品の端面の周方向各域のうち面積が他の領域よりも大きい側において、焼結部品の端面(4)とパンチの端面(10)との間に部品の圧縮代よりも小さい隙間(g)を生じさせ、この状態で上パンチ(7)と下パンチ(8)による加圧を行う焼結部品のサイジング方法。
【請求項2】
前記軸穴(3)が部品の端面視で円弧部(3a)と直線部(3b)を組み合わせた形状を呈し、前記直線部(3b)に対応した帯状領域(4a)が焼結部品の端面の前記周方向各域のうち面積が他の域よりも大きい領域となっており、この帯状領域(4a)と上パンチの端面(10)の前記帯状領域(4a)に対面する領域との間に前記隙間(g)を生じさせる請求項1に記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項3】
焼結部品の端面(4)に凹部(5)を設けて焼結部品と上パンチ(7)の平坦な端面(10)との間に前記隙間(g)を生じさせる請求項1又は2に記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項4】
上パンチ(7)の端面(10)に凹部(10a)を設けて焼結部品の平坦な端面と上パンチ(7)との間に前記隙間(g)を生じさせる請求項1又は2に記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項5】
前記隙間(g)の軸方向寸法を0.05mm〜0.1mmに設定して上下のパンチ(7,8)による加圧を行う請求項1〜4のいずれかに記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項6】
軸穴(3)が部品の端面視で中心対称形状をなす焼結部品をサイジング対象にし、前記隙間(g)を中心対称位置に生じさせてサイジングを行う請求項1〜5のいずれかに記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項7】
前記焼結部品は、軸穴(3)と外周の輪郭が中心線(CL)基準で共に左右対称をなす歯数が奇数の内接歯車式ポンプのインナーロータ(1)であり、そのインナーロータ(1)の前記中心線(CL)に対してロータ中心(O)で垂直に交わる直線(SL)を境にして歯数が多い側に前記隙間(g)を偏らせる請求項1〜6のいずれかに記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項8】
請求項3に記載のサイジング方法でサイジングを行った内接歯車式ポンプのインナーロータ(1)であって、焼結肌の端面(4)を有し、片方の端面に前記凹部(5)が残存したインナーロータ。
【請求項9】
請求項4に記載のサイジング方法でサイジングを行った内接歯車式ポンプのインナーロータ(1)であって、焼結肌の端面(4)を有し、片方の端面に、パンチ端面の凹部(10a)によって成形された凸部が存在するインナーロータ。
【請求項1】
非円形の軸穴(3)を中心に有する焼結部品を、ダイ(6)、上パンチ(7)、下パンチ(8)及びコアロッド(9)を有する金型を用いてサイジングするときに、
上下のパンチ(7,8)が焼結部品を加圧し始める位置で、焼結部品の端面の周方向各域のうち面積が他の領域よりも大きい側において、焼結部品の端面(4)とパンチの端面(10)との間に部品の圧縮代よりも小さい隙間(g)を生じさせ、この状態で上パンチ(7)と下パンチ(8)による加圧を行う焼結部品のサイジング方法。
【請求項2】
前記軸穴(3)が部品の端面視で円弧部(3a)と直線部(3b)を組み合わせた形状を呈し、前記直線部(3b)に対応した帯状領域(4a)が焼結部品の端面の前記周方向各域のうち面積が他の域よりも大きい領域となっており、この帯状領域(4a)と上パンチの端面(10)の前記帯状領域(4a)に対面する領域との間に前記隙間(g)を生じさせる請求項1に記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項3】
焼結部品の端面(4)に凹部(5)を設けて焼結部品と上パンチ(7)の平坦な端面(10)との間に前記隙間(g)を生じさせる請求項1又は2に記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項4】
上パンチ(7)の端面(10)に凹部(10a)を設けて焼結部品の平坦な端面と上パンチ(7)との間に前記隙間(g)を生じさせる請求項1又は2に記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項5】
前記隙間(g)の軸方向寸法を0.05mm〜0.1mmに設定して上下のパンチ(7,8)による加圧を行う請求項1〜4のいずれかに記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項6】
軸穴(3)が部品の端面視で中心対称形状をなす焼結部品をサイジング対象にし、前記隙間(g)を中心対称位置に生じさせてサイジングを行う請求項1〜5のいずれかに記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項7】
前記焼結部品は、軸穴(3)と外周の輪郭が中心線(CL)基準で共に左右対称をなす歯数が奇数の内接歯車式ポンプのインナーロータ(1)であり、そのインナーロータ(1)の前記中心線(CL)に対してロータ中心(O)で垂直に交わる直線(SL)を境にして歯数が多い側に前記隙間(g)を偏らせる請求項1〜6のいずれかに記載の焼結部品のサイジング方法。
【請求項8】
請求項3に記載のサイジング方法でサイジングを行った内接歯車式ポンプのインナーロータ(1)であって、焼結肌の端面(4)を有し、片方の端面に前記凹部(5)が残存したインナーロータ。
【請求項9】
請求項4に記載のサイジング方法でサイジングを行った内接歯車式ポンプのインナーロータ(1)であって、焼結肌の端面(4)を有し、片方の端面に、パンチ端面の凹部(10a)によって成形された凸部が存在するインナーロータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−92381(P2012−92381A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239495(P2010−239495)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(593016411)住友電工焼結合金株式会社 (214)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(593016411)住友電工焼結合金株式会社 (214)
【Fターム(参考)】
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