説明

焼酎粕の固液分離装置及び固液分離方法

【課題】従来、焼酎粕の固液分離にはデカンター等による遠心分離が広く用いられてきたが、多額の設備投資と多くの動力を必要とし、業者にとって大きな負担となっていた。また、デカンターだけでは微細な有機物粒子の除去が不十分であった。
【解決手段】中心部の上下に膨らんだ円板状の濾過体が水平に配置され、濾過体の上面には濾材が張設され、濾材の上面で中心部近くに焼酎粕の給液ノズルが設けられ、濾過体の下面は濾過水の受け皿となっており、受け皿は周縁部から中心に向って傾斜しているため、濾過水は受け皿の中心に向って集中するようになっており、濾過体の中心部を貫通する回転軸があって、受け皿の回転軸に近接する部分は下方に折り曲げられていて、受け皿と回転軸との間隙は濾過水の排水口となっていることを特徴とする焼酎粕の固液分離装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼酎粕の固液分離装置及び固液分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼酎粕は、焼酎製造の際、醸造醪を蒸留するとき、蒸留残渣として焼酎の約倍量が発生するが、大量の有機物を含み、BODが高く、固形物も多く含んでいる。焼酎粕をそのまま廃棄すると河川等の水質汚濁や、農地の汚染、悪臭の発生が懸念され、海洋投棄も厳しく規制されるようになり、その処理が大きな課題となっている。
【0003】
焼酎粕処理の第一段階として固液分離があげられるが、これが必ずしも容易でないことがまず問題となっている。焼酎粕の固液分離の手段としてデカンター等による遠心分離があげられるが、デカンター等は多額の設備投資と多くの動力を必要とし、業者にとって大きな負担となっている。また、デカンターだけでは微細な有機物粒子の除去が不十分であり、その後の処理に大きな負担がかかっている。
【0004】
本発明は、焼酎粕をそのまま濾過するか、又は一次処理で粗大な固形物を除去した焼酎粕をさらに濾過し、次の工程を容易にするためになされたものである。
【0005】
ところで、懸濁物質を含む被処理水を効率良く濾過するための各種装置が提案されており、例えば、少なくとも一方の外面に濾過媒体を有し、中心部に処理水の排出口を有する平板状の中空濾過部材を複数個上下に間隔をあけて重ね合わされた濾過体と、前記処理水排水口と連通し、濾過体の中心部にこれを貫通して固定された中空回転軸と、濾過媒体の外表面に形成されたケーキ状汚濁物質を掻き取るスクレイパーを具備する濾過装置と、懸濁物質を含有する被処理水の流入口と流出口を有するとともに、濾過装置を収容する被処理水貯留槽を具えていることを特徴とする固液分離装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、濾過水集水管兼用の中空回転軸に中心が貫通され、濾過水室と回転軸内が連通した円板状汚泥層濾過モジュールからなる回転円板型固液分離装置も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
また、水平に設置された濾材が、該濾材の表面を基準として水平方向の円運動および垂直方向の振動運動することにより、濾過されて前記濾材上に残った固形物を装置外に排出することを特徴とする濾過装置も開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開2002−166110
【特許文献2】特開平11−226317
【特許文献3】特開2003−20307
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び2記載の発明では、複数の濾過媒体が中空回転軸に支持されて、被処理水槽に浸漬されているため、濾過水は清澄なものが得られるが濾過残渣は未だ多量の水分を含むため、さらに濃縮、脱水あるいは乾燥することがその利用を図るため必要となる。また、特許文献3の発明は、濾材が一段だけであり濾過面積を増加させるため濾材を複数段重ね合せるとするには構造が複雑になりすぎるおそれがある。本発明は、これらの課題を解決し、多額の設備投資を必要とせず、微細な固形物までできるだけ除去してその後の処理を容易に行えるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、まず請求項1に記載する発明は、大量の固形物粒子が含まれている焼酎粕を、固液分離する装置であって、中心部が上下に膨らんだ円板状の濾過体6が水平に配置され、濾過体6の上面には濾材10が張設され、濾材10の上面で中心部近くに焼酎粕の給液ノズル13が設けられ、濾過体6の下面は濾過水の受け皿11となっており、受け皿11は周縁部から中心に向って傾斜しているため、濾過水は受け皿11の中心に向って集中するようになっており、濾過体6の中心部を貫通する回転軸3があって、受け皿11の回転軸3と近接する部分は下方に折り曲げられていて、受け皿11と回転軸3との間隙12は濾過水の排出口となっていることを特徴とする焼酎粕の固液分離装置である。
【0011】
請求項2に記載する発明は、濾過体6の縁部が上下に移動可能となっていることを特徴とする請求項1記載の焼酎粕の固液分離装置である。濾過体6の縁部を上に持ち上げて堰を作り、焼酎粕を一時貯留して濾過し、濾過が終ったら縁部を下げ、濾過体の上面に残った固形物を掻き落すようにするためである。
【0012】
請求項3に記載する発明は、濾過体の上面に設けられているスクレイパー19は、濾過体6の両脇に立設された支持棒18に両端が把持され、中央に回転軸3が貫通する環状部22が設けられた取付棒20に弾性を有する板状体21が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の焼酎粕の固液分離装置である。濾過体の上面に残留した固形物を掻き出すためである。
【0013】
請求項4に記載する発明は、濾過体6が上下に複数重ねて配設され、回転軸3がこれら複数の濾過体6を貫通してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の焼酎粕の固液分離装置である。濾過体6を上下に多数重ねることにより、濾過面積を大きくし、装置の設置面積を節減するためである。
【0014】
請求項5に記載する発明は、中心部が上下に膨らんだ円板状の濾過体6の表面に張設された濾材10の中心附近に焼酎粕が供給され、中心から縁部に向って傾斜している濾材10上を焼酎粕が流動しながら濾過され、濾過水は縁部から中心に向って傾斜している下方の受け皿11に流下して、回転軸3の方向に流れ込み、濾材10上に残った固形物は濾過体6の周縁部に移動してスクレイパー19で掻きとられ、濾過体6の周縁外に放出されることを特徴とする焼酎粕の固液分離方法である。
【0015】
請求項6に記載する発明は、濾過体6の縁部を上方に移動して堰とし、焼酎粕を堰内に貯留して濾過し、濾過終了後、濾過体6の縁部を下方に移動して堰を開放し、濾材10上に残った固形物をスクレイパー19で濾過体6の周縁に掻き落すことを特徴とする請求項5記載の固液分離方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、大量の固形物を含む焼酎粕から微細な固形物まで除去された殆ど澄明な処理水が得られ、その後の排水処理を容易にすることができる。また、分離された固形物は、家畜飼料又は肥料として有効利用が可能となる。直径2.5mの円板状濾過体20枚が設置された固液分離装置で1回の処理量が約5m、処理期間が2時間から3時間とすると、1日当りの処理能力は60〜40m/1日となり、僅かの設置面積で大量の焼酎粕の処理ができる。処理量に対しての処理ランニングコストが従来の処理に比べて各段の低コストで分離処理ができる装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に基いて説明する。
【0018】
図1Aは、本発明の焼酎粕の固液分離装置の平面図である。図1Bは、本発明の焼酎粕の固液分離装置の側面図である。図2Aは濾過体の平面図である。図2Bは、濾過体の側面図である。図3は、濾過体6の濾材10と受け皿11を離した状態の斜視図である。図4Aは、濾過体の縁部を上げた状態の拡大説明図である。図4Bは、濾過体の縁部を下げた状態の拡大説明図である。図5は、焼酎粕処理全体のフローシートである。
【0019】
図1A及び図1Bは本発明の固液分離装置の平面図及び側面図である。外枠1及び外周板枠2の中心に回転軸3が設けられ、複数の円板状の濾過体6,6…が回転軸3に貫通されて配設されている。
【0020】
図2Aは濾過体6の平面図である。図2Bは、濾過体6の側面図である。中央が上下に膨らんだ円板状の濾過体6,6…があり、濾過体6の上面には、濾布又は金網等からなる濾材10が張設され、濾過体6の下面はステンレス製の受け皿11となっていて、受け皿11に落下した濾過水は回転軸3の方向に流下し、回転軸3と受け皿11との間隙12から流下して下方に排出される。濾過体6,6…の側方にリフター7,7…があり、リフター7,7…が上下に移動することで、濾過体6,6…の縁部が上下に移動するように構成されている。
【0021】
図3は、濾過体6,6…の濾材10と受け皿11を分離した状態の斜視図である。濾過体6,6…の横に給液パイプ14が立設されており、給液パイプ14から各段の濾過体6,6…に給液ノズル13,13…が分岐している。濾過体6の両側に立設された支持棒18,18により、リフター7,…が支持されている。
【0022】
図4Aは、濾過体6の縁部を上げた状態の拡大説明図であり、図4Bは、濾過体6の縁部を下げた状態の拡大説明図である。支持棒18に支えられたリフター7がエアーシリンダー17の働きにより移動し、濾過体6の縁部が上下に移動する状態を示した。図5は、焼酎粕処理全体のフローシートである。
【実施例】
【0023】
当種焼酎粕の分析結果を示した。この資料は平成18年3月17日発表の南九州の有機廃棄物資源リサイクルシンポジウムにおいて、焼酎粕処理の現状と今後の課題について(鹿児島県工業技術センターの発表)によるものである。
【0024】
【表1】







【0025】
表1に示すように、BOD数万といわれる焼酎粕について本発明の固液分離装置では、固体分対液体分の比が4:6ないし、5:5程度に脱水できた。濾過水のBODは6万〜2万ppmであった。
【0026】
本発明の固液分離装置で、分離した液体分は図5に示す活性汚泥法で処理して放流する。図5において本発明の固液分離装置は二次処理に相当する。活性汚泥処理にあたって、固液分離後のBOD6万〜2万ppmの焼酎粕濾過液を300〜200倍に希釈調製して、曝気処理をする。さらに必要があれば、微生物固定化担体クラゲールやウレタン発泡ゴム体に菌体着床をし、処理効率を向上させることもできる。また、曝気槽で沈殿する浮遊物を特別に微細なノズル方式で25ミクロン以下に微細化し曝気槽に返送し、再度吸着分解する方法も行われる。さらに曝気処理にあたって、焼酎粕はpHが4附近と酸性であるため、pHが高い畜産廃水と混合してpHを中性附近として処理することも考えられる。また、本発明は、焼酎粕以外の有機質排水、例えば畜産排水や都市下水等のほか、無機質排水等についても広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】本発明の固液分離装置の平面図である。
【図1B】本発明の固液分離装置の側面図である。
【図2A】濾過体の平面図である。
【図2B】濾過体の側面図である。
【図3】濾過体の斜視図である。
【図4A】濾過体の縁部を上げた状態の拡大説明図である。
【図4B】濾過体の縁部を下げた状態の拡大説明図である。
【図5】焼酎粕処理全体のフローシートである。
【符号の説明】
【0028】
1 外枠
2 外周枠
3 回転軸
4 モーター
5 軸受
6 濾過体
7 リフター
8 粕受
9 濾過液溜
10 濾材
11 受け皿
12 間隙
13 給液ノズル
14 給液パイプ
15 受け皿支持金具
16 濾材支持金具
17 エアーシリンダー
18 支持棒
19 スクレイパー
20 取付棒
21 板状体
22 環状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大量の固形物粒子が含まれている焼酎粕を、固液分離する装置であって、中心部が上下に膨らんだ円板状の濾過体が水平に配置され、濾過体の上面には濾材が張設され、濾材の上面で中心部近くに焼酎粕の給液ノズルが設けられ、濾過体の下面は濾過水の受け皿となっており、受け皿は周縁部から中心に向って傾斜しているため、濾過水は受け皿の中心に向って集中するようになっており、濾過体の中心部を貫通する回転軸があって、受け皿の回転軸と近接する部分は下方に折り曲げられていて、受け皿と回転軸との間隙は濾過水の排出口となっていることを特徴とする焼酎粕の固液分離装置。
【請求項2】
濾過体の縁部が上下に移動可能となっていることを特徴とする請求項1記載の焼酎粕の固液分離装置。
【請求項3】
濾過体の上面に設けられているスクレイパーは、濾過体の両脇に立設された支持棒に両端が把持され、中央に回転軸が貫通する環状部を有する取付棒に、弾性を有する板状体が取り付けられてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置。
【請求項4】
濾過体が上下に複数重ねて配設され、回転軸がこれら複数の濾過体を貫通してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の焼酎粕の固液分離装置。
【請求項5】
中心部が上下に膨らんだ円板状の濾過体の表面に張設された濾材の中心附近に焼酎粕が供給され、中心から縁部に向って傾斜している濾材上を焼酎粕が流動しながら濾過され、濾過水は縁部から中心に向って傾斜している下方の受け皿に流下して、回転軸の方向に流れ込み、濾材上に残った固形物は濾過体の周縁部に移動してスクレイパーで掻きとられ、濾過体の周縁外に放出されることを特徴とする焼酎粕の固液分離方法。
【請求項6】
濾過体の縁部を上方に移動して堰とし、焼酎粕を堰内に貯留して濾過し、濾過終了後、濾過体の縁部を下方に移動して堰を開放し、濾材上に残った固形物をスクレイパーで濾過体の周縁に掻き落すことを特徴とする請求項5記載の固液分離方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−58085(P2010−58085A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228415(P2008−228415)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(308030134)株式会社環境鹿児島 (1)
【Fターム(参考)】