説明

照光表示体及び照光表示体の製造方法

【課題】レーザー光の照射により形成される表示部の色を黒系色にすることができる照光表示体及び照光表示体の製造方法を得る。
【解決手段】シフト位置表示板10では、レーザー光の照射により遮光用塗料層18及び意匠用塗料層20の一部が除去され、色の3原色の塗料が混ぜ合わされて作られた表示用塗料層16の一部が露出することで表示部22が形成されたものである。したがって、表示用塗料層16を構成する混合塗料が、色の3原色の塗料の混合による調色によって黒系色にされたものであれば、表示部22の色も黒系色になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過させる表示部が所謂レーザーマーキング工法により形成された照光表示体及びこの照光表示体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な樹脂成形体の表面に、光透過性を有する白色の塗料を下塗りし、この白色塗料層の表面に、カーボンを含み遮光性を有する黒色の塗料を上塗りし、更にこの黒色塗料層にYAGレーザー光を照射して黒色塗料層の一部を蒸発させることで表示部(例えば、文字意匠など)を形成した照光表示体が知られている(例えば、特許文献1参照)。この照光表示体では、樹脂成形体の裏面に光を当てると、この光が樹脂成形体及び白色塗料層を透過することで、白色の表示部が照らし出されると共に、表示部以外の部分は黒色塗料層で遮光される。このため、暗い場所でも黒地をバックにして白色の表示部を見ることができる。
【0003】
ところで、このような照光表示体において、表示部の色を黒系色にすると共に、照光表示体全体の色を黒以外の色にすることで、意匠の自由度を向上させることが行われている。しかしながら、黒系色の塗料は一般的に顔料としてカーボンを使用しているため、レーザーエネルギーの吸収率が高い。したがって、下塗りに黒系色の塗料を用いると、レーザー光照射の際に下塗り塗料までが蒸発してしまう。このため、表示部の色を黒系色にする場合には、所謂剥離印刷工法で対応しており、製造工程の煩雑化や製造コストの上昇などの原因になっている。
【特許文献1】特許第2513748号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、レーザー光の照射により形成される表示部の色を黒系色にすることができる照光表示体及び照光表示体の製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明の照光表示体は、透明な成形体と、色の3原色の塗料が混ぜ合わされて作られた混合塗料が前記成形体の表面側に塗布されることで形成されると共に光透過性を有する表示用塗料層と、カーボンを含む塗料が前記表示用塗料層の表面に塗布されることで形成されると共に遮光性を有する遮光用塗料層と、前記遮光用塗料層の一部がレーザー光の照射により除去されて前記表示用塗料層の一部が露出することで形成された表示部と、を備えたことを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の照光表示体では、成形体の裏面に光を当てると、この光が成形体及び表示用塗料層を透過して、成形体の表面側に表示部を照らし出すと共に、表示部以外の部分は遮光用塗料層によって遮光される。ここで、この照光表示体では、レーザー光の照射により遮光用塗料層の一部が除去され、色の3原色の塗料が混ぜ合わされて作られた表示用塗料層の一部が露出することで表示部が形成されたものである。したがって、表示用塗料層を構成する混合塗料が、色の3原色の塗料の混合による調色によって黒系色にされたものであれば、表示部の色も黒系色になる。
【0007】
請求項2に係る発明の照光表示体の製造方法は、色の3原色の塗料を混ぜ合わせて混合塗料を作り、この混合塗料を透明な成形体の表面側に塗布して光透過性を有する表示用塗料層を形成し、この表示用塗料層の表面に、カーボンを含む塗料を塗布して遮光性を有する遮光用塗料層を形成すると共に、この遮光用塗料層にレーザー光を照射して当該遮光用塗料層の一部を除去することで前記表示用塗料層の一部を露出させて表示部を形成することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の照光表示体では、成形体の裏面に光を当てると、この光が成形体及び表示用塗料層を透過して、成形体の表面側に表示部を照らし出すと共に、表示部以外の部分は遮光用塗料層によって遮光される。ここで、この照光表示体の製造方法では、レーザー光の照射により遮光用塗料層の一部を除去し、色の3原色の塗料を混ぜ合わせて作った表示用塗料層の一部を露出させることで表示部を形成するものである。したがって、表示用塗料層を構成する混合塗料を、色の3原色の塗料の混合による調色によって黒系色にすれば、表示部の色を黒系色にできる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明に係る照光表示体及び照光表示体の製造方法では、レーザー光の照射により形成される表示部の色を黒系色にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1には、本発明の実施形態に係る照光表示体としてのシフト位置表示板10の概略的な構成が平面図にて示されている。また、図2には、シフト位置表示板10の部分的な構成が断面図にて示されている。
【0011】
シフト位置表示板10は、車両用のシフトレバー装置を構成するものであり、無色透明な樹脂材料によって平板状に形成された成形体12を有している。成形体12の表面には光透過性を有する白色塗料層14が形成されている。この白色塗料層14は、カーボンを含まない単色の顔料でつくられた白色の塗料が、成形体12の表面に塗布されることで形成されたものである。
【0012】
白色塗料層14の表面には光透過性を有する表示用塗料層16が形成されている。この表示用塗料層16は、カーボンを含まない単色の顔料で作られた色の3原色(Cyan:青系、Magenta:赤系、Yellow:黄系)の塗料が混ぜ合わされて作られた混合塗料が、白色塗料層14の表面に塗布されることで形成されたものである。しかも、本実施形態では、上記色の3原色の塗料は同量ずつ混ぜ合わされた構成となっており、表示用塗料層16の色は減色混合によって黒色になっている。
【0013】
表示用塗料層16の表面には遮光性を有する遮光用塗料層18が形成されている。遮光用塗料層18は、顔料としてカーボンを含む黒色の塗料が表示用塗料層16の表面に塗布されることで形成されたものである。
【0014】
遮光用塗料層18の表面には意匠用塗料層20が形成されている。意匠用塗料層20は、本シフト位置表示板10の意匠色(本実施形態ではシルバー)の塗料が遮光用塗料層18の表面に塗布されることで形成されたものである。
【0015】
なお、本実施形態では、白色塗料層14及び表示用塗料層16の膜厚は5μm〜15μmに設定されており、遮光用塗料層18及び意匠用塗料層20の膜厚は15μm〜25μmに設定されている。また、上記各塗料としては「SEIKOアドバンス」製のインクが使用されている。
【0016】
さらに、本シフト位置表示板10には、「P」、「R」、「N」、「D」、「2」、「L」の表示部(文字意匠)22が形成されている。これらの表示部22は、所謂レーザーマーキング工法により遮光用塗料層18及び意匠用塗料層20の一部が除去(蒸発)されて、表示用塗料層16の一部が成形体12の表面側に露出することで形成されたものである。すなわち、意匠用塗料層20の一部へ向けてレーザー光Lが照射されると、意匠用塗料層20の一部は、カーボンを含みレーザー光Lの吸収率が高い遮光用塗料層18の一部と共に蒸発するが、表示用塗料層16は遮光用塗料層に比べてレーザー光Lの吸収率が低いため、上記レーザー照射によって除去されず、成形体12の表面側(図2では上側)に露出する。上記各表示部22は、このような工法を利用して形成されたものである。なお、「R」と「N」の表示部22が形成された個所には、表示用塗料層16の代わりに表示用塗料層16と略同じ膜厚で光透過性を有する「アンバー」と「緑」の塗料層がそれぞれ形成された構成になっている。
【0017】
なお、本実施形態では、上記レーザーマーキング工法に「electrox社」の「Scriba II D40」という機種のレーザー機を使用し、レーザーの出力を60%〜70%に設定した。この場合、上記レーザー機の最大出力が40Wであるため、レーザー光の出力は24W〜28W程度になる。
【0018】
また、本実施形態では、上記レーザー機におけるレーザーの周波数を50kHz付近に設定した。この場合、レーザー光が細かくなり、レーザー光の照射1回あたりのエネルギーが低くなるので、表示用塗料層16へのダメージを小さくできる。なお、例えば、レーザー光の周波数を10kHz付近に設定した場合、レーザー光が粗めになり、レーザー光の照射1回あたりのエネルギーが高くなるので、表示用塗料層16(ノンカーボンインク)へのダメージが大きなり、NGになりやすい。また、上記レーザー機の場合「Q Switch」によってエネルギーを蓄える時間を変更することができるが、レーザー光の周波数が50kHzの場合には、エネルギーを蓄える時間を短く設定した方が好ましい。
【0019】
また、本実施形態では、上記レーザー機におけるレーザー光の走査スピード(レーザー光を移動させる速度)を600mm/secに設定し、レーザー光の走査回数(レーザー光を当てる回数)を各表示部22につき2回ずつに設定し、レーザー光の走査方向を1回目が縦方向で2回目が横方向に設定した。このように走査方向を変えることでレーザーむらを無くすことができる。
【0020】
また、本実施形態では、上記レーザー機におけるレーザー光の走査ピッチを60μm〜70μmに設定した。なお、上記レーザー機においてレーザー光の出力を66%すなわち25W程度に設定した場合、ビーム径は70μm〜80μmになるが、走査ピッチを上記のような範囲内に設定すれば、レーザームラ及び焼けすぎを抑制することができる。
【0021】
また、本実施形態では、上記レーザー機におけるレーザー光の走査方法を「輪郭のみマーキング→輪郭内を縦抜き→輪郭のみマーキング→輪郭内を横抜き」という4工程に設定した。なお、「輪郭抜き」をしない設定にすることもできるが、「輪郭抜き」をしたほうが外観の見栄えが良好になる。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0023】
上記構成のシフト位置表示板10では、成形体12の裏面に光を当てると、この光が成形体12、白色塗料層14及び表示用塗料層16を透過して、成形体12の表面側に表示部22を照らし出すと共に、表示部22以外の部分は遮光用塗料層18によって遮光される。
【0024】
ここで、このシフト位置表示板10では、レーザー光Lの照射によって遮光用塗料層18及び意匠用塗料層20の一部が除去されると共に、色の3原色の塗料が混ぜ合わされて作られた表示用塗料層16の一部が露出することで表示部22が形成されたものである。しかも、表示用塗料層16は、色の3原色の塗料が同量ずつ混ぜ合わされた作られた混合塗料によって構成されているため、その色が減色混合によって黒色になっており、表示部22の色も黒色になっている。このため、本シフト位置表示板10では、表面に形成された意匠用塗料層20のシルバーをバックにして黒色の表示部22を見ることができ、斬新な外観を呈する。
【0025】
すなわち、本実施形態に係るシフト位置表示板10では、カーボンを含まない色の3原色の塗料を混ぜ合わせて作った混合塗料によって表示用塗料層16を形成することで、表示部22の色を黒系色にすることができると共に、所謂レーザーマーキング工法の実施時に表示用塗料層16が蒸発することを防止又は抑制できる。これにより、所謂剥離印刷工法などの煩雑な工程を廃止することができ、製造効率の向上および製造コストの低減を達成できる。
【0026】
なお、上記実施形態に係るシフト位置表示板10では、表示用塗料層16と成形体12との間に白色塗料層14を介在させた構成、すなわち表示用塗料層16を構成する混合塗料を成形体12の表面に間接的に塗布した構成としたが、これに限らず、白色塗料層14を省略すると共に、混合塗料を成形体12の表面に直接塗布する構成としてもよい。すなわち、白色塗料層14は表示用塗料層16や図示しない「緑」、「アンバー」の各塗料層の発色性の確保と透過率のコントロールのために設けられているものであり、必須の構成要件ではないため、省略することができる。
【0027】
また、上記実施形態に係るシフト位置表示板10では、表示用塗料層16は、色の3原色(Cyan、Magenta、Yellow)の塗料が混ぜ合わされて作られた構成としたが、これに限らず、表示用塗料層16の代わりに、CyanとMagentaとYellowの互いに独立した光透過性を有する3色の塗料層を、成形体12と遮光用塗料層18との間に積層状に形成する構成としてもよい。この場合でも、減色混合によって表示部の色を黒系色にすることができる。
【0028】
さらに、上記実施形態に係るシフト位置表示板10では、色の3原色の塗料を同量ずつ混ぜ合わせて混合塗料を作ることで表示用塗料層16の色を黒色にする構成としたが、本発明に係る表示用塗料層の色は黒色に限定されるものではなく、色の3原色の塗料を混ぜ合わせて調色したものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るシフト位置表示板の構成を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシフト位置表示板の表示部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 シフト位置表示板(照光表示体)
12 成形体
16 表示用塗料層
18 遮光用塗料層
22 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な成形体と、
色の3原色の塗料が混ぜ合わされて作られた混合塗料が前記成形体の表面側に塗布されることで形成されると共に光透過性を有する表示用塗料層と、
カーボンを含む塗料が前記表示用塗料層の表面に塗布されることで形成されると共に遮光性を有する遮光用塗料層と、
前記遮光用塗料層の一部がレーザー光の照射により除去されて前記表示用塗料層の一部が露出することで形成された表示部と、
を備えた照光表示体。
【請求項2】
色の3原色の塗料を混ぜ合わせて混合塗料を作り、この混合塗料を透明な成形体の表面側に塗布して光透過性を有する表示用塗料層を形成し、この表示用塗料層の表面に、カーボンを含む塗料を塗布して遮光性を有する遮光用塗料層を形成すると共に、この遮光用塗料層にレーザー光を照射して当該遮光用塗料層の一部を除去することで前記表示用塗料層の一部を露出させて表示部を形成することを特徴とする照光表示体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−206399(P2007−206399A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25386(P2006−25386)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】