説明

照射ヘッド

【課題】 ワークディスタンスの変更にも係わらず照度が一定でしかも均一な照射状態を実現可能とする画像処理照明用の照明装置を提供すること。
【解決手段】多数のLED素子群(1)を面状に取付基板(2)に配置するとともに、拡散板(3)をLED素子群(1)と平行に筐体(4)に配置したLED照明装置において、拡散板(3)を所定位置に配置するため、LED素子群(1)と平行な複数の溝(6a)〜(6d)及び拡散板(3)を固定するため、溝(6a)〜(6d)に直交する面(4a)にスライド板(4d)を挿入するためのスライド溝(7)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置における照射ヘッドに関し、特に面状光源からの出射光を変換するための拡散板を備えた照射ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED素子群を面状に配列した光源と拡散板等をハウジング(筐体)に内蔵させてなる照射ヘッドが知られている(例えば、特許文献1参照)。このヘッドの内部には、該文献1の図1あるいは図5に示されるように、透光性拡散手段としての拡散板(5)あるいは(8)が光源(1)に対して、一点に固定された離間距離をもって並行に配置されている。
【0003】
ところで、このような照射ヘッドを搭載した照明装置においては、要求される光の特性を満たす観点から、光源から照射対象物までの照射距離いわゆるワークディスタンス(Work Distance)もある程度限定される。
このことは、上記の離間距離も、照射対象物に対して光源の照度を極力維持しながら均一照射できる距離に固定されている。他方、このワークディスタンスは、照射対象物の大きさや照射ヘッドの設置環境により変化する。したがって、ワークディスタンスが一点に固定された照明装置では、このワークディスタンスの変化に対応して、照度維持と均一照射を確保できない欠点がある。
【0004】
もちろん、照度を維持しながらワークディスタンスの変化に応じた均一照射光を得るには、種々のワークディスタンスに対応した数種類の照射ヘッドを常備しておけばよいことになる。しかしながら、その反面では、照射ヘッドの購入費用、保管スペース、さらには、照射ヘッドの取り換え作業などを考えると、多大の不利益が浮き彫りになってくる。
【0005】
このように、従来の照射ヘッドにおいては、ワークディスタンスの変化に対して対応し得ない、という固有の問題が内在していた。この問題は、照射受光素子としてCCDカメラを採用した場合には、受信信号のばらつきあるいは受信信号のレベルの低下につながるため、肉眼による受光の場合と比較し、より深刻な問題となる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−65960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、ワークディスタンスが変化した状況でもこれに対応でき、もって、照度維持と均一照射とを同時に確保できる照射ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上記の課題は、面状光源および該面状光源に対向する拡散板を内蔵する筐体内部に、該光源からの該拡散板の離間距離を調節し且つ該板を着脱自在に固定し得る二重機構を配することにより解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下のような顕著な効果が奏される。
(1)単一ユニットでありながら、ワークディスタンスの変化に応じて拡散板の離間距離を調整できるので、光量損失の懸念なく、均一照射光が得られる。
(2) 上記(1)のユニットに装着した拡散板を、異なる拡散係数を有する拡散板と容易に交換できる。新たに装着された拡散板についても、(1)と同様に、ワークディスタンスの変化に応じて拡散板の離間距離を調整できる。
(3) 必要に応じて、拡散板が装着されているユニットに、さらに、別の拡散板を追加するだけで、複数枚の拡散板を容易に併用できる。
(4)種々のワークディスタンスに応じた、数種類の照射ヘッドの準備と保管・維持、さらには、照射ヘッドの頻雑な取り換え作業が割愛されるので、極めて経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の照射ヘッドの例について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る照射ヘッドの一例を示す一部破断斜視図である。
図2は、面状光源と拡散板と照射対象物との位置関係を示す斜視図である。
図3は、筐体端部の内壁面の部分拡大斜視図である。
図4は、ポールプランジャーによるスライド板の仮止めの一態様を示す斜視図である。
図5(a)は、本発明に係る照射ヘッドの他の態様を示す概観的斜視図である。
図5(b)は、図5(a)の部分的平面図である。
図5(c)は、図5(a)の内部の部分的斜視図である。
【0011】
図1には、縦型の照射ヘッドの例が示されている。図1自体は後述するように、該図に向かって手前の横板(4b)の右側部分を破断した状態の斜視図である。該図において、(1)は面状光源、(2)は面状光源(1)の取付基板、(3)は拡散板、そして、(4)は面状光源(1)および拡散板(3)を内蔵する筐体である。ここで、面状光源(1)と拡散板(3)とは、図2に示すように、所望の離間距離(L)でもって並行に配置されている。また、(S)は照射対象物(被照射面)、(D)は照射対象物に最も近い拡散板(3)から照射対象物(S)までの距離、すなわちワークディスタンスである。なお、このワークディスタンス(D)は、照射ヘッドから照射対象物(S)までの距離とすることもある。
本発明において、上記の面状光源(1)と拡散板(3)とを内蔵する筐体(4)は、離間距離(L)を調節し得しかも該拡散板を着脱自在に固定し得る二重機構を有するわけで、この機構について述べる。
【0012】
筐体(4)は、底板(4a)、相対する横板(4b)、側面板(4c)、およびスライド板(4d)から構成され、上方(照射対象物ないし被照射面側)に開放面を有する直方体空間を形成している。さらに、(5)および(6a)〜(6d)は、筐体(4)の三方の内部側壁面に、底板(4a)の面と並行に設けられた溝である。(7)は相対する横板(4b)の端部(図では左方端部)に、溝(5)および(6a)〜(6d)と直交して設けられたスライド溝である。したがって、相対する横板(4b)の溝構造は面対称となる。
【0013】
ここで、溝(5)には、面状光源(1)の取付基板(2)の三方の端部が嵌入される。この取付基板(2)自体は、底板(4a)に別の固定手段で固定されてもよい。他方、溝(6a)〜(6d)のいずれかには、拡散板の三方の端部が着脱自在に嵌入される。つまり、ワークディスタンス(D)の変化に呼応して、拡散板(3)は溝(6a)〜(6d)のいずれかに嵌入される。この位置変更により、離間距離(L)が調整され、その結果、ワークディスタンスの変化に応じた仕様となる。このような離間距離(L)の調整は既に装着された拡散板(3)に限らず、該板を別の拡散係数を有する拡散板と交換する場合にも適用される。拡散板(3)の位置変更あるいは交換時には、スライド板(4d)は筐体(4)の上方に引き上げられているが、その後は、スライド板(4d)をスライド溝(7)に沿って底板(4a)面まで下降させ、拡散板(3)および取付基板(2)をそれらの端面で固定する。その際、必要に応じて、図4に示すように、スライド板(4d)の下部の両隅で横板(4筐体)に向けてボールプランジャー(8)を差し込んで仮止めしてもよい。
【0014】
以上のことからも明らかなように、本発明で特徴的なことは、単一の照射ユニット内に、ワークディスタンス(D)の変化に対応し得る、拡散板(3)の離間距離(L)を調整し且つ該板を着脱自在に固定するよな二重機構を設けたことにある。
【0015】
本発明においては、面状光源は、電球群やLED素子群を二次元に配列して形成される。LED素子としては、標準的な光量が得られるLEDや高輝度タイプ等、市販されている各種仕様のものが採用される。LED素子を用いる場合は、それらの20個〜1000個程度を取付基板(2)上に固定すればよい。一方、拡散板(3)は、面状光源(1)からの入射光を指向性なく全方位に亘って拡散させる機能を有し、本発明においては重要な要素となる。拡散板(3)は、硝子基板あるいはアクリル樹脂等の樹脂基板の片面あるいは両面に凹凸を施したものや顔料を混ぜたもので、0.2〜0.95程度の拡散係数と15%〜90%程度の透過率を有するものが好ましい。離間距離(L)は、通常0mm〜200mmの範囲で間歇的または連続的に調整される。溝(5)、(6a)〜(6d)、および(7)については、それぞれに、取付基板(2)、拡散板(3)、およびスライド板(4d)の厚みに対応させればよい。また、溝(6a)〜(6d)については、溝間の間隔が5mm〜100mm程度にあればよい。
【0016】
図1の態様では、一枚の拡散板が用いられている。しかしながら、この態様で、同じ拡散係数の拡散板を併用してもよいし、また、拡散係数の異なる複数枚の拡散板を併用してもよい。これにより、照度維持と均一照射とが高精度下に実現する。このことは、特にLED素子群からなる面状光源(1)を採用する場合に意味がある。周知のように、隣り合うLED素子間では、光が途切れる部分(“暗所現象”)が生じる。しかしながら、この暗所現象は、本発明にしたがって複数枚の拡散板を用いることにより解消され、光源の光量損失がなくなるばかりか照射光もさらに均一化される。各拡散板は、0.2〜0.95程度の拡散係数と15%〜90%程度の透過率を有するものを採用する。
【0017】
ところで、図1の態様では、拡散板(3)の固定は間歇的な固定方式である。しかし、本発明の別の態様では、拡散板(3)を、必要に応じて面状光源(1)共々、スライド自在に設置することにより、離間距離(L)を連続的に調整することもできる。このようなスライド方式を横型の照射ヘッド採用した例が、図5(a)〜図5(c)に示されている。
【0018】
図5(a)の態様では、先ず、拡散板(3)を筐体(4)の上面にある開閉式上蓋(4d)を開けた状態で出し入れ自在としている。(9)は蝶番で、(10a)および(10b)はクリップ(ラック)部材である。そして、拡散板(3)を筐体(4)内部で光の出射方向に沿ってスライド自在とした機構が示されている。したがって、この図では、図面に向かって筐体(4)の左側面が、図2に示した照射対象物(S)の面となる。
【0019】
さらに、(11)は横板(4b)に沿って穿けられたスリット、(12)はネジロック(ストッパー)付き摘み、(13)は心棒(螺子)で、これに摘み(12)が時計方向に螺合している。(14)は心棒(13)の先端が螺合されて固定されたL字金具、そして、(15)はL字金具(14)を懸架するガイドレールである。L字金型(14)の一方の辺部は横板(4b)の内壁と並行に設けられ、したがって、他方の辺部は張り出し状態にある。以上の部材は、相対する横板(4b)に面対象に設けられ、その際、横板(4b)の両内壁から張り出したL字金具(14)のそれぞれの片辺に拡散板(3)が螺子止めされている。
【0020】
以上の状態は、図5(b)に、拡散板(3)の固定状態を筐体(4)の上部から観た平面図として、そして、図5(c)には、上記の拡散板(3)の固定状態を筐体(4)の内部から見た斜視図として示されるとおりである。これらの図において、(16)は拡散板(3)を固定するための螺子である。
【0021】
これら図5(a)〜図5(c)の態様においては、拡散板(3)、摘み(12)、心棒(13)およびL字金具(14)は一体的に結合されている。したがって、摘み(12)を面状光源(1)または照射対象物(S)に向かって引っ張ると、心棒(13)がスリット(11)に沿って移動し、これに伴って、拡散板(3)も面移動する。その際、拡散板(3)を固定するL字金型(14)は、ガイドレール(15)に懸架され、その上をスライドするので、上記拡散板(3)の面移動も円滑に進行する。このようにして、摘み(12)を面状光源(1)または照射対象物(S)に向かって引っ張ることにより、離間距離(L)は連続的に減少または増加するので、ワークディスタンス(D)の変化に対して高精度の対応が実現される。
【0022】
次に、拡散板(3)の交換方法について、図5(a)を参照しながら述べる。拡散板(3)を別の拡散板に交換するには、先ず、横板(4b)外側の2箇所の摘み(12)を反時計方向に回して心棒(13)から外す。つぎに、クリップ部材(10a)および(10b)をはずし、筐体(4)の上面にある開閉式上蓋(4d)を開けた状態で、心棒(13)をスリット(11)からはずしてから、L字金具(14)と一体的に結合された拡散板(3)を筐体(4)の上方に引き上げて外部に取り出す。その後、L字金具(14)と一体的に結合された別の拡散板と交換し、これまでと逆の順序で、別の拡散板を筐体(4)内に配設する。この際、離間距離(L)を調整する必要があれば、既に述べた手順にて、調整すればよい。
【0023】
図5(a)〜(c)の態様は種々の変形に発展する。スライド式の拡散板(3)を二組以上組み込めば、図1の態様同様、二枚以上の拡散板併用の形になる。また、筐体(4)の照射対象物に面する空間には、位置固定された拡散板を設け、該拡散板と面状光源との間にスライド式の拡散板(3)を配置するのも有用である。この場合の拡散板の位置固定に際しては、図1に示した溝方式を採用してもよい。さらに、面状光源(1)の取付基板(2)をも固定方式からスライド方式に変形すると、離間距離(L)の調整の自由度は格段に向上する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の照射ヘッドは、ワークディスタンスの変化に対しても、光量が低下することなく均一な照射効果を奏するので、画像処理照明用以外の商品展示用、屋内照明用あるいは医療用の用途にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る照射ヘッドの一例を示す一部破断斜視図。
【図2】面状光源と拡散板と照射対象物との位置関係を示す斜視図。
【図3】筐体端部の内壁面の部分拡大斜視図。
【図4】ポールプランジャーによるスライド板の仮止めの一態様を示す斜視図。
【図5】(a)は、本発明に係る照射ヘッドの他の態様を示す概観的斜視図、図5(b)は、図5(a)の部分的平面図、(c)は、図5(a)の内部の部分的斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 面状光源
2 面状光源(1)の取付基板
3 拡散板
4 筐体
4a 底板
4b 横板
4c 側面板
4d スライド板
5 基板(2)の取付溝
6a〜6d 拡散板(3)の嵌入溝
7 スライド溝
8 ボールプランジャー
9 蝶番
10 クリップ
11 スリット
12 ネジロック(ストッパー)付き摘み
13 心棒
14 L字金型
15 ガイドレール
S 照射対象物
D ワークディスタンス
L 離間距離



【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状光源および該光源と所定の離間距離で対向する拡散板を内蔵する筐体を主体とする照射ヘッドにおいて、該筐体内部に、該拡散板の該離間距離を調節し且つ該板を着脱自在に固定し得る二重機構が設けられていることを特徴とする照射ヘッド。
【請求項2】
該機構が、該筐体内壁面に、該拡散板の3辺の端部を嵌入する溝が多段に形成されてなり、そして該拡散板を筐体の一側面を通して出し入れ自在とした機構である、請求項1記載の照射ヘッド。
【請求項3】
複数枚の拡散板が固定されている、請求項1または2に記載の照射ヘッド。
【請求項4】
該機構が、拡散板を筐体の一側面を通して出し入れ自在とし且つ該拡散板を該筐体内で光の出射方向に沿ってスライド自在とした機構である、請求項1に記載の照射ヘッド。
【請求項5】
該機構が、さらに、固定された拡散板を含む、請求項4に記載の照射ヘッド。
【請求項6】
該面状光源がその出射方向に沿ってスライド自在である、請求項4または5に記載の照射ヘッド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−157398(P2007−157398A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348274(P2005−348274)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000226932)日星電気株式会社 (98)
【Fターム(参考)】