説明

照射装置またはその放電ランプ保持方法

【課題】 ショートアーク型放電ランプの取り付けを容易に行う。
【手段】 放電ランプ10を挿入すると、図5Aに示すように、テーパー部12と内筒22の内壁22aは嵌合する。これにより、口金11の軸方向(z方向)に直交するxy平面における位置決めがなされる。矢印α方向へさらに挿入されると、図5Bに示すように、テーパー部12と内壁22aは嵌合した状態で、内筒22が矢印α方向へスライドする。これにより、xy方向は保持されたまま、口金11の軸方向(z方向)の位置決めも完了する。これにより、xyz方向全ての位置決めが完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電ランプの保持に関し、特に、取り付け作業の簡易化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ショートアーク水銀ランプの取り付けは、以下のように行われていた。垂直保持タイプであれば、上記ランプの端部に設けられた口金を機械の取り付け部に固定する。その後、ミラーの焦点位置に合わせるために、取り付け部とともにランプを移動させてx,y,z方向の位置決めを行う。
特許文献1には、かかる位置決めを簡単に行う機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-185999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のやり方であっても、ランプ交換の都度、前記x,y,z方向の位置決めが必要であった。
【0005】
この発明は、上記の問題点を解決して、ランプ交換の都度、前記x,y,z方向の位置決めがする必要がない照射装置または放電ランプ保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明にかかる照射システムは、先細立体テーパー形状の口金を有する放電ランプ、前記放電ランプが挿入されると、これを保持する保持機構を有する照射装置、を備えた照射システムであって、前記保持機構は、内壁が前記口金の先細立体テーパー形状と合致する形状である中空部材、前記中空部材を保持する保持部材であって、前記中空部材を前記放電ランプの軸方向に直交する方向には移動することなく、前記軸方向に移動可能に保持する保持部材、を有し、前記口金には前記照射装置に対して前記放電ランプの軸方向の位置決めをする位置決め部が設けられており、前記中空部材を前記放電ランプ側に付勢する付勢手段を備えている。
したがって、前記放電ランプを前記中空部材に挿入すると、前記口金の先細立体テーパー形状と前記中空部材が合致する。これにより、前記放電ランプの軸方向に直交する方向の位置決めがなされる。また、前記保持部材は、前記中空部材を前記軸方向に直交する方向には移動することなく、前記軸方向に移動可能に保持する。したがって、この状態から前記付勢手段に抗して、さらに前記放電ランプを挿入すると、前記直交する方向における位置決めがなされたまま、前記位置決め部によって前記軸方向の位置決めがなされる。すなわち、前記先細立体テーパー形状の大きさに多少のズレがあっても前記中空部材の移動により吸収できるので、前記軸方向および前記軸方向に直交する方向について、前記口金に対しての位置決めが可能となる。
【0007】
(2)本発明にかかる照射装置は、先細立体テーパー形状の口金を有する放電ランプが挿入されると、これを保持する保持機構を有する照射装置であって、前記保持機構は、内壁が前記口金の先細立体テーパー形状と合致する形状である中空部材、前記中空部材を保持する保持部材であって、前記中空部材を前記放電ランプの軸方向に直交する方向には移動することなく、前記軸方向に移動可能に保持する保持部材を有する。
【0008】
したがって、前記放電ランプを前記中空部材に挿入すると、前記口金の先細立体テーパー形状と前記中空部材が合致する。これにより、前記放電ランプの軸方向に直交する方向の位置決めがなされる。また、前記保持部材は、前記中空部材を前記軸方向に直交する方向には移動することなく、前記軸方向に移動可能に保持する。さらに前記放電ランプを挿入すると、前記直交する方向における位置決めがなされたまま、前記位置決め部によって前記軸方向の位置決めがなされる。すなわち、前記先細立体テーパー形状の大きさに多少のズレがあっても前記中空部材の移動により吸収できるので、前記軸方向および前記軸方向に直交する方向について、前記口金に対しての位置決めが可能となる。
【0009】
(3)本発明にかかる放電ランプは、照射装置に挿入される先細立体テーパー形状の口金を有する放電ランプであって、前記口金には前記照射装置に対して前記放電ランプの軸方向の位置決めをする位置決め部が設けられている。
【0010】
したがって、前記放電ランプを前記照射装置に挿入すると、前記口金の先細立体テーパー形状と前記中空部材が合致する。これにより、前記放電ランプの軸方向に直交する方向の位置決めがなされる。また、前記保持部材は、前記中空部材を前記軸方向に直交する方向には移動することなく、前記軸方向に移動可能に保持するので、前記直交する方向における位置決めがなされたまま、前記位置決め部によって前記軸方向の位置決めがなされる。すなわち、前記先細立体テーパー形状の大きさに多少のズレがあっても前記中空部材の移動により吸収できるので、前記軸方向および前記軸方向に直交する方向について、前記口金に対しての位置決めが可能となる。
【0011】
(4)本発明にかかる放電ランプ保持方法は、放電ランプの口金を先細立体テーパー形状とし、前記放電ランプの口金が照射装置の保持機構にて挿入されると、これを保持する照射装置における放電ランプ保持方法であって、前記保持機構として、内壁が前記口金の先細立体テーパー形状と合致する形状である中空部材を、その外側に位置する保持部材で、前記中空部材を前記放電ランプの軸方向に直交する方向には移動することなく、前記軸方向に移動可能に保持させるとともに、前記中空部材を前記放電ランプ側に付勢しておき、前記保持機構に前記先細立体テーパー形状の口金が挿入され、前記中空部材の内壁と合致した状態で、さらに挿入されると、前記中空部材が前記軸方向に移動し、前記放電ランプの軸方向の位置決めをする位置決め部が、前記保持機構と接触して軸方向の位置決めを可能とする。
【0012】
したがって、前記放電ランプを前記中空部材に挿入すると、前記口金の先細立体テーパー形状と前記中空部材が合致する。これにより、前記放電ランプの軸方向に直交する方向の位置決めがなされる。また、前記保持部材は、前記中空部材を前記軸方向に直交する方向には移動することなく、前記軸方向に移動可能に保持する。さらに前記放電ランプを挿入すると、前記直交する方向における位置決めがなされたまま、前記位置決め部によって前記軸方向の位置決めがなされる。すなわち、前記先細立体テーパー形状の大きさに多少のズレがあっても前記中空部材の移動により吸収できるので、前記軸方向および前記軸方向に直交する方向について、前記口金に対しての位置決めが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる照射システム1の外観図である。
【図2】放電ランプ10における口金形状を示す図である。
【図3】照射装置30の保持機構を示す図である。
【図4】照射システム1の保持を説明する図である。
【図5】照射システム1の保持を説明する図である。
【図6】照射システム1の保持を説明する図である。
【符号の説明】
【0014】
1 照射システム
10 放電ランプ
11 口金
12 テーパー部
13 フランジ
15 先端部
17 溝
20 保持機構
21 外筒
22 内筒
22a 内壁
22b テーパー孔
23 上蓋
27 電極取り出し部
31 バネ
32 下蓋
32a ボールプランジャー
33 貫通孔
34 支持部
35 押し出し部
36 バー
37 取っ手
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、この発明の一実施形態による照射システム1の外観図を示す。照射システム1は、放電ランプ10および保持機構20を備えている。
図2を用いて、放電ランプ10の構成について説明する。放電ランプ10の口金11は、共に金属製のテーパー部12、先端部15,フランジ13を有している。テーパー部12は先端に行くほど直径が小さくなる先細立体テーパー形状である。先端部15には後述するボールプランジャーと係合する溝17が形成されている。
【0016】
放電ランプ10においては、ランプの陰極と陽極を結ぶ軸中心と口金11の先細立体テーパー形状の軸中心が一致するように、口金11がランプ筐体に固定されている。また、フランジ13が保持機構20の上蓋と接触した位置で、陰極の先端が所定位置となるように軸公報の位置決めされている。したがって、口金11が所定位置に保持されれば、保持機構20が固定されている楕円ミラー(図示せず)に対する軸方向(z方向)および、これに垂直な平面(xy平面)における位置決めが可能となる。
【0017】
図3を用いて、保持機構20について説明する。保持機構20は、図2に示す放電ランプ10の口金11を保持する。その際、放電ランプ10のテーパー部12における寸法のズレを吸収できるように、二重構造であり、内側の部材である内筒22が矢印α方向にスライドするよう構成されている。以下、詳述する。
【0018】
図3に示すよう、保持機構20は、内筒22を内蔵した外筒21を有している。内筒22の内壁22aは、放電ランプ10のテーパー部12と嵌合するよう同じテーパー角で構成されている。本実施形態においては、テーパー角θを2.8度としたが、これに限定されるものではない。
【0019】
外筒21は、概ね円筒形状であり、一部に照射装置に取り付けるためのフランジ面が形成されている。内筒22の形状としては、外筒21と接する外壁は円筒形で、内壁は先端に行くほど直径が小さくなる先細立体テーパー形状である。
【0020】
内筒22は、上蓋23および下蓋32で蓋をされた状態で、矢印α方向に平行に移動可能に外筒21に保持されている。下蓋32と内筒22の間には付勢手段としてバネ31が設けられており、内筒22を上蓋23方向に付勢している。上蓋23はネジ23bにより、下蓋32はネジ33bにより外筒21とネジ止めされている(図3A,C参照)。
【0021】
外筒21の一部は切りかけ21aが設けられている。切りかけ21aからは内筒22にネジ止めされた電極取り出し部27が突出している。
【0022】
下蓋32の中央には貫通孔33が設けられている。下蓋32には、口金11の先端部15に設けられた溝17と係合するボールプランジャーが4カ所設けられている。下蓋32には、支持部34が固定されており、支持部34にはバー36が支持されている。バー36には、押し出し部35が固定されており、取っ手37を矢印β方向に移動させると、押し出し部35により、貫通孔33に挿入された口金11の先端部15を、矢印α方向とは逆方向に押し出すことができる。
【0023】
照射システム1の使用方法について図4〜図6を用いて説明する。図4Aは、口金11がテーパー孔22bの上部に位置している状態である。この状態から、図4Bに示すように、口金11がテーパー孔22bに挿入されると、先端部15の側面が、ボールプランジャー32aと当接して、一旦、矢印α方向への挿入が停止する。なお、この状態では、未だ、テーパー部12と内筒22の内壁22aは嵌合していない。
【0024】
操作者が、ボールプランジャー32aの押圧力に抗して、さらに矢印α方向へ放電ランプ10を挿入すると、図5Aに示すように、テーパー部12と内筒22の内壁22aは嵌合する。これにより、口金11が保持機構20に対して、軸方向(z方向)に垂直な平面(xy平面)における位置決めがなされる。なお、この状態では、フランジ13と上蓋23とは隙間tが形成される状態で位置しているので、軸方向(z方向)の位置決めはなされていない。
【0025】
操作者が、さらに矢印α方向へ放電ランプ10を挿入すると、図5Bに示すように、テーパー部12と内筒22の内壁22aは嵌合した状態で、内筒22が矢印α方向へスライドする。したがって軸方向(z方向)に垂直な平面(xy平面)における位置決めがなされたまま、フランジ13と上蓋23とは当接する。これにより、口金11の軸方向(z方向)の位置決めも完了する。また、口金11の溝17は、ボールプランジャー32aと嵌合する。ボールプランジャー32aはこの状態を保持する。これにより、口金11が矢印α方向とは逆側方向へ移動するのが防止される。
【0026】
すでに述べたように、フランジ13が上蓋23と当接する位置で、ランプとしての軸方向(z方向)の位置決めがされるように口金11がランプ筐体と固定されている。また、ランプの陰極と陽極を結ぶ軸中心と口金11の先細立体テーパー形状の軸中心が一致するように、口金11がランプ筐体に固定されている。したがって、口金11が保持機構20に対して、xyz方向の位置決めがなされると、放電ランプ20全体としてもx,y,z方向全ての位置決めが完了する。
【0027】
放電ランプ10を保持機構20から取り外すには、図6に示すように、取っ手37を矢印β方向に移動させる。これにより押し出し部35により、貫通孔33に挿入された口金11の先端部15を、矢印α方向とは逆方向に押し出す。
【0028】
本実施形態においては、内筒22が軸方向(z方向)と平行にのみスライドする。したがって、口金11のテーパー部12の径が多少ずれても、スライドすることにより吸収できる範囲であれば、z方向の位置決めをする際に、テーパー12が邪魔することがない。
【0029】
また、口金11のテーパー部12と面接触する内筒22は金属製であり、この内筒22に電極取り出し部27が固定されて、外筒21の外側に露出しているので、電極との電気的接触も自動的にとることができる。
【0030】
本実施形態においては、内筒22と外筒21とは筒形状で軸方向にスライド自在に構成されているが、いずれか一方の一部を凹型に、これに対向する位置に他方に凸型形状で構成してもよい。
【0031】
本実施形態においては、口金11のテーパー形状と嵌合する内筒22を金属で構成したが、全てを金属ではなく、一部を金属として導通できるようにしてもよい。
【0032】
本実施形態においては、先細立体テーパー形状として円錐形状を採用した。これは、ランプの軸方向が、先端に行くほど断面の面積が小さくなる先細立体テーパー形状であれば、多角錘形状であってもよい。また円錐の一部を平面で削除した形状であってもよい。
【0033】
本実施形態においては、放電ランプとして超高圧水銀ランプを用いたが、水銀ランプでなくても、例えばキセノンランプなど他のショートアーク型放電ランプについても適用可能である。
【0034】
また、楕円ミラーを用いるためにx,y,z方向の位置決めが必要な放電ランプであれば適用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
先細立体テーパー形状の口金を有する放電ランプ、
前記放電ランプが挿入されると、これを保持する保持機構を有する照射装置、
を備えた照射システムであって、
前記保持機構は、
内壁が前記口金の先細立体テーパー形状と合致する形状である中空部材、
前記中空部材を保持する保持部材であって、前記中空部材を前記放電ランプの軸方向に直交する方向には移動することなく、前記軸方向に移動可能に保持する保持部材、
を有し、
前記口金には前記照射装置に対して前記放電ランプの軸方向の位置決めをする位置決め部が設けられており、
前記中空部材を前記放電ランプ側に付勢する付勢手段を備えたこと、
を特徴とする照射システム。
【請求項2】
先細立体テーパー形状の口金を有する放電ランプが挿入されると、これを保持する保持機構を有する照射装置であって、
前記保持機構は、
内壁が前記口金の先細立体テーパー形状と合致する形状である中空部材、
前記中空部材を保持する保持部材であって、前記中空部材を前記放電ランプの軸方向に直交する方向には移動することなく、前記軸方向に移動可能に保持する保持部材、
を有すること、
を特徴とする照射装置。
【請求項3】
照射装置に挿入される先細立体テーパー形状の口金を有する放電ランプであって、
前記口金には前記照射装置に対して前記放電ランプの軸方向の位置決めをする位置決め部が設けられていること、
を特徴とする放電ランプ。
【請求項4】
放電ランプの口金を先細立体テーパー形状とし、前記放電ランプの口金が照射装置の保持機構にて挿入されると、これを保持する照射装置における放電ランプ保持方法であって、
前記保持機構として、内壁が前記口金の先細立体テーパー形状と合致する形状である中空部材を、その外側に位置する保持部材で、前記中空部材を前記放電ランプの軸方向に直交する方向には移動することなく、前記軸方向に移動可能に保持させるとともに、前記中空部材を前記放電ランプ側に付勢しておき、
前記保持機構に前記先細立体テーパー形状の口金が挿入され、前記中空部材の内壁と合致した状態で、さらに挿入されると、前記中空部材が前記軸方向に移動し、前記放電ランプの軸方向の位置決めをする位置決め部が、前記保持機構と接触して軸方向の位置決めを可能としたこと、
を特徴とする放電ランプ保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−28882(P2011−28882A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170969(P2009−170969)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(599117211)株式会社ユメックス (22)
【Fターム(参考)】