説明

照射装置

【課題】装置を小型化し、なおかつ装置コストを抑えながらも、平行度が高い照射光を照射できる照射装置を提供すること。
【解決手段】光を放射するランプ10、当該ランプの光を集光する集光反射鏡たる楕円反射鏡11、当該楕円反射鏡11からの光束が入射するフライアイレンズ13、及び、当該フライアイレンズ13を通った光束を平行光化して照射面たる試料載置面9に照射するコリメーション光学系14を備えた擬似太陽光照射装置1において、前記楕円反射鏡11の光束を鋭角に反射する第1ミラー20と、前記第1ミラー20で反射した光束を鋭角に反射する第2ミラー22とを備えるとともに、前記コリメーション光学系14に球面鏡16を設け、前記第1ミラー20と前記第2ミラー22との間の光路L1上に前記フライアイレンズ13を配置し、前記第2ミラー22で反射した光束を前記楕円反射鏡11の光軸K1と平行に前記試料載置面9に向けて反射するように前記球面鏡16を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行度の高い照射光を照射可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池に代表される各種太陽エネルギー利用機器の性能測定や加速劣化試験などのために、自然太陽光の発光スペクトルを再現した光(以下、擬似太陽光と言う)を、太陽エネルギー利用機器の被照射面に照射する擬似太陽光照射装置(ソーラーシミュレーターとも呼ばれる)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−264991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は、擬似太陽光照射装置の一般的な光学配置を示す模式図である。
一般的な擬似太陽光照射装置100にあっては、光源に直管型のランプ101が用いられている。高出力化のために大型の発光管を有するランプ101を用いている場合、陽極101A側を上側にする必要があることから、通常、反射鏡102により上側に光束を射出するように構成される。一方、試験対象の試料を載置する試料台103は、水平に設置されることから、ランプ101から試料台103に至る光路が、いわゆる門型(下方開放のコ字状)になる。
【0005】
しかしながら、光路を門型にした場合、試料台103での光束の平行度が±1°以下になるように、コリメーションレンズ104やフライアイレンズ105を含む光学配置を設計すると、門型の光路の内側に大きな無駄な空間が発生し、擬似太陽光照射装置全体が必要以上に大きくなる、という問題がある。
【0006】
さらに、試料台103に照射する平行光を生成するコリメーション光学部品にコリメーションレンズ104のような透過レンズを用いていると、大きな面積の照射エリアを照射する場合には、コリメーションレンズが照射エリアの対角長をカバーする必要がある。このため例えば、照射エリアが200mm四角エリアの場合には、コリメーションレンズ104の直径は大凡300mm以上となり、光学素子の大型化を招くばかりか製造コストも増大する、という問題もある。
一方、天文学や精密計測の分野では、望遠鏡や計測機器に組み込むコリメーション光学部品にコリメーション反射鏡が用いられることがある。この分野のコリメーション反射鏡には、通常、放物面鏡が用いられているが、放物面鏡の作成には時間がかかり、また高コストとなる。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、装置を小型化し、なおかつ装置コストを抑えながらも、平行度が高い照射光を照射できる照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、光を放射するランプ、当該ランプの光を集光する集光反射鏡、当該集光反射鏡からの光束が入射するフライアイレンズ、及び、当該フライアイレンズを通った光束を平行光化して照射面に照射するコリメーション光学系を備えた照射装置において、前記集光反射鏡の光束を鋭角に反射する第1ミラーと、前記第1ミラーで反射した光束を鋭角に反射する第2ミラーとを備えるとともに、前記コリメーション光学系に球面鏡を設け、前記第1ミラーと前記第2ミラーとの間の光路上に前記フライアイレンズを配置し、前記第2ミラーで反射した光束を前記集光反射鏡の光軸と平行に前記照射面に向けて反射するように前記球面鏡を配置したことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記照射装置において、前記第2ミラーから前記球面鏡に光束を、前記球面鏡の光軸に対し8°〜30°の範囲の入射角θ1で入射したことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記照射装置において、前記第2ミラーと前記球面鏡の反射光の光束との間、及び、前記フライアイレンズと前記第2ミラーとの間のそれぞれに、前記フライアイレンズから照射面に向かう迷光を遮光する遮光板を設けたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記照射装置において、前記フライアイレンズの射出側に、前記フライアイレンズの射出光束よりも小さな径の絞りを設け、前記照射面での光束の平行度を±ψ、前記球面鏡の曲率半径をRとしたときに、前記絞りの半径rを、
r≦R・tan(ψ/2)
としたことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記照射装置において、前記フライアイレンズからの射出光束の拡がり角θ2が、前記照射面での照射エリアの対角方向の平行度±ψの絶対値ψに対し、(θ2/2)≦10・ψの関係を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、集光反射鏡の光束を鋭角に反射する第1ミラーと、前記第1ミラーで反射した光束を鋭角に反射する第2ミラーとを備えるとともに、コリメーション光学系に球面鏡を設け、第1ミラーと第2ミラーとの間の光路上にフライアイレンズを配置し、第2ミラーで反射した光束を集光反射鏡の光軸と平行に前記照射面に向けて反射するように球面鏡を配置する構成とした。
この構成により、集光反射鏡から照射面に至る光路がM字型になって、集光反射鏡と照射面の間の空間が光路として利用されることとなり、装置を小型化しても十分な平行度を得るための長い光路を確保することができる。
さらに、コリメーション光学系に球面鏡を設ける構成としたため、照射面の面積が広くなってもコリメーション光学系が大型化することなく、また放物面鏡に比べて作成が容易であるためコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る擬似太陽光照射装置の外観構成を示す図である。
【図2】擬似太陽光照射装置の側面を内部構成とともに示す側面図である。
【図3】擬似太陽光照射装置の光学配置を模式的に示す図である。
【図4】フライアイレンズの構成を模式的に示す図である。
【図5】従来の擬似太陽光照射装置の光学配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、照射装置の一例として擬似太陽光照射装置を例示する。
図1は本実施形態に係る擬似太陽光照射装置1の外観構成を斜視図であり、図2は擬似太陽光照射装置1の側面を内部構成とともに示す側面図である。
これらの図に示すように、擬似太陽光照射装置1は、側面視略矩形の箱形の筐体2と、この筐体2を載置した矩形板状のステージ3とを有している。ステージ3の底面には装置移動用の車輪であるキャスター4が設けられ、また筐体2の天面には装置を吊り上げて移動等するための吊り金具5が設けられている。また筐体2の側面には、内部をメンテナンスするための開閉扉6A〜6Cと、換気用の通気口7とが設けられている。また筐体2の背面側には内部に冷却風を導入する送風ファン8が設けられている。
また、筐体2は、ステージ3の片方の端部を露出するように切り欠いた形状を成し、このステージ3の露出面が試料を載置する試料載置面(照射面)9として構成されており、この試料載置面9に垂直に擬似太陽光Sが照射される。
【0016】
図3は、擬似太陽光照射装置1の光学配置を模式的に示す図である。
擬似太陽光照射装置1は、図2及び図3に示すように、擬似太陽光を生成可能なランプ10、及び当該ランプ10の光を集光する集光反射鏡たる楕円反射鏡11を有した装置光源12と、楕円反射鏡11からの光束が入射するフライアイレンズ13と、当該フライアイレンズ13を通った光束を平行光化して試料載置面9に照射するコリメーション光学系14とを備えている。
ランプ10は、擬似太陽光Sの高出力化を実現可能にすべく、発光管の大きな直管型のランプが用いられている。かかるランプ10には、全波長域でブロードなスペクトル特性を有し、例えばキセノンランプやハロゲンランプが用いられ得るが、本実施形態ではキセノンランプを用いることとしている。
楕円反射鏡11は、光軸K1が鉛直上向きになるように配置され、この楕円反射鏡11の光軸K1と同軸に、ランプ10が陽極10A側を上方に向け垂直に立てた姿勢で挿入配置されている。
これらランプ10及び楕円反射鏡11は、上記送風ファン8によって直接空冷される。
【0017】
フライアイレンズ13は、透過型インテグレータ光学系であり、装置光源12から射出された光の照度ムラ及び色ムラを打ち消す。コリメーション光学系14は、フライアイレンズ13を通った光束を平行光化して試料載置面9に照射する。このコリメーション光学系14には、反射型光学系である球面鏡16が用いられている。
本実施形態では、上記試料載置面9は、擬似太陽光Sの照射エリアが少なくとも150mm角となる面積を有しているものの、コリメーション光学系に反射型光学系を用いることで、コリメーション光学系が照射エリアを覆う必要がないため、小型化及び軽重量化が容易となり、また研磨が球面鏡16の片面(反射面)だけで良いため低コストに作成できる。さらに、反射型のコリメーション光学系14として、楕円反射鏡ではなく球面鏡16を用いているため、作成が容易で、更なる低コスト化を実現できる。
【0018】
また、図2及び図3に示すように、本実施形態の擬似太陽光照射装置1にあっては、装置光源12から試料載置面9に至る光路がM字状に形成されている。すなわち、楕円反射鏡11の光軸K1上には、楕円反射鏡11の光束を鋭角α(図3)で反射する第1ミラー20が設けられるとともに、この第1ミラー20で反射した反射光の光路L1上に設けられ、当該反射光の光束を鋭角β(図3)で反射する第2ミラー22が設けられている。そして、この第2ミラー22で反射した反射光の光路L2上に上記球面鏡16が配置され、また、上記フライアイレンズ13が第1ミラー20と第2ミラー22の間の光路L2上に配置され、さらに、擬似太陽光Sが装置光源12の光軸K1と平行な光路L3に沿って反射されるように球面鏡16が配置されている。
【0019】
これにより、装置光源12から試料載置面9に至る光路がM字状に形成され、装置光源12と試料載置面9との間の空間が光路として有効に利用される。また、これら装置光源12と試料載置面9との間を広げることなく、装置光源12から試料載置面9までの光路長を長くできることから、擬似太陽光照射装置1をコンパクトにしつつ、フライアイレンズ13で十分に照度ムラ及び色ムラを打ち消すことができる。また試料載置面9での擬似太陽光Sの平行度を十分に高めることができる。
【0020】
なお、図2及び図3において、図示を省略したが、装置光源12とフライアイレンズ13との間には、装置光源12の射出光のスペクトル特性を太陽光のスペクトル特性に変換する、誘電体多層膜から成る波長変換フィルタや、光量調整用の減光フィルタが配置されている。
【0021】
ここで、図3に示すように、球面鏡16においては、球面鏡16の球心(図示せず)と、当該球面鏡16のミラー頂点30とを結ぶ光軸K2上に、第2ミラー22の反射光の光軸、及び球面鏡16の反射光(擬似太陽光S)の光軸が位置しておらず、これら第2ミラー22の反射光の光軸、及び球面鏡16の反射光(擬似太陽光S)の光軸は、それぞれ光軸K2に対して対称に配置された軸外し光学系となっている。したがって、この球面鏡16では、通常の球面収差の他に軸外の収差(コマ収差、非焦点収差、歪曲収差など)が発生してしまい、そのままでは、擬似太陽光Sの平行度が劣化する。
【0022】
そこで本実施形態では、次のようにして擬似太陽光Sの平行度を高めることとしている。すなわち、球面鏡16への第2ミラー22からの反射光の入射角θ1(球面鏡16の反射光の反射角)が8°〜30°の範囲となるように球面鏡16、及び第2ミラー22を配置している。
詳述すると、入射角θ1が30°以上になると、収差による擬似太陽光Sの光束の乱れが大きくなり、特に、球面鏡16での反射により光束が曲げられる方向(図3中、矢印X方向)と、これに直角な方向(図3中、Y方向)での光線角度の誤差が大きくなる。このため、例えば、擬似太陽光Sの光束の平行度を、X方向で±1°とするとY方向で±1°を超え、これとは逆に、Y方向で±1°とするとX方向で±1°を超えるということが発生し、試料載置面9の面内での平行度を±1°以下とすることができなくなる。
一方、入射角θ1が8°以下となると、第2ミラー22の反射光と、球面鏡16の反射光とが接近しすぎて、第2ミラー22が球面鏡16の反射光の光束内に入り込み、試料載置面9に影が生じてしまう。
このように、反射光の入射角θ1を8°〜30°とすることで、収差の発生を抑えて平行度を±1°以下とすることができる。特に、入射角θ1を8°とすることで、試料載置面9での影が発生しない範囲で、第2ミラー22と試料載置面9とを最大限に近づけることができるため、装置を非常に小型化できる。
【0023】
ただし、第2ミラー22と試料載置面9とを近づけるほど、図3に示すように、フライアイレンズ13から射出され第2ミラー22を逸れてしまった光が迷光C1となって試料載置面9に照度ムラを生じさせることがある。そこで、第2ミラー22と、球面鏡16の反射光(擬似太陽光S)の光束の間には、試料載置面9への迷光を遮光する遮光板40が配置されている。この遮光板40は、第2ミラー22に隣接して略同一の高さ位置に配置されるとともに、その上端40Aが反射光束の近傍まで延びており、試料載置面9への迷光C1を最大限に遮光している。
これに加え、フライアイレンズ13から射出後に光路L2から大きく逸れて試料載置面9に向かう迷光C2を防止すべく、フライアイレンズ13と第2ミラー22との間にも(より正確には、フライアイレンズ13の射出光束と第2ミラー22の反射光束の間に)、遮光板42を配置することとしている。この遮光板42は、その下端部42Aがフライアイレンズ13の射出光束の近傍まで延び、これにより、フライアイレンズ13から光路L2を大きく逸れて試料載置面9に向かう迷光C2を最大限に遮光している。
【0024】
ところで、フライアイレンズ13の射出光を、そのまま球面鏡16に入射すると、この射出光が球面鏡16に斜入射することから、光束の外周部の光線Q1、Q2と、入射光の光軸上の光線Q3とのそれぞれ入射角が異り球面鏡16で収差が発生する。この収差により球面鏡16で反射した外周部の光線Q1、Q2のそれぞれが光軸上の光線Q3に対し互いに異なる方向に向かい、試料載置面9での平行度が悪くなる。
そこで、本実施形態では、図2及び図3に示すように、フライアイレンズ13の射出側に、射出光の光束を絞る絞り50を設け、この絞り50により、試料載置面9での平行度劣化の要因となる外周部の光線Q1、Q2、及び、フライアイレンズ13の外側を回り込む光線をカットして、平行度の劣化を防止することとしている。
【0025】
この絞り50について詳述すると、図4に示すように、フライアイレンズ13は、射出面が平面視矩形に形成されている。絞り50は、フライアイレンズ13の射出面に内接する内接円52の半径Dよりも小さな半径rの開口でフライアイレンズ13の射出光束を絞るように構成されており、これにより、外周部の光線Q1、Q2をカットする。なお、絞り50がフライアイレンズ13の射出面から離れた位置に配置される場合には、上記内接円52は、その位置における射出光束断面の内接円となる。
このとき、試料載置面9での擬似太陽光Sの光束の平行度を±ψ°、球面鏡16の曲率半径をRとした場合、絞り50の半径rは、次式(1)となるように設定されている。
r≦R・tan(ψ/2) (1)
【0026】
上記式(1)において、絞り50の半径rは、コリメーション光学系14が略無収差であれば、最大の大きさ(R・tan(ψ/2))となるが、球面鏡16は収差が大きいため、それよりも小さい値が設定される。また、半径rを小さくするほど平行度は高くなるが、集光径の光の利用効率が悪くなるため、当該利用効率を考慮して半径rを決定することが好ましい。
【0027】
また、上述の通り、球面鏡16で反射した外周部の光線Q1、Q2のそれぞれが光軸上の光線Q3に対し互いに異なる方向に向かう性質を有することから、試料載置面9での光束の平行度の劣化を防止するためには、これら光線Q1、Q2の球面鏡16への入射角を決定付けるフライアイレンズ13の射出光束の拡がり角θ2を抑える必要がある。
具体的には、フライアイレンズ13からの射出光束の拡がり角θ2(図3)は、試料載置面9での照射エリアの対角方向(150mm角の照射エリアの対角方向)の平行度±ψ°の絶対値ψに対し、
(θ2/2)≦10・ψ (2)
の関係を満たすように設定されており、これにより試料載置面9での任意方向の平行度を±ψ°以下とすることができる。
なお、上記(2)式の関係が満たされるようにフライアイレンズ13が構成されている場合、平行度を劣化させる外周部の光線Q1、Q2が抑制されることから、上記絞り50を省略することもできる。
【0028】
次いで、擬似太陽光照射装置1の内部構成について説明する。
図3に示すように、筐体2の内部は、下段側空間61と上段側空間62との上下2段に仕切られ、下段側空間61にスターター63、及び装置光源12の光軸調整機構64等の電気部品及び機械部品が収められている。一方、上段側空間62には、装置光源12から試料載置面9までの光路をM字型に構成した上述の各種光学部品が配置されている。
光学部品の配置においては、装置光源12の射出光を第1ミラー20を用いずに直接フライアイレンズ13に入射する構成(光路をN字型にする構成)も考え得るが、そうすると、装置光源12が筐体2の天面側に配置されることから、擬似太陽光照射装置1が縦に長くなり大型化する。これに対して、光路をM字型にすることで、擬似太陽光照射装置1の縦幅を抑えた小型な装置を構成することができる。
【0029】
また、上段側空間62にあっては、図2に示すように、フライアイレンズ13と第2ミラー22との間に、上段側空間62を左右に仕切りつつ下端側で連通する仕切壁67が設けられており、この仕切壁67が上記遮光板42として機能する。
また、上段側空間62の底面68は試料載置面9の真上まで延出し、この延出した部位に、球面鏡16の反射光束(擬似太陽光S)を通過する射出開口69が設けられている。このように底面68を試料載置面9の真上まで延出させ射出開口69だけから光を外部に取り出す構成とすることで、筐体2の内部で発生した迷光が試料載置面9に到達するのが抑制される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、装置光源12、第1ミラー20、第2ミラー22、及びコリメーション光学系14の球面鏡16で、装置光源12から試料載置面9に至る光路をM字型に構成した。
この構成により、装置光源12と試料載置面9の間の空間が光路として利用されることとなり、擬似太陽光照射装置1を小型化しても、十分な平行度を得るための長い光路を確保することができる。
さらに、コリメーション光学系14に球面鏡16を用いる構成としたため、試料載置面9の面積が広くなってもコリメーション光学系14を大型化することがなく、また放物面鏡に比べて作成が容易であるため製造コストを抑えることができる。
【0031】
また本実施形態によれば、第2ミラー22から球面鏡16に光束を、図3に示すように、球面鏡16の光軸K2に対し8°〜30°の範囲の入射角θ1で入射する構成とした。
この構成により、安価で製造が容易な球面鏡16をコリメーション光学系14として設けつつ、収差の発生を抑えて平行度を±1°以下とすることができる。また入射角θ1を8°とすることで、試料載置面9での影が発生しない範囲で、第2ミラー22と試料載置面9とを最大限に近づけることができるため、装置を非常に小型化できる。
【0032】
また本実施形態によれば、第2ミラー22と球面鏡16の反射光の光束との間、及び、フライアイレンズ13と第2ミラー22との間のそれぞれに、フライアイレンズ13から試料載置面9に向かう迷光を遮光する遮光板40、42を設ける構成とした。
この構成により、試料載置面9への迷光が防止され、試料載置面9の照度ムラを防止できる。
【0033】
また本実施形態によれば、フライアイレンズ13の射出側に、フライアイレンズ13の射出光束よりも小さな径の絞り50を設け、試料載置面9での光束の平行度を±ψ°、球面鏡16の曲率半径をRとしたときに、絞り50の半径rを、
r≦R・tan(ψ/2)
と設定する構成とした。
この構成により、試料載置面9での光束の平行度を±ψ°以下とすることができる。
【0034】
また本実施形態によれば、フライアイレンズ13からの射出光束の拡がり角θ2が、試料載置面9での照射エリアの対角方向の平行度±ψ°の絶対値ψに対し、(θ2/2)≦10・ψの関係を満たすように構成した。
この構成により、試料載置面9での任意方向の平行度を±ψ°以下とすることができる。
【0035】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、照射装置の一例として擬似太陽光照射装置を例示したが、これに限らず、照射面に対し平行度の高い光の照射が要求される任意の分野の照射装置に本発明を提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
1、100 擬似太陽光照射装置
2 筐体
9 試料載置面(照射面)
10、101 ランプ
11 楕円反射鏡(集光反射鏡)
12 装置光源
13、105 フライアイレンズ
14 コリメーション光学系
16 球面鏡
20 第1ミラー
22 第2ミラー
40、42 遮光板
52 内接円
103 試料台
104 コリメーションレンズ
C1、C2 迷光
K1、K2 光軸
L1〜L3 光路
Q1〜Q3 光線
S 擬似太陽光
r 半径
θ1 入射角
θ2 拡がり角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放射するランプ、当該ランプの光を集光する集光反射鏡、当該集光反射鏡からの光束が入射するフライアイレンズ、及び、当該フライアイレンズを通った光束を平行光化して照射面に照射するコリメーション光学系を備えた照射装置において、
前記集光反射鏡の光束を鋭角に反射する第1ミラーと、前記第1ミラーで反射した光束を鋭角に反射する第2ミラーとを備えるとともに、前記コリメーション光学系に球面鏡を設け、
前記第1ミラーと前記第2ミラーとの間の光路上に前記フライアイレンズを配置し、前記第2ミラーで反射した光束を前記集光反射鏡の光軸と平行に前記照射面に向けて反射するように前記球面鏡を配置した
ことを特徴とする照射装置。
【請求項2】
前記第2ミラーから前記球面鏡に光束を、前記球面鏡の光軸に対し8°〜30°の範囲の入射角θ1で入射したことを特徴とする請求項1に記載の照射装置。
【請求項3】
前記第2ミラーと前記球面鏡の反射光の光束との間、及び、前記フライアイレンズと前記第2ミラーとの間のそれぞれに、前記フライアイレンズから照射面に向かう迷光を遮光する遮光板を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の照射装置。
【請求項4】
前記フライアイレンズの射出側に、前記フライアイレンズの射出光束よりも小さな径の絞りを設け、前記照射面での光束の平行度を±ψ、前記球面鏡の曲率半径をRとしたときに、前記絞りの半径rを、
r≦R・tan(ψ/2)
としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の照射装置。
【請求項5】
前記フライアイレンズからの射出光束の拡がり角θ2が、前記照射面での照射エリアの対角方向の平行度±ψの絶対値ψに対し、(θ2/2)≦10・ψの関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−13459(P2012−13459A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148327(P2010−148327)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】