照明システム
【課題】交流電圧のゼロクロスを正確に検出し、得られたゼロクロス信号に基づき安定した位相制御による調光を行う照明システムを実現する。
【解決手段】降圧トランス12の二次側12bから低電圧に変換された直後の歪の少ない交流電圧のゼロクロスをゼロクロス検出器14で検出し、検出結果をゼロクロス信号として生成し、このゼロクロス信号を、送信機15を介して無線で光源の明るさを調光する調光制御部13側に送信する。調光制御部13では、ゼロクロス信号のタイミングに基づき、調光卓20からの調光信号で制御器19から調光卓20に対応の調光器211〜21nに入力される交流電圧の位相制御を行う信号を出力し、調光器211〜21nの出力に接続された光源221〜22nの調光を行う。
【解決手段】降圧トランス12の二次側12bから低電圧に変換された直後の歪の少ない交流電圧のゼロクロスをゼロクロス検出器14で検出し、検出結果をゼロクロス信号として生成し、このゼロクロス信号を、送信機15を介して無線で光源の明るさを調光する調光制御部13側に送信する。調光制御部13では、ゼロクロス信号のタイミングに基づき、調光卓20からの調光信号で制御器19から調光卓20に対応の調光器211〜21nに入力される交流電圧の位相制御を行う信号を出力し、調光器211〜21nの出力に接続された光源221〜22nの調光を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、劇場やテレビスタジオ等で使用される交流電源電圧の位相制御を行い、調光を行う照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、劇場やTVスタジオなどの、演出空間で使用される調光装置においては、数十台から数百台の照明器具が設置され、各照明器具に対応したサイリスタ調光器が接続されている。調光器には交流電圧のゼロクロス点が同期信号として入力され、ゼロクロス点を位相角の基準とし位相角制御信号によりサイリスタ素子の点弧位相角を決定し負荷の調光が行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−115430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テレビスタジオや劇場などの照明を調光させる場合は、ビル等に入力される高圧電源を光源点灯用の低電圧に電圧変換する位置から調光器に入力する位置までが数十mから百数十m程度に及ぶことから、交流電源装置のインピーダンスや照明システムまでの配線インピーダンスの影響により交流電源が歪んだり、電圧降下の発生により照明システムがゼロクロスを正常に検出できなくなかったりして誤点灯する、という問題があった。
【0005】
そこで、本発明は交流電源電圧のゼロクロス信号を正確に検出し、安定した位相制御による調光を行うことのできる照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明の照明システムの実施形態によれば、交流電源電圧のゼロクロスを検出し、ゼロクロス信号として生成するゼロクロス検出器と、前記ゼロクロス信号のタイミングおよび調光信号に基づいて前記交流電源電圧の位相制御を行い光源の調光電圧を得る調光制御部と、を備えた照明システムにおいて、前記ゼロクロス信号は、無線を用いて前記調光制御部に入力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、交流電源電圧の毎半サイクルのゼロクロスを正確に得ることができ、この結果、光源を調光信号に従って正しく調光点灯できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の照明システムに関する第1の実施形態について説明するための回路構成図である。
【図2】図1の要部のより具体的な構成図である。
【図3】図2の調光動作について説明するための説明図である。
【図4】第1の実施形態の効果について説明するための説明図である。
【図5】本発明の照明システムに関する第2の実施形態について説明するための回路構成図である。
【図6】三相4線式の各相の交流電圧波形について説明するための説明図である。
【図7】図5の要部のより具体的な構成図である。
【図8】ゼロクロス信号の送信データについて説明するための説明図である。
【図9】図8のアドレスデータについて説明するための説明図である。
【図10】光源を調光させるための調光出力について説明するための説明図である。
【図11】本発明の照明システムに関する第3の実施形態について説明するための回路構成図である。
【図12】第3の実施形態の効果について説明するための説明図である。
【図13】三相4線式にした場合の第3の実施形態の効果について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1〜図4は、照明システムに関する第1の実施形態について説明するためのもので、図1は概略的な回路構成図、図2は図1要部の具体的な構成図、図3は図2の動作について説明するための説明図、図4は第1の実施形態の効果について説明するための説明図である。
【0011】
図1において、11は、降圧トランス12の一次側12aに入力される商用周波数の例えば6.6kVの高圧の交流電源である。降圧トランス12では、例えば100Vの低電圧に電圧変換し、二次側12bから調光制御部13等の電源として出力する。さらに、二次側12bの交流電圧は、ゼロクロスを検出するゼロクロス検出器14に入力される。ゼロクロス検出器14は、トランス12の二次側12bから入力される正弦波の交流電圧V1(AC100V)のゼロクロスを検出する。このゼロクロス検出は、例えば交流電圧V1の絶対値が所定電圧以下であることを検知して動作するスイッチング回路を形成し、これらのスイッチング動作が切り換わるときを検出して行う。しかし、ゼロクロス検出器14は、前記のものに限定されるものではなく、各種のものを採用し得る。ゼロクロス検出器14で検出されたゼロクロス信号は、次段の送信機15に送られる。送信機15では、ゼロクロス信号をデジタル変換してゼロクロス信号するとともに、送信機能を使い送信アンテナ16を介して送信される。
【0012】
送信アンテナ16から送信されたゼロクロス信号は、受信アンテナ17を介して受信機18で受信され、調光制御部13のCPU等で具体化される制御器19に入力される。制御器19には調光操作を行う調光卓20からの0〜100%の調光信号がDMX形式で入力される。さらに、制御器19の出力からは、調光信号に基づく位相制御信号を出力し、n個の調光器211〜21nにそれぞれ入力される。調光器211〜21nの各出力は、対応の光源221〜22nにそれぞれ入力される。
【0013】
図2および図3を参照し、調光についての具体的な構成例について説明するが、ここでは代表として調光器211の構成例について説明する。
【0014】
図2において、降圧トランス12の二次側12bのAC100Vの一方は、電力線23aを介して、2つのサイリスタ24,25を逆極性で並列接続されたスイッチング回路とリアクタLの直列回路で構成される調光器211の入力側に接続される。調光器211の出力側は、光源221の一方の電極に接続される。光源221の他方の電極は、電力線23bを介してトランス12の二次側12bの他方に接続される。リアクタLは、サイリスタ24,25の点弧に伴う急峻な電流の立ち上がりを抑制して、劇場やテレビスタジオに併設される音響機器へのノイズ障害などを低減させるためのものである。
【0015】
ゼロクロス検出器14で検出されたゼロクロス信号と調光信号を入力し、ゼロクロス信号に同期した位相制御信号として出力する制御器19の出力は、ゲート電極が共通接続されたサイリスタ24,25に入力される。
【0016】
ここで、図3とともに図2の調光動作について説明する。図3(a)は、調光制御部13に入力される交流電圧aを示し、調光制御部13を駆動させる電源となる。降圧トランス12の二次側12b直後のAC100Vのゼロクロスがゼロクロス検出器14で検出された結果は、送信機15、受信機18を経由し、図3(b)に示すゼロクロス信号bとして制御器19に入力する。二次側12bの直後とは、ゼロクロス付近のゼロクロスを検出するために必要な特性の得られる歪の発生の少ない範囲を意味する。距離的にはせいぜい数m以内であることが好ましい。
【0017】
調光卓20の光源221用の図示しない操作子を操作して得られる調光信号と、ゼロクロス信号bのタイミングとに基づき制御器19から図3(c)に示す位相制御信号cが出力する。図3(d)は、制御器19から出力される位相制御信号cに基づき得られた調光器211の調光出力を示し、この出力で光源221を点灯させている。
【0018】
図3は、50%の調光例を挙げている。すなわち、ゼロクロス信号bを基準といて交流電圧aの半サイクルを時間tとした場合、50%の調光信号に基づき制御器19の出力から得られる位相制御信号cがゼロクロス信号bからt/2となるよう演算するように、制御器19は予めプログラミングされている。
【0019】
制御器19の出力からは交流電圧aの半サイクルの中間部分で立ち上がる位相制御信号cを、サイリスタ24,25のゲート電極に入力している。サイリスタ24はアノード・カソード電極間に電流を流し、交流電圧aのゼロクロス点まで調光器211の出力から図3(d)に示す電圧を出力し、サイリスタ24はオフする。同様に、制御器19から次の位相制御信号cがサイリスタ24,25のゲート電極に入力されると、サイリスタ25がオンしてアノード・カソード電極間に電流を流し、交流電圧aのゼロクロス点まで調光器211の出力から図3(d)に示す電圧を出力し、サイリスタ25はオフする。以降同様の動作を半サイクル毎に繰り返す。
【0020】
光源221の調光を変更したい場合は、調光卓20の光源221に対応する操作子を操作し、制御器19の位相制御信号cの発生のタイミングをゼロクロス信号bに対して変更することで0〜100%の調光が可能となる。
【0021】
図4は、この実施形態の効果について説明するためのもので、図4(a)の破線は並列に分岐して設けられた負荷の投入や変動等により電圧波形が歪んだ場合に電力線23a,23bを介して調光制御部13に入力される交流電圧波形の一例を、実線は降圧トランス12の二次側12b直後の交流電圧波形をそれぞれ示している。
【0022】
調光制御部13に入力される交流電圧のゼロクロスを検出した場合は、図4(c)に示すようにゼロクロス点が複数回検出される。この検出結果に基づき調光した場合は、ゼロクロスを正常に検出できなくなかったり、ちらついたりして誤点灯が生じることとなる。これに対し、歪の少ない降圧トランス12の二次側12b直後の交流電圧のゼロクロスを検出した場合は、ゼロクロス検出器14が図4(b)に示すように確実にゼロクロスを検出し、安定した位相制御による調光を行うことができる。
【0023】
この実施形態では、電源インピーダンスや配線インピーダンスの影響あるいは負荷側の影響を受けない安定した交流電圧の得られる箇所で正常なゼロクロスを検出し、検出されたゼロクロス信号を無線で送信することにより、誤点灯を防止することが可能となる。また、調光制御部13側における電源歪みを取り除くフィルタ回路が不要となる。
【0024】
(第2の実施形態)
図5〜図10は、照明システムに関する第2の実施形態について説明するためのもので、図5は回路構成図、図6はゼロクロス信号の送信データについて説明するための説明図、図7は図5要部のより具体的な構成図、図8は図三相のゼロクロス信号について説明するための説明図、図9は図8の三相のアドレスについて説明するための説明図、図10は光源を調光させるための調光出力について説明するための説明図である。なお、以下の各実施形態において、上記した第1の実施形態と同一または対応する構成部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0025】
この実施形態は、三相4線式によるR,S,Tの各相の位相が図6に示すように120度順次ずらし、各相が例えば200Vの商用周波数の電圧を出力し、調光制御部13の各調光器211〜21nに入力される。調光制御部13では、R,S,T相毎に、調光卓20の操作子による調光信号にそれぞれ対応した光源221〜22nの調光が行われる。
【0026】
図7に調光器211の具体的な構成例を示す。三相4線式の交流電圧が入力される調光制御部13の調光器211のR相はR調光器211rに、S相はS調光器211sに、T相はT調光器211tにそれぞれ入力される。図6に示すR,S,T相のゼロクロスをゼロクロス検出器14でそれぞれ検出する。なお、他の調光器212〜21nも同じように構成されている。
【0027】
ゼロクロス検出器14で検出された、R,S,T相のそれぞれのゼロクロス信号は、送信機15に送られる。送信機15では、図8に示すように、各相のアドレスとゼロクロス信号がシリアルデータに変換され、送信アンテナ16を介して送信される。送信されたゼロクロス信号は、受信アンテナ17を介して受信機18で受信し、シリアルデータをパラレルデータに変換し、制御器19に入力する。各相のアドレスは、例えば図9に示す2ビットでR,S,T相のいずれのゼロクロス信号であるかを識別できるようにデータ化してある。
【0028】
制御器19では、パラレルデータに変換されたR,S,T相の各ゼロクロス信号と調光卓20の調光信号から位相制御信号を調光器211〜21nにそれぞれ出力する。調光器211のR調光器211rに対しては、例えば30%の調光信号が操作卓20から制御器19に入力された場合、R調光器211rから図10(b)に示す電圧を光源221に出力し、光源221を30%の調光で点灯する。調光器211のS調光器211sに対しては、例えば70%の調光信号が操作卓20から制御器19に入力された場合、S調光器211sから図10(c)に示す電圧を光源222に出力し、光源222を70%の調光で点灯する。さらに、調光器211のT調光器211tに対しては、例えば50%の調光信号が操作卓20から制御器19に入力された場合、T調光器211tから図10(d)に示す電圧を光源223に出力し、光源223を50%の調光で点灯する。
【0029】
同様にして、調光器212のR,S,Tの各調光器の出力に接続された光源の調光を何%にするかに応じて、調光卓20の光源に対応する操作子を操作することにより、操作子の調光信号とR,S,T相の各ゼロクロス信号のタイミングに基づき、対応の光源に対する調光を行うことができる。
【0030】
この実施形態では、電力損失が低減できたり、同じ電力の配電のための電線路の数や太さを減らせたりする等の三相4線式の特徴を生かしながら、電源インピーダンスや配線インピーダンスの影響を受けない安定した交流電圧の得られる箇所で正常なゼロクロスを検出し、検出されたゼロクロス信号を無線で送信することにより、誤点灯を防止することが可能となる。
【0031】
(第3の実施形態)
図11、図12は、照明システムに関する第3の実施形態について説明するためのもので、図11は回路構成図、図12はこの実施形態の効果について説明するための説明図である。
【0032】
この実施形態は、電力会社から給電され、降圧トランス12の一次側12aに入力される低電流で6.6kVの高圧の商用交流電圧のゼロクロスを、ゼロクロス検出器14で検出し、検出結果をゼロクロス信号として生成し、このゼロクロス信号を調光制御部13に送信するようにしたものである。そして本実施形態は降圧トランス12の容量が相対的に小さく負荷側の電源電圧波形歪が二次側12bの直後にも発生し易い場合に好適である。
【0033】
図12(a)は降圧トランス12の一次側12aの電圧波形を、図12(b)は降圧トランス12の二次側12bの電圧波形をそれぞれ示している。なお、一次側12aは例えば6.6kVの交流電源で、二次側12bは例えば100Vの交流電源であるが、ゼロクロス検出器14に入力される交流電圧としては同値として示している。
【0034】
図12(b)に示すように、並列分離して設けられた光源としての電球が矢印Pの位相で、点灯開始されると、過大なラッシュ電流かが流れ、矢印Pで示す箇所に歪が発生する。このことから、ゼロクロス検出器12が誤検出し、図12(c)に示すように、調光出力レベルが低下し、本来意図する調光状態とならない可能性がある。
【0035】
その点、図12(a)に示すように、降圧トランス12の一次側12aの交流電圧は、歪の少ない正弦波のゼロクロスを検出している。従って、調光出力は、所望のレベルとなり調光卓20の操作者の意図する調光で光源を点灯させることができる。
【0036】
このように、低電流で高圧の電力会社から入力される特性の優れた商用電源電圧のゼロクロスを、ゼロクロス信号として生成し、調光器に入力することができる。このため、負荷側で発生する歪の影響を受けない交流電圧から正確なゼロクス信号を検出することができ、より安定した位相制御による調光を実現することが可能となる。
【0037】
この実施形態では、第1および第2の実施形態に比して、さらに降圧トランスの二次側の歪の影響を抑えた分、さらに安定した調光を実現することができる。
【0038】
なお、この第3の実施形態では、単相2線式の送配電による例を挙げたが、三相4線式であっても低電圧に電圧変換される前の交流電圧のゼロクロスを検出した場合に適用可能であり、同様の効果を奏する。
【0039】
図13に示すように、同相の多数の調光器を特にランプが冷えているときに、同じ点弧タイミングで点灯すると、突入電流が流れて電源が歪むためゼロクロス信号検出がずれることがある。すなわち、図13(a)は照明トランスの一次側の電圧波形を、図13(b)はR相の調光出力の点弧タイミングがS相のゼロ点と重なった場合に、図13(c)に示す照明トランスの二次側S相電源のゼロ点が歪み、結果S相のゼロクロス信号がずれることを示している。
【0040】
従って、低電流で高圧の電力会社から供給される特性の優れた三相4線式の商用電源電圧を用いた場合でも、負荷側で発生する歪の影響を受けない交流電圧から正確なゼロクス信号を検出し無線で送信することで、より安定した位相制御による調光を実現することが可能となる。
【0041】
上記した各実施形態での調光器は、逆方向に並列接続されたサイリスタを用いたが、制御器からの出力を、調光信号に基づきパルス幅を変えて交流電圧のスイッチングを行う、いわゆるPWM制御による調光等でも構わない。また、調光器のスイッチング素子としてサイリスタとしたが、トライアックやFET等の他のスイッチング素子を用いても構わない。
【0042】
また、光源は、電球の他にLED、放電灯、有機EL等であっても構わない。
【0043】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
11 交流電源
12 降圧トランス
12a 一次側
12b 二次側
13 調光制御部
14 ゼロクロス検出器
15 送信機
18 受信機
19 制御器
20 調光卓
211〜21n 調光器
221〜22n 光源
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、劇場やテレビスタジオ等で使用される交流電源電圧の位相制御を行い、調光を行う照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、劇場やTVスタジオなどの、演出空間で使用される調光装置においては、数十台から数百台の照明器具が設置され、各照明器具に対応したサイリスタ調光器が接続されている。調光器には交流電圧のゼロクロス点が同期信号として入力され、ゼロクロス点を位相角の基準とし位相角制御信号によりサイリスタ素子の点弧位相角を決定し負荷の調光が行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−115430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テレビスタジオや劇場などの照明を調光させる場合は、ビル等に入力される高圧電源を光源点灯用の低電圧に電圧変換する位置から調光器に入力する位置までが数十mから百数十m程度に及ぶことから、交流電源装置のインピーダンスや照明システムまでの配線インピーダンスの影響により交流電源が歪んだり、電圧降下の発生により照明システムがゼロクロスを正常に検出できなくなかったりして誤点灯する、という問題があった。
【0005】
そこで、本発明は交流電源電圧のゼロクロス信号を正確に検出し、安定した位相制御による調光を行うことのできる照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明の照明システムの実施形態によれば、交流電源電圧のゼロクロスを検出し、ゼロクロス信号として生成するゼロクロス検出器と、前記ゼロクロス信号のタイミングおよび調光信号に基づいて前記交流電源電圧の位相制御を行い光源の調光電圧を得る調光制御部と、を備えた照明システムにおいて、前記ゼロクロス信号は、無線を用いて前記調光制御部に入力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、交流電源電圧の毎半サイクルのゼロクロスを正確に得ることができ、この結果、光源を調光信号に従って正しく調光点灯できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の照明システムに関する第1の実施形態について説明するための回路構成図である。
【図2】図1の要部のより具体的な構成図である。
【図3】図2の調光動作について説明するための説明図である。
【図4】第1の実施形態の効果について説明するための説明図である。
【図5】本発明の照明システムに関する第2の実施形態について説明するための回路構成図である。
【図6】三相4線式の各相の交流電圧波形について説明するための説明図である。
【図7】図5の要部のより具体的な構成図である。
【図8】ゼロクロス信号の送信データについて説明するための説明図である。
【図9】図8のアドレスデータについて説明するための説明図である。
【図10】光源を調光させるための調光出力について説明するための説明図である。
【図11】本発明の照明システムに関する第3の実施形態について説明するための回路構成図である。
【図12】第3の実施形態の効果について説明するための説明図である。
【図13】三相4線式にした場合の第3の実施形態の効果について説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1〜図4は、照明システムに関する第1の実施形態について説明するためのもので、図1は概略的な回路構成図、図2は図1要部の具体的な構成図、図3は図2の動作について説明するための説明図、図4は第1の実施形態の効果について説明するための説明図である。
【0011】
図1において、11は、降圧トランス12の一次側12aに入力される商用周波数の例えば6.6kVの高圧の交流電源である。降圧トランス12では、例えば100Vの低電圧に電圧変換し、二次側12bから調光制御部13等の電源として出力する。さらに、二次側12bの交流電圧は、ゼロクロスを検出するゼロクロス検出器14に入力される。ゼロクロス検出器14は、トランス12の二次側12bから入力される正弦波の交流電圧V1(AC100V)のゼロクロスを検出する。このゼロクロス検出は、例えば交流電圧V1の絶対値が所定電圧以下であることを検知して動作するスイッチング回路を形成し、これらのスイッチング動作が切り換わるときを検出して行う。しかし、ゼロクロス検出器14は、前記のものに限定されるものではなく、各種のものを採用し得る。ゼロクロス検出器14で検出されたゼロクロス信号は、次段の送信機15に送られる。送信機15では、ゼロクロス信号をデジタル変換してゼロクロス信号するとともに、送信機能を使い送信アンテナ16を介して送信される。
【0012】
送信アンテナ16から送信されたゼロクロス信号は、受信アンテナ17を介して受信機18で受信され、調光制御部13のCPU等で具体化される制御器19に入力される。制御器19には調光操作を行う調光卓20からの0〜100%の調光信号がDMX形式で入力される。さらに、制御器19の出力からは、調光信号に基づく位相制御信号を出力し、n個の調光器211〜21nにそれぞれ入力される。調光器211〜21nの各出力は、対応の光源221〜22nにそれぞれ入力される。
【0013】
図2および図3を参照し、調光についての具体的な構成例について説明するが、ここでは代表として調光器211の構成例について説明する。
【0014】
図2において、降圧トランス12の二次側12bのAC100Vの一方は、電力線23aを介して、2つのサイリスタ24,25を逆極性で並列接続されたスイッチング回路とリアクタLの直列回路で構成される調光器211の入力側に接続される。調光器211の出力側は、光源221の一方の電極に接続される。光源221の他方の電極は、電力線23bを介してトランス12の二次側12bの他方に接続される。リアクタLは、サイリスタ24,25の点弧に伴う急峻な電流の立ち上がりを抑制して、劇場やテレビスタジオに併設される音響機器へのノイズ障害などを低減させるためのものである。
【0015】
ゼロクロス検出器14で検出されたゼロクロス信号と調光信号を入力し、ゼロクロス信号に同期した位相制御信号として出力する制御器19の出力は、ゲート電極が共通接続されたサイリスタ24,25に入力される。
【0016】
ここで、図3とともに図2の調光動作について説明する。図3(a)は、調光制御部13に入力される交流電圧aを示し、調光制御部13を駆動させる電源となる。降圧トランス12の二次側12b直後のAC100Vのゼロクロスがゼロクロス検出器14で検出された結果は、送信機15、受信機18を経由し、図3(b)に示すゼロクロス信号bとして制御器19に入力する。二次側12bの直後とは、ゼロクロス付近のゼロクロスを検出するために必要な特性の得られる歪の発生の少ない範囲を意味する。距離的にはせいぜい数m以内であることが好ましい。
【0017】
調光卓20の光源221用の図示しない操作子を操作して得られる調光信号と、ゼロクロス信号bのタイミングとに基づき制御器19から図3(c)に示す位相制御信号cが出力する。図3(d)は、制御器19から出力される位相制御信号cに基づき得られた調光器211の調光出力を示し、この出力で光源221を点灯させている。
【0018】
図3は、50%の調光例を挙げている。すなわち、ゼロクロス信号bを基準といて交流電圧aの半サイクルを時間tとした場合、50%の調光信号に基づき制御器19の出力から得られる位相制御信号cがゼロクロス信号bからt/2となるよう演算するように、制御器19は予めプログラミングされている。
【0019】
制御器19の出力からは交流電圧aの半サイクルの中間部分で立ち上がる位相制御信号cを、サイリスタ24,25のゲート電極に入力している。サイリスタ24はアノード・カソード電極間に電流を流し、交流電圧aのゼロクロス点まで調光器211の出力から図3(d)に示す電圧を出力し、サイリスタ24はオフする。同様に、制御器19から次の位相制御信号cがサイリスタ24,25のゲート電極に入力されると、サイリスタ25がオンしてアノード・カソード電極間に電流を流し、交流電圧aのゼロクロス点まで調光器211の出力から図3(d)に示す電圧を出力し、サイリスタ25はオフする。以降同様の動作を半サイクル毎に繰り返す。
【0020】
光源221の調光を変更したい場合は、調光卓20の光源221に対応する操作子を操作し、制御器19の位相制御信号cの発生のタイミングをゼロクロス信号bに対して変更することで0〜100%の調光が可能となる。
【0021】
図4は、この実施形態の効果について説明するためのもので、図4(a)の破線は並列に分岐して設けられた負荷の投入や変動等により電圧波形が歪んだ場合に電力線23a,23bを介して調光制御部13に入力される交流電圧波形の一例を、実線は降圧トランス12の二次側12b直後の交流電圧波形をそれぞれ示している。
【0022】
調光制御部13に入力される交流電圧のゼロクロスを検出した場合は、図4(c)に示すようにゼロクロス点が複数回検出される。この検出結果に基づき調光した場合は、ゼロクロスを正常に検出できなくなかったり、ちらついたりして誤点灯が生じることとなる。これに対し、歪の少ない降圧トランス12の二次側12b直後の交流電圧のゼロクロスを検出した場合は、ゼロクロス検出器14が図4(b)に示すように確実にゼロクロスを検出し、安定した位相制御による調光を行うことができる。
【0023】
この実施形態では、電源インピーダンスや配線インピーダンスの影響あるいは負荷側の影響を受けない安定した交流電圧の得られる箇所で正常なゼロクロスを検出し、検出されたゼロクロス信号を無線で送信することにより、誤点灯を防止することが可能となる。また、調光制御部13側における電源歪みを取り除くフィルタ回路が不要となる。
【0024】
(第2の実施形態)
図5〜図10は、照明システムに関する第2の実施形態について説明するためのもので、図5は回路構成図、図6はゼロクロス信号の送信データについて説明するための説明図、図7は図5要部のより具体的な構成図、図8は図三相のゼロクロス信号について説明するための説明図、図9は図8の三相のアドレスについて説明するための説明図、図10は光源を調光させるための調光出力について説明するための説明図である。なお、以下の各実施形態において、上記した第1の実施形態と同一または対応する構成部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0025】
この実施形態は、三相4線式によるR,S,Tの各相の位相が図6に示すように120度順次ずらし、各相が例えば200Vの商用周波数の電圧を出力し、調光制御部13の各調光器211〜21nに入力される。調光制御部13では、R,S,T相毎に、調光卓20の操作子による調光信号にそれぞれ対応した光源221〜22nの調光が行われる。
【0026】
図7に調光器211の具体的な構成例を示す。三相4線式の交流電圧が入力される調光制御部13の調光器211のR相はR調光器211rに、S相はS調光器211sに、T相はT調光器211tにそれぞれ入力される。図6に示すR,S,T相のゼロクロスをゼロクロス検出器14でそれぞれ検出する。なお、他の調光器212〜21nも同じように構成されている。
【0027】
ゼロクロス検出器14で検出された、R,S,T相のそれぞれのゼロクロス信号は、送信機15に送られる。送信機15では、図8に示すように、各相のアドレスとゼロクロス信号がシリアルデータに変換され、送信アンテナ16を介して送信される。送信されたゼロクロス信号は、受信アンテナ17を介して受信機18で受信し、シリアルデータをパラレルデータに変換し、制御器19に入力する。各相のアドレスは、例えば図9に示す2ビットでR,S,T相のいずれのゼロクロス信号であるかを識別できるようにデータ化してある。
【0028】
制御器19では、パラレルデータに変換されたR,S,T相の各ゼロクロス信号と調光卓20の調光信号から位相制御信号を調光器211〜21nにそれぞれ出力する。調光器211のR調光器211rに対しては、例えば30%の調光信号が操作卓20から制御器19に入力された場合、R調光器211rから図10(b)に示す電圧を光源221に出力し、光源221を30%の調光で点灯する。調光器211のS調光器211sに対しては、例えば70%の調光信号が操作卓20から制御器19に入力された場合、S調光器211sから図10(c)に示す電圧を光源222に出力し、光源222を70%の調光で点灯する。さらに、調光器211のT調光器211tに対しては、例えば50%の調光信号が操作卓20から制御器19に入力された場合、T調光器211tから図10(d)に示す電圧を光源223に出力し、光源223を50%の調光で点灯する。
【0029】
同様にして、調光器212のR,S,Tの各調光器の出力に接続された光源の調光を何%にするかに応じて、調光卓20の光源に対応する操作子を操作することにより、操作子の調光信号とR,S,T相の各ゼロクロス信号のタイミングに基づき、対応の光源に対する調光を行うことができる。
【0030】
この実施形態では、電力損失が低減できたり、同じ電力の配電のための電線路の数や太さを減らせたりする等の三相4線式の特徴を生かしながら、電源インピーダンスや配線インピーダンスの影響を受けない安定した交流電圧の得られる箇所で正常なゼロクロスを検出し、検出されたゼロクロス信号を無線で送信することにより、誤点灯を防止することが可能となる。
【0031】
(第3の実施形態)
図11、図12は、照明システムに関する第3の実施形態について説明するためのもので、図11は回路構成図、図12はこの実施形態の効果について説明するための説明図である。
【0032】
この実施形態は、電力会社から給電され、降圧トランス12の一次側12aに入力される低電流で6.6kVの高圧の商用交流電圧のゼロクロスを、ゼロクロス検出器14で検出し、検出結果をゼロクロス信号として生成し、このゼロクロス信号を調光制御部13に送信するようにしたものである。そして本実施形態は降圧トランス12の容量が相対的に小さく負荷側の電源電圧波形歪が二次側12bの直後にも発生し易い場合に好適である。
【0033】
図12(a)は降圧トランス12の一次側12aの電圧波形を、図12(b)は降圧トランス12の二次側12bの電圧波形をそれぞれ示している。なお、一次側12aは例えば6.6kVの交流電源で、二次側12bは例えば100Vの交流電源であるが、ゼロクロス検出器14に入力される交流電圧としては同値として示している。
【0034】
図12(b)に示すように、並列分離して設けられた光源としての電球が矢印Pの位相で、点灯開始されると、過大なラッシュ電流かが流れ、矢印Pで示す箇所に歪が発生する。このことから、ゼロクロス検出器12が誤検出し、図12(c)に示すように、調光出力レベルが低下し、本来意図する調光状態とならない可能性がある。
【0035】
その点、図12(a)に示すように、降圧トランス12の一次側12aの交流電圧は、歪の少ない正弦波のゼロクロスを検出している。従って、調光出力は、所望のレベルとなり調光卓20の操作者の意図する調光で光源を点灯させることができる。
【0036】
このように、低電流で高圧の電力会社から入力される特性の優れた商用電源電圧のゼロクロスを、ゼロクロス信号として生成し、調光器に入力することができる。このため、負荷側で発生する歪の影響を受けない交流電圧から正確なゼロクス信号を検出することができ、より安定した位相制御による調光を実現することが可能となる。
【0037】
この実施形態では、第1および第2の実施形態に比して、さらに降圧トランスの二次側の歪の影響を抑えた分、さらに安定した調光を実現することができる。
【0038】
なお、この第3の実施形態では、単相2線式の送配電による例を挙げたが、三相4線式であっても低電圧に電圧変換される前の交流電圧のゼロクロスを検出した場合に適用可能であり、同様の効果を奏する。
【0039】
図13に示すように、同相の多数の調光器を特にランプが冷えているときに、同じ点弧タイミングで点灯すると、突入電流が流れて電源が歪むためゼロクロス信号検出がずれることがある。すなわち、図13(a)は照明トランスの一次側の電圧波形を、図13(b)はR相の調光出力の点弧タイミングがS相のゼロ点と重なった場合に、図13(c)に示す照明トランスの二次側S相電源のゼロ点が歪み、結果S相のゼロクロス信号がずれることを示している。
【0040】
従って、低電流で高圧の電力会社から供給される特性の優れた三相4線式の商用電源電圧を用いた場合でも、負荷側で発生する歪の影響を受けない交流電圧から正確なゼロクス信号を検出し無線で送信することで、より安定した位相制御による調光を実現することが可能となる。
【0041】
上記した各実施形態での調光器は、逆方向に並列接続されたサイリスタを用いたが、制御器からの出力を、調光信号に基づきパルス幅を変えて交流電圧のスイッチングを行う、いわゆるPWM制御による調光等でも構わない。また、調光器のスイッチング素子としてサイリスタとしたが、トライアックやFET等の他のスイッチング素子を用いても構わない。
【0042】
また、光源は、電球の他にLED、放電灯、有機EL等であっても構わない。
【0043】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
11 交流電源
12 降圧トランス
12a 一次側
12b 二次側
13 調光制御部
14 ゼロクロス検出器
15 送信機
18 受信機
19 制御器
20 調光卓
211〜21n 調光器
221〜22n 光源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源電圧のゼロクロスを検出し、ゼロクロス信号として生成するゼロクロス検出器と、
前記ロクロス信号のタイミングおよび調光信号に基づいて前記交流電源電圧の位相制御を行い光源の調光電圧を得る調光制御部と、を備えた照明システムにおいて、
前記ゼロクロス信号は、無線を用いて前記調光制御部に入力することを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記交流電源電圧のゼロクロスを検出箇所は、高電圧を光源点灯用の低電圧に電圧変換するトランスの一次側または二次側であることを特徴とする請求項1記載の照明システム。
【請求項1】
交流電源電圧のゼロクロスを検出し、ゼロクロス信号として生成するゼロクロス検出器と、
前記ロクロス信号のタイミングおよび調光信号に基づいて前記交流電源電圧の位相制御を行い光源の調光電圧を得る調光制御部と、を備えた照明システムにおいて、
前記ゼロクロス信号は、無線を用いて前記調光制御部に入力することを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記交流電源電圧のゼロクロスを検出箇所は、高電圧を光源点灯用の低電圧に電圧変換するトランスの一次側または二次側であることを特徴とする請求項1記載の照明システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−181934(P2012−181934A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42216(P2011−42216)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】
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