説明

照明器具付きエスカレータ装置

【課題】照明器具の球切れが生じたときに、それを速やかに確認することができるとともに、その復旧作業を脚立や足場などを用いることなく、容易に能率よく安全に行なうことができる照明器具付きエスカレータ装置を提供する。
【解決手段】エスカレータ1a,1bの底部の外装体15に、その外装体15の下方を照明するための照明器具16が設けられる照明器具付きエスカレータ装置において、照明器具16の球切れを検知し、その情報をエスカレータの管理センター22に送信して報知することが可能な検知報知手段と、照明器具16を外装体の外部外方へ移動させることが可能な移動手段と、移動手段を遠隔操作で動作させることが可能なリモコン30とを備え、照明器具16に球切れが生じたときには、リモコン30を用いて照明器具16を外装体15の下方の位置まで突出移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、エスカレータの下部を覆う外装体に照明器具が設けられた照明器具付きエスカレータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、建屋の上下の階床間にトラス構造の主枠が据え付けられ、その主枠内に、無端状に連結された多数の踏段が収納され、その踏段が建屋の上下の階床間で無限循環移動する。踏段は駆動装置により駆動されて無限循環移動し、その踏段の上に乗った乗客が下階側の階床から上階側の階床に、あるいは上階側の階床から下階側の階床に搬送される。
【0003】
エレベータの主枠が各階間に据え付けられ、そのトラス構造の主枠の下部周辺が下階側の天井部に露出する場合には、その主枠の下部周辺が外装体で覆われる。そしてその外装体に、その下方側を照明する照明器具が設置される場合がある。照明器具は主として外装体の底面部に複数設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−189478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような照明器具付きのエスカレータにおいては、その照明器具の光源が寿命や故障で点灯不能となる、いわゆる球切れが生じ、このような球切れが生じるとエスカレータの下方側の照度が不足し、薄暗くなってしまう。
【0006】
従来、球切れが生じたときには、係員による目視によりそれが確認され、所定の対応が採られる。しかしながら、目視により確認されるまでは球切れがそのまま放置され、したがって照度不足が長時間に渡って継続してしまうことがある。
【0007】
球切れが係員により確認されたときには、エスカレータの下方側に係員が脚立や足場を運び込み、その脚立や足場に足を掛けて乗り、高所位置にある照明器具のカバーを開いたり分解したりして光源の交換を行なって復旧させる。
【0008】
このように、従来においては、係員の目視に頼っているため、照明器具の球切れを速やかに確認することが難しく、またその復旧にあたっては脚立や足場などを持ち込む高所作業となるため多大な労力と時間を要するという課題がある。特に、エスカレータが上下複数段に配置され、その上側のエスカレータの照明器具が球切れを起したときには、下側のエスカレータの踏段の上に係員が脚立や足場を設置して上側のエスカレータの照明器具を点検することになるため、安全作業のための所要時間が長くなり、さらに下側のエスカレータの踏段が不用意に移動することがあれば、不測の危険を招く恐れがある。
【0009】
この発明の実施形態は、照明器具の球切れが生じたときに、それを速やかに確認することができるとともに、その復旧作業を脚立や足場などを用いることなく、容易に能率よく安全に行なうことができる照明器具付きエスカレータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、請求項1の発明は、エスカレータの底部の外装体に、その外装体の下方を照明するための照明器具が設けられる照明器具付きエスカレータ装置において、前記照明器具の点灯機能の良否を検知し、その情報をエスカレータの管理センターに送信して報知することが可能な検知報知手段と、前記照明器具を前記外装体の外部外方へ移動させることが可能な移動手段と、前記移動手段を遠隔操作で動作させることが可能な遠隔操作手段とを備えることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明は、前記エスカレータは少なくとも上下二段に配置され、その下側のエスカレータの運転時には、前記遠隔操作手段の機能を無効にし、前記下側のエスカレータの運転停止時にのみに前記遠隔操作手段による遠隔操作を可能にする安全機構を備えることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態に係るエスカレータ装置の全体の構成を示す側面図。
【図2】そのエスカレータ装置における外装体の下面図。
【図3】そのエスカレータ装置における照明器具の設置部分の断面図。
【図4】そのエスカレータ装置における遠隔操作用のリモコンを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1には、建屋の階床間に上下二段に据え付けられたエスカレータ1a,1bの全体の構成を示してある。エスカレータ1a,1bは、建屋の下階と上階との間に亘って据え付けられた主枠(トラス)2を備え、この主枠2の内部にチェーン3を介して無端状に連結された多数の踏段4が収納されている。
【0015】
主枠2の上階側端部内には駆動輪5が、下階側端部内には従動輪6がそれぞれ回転自在に設けられ、踏段4のチェーン3がその駆動輪5と従動輪6との間に掛け渡され、駆動輪5が駆動装置7により駆動されて回転することで、チェーン3と一体的に各踏段4が無限循環移動し、その踏段4に乗った乗客が建屋の下階から上階に、あるいは上階から下階に搬送される。
【0016】
主枠2の両側上部には、主枠2の長手方向に沿って欄干10が取り付けられている。欄干10の縁部には無端状の手すりベルト11が装着され、この手すりベルト11が欄干10の縁部に沿って踏段4と同じ速度で同じ方向に移動する。
【0017】
各主枠2の下部は、その下階側の天井部に露出し、その露出する各主枠2の下部周辺がボックス状の外装体15で覆われている。外装体15の底面部には、その下方を照明するための照明器具16が設けられている。照明器具16は、図2に示すように、外装体15の長手方向に沿ってほぼ均等的に並ぶように複数設けられている。
【0018】
図3には照明器具16の構造を示してある。各照明器具16は、下面開放の扁平箱形状のケース17を備え、このケース17内に光源として例えば直管形の蛍光ランプ18が並列して複数収納されている。各蛍光ランプ18は、ケース17内に設けられたソケット台19にそれぞれ脱着可能に装着されている。ケース17の下面の開放部には、透光性材料で形成されたカバー20が開閉可能に取り付けられ、このカバー20を開くことで各蛍光ランプ18の点検や交換を行なうことができるようになっている。
【0019】
各照明器具16には、各蛍光ランプ18の球切れなどによる機能不全を検知する保守センサ21が設けられている。そして、各照明器具16における保守センサ21の検知信号が各エスカレータ1a,1bを管理する管理センター22に送られ、その管理センター22において各照明器具16の点灯機能の良否つまり球切れの有無が監視されている。
【0020】
各照明器具16は移動機構24を介して外装体15内に支持されている。移動機構24は、例えば照明器具16のケース17の裏面に取り付けられた複数のロッド25と、これらロッド25を支持し、かつロッド25をその軸方向に駆動することが可能な駆動部26とで構成されている。駆動部26はフレーム27を介して外装体15の内部に取り付けられ、ロッド25は外装体15の底面と直角をなす軸方向に進退移動する。通常時には、各照明器具16は、カバー20が外装体15の底面とほぼ面一となる状態に保持されている。
【0021】
各移動機構24の駆動部26はリモコン30を用いて遠隔操作することが可能となっている。すなわち、リモコン30は、図4に示すように、発信部31及び受信部32並びに操作部33を有し、操作部33を操作することにより発信部31から所定の信号が発信される。
【0022】
各照明器具16には、リモコン30の発信部31から発信される信号を受信する受信部23が設けられ、これら受信部23が受信する信号に基づいてその受信部23を有する照明器具16における移動機構24の駆動部26が動作するようになっている。
【0023】
上下二段に配置されたエスカレータ1a,1bのうちの下段側のエスカレータ1bの外デッキには、このエスカレータ1bが運転動作中であるときにその信号を発信し、運転停止時には信号を発信しない運転発信部35が設けられている。そして、この運転発信部35が信号を発信するときに、リモコン30がエスカレータ1bの近傍位置まで近づいたときに、運転発信部35が発信する信号をリモコン30の受信部23が受信し、その受信に応じてリモコン30の操作部33の機能が無効となり、操作部33を操作してもリモコン30の発信部31からは信号が発信されないようになっている。
【0024】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0025】
各エスカレータ1a,1bが運転され、また各エスカレータ1a,1bの各照明器具16の蛍光ランプ18が点灯し、その点灯による光で各エスカレータ1a,1bの下方側が照明されている状態において、例えば上段側のエスカレータ1aの一つの照明器具16の蛍光ランプ18が球切れを起して消灯したときには、その球切れが保守センサ21により検知され、その信号が管理センター22に送られ、球切れの発生が報知される。
【0026】
したがって、管理センター22の係員が球切れの発生を速やかに知ることができる。そして、この球切れの報知に応じて管理センター22の係員がリモコン30を携帯してエスカレータ1aの下側の位置に出向き、リモコン30の操作部33を操作して発信部31から球切れを起した照明器具16に向けて信号を送る。
【0027】
このとき、エスカレータ1bが運転中であると、運転発信部35から発信される信号によりリモコン30の操作部33の操作が無効となっているから、係員はエスカレータ1bの運転スイッチを切り、エスカレータ1bの運転を停止させ、この状態でリモコン30の操作部33を操作する。この操作に応じてリモコン30の発信部31から所定の信号が発信され、この信号に基づいて球切れを起した照明器具16における移動機構24の駆動部26が動作する。この駆動部26の動作で、照明器具16がエスカレータ1aの外装体15の底面外方側つまり下側のエスカレータ1bに近づく下方側の位置にまで移動する。
【0028】
したがって、係員は下側のエスカレータ1bの踏段4の上に乗るだけで、脚立や足場を用いることなく照明器具16に直接手が届き、その照明器具16を容易に能率よく点検することができる。
【0029】
この点検にあたっては、踏段4の上に乗った係員が照明器具16のカバー20を開き、ケース17内を点検し、球切れを起した蛍光ランプ18を新たな蛍光ランプ18と交換し、カバー20を閉じる。そしてこの後、リモコン30の操作部33を操作し、移動機構24を動作させて照明器具16を元位置に戻す。
【0030】
ところで、リモコン30は、エスカレータ1bが運転中のときには、操作部33の機能が無効となっているから有効に使用することができない。もし、エスカレータ1bが運転されている状態のもとで、リモコン30を操作して上側のエスカレータ1aの照明器具16を下側のエスカレータ1bに近づく下側に突出させることが可能であると、そのエスカレータ1bに乗客が乗っているようなときに、その乗客に照明器具16が当って不測の危険を招く恐れがあり、またエスカレータ1bの踏段4に係員が乗って照明器具16を点検するときに、その踏段4と共に係員が移動してしまうため点検することが困難であるばかりでなく不測の危険を招く恐れがあるが、このような不都合を本実施形態では解消することができる。
【0031】
一方、下側のエスカレータ1bにおける照明器具16に球切れが生じたときには、上側のエスカレータ1aの場合と同様に、その球切れが保守センサ21により検知され、その信号が管理センター22に送られ、球切れの発生が報知される。したがって、球切れの発生を速やかに知ることができる。
【0032】
そして、この球切れの報知に応じて管理センター22の係員がリモコン30を携帯してエスカレータ1bの下側のフロア位置に出向き、リモコン30を操作し、球切れを起した照明器具16における移動機構24の駆動部26を動作させて照明器具16をエスカレータ1bの外装体15の底面外方側つまりエスカレータ1bの下側のフロアに近づく位置にまで移動させる。したがって、係員はエスカレータ1bの下側のフロアに立って、脚立や足場を用いることなく、照明器具16を容易に能率よく点検することができる。
【0033】
エスカレータ1bの下側のフロアには、エスカレータ1bの運転発信部35の信号は及ばず、したがってエスカレータ1bの照明器具16の点検に当っては、そのエスカレータ1bの運転の有無にかかわらず、リモコン30を使用してその照明器具16を移動させることができる。
【0034】
なお、前記実施形態は、エスカレータが上下二段に配置される場合の例であるが、上下三段やそれ以上の段数で配置される場合、あるいはエスカレータが別々の場所に個々に配置される場合であってもよい。エスカレータが個々に配置される場合には、そのエスカレータにおける照明器具の移動機構を操作するリモコンは、他のエスカレータの運転状況に関係なく操作することができるように構成される。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、照明器具の球切れが生じたときに、それを速やかに確認することができるとともに、その復旧作業を脚立や足場などを用いることなく、容易に能率よく安全に行なうことができる。そして、上下二段にエスカレータが配置され、その上段のエスカレータの照明器具に球切れが生じ、リモコンを用いてその照明器具を移動させようとするときに、下側のエスカレータが運転中であると、リモコンの機能が無効であるかとから、係員が下側のエスカレータの運転スイッチを切って停止させ、この状態でリモコンを操作し、照明器具16を移動させて点検することとなり、安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0036】
1a.1b…エスカレータ
2…主枠
4…踏段
15…外装体
16…照明器具
17…ケース
18…蛍光ランプ
20…カバー
21…保守センサ
22…管理センター
23…受信部
24…移動機構
25…ロッド
26…駆動部
30…リモコン
31…発信部
32…受信部
33…操作部
35…運転発信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータの底部の外装体に、その外装体の下方を照明するための照明器具が設けられる照明器具付きエスカレータ装置において、
前記照明器具の点灯機能の良否を検知し、その情報をエスカレータの管理センターに送信して報知することが可能な検知報知手段と、
前記照明器具を前記外装体の外部外方へ移動させることが可能な移動手段と、
前記移動手段を遠隔操作で動作させることが可能な遠隔操作手段と、
を備えることを特徴とする照明器具付きエスカレータ装置。
【請求項2】
前記エスカレータは少なくとも上下二段に配置され、その下側のエスカレータの運転時には、前記遠隔操作手段の機能を無効にし、前記下側のエスカレータの運転停止時にのみに前記遠隔操作手段による遠隔操作を可能にする安全機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の照明器具付きエスカレータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−236045(P2011−236045A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111295(P2010−111295)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】