説明

照明器具用反射部材の製造方法

【課題】反射性と意匠性とを任意に調整できる照明器具用反射部材の製造方法を提供する。
【解決手段】銀微粒子を含むコーティング剤を用いて基材の一部又は全部に反射コーティング層を形成させることを特徴とする照明器具用反射部材の製造方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な照明器具用反射部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、照明器具に対するニーズの多様化に伴って、照明器具に対する好みも多岐にわたっている。このため、このようなニーズに応えるためには、微妙な色調と反射性とを調整するための技術が必要である。
【0003】
従来、照明器具用基材の反射性あるいは意匠性の付与は、例えばスパッタリング、蒸着等の物理的方法、化研処理(化学研磨又は電解研磨)等の化学的方法等のほか、塗装等の方法により行われる。
【0004】
しかしながら、これらの方法で反射性又は意匠性を付与する場合には、以下のような問題がある。
【0005】
スパッタリング、蒸着等の方法では、反射機能は付与できても、得られる色調が冷たい感じに仕上がり、色調の微調整が困難である。しかも、これらの方法では、部分的な表面処理も困難である。また、スパッタリングでは、比較的大きな加熱装置を内蔵した真空炉と高圧電源が必要である。
【0006】
さらに、スパッタ方向は直線的であり、陰になる部分には表面処理を行うことができないため、装置内部に基材を回転させるための装置を取り付ける必要もあり、製造コスト面で不利となる。
【0007】
塗装では、照明器具用基材に暖かい印象を与えることができるが、そのぶん反射性を犠牲にしなければならない。反射性と色調の微妙な調整を行うことが顧客のニーズに合わせるためには必要であるが、従来技術ではこのような微妙な制御は現実的に困難である。
【0008】
金属基材に対する表面処理法として最も一般的なメッキ法は、照明用器具用の基材であるアルミニウム等に対して適用できない。
【0009】
以上のように、いずれの方法でも、照明器具基材に対する反射性と意匠性の両方を満足させる微妙な調整を行うことは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の主な目的は、特に、反射性と意匠性とを任意に調整できる照明器具用反射部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のコーティング剤を用いてコーティング層を形成する場合には、上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の照明器具用反射部材の製造方法に係るものである。
【0013】
1. 銀微粒子を含むコーティング剤を用いて基材の一部又は全部に反射性コーティング層を形成させることを特徴とする照明器具用反射部材の製造方法。
【0014】
2. 銀微粒子を含むコーティング剤を基材の一部又は全部に塗布し、次いで350℃以下で熱処理することにより反射性コーティング層を形成させる前記項1に記載の製造方法。
【0015】
3. 熱処理が、基材にコーティング剤を塗布し、120℃以下で乾燥した後、260〜350℃に加熱・保持することにより行われる前記項2に記載の製造方法。
【0016】
4. コーティング剤が銀微粒子含有ペースト及び有機溶剤を含む前記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0017】
5. コーティング剤に含まれる銀成分の含有量が2重量%以上30重量%以下である前記項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【0018】
6. 銀微粒子の平均粒径が100nm以下である前記項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【0019】
7. 基材が、アルミニウム、アルミニウム系合金、ステンレス鋼、カラー鋼板及び表面処理鋼板から選ばれたものである前記項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0020】
8. 銀微粒子が、銀成分及び有機成分を含む前記項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【0021】
9. 銀微粒子が、銀成分の含有量が異なる2種以上の銀微粒子からなる前記項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【0022】
10. 銀微粒子が、銀成分の含有量が90重量%以上である銀微粒子と、銀成分の含有量が90重量%未満である銀微粒子とからなる前記項9に記載の製造方法。
【0023】
11. 銀成分の含有量が90重量%以上である銀微粒子と、銀成分の含有量が90重量%未満である銀微粒子との比が、銀成分の含有量の比として2〜7:1である前記項10に記載の製造方法。
【0024】
12. 前記項1〜11のいずれかに記載された方法により得られる照明器具。
【発明の効果】
【0025】
本発明の製造方法によれば、所望の反射性、意匠性が付与された照明器具用反射部材を製造することができる。特に、従来技術による方法によりも優れた反射性を有する反射部材を提供することができる。また、用いる銀ナノ粒子ペーストの種類によって色調も微妙に制御することができる。
【0026】
また、本発明の製造方法では、従来技術であるスパッタリング、蒸着等のように大規模な設備が不要であり、コスト的にも非常に有利である。
【0027】
本発明の製造方法により得られる反射部材は、照明器具用として使用できる。例えば、1)ペンダントライト、ブラケットライト、スポットライト等の反射板又は構造部材、2)シーリングのシェード(光反射面)、3)ペンダントライト又はシーリングの枠、4)ダウンライト用キャップ等の照明器具の反射部材等として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の照明器具用反射部材の製造方法は、銀微粒子を含むコーティング剤を用いて基材の一部又は全部に反射性コーティング層を形成させることを特徴とする。
【0029】
基材の材質は限定的でないが、特に金属又は合金が好適である。具体的には、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅等の金属あるいはこれらを含む合金が挙げられる。また、ステンレス鋼、カラー鋼板、ニッケル等による表面処理鋼板等の材料にも適用することができる。特に、本発明では、アルミニウム又はアルミニウム系合金を好適に用いることができる。
【0030】
基材の形状は、基材表面の少なくとも一部に反射コーティング層を形成できる限り、特に制限されない。従って、例えばアルミニウム基材であれば、曲率の小さな皿状の基材、ダウンライトのように曲率が大きく、深さのある反射基材等のいずれに対しても適用することができる。本発明では、スパッタリングでは不得意な深さのあるダウンライト用のアルミニウム基材にも適用することができる。
【0031】
基材は、必要に応じて、本発明による処理に先立って予め簡単な洗浄をすることもできる。例えば、アセトン、エタノール等の有機溶剤で予め基材の汚れを除去しておいても良い。
【0032】
本発明で用いるコーティング剤(コーティング液)は、銀微粒子を含むものである。銀微粒子としては、平均粒径100nm以下の銀微粒子(銀ナノ粒子)を用いることが望ましい。銀ナノ粒子は、公知のもの又は市販品を使用することができる。これらは、所望の反射性、意匠性等に応じて1種又は2種以上で用いることができる。特に、2種以上を併用する場合には、反射コーティング膜の色調を細かく制御することができる。
【0033】
特に、本発明では、銀成分及び有機成分を含む銀微粒子(銀ナノ粒子)を好適に用いることができる。この銀微粒子中における銀の含有量は特に限定されないが、通常は70〜98重量%である。このような銀微粒子も、公知又は市販のものを使用することができる。市販品を使用する場合は、市販の銀ナノ粒子含有ペーストをそのまま又は希釈して使用することもできる。市販の銀ナノ粒子含有ペーストとしては、例えば製品コードMN1200シリーズ(「MN1200」、「MN1214」、「MN1280」)、MN8000シリーズ(「MN8000」、「N8060」、「MN8080」、「MN8014」、「MN8018」)、MY1400シリーズ(「MY1400」、「MY1412」)(いずれも大研化学工業株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
また、本発明では、市販の銀ナノ粒子含有ペーストに他の成分を適宜加えたものをコーティング剤として使用することもできる。例えば、前記のように、有機溶剤でペーストを希釈することもできる。すなわち、銀微粒子含有ペースト及び有機溶剤を含むコーティング剤を好適に用いることができる。これは、銀ナノ粒子含有ペーストと有機溶剤とを混合し、銀ナノ粒子を分散させることにより調製することができる。有機溶剤としては、例えば用いる銀ナノ粒子ペーストの種類、2種以上の銀ナノ粒子ペーストノ組み合わせの場合の比率等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、トルエン、キシレン、ウンデカン、ヘキサン、ペンタン、エタノール、t−ブタノール、イソプロピルアルコール等の各種有機溶媒が挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0035】
有機溶剤を用いる場合、その使用量は限定的でないが、一般的には銀成分の含有量(固形分量)が2重量%以上30重量%以下、好ましくは5重量%以上25重量%以下、より好ましくは10重量%以上20重量%以下になるように設定する。例えば、上記の市販銀ナノ粒子含有ペーストとして前記MN8000シリーズ又はMN1400シリーズを用い、これらの銀ナノ粒子ペーストをコーティング剤中の銀成分の含有量が2重量%以上30重量%以下、好ましくは5重量%以上25重量%以下、より好ましくは10重量%以上20重量%以下になるように、有機溶剤で溶解又は分散させて用いることが好ましい。このような銀成分の含有量に調合したコーティング剤を用いることによって、反射性、意匠性ならびに密着性に優れたコーティング層をより確実に得ることができる。
【0036】
また、本発明では、銀微粒子として、前記の銀成分及び有機成分を含む銀微粒子を用いる場合、銀成分の含有量が異なる2種以上の銀微粒子を用いることにより、色調の制御をより精密に行うことができる。好ましくは、銀微粒子が、銀成分の含有量が90重量%以上である銀微粒子(以下「主剤」ともいう。)と、銀成分の含有量が90重量%未満である銀微粒子(以下「色調調整剤」ともいう。)とを用いることにより、より効果的に色調の調整を行うことができる。この場合、両者の割合は、所望の色調等に応じて適宜設定することができるが、特に銀成分の含有量が90重量%以上である銀微粒子と、銀成分の含有量が90重量%未満である銀微粒子との比が、銀成分の含有量の比(重量比)として2〜7:1とすることが望ましい。
【0037】
より具体的には、例えば主剤として前記MN8000シリーズのうちの1種以上を用い、色調調整剤として前記MY1400シリーズの少なくとも1種の銀ナノ粒子ペーストを用いることができる。この場合、特に主剤と色調調整剤の配合比を変えることによって色調調整が行うことができ、照明器具用反射膜としての微妙な色調、意匠性、密着性等の各種特性を付与することが可能となる。
【0038】
上記主剤と色調調整剤との配合割合は、所望の反射性、意匠性を考慮して、銀ナノ粒子ペーストの種類等で適宜変更できる。例えば、MN8060を主剤とし、MY1400を色調調整剤として調合する場合は、MN8060の銀成分の含有量(Ag1)とMY1400の銀成分の含有量(Ag2)の比Ag1:Ag2が、前記のように、通常2〜7:1になるようにすれば良い。なお、本発明の効果に支障がない限り、かかる範囲を外れても良い。
【0039】
本発明におけるコーティング剤では、これら上記成分のほかに特に各種添加剤を実質的に含まないことが好ましい。銀ナノ粒子ペーストの調合以外に樹脂類などを比較的多く添加すると、より高温での熱処理温度が必要となり、その結果反射基材そのものの強度を損ねるおそれがある。
コーティング剤によるコーティング方法としては、基材の一部又は全部にコーティング層を形成できる限り特に限定されず、公知のコーティング方法も採用することができる。例えば、ディッピング、ハケ塗り、ローラー、スプレー、スクリーン印刷等のいずれの方法も採用することができる。特に立体的な形状をもつ基材に対しては、ディッピング又はスプレー法が適している。特に、本発明では、スプレー法が最も好ましい。
【0040】
なお、コーティングは、1回又は2回以上行っても良い。本発明では、コーティング剤の組成等によっては1回コーティングのみで十分なコーティング層を形成することもできる。2回以上コーティングする場合は、例えば1回目のコーティングをし、これを乾燥させた後に2回目のコーティングを実施することもできる。スプレー法の場合は、連続的に塗布作業を継続し、塗布量を制御すれば良い。
【0041】
コーティング剤の塗布量は、最終製品の種類等に応じて適宜設定すればよいが、通常は最終製品におけるコーティング層の厚み(乾燥後厚み)が通常0.3〜5μm程度となるように設定すれば良い。なお、コーティング層の厚みは、本発明の効果を妨げない限りにおいて上記範囲外になっても良い。
【0042】
塗布した後は、必要に応じて乾燥処理することができる。乾燥方法も特に制限されず、自然乾燥又は強制乾燥のいずれであっても良い。乾燥温度も限定的でないが、通常は100℃以下の範囲で適宜設定すれば良い。
【0043】
本発明では、乾燥後に熱処理する。熱処理温度は、通常350℃以下、好ましくは200℃以上350℃以下、より好ましくは240℃以上320℃以下、最も好ましくは260℃以上300℃以下とする。熱処理の方法は特に制限されず、基材のコーティング部分の面積、所望の発色等に応じて適宜設定すれば良い。また、基材を熱処理する雰囲気も特に制限されず、大気中、不活性ガス中等のいずれでも良いが、通常は大気中で行えば良い。
【0044】
本発明方法の熱処理では、所定の熱処理温度に加熱・保持することにより熱処理が行われることが好ましい。熱処理温度での保持時間は、銀ナノ粒子ペーストの種類、調合比等により適宜設定できる。通常は30分間以上の範囲内で適宜設定すれば良い。特に、本発明では、コーティング剤を塗布し、乾燥後、所定の熱処理温度に加熱して30〜60分保持し、次いで徐冷(自然放冷)することにより熱処理が行われることが好ましい。この場合の冷却は、炉外で自然放冷とすれば良い。なお、熱処理は電気炉によるバッチ式で行っても良いし、あるいはトンネル炉で連続的に行っても良い。
【0045】
本発明方法では、このような簡便に熱処理することによって、特に優れたコーティング層を形成できる。すなわち、例えば、厚さ5μm以下(特に2μm以下)と薄く、しかも密着性のある反射性・意匠性に優れたコーティング層をより確実に得ることができる。また、本発明では、熱処理温度によってコーティング層の調色を行うこともできる。例えば、銀ナノ粒子ペーストの種類としてMN8060とMY1400を含むコーティング剤を使用する場合には、熱処理温度を上げるに従って銀黄白色よりも銀白色が強調されたコーティング層を得ることができる。
【0046】
本発明では、必要に応じて、形成されたコーティング層上にさらにクリアーコートを行っても良い。クリアーコート用の塗料としては、例えばアクリル系、メラミン系、ウレタン系、エポキシ系等の樹脂系クリアー塗料を用いることができる。これらは、公知のクリアー塗料又は市販クリアー塗料を用いることができる。クリアーコートの方法も公知のクリアー塗料における方法と同様にすれば良く、例えば電着塗装、スプレー塗装、はけ塗り、ローラー塗装等のいずれの方法も採用することができる。
【0047】
本発明方法で得られるコーティング層は、その反射性、意匠性、密着性等において支障がない限り、基材の少なくとも一部と合金化していても良いし、また合金化していなくても良い。すなわち、本発明は、いずれの場合も包含する。
【0048】
本発明の照明器具用反射部材は、上記の本発明方法によりコーティングが施されたものである。すなわち、本発明の照明器具用反射部材は、銀成分を主成分とするコーティング層を有する。このコーティング層は、好ましくは後記に示す試験<1>〜<6>を満足するものである。
【0049】
銀ナノ粒子ペーストを含むコーティング剤によりコーティングする本発明方法によれば、コーティング剤の組成(銀ナノ粒子ペーストの種類と配合比率、銀成分の濃度)、コーティング層の厚み、熱処理温度等を変えることによって、比較的容易に反射性、意匠性の微調整を行うことができる。
【0050】
本発明方法によるコーティング層は、アルミニウム反射基材との十分な密着性を有している。また、ピンホールの発生も抑制ないし防止されているので密閉性、ひいては耐食性において優れた効果を発揮できる。すなわち、本発明のコーティング層は、上記反射性、意匠性において有利なだけでなく、照明器具に要求される密着性、密閉性、耐光性、耐食性等も同時に兼ね備えており、極めて実用性の高いものである。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0052】
なお、実施例において形成されたコーティング層のピンホールの有無、テープ剥離試験、照明器具特性の評価は、次のようにして行った。
【0053】
<1>ピンホールの有無の確認
本発明方法で平面反射基材にコーティング層を形成し、ピンホールの有無を目視及び光学顕微鏡(60〜500倍)によって調べた。
【0054】
<2>テープ剥離試験
反射基材にセロハンテープを圧着した後、これを勢いよく剥がした場合、セロハンテープ上にコーティング層が付着しているかどうかを目視及び光学顕微鏡(60〜500倍)により観察して行った。
【0055】
<3>膜厚の測定
アルミニウム反射基材平板に本発明による銀コーティングを施し、セイコーインスルツメンツ社製蛍光X線膜厚計「マイクロエレメントモニターSEA5120」により膜厚測定を行った。
【0056】
<4>反射率の測定
アルミニウム反射基材平板に本発明による銀コーティングを施し、島津製作所製紫外可視分光光度計「UV3150」によって、硫酸バリウムの標準白板を用いた積分球測定法で反射率の測定を行い、550nmの反射率によって評価した。
【0057】
<5>平均照度
本発明の方法により銀コーティングを施したダウンライト用アルミニウム生地にミニクリプトン電球60wを取り付け、暗室に設置したテーブル上の測定中心点gから照明器具の光中心までの距離が950mmになるように配置し、図1に示すテーブル上の各測定点での照度(lx)の平均を式1により求めた。
【0058】
【数1】

【0059】
<6>配光試験
松下電工製の自動測光システムにより行い、器具効率、ランプ光束1000lmに対する最大光束、円直下光束を測定し、配光曲線を求めた。
【0060】
実施例1
コーティング剤として、大研化学工業株式会社製の銀ナノ粒子ペースト「MN1280」と「MY1400」の配合比をそれぞれの銀成分の重量比で2:1にし、かつコーティング剤中の銀成分の含有量が2.0重量%になるようにトルエンに分散させた。この分散液5cm3を用いてアルミニウム生地平板(3cm×6cm)にスプレー塗装し、室温で乾燥させた。これを260℃の電気炉に入れ40分間熱処理を行い、所定の処理時間が終了後、電気炉から取り出し、自然放冷した。得られた銀コーティング膜は白銀色であり、厚みは0.4μmであった。
【0061】
この製品について、ピンホールの有無を調べたが、ピンホールの存在は認められなかった。また、テープ剥離試験を行ったところ、全く剥離は認められなかった。銀コーティング膜の550nmにおける反射率は67.4%であり、アルミニウム生地平板の反射率(49%)を上回っていた。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例2
コーティング剤として、大研化学工業株式会社製の銀ナノ粒子ペースト「MN1280」と「MY1400」の配合比をそれぞれの銀成分の重量比で2.5:1にし、かつコーティング剤中の銀成分の含有量が2.3重量%になるようにトルエンに分散させた。この分散液10cm3を用いてアルミニウム生地平板(3cm×6cm)にスプレー塗装し、室温で乾燥させた。これを300℃の電気炉に入れ40分間熱処理を行い、所定の処理時間が終了後、電気炉から取り出し、自然放冷した。得られた銀コーティング膜は白銀色であり、厚みは1.2μmであった。
【0064】
この製品について、ピンホールの有無を調べたが、ピンホールの存在は認められなかった。また、テープ剥離試験を行ったところ、全く剥離は認められなかった。銀コーティング膜の550nmにおける反射率は87.7%であり、アルミニウム生地平板の反射率(49%)を上回っていた。
【0065】
実施例3
コーティング剤として、大研化学工業株式会社製の銀ナノ粒子ペースト「MN8000」の銀成分の含有量がコーティング剤中で10重量%になるようにトルエンに分散させた。この分散液20cm3を用いてダウンライト用アルミニウム生地カップ(塗布表面積約100cm2)にスプレー塗装し、室温で乾燥させた。これを300℃の電気炉に入れ40分間熱処理を行い、所定の処理時間が終了後、電気炉から取り出し、自然放冷した。得られた銀コーティング膜は銀黄白色であり、膜厚は0.73μmであった。
【0066】
この製品について、ピンホールの有無を調べたが、ピンホールの存在は認められなかった。また、テープ剥離試験を行ったところ、全く剥離は認められなかった。銀コーティング膜の550nmにおける反射率は81.6%であり、アルミニウム生地平板の反射率(49%)を上回っていた。
【0067】
また、平均照度を求めた結果を表1に示す。表1には、比較例として、従来の化研処理品(材質:アルミニウム)について測定を行った結果も併せて示す。照度試験による平均照度は347(lx)であり、化研処理によるものの平均照度(298(lx))よりも好成績であった。また、光中心の直下1600mmでの照度は147(lx)であり、化研処理の結果である128(lx)を上回っていた。
【0068】
実施例4
コーティング剤として、大研化学工業株式会社製の銀ナノ粒子ペースト「MN8000」の銀成分の含有量がコーティング剤中で10重量%になるようにt−ブタノール15%、エチルセロソルブ10%、イソプロパノール75%から成る混合溶剤に分散させた。この分散液10cm3を用いてダウンライト用アルミニウム生地カップ(塗布表面積約100cm2)にスプレー塗装し、室温で乾燥させた。これを300℃の電気炉に入れ40分間熱処理を行い、所定の処理時間が終了後、電気炉から取り出し、自然放冷した。得られた銀コーティング膜は黄銀白色であり、膜厚は0.74μmであった。
【0069】
この製品について、ピンホールの有無を調べたが、ピンホールの存在は認められなかった。また、テープ剥離試験を行ったところ、全く剥離は認められなかった。銀コーティング膜の550nmにおける反射率は97.5%であり、アルミニウム生地平板の反射率(49%)を上回っていた。
【0070】
また、平均照度を求めた結果を表1に示す。照度試験による平均照度は342(lx)であり、化研処理によるものの平均照度(298(lx))よりも好成績であった。また、光中心の直下1600mmでの照度は142(lx)であり、化研処理の結果である128(lx)を上回っていた。
【0071】
実施例5
コーティング剤として、大研化学工業株式会社製の銀ナノ粒子ペースト「MN8000」と「MY1400」をそれぞれの銀成分の重量比で3:1になるように、またコーティング剤中の銀成分の含有量が10重量%になるようにトルエンに分散させた。この分散液20cm3を用いてダウンライト用アルミニウム生地カップ(塗布表面積約100cm2)にスプレー塗装し、室温で乾燥させた。これを300℃の電気炉に入れ40分間熱処理を行い、所定の処理時間が終了後、電気炉から取り出し、自然放冷した。得られた銀コーティング膜は白銀色であり、膜厚は1.05μmであった。
【0072】
この製品について、ピンホールの有無を調べたが、ピンホールの存在は認められなかった。また、テープ剥離試験を行ったところ、全く剥離は認められなかった。銀コーティング膜の550nmにおける反射率は78.7%であり、アルミニウム生地平板の反射率(49%)を上回っていた。
【0073】
また、平均照度を求めた結果を表1に示す。照度試験による平均照度は360(lx)であり、化研処理によるものの平均照度(298(lx))よりも好成績であった。また、光中心の直下1600mmでの照度は151(lx)であり、化研処理の結果である128(lx)を上回っていた。
【0074】
実施例6
コーティング剤として、大研化学工業株式会社製の銀ナノ粒子ペースト「MY1400」をコーティング剤中の銀成分の含有量が20重量%になるようにトルエンに分散させた。この分散液20cm3を用いてダウンライト用アルミニウム生地カップ(塗布表面積約100cm2)にスプレー塗装し、室温で乾燥させた。これを280℃の電気炉に入れ30分間熱処理を行い、所定の処理時間が終了後、電気炉から取り出し、自然放冷した。得られた銀コーティング膜は淡黄銀白色であった。
【0075】
この製品について、ピンホールの有無を調べたが、ピンホールの存在は認められなかった。また、テープ剥離試験を行ったところ、わずかに剥離したものの、実用には全く問題ない程度のものであった。
【0076】
また、実施例1と同様にして照度試験を行ったところ、光中心の直下1600mmでの照度は199(lx)であり、同日に測定した化研処理の結果である144(lx)を上回っていた。
【0077】
実施例7
コーティング剤として、大研化学工業株式会社製の銀ナノ粒子ペースト「MN8000」をコーティング剤中の銀成分の含有量が9.5重量%になるようにトルエンに分散させた。この分散液20cm3を用いてダウンライト用アルミニウム生地カップ(塗布表面積約100cm2)にスプレー塗装し、室温で乾燥させた。これを300℃の電気炉に入れ40分間熱処理を行い、所定の処理時間が終了後、電気炉から取り出し、自然放冷した。得られた銀コーティング膜は淡黄白銀色であり、膜厚は0.8μmであった。
【0078】
この製品について、ピンホールの有無を調べたが、ピンホールの存在は認められなかった。また、テープ剥離試験を行ったところ、全く剥離は認められなかった。
【0079】
また、配光曲線を求めた結果を表2に示す。配光試験によるランプ光束の最大光束と円直下光束はそれぞれ363.2と362.0であり、器具効率は化研処理品を上回る84.0%であった。配光曲線は、広がりの狭い非住宅型商用向きのものであった。
【0080】
【表2】

【0081】
実施例8
コーティング剤として、大研化学工業株式会社製の銀ナノ粒子ペースト「MN8060」と「MY1400」をそれぞれの銀成分の重量比で7:1になるように、また、コーティング剤中の銀成分の含有量が12重量%になるようにトルエンに分散させた。この分散液10cm3を用いてダウンライト用アルミニウム生地カップ(塗布表面積約100cm2)にスプレー塗装し、室温で乾燥させた。これを300℃の電気炉に入れ40分間熱処理を行い、所定の処理時間が終了後、電気炉から取り出し、自然放冷した。得られた銀コーティング膜は淡黄銀白色であり、膜厚は0.84μmであった。
【0082】
この製品について、ピンホールの有無を調べたが、ピンホールの存在は認められなかった。また、テープ剥離試験を行ったところ、全く剥離は認められなかった。銀コーティング膜の550nmにおける反射率は93.2%であり、アルミニウム生地平板の反射率(49%)を上回っていた。
【0083】
また、配光曲線を求めた結果を表2に示す。配光試験によるランプ光束の最大光束と円直下光束は表2に示すようにそれぞれ368.9と364.5であり、器具効率は化研処理品を上回る84.0%であった。また、配光曲線は、化研処理品に近い広がりのある非住宅型商用向きのものであった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、照度試験方法の概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀微粒子を含むコーティング剤を用いて基材の一部又は全部に反射性コーティング層を形成させることを特徴とする照明器具用反射部材の製造方法。
【請求項2】
銀微粒子を含むコーティング剤を基材の一部又は全部に塗布し、次いで350℃以下で熱処理することにより反射性コーティング層を形成させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
熱処理が、基材にコーティング剤を塗布し、120℃以下で乾燥した後、260〜350℃に加熱・保持することにより行われる請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
コーティング剤が銀微粒子含有ペースト及び有機溶剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
コーティング剤に含まれる銀成分の含有量が2重量%以上30重量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
銀微粒子の平均粒径が100nm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
基材が、アルミニウム、アルミニウム系合金、ステンレス鋼、カラー鋼板及び表面処理鋼板から選ばれたものである請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
銀微粒子が、銀成分及び有機成分を含む請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
銀微粒子が、銀成分の含有量が異なる2種以上の銀微粒子からなる請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
銀微粒子が、銀成分の含有量が90重量%以上である銀微粒子と、銀成分の含有量が90重量%未満である銀微粒子とからなる請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
銀成分の含有量が90重量%以上である銀微粒子と、銀成分の含有量が90重量%未満である銀微粒子との比が、銀成分の含有量の比として2〜7:1である請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載された方法により得られる照明器具。


【図1】
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【公開番号】特開2006−59678(P2006−59678A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240645(P2004−240645)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000149376)大谷ナショナル電機株式会社 (9)
【出願人】(591030499)大阪市 (64)
【Fターム(参考)】