説明

照明器具

【課題】光源部からの光を反射する反射板を備えた照明器具において、光源の種類に関係なく、反射板の油汚れ及び埃の付着汚れに対する防汚性を高める。
【解決手段】照明器具1は、蛍光灯4と、この蛍光灯4からの光を反射する反射板3と、蛍光灯4及び反射板3を支持すると共に蛍光灯4の点灯回路5を収容する筐体2とを備える。反射板3は、その最表面に反射板表面の下地に形成された反射層よりもオレイン酸接触角が高い撥水撥油層が形成され、蛍光灯4の最下点30よりも高い位置の天面31に空気を流通させるための気流調整孔33を有している。これにより、反射板3表面に油汚れが付き難くできると共に、蛍光灯4の周囲に浮遊する埃を含む気流Aを気流調整孔33から排出することができる。従って、光源の種類に関係なく、反射板3の油汚れ及び埃の付着汚れに対する防汚性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油汚れや埃付着に対する防汚性の高い反射板を有する照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から照明器具においては、省エネルギ化の試みとして、白熱ランプを電球型蛍光灯やLEDなどの高効率ランプへ置き換えによる使用電力量の削減と共に、反射板の反射率を高めることにより、器具の電力効率を高め、ランプのワット数を下げたり、器具台数を減らすことによって、省電力化がなされてきた。
【0003】
しかしながら、工場や家庭における油汚れが付着し易い環境においては、照明器具の反射板は経年によって油汚れが付着すると共に、油汚れを介在して埃が付着することにより、その反射率は照明器具設置初期に比べて短期間に低下し、当初の期待された設計照度が得られないという問題があった。
【0004】
これに対し、反射板の汚れを防止するようにした照明器具として、反射板に形成した光触媒膜に光源からの紫外線を当てることにより、反射板表面に付いたタバコの脂などの有機物質を酸化、分解してクリーニングすることにより防汚性を高めるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この照明器具は、光源に紫外線を強く発生する特殊な蛍光灯を必要とし、通常の紫外線量の少ない蛍光灯や白熱灯を光源とする場合には不適であり、使用する光源の種類が限定される。
【0005】
また、テールランプカバーのカバーガラスの外面を撥水性を有する保護膜で被覆した照明器具が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この照明器具は、上記保護膜が撥油性ではないので、油汚れが付着し易い環境では不適であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−67620号公報
【特許文献2】特開平6−64311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、光源部からの光を反射する反射板を備えた照明器具において、光源の種類に関係なく、反射板の油汚れ及び埃の付着汚れに対する防汚性を高めることができる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、光源部と、この光源部からの光を反射する反射板と、前記光源部及び反射板を支持すると共に前記光源部の点灯回路を収容する筐体とを備えた照明器具において、前記反射板の最表面には該反射板表面の下地に形成された反射層よりもオレイン酸接触角が高い撥水撥油層が形成され、前記反射板は、前記光源部の最下点よりも高い位置に、空気を流通させるための気流調整孔を有したものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の照明器具において、前記反射板の裏面側に該反射板に振動を与えるための振動子を設けたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の照明器具において、前記反射板の最下端に該反射板を伝って流れるオイルを受け留めるオイル受けを設けたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の照明器具において、前記反射板の裏面側における前記気流調整孔の周縁に前記撥水撥油層を形成したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、反射層よりオレイン酸接触角が高い撥水撥油層により、オイルミストが反射板の最表面に付着し難くなる。また、光源部で暖められた空気が光源部下方から気流調整孔へ流通する上昇気流により、光源部周辺に浮遊する埃が気流に乗って反射板裏面側に排出され、埃が反射板最表面に付着し難くなる。これにより、光源の種類に関係なく、反射板の油汚れと埃汚れとに対する防汚性能を高めることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、振動子の振動により反射板が振動されるので、反射板に付いた埃は、この振動の衝撃により振るい落とされ、気流調整孔付近に溜まり難く、気流調整孔の目詰まりが起こり難くなり、常に埃が排出される。これにより、長期に使用しても反射板の防汚性能を持続することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、反射板表面の撥油機能によって反射板を伝って流れ落ちる油滴がオイル受けに溜まるため、オイルが照明器具下の製品や通路などに落下することが無く、好適に使用できる。
【0015】
請求項4の発明によれば、気流調整孔から外面へ排出されたオイルミストや埃が反射板裏面に付着することが抑制されるので、反射板裏側の防汚性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明器具の斜視図。
【図2】同照明器具の分解斜視図。
【図3】同照明器具の部分上面図。
【図4】図3のI−I線断面図。
【図5】上記実施形態の変形例に係る照明器具の半裁断面図。
【図6】(a)は上記実施形態の他の変形例に係る照明器具の半裁断面図、(b)は同照明器具の反射板の下方から見た斜視図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る照明器具の半裁断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る照明器具の断面図。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る照明器具の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施形態に係る照明器具について図1乃至図4を参照して説明する。図1乃至図3に示すように、照明器具1は、筺体2と、蛍光灯4からの光を反射する反射板3と、光源部として直管型蛍光灯4とを備える。筺体2は、反射板3と蛍光灯4とを支持すると共に、蛍光灯4の点灯回路5を収容し、天井面100などにねじ11により直付けされ、電源配線コード12から点灯回路5に電源供給される。蛍光灯4はここでは2灯を示すが、本数に制限はない。
【0018】
筺体2は、略矩形の中空筺体を成す本体部21と、本体部21の長手方向の両端にT字状にクロスするようにそれぞれ設けられた矩形のソケット支持部22と、ソケット支持部22の長手方向の両端からそれぞれ下側に設けられた蛍光灯用のソケット23と、反射板3をねじ止めするためのねじ穴部24とを有する。本体部21はその長手方向及び短手方向の中心線に関して互いに対称形を成すように構成されている。ソケット23の対は、本体部21の長手方向の中央位置に対して対称に、かつ、互いにソケットの挿入部が向かい合うように配設される。
【0019】
反射板3は、矩形の天面31と、天面31の端縁から下方に傾斜する傾斜面32とを有する。傾斜面32は、その長手方向に直交する断面が下拡がりの台形状を成す。天面31には、空気を流通させるための気流調整孔33が複数形成されている。また、反射板3は、筐体2を下方からソケット23を残して覆い隠すようにねじ13によりねじ穴部24に止められて筐体2に取り付けられ、蛍光灯4を上方から覆うように配設されている。
【0020】
また、反射板3は、蛍光灯4と対向する反射板表面の下地に白色塗装又はアルミ蒸着等によって反射層が形成されると共に、その最表面には、その下地の反射層よりもオレイン酸接触角が高い撥水撥油層が形成されている。工場のオイルミストとして発生する様々な切削油や食用油などの油汚れに対する防汚性とオレイン酸接触角の相関を検討した結果、オレイン酸接触角が高いものほど、油汚れに対する防汚性も高いことを見出した。
【0021】
この撥水撥油層は、反射層との密着性が確保でき、反射層の反射率を著しく損なわないものであれば、特に種類は限定されるものでなく、例えば、シリコーン系コーティング、フッ素系コーティング、シリコーンアクリル系コーティング、シリコーンフッ素系コーティングなどを用いることができる。
【0022】
また、図4に示すように、照明器具1は本体部21の短手方向の中心線10に関して対称となり、気流調整孔33は、蛍光灯4の円筒発光面の最下点30よりも高い位置に配設され、反射板3の裏面側における気流調整孔33の周縁34には、上記と同様の撥水撥油層を形成している。気流調整孔33は、反射板3の反射機能を損なわないものであれば、その大きさや形、数などに制限はない。なお、気流調整孔33の大きさや位置を任意に調整することにより、上方への光束をコントロールすることができ、間接光による明るさ感アップなどの効果も期待できる。
【0023】
この気流調整孔33を有する反射板3においては、蛍光灯4の点灯時における発光熱により、蛍光灯4の周りの空気が熱せられ、蛍光灯4下方から気流調整孔33へと貫いて上昇する気流Aが発生し、このとき気流調整孔33は、この気流Aを反射板3の外面側に排出する排出口となる。このとき、反射板3内面に浮遊する埃は気流Aに乗って反射板3の外面側に排出される。
【0024】
このように、本実施形態の照明器具1によれば、反射板3に反射層よりオレイン酸接触角が高い撥水撥油層を形成したことにより、オイルミストが反射板3の最表面に付着し難くなる。また、蛍光灯4で暖められた空気が蛍光灯4下方から気流調整孔33へ流通する上昇気流Aとなることにより、蛍光灯4周辺に浮遊する埃が気流Aに乗って反射板3の裏面側に排出され、埃が反射板3の最表面に付着し難くなる。これにより、光源の種類に関係なく、反射板3の油汚れと埃汚れとに対する防汚性能を高めることができる。従って、経年による反射効率の低下を軽減することができ、省電力化することができる。また、反射板3のクリーニングの必要性が少なくなり、メンテナンス性が向上する。
【0025】
また、反射板3の裏面側における気流調整孔33の周縁34に撥水撥油層を形成したことにより、気流調整孔33から外面へと排出されたオイルミストや埃が反射板3裏面に付着することを抑制し、反射板裏側の防汚性を高めることができる。
【0026】
次に、上記実施形態の変形例による照明器具1について図5を参照して説明する。この変形例においては、気流調整孔33が反射板3の天面31側ではなく、傾斜面32側に形成されている。なお、図5には、照明器具1は本体部21の短手方向の中心線10に対して左半分断面のみを示している。
【0027】
上記傾斜面32は天面31側から2段階に折り曲げられ、気流調整孔33は蛍光灯4の最下点30よりも高く位置する傾斜面32の折り曲げられた上側に形成されている。これにより、気流調整孔33から排出された油滴と埃とを反射板3裏側の傾斜面32に多く付着させることができるので、天面31に気流調整孔33を設けた場合と比較して、多くの油滴が傾斜面32に沿って滑り落ち易くなる。
【0028】
次に、上記実施形態の他の変形例による照明器具1について図6(a)、(b)を参照して説明する。この変形例においては、気流調整孔33が、反射板3における天面31と傾斜面32との両方に設けられている。これにより、蛍光灯4で暖められた気流Aは、天面31側と傾斜面32側との2つから排出されるので、蛍光灯4の周辺の埃がより排出され易くなる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態に係る照明器具について図7を参照して説明する。本実施形態は、反射板3の裏面側に反射板3に振動を与えるための振動子6を設けた点で前記第1の実施形態と異なる。
【0030】
振動子6は、電磁モータなどから成り、反射板3の天面31における気流調整孔33の近傍に設けられている。振動子6は固定部7により天面31に固定され、本体部2に内蔵された電源回路(不図示)から電源供給され、矢印Bに示す上下方向に振動する。この振動子6の振動は、例えば、電磁モータのシャフト先端部に分銅を偏って取り付け、モータの回転時における分銅の重心不釣合いにより発生させることができる。また、マイコンからのパルス信号で駆動されるリニアバイブレーションモータにより発生させることもできる。
【0031】
本実施形態によれば、振動子6により反射板3が振動されるので、反射板3に付いた埃は、この衝撃により振るい落とされ、気流調整孔33付近に溜まり難くなり、気流調整孔33の目詰まりが起こり難くなる。従って、常に埃が排出され、長期に使用しても、反射板3の防汚性能を持続することができる。なお、振動子6を反射板3に複数個配設することもできる。
【0032】
次に、本発明の第3の実施形態に係る照明器具について、図8を参照して説明する。本実施形態は、反射板3の最下端に反射板3を伝って流れるオイルを受け留めるオイル受け35を設けたものである。
【0033】
オイル受け35は、反射板3の最下端を内側にU字形に曲げた樋状に形成される。また、反射板3には、気流調整孔33から洩れる光を天面31の外部側から反射するための補助反射板36が設けられている。この補助反射板36は、気流の排出を遮ることなく、気流調整孔33上を覆うようにその周辺から反射用平板をL字型に曲げて形成される。
【0034】
本実施形態によれば、反射板3に付着した油滴が反射板3の表面の撥油機能により反射板3を伝って流れ落ちてオイル受け35に溜まるため、オイルが照明器具下の製品や通路などに落下することが無く、好適に使用できる。また、オイル受け35を反射板3から着脱可能とすることにより、溜まった油滴を簡単に処分することができ、オイル受け35の手入れがし易くなる。また、オイル受け35内面にも前記撥水撥油層をその最表面に形成することも好適である。また、補助反射板36を設けたことにより、気流調整孔33から洩れる光を低減して、照射光を増やすことができる。
【0035】
次に、本発明の第4の実施形態に係る照明器具について図9を参照して説明する。本実施形態の照明器具1aは、ベル型の反射面37を有する反射板3aと、光源部として白熱灯又は白熱灯と同じねじ式口金を有する照明灯4aと、円筒形の筺体2とを備え、照明灯4aの最下点30よりも高い位置の反射板3aの反射面37に円周状に気流調整孔33を有するものである。
【0036】
筐体2は、円筒形の本体部21aと、本体部21aに設けられたねじ式口金に対応するソケット23aと、本体部21aに接着材等で接合される反射板取付部25とを備える。本体部21aは、天井面に固定されるオートリフター(電動式昇降装置)50に取り付けられ、昇降自在となっている。反射板3aは、その頂部に照明灯4aを貫通させる開口38を有し、ねじ13とねじ穴部24でねじ止めされて反射板取付部25に固定される。照明灯4aは、反射板3aの開口38を通してソケット23aに取り付けられる。また、反射板3aの内面及びその外部の気流調整孔33の周縁34には、前記と同様の撥水撥由層が形成されている。
【0037】
本実施形態によれば、照明灯4aを白熱灯とした場合においても、反射板3aをベル型とし、反射板3aに撥水撥由層を形成すると共に、その開口38近傍の円周辺上に気流調整孔33を形成したことにより、反射板3a表面の油汚れを軽減でき、照明灯4aの全周囲に浮遊する埃を気流調整孔33より効率良く排出することができ、防汚性能を向上できる。なお、前記と同様に、反射板3aの外面に振動子、及び反射板3aの最下端にオイル受けを設けることもできる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を変更しない範囲で適宜に種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、反射板の形状として台形状及びベル型形状のものを示したが、多角形状など他の形状としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1、1a 照明器具
2 筺体
3、3a 反射板
4 蛍光灯(光源部)
4a 照明灯(光源部)
5 点灯回路
6 振動子
30 最下点
33 気流調整孔
34 周縁
35 オイル受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、この光源部からの光を反射する反射板と、前記光源部及び反射板を支持すると共に前記光源部の点灯回路を収容する筐体とを備えた照明器具において、
前記反射板の最表面には該反射板表面の下地に形成された反射層よりもオレイン酸接触角が高い撥水撥油層が形成され、
前記反射板は、前記光源部の最下点よりも高い位置に、空気を流通させるための気流調整孔を有したことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記反射板の裏面側に該反射板に振動を与えるための振動子を設けたことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記反射板の最下端に該反射板を伝って流れるオイルを受け留めるオイル受けを設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記反射板の裏面側における前記気流調整孔の周縁に前記撥水撥油層を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−170743(P2010−170743A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10354(P2009−10354)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】