説明

照明器具

【課題】壁紙が照明器具に貼り付くのを回避して取扱性の向上を図ることができる照明器具を提供する。
【解決手段】照明器具10は、天井や壁などの設置面1に取り付けられ、器具本体14の一部を設置面1に接触するように成形した器具姿勢安定用凸部17の外表面に、設置面1との間に無数の空隙を形成するような凹凸の層20を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井や壁などの設置面に取り付けられる照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の照明器具の一例として、器具本体の上面に、天井に突っ張る突っ張り部材を設けて、器具本体とともに突っ張り部材を天井に接触させて固定するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−147208号公報(図2、段落番号0008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、天井に貼り付けられる天井クロスとしては、塩化ビニル系クロス(塩ビクロス)などの壁紙が多く用いられている。
しかし、上記特許文献1に開示された照明器具のように、器具本体が天井に密着する場合、使用時の温度や湿度、圧力等の要因により軟化した壁紙の成分が、器具本体と天井クロスが密着している箇所、すなわち突っ張り部材に強固に貼り付く現象が起こることがありうる。
この状態で、照明器具を天井から取り外すに際し、本体止めねじを外しても、照明器具が天井に貼りついたまま外れない場合があり、そのまま放置すると自重で落下する虞がある。
また、貼りついたままの状態で照明器具を無理に外そうとして力を加えると、天井クロスが剥がれる虞がある。
このように、天井クロス(塩化ビニル系)が照明器具に貼り付く原理は以下の通りである。天井クロスの表面には、通常、模様を形成するために凹凸加工がなされている。簡易取付型の照明器具は、この天井クロスに器具本体の一部が密着するように設置される。一般的な照明器具本体は金属製であり、表面は塗装されて滑らかな面を形成している。
従って、設置された当初は、天井クロスと照明器具本体に無数の空気層が存在した状態となっている。しかし、長期使用による温度上昇や圧力、湿度環境等の要因により、天井クロスの成分が軟化し、粘着力を持つとともに照明器具本体との空気層を埋め尽くし、強く密着した状態となる。そのため、この状態で照明器具を無理に外そうとして力を加えると、天井クロスが剥がれることとなる。
【0005】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたもので、その目的は、壁紙が照明器具に貼り付くのを回避して取扱性の向上を図ることができる照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る照明器具は、天井や壁などの設置面に取り付けられる照明器具において、器具本体の一部を前記設置面に接触するように成形した器具姿勢安定用凸部の外表面に、前記設置面との間に無数の空隙を形成するような凹凸の層を形成したことを特徴とする。
【0007】
本発明においては、設置面に設置することにより、設置面に貼り付けられている壁紙に当接した当初、器具姿勢安定用凸部と壁紙との間に無数の空隙からなる凹凸の層を形成する。壁紙は長期使用による温度上昇や圧力、湿度環境等の要因により、その成分が軟化して粘着力を持つようになる。しかし、凹凸の層は保持されて、壁紙が軟化したとしても微少な接触面積を維持する。
よって、軟化した壁紙を器具本体に付着させることがなくなって取扱性の向上を図ることができる。
【0008】
本発明に係る照明器具は、前記器具姿勢安定用凸部は、電源用穴を囲むように形成された環状凸部とし、その外表面に前記凹凸の層を形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明においては、電源用穴を囲むように形成された環状凸部形状の器具姿勢安定用凸部の外表面に凹凸の層を形成したことにより、設置面と器具本体との間に、例えば虫等が通過する隙間を形成しない。
よって、電源用穴からの虫等の侵入を防止することができる。
【0010】
本発明に係る照明器具は、前記器具姿勢安定用凸部は、前記環状凸部とその外側に位置する複数の点状凸部からなり、前記環状凸部と前記点状凸部との設置面方向への高さを同一とし、それらの外表面に前記凹凸の層を形成したことを特徴とする。
【0011】
本発明においては、設置面に設置することにより、設置面に貼り付けられている壁紙に当接した当初、環状凸部および点状凸部形状をなす器具姿勢安定用凸部と壁紙との間に無数の空隙からなる凹凸の層を形成する。壁紙は長期使用による温度上昇や圧力、湿度環境等の要因により、その成分が軟化して粘着力を持つようになる。しかし、凹凸の層は保持されて、壁紙が軟化したとしても微少な接触面積を維持する。
よって、軟化した壁紙を器具本体に付着させることがなくなって取扱性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明においては、器具姿勢安定用凸部が、環状凸部とその外側に位置する複数の点状凸部からなり、それらに凹凸の層を形成しているために、設置面に安定的に取り付けることができる。
【0013】
本発明に係る照明器具は、前記凹凸の層は、起毛構造に形成された繊維状の材質により構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、凹凸の層が、起毛構造に形成された繊維状の材質により構成されているために、設置面の壁紙に密着することがない。
よって、長期使用による温度上昇や圧力、湿度環境等の要因に拘わらず、凹凸の層は劣化することがない。
【0015】
本発明に係る照明器具は、前記凹凸の層は、厚さ1mm以下のポリエステル製フレンチパイルにより構成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、厚さ1mm以下のポリエステル製フレンチパイルは、入手がし易く、安価な材料である。
よって、コスト面で有利に大量生産を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の照明器具によれば、器具本体の一部を設置面に接触するように成形した器具姿勢安定用凸部の外表面に、設置面との間に無数の空隙を形成するような凹凸の層を形成した。
これにより、壁紙が照明器具に貼り付くのを回避して取扱性の向上を図ることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の複数の実施形態に係る照明器具について、図面を参照して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1、図2(A),(B)に示すように、本発明の第1実施形態である照明器具10は、点灯回路を内装した反射板11と、サークラインである環状一対のランプ12と、カバー13と、反射板11、ランプ12およびカバー13を取り付けて保持する器具本体14と、を備える簡易取付方式である。
【0020】
照明器具10は、天井面1に取付けられた取付金具2に組み付け、器具本体14に有するだるま穴15を介して本体止めねじ3をドライバー4等の治具を使って締め付けることにより天井面1に固定される。
【0021】
図3にも示すように、器具本体14は、亜鉛鋼板等の金属製板部材をプレス加工して成形した後に塗装を施してある。器具本体14の中央部には、配線器具2aを通すための電源用穴16と、本体止めねじ3を留めるためのだるま穴15とを設けている。
なお、器具本体14は、器具全体の形状を維持するため設置時に変形量が少ない材質が好ましく、例えば樹脂成型品等を適用しても良い。
【0022】
器具本体14は、電源用穴16とだるま穴15とを囲むように、環状凸部形状をなす第1器具姿勢安定用凸部17を天井面1に向けて突出形成しており、第1器具姿勢安定用凸部17を中心として放射状に複数配置された補強リブ18を天井面1に向けて突出形成している。
【0023】
器具本体14は、第1器具姿勢安定用凸部17の天井面1側の上面に、第1器具姿勢安定用凸部17に相似形状のテープ状の緩衝材19を貼り付けている。
【0024】
緩衝材19は、例えば、0.8mmの厚さ寸法で6.0mmの幅寸法を有する起毛構造に形成された繊維からなるポリエステル製フレンチパイルである。
【0025】
図4にも示すように、緩衝材19は、照明器具10を天井面1に設置した際に、天井面1の下面すなわち居住空間側に貼り付けられている天井クロス5に当接する。
【0026】
図5(A)にも示すように、緩衝材19は、照明器具10を天井面1に設置することにより天井クロス5に当接した当初、天井クロス5との間に無数の空隙からなる凹凸の層である空気層20を形成する。
【0027】
図5(B)にも示すように、長期使用による温度上昇や圧力、湿度環境等の要因により、天井クロス5の成分は軟化して粘着力を持つようになる。
【0028】
しかし、緩衝材19は、無数の細かい空気層20を保持するとともに、天井クロス5が軟化したとしても繊維状との微少な接触面積を有することになる。
よって、器具本体14の第1器具姿勢安定用凸部17に、軟化した天井クロス5の材質を付着させることがない。
【0029】
緩衝材19としては、器具使用中の温度上昇に耐え、設置時の圧力でも凹凸形状を維持して軟化した天井クロス5の材質との接触面積が微少となるような、例えば点接触するものであっても良い。
【0030】
また、緩衝材19は、防虫効果を必要としない場合、天井クロス5と器具本体14とが直接接しない程度の厚みの部材を部分的に設置しても良い。
【0031】
本実施形態では、天井面1に設置することにより、天井面1に貼り付けられている天井クロス5に当接した当初、第1器具姿勢安定用凸部17と天井クロス5との間に無数の空隙からなる凹凸の層からなる空気層20を形成する。天井クロス5は長期使用による温度上昇や圧力、湿度環境等の要因により、その成分が軟化して粘着力を持つようになる。しかし、空気層20は保持される。
これにより、天井クロス5が軟化したとしても第1器具姿勢安定用凸部17との間に微少な接触面積を維持する。
よって、軟化した天井クロス5を器具本体14に付着させることがなくなって取扱性の向上を図ることができる。
【0032】
本実施形態では、電源用穴16を囲むように形成された第1器具姿勢安定用凸部17の外表面に凹凸の層からなる空気層20を形成した。
これにより、天井面1と器具本体14との間に、例えば虫等が通過する隙間を形成しない。
よって、電源用穴16からの虫等の侵入を防止することができる。
【0033】
本実施形態では、凹凸の層からなる空気層20を、起毛構造に形成された繊維状の材質により構成した。
これにより、天井面1の天井クロス5に密着することがない。
よって、長期使用による温度上昇や圧力、湿度環境等の要因に拘わらず、凹凸の層からなる空気層20は劣化することがない。
【0034】
本実施形態では、ポリエステル製フレンチパイルからなる緩衝材19により空気層20を形成したために、入手がし易く、安価な材料を用いることができる。
よって、コスト面で有利に大量生産を行うことができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る照明器具について説明する。なお、以下の各実施形態において、上述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号あるいは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは省略する。
【0036】
図6に示すように、本発明の第2実施形態である照明器具30は、器具本体14の中央部の上面に、電源用穴16を囲むようにスポンジパッキン31を組み付けており、スポンジパッキン31の周りの器具本体14の外周側に、複数の点状凸部形状をなす第2器具姿勢安定用凸部32を天井面1に向けて突出形成している。
【0037】
第2器具姿勢安定用凸部32は、スポンジパッキン31が天井面1と器具本体14の隙間を素材の収縮により塞ぎ、天井面1に対して比較的弱い圧力でも防虫効果を発揮できるが、クッション特性により器具本体14の姿勢が安定しにくくなるのを補正する。
【0038】
器具本体14は、第2器具姿勢安定用凸部32の天井面1側の上面に、円板形状のテープ状の緩衝材33を貼り付けている。
【0039】
図7にも示すように、第2器具姿勢安定用凸部32の上面に配置された緩衝材33は、照明器具30を天井面1に設置した際に、天井面1の天井クロス5に当接する。
【0040】
本実施形態では、長期使用による温度上昇や圧力、湿度環境等の要因により、天井クロス5の成分が軟化して粘着力を持つようになる。しかし、緩衝材33は、天井クロス5が軟化したとしても繊維材との微少な接触面積を有することになる。
よって、器具本体14の第2器具姿勢安定用凸部32に、軟化した天井クロス5の材質を付着させることがない。
【0041】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る照明器具について説明する。
【0042】
図8に示すように、本発明の第3実施形態である照明器具40は、器具本体14の中央部の上面に、電源用穴16とだるま穴15とを囲むように環状凸部形状をなす第1器具姿勢安定用凸部41を天井面1に向けて突出形成している。
【0043】
照明器具40は、器具本体14の外周側に点状凸部形状をなす複数の第2器具姿勢安定用凸部42と、第1器具姿勢安定用凸部41と第2器具姿勢安定用凸部42との間に点状凸部形状をなす複数の第3器具姿勢安定用凸部43と、を天井面1に向けて突出形成している。
【0044】
器具本体14は、第1器具姿勢安定用凸部41の天井面1側の上面に、第1器具姿勢安定用凸部41に相似形状の緩衝材44を貼り付けている。
【0045】
そして、器具本体14は、第2器具姿勢安定用凸部42の天井面1側の上面に、円板形状の緩衝材45を貼り付けている。同様にして、器具本体14は、第3器具姿勢安定用凸部43の天井面1側の上面に、円板形状の緩衝材46を貼り付けている。
【0046】
図9にも示すように、第1器具姿勢安定用凸部41の緩衝材44と、第2器具姿勢安定用凸部42の緩衝材45と、第3器具姿勢安定用凸部43の緩衝材46とは、同一面を形成する。各緩衝材44,45,46は、照明器具40を天井面1に設置した際に、天井面1の天井クロス5にそれぞれ当接する。
よって、器具本体14の姿勢を安定的に支持する。
【0047】
本実施形態では、長期使用による温度上昇や圧力、湿度環境等の要因により、天井クロス5の成分が軟化して粘着力を持つようになる。しかし、各緩衝材44,45,46は、天井クロス5が軟化したとしても繊維材との微少な接触面積を有することになる。
よって、器具本体14の第1器具姿勢安定用凸部41、第2器具姿勢安定用凸部42および第3器具姿勢安定用凸部43に、軟化した天井クロス5の材質を付着させることがない。
【0048】
本実施形態では、環状凸部形状をなす第1器具姿勢安定用凸部41と、点状凸部形状をなす複数の第2器具姿勢安定用凸部42と、点状凸部形状をなす複数の第3器具姿勢安定用凸部43とに、各緩衝材44,45,46をそれぞれ貼り付けているために、設置面に安定的に取り付けることができる。
【0049】
なお、前記各実施形態で使用した反射板11、ランプ12、カバー13は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る第1実施形態の照明器具の下方から視た分解斜視図
【図2】(A),(B)は図1に示した照明器具の天井面との固定部分のそれぞれ部分外観斜視図
【図3】図1に示した照明器具の器具本体の一部破断平面図
【図4】図3に示した照明器具の垂直断面図
【図5】(A),(B)は図1に示した照明器具の天井面との当接を説明するそれぞれ断面図
【図6】本発明に係る第2実施形態の照明器具の器具本体を上方から視た分解斜視図
【図7】図6に示した照明器具の垂直断面図
【図8】本発明に係る第3実施形態の照明器具の器具本体を上方から視た分解斜視図
【図9】図8に示した照明器具の垂直断面図
【符号の説明】
【0051】
1 (天井面)設置面
5 天井クロス(壁紙)
10、30、40 照明器具
14 器具本体
16 電源用穴
17、41 第1器具姿勢安定用凸部(器具姿勢安定用凸部)(環状凸部)
19、33、44、45、46 緩衝材
20 凹凸の層
32、42、43 第2器具姿勢安定用凸部(器具姿勢安定用凸部)(点状凸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井や壁などの設置面に取り付けられる照明器具において、
器具本体の一部を前記設置面に接触するように成形した器具姿勢安定用凸部の外表面に、前記設置面との間に無数の空隙を形成するような凹凸の層を形成したことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記器具姿勢安定用凸部は、電源用穴を囲むように形成された環状凸部とし、その外表面に前記凹凸の層を形成したことを特徴とする請求項1記載の照明器具。
【請求項3】
前記器具姿勢安定用凸部は、前記環状凸部とその外側に位置する複数の点状凸部からなり、
前記環状凸部と前記点状凸部との設置面方向への高さを同一とし、それらの外表面に前記凹凸の層を形成したことを特徴とする請求項1または2記載の照明器具。
【請求項4】
前記凹凸の層は、起毛構造に形成された繊維状の材質により構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の照明器具。
【請求項5】
前記凹凸の層は、厚さ1mm以下のポリエステル製フレンチパイルにより構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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