説明

照明装置および栽培システム

【課題】運転コストを低減できる照明装置を提供すること。
【解決手段】光源パネル3は、棚板として栽培ベッドを支持可能である。この光源パネル3は、箱状の筐体10と、この筐体10の内部に設けられたLED21と、筐体10の内部に設けられてLED21からの光を下方に向かって面状に拡散させる平板状の導光部30と、を備える。本発明によれば、LED21の熱は筐体10を介して栽培ベッドに伝達され、この栽培ベッドからも放熱されるため、従来のように冷却水を強制的に循環させる必要がなく、運転コストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置および栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人工光を利用した植物の水耕栽培システムが知られている。
図5は、本発明の従来例に係る栽培システム101の断面図である。この栽培システム101は、例えば、対向配置された一対の側板102と、これら一対の側板102に複数段設けられた棚板103と、を備える。
棚板103の上には、発泡スチロール製あるいはプラスチック製の栽培ベッド104が載置され、この栽培ベッド104には養液が収容されて、定植パネル105が設置される。各栽培ベッド104の直上の棚板103には、光源としての蛍光灯106が設置されて、この蛍光灯106により栽培ベッド104に光を照射する。
【0003】
ここで、蛍光灯106から栽培ベッドの定植パネル105までの距離は、25cm程度必要となる。
この理由は、以下の通りである。すなわち、蛍光灯の光は放射状に広がるため、光源から栽培ベッドまでの距離をある程度確保して、栽培ベッドの照度をできる限り一定にするためである。また、蛍光灯からの放射熱が大きいため、光源から栽培ベッドまでの距離をある程度確保して、植物の生育に与える影響を軽減するためである。
よって、棚板103同士の間隔は50cm近くになり、栽培システムの高さを200cmとすると、最大で4段程度となる。
【0004】
ところで、近年、栽培システムの空間の利用効率をさらに向上させることが要請されている。
そこで、光源として発光ダイオード(以降、LEDと呼ぶ)を利用することが提案されている。具体的には、LEDのチップを複数設けたLEDパネルを用意し、このLEDパネルに冷却水を強制的に循環させる(特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1に示された栽培システムによれば、LEDパネルの放射熱量は蛍光灯の放射熱量よりも少ないうえに、冷却水によりLEDパネルを冷却するので、栽培ベッドまでの距離を狭くしても、植物の生育に与える影響が少なくなる。
また、複数のLEDを用いたので、LEDパネルが面発光に近い状態となるため、棚板から栽培ベッドまでの距離が狭くても、栽培ベッドの照度を均一にできる。
以上より、棚板同士の間隔を狭くできるので、栽培システムの空間の利用効率をさらに向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−98665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示された栽培システムでは、LEDパネルに冷却水を強制的に循環させるため、運転コストがかかる、という問題があった。
【0008】
本発明は、運転コストを低減できる照明装置および栽培システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の照明装置は、箱状の筐体と、当該筐体の内部に設けられた発光ダイオードと、前記筐体の内部に設けられて前記発光ダイオードからの光を面状に拡散させる平板状の導光部と、を備え、棚板として栽培ベッドを支持可能であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の栽培システムは、栽培ベッドが載置される棚板を複数段有する栽培システムであって、前記棚板は、箱状の筐体と、当該筐体の内部に設けられた発光ダイオードと、前記筐体の内部に設けられて前記発光ダイオードからの光を下方に向かって面状に拡散させる平板状の導光部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、発光ダイオードおよび導光部を含んで棚板を構成し、この棚板の上に栽培ベッドを載置した。よって、発光ダイオードの熱は筐体を介して栽培ベッドに伝達され、この栽培ベッドからも放熱されるため、従来のように冷却水を強制的に循環させる必要がなく、運転コストを低減できる。
【0012】
また、構造材である棚板自体に光源である発光ダイオードを組み込んだので、従来のように構造材である棚板の表面に光源を設けた場合に比べて、製造コストを削減できるうえに、棚板同士の間隔を狭くして、空間利用効率をより向上できる。
【0013】
また、発光ダイオードからの光により導光部を面発光させたので、光源として蛍光灯を用いた場合に比べて、棚板から栽培ベッドまでの距離が狭くても、栽培ベッドの照度を均一にできる。さらに、発光ダイオードの放射熱量は蛍光灯の放射熱量よりも少ないため、光源として蛍光灯を用いた場合に比べて、棚板から栽培ベッドまでの距離を狭くできる。よって、棚板同士の間隔を狭くして、空間利用効率をより向上できる。
また、発光ダイオードの厚みは、蛍光灯の厚みよりも薄いため、棚板を薄型化できるから、棚板同士の間隔を狭くして、空間利用効率をより向上できる。
【0014】
請求項3に記載の栽培システムは、前記栽培ベッドは、防水シートを用いて形成されることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、防水シートを用いて栽培ベッドを形成したので、従来に比べて、栽培ベッドの厚みを薄くできる。よって、棚板同士の間隔をさらに狭くして、空間利用効率をより向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発光ダイオードおよび導光部を含んで棚板を構成し、この棚板の上に栽培ベッドを載置した。よって、発光ダイオードの熱は筐体を介して栽培ベッドに伝達され、この栽培ベッドからも放熱されるため、従来のように冷却水を強制的に循環させる必要がなく、運転コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る栽培システムの断面図である。
【図2】前記実施形態に係る栽培システムの照明装置の見上げ図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】従来例に係る栽培システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る栽培システム1の断面図である。
栽培システム1は、対向配置された一対の側板2と、これら一対の側板2に複数段設けられた照明装置および棚板としての光源パネル3と、を備える。
光源パネル3の上には、栽培ベッド4が載置され、この栽培ベッド4には養液が収容されて、定植パネル5が設置される。
栽培ベッド4は、防水シートを光源パネル3上に敷設して、上方が開放された箱状に折り曲げたものである。
【0019】
図2は、光源パネル3の見上げ図である。図3は、図2のA−A断面図であり、図4は、図2のB−B断面図である。
光源パネル3は、下方に向かって光を照射するものである。この光源パネル3は、箱状の筐体10と、この筐体10の内部に設けられた光源部20と、筐体10の内部に設けられて光源部20からの光を下方に向かって面状に拡散させる平板状の導光部30と、を備える。
【0020】
筐体10は、ステンレス、プラスチック、アルミなどで形成され、下方が開放された箱状のベース11と、このベース11の下面を覆うカバー12と、を備える。
ベース11は、平板状の板材の外周縁が下方に向かって折り曲げられて形成される。このベース11には、補強用のリブ13が形成され、これにより、剛性が確保されている。
【0021】
カバー12は、枠状の板材の外周縁が上方に向かって折り曲げられて形成される。カバー12の外周縁には、断面略コの字形状の第1防水パッキン14が嵌め込まれている。また、カバー12の内周縁には、断面略コの字形状の第2防水パッキン15が嵌め込まれている。
【0022】
光源部20は、光源としての棒状のLED(発光ダイオード)21と、このLED21を制御する制御基板22と、筐体10の内部に保持されて制御基板22を保持する基板押え23と、を備える。
【0023】
制御基板22と基板押え23との間には、放熱テープ24が介装されている。
また、基板押え23とベース11との間、および、基板押え23とカバー12との間には、放熱テープ25、26が介装されている。これにより、LED21で発生した熱は、制御基板22、放熱テープ24、基板押え23、および放熱テープ25、26を介して、筐体10に伝達される。よって、LED21で発生した熱が効率よく筐体10に伝達される。
【0024】
導光部30は、矩形板状の導光板31と、この導光板31の下側に略平行に設けられた矩形板状の保護ガラス32と、筐体10の内部に設けられて導光板31の四隅および保護ガラス32の四隅を保持する4つの導光板押え33と、を備える。
【0025】
保護ガラス32は、カバー12に囲まれており、筐体10から下方に露出している。
上述のLED21は、導光板31の一側面に沿って延びている。また、導光板31の保護ガラス32側の部分には、拡散シート34が設けられており、保護ガラス32の反対側の部分には、反射シート35が設けられている。これにより、導光板31は、LED21からの光を拡散させて、面状に発光する。
また、導光板31と保護ガラス32との間には、枠状のスペーサ36が介装されている。このスペーサ36により、導光板31と保護ガラス32との間隔が一定に保たれている。
【0026】
ここで、カバー12は、以下の手順で、ベース11に取り付けられる。すなわち、カバー12の外周縁および内周縁に防水パッキン14、15を嵌め込んでおき、この状態で、基板押え23および導光板押え33を挟み込んで、カバー12をベース11に固定する。
すると、第1防水パッキン14がベース11に強く押し付けられるから、第1防水パッキン14とベース11との隙間が確実に密閉される。
また、保護ガラス32および導光板31が導光板押え33に保持されているので、第2防水パッキン15が保護ガラス32に強く押し付けられて、第2防水パッキン15と保護ガラス32との隙間が確実に密閉される。
【0027】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)LED21および導光板31を含んで棚板である光源パネル3を構成し、この光源パネル3上に栽培ベッド4を載置した。よって、LED21の熱は筐体10を介して栽培ベッド4に伝達され、この栽培ベッド4からも放熱されるため、従来のように冷却水を強制的に循環させる必要がなく、運転コストを低減できる。
【0028】
また、構造材である棚板自体に光源を組み込んだので、従来のように構造材である棚板の表面に光源を設けた場合に比べて、製造コストを削減できるうえに、棚板である光源パネル3同士の間隔を狭くして、空間利用効率をより向上できる。
【0029】
LED21からの光により導光板31を面発光させたので、光源として蛍光灯を用いた場合に比べて、光源パネル3から栽培ベッド4までの距離が狭くても、栽培ベッド4の照度を均一にできる。さらに、LED21の放射熱量は蛍光灯の放射熱量よりも少ないため、光源として蛍光灯を用いた場合に比べて、光源パネル3から栽培ベッド4までの距離を狭くできる。よって、光源パネル3同士の間隔を狭くして、空間利用効率をより向上できる。
また、LED21の厚みは、蛍光灯の厚みよりも薄いため、棚板を薄型化できるから、棚板同士の間隔を狭くして、空間利用効率をより向上できる。
【0030】
具体的には、光源パネル3の厚みを1.2cm程度、光源パネル3の下面から栽培ベッド4の定植パネル5までの距離を20cm程度とし、光源パネル3同士の間隔を25cm程度とすることができる。その結果、栽培システムの高さを200cmとすると、光源として蛍光灯を用いた場合では4段程度の栽培環境であったが、本発明によれば8段程度確保できることになる。
なお、栽培システム1により苗を生産する場合には、光源パネル3同士の間隔をさらに狭く設定することもできる。
【0031】
(2)防水シートを用いて栽培ベッド4を形成したので、従来に比べて、栽培ベッドの厚みを薄くできる。よって、光源パネル3同士の間隔をさらに狭くして、空間利用効率をより向上できる。
【0032】
(3)防水パッキン14、15により、水分が筐体10の内部に浸入するのを確実に防止して、光源パネル3を防水、防湿構造とすることができる。
【0033】
(4)筐体10に補強用のリブ13を設けたので、剛性が高くなり、光源パネル3で栽培ベッド4の重量を直接保持できる。
【0034】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
1…栽培システム
2…側板
3…光源パネル(棚板、照明装置)
4…栽培ベッド
5…定植パネル
10…筐体
11…ベース
12…カバー
13…リブ
14…第1防水パッキン
15…第2防水パッキン
20…光源部
21…LED(光源)
22…制御基板
23…基板押え
24、25、26…放熱テープ
30…導光部
31…導光板
32…保護ガラス
33…導光板押え
34…拡散シート
35…反射シート
36…スペーサ
101…栽培システム
102…側板
103…棚板
104…栽培ベッド
105…定植パネル
106…蛍光灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の筐体と、当該筐体の内部に設けられた発光ダイオードと、前記筐体の内部に設けられて前記発光ダイオードからの光を面状に拡散させる平板状の導光部と、を備え、
棚板として栽培ベッドを支持可能であることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
栽培ベッドが載置される棚板を複数段有する栽培システムであって、
前記棚板は、箱状の筐体と、当該筐体の内部に設けられた発光ダイオードと、前記筐体の内部に設けられて前記発光ダイオードからの光を下方に向かって面状に拡散させる平板状の導光部と、を備えることを特徴とする栽培システム。
【請求項3】
前記栽培ベッドは、防水シートを用いて形成されることを特徴とする請求項2に記載の栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−55200(P2012−55200A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199548(P2010−199548)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】